JP2001269166A - 新規微生物 - Google Patents
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Abstract
生物を提供する。 【解決手段】 鉄シアノ錯体分解能を有するクレブシエ
ラ(Klebsiella)属の細菌。
Description
lebsiella)属に属する細菌であって、弱アル
カリ性の生育条件下で、シアン化合物分解能を有する新
規な微生物に関するものである。
アノ錯体と称される化合物群が含まれる。前記シアン化
物は、「遊離シアン」とも呼ばれているもので、一般式
An(CN)xで表され、Aには水素(H)、ナトリウ
ム(Na)、カリウム(K)、アンモニウム(N
H4 )、カルシウム(Ca)などがあり、シアン化合物
の中で最も毒性の高い形態である。又、前記金属シアノ
錯体は、シアン化水素の金属塩と金属とが過剰のシアン
化物イオン(CN- )と結合したもので、一般式An
[M(CN)x]で表される。ここで、Mには銀(A
g)、金(Au)、カドミウム(Cd)、コバルト(C
o)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜
鉛(Zn)などの金属が該当し、溶液中に溶存、あるい
は懸濁状で存在している。
ていることがあり、浄化処理で取り除かれるべき性質の
物質である。溶液(排水)中でのシアン化合物の存在形
態に関しては、排水処理分野で多くの研究が行われてお
り、その形態は大部分が前記遊離シアンと前記金属シア
ノ錯体であることが報告されている。これらのシアン化
合物を含有する排水の処理方法としては、アルカリ塩素
法、オゾン酸化法、電解酸化法、紺青法(難溶性錯化合
物沈殿法)、酸分解燃焼法、煮詰法(煮詰高温燃焼
法)、湿式加熱分解法、及び、吸着法などが知られてい
る。しかし、これらの処理方法においては、安定性の高
い金属シアノ錯体、例えば鉄、コバルト、銀、金のシア
ノ錯体については適用することができない場合があっ
た。又、反応条件が過酷である点、大規模な設備が必要
である点、これらの処理を施した結果生じる生成物が、
更に処理を要するものであることがある点で問題があっ
た。そこで、前述した問題を回避しつつ環境を修復する
技術として、生物機能を利用して浄化処理を行なう、所
謂、バイオレメディエーション(bioremedia
tion)が注目されており、前記シアン化合物分解能
を有する微生物の検索が行なわれている。
ウムなどの前記遊離シアンの微生物分解に関しては、遊
離シアンの分解菌としてPseudomonas pu
tida、Pseudomonas sp.、Acin
etobactor sp.、Fusarium s
p.などの微生物が単離、同定されたという報告があ
る。
ニッケル−シアノ錯体([K2 Ni(CN)4 ])の分
解微生物として、Fusarium solani、T
richoderum polysporumが報告さ
れている。又、鉄シアノ錯体であるフェロシアン化カリ
ウム([K4 Fe(CN)6 ])の分解菌としては、F
usarium oxysporum、Scytali
dium thermophilum、Penicil
lium miczynskiが報告されている(いず
れもKnowles C.J. et. al., E
nzyme and Microbial Techn
ology 22:223−231,(1998))。
シアノ錯体の分解に関する報告は、すべて真菌によるも
のであって、放線菌を含めた細菌による分解例は報告さ
れていない。従って、前記鉄シアノ錯体分解菌の生育p
H域は弱酸性域に限られている。ここで、前記鉄シアノ
錯体を含む排水の処理について考えると、弱酸性条件下
では、前記鉄シアノ錯体は難溶性の塩を形成して存在し
ているので、前記排水中の鉄シアノ錯体は、前記処理の
過程で、流路や処理槽に沈殿し易い。そのため、前記鉄
シアノ錯体分解菌を用いて排水処理を行なうとしても、
分解効率が低かったり、その効率を上げるために激しく
攪拌する等の操作が必要となる。よって、実質的には、
前記鉄シアノ錯体分解菌を、前記鉄シアノ錯体を含む排
水の処理に適用することは困難であった。
み、鉄シアノ錯体を分解することが出来る新規微生物を
提供することにある。
解決すべく、大気を対象としてスクリーニングを行なっ
て、アルカリ性の生育条件においてもシアン化合物分解
能を有する新規微生物を分離することに成功し、本発明
を完成させた。
おいてもシアン化合物を分解可能なクレブシエラ(Kl
ebsiella)属の新規微生物であり、具体的に
は、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiell
a pneumoniae)AN−1株である。又、前
記シアン化合物は、具体的には、金属シアノ錯体であ
り、更に具体的には、鉄シアノ錯体である。
る新規微生物を単離した。フラスコに入れた滅菌フェロ
シアン液体培地を大気中に放置し、この培地中で生育し
た微生物を、滅菌フェロシアン寒天平板培地上に接種し
た後、30℃で培養し、形成されたコロニーを分離し
た。尚、前記フェロシアン寒天培地及びフェロシアン液
体培地の前記組成及び調製方法は、以下に示す通りであ
る。
0.2)に調整して、蒸留水で全量を1リットルにす
る。K4 [Fe(CN)6 ]・3H2 O以外の成分を1
20℃、20分間オートクレーブ殺菌した後に、フィル
タ滅菌したK4 [Fe(CN)6 ]・3H2 O溶液を添
加する。
0.2)に調整して、蒸留水で全量を1リットルにす
る。K4 [Fe(CN)6 ]・3H2 O以外の成分を1
20℃、20分間オートクレーブ殺菌した後に、フィル
タ滅菌したK4 [Fe(CN)6 ]・3H2 O溶液を添
加する。
シアン液体培地100mlを分注し、前述の分離した菌
株を1白金耳接種し、30℃で1週間、振とう培養(1
50〜170rpm)した。培養後、培養液中のフェロ
シアン(全シアン)含有量は、「低質土壌のCN含有量
測定方法(環水管127号14.2項)」に記載されて
いる「シアンの蒸留前操作方法(土壌中の全シアンの加
熱蒸留方法)」に従って、培養物(培養液、菌体)全量
を蒸留し、得られた蒸留液を全自動シアン測定装置(ア
ナテック・ヤナコ製T−CN501)に供試し、フェロ
シアン(全シアン)含有量を測定して求めた。この様に
して、前記フェロシアン液体培地中のフェロシアンを分
解する菌株を選抜した結果、フェロシアン分解能を有す
る菌株が得られ、これをAN−1株と命名した。なお、
フェロシアンの分解率は以下の式により求めた。 フェロシアン分解率=培養後のフェロシアン含有量/無
菌振とう後のフェロシアン含有量×100(%)
して30℃で1日間培養し、純粋培養であることを確認
した後に、下記の菌学的性質を有するAN−1株の分類
学上の位置を、「バージェイズ・マニュアル・オブ・シ
ステマチック・バクテリオロジー 第1版」(Berg
ery´s Manual of Systemati
c Bacteriology 1st Editio
n (1984))」を参照にして検索した。前記AN
−1株の菌学的性質を、表3に記す。
ラ・ニューモニエ(Klebsiella pneum
oniae)であると判定された。しかし、公知のクレ
ブシエラ属菌に属し、鉄シアノ錯体の分解可能を有する
ものは、今までに報告が無く、この点で、前記AN−1
株は、公知の菌株と区別される新菌株である。クレブシ
エラ・ニューモニエ AN−1株と判定された本菌株
は、工業技術院生命工学工業技術研究所に、受託番号F
ERM P−17792号として寄託されている。
に示す通りである。
エ AN−1株は、細菌に分類される新規微生物であ
る。一般的に、細菌は、中性から弱アルカリ性のpH域
で生育するものであり、発明者らは、後述する生育試験
によって、前記クレブシエラ・ニューモニエ AN−1
株も、中性から弱アルカリ性の生育条件で、前記鉄シア
ノ錯体を分解して生育できることを明らかにしている。
従って、この菌株をシアン化合物を含む排水の処理に用
いる場合、液性を弱アルカリ性として、難溶性の前記鉄
シアノ錯体を排水中に溶存した状態とし、効率よく分解
することが出来る。更に、前記クレブシエラ・ニューモ
ニエ AN−1株は、生育中に、培養液のpHを上昇さ
せることができるので、前記鉄シアノ錯体を可溶化し
て、前記鉄シアノ錯体の分解に適した環境を自ら作り出
すこともできる。上述の如く、前記クレブシエラ・ニュ
ーモニエ AN−1株は、中性から弱アルカリ性のpH
域で、シアン化合物、特に鉄シアノ錯体を分解可能であ
るので、バイオレメディエーションによる排水処理に用
いるのに適した微生物といえる。又、土壌中でのシアン
の存在形態は、大部分が鉄とシアンの錯体であるフェロ
シアンであることが知られているため、本発明に係るク
レブシエラ・ニューモニエ AN−1株を用いて土壌中
のフェロシアンを分解除去することによって、シアン化
合物に汚染された土壌を浄化することが出来ると考えら
れる。
アン分解の実験例について説明する。クレブシエラ・ニ
ューモニエ AN−1株を下記の条件で培養し、培地中
のフェロシアン(全シアン)含有量を測定し、培養開始
前後のフェロシアン(全シアン)含有量より分解率を求
めた。フェロシアンの分解率は以下の式により求めた。 フェロシアン(全シアン)分解率=AN−1株を添加培
養後のフェロシアン含有量/無菌振とう後のフェロシア
ン含有量×100(%)
体培地10mlを分注し、ここにクレブシエラ・ニュー
モニエ AN−1株を1白金耳接種して、30℃で振と
う培養(150〜170rpm)した。培養開始から1
週間後に、この培地の一部を分取し、培地中のフェロシ
アン(全シアン)含有量を、前述した「低質土壌のCN
含有量測定方法(環水管127号14.2項)」に記載
されている「シアンの蒸留前操作方法(土壌中の全シア
ンの加熱蒸留方法)」に従って測定した。この結果を、
表5に示す。
ューモニエ AN−1株は、フェロシアン分解活性を有
し、フェロシアンの初期濃度が夫々10、50、100
ppmであった培地において、培養開始から1週間後
に、夫々40、24、9%分解していた。
フェロシアンの初期濃度が10.5ppmで初発pHが
6.6であったものが、前記クレブシエラ・ニューモニ
エAN−1株の培養開始から一週間で、pH8.2まで
上昇していた(表6参照)。
1株は、中性から弱アルカリ性域でフェロシアンを分解
している。このとき、前記培地中のフェロシアンは、前
記培地に溶解した状態で存在していると考えられる。こ
のように、前記クレブシエラ・ニューモニエ AN−1
株は、可溶化したフェロシアンを分解することが出来る
ので、工業排水等の浄化処理に使用する菌株として好適
である。従って、本発明にかかる新規微生物であるクレ
ブシエラ・ニューモニエ AN−1株を用いることによ
り、排水中のフェロシアンを効率的に分解することが可
能である。また、土壌中でのシアンの存在形態の大部分
が、鉄シアン錯体であるフェロシアンであることが知ら
れている。従って、本発明の新規微生物クレブシエラ・
ニューモニエ AN−1株を用いて、他の浄化方法に見
られるような過酷な処理を行なうことなく、土壌中のフ
ェロシアンを分解することも出来ると考えられる。
Claims (3)
- 【請求項1】 鉄シアノ錯体分解能を有するクレブシエ
ラ(Klebsiella)属の細菌。 - 【請求項2】 鉄シアノ錯体分解能を有するクレブシエ
ラ・ニューモニエ(Klebsiella pneum
oniae)。 - 【請求項3】 シアン化合物分解能を有する新菌株クレ
ブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pn
eumoniae) AN−1株(FERMP−177
92)。
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---|---|---|---|
JP2000088930A JP4326109B2 (ja) | 2000-03-28 | 2000-03-28 | 新規微生物及び鉄シアノ錯体含有排水処理方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006281053A (ja) * | 2005-03-31 | 2006-10-19 | Taisei Corp | シアン化合物の無害化方法 |
JP2012070729A (ja) * | 2010-08-30 | 2012-04-12 | Showa Denko Kk | 固体培地プレート、及びそのプレートを用いるシアン化合物分解微生物のスクリーニング方法 |
JP2013202526A (ja) * | 2012-03-28 | 2013-10-07 | Osaka Gas Co Ltd | 鉄シアノ錯体化合物含有水の処理方法および土壌浄化方法 |
JP2015188417A (ja) * | 2014-03-28 | 2015-11-02 | 大阪瓦斯株式会社 | 新規微生物および金属シアノ錯体分解方法 |
JP2015188416A (ja) * | 2014-03-28 | 2015-11-02 | 大阪瓦斯株式会社 | 新規微生物および金属シアノ錯体分解方法 |
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JP2006281053A (ja) * | 2005-03-31 | 2006-10-19 | Taisei Corp | シアン化合物の無害化方法 |
JP4572135B2 (ja) * | 2005-03-31 | 2010-10-27 | 大成建設株式会社 | シアン化合物の無害化方法 |
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