JP5227673B2 - 新種微生物、セレン酸化合物還元製剤、セレン酸化合物の還元方法および除去方法、並びに金属セレンの製造方法 - Google Patents
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Description
その一方で、微量のセレンは人体にとって必須元素であるが、必要量以上に摂取すると毒性を示すことが知られている。そこで、水質汚濁および土壌汚染を防止するために、環境基準の指定項目となっている。
このような中、上記のような産業界においては、工場排水中にセレンが混入する可能性があり、また、セレンは石炭中にも微量含まれていることから、火力発電所等の排水にも混入する可能性があるため、このような排水中のセレンの除去は重要な課題となっている。
このように微生物を利用して、セレン酸化合物を排水中から除去する方法は、環境負荷も少なく優れた方法であると言える。
また、バイオアドソープションを利用したセレンオキシアニオンの除去については、実用的な方法がまだ確立されていないのが現状である。
請求項1に記載の発明は、アエロモナス(Aeromonas)属JPCC SEP JP−1(NITE P−345)株、クレブシエラ(Klebsiela)属JPCC SEP JP−2(NITE P−346)株、およびスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP−3(NITE P−582)株を、セレン酸化合物共存下において共培養する工程を有するセレン酸化合物の還元方法である。
請求項2に記載の発明は、アエロモナス(Aeromonas)属JPCC SEP JP−1(NITE P−345)株、クレブシエラ(Klebsiela)属JPCC SEP JP−2(NITE P−346)株、およびスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP−3(NITE P−582)株を、セレン酸化合物共存下において共培養する工程を有するセレン酸化合物の除去方法である。
請求項3に記載の発明は、アエロモナス(Aeromonas)属JPCC SEP JP−1(NITE P−345)株、クレブシエラ(Klebsiela)属JPCC SEP JP−2(NITE P−346)株、およびスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP−3(NITE P−582)株を、セレン酸化合物共存下において共培養する工程と、得られた培養物を分離する工程とを有する金属セレンの製造方法である。
請求項5に記載の発明は、クレブシエラ(Klebsiela)属JPCC SEP JP−2(NITE P−346)株である。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の微生物を有効成分とするセレン酸化合物還元製剤である。
請求項8に記載の発明は、請求項4又は5に記載の微生物をセレン酸化合物共存下において培養する工程を有するセレン酸化合物の除去方法である。
請求項9に記載の発明は、請求項4又は5に記載の微生物をセレン酸化合物共存下において培養する工程と、得られた培養物を分離する工程とを有する金属セレンの製造方法である。
本発明においてセレン酸化合物とは、セレン酸、亜セレン酸およびこれらの塩並びにこれらのイオンを指す。
本発明のJPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3は、奄美大島のマングローブ林の土壌中に見られ、この土壌中より採取したサンプルを培養および純化することで得られる。
炭素源としては、メタノールやエタノール等のアルコール類、酢酸や乳酸などの有機酸類が例示できる。なかでも乳酸およびエタノールが好ましく、乳酸が特に好ましい。
窒素源としては、硝酸塩、アンモニウム塩が例示できる。
無機塩としては、リン酸のカリウム塩またはナトリウム塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが例示できる。
微量元素としては、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ホウ素、ニッケル、モリブデンが例示できる。
ME培地組成;乳酸0.6g、リン酸二水素カリウム0.5g、塩化アンモニウム0.2g、システイン0.05g、酵母エキス0.2g、蒸留水1L、ミネラル液4ml
なお、ミネラル液の組成は以下の通りである。
ミネラル液組成;ニトリロ三酢酸1.8g、塩化マグネシウム六水和物2.5g、塩化マンガン(II)四水和物0.6g、塩化ナトリウム1.0g、塩化鉄(II)四水和物0.136g、塩化コバルト(II)六水和物0.1g、塩化カルシウム二水和物0.13g、硫酸銅(II)五水和物0.0146g、塩化亜鉛0.01g、ホウ酸(H3BO3)0.01g、塩化ニッケル(II)六水和物0.01g、モリブテン(VI)酸二ナトリウム二水和物0.01g、塩化銅(II)二水和物0.01g、蒸留水1L
例えば、前記ME培地を用いる場合には、培地のpHは5.8〜7.2であることが好ましく、6.0〜6.5であることがより好ましい。
培地中のセレン酸化合物の濃度は5〜80ppmであることが好ましく、20〜60ppmであることがより好ましい。
培養温度は15〜38℃であることが好ましく、25〜37℃であることがより好ましく、25〜35℃であることが特に好ましい。
培養時間は生育状況に応じて適宜選択すれば良いが、20時間以上であることが好ましく、30時間以上であることがより好ましい。
また、JPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3は嫌気性であり、気相部分をアルゴンガスなどで置換して培養することが好ましい。
JPCC SEP JP−1の同定は、株式会社テクノスルガに委託して実施した。そして取得した検体を用いて、「形態的性質」、「培養的性質」、「生理学的性質」、「糖類からの酸生成/ガス産生」および「その他の生理学的性質」を確認し、「塩基配列」の同定および系統解析を行った。「形態的性質」を表1に、「培養的性質」を表2に、「生理学的性質」を表3に、「糖類からの酸生成/ガス産生」を表4に、「その他の生理学的性質」を表5にそれぞれ示す。
また、(2)リトマス・ミルクでの培養条件、MRテスト、デンプンの加水分解、クエン酸の利用、無機窒素源の利用、カタラーゼ、オキシダーゼ、O−Fテスト(酸化/発酵)、糖類からの酸生成/ガス産生については、文献「坂崎利一、吉崎悦郎、三木寛二:新細菌培地学講座・下,第二版.1998,近大出版,東京」を参考にした。
また、(3)硝酸塩の還元、脱窒反応、VPテスト、インドール産生、硫化水素の生成、ウレアーゼ活性、その他の生理学的性質については、「細菌同定キットAPI20E,(bioMerieux,France)」を使用した。
JPCC SEP JP−1の16SrDNAを、公知の方法により同定した結果、配列番号1に示す塩基配列であることが判った。
培地としてNutrient agar(Oxoid社製)を用い、30℃で24時間好気培養したJPCC SEP JP−1を用い、DNA抽出をInstaGene Matrix(BIO RAD社)のプロトコール、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をMicroSeq 500 16s rDNA Bacterial Identification PCR Kit(Applied Biosystems社)のプロトコール、サイクルシークエンスをMicroSeq 500 16s rDNA Bacterial Identification Sequencing Kit(Applied Biosystems社)のプロトコール、シークエンスをABI PRISM 3100 Genetic Analyzer System(Applied Biosystems社)のプロトコールに従ってそれぞれ行った。
解析ソフトウェアとしてAuto Assembler(Applied Biosystems社)、アポロン(株式会社テクノスルガ)を用い、得られた16SrDNAのN末端から約500番目までの塩基配列を、アポロンDB細菌基準株データベース(株式会社テクノスルガ)、国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)から取得した塩基配列情報と照合して、分子系統解析を行った。その結果得られた分子系統樹を図1に示す。なお、図1中、左下の線はスケールバーを示し、株名の末尾の「T」はその種の基準株(Type strain)であることを示す。
そして分子系統解析の結果、JPCC SEP JP−1は、アエロモナス パンクタタ(Aeromonas punctata)AY987728.1、アエロモナス エスピー(Aeromonas sp.)RK217215 AY987764.1、アエロモナス エスピー(Aeromonas sp.)M10 DQ200865.1と系統枝を形成した。しかし後記するように、これら微生物とは、セレン酸化合物還元能を有するなど生理学的性質に明らかな相違が認められることから、JPCC SEP JP−1は、アエロモナス属の新種と推測された。
JPCC SEP JP−2の同定は、前記JPCC SEP JP−1と同様に、株式会社テクノスルガに委託して、同様の方法で実施した。JPCC SEP JP−2の「形態的性質」を表6に、「培養的性質」を表7に、「生理学的性質」を表8に、「糖類からの酸生成/ガス産生」を表9に、「その他の生理学的性質」を表10にそれぞれ示す。
JPCC SEP JP−2の16SrDNAを、公知の方法により同定した結果、配列番号2に示す塩基配列であることが判った。
前記JPCC SEP JP−1の場合と同様に、JPCC SEP JP−2の分子系統解析を行った。その結果得られた分子系統樹を図1に示す。
そして分子系統解析の結果、JPCC SEP JP−2は、クレブシエラ ヴァリイコラF2R9 AJ783916.1とクレブシエラ エスピー(Klebsiela sp.)P2 AB114634.1が形成する系統枝、およびクレブシエラ エスピー(Klebsiela sp.)strain zmmo U31075.1とクレブシエラ エスピー(Klebsiela sp.)strain zmvsy U31076.1が形成する系統枝のいずれも外側に単独で系統枝を形成し、公知のクレブシエラ属の微生物とは、セレン酸化合物還元能を有するなど生理学的性質に明らかな相違が認められることから、JPCC SEP JP−2は、クレブシエラ属の新種と判断された。
JPCCY SEP−3の同定は、株式会社テクノスルガに委託して実施した。そして取得した検体を用いて、「形態的性質」、「培養的性質」、「生理学的性質」および「糖類からの酸生成/ガス産生」を確認した。その結果を表11に示す。そして、「塩基配列」の同定および系統解析を行った。
また、(5)グラム染色には、フェイバーG「ニッスイ」(日水製薬株式会社)を使用した。
また、形態観察には、光学顕微鏡BX50F4(オリンパス株式会社)を使用した。
JPCCY SEP−3の16SrDNAを、公知の方法により同定した結果、配列番号3に示す塩基配列であることが判った。
解析ソフトウェアとしてアポロン2.0(株式会社テクノスルガ・ラボ)を用い、得られた16SrDNA塩基配列を、アポロンDB−BA3.0(株式会社テクノスルガ・ラボ)、国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)から取得した塩基配列情報と照合して、分子系統解析を行った。その結果得られた分子系統樹を図2に示す。なお、図2中、左下の線はスケールバーを示し、株名の末尾の「T」はその種の基準株(Type strain)であることを示し、枝の分枝付近の数字はブートストラップ値を示す。
そして分子系統解析の結果、JPCCY SEP−3は、スルフロスピリラムが形成するクラスター内に含まれ、スルフロスピリラム カヴォレイと系統枝を形成した。JPCCY SEP−3の系統枝(分岐)の信頼性を示すブートストラップ値は、100%を示し、周囲に形成されるスルフロスピリラムの各種の系統枝も比較的高いブートストラップ値を示していることから、系統枝の安定性は高いと考えられた。これらの結果から、JPCCY SEP−3はスルフロスピリラムに含まれ、既知種ではスルフロスピリラム カヴォレイに最も近縁と考えられた。しかし、両者の16SrDNAの塩基配列は、完全には一致しておらず、系統枝からは両者が同種である可能性は低いと推察されたことから、JPCCY SEP−3は、スルフロスピリラム属の新種と判断された。
また、本発明のJPCC SEP JP−2は、平成19年3月23日付けで受託番号NITE P−346として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
また、本発明のJPCCY SEP−3は、平成20年6月4日付けで受託番号NITE P−582として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
本発明の第一の微生物は、アエロモナス属JPCC SEP JP−1株である。そして、本発明は、アエロモナス属JPCC SEP JP−1株が属する種に属する微生物、および16SrDNAの塩基配列が配列番号1に示す塩基配列と96%以上の相同性を有し、セレン酸化合物還元能を有するアエロモナス属に属する微生物を包含する。このような微生物は、アエロモナス属JPCC SEP JP−1株と同種の微生物であると考えられる。以下、このような微生物とアエロモナス属JPCC SEP JP−1株とをあわせて、第一の微生物群と言うことがある。
アエロモナス属の微生物では、亜セレン酸イオンを金属セレンへ還元する能力を有するアエロモナス サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)が知られている。しかし、その他には、アエロモナス属JPCC SEP JP−1株の近縁種はもとより、セレン酸化合物還元能を有するアエロモナス属の微生物はこれまで知られていなかった。そして、本発明の第一の微生物群は、特に亜セレン酸イオンを金属セレンへ還元する能力が高い。
クレブシエラ属の微生物では、セレン酸化合物還元能を有するものはこれまで知られていない。そして、本発明の第二の微生物群は、セレン酸イオンおよび亜セレン酸イオンのいずれをも金属セレンへ還元する能力を有し、セレン酸イオンを金属セレンへ還元する能力が、通常前記第一の微生物群よりも高い。
スルフロスピリラム属の微生物では、セレン酸化合物還元能を有するものとしてスルフロスピリラム バルネシイ(Sulfurospirillum barnesii)が知られている。しかし、その他には、スルフロスピリラム属JPCCY SEP−3株の近縁種はもとより、セレン酸化合物還元能を有するスルフロスピリラム属の微生物はこれまで知られていなかった。そして、本発明の第三の微生物群は、特にセレン酸イオンを金属セレンへ還元する能力が高く、通常前記第一および第二の微生物群よりも、その能力が高い。
本発明のセレン酸化合物還元製剤は、前記第一の微生物群、第二の微生物群および第三の微生物群からなる群から選択される一種以上の微生物を有効成分として含有するものである。なかでも、第一の微生物群から選択される一種以上の微生物、第二の微生物群から選択される一種以上の微生物および第三の微生物群から選択される一種以上の微生物を共に含有するものが好ましく、JPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3を含有するものが特に好ましい。
セレン酸化合物還元製剤は、本発明の微生物を一種単独で含有するものや、同一の微生物群の微生物を複数種類含有するものよりも、異なる微生物群の微生物を複数種類含有するものの方が、セレン酸化合物還元能が高い。
前記還元製剤が、異なる微生物群の微生物を複数種類含有する場合、これら微生物(例えば、第一の微生物群の微生物、第二の微生物群の微生物および第三の微生物群の微生物)の含有比率は、目的に応じて適宜選択できる。
本発明のセレン酸化合物の還元方法は、前記第一の微生物群、第二の微生物群および第三の微生物群からなる群から選択される一種以上の微生物を、セレン酸化合物共存下において培養する工程を有するものである。なかでも、第一の微生物群から選択される一種以上の微生物、第二の微生物群から選択される一種以上の微生物および第三の微生物群から選択される一種以上の微生物を共培養することが好ましく、JPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3を共培養することが特に好ましい。本発明の微生物を一種単独で培養する場合や、同一の微生物群の微生物を複数種類培養する場合よりも、異なる微生物群の微生物を複数種類共培養する方が、セレン酸化合物還元効率が高い。
異なる微生物群の微生物を複数種類共培養する場合、これら微生物(例えば、第一の微生物群の微生物、第二の微生物群の微生物および第三の微生物群の微生物)の含有比率は、前記セレン酸化合物還元製剤の場合と同様である。
セレン酸化合物を還元する際の、本発明の微生物の培養条件は特に限定されず、例えば、先に述べた微生物獲得時の培養条件を参考に培養すると良い。また、排水、土壌、汚泥、地下水、貯水池の水等の対象中に含まれるセレン酸化合物を還元する場合には、これら対象に、本発明の微生物の生育に必要な前記成分を適宜添加したものを培地とし、それ以外は先に述べた微生物獲得時の培養条件を参考に培養すると良い。
本発明のセレン酸化合物の除去方法は、前記第一の微生物群、第二の微生物群および第三の微生物群からな群から選択される一種以上の微生物を、セレン酸化合物共存下において培養する工程を有するものである。
本発明の微生物の植菌や培養は、セレン酸化合物の還元方法で述べたのと同様の条件で良い。
そして、セレン酸化合物除去の対象を含有する培地に本発明の微生物を適当量植菌し培養することで、該微生物中にセレン酸化合物が取り込まれつつ取り込まれたセレン酸化合物が金属セレンに還元されるので、これを例えば、ろ過等の公知の手法で除くことで、効果的に除去対象からセレン酸化合物を除去できる。
本発明の金属セレンの製造方法は、前記第一の微生物群、第二の微生物群および第三の微生物群からな群から選択される一種以上の微生物を、セレン酸化合物共存下において培養する工程と、得られた培養物を分離する工程とを有するものである。
微生物をセレン酸化合物共存下において培養する工程は、例えば、前記セレン酸化合物の除去方法で述べた方法で行えば良い。そして、セレン酸化合物の還元効率が高い方法を選択すれば、金属セレンの収率も高くできる。
(JPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3の獲得)
前記ME培地(pH6.5〜7.0)を121℃で10分間蒸気滅菌処理を行った。次いで、クリーンベンチ内において、180℃で20分間乾熱滅菌処理を行った容量30mlのバイアル瓶に、蒸気滅菌済みの前記ME培地を20ml加えた後、孔径0.22μmのフィルターを用いて濾過滅菌処理を行った10000ppmのセレン酸を50ppmの濃度となるように添加した。
次いで、奄美大島のマングローブ林の砂泥を添加し、ブチルゴム栓およびアルミキャップで蓋をして密閉した。密閉後、孔径0.22μmのフィルターで濾過滅菌処理したアルゴンガスを培地中に通気し、培地を脱気した
次いで、25℃で培養し、2〜7日の間で培養液が赤色に着色したバイアル瓶を選別した。選別したバイアル瓶から培養液を100μl抜き取り、前記滅菌済みME培地で100倍、1000倍、10000倍希釈し、上記のセレン酸を含むME培地の寒天プレートに塗布して微生物の培養を行った。
そして、最も生育の早いコロニーを選別し、ME培地の寒天プレート上で純化を行なった結果、JPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3が同時に得られた。
(JPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3を共培養した場合のセレン酸イオン除去活性の評価1)
実施例1と同様にして、乾熱滅菌処理済みの容量30mlのバイアル瓶中に、セレン酸50ppmを含む滅菌処理済みME培地を密閉し、孔径0.22μmのフィルターで濾過滅菌処理したアルゴンガスを培地中に通気して、培地を脱気した。
次いで、実施例1で得られたJPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3の混合菌体を、γ線滅菌処理済みの注射針付シリンジを用いて、脱気済みの培地に対して2容量%(0.4ml)植菌した。
次いで、バイアル瓶の気相部分を、孔径0.22μmのフィルターで濾過滅菌処理したアルゴンガスで置換し、嫌気性条件下において28℃で48時間培養することで、前培養液を得た。
植菌後、ガラス容器に天板で蓋をして、容器の気相部分を、孔径0.22μmのフィルターで濾過滅菌処理したアルゴンガスを用いて流量100ml/分で5分間置換し、嫌気性条件下において28℃で本培養を行った。
そして、原子吸光により、経時的に培地中の6価および4価のセレンの濃度を測定し、セレン酸除去活性を評価した。結果を図3に示す。図3の縦軸は、培地中の6価および4価のセレンの合計濃度を示し、横軸は、本培養の時間を示す。
なお参考までに、文献「Kashiwa M,Ike M,Mihara H,Esaki N,Fujita M.Removal of soluble selenium by a selenate−reducing bacterium Bacillus sp.SF−1.Biofactors.2001;14(1−4):261−5.」に記載の、バチルス属の微生物(対照株)の6価および4価のセレン除去活性データを、本実施例データとあわせて、図4に示す。図4のグラフは、これら微生物の6価および4価のセレン除去活性を示すグラフを、軸スケールを揃えて記載したものであり、縦軸は培地中の6価および4価のセレンの合計残存率を示し、横軸は本培養の時間を示す。
前記混合菌体および前記対照株は、同一条件下で培養を行うことが困難なので、同一条件下での6価および4価のセレン除去活性を比較することはできないが、図4のグラフはそれぞれの最良な除去活性を比較するのに十分である。図4から明らかなように、本発明の微生物からなる混合菌体は、前記対照株の1/4以下の時間で6価および4価のセレンを完全に除去できることが判る。
(JPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3を共培養した場合のセレン酸イオン除去活性の評価2)
実施例1と同様にして、乾熱滅菌処理済みの容量30mlのバイアル瓶中に、セレン酸30ppm、さらにJPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3を1×107cells/mlの濃度で含む滅菌処理済みME培地を30ml密閉し、培地のpHを5.0、5.5、6.2、7.0、7.6、8.2、9.0の7通りに調整し、これら培地を用いて25℃にて48時間培養を行った。そして、原子吸光により、経時的に培地中の6価および4価のセレンの濃度を測定し、セレン酸除去活性を評価した。結果を図5に示す。図5の縦軸は、培地中の6価および4価のセレンの合計除去率を示し、横軸は、培養時間を示す。
図5に示すように、pH6.2、7.0、7.6の場合に、除去率がほぼ100%となり、pH6.2、7.0の場合に除去速度が速く、特にpH6.2の場合に最も迅速に6価および4価のセレンを除去できることが確認された。
(JPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3を共培養した場合のセレン酸イオン除去活性の評価3)
培地のpHを6.2とし、培養温度を23、28、32、37、40、45、60℃の7通りとしたこと以外は、実施例3と同様にセレン酸除去活性を評価した。結果を図6に示す。
図6に示すように、28、32、37℃の場合に、除去率がほぼ100%となり、28、32℃の場合に除去速度が速く、特に28℃の場合に最も迅速に6価および4価のセレンを除去できることが確認された。
(JPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3を共培養した場合のセレン酸イオン除去活性の評価4)
炭素源として、ME培地中の乳酸に代わり、エタノール、メタノール、エタノール+メタノール、酢酸を添加した培地を用い、培地のpHを6.2、培養温度を28℃としたこと以外は、実施例3と同様にセレン酸除去活性を評価した。評価は、ME培地を用いた場合も同時に行った。結果を図7に示す。
図7に示すように、炭素源として乳酸、エタノールを用いた場合に、除去率が有意に高く、特に乳酸を用いた場合に最も高率で6価および4価のセレンを除去できることが確認された。
(JPCC SEP JP−1による金属セレンの製造)
pH6.2に調整した滅菌処理済みの前記ME培地30mlを、実施例1と同様にして乾熱滅菌処理済みの30ml容量のバイアル瓶に加え、JPCC SEP JP−1を植菌し、24時間純粋培養することで前培養を行った。
次いで、前記ME培地30mlを、滅菌処理済みの30ml容量のバイアル瓶に加え、さらにセレン酸イオン(6価のセレン)および亜セレン酸イオン(4価のセレン)の濃度が共に50ppmとなるようにこれらを加え、前記前培養液を2容量%植菌し、本培養を行った(n=3)。そして、本培養開始から48時間後のサンプルを、孔径0.22μmのフィルターでろ過し、フィルター上に回収されたものの内、6価および4価のセレンを原子吸光分光光度計により定量し、培養液中の6価および4価のセレンの濃度(平均値)を求め、下記式から金属セレンの回収率を算出した。結果を表12に示す。
(金属セレン回収率(%))=100−(培養液中のセレン濃度(ppm))/50(ppm)×100
(JPCC SEP JP−2による金属セレンの製造)
JPCC SEP JP−1に代わりJPCC SEP JP−2を用いたこと以外は、実施例6と同様に金属セレンの回収率を算出した。結果を表12に示す。
(JPCCY SEP−3による金属セレンの製造)
JPCC SEP JP−1に代わりJPCCY SEP−3を用いたこと以外は、実施例6と同様に金属セレンの回収率を算出した。結果を表12に示す。
(JPCC SEP JP−1およびJPCC SEP JP−2による金属セレンの製造)
JPCC SEP JP−1の前培養液を2容量%植菌する代わりに、JPCC SEP JP−1の前培養液およびJPCC SEP JP−2の前培養液をそれぞれ1容量%ずつ植菌したこと以外は、実施例6と同様に金属セレンの回収率を算出した。結果を表12に示す。
(JPCC SEP JP−1、JPCC SEP JP−2およびJPCCY SEP−3による金属セレンの製造)
JPCC SEP JP−1の前培養液を2容量%植菌する代わりに、JPCC SEP JP−1の前培養液、JPCC SEP JP−2の前培養液およびJPCCY SEP−3の前培養液を合計2容量%植菌したこと以外は、実施例6と同様に金属セレンの回収率を算出した。結果を表12に示す。
Claims (9)
- アエロモナス(Aeromonas)属JPCC SEP JP−1(NITE P−345)株、クレブシエラ(Klebsiela)属JPCC SEP JP−2(NITE P−346)株、およびスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP−3(NITE P−582)株を、セレン酸化合物共存下において共培養する工程を有するセレン酸化合物の還元方法。
- アエロモナス(Aeromonas)属JPCC SEP JP−1(NITE P−345)株、クレブシエラ(Klebsiela)属JPCC SEP JP−2(NITE P−346)株、およびスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP−3(NITE P−582)株を、セレン酸化合物共存下において共培養する工程を有するセレン酸化合物の除去方法。
- アエロモナス(Aeromonas)属JPCC SEP JP−1(NITE P−345)株、クレブシエラ(Klebsiela)属JPCC SEP JP−2(NITE P−346)株、およびスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP−3(NITE P−582)株を、セレン酸化合物共存下において共培養する工程と、得られた培養物を分離する工程とを有する金属セレンの製造方法。
- アエロモナス(Aeromonas)属JPCC SEP JP−1(NITE P−345)株。
- クレブシエラ(Klebsiela)属JPCC SEP JP−2(NITE P−346)株。
- 請求項4又は5に記載の微生物を有効成分とするセレン酸化合物還元製剤。
- 請求項4又は5に記載の微生物をセレン酸化合物共存下において培養する工程を有するセレン酸化合物の還元方法。
- 請求項4又は5に記載の微生物をセレン酸化合物共存下において培養する工程を有するセレン酸化合物の除去方法。
- 請求項4又は5に記載の微生物をセレン酸化合物共存下において培養する工程と、得られた培養物を分離する工程とを有する金属セレンの製造方法。
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