JP5608725B2 - 新規微生物、セレン酸化合物還元製剤、セレン酸化合物の還元方法、セレン酸化合物の除去方法、及び金属セレンの製造方法 - Google Patents

新規微生物、セレン酸化合物還元製剤、セレン酸化合物の還元方法、セレン酸化合物の除去方法、及び金属セレンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、新規微生物、セレン酸化合物還元製剤、セレン酸化合物の還元方法、セレン酸化合物の除去方法、及び金属セレンの製造方法に関する。
セレンは、半導体材料や感光性材料として有用であることが知られているほか、ガラスの着色剤、脱色剤としても利用されるなど、産業界において利用価値の高い元素である。
その一方で、セレンは人体にとって必須元素であり、微量の摂取が必要とされるが、必要量以上に摂取すると毒性を示すことが知られている。そこで、水質汚濁及び土壌汚染を防止するために、環境基準の指定項目となっている。
このような中、上記のような産業界においては、工場排水中にセレンが混入する可能性があり、また、セレンは石炭中にも微量含まれていることから、火力発電所等の排水にも混入する可能性があるため、このような排水中のセレンの除去は重要な課題となっている。
工場排水中などで問題となるセレンは、セレン(6価)の化合物であるセレン酸(HSeO)又はその塩、セレン(4価)の化合物である亜セレン酸(HSeO)又はその塩である。通常これらセレン酸化合物は、工場排水などの水溶液中では、セレン酸イオン(SeO 2−)の形態で、ごく一部は亜セレン酸(SeO 2−)イオンの形態で存在していると考えられる。これらセレン酸化合物は、還元されると0価の金属セレンとなる。
ところで、自然界の微生物には、これらセレンオキシアニオンを体内に取り込んで還元処理するものがあることが知られている。具体的には、特定の微生物をセレンオキシアニオンと栄養源の存在下で生育させると、微生物はこれらアニオンを体内に取り込み、生育と共にセレン酸イオンを亜セレン酸イオンに還元し、さらに亜セレン酸イオンを粒子状の金属セレンにまで還元するのである(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。この現象はバイオミネラリゼーションとして知られており、この現象を利用すれば、溶液中からセレンオキシアニオンを粒子化しながら除去できる。
特開平9−248595号公報
Applied and Environmental Microbiology,Vol.63,No.8,p3079−3084.
しかし、特許文献1及び非特許文献1に記載のものをはじめとする、従来のバイオミネラリゼーションによるセレンオキシアニオンの除去方法は、亜セレン酸イオンを金属セレンに還元する速度が遅いため、必ずしも除去能が十分ではないという問題点があった。そこで、セレンオキシアニオン等のセレン酸化合物をより効率的に除去できる方法の開発が望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、セレン酸化合物の還元能に優れる新規微生物、並びに該微生物を用いたセレン酸化合物還元製剤、セレン酸化合物の還元方法、セレン酸化合物の除去方法、及び金属セレンの製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は、タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7−1株(NITE P−1465)、及びクロストリジウム・アミロリティカム(Clostridium amylolyticum)JPCC Se7−2株(NITE P−1422)を、セレン酸化合物共存下において共培養する工程を有するセレン酸化合物の還元方法を提供する
また、本発明は、前記還元方法でセレン酸化合物を還元した後、タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7−1株(NITE P−1465)、及びクロストリジウム・アミロリティカム(Clostridium amylolyticum)JPCC Se7−2株(NITE P−1422)を、培養物から除去する工程を有するセレン酸化合物の除去方法を提供する。
また、本発明は、前記除去方法で除去した微生物から金属セレンを取り出す工程を有する金属セレンの製造方法を提供する。
また、本発明は、タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7−1株(NITE P−1465)、及びクロストリジウム・アミロリティカム(Clostridium amylolyticum)JPCC Se7−2株(NITE P−1422)を含有するセレン酸化合物還元製剤を提供する。
また、本発明は、タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7−1株(NITE P−1465)を提供する。
本発明によれば、セレン酸化合物の還元能に優れる新規微生物、並びに該微生物を用いたセレン酸化合物還元製剤、セレン酸化合物の還元方法、セレン酸化合物の除去方法、及び金属セレンの製造方法が提供される。
タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7−1株の16SrDNAについての分子系統解析の結果を示す分子系統樹である。 クロストリジウム・アミロリティカム(Clostridium amylolyticum)JPCC Se7−2株の16SrDNAについての分子系統解析の結果を示す分子系統樹である。
以下、本明細書において、「タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7−1株」を「Se7−1株」、「クロストリジウム・アミロリティカム(Clostridium amylolyticum)JPCC Se7−2株」を「Se7−2株」と、それぞれ略記することがある。
また、本明細書において「セレン酸化合物」とは、セレン酸(HSeO)、亜セレン酸(HSeO)及びこれらの塩並びにこれらのイオンを意味する。
<Se7−1株の取得>
Se7−1株の取得には、日本国内の火力発電所の生物処理槽から採取した活性汚泥をサンプルとして用いた。
活性汚泥からのSe7−1株の分離には、下記組成のME培地を使用した。
(ME培地の組成)
硝酸0.1g、乳酸0.5g、リン酸二水素カリウム0.5g、塩化アンモニウム0.2g、システイン0.05g、酵母エキス0.2g、蒸留水1L、ミネラル液4ml
なお、ミネラル液の組成は以下の通りである。
(ミネラル液の組成)
ニトリロ三酢酸1.8g、塩化マグネシウム・六水和物2.5g、塩化マンガン(II)・四水和物0.6g、塩化ナトリウム1.0g、塩化鉄(II)・四水和物0.136g、塩化コバルト(II)・六水和物0.1g、塩化カルシウム・二水和物0.13g、硫酸銅(II)・五水和物0.0146g、塩化亜鉛0.01g、ホウ酸(HBO)0.01g、塩化ニッケル(II)・六水和物0.01g、モリブテン(VI)酸二ナトリウム・二水和物0.01g、塩化銅(II)・二水和物0.01g、蒸留水1L
上記組成のME培地を、オートクレーブにより121℃で15分間滅菌処理を行った。
次いで、クリーンベンチ内において、33ml容積のバイアル瓶にこのME培地を30ml添加し、さらにセレン濃度が50ppmとなるように、このME培地にセレン酸溶液を添加し、活性汚泥を1%植菌した。
次いで、バイアル瓶に対してブチル栓、アルミキャップの順で蓋をし、37℃の恒温槽で、無菌操作系で2日間静置培養した。
次いで、上記組成に加えてさらに2%の寒天を含むME培地でシャーレを作製し、2日間静置培養後の前記ME培地の培養液をこのシャーレ上に塗付し、角型ジャー(三菱ガス化学社製)及びアネロパック・ケンキ(三菱ガス化学社製)を使用して嫌気的な条件を設定し、37℃の恒温槽で2日間静置培養して、シャーレ上で生育したコロニーからSe7−1株を得た。
<Se7−2株の取得>
Se7−2株の取得には、日本国内の火力発電所の生物処理槽から採取した活性汚泥をサンプルとして用いた。
活性汚泥からのSe7−2株の分離には、上記のSe7−1株の場合と同じ組成のME培地を使用した。
このME培地を、オートクレーブにより121℃で15分間滅菌処理を行った。
次いで、クリーンベンチ内において、33ml容積のバイアル瓶にこのME培地を30ml添加し、さらにセレン濃度が50ppmとなるように、このME培地にセレン酸溶液を添加し、活性汚泥を1%植菌した。
次いで、バイアル瓶に対してブチル栓、アルミキャップの順で蓋をし、37℃の恒温槽で、無菌操作系で2日間静置培養した。
次いで、2%の寒天をさらに含む下記組成の726培地でシャーレを作製し、2日間静置培養後の前記ME培地の培養液をこのシャーレ上に塗付し、角型ジャー(三菱ガス化学社製)及びアネロパック・ケンキ(三菱ガス化学社製)を使用して嫌気的な条件を設定し、37℃の恒温槽で2日間静置培養して、シャーレ上で生育したコロニーからSe7−2株を得た。
(726培地の組成)
酵母エキス:5g/l、ポリペプトン:5g/l、硫酸マグネシウム・七水和物:0.2g/l、リン酸二水素カリウム:2g/l、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物:1g/l、乳酸ナトリウム(70%):3.6g/l 、酢酸ナトリウム:1.4g/l
Se7−1株及びSe7−2株の生育の有無は、例えば、セレン酸化合物共存下で培養した場合、コロニーの赤色又はオレンジ色等の着色の有無で確認できる。この着色は、これら微生物の体内中の金属セレンに由来するものである。
<Se7−1株の同定>
Se7−1株の同定は、株式会社テクノスルガ・ラボに委託して実施し、取得した検体を用いて、形態観察及び生理・生化学試験、塩基配列の同定、帰属分類を行った。形態観察及び生理・生化学試験は、二段階(第一段階試験、第二段階試験)で行った。結果を以下に示す。
(第一段階試験)
光学顕微鏡を用いた形態観察と、BARROWらの方法(「Cowan and Steel’s Manual for the Identification of Medical Bacteria. 3rd edition. 1993, Cambridge University Press.」)に基づくカタラーゼ反応、オキシダーゼ反応、グルコースからの酸/ガス産生、グルコースの酸化/発酵(O/F)についての試験を行った。グラム染色はフェイバーG「ニッスイ」(日水製薬社製)を用いて行い、顕微鏡としては光学顕微鏡BX50F4(オリンパス社製)を用いた。結果を表1に示す。
(第二段階試験)
細菌同定キット「API20NE(bioMerieux,Lyon,France)」を用いて、生化学試験、資化性試験を行った。具体的には、寒天入りニュートリエント培地を用いて、Se7−1株を48時間培養した後、API20NEの標準の操作方法に従って、生理食塩水で菌液を調製し、各項目の試験を行った。結果を表2に示す。
さらに、追加試験として生化学試験、資化性試験を行った。結果を表3に示す。
R2A培地での生育試験は、R2A寒天培地を用いて、37℃で培養を行うことにより行った。生育(10、15、40℃)試験は、培地としてニュートリエント アガー(Nutrient agar)を用いて行った。カゼイン及びデンプンの加水分解試験、単一炭素源の利用試験は、M70培地(坂崎利一他、新細菌培地学講座、下I、第二版、近代出版(1995)参照)を用いて、37℃で培養することにより行った。
Figure 0005608725
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(塩基配列)
Se7−1株の16SrDNAを、公知の方法により同定した結果、配列番号1に示す塩基配列であることが判った。
解析ソフトウェアとしてアポロン2.0(テクノスルガ・ラボ社製)を用い、得られた16SrDNA塩基配列を、アポロンDB−BA7.0(テクノスルガ・ラボ社製)、国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)から取得した塩基配列情報と照合して、分子系統解析を行った。
BLAST(「ALTSCHUL,(S.F.),MADDEN,(T.F.),SCHAFFER,(A.A.),ZHANG,(J.),ZHANG,(Z.),MILLER,(W.),and LIPMAN,(D.J.),Nucleic Acids Research,1997,25:3389−3402.」参照)を用いたアポロンDB−BA7.0に対する相同性検索の結果、Se7−1株の16SrDNAの塩基配列は、タウエラ(Thauera)属の16SrDNAの塩基配列に対し高い相同性を示し、タウエラ・フェニルアセチカ(Thauera phenylacetica)B4P株及びタウエラ・アミノアロマティカ(Thauera aminoaromatica)S2株の16SrDNAの塩基配列に対し、相同率98.6%の最も高い相同性を示した。国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)に対する相同性検索の結果においても、Se7−1株の16SrDNAの塩基配列は、タウエラ属の16SrDNAの塩基配列に対し高い相同性を示したが、基準株に由来する16SrDNAの塩基配列は検索されなかった。
Se7−1株とアポロンDB−BA7.0に対する相同性検索上位15株の16SrDNAの塩基配列に基づく簡易分子系統解析を行った。このときの解析の結果を示す簡易分子系統樹を図1に示す。図1中、左下の線はスケールバーを示し、系統枝の分岐に位置する数字はブートストラップ値を示し、株名の末尾の「T」はその種の基準株(Type strain)であることを示す。その結果、Se7−1株は、タウエラ属の種で形成されるクラスター内に含まれた。また、Se7−1株は、タウエラ属のクラスターにおいて、いずれの既知種とも異なり、独立した分子系統学的位置を示した。
以上より、Se7−1株は、タウエラ属に帰属すると考えられた。一方、一般的に16SrDNAの塩基配列に基づく解析では、その菌株と比較した菌株との相同率が98.7%以上を示す場合、同種である可能性を考慮する必要がある(「STACKEBRANDT(E.)and EBERS(J.): Taxonomic parameters revisited: tarnished gold standards. Microbiol Today,2006,33,152−155.」参照)が、Se7−1株に98.7%以上の相同性を示す既知種の基準株に由来する16SrDNAの塩基配列は、検索されなかった。また、上記の簡易分子系統樹において、Se7−1株は、タウエラ属のいずれの既知種とも独立した分子系統学的位置を示した。よって、16SrDNAの塩基配列の解析結果から、Se7−1株は、種レベルでの帰属分類群を推定することができず、タウエラ属の新種と推定された。
一方、上記の形態観察及び生理・生化学試験の第一段階試験の結果、Se7−1株は、運動性を有するグラム陰性桿菌で、好気条件下でのセレン酸ナトリウムを含むME寒天培地では、コロニーが金属セレンに由来すると考えられるオレンジ色を呈し、普通寒天(Nutrient agar)培地、及びR2A寒天培地では、金属セレンの影響を受けず、コロニーが淡黄色を呈した。また、カタラーゼ反応及びオキシダーゼ反応は、ともに陽性を示した。
一方、細菌同定キット「API20NE」を用いた第二段階試験の結果、Se7−1株はオキシダーゼ活性を示したが、その他の項目では反応を示さなかった。そして、追加試験の結果、Se7−1株は、R2A寒天培地で生育し、10℃で生育せず、15℃及び40℃で生育し、カゼイン及びデンプンを分解せず、グルコースを資化し、その他の基質を資化しなかった。これらの性状は、Se7−1株がタウエラ属に帰属すると推定した16SrDNAの塩基配列の解析結果を支持したが、Se7−1株の性状と一致する既知種は見当たらなかった。
以上のように、16SrDNAの塩基配列の解析結果と、生理・生化学(性状)試験の結果は、共にSe7−1株のタウエラ属への帰属を支持するものの、Se7−1株は、タウエラ属のいずれの既知種とも異なることが示唆され、タウエラ属の新種と推定された。
なお、表2及び3から明らかなように、例えば、グルコースについては資化性(反応性)が一方では陽性となり、他方では陰性となるなど、異なる結果を示したが、これは、Se7−1株が、培地の種類に応じて資化性が変化することを示唆している。例えば、硝酸塩還元も、表2では陰性となっているが、本発明者らは、異なる培地を用いた場合には陽性となることを確認している。例えば、以下のとおりである。
すなわち、以下に示す組成のME培地をオートクレーブにより121℃で15分間滅菌処理を行った後、クリーンベンチ内において、33ml容積のバイアル瓶にこのME培地を30ml添加し、ここにSe7−1株を、植菌量が1.0×10cells/ml程度となるように植菌した。次いで、バイアル瓶に対してブチル栓、アルミキャップの順で蓋をし、37℃の恒温槽で静置培養した後、東ソー社製イオンクロマトグラフを用いて、硝酸濃度を定量したところ、Se7−1株が硝酸還元能を有することを確認した。
(ME培地の組成)
硝酸0.1g、乳酸0.5g、リン酸二水素カリウム0.5g、塩化アンモニウム0.2g、システイン0.05g、酵母エキス0.2g、蒸留水1L、ミネラル液4ml
なお、ミネラル液の組成は以下の通りである。
(ミネラル液の組成)
ニトリロ三酢酸1.8g、塩化マグネシウム・六水和物2.5g、塩化マンガン(II)・四水和物0.6g、塩化ナトリウム1.0g、塩化鉄(II)・四水和物0.136g、塩化コバルト(II)・六水和物0.1g、塩化カルシウム・二水和物0.13g、硫酸銅(II)・五水和物0.0146g、塩化亜鉛0.01g、ホウ酸(HBO)0.01g、塩化ニッケル(II)・六水和物0.01g、モリブテン(VI)酸二ナトリウム・二水和物0.01g、塩化銅(II)・二水和物0.01g、蒸留水1L
本発明者らは、別途検討の結果、Se7−1株は通常、嫌気条件下でも良好に生育することを確認している。
<Se7−2株の同定>
Se7−2株の同定は、株式会社テクノスルガ・ラボに委託して実施し、取得した検体を用いて、形態観察及び生理・生化学試験、塩基配列の同定、帰属分類を行った。形態観察及び生理・生化学試験は、二段階(第一段階試験、第二段階試験)で行った。これら試験は、上記のSe7−1株の場合と同様の方法で行った。ただし、第一段階試験では、ME寒天培地に代えて726培地を用いた。また、第二段階試験では、細菌同定キット「API20NE」に代えて、細菌同定キット「API20A(bioMerieux,Lyon,France)」を用いた。具体的には、寒天入り726培地を用いて、Se7−2株を48時間培養した後、API20Aの標準の操作方法に従って、生理食塩水で菌液を調製し、各項目の試験を行った。また、追加試験としては、リトマスミルク反応のみ行った。第一段階試験の結果を表4に、第二段階試験の結果を表5に、それぞれ示す。
Figure 0005608725
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なお、Se7−2株は、追加試験のリトマスミルク反応で凝固した。
(塩基配列)
Se7−2株の16SrDNAを、公知の方法により同定した結果、配列番号2に示す塩基配列であることが判った。
解析ソフトウェアとしてアポロン2.0(テクノスルガ・ラボ社製)を用い、得られた16SrDNA塩基配列を、アポロンDB−BA7.0(テクノスルガ・ラボ社製)、国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)から取得した塩基配列情報と照合して、分子系統解析を行った。
BLAST(「ALTSCHUL,(S.F.),MADDEN,(T.F.),SCHAFFER,(A.A.),ZHANG,(J.),ZHANG,(Z.),MILLER,(W.),and LIPMAN,(D.J.),Nucleic Acids Research,1997,25:3389−3402.」参照)を用いたアポロンDB−BA7.0に対する相同性検索の結果、Se7−2株の16SrDNAの塩基配列は、クロストリジウム・アミロリティカム(Clostridium amylolyticum)SW408株の16SrDNAの塩基配列に対し、相同率100%の最も高い相同性を示した。国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)に対する相同性検索の結果においても、Se7−2株の16SrDNAの塩基配列は、クロストリジウム属の16SrDNAの塩基配列に対し高い相同性を示し、基準株では、クロストリジウム・アミロリティカムSW408株の16SrDNAの塩基配列に対し、相同率100%の高い相同性を示した。
Se7−2株とアポロンDB−BA7.0に対する相同性検索上位10株の16SrDNAの塩基配列に基づく簡易分子系統解析を行った。このときの解析の結果を示す簡易分子系統樹を図2に示す。図2中、左下の線はスケールバーを示し、系統枝の分岐に位置する数字はブートストラップ値を示し、株名の末尾の「T」はその種の基準株(Type strain)であることを示す。その結果、Se7−2株は、クロストリジウム属の種で形成されるクラスター内に含まれた。また、Se7−2株は、クロストリジウム・アミロリティカムとクラスターを形成し、両者は同一の分子系統学的位置を示した。
以上より、Se7−2株は、クロストリジウム属に含まれ、クロストリジウム・アミロリティカムに帰属する可能性が高いと考えられた。
一方、上記の形態観察及び生理・生化学試験の第一段階試験の結果、Se7−2株は、運動性を有するグラム陽性桿菌で、嫌気条件下で生育し、芽胞の形成が確認されず、カタラーゼ反応及びオキシダーゼ反応は、ともに陰性を示した。
また、細菌同定キット「API20A」を用いた第二段階試験の結果、Se7−2株はインドールを産生せず、ウレアーゼ活性を示さず、グルコース、ラクトース、サッカロース等を発酵し、D−マンニトール、D−キシロース等を発酵せず、ゼラチンを加水分解せず、エスクリンを加水分解した。また、追加試験の結果、Se7−2株はミルクを凝固させた。これらの性状は、16SrDNAの塩基配列の解析結果において帰属が示唆されたクロストリジウム・アミロリティカムの性状に一致する点が多かった。特に、多くのクロストリジウム属は、芽胞を形成することが属の特徴として知られているのに対し、第一段階試験においてSe7−2株の芽胞形成が確認されない点は、クロストリジウム・アミロリティカムの性状と一致した。これに対して、Se7−2株がミルクを凝固させる点は、クロストリジウム・アミロリティカムの性状とは異なっていた。そこで、Se7−2株は、クロストリジウム・アミロリティカムの株レベルで新規の微生物である可能性を示唆していた。
生理・生化学試験の結果は、16SrDNAの塩基配列の解析結果を支持するものと考えられた。
以上のように、16SrDNAの塩基配列の解析結果と、生理・生化学(性状)試験の結果は、共にSe7−2株のクロストリジウム・アミロリティカムへの帰属を支持しており、Se7−2株は、クロストリジウム・アミロリティカムと推定された。
なお、本発明者らは、別途検討の結果、Se7−2株は、好気条件下でも生育することを確認している。一般的にクロストリジウム属の微生物は、偏性嫌気性であり、好気条件下では生育しないものと考えられているが、クロストリジウム属の微生物で酸素耐性を有する種の存在が報告されており(「International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology(2004),54,2043−2047」参照)、Se7−2株もこのような酸素耐性を有する数少ないものの一つであると考えられる。
Se7−1株は、2012年11月16日付けで、受託番号NITE P−1465として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
また、Se7−2株は、2012年10月2日付けで、受託番号NITE P−1422として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
<セレン酸化合物の還元方法>
本発明に係るセレン酸化合物の還元方法は、Se7−1株が属する種に属する微生物(Se7−1株、Se7−1株以外のSe7−1株と同種の微生物)、及びクロストリジウム・アミロリティカムに属する微生物(Se7−2株、Se7−2株以外のSe7−2株と同種の微生物)を、セレン酸化合物共存下において共培養する工程を有する。
以下、「Se7−1株が属する種に属する微生物」を「第一の微生物」、「クロストリジウム・アミロリティカムに属する微生物」を「第二の微生物」と、それぞれ略記することがある。
前記共培養する工程は、例えば、セレン酸化合物の除去対象である培地へ、後述するセレン酸化合物還元製剤を添加するなど、第一の微生物及び第二の微生物を植菌し、これら微生物を共培養することで行うことができる。
なお、本明細書において、「微生物を共培養する」とは、異なる種類の微生物を、これら微生物が混在した状態で同一の培地中で共に培養することを意味する。
Se7−1株は、セレン酸化合物の還元能を有し、特に、セレン酸、セレン酸塩又はセレン酸イオン(以下、これらを包括して「6価のセレン」と略記することがある)を亜セレン酸、亜セレン酸塩又は亜セレン酸イオン(以下、これらを包括して「4価のセレン」と略記することがある)へ還元する能力が高い。Se7−1株と分類学的性質が類似する、Se7−1株以外のSe7−1株と同種の微生物も、同様の性質を有すると考えられる。
また、Se7−2株は、セレン酸化合物の還元能を有し、特に、亜セレン酸、亜セレン酸塩又は亜セレン酸イオンを金属セレン(以下、「0価のセレン」と記載することがある)へ還元する能力が高い。Se7−2株と分類学的性質が類似する、Se7−2株以外のSe7−2株と同種の微生物も、同様の性質を有すると考えられる。
本発明は、これらの性質を利用したものであり、Se7−1株等の第一の微生物、及びSe7−2株等の第二の微生物を組み合わせることで、上記のセレン酸化合物を効率的に金属セレンにまで還元するものである。
Se7−1株はタウエラ属の新種の微生物であり、Se7−2株と同属であるクロストリジウム属の微生物でセレン酸化合物の還元能を有する種としては、これまでに特定されたものがない。したがって、第一の微生物及び第二の微生物の組み合わせを選択することにより、セレン酸化合物の還元を効率的に行うことができるという本発明の効果は、全く意外なものであるといえる。
第一の微生物は、6価のセレンを4価のセレンへ還元する能力を有していればよく、4価のセレンを0価のセレンへ還元する能力を有していてもよい。そして、第一の微生物は、4価のセレンが存在せず、6価のセレンが存在する培地において単独で培養したときに、下記式(I)で算出される6価のセレンの除去率が、85%以上であるものが好ましく、90%以上であるものがより好ましい。そして、このときの培養時間は、60〜84時間であることが好ましい。
{[培養開始前における培地中の6価のセレンの濃度(ppm)]−[培養後における培地中の6価のセレンの濃度(ppm)]}/[培養開始前における培地中の6価のセレンの濃度(ppm)]×100 ・・・・(I)
第二の微生物は、4価のセレンを0価のセレンへ還元する能力を有していればよく、6価のセレンを4価のセレンへ還元する能力を有していてもよい。そして、第二の微生物は、6価のセレンが存在せず、4価のセレンが存在する培地において単独で培養したときに、下記式(II)で算出される4価のセレンの除去率が、50%以上であるものが好ましく、60%以上であるものがより好ましい。そして、このときの培養時間は、60〜84時間であることが好ましい。
{[培養開始前における培地中の4価のセレンの濃度(ppm)]−[培養後における培地中の4価のセレンの濃度(ppm)]}/[培養開始前における培地中の4価のセレンの濃度(ppm)]×100 ・・・・(II)
共培養する第一の微生物及び第二の微生物は、それぞれ一種のみでもよいし、二種以上でもよい。
共培養の条件は、特に限定されず、第一の微生物及び第二の微生物が共に良好に生育するように、適宜調節すればよい。通常は、以下のように設定することが好ましい。
培地は、例えば、排水、土壌、汚泥、地下水、貯水池の水等の、セレン酸化合物の還元対象物自体でもよいし、前記還元対象物に第一の微生物及び第二の微生物の少なくとも一方の生育に有用な成分を適宜添加したものでもよく、Se7−1株又はSe7−2株の取得で用いた前記培地に、前記還元対象物を添加したものでもよい。
共培養を行う培地中のセレン酸化合物の濃度は、目的に応じて任意に設定できるが、0.1〜100ppmであることが好ましく、0.5〜50ppmであることがより好ましい。なお、本明細書において、濃度単位「ppm」は、特に断りの無い限り、質量比を意味するものとする。
共培養時の温度は、15〜40℃であることが好ましい。
共培養の時間は、培地中のセレン酸化合物の濃度、培地への第一の微生物及び第二の微生物の総植菌量等を考慮して適宜調節すればよく、例えば、10分〜120時間とすることが好ましい。
共培養時の、培地への第一の微生物及び第二の微生物の総植菌量は、培地中のセレン酸化合物の濃度等を考慮して適宜調節すればよく、特に限定されないが、例えば、培地中における第一の微生物及び第二の微生物の合計濃度が、セレン酸化合物1ppmあたり1.0×10〜1.0×10cells/mlとなるように調節することが好ましい。
そして、培地中における第一の微生物及び第二の微生物の数の比([第一の微生物の数]:[第二の微生物の数])は、80:20〜20:80であることが好ましく、40:60〜60:40であることがより好ましい。
共培養を嫌気条件下及び好気条件下のいずれで行うかは、併用する微生物の組合せを考慮して選択すればよい。例えば、Se7−1株は、通常、嫌気条件下で良好に生育するが、培地の種類を選択することで、好気条件下でも良好に生育する。そして、Se7−2株は、通常、嫌気条件下で良好に生育する。したがって、これら二種を併用する場合には、嫌気条件下で共培養することが好ましい。
第一の微生物及び第二の微生物は、本培養である共培養の前に前培養したものが好ましい。そして、前培養においては、第一の微生物及び第二の微生物をそれぞれ別々に培養してもよいが、第一の微生物及び第二の微生物を共培養することが好ましい。前培養においても共培養することで、本培養でのセレン酸化合物の還元能がさらに向上する。その理由は定かではないが、前培養においても共培養することで、第一の微生物及び第二の微生物が本培養でより良好に生育すると推測される。
なお、本明細書においては、特に断りの無い限り、「共培養」とは、目的とするセレン酸化合物の還元を行う本培養時のものを意味するものとする。
前培養では、本培養の場合と同様の培地を用いることができるが、セレン酸化合物は必ずしも必要ではない。そして、培地以外は、上記の本培養の場合と同様の条件で前培養を行うことができる。
本発明においては、第一の微生物及び第二の微生物以外に、その他の微生物を共培養してもよい。
前記その他の微生物は、特に限定されないが、セレン酸、セレン酸塩又はセレン酸イオン(6価のセレン)を亜セレン酸、亜セレン酸塩又は亜セレン酸イオン(4価のセレン)へ還元する能力を有するもの、及び亜セレン酸、亜セレン酸塩又は亜セレン酸イオンを金属セレン(0価のセレン)へ還元する能力を有するもの、の少なくとも一方であることが好ましい。
<セレン酸化合物還元製剤>
本発明に係るセレン酸化合物還元製剤は、前記第一の微生物及び第二の微生物を含有するものである。
前記還元製剤が含有する第一の微生物及び第二の微生物は、それぞれ一種のみでもよいし、二種以上でもよい。
前記還元製剤中の第一の微生物及び第二の微生物の数の比([第一の微生物の数]:[第二の微生物の数])は、80:20〜20:80であることが好ましく、40:60〜60:40であることがより好ましい。
前記還元製剤としては、第二の微生物非共存下で第一の微生物を培養して得られた培養物をさらにろ過して得られたろ過物と、第一の微生物非共存下で第二の微生物を培養して得られた培養物をさらにろ過して得られたろ過物と、を混合して得られたろ過混合物;前記ろ過混合物の乾燥物;第一の微生物及び第二の微生物を共培養して得られた培養物をさらにろ過して得られた共培養ろ過物;前記共培養ろ過物の乾燥物;第二の微生物非共存下で培養し、精製処理して得られた第一の微生物と、第一の微生物非共存下で培養し、精製処理して得られた第二の微生物と、を混合して得られた単独培養微生物の混合物;共培養し、精製処理して得られた第一の微生物及び第二の微生物の共培養微生物等が例示できる。
そして、これら還元製剤は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて各種添加剤を含有してもよい。
さらに第一の微生物及び第二の微生物を、例えば、寒天、ゲランガム等の天然物高分子ゲル;アクリルアミド;紫外線硬化樹脂等の高分子樹脂;炭素繊維、中空子膜、不織布等の繊維等に固定化して用いてもよい。固定化は内包及び表面固定のいずれでもよい。
<セレン酸化合物の除去方法>
本発明に係るセレン酸化合物の除去方法は、前記還元方法でセレン酸化合物を還元した後、前記第一の微生物及び第二の微生物を、培養物から除去する工程を有する。
前記還元方法により、培地中のセレン酸化合物が第一の微生物及び第二の微生物に取り込まれつつ、取り込まれたセレン酸化合物が還元されるので、次いでこれら微生物を培養物から除去することで、除去対象物から効率的にセレン酸化合物を除去できる。
第一の微生物及び第二の微生物は、他の成分と共に培養物から除去してもよい。
第一の微生物及び第二の微生物は、例えば、フィルターを用いて培養物をろ過することで固形分を分離する方法、培養物を遠心分離することで固形分を分離する方法等により、単独で、又は他の成分と共に、固形分(ろ過物)として培養物から除去できる。
<金属セレンの製造方法>
本発明に係る金属セレンの製造方法は、前記除去方法で除去した微生物から金属セレンを取り出す工程を有する。
前記除去方法により除去された、第一の微生物及び第二の微生物のいずれかの微生物は、その体内に金属セレンを有しているので、この金属セレンを体内から回収することで、金属セレンが得られる。
金属セレンの回収方法は、金属セレンが反応しない方法であれば特に限定されず、微生物の破壊を伴う公知の方法が例示でき、好ましい方法として、微生物を熱分解させた後、金属セレンを回収する方法が例示できる。微生物は主として有機物から構成され、有機物は加熱によってCOにまで分解して、残渣が生じるので、この残渣の中から金属セレンを回収することが可能となる。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1〜4、比較例1〜11]
(セレン酸イオンの還元)
以下に示す四種の微生物を、それぞれ一種を単独で培養するか、又は二〜四種を組み合わせて共培養することで、培地中のセレン酸イオンの還元を試みた。
・Se7−1株(表中、略号「T」で示す。)
・Se7−2株(表中、略号「C」で示す。)
・アエロモナス(Aeromonas)属JPCC SEP JP−1株(NITE BP−345)(以下、「SEP JP−1株」と略記することがある。また、表中、略号「A」で示す。)
・クレブシエラ(Klebsiela)属JPCC SEP JP−2株(NITE BP−346)(以下、「SEP JP−2株」と略記することがある。また、表中、略号「K」で示す。)
なお、SEP JP−1株は、平成19年3月23日付けで、受託番号NITE−BP345として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
また、SEP JP−2株は、平成19年3月23日付けで、受託番号NITE−BP346として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
SEP JP−1株及びSEP JP−2株は、いずれもセレン酸イオンの還元能及び亜セレン酸イオンの還元能を有し、SEP JP−1株は、亜セレン酸イオンの還元能の方が高い。
微生物はいずれも前培養したものを用いた。具体的には、Se7−1株はME培地を使用し、Se7−2株は726培地を使用し、SEP JP−1株はニュートリエント培地を使用し、SEP JP−2株は726培地を使用して、それぞれの培地中にセレン酸イオンを含まないこと以外は、後述するセレン酸イオンの還元時と同じ培養条件で、それぞれ前培養した。
セレン酸イオンの還元は、以下のように試みた。
塩素を1255ppm、カルシウムを68ppm、硫酸を7397ppm、ナトリウムを3349ppm、セレン酸イオンを2ppm、乳酸を6ppmの濃度でそれぞれ含む培地を調製し、33ml容積のバイアル瓶にこの培地を30ml添加した。また、上記の微生物を含む前培養液の濁度をそれぞれ測定し、この前培養液を前記バイアル瓶中の培地に添加して、得られた本培養液の濁度が前培養液の濁度と同程度の値となるように植菌した。
次いで、植菌後の培地上の気相部分を窒素ガスで置換して嫌気条件としたバイアル瓶に対して、ブチル栓、アルミキャップの順で蓋をし、37℃の恒温槽で72時間静置培養した。
培養終了後、島津製作所社製の原子吸光分光光度計を用いて、原子吸光法により培地中の6価のセレン(SeO 2−)及び4価のセレン(SeO 2−)の濃度を測定した。そして、このときの6価のセレンの濃度測定値をx、4価のセレンの濃度測定値をy、6価のセレンの濃度測定値及び4価のセレンの濃度測定値の合計をz(=x+y)として、6価のセレンの除去率Xを下記式(i)により算出し、4価のセレンの除去率Yを下記式(ii)により算出し、6価のセレン及び4価のセレンの合計除去率Zを下記式(iii)により算出した。結果を表6に示す。なお、x及びzがそれぞれ2を越えた場合には、X及びZはそれぞれ「0%」として表6に記載し、xが2を越えた場合には、Yは算出不能のため「−」として表6に記載した。表中、x、y又はzで「2」を超えている場合、その値は、微小な測定誤差を含んでいるためにそのような値となっているのであり、実質的に「2」であると見做すことができる。
X(%)={2−x(ppm)}/2×100 ・・・・(i)
Y(%)=[{2−x(ppm)}−y(ppm)]/{2−x(ppm)}×100 ・・・・(ii)
Z(%)={2−z(ppm)}/2×100 ・・・・(iii)
Figure 0005608725
上記結果から明らかなように、Se7−1株(T)及びSe7−2株(C)を共培養した実施例1では、セレン酸イオン及び亜セレン酸イオンの還元能がいずれも高く、6価のセレン及び4価のセレンの合計除去率Zが高かった。そして、Se7−1株(T)及びSe7−2株(C)以外に、さらに、SEP JP−1株(A)及びSEP JP−2株(K)の少なくとも一方を共培養した実施例2〜4でも、同様に、セレン酸イオン及び亜セレン酸イオンの還元能がいずれも高く、6価のセレン及び4価のセレンの合計除去率Zが高かった。このように、共培養する微生物として、Se7−1株(T)及びSe7−2株(C)を含有してさえいれば、さらに他の微生物を含有していても、セレン酸化合物を効率的に金属セレンにまで還元できることを確認できた。
これに対して、Se7−1株(T)を単独で培養した比較例4では、セレン酸イオンの還元能が高かったが、亜セレン酸イオンの還元能が低く、6価のセレン及び4価のセレンの合計除去率Zが低かった。亜セレン酸イオンは、培養を延長すれば還元が進行すると考えられるが、この時点では還元が不十分であった。
また、Se7−2株(C)を単独で培養した比較例3では、セレン酸イオンの還元能が低く、亜セレン酸イオンの還元能を確認することはできず、6価のセレン及び4価のセレンの合計除去率Zが低かった。この場合も、セレン酸イオンは、培養を延長すれば還元が進行すると考えられるが、この時点では還元が不十分であった。
そして、Se7−1株(T)及びSe7−2株(C)を共培養していないその他の比較例でも、セレン酸イオンの還元能及び亜セレン酸イオンの還元能の少なくとも一方が低く、6価のセレン及び4価のセレンの合計除去率Zが低かった。比較例7、9及び11は、セレン酸イオンの還元能が高かったが、これは、比較例4に示すように、セレン酸イオンの還元能が高いSe7−1株(T)を培養したことによるものと推測される。さらに、比較例7、9及び11は、亜セレン酸イオンの還元能が比較的高かったが、これは、亜セレン酸イオンの還元能を有する、SEP JP−1株(A)及びSEP JP−2株(K)の少なくとも一方を培養したことによるものと推測される。
このように、セレン酸化合物の還元能を有する二種以上の微生物を共培養した場合には、Se7−1株(T)及びSe7−2株(C)を共培養した場合のみ、6価のセレン及び4価のセレンの合計除去率Zが特異的に高かった。
[実施例5〜8、比較例12〜22]
(亜セレン酸イオンの還元)
セレン酸イオンに代えて亜セレン酸イオンを2ppmの濃度で含む前記培地を用いたこと以外は、実施例1〜4、比較例1〜11と同様に、培地中の亜セレン酸イオンの還元を試みた。
そして、このときの4価のセレンの濃度測定値をy’として、4価のセレンの除去率Y’を下記式(iv)により算出した。結果を表7に示す。なお、y’が2を越えた場合には、Y’は「0%」として表7に記載した。
Y’(%)={2−y’(ppm)}/2×100 ・・・・(iv)
Figure 0005608725
上記結果から明らかなように、Se7−1株(T)及びSe7−2株(C)を共培養した実施例5では、亜セレン酸イオンの還元能が高く、4価のセレンの除去率Y’が高かった。そして、Se7−1株(T)及びSe7−2株(C)以外に、さらに、SEP JP−1株(A)及びSEP JP−2株(K)の少なくとも一方を共培養した実施例6〜8でも、同様に、亜セレン酸イオンの還元能が高く、4価のセレンの除去率Y’が高かった。このように、共培養する微生物として、Se7−1株(T)及びSe7−2株(C)を含有してさえいれば、さらに他の微生物を含有していても、亜セレン酸イオンを効率的に金属セレンにまで還元できることを確認できた。
これに対して、Se7−1株(T)を単独で培養した比較例15では、亜セレン酸イオンを還元できず、上記の比較例4の結果と整合していた。
また、Se7−2株(C)を単独で培養した比較例14では、亜セレン酸イオンの還元能が高かったが、Se7−1株(T)及びSe7−2株(C)を共培養した場合よりも低かった。
このように、実施例5〜8と、比較例14及び15との結果から、亜セレン酸イオンの還元能を有するSe7−2株(C)は、単独で培養した場合よりも、亜セレン酸イオンの還元能が低いSe7−1株(T)と共培養した方が、亜セレン酸イオンの還元能が顕著に高くなることを確認できた。これは、亜セレン酸イオンの還元能を有するSe7−2株(C)を、このSe7−2株(C)よりも亜セレン酸イオンの還元能が顕著に低いSe7−1株(T)と共培養することにより、亜セレン酸イオンの還元能が顕著に向上するという相乗効果を発現することを意味しており、かかる効果は全く意外なものであるといえる。
Se7−1株(T)及びSe7−2株(C)を共培養していないその他の比較例でも、亜セレン酸イオンの還元能が低く、4価のセレンの除去率Y’が低かった。比較例17、21及び22は、亜セレン酸イオンの還元能が比較的高かったが、これは、亜セレン酸イオンの還元能を有する、Se7−2株(C)、SEP JP−1株(A)及びSEP JP−2株(K)のうち、二種以上を共培養したことによるものと推測される。
このように、セレン酸化合物の還元能を有する二種以上の微生物を共培養した場合には、Se7−1株(T)及びSe7−2株(C)を共培養した場合のみ、4価のセレンの除去率Y’が特異的に高かった。
本発明は、排水、土壌及び汚泥中等のセレン酸化合物の除去に利用可能である。

Claims (5)

  1. タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7−1株(NITE P−1465)、及びクロストリジウム・アミロリティカム(Clostridium amylolyticum)JPCC Se7−2株(NITE P−1422)を、セレン酸化合物共存下において共培養する工程を有するセレン酸化合物の還元方法。
  2. 請求項に記載の還元方法でセレン酸化合物を還元した後、タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7−1株(NITE P−1465)、及びクロストリジウム・アミロリティカム(Clostridium amylolyticum)JPCC Se7−2株(NITE P−1422)を、培養物から除去する工程を有するセレン酸化合物の除去方法。
  3. 請求項に記載の除去方法で除去した微生物から金属セレンを取り出す工程を有する金属セレンの製造方法。
  4. タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7−1株(NITE P−1465)、及びクロストリジウム・アミロリティカム(Clostridium amylolyticum)JPCC Se7−2株(NITE P−1422)を含有するセレン酸化合物還元製剤。
  5. タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7−1株(NITE P−1465)。
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