JP7018772B2 - セレン酸化合物の還元方法、セレン酸化合物の除去方法、金属セレンの製造方法、セレン酸化合物還元製剤、硝酸化合物の還元方法、硝酸化合物の除去方法、窒素ガスの製造方法、硝酸化合物還元製剤、排水処理装置及び排水処理方法 - Google Patents
セレン酸化合物の還元方法、セレン酸化合物の除去方法、金属セレンの製造方法、セレン酸化合物還元製剤、硝酸化合物の還元方法、硝酸化合物の除去方法、窒素ガスの製造方法、硝酸化合物還元製剤、排水処理装置及び排水処理方法 Download PDFInfo
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Description
特許文献1は、タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(NITE P-1465)を開示している。Se7-1株は、セレン酸化合物を還元する能力と硝酸化合物を還元する能力とを有している。Se7-1株は実地排水の条件下でもセレン酸化合物を還元できる。
特許文献2は、スルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(NITE P-582)を開示している。SEP-3株は、セレン酸化合物を還元する能力を有し、セレン酸を金属セレンに還元する能力が高いとされている。
[1] タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE P-582)を、セレン酸化合物の存在下で共培養する、セレン酸化合物の還元方法。
[2] タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE P-582)を、セレン酸化合物の存在下で共培養し、培養物から微生物を除去する、セレン酸化合物の除去方法。
[3] タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE P-582)を、セレン酸化合物の存在下で共培養し、培養物から金属セレンを回収する、金属セレンの製造方法。
[4] タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)と、スルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE P-582)と、を含む、セレン酸化合物還元製剤。
[5] タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE P-582)を、硝酸化合物の存在下で共培養する、硝酸化合物の還元方法。
[6] タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE P-582)を、硝酸化合物の存在下で共培養し、培養物から微生物を除去する、硝酸化合物の除去方法。
[7] タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE P-582)を、硝酸化合物の存在下で共培養し、培養物から窒素ガスを回収する、窒素ガスの製造方法。
[8] タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)と、スルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE P-582)と、を含む、硝酸化合物還元製剤。
[9] セレン酸化合物及び硝酸化合物の少なくとも一方を含む排水を処理する装置であって、タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE P-582)を、前記排水中で共培養する槽を備える、排水処理装置。
[10] セレン酸化合物及び硝酸化合物の少なくとも一方を含む排水を処理する方法であって、タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE P-582)を、前記排水中で共培養する、排水処理方法。
本発明の硝酸化合物の還元方法によれば、硝酸化合物の還元速度が上昇する。
本明細書における以下の用語の意味は以下の通りである。
「微生物」とは、主に細菌等の原核生物、並びに酵母類及び菌類等の真核生物を含む概念であり、ウイルス等の生体高分子の集合体を含んでもよい概念である。
「第1の微生物」とは、Se7-1株以外の微生物であるとともに、Se7-1株と同種の微生物であって、Se7-1株と分類学的性質が類似する微生物を意味する。
「第2の微生物」とは、SEP-3株以外の微生物であるとともに、SEP-3株と同種の微生物であって、SEP-3株と分類学的性質が類似する微生物を意味する。
「セレン酸化合物」とは、セレン酸(H2SeO4)、亜セレン酸(H2SeO3)及びこれらの塩並びにこれらのイオンを意味する。
「6価のセレン」とは、セレン酸、セレン酸塩又はセレン酸イオンの総称である。
「4価のセレン」とは、亜セレン酸、亜セレン酸塩又は亜セレン酸イオンの総称である。
「硝酸化合物」とは、硝酸(HNO3)、亜硝酸(HNO2)及びこれらの塩並びにこれらのイオンを意味する。
「5価の窒素」とは、硝酸、硝酸塩又は硝酸イオンの総称である。
「3価の窒素」とは、亜硝酸、亜硝酸塩又は亜硝酸イオンの総称である。
「共培養する」とは、異なる種類の微生物が混在した状態で、当該異なる種類の微生物を、同一の培地中でともに培養することを意味する。なお、「共培養」とは、特に断りのない限り、本培養を意味する。
「ppm」は、特に断りのない限り、質量比を意味する濃度単位である。
以下、本発明のセレン酸化合物の還元方法について説明する。
本発明のセレン酸化合物の還元方法は、還元対象物中のセレン酸化合物を還元する方法である。還元対象物としては、排水、土壌、汚泥、地下水、貯水池の水が例示される。ただし、還元対象物はセレン酸化合物を含む形態であれば、これらに限定されない。
Se7-1株は、例えば特許第5608725号公報に開示されている方法により、取得できる。
Se7-1株の同定は、特許第5608725号公報に開示されている方法により、同定できる。
本発明の発明者らは、Se7-1株が実地排水の条件下、及び特許第5608725号公報に開示されている実験室条件下のいずれにおいても、セレン酸化合物を還元する能力を有し、6価のセレンを4価のセレンに還元する能力が特に高いことを確認した。
本発明の発明者らは、Se7-1株が実地排水の条件下、及び特許第5608725号公報の段落[0031]等に開示されている実験室条件下のいずれにおいても、硝酸化合物を還元する能力を有することを確認した。
Se7-1株は、嫌気条件下でも良好に生育することが確認されている。
Se7-1株は、2012年11月16日付けで、受託番号NITE P-1465として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
{[培養開始前における培地中の6価のセレンの濃度(ppm)]-[培養後における培地中の6価のセレンの濃度(ppm)]}/[培養開始前における培地中の6価のセレンの濃度(ppm)]×100 ・・・・式1
SEP-3株は、特許第5227673号公報に開示されている方法により、同定できる。
一方で、本発明の発明者らは、SEP-3株が実地排水の条件下では、セレン酸化合物を還元する能力を示しにくいことを確認した。
本発明の発明者らは、SEP-3株が実地排水の条件下及び特許第5227673号公報に開示されている実験室条件下のいずれにおいても、硝酸化合物を還元する能力を有することを確認した。
さらに、本発明の発明者らは、SEP-3株が実地排水の条件下においては、5価の窒素及び3価の窒素の少なくとも一方を0価の窒素ガスに還元する能力を示しにくいことを確認した。また、本発明の発明者らは、SEP-3株が実地排水の条件下において、5価の窒素を3価の窒素に還元する能力を示すことを確認した。
SEP-3株は、嫌気条件下で良好に生育することが確認されている。
SEP-3株は、2008年6月4日付けで、受託番号NITE P-582として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。その後SEP-3株は、2009年6月2日付で受託番号NITE BP-582としてブダペスト条約に基づく国際寄託へ移管されている。
共培養の条件は、特に限定されず、Se7-1株及びSEP-3株がともに良好に生育するように、適宜調節すればよい。共培養の条件は、例えば以下のように設定できる。
共培養する際の培地のpHは、6.5~9.0が好ましく、6.5~7.5がより好ましく、7.0程度が特に好ましい。共培養する際の培地のpHが6.5~9.0の範囲内であると、本発明の効果がさらに優れる。
共培養の時間は、培地中のセレン酸化合物の濃度、培地へのSe7-1株及びSEP-3株の総植菌量等を考慮して適宜調節すればよく、例えば、10分~120時間とすることができる。共培養の時間が前記範囲内であると、本発明の効果がさらに優れる。
以上説明した本発明のセレン酸化合物の還元方法では、Se7-1株及びSEP-3株をセレン酸化合物の存在下で共培養するため、セレン酸化合物の還元速度が上昇する。
一方で、Se7-1株による排水の処理においては、Se7-1株の還元能力が他の微生物の影響により、低下することが懸念されている。そのため、排水を一度滅菌処理し、滅菌した排水中でSe7-1株を単独培養することで、Se7-1株の生化学的活性を最大限に高めることが従来の技術常識である。
したがって、Se7-1株及びSEP-3株の組み合わせを選択することにより、Se7-1株のセレン酸化合物の還元速度が上昇するという本発明の効果は、全く意外であるといえる。
以下、本発明のセレン酸化合物の除去方法について説明する。
本発明のセレン酸化合物の除去方法は、セレン酸化合物を含む除去対象物からセレン酸化合物を除去する方法である。除去対象物としては、排水、土壌、汚泥、地下水、貯水池の水が例示される。ただし、除去対象物はセレン酸化合物を含む形態であれば、これらに限定されない。
本発明のセレン酸化合物の除去方法において、Se7-1株及びSEP-3株を共培養する条件は、セレン酸化合物の還元方法で述べた内容と同様である。
Se7-1株及びSEP-3株は、例えば、フィルターを用いて培養物をろ過する方法、培養物を遠心分離する方法等により固形分を分離することで、単独で又は他の成分とともに、培養物から除去できる。
なお、Se7-1株及びSEP-3株を共培養する際に、Se7-1株及びSEP-3株の他に、第1の微生物及び第2の微生物の少なくとも一方の一種以上の微生物を共培養する場合においては、Se7-1株及びSEP-3株に加えて、第1の微生物及び第2の微生物の少なくとも一方の微生物を培養物から除去してもよい。
そのため、本発明のセレン酸化合物の除去方法においては、培養物から微生物を除去した後、さらに4価のセレンを除去することが好ましい。4価のセレンを除去する方法としては、微生物を除去した培養物と、凝集剤とを混合する方法が例示される。
以上説明した本発明のセレン酸化合物の除去方法では、Se7-1株及びSEP-3株をセレン酸化合物の存在下で共培養するため、セレン酸化合物の還元速度が上昇し、除去対象物中のセレン酸化合物を還元する化学反応が活性化する。よって、本発明のセレン酸化合物の除去方法によれば、除去対象物からセレン酸化合物を効率的に、かつ効果的に除去できる。
以下、本発明の金属セレンの製造方法について説明する。
本発明の金属セレンの製造方法は、セレン酸化合物を含む原料から金属セレンを製造する方法である。原料としては、排水、土壌、汚泥、地下水、貯水池の水が例示される。ただし、原料はセレン酸化合物を含む形態であれば、これらに限定されない。
本発明の金属セレンの製造方法において、Se7-1株及びSEP-3株を共培養する条件は、セレン酸化合物の還元方法で述べた内容と同様である。
したがって、培養物から金属セレンを回収する際においては、培養物から微生物を回収若しくは除去し、微生物の体内から金属セレンを回収すること、又は、微生物の体外の金属セレンを培養物から回収することが好ましい。
以上説明した本発明の金属セレンの製造方法では、Se7-1株及びSEP-3株をセレン酸化合物の存在下で共培養するため、セレン酸化合物の還元速度が上昇し、原料中のセレン酸化合物を還元する化学反応が活性化する。よって、本発明の金属セレンの製造方法によれば、原料から金属セレンを効率的に製造でき、金属セレンを高収率で製造できる。
本発明のセレン酸化合物還元製剤は、Se7-1株とSEP-3株とを含む。
本発明のセレン酸化合物還元製剤は、Se7-1株及びSEP-3株の他に、第1の微生物及び第2の微生物の少なくとも一方の一種以上の微生物をさらに含んでもよい。
本発明のセレン酸化合物還元製剤は、その他の微生物を含んでもよい。
本発明のセレン酸化合物還元製剤は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて各種添加剤を含んでもよい。
さらに、本発明のセレン酸化合物還元製剤においては、Se7-1株及びSEP-3株が、例えば、寒天、ゲランガム等の天然物高分子ゲル;アクリルアミド;紫外線硬化樹脂等の高分子樹脂;炭素繊維、中空糸膜、不織布等の繊維等に固定化されてもよい。固定化は内包及び表面固定のいずれでもよい。
本発明のセレン酸化合物還元製剤は、例えば、除去対象物に含まれるセレン酸化合物を除去する際に使用できる。
本発明のセレン酸化合物還元製剤は、例えば、セレン酸化合物を含む原料から金属セレンを製造する際に使用できる。
他にも本発明のセレン酸化合物還元製剤は、後述する排水処理装置が備える生物処理槽に適用できる。
以上説明した本発明のセレン酸化合物還元製剤は、Se7-1株とSEP-3株とを含むため、セレン酸化合物の還元速度が上昇する。よって、本発明のセレン酸化合物還元製剤によれば、還元対象物を効率的かつ効果的に還元できる。
以下、本発明の硝酸化合物の還元方法について説明する。
本発明の硝酸化合物の還元方法は、還元対象物中の硝酸化合物を還元する方法である。還元対象物としては、排水、土壌、汚泥、地下水、貯水池の水が例示される。ただし、還元対象物は硝酸化合物を含む形態であれば、これらに限定されない。
本発明の硝酸化合物の還元方法は、例えば、硝酸化合物を含む培地と、後述する硝酸化合物還元製剤とを混合する等して、Se7-1株及びSEP-3株を前記培地に植菌し、Se7-1株及びSEP-3株を共培養することで行うことができる。
共培養の条件は、特に限定されず、Se7-1株及びSEP-3株がともに良好に生育するように、適宜調節すればよい。共培養の条件は、例えば以下のように設定できる。
前記その他の微生物としては、5価の窒素を3価の窒素又は0価の窒素ガスに還元する能力を有する微生物、3価の窒素を0価の窒素ガスに還元する能力を有する微生物等が例示される。
以上説明した本発明の硝酸化合物の還元方法では、Se7-1株及びSEP-3株を硝酸化合物の存在下で共培養するため、硝酸化合物の還元速度が上昇する。
一方で本発明の発明者らは、Se7-1株が実地排水の条件下で、硝酸化合物を還元する能力を有することを確認した。さらに、排水を一度滅菌処理し、滅菌した排水中でSe7-1株を単独培養することで、Se7-1株の生化学的活性を最大限に高めることが従来の技術常識である。
したがって、Se7-1株及びSEP-3株の組み合わせを選択することにより、硝酸化合物の還元速度が上昇するという本発明の効果は、全く意外であるといえる。
以下、本発明の硝酸化合物の除去方法について説明する。
本発明の硝酸化合物の除去方法は、硝酸化合物を含む除去対象物から硝酸化合物を除去する方法である。除去対象物としては、排水、土壌、汚泥、地下水、貯水池の水が例示される。ただし、除去対象物は硝酸化合物を含む形態であれば、これらに限定されない。
本発明の硝酸化合物の除去方法において、Se7-1株及びSEP-3株を共培養する条件は、硝酸化合物の還元方法で述べた内容と同様である。
なお、Se7-1株及びSEP-3株を共培養する際に、Se7-1株及びSEP-3株の他に、第1の微生物及び第2の微生物の少なくとも一方の一種以上の微生物を共培養する場合においては、Se7-1株及びSEP-3株に加えて、第1の微生物及び第2の微生物の少なくとも一方の微生物を培養物から除去してもよい。
そのため、本発明の硝酸化合物の除去方法においては、培養物から微生物を除去した後、さらに3価の窒素を除去することが好ましい。これにより、除去対象物から硝酸化合物をさらに効果的に除去できる。なお、3価の窒素を除去する方法としては、培養物から3価の窒素を除去できる方法であれば特に限定されない。
以上説明した本発明の硝酸化合物の除去方法では、Se7-1株及びSEP-3株を硝酸化合物の存在下で共培養するため、硝酸化合物の還元速度が上昇し、除去対象物中の硝酸化合物を還元する化学反応が活性化する。よって、本発明の硝酸化合物の除去方法によれば、除去対象物から硝酸化合物を効率的かつ効果的に除去できる。
以下、本発明の窒素ガスの製造方法について説明する。
本発明の窒素ガスの製造方法は、硝酸化合物を含む原料から窒素ガスを製造する方法である。原料としては、排水、土壌、汚泥、地下水、貯水池の水が例示される。ただし、原料は硝酸化合物を含む形態であれば、これらに限定されない。
本発明の窒素ガスの製造方法において、Se7-1株及びSEP-3株を共培養する条件は、硝酸化合物の還元方法で述べた内容と同様である。
以上説明した本発明の窒素ガスの製造方法では、Se7-1株及びSEP-3株を硝酸化合物の存在下で共培養するため、硝酸化合物の還元速度が上昇し、原料中の硝酸化合物を還元する化学反応が活性化する。よって、本発明の窒素ガスの製造方法によれば、原料から窒素ガスを効率的に製造でき、窒素ガスを高収率で製造できる。
本発明の硝酸化合物還元製剤は、Se7-1株とSEP-3株とを含む。
本発明の硝酸化合物還元製剤は、Se7-1株及びSEP-3株の他に、第1の微生物及び第2の微生物の少なくとも一方の一種以上の微生物をさらに含んでもよい。
本発明の硝酸化合物還元製剤は、その他の微生物を含んでもよい。
本発明の硝酸化合物還元製剤は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて各種添加剤を含んでもよい。
本発明の硝酸化合物還元製剤は、例えば、除去対象物に含まれる硝酸化合物を除去する際に使用できる。
本発明の硝酸化合物還元製剤は、例えば、硝酸化合物を含む原料から窒素ガスを製造する際に使用できる。
他にも本発明の硝酸化合物還元製剤は、後述する排水処理装置が備える生物処理槽に適用できる。
以上説明した本発明の硝酸化合物還元製剤は、Se7-1株とSEP-3株とを含むため、硝酸化合物の還元速度が上昇する。よって、本発明の硝酸化合物還元製剤によれば、還元対象物を効率的かつ効果的に還元できる。
以下、本発明を適用した一実施形態に係る排水処理装置を説明する。
図2は、本実施形態例に係る排水処理装置1の概略構成図である。図2に示すように、排水処理装置1は、前処理部2と、生物処理部3と、化学処理部4とを備えている。
セレン酸化合物及び硝酸化合物の少なくとも一方を含む排水の具体例としては、火力発電所等の石炭を利用する工業施設の脱硫排水及びスクラバー排水等が例示されるが、特に限定されない。
排水貯槽11は、排水を一時的に貯留する槽である。排水貯槽11は、流路12と流路13との間に設けられている。流路12は、工業施設(図示略)から排水貯槽11に、排水を供給する流路である。流路13は、排水貯槽11から排出された排水を滅菌器21に供給する流路である。流路13には、ポンプ14が設けられている。これにより滅菌器21に前記排水を供給しやすくなる。
滅菌器21は、排水中の雑菌等の微生物を滅菌できる形態であれば、特に限定されない。滅菌器21としては、紫外線式及び酸化剤注入式等の滅菌器が例示される。
濾過器23は、排水中の不純物を除去できる形態であれば、特に限定されない。
pH調整槽24には、排出口24aが形成されている。これにより、pH調整槽24から、調整水貯槽25に、前記排水が排出される。
生物処理槽31は、流路27に接続されている。これにより、調整水貯槽25内の排水が、生物処理槽31に貯留される。
本実施形態においては、排水を含む生物処理槽31内の貯留液が、Se7-1株及びSEP-3株を共培養する際の培地である。また生物処理槽31内の貯留液は、Se7-1株及びSEP-3株を含む。これにより、生物処理槽31は排水中のセレン酸化合物及び硝酸化合物の少なくとも一方を還元する生物処理を行うことができる。
生物処理槽31内の貯留液は第1の微生物及び第2の微生物の少なくとも一方を含んでもよい。
分離膜モジュール32は、生物処理槽31内の貯留液を、4価のセレンを溶解する溶解液と、微生物とに分離できる形態であれば、特に限定されない。排水処理装置1において、分離膜モジュール32は、生物処理槽31内の貯留液を前記溶解液と前記微生物とに分離する分離手段の一形態例である。
分離膜の形状としては、中空糸膜、平膜、管状膜及び袋状膜等が例示される。これらのうち、容積ベースで比較した場合に膜面積の高度集積が可能であることから、中空糸膜が好ましい。
分離膜の材質としては、有機材料(セルロース、ポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン及びポリ4フッ化エチレン等)、金属(ステンレス等)、無機材料(セラミック等)が例示される。分離膜の材質は、生物処理槽31内の貯留液及び前記微生物の性状等に応じて適宜選択される。
分離膜の孔径は、生物処理の目的に応じて適宜選択すればよい。排水処理装置1において、分離膜の孔径は、0.01~1.0μmが好ましい。孔径が0.01μm未満では、膜の抵抗が大きくなりやすい。孔径が1.0μmを超えると、前記微生物を完全に分離することができないため、処理水(透過水)の水質が悪化するおそれがある。分離膜の孔径は、精密濾過膜、又は限外濾過膜の範囲とされる0.05~0.4μmがより好ましい。
なお、生物処理槽31は、分離膜モジュール32を1つ有してもよいし、複数有してもよい。
本実施形態においては、生物処理槽31の頂部が密閉されている。これにより、生物処理槽31内を嫌気条件に維持できる。
散気装置40は、生物処理槽31の気相からガスを排出する排気手段として、排気管46を備えている。散気装置40は前記排気手段を備えることにより、生物処理槽31内で発生する窒素ガス、硫化水素及びメタン等のガスを大気に排出できる。
生物処理水貯槽51には、逆洗流路54が設けられている。逆洗流路54は、一端が前記生物処理水に浸漬されており、他端が流路35に接続されている。逆洗流路54には、ポンプ55が設けられている。これにより、生物処理水貯槽51は、生物処理水貯槽51に貯留された生物処理水を流路35に供給できる。ポンプ55と流路35との間の逆洗流路54には、濾過器56が設けられている。濾過器56は、逆洗流路54を流れる生物処理水に意図せずに混入した不純物を、除去できる形態であれば特に限定されない。
生物処理水貯槽51は濾過器56を備えることにより、分離膜モジュール32が備える分離膜の内側に、不純物が付着することを防止できる。
第1の凝集槽61は、4価のセレンを溶解する溶解液(生物処理水)と、凝集剤とを混合する槽である。これにより、化学処理部4は前記4価のセレンを0価の金属セレンに還元でき、又は金属セレンを含有する難溶性塩を生成できる。
第1の凝集槽61には、排出口61aが形成されている。これにより、第1の凝集槽61内の貯留された液体が第2の凝集槽62に排出される。
好ましい凝集剤の例としては、上述のセレン酸化合物の還元方法で例示した化合物と同様である。
第2の凝集槽62は、第1の凝集槽61と隣接するとともに、第1の凝集槽61の後段に設けられている。これにより、第2の凝集槽62には第1の凝集槽61から排出された液体が貯留される。
第2の凝集槽62には排出口62aが形成されている。これにより、第2の凝集槽62に貯留された液体が、第3の凝集槽63に排出される。
pH調整剤供給手段66で用いることができるpH調整剤としては、特に限定されないが、苛性ソーダ等が例示される。
第3の凝集槽63は、第2の凝集槽62と隣接するとともに、第2の凝集槽62の後段に設けられている。これにより、第3の凝集槽63には第2の凝集槽62から排出された液体が貯留される。
第3の凝集槽63には、排出口63aが形成されている。これにより前記液体及び前記凝集体が沈殿槽64に排出される。
凝集助剤としては、金属セレン等を含有する凝集体の粗大化を促進できる形態であれば、特に限定されない。凝集助剤としては、アニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤及び両性高分子凝集剤等が例示される。
沈殿槽64は、第3の凝集槽63と隣接するとともに、第3の凝集槽63の後段に設けられている。これにより、沈殿槽64には第3の凝集槽63から排出された液体が貯留される。
処理水貯槽71は、排水処理装置1により処理された処理水を貯留する槽である。処理水貯槽71は、流路72に接続されている。これにより、処理水貯槽71に処理水が貯留される。
以上説明した本実施形態の排水処理装置によれば、Se7-1株及びSEP-3株を、排水中で共培養する槽を備えるため、セレン酸化合物の還元速度が上昇する。よって、生物処理によるセレン酸化合物の還元反応を高速化でき、単位時間当たりの処理能力を高めるとともに、生物処理槽を小型化できる。その結果、排水処理装置の導入に必要な初期費用を低減できる。
以下、上述した排水処理装置1を用いた、本実施形態の排水処理方法について説明する。本実施形態の排水処理方法は、セレン酸化合物及び硝酸化合物の少なくとも一方を含む排水を処理する方法である。
まず、本実施形態では、排水の前処理を前処理部2において行う。
図示略の工業施設の排水は、流路12を経て、排水貯槽11に供給される。次に、排水貯槽11に貯留された排水は、流路13を経て、滅菌器21に供給される。
滅菌器21では、排水を滅菌する滅菌処理が行われる。これにより、後段の生物処理槽31における処理効率を最大限に高められる。
濾過器23では、排水中の不純物を除去する前濾過処理が行われる。濾過器23で前濾過処理が施された排水は、流路22を経てpH調整槽24に供給される。pH調整槽24では、排水にpH調整剤を供給する処理が行われる。
なお、生物処理槽31でSe7-1株及びSEP-3株を共培養する条件は、上述したセレン酸化合物の還元方法又は硝酸化合物の還元方法でSe7-1株及びSEP-3株を共培養する際の条件を適用できる。
生物処理を行う時間は、2~4時間とすることが好ましい。これにより、セレン酸化合物及び硝酸化合物の少なくとも一方を効果的に還元できる。
本実施形態においては、生物処理槽31内の貯留液の温度を、25~40℃とすることが好ましく、33~37℃程度とすることがより好ましい。これにより、Se7-1株及びSEP-3株を用いた還元反応が進行しやすくなる。
前記分離膜を透過した透過水は、流路35を経て生物処理水として生物処理水貯槽51に供給される。その後生物処理水は、生物処理水貯槽51に一時的に貯留される。
沈殿槽64では、金属セレン等を含有する沈殿物(汚泥)が重力沈降によって沈殿槽64の底部に沈殿することで、0価の金属セレン等と上澄み液とが分離され、排水からセレンが除去される。
沈殿槽64で分離された上澄み液は、流路72を経て処理水貯槽71に貯留される。
以上説明した本実施形態の排水処理方法によれば、Se7-1株及びSEP-3株を、排水中で共培養する槽を備えるため、セレン酸化合物の還元速度が上昇する。よって、生物処理によるセレン酸化合物の還元反応を高速化でき、単位時間当たりの処理能力を高めるとともに、生物処理槽を小型化できる。
例えば、上述した排水処理装置1は、前処理部2、散気装置40、生物処理水貯槽51及び逆洗手段等の構成を備えるが、前処理部2、散気装置40、生物処理水貯槽51及び逆洗手段等の構成は、省略可能である。
他にも、分離膜の閉塞等を解消するために、透過水側から、閉塞を解消する薬液を分離膜に供給してもよい。
微生物はいずれも前培養したものを用いた。具体的には、Se7-1株を特許第5608725号公報に記載のME培地で、SEP-3株を特許第5227673号公報に記載のME培地で、それぞれの培地がセレン酸化合物を含まないこと以外は、後述するセレン酸化合物の還元と同じ培養条件で、それぞれ前培養した。
セレン酸化合物及び硝酸化合物の還元は、以下のように行った。
セレン酸イオンを60ppm、硝酸イオンを30ppmそれぞれ含む排水と、あらかじめ調製した培地(塩素を3077ppm、カルシウムを550ppm、硫酸を4861ppm、ナトリウムを4100ppm、乳酸を300ppm、リンを1ppmそれぞれ含む)とを混合し、30mL容積のバイアル瓶にこの培地を30mL添加した。また、Se7-1株及びSEP-3株をそれぞれ含む各前培養液の濁度をそれぞれ測定した。この前培養液を前記バイアル瓶中の培地に添加して、得られた本培養液の濁度が前培養液の濁度と同程度の値となるように植菌した。実施例1では、Se7-1株の濃度を1.2×108cells/mLとし、SEP-3株の濃度を3.0×108cells/mLとした。
次いで、植菌後の培地上の気相部分を窒素ガスで置換して嫌気条件としたバイアル瓶に対して、ブチル栓、アルミキャップの順で蓋をし、37℃の恒温槽で24時間静置培養した。
本培養が終了した後、島津製作所社製の原子吸光分光光度計を用いて原子吸光法により培地中のセレン酸イオン(SeO4 2-)の濃度を測定し、東ソー株式会社製のイオンクロマトグラフを用いて硝酸イオン(NO3 -)の濃度を測定した。測定したセレン酸イオン及び硝酸イオンの濃度から、セレン酸化合物及び硝酸化合物の還元速度をそれぞれ算出した。
SEP-3株の数をSe7-1株の数の0.2~2.6倍となるように、Se7-1株及びSEP-3株の混合比率を変更し、各混合比率におけるセレン酸化合物及び硝酸化合物の還元速度を測定した。各混合比率のセレン酸化合物の還元速度を比較例2で測定したセレン酸化合物の還元速度で除し、セレン酸化合物の還元速度の増強率を算出した。同様に各混合比率の硝酸化合物の還元速度を比較例2で測定した硝酸化合物の還元速度で除し、硝酸化合物の還元速度の増強率を算出した。
Claims (10)
- タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE BP-582)を、セレン酸化合物の存在下で共培養する、セレン酸化合物の還元方法。
- タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE BP-582)を、セレン酸化合物の存在下で共培養し、
培養物から微生物を除去する、セレン酸化合物の除去方法。 - タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE BP-582)を、セレン酸化合物の存在下で共培養し、
培養物から金属セレンを回収する、金属セレンの製造方法。 - タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)と、
スルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE BP-582)と、
を含む、セレン酸化合物還元製剤。 - タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE BP-582)を、硝酸化合物の存在下で共培養する、硝酸化合物の還元方法。
- タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE BP-582)を、硝酸化合物の存在下で共培養し、
培養物から微生物を除去する、硝酸化合物の除去方法。 - タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE BP-582)を、硝酸化合物の存在下で共培養し、
培養物から窒素ガスを回収する、窒素ガスの製造方法。 - タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)と、
スルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE BP-582)と、
を含む、硝酸化合物還元製剤。 - セレン酸化合物及び硝酸化合物の少なくとも一方を含む排水を処理する装置であって、
タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE BP-582)を、前記排水中で共培養する槽を備え、
前記槽内の貯留液が、タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE BP-582)を含む、排水処理装置。 - セレン酸化合物及び硝酸化合物の少なくとも一方を含む排水を処理する方法であって、
タウエラ・エスピー(Thauera sp.)JPCC Se7-1株(受託番号NITE P-1465)、及びスルフロスピリラム(Sulfurospirillum)属JPCCY SEP-3株(受託番号NITE BP-582)を、前記排水中で共培養する、排水処理方法。
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