JP2001267162A - 希土類ボンド磁石の製造方法および希土類ボンド磁石 - Google Patents

希土類ボンド磁石の製造方法および希土類ボンド磁石

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JP2001267162A JP2000070666A JP2000070666A JP2001267162A JP 2001267162 A JP2001267162 A JP 2001267162A JP 2000070666 A JP2000070666 A JP 2000070666A JP 2000070666 A JP2000070666 A JP 2000070666A JP 2001267162 A JP2001267162 A JP 2001267162A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐食性にすぐれ、機械的強度の大きい希土類
ボンド磁石を提供すること。 【解決手段】 本発明の希土類ボンド磁石の製造方法
は、まず、希土類磁石粉末と、結合樹脂とを所定の比率
で混合、混練し、次いで、該混練物に対し、前記結合樹
脂が軟化または溶融状態となる温度で温間成形を施し、
表面粗さRaが10μm以下となる表面を持つ磁石成形
体を製造し、その後、該磁石成形体の前記表面に直接金
属メッキ層を形成することにより希土類ボンド磁石を製
造するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、希土類ボンド磁石
の製造方法および希土類ボンド磁石に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】希土類ボンド磁石は、希土類磁石粉末と
結合樹脂(有機バインダー)との混合物(コンパウン
ド)を所望の磁石形状に加圧成形して製造されるもので
あるが、その成形方法には、圧縮成形法、射出成形法お
よび押出成形法が利用されている。
【0003】圧縮成形法は、前記コンパウンドをプレス
金型中に充填し、これを圧縮成形して成形体を得その
後、結合樹脂が熱硬化性樹脂の場合にはこれを加熱硬化
させて磁石を製造する方法である。この方法は、他の方
法に比べ、少ない結合樹脂量で成形ができるため、得ら
れた磁石の磁粉量を多くすることができ、磁気特性の向
上にとって有利である。
【0004】押出成形法は、加熱溶融された前記コンパ
ウンドを押出成形機の金型から押出すとともに冷却固化
し、所望の長さに切断して、磁石とする方法である。こ
の方法では、磁石の形状に対する自由度が大きく、薄
肉、長尺の磁石をも容易に製造できるという利点がある
が、成形時における溶融物の流動性を確保するために、
結合樹脂の添加量を圧縮成形法のそれに比べて多くする
必要があり、したがって、得られた磁石中の磁粉量が少
なく、磁気特性が低下する傾向がある。
【0005】射出成形法は、前記コンパウンドを加熱溶
融し、十分な流動性を持たせた状態で該溶融物を金型内
に注入し、所定の磁石形状に成形する方法である。この
方法では、磁石の形状に対する自由度は、押出成形法に
比べさらに大きく、特に、異形状の磁石をも容易に製造
できるという利点がある。しかし、成形時における溶融
物の流動性は、前記押出成形法より高いレベルが要求さ
れるので、結合樹脂の添加量は、押出成形法のそれに比
べてさらに多くする必要があり、したがって、得られた
磁石中の磁粉量が少なく、磁気特性がさらに低下する傾
向となる。
【0006】ところで、以上のような各方法のうち、圧
縮成形法は、他の方法に比べてより磁気特性の高い磁石
を成形することが可能であるが、次のような問題点を有
していた。
【0007】すなわち、この従来の圧縮成形法において
は、得られる磁石成形体の空孔率は高く、表面粗さも大
きくなる傾向を示す。その結果、磁石の耐食性、機械的
強度が低下するという欠点を有していた。
【0008】そこで、成形圧力が1000MPa以上と
いう高圧成形を行ったり、成形後に金属メッキを施す等
の方法が行われてきた。
【0009】しかし、高圧成形は、金型や成形機への負
担が大きく、それらの大型化が要求され、製造コストの
上昇を招く。一方、金属メッキを施す場合、磁石成形体
の表面粗さが大きいため、形成される金属メッキ層の厚
さ等のバラツキが大きくなり、十分な耐食性、機械的強
度の向上を達成するのは困難であった。また、空孔部等
にメッキ液が残留し、磁石の腐食を引き起こす等の問題
点も有していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、耐食
性にすぐれ、機械的強度の大きい希土類ボンド磁石を提
供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(21)の本発明により達成される。
【0012】(1) 希土類磁石粉末と、結合樹脂とを
混合または混練して希土類ボンド用組成物を製造する工
程と、前記希土類ボンド用組成物に対し、前記結合樹脂
が軟化または溶融状態となる温度で温間成形を施し、表
面粗さRaが10μm以下となる表面を持つ磁石成形体
を製造する工程と、前記磁石成形体の前記表面に直接金
属メッキ層を形成する工程とを有することを特徴とする
希土類ボンド磁石の製造方法。
【0013】(2) 前記温間成形は、圧縮成形である
上記(1)に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0014】(3) 前記結合樹脂は、熱可塑性樹脂で
ある上記(1)または(2)に記載の希土類ボンド磁石
の製造方法。
【0015】(4) 前記磁石成形体の空孔率は、5v
ol%以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに
記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0016】(5) 前記金属メッキ層は、ニッケルメ
ッキ層である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載
の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0017】(6) 前記金属メッキ層の厚さは、3〜
70μmである上記(1)ないし(5)のいずれかに記
載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0018】(7) 前記金属メッキ層の厚さをT[μ
m]としたとき、前記表面の表面粗さRa[μm]との
間で、1.2≦T/Ra≦100の関係を満足する上記
(1)ないし(6)のいずれかに記載の希土類ボンド磁
石の製造方法。
【0019】(8) 前記希土類ボンド磁石用組成物中
の前記結合樹脂の含有量は、1〜10wt%である上記
(1)ないし(7)のいずれかに記載の希土類ボンド磁
石の製造方法。
【0020】(9) 前記希土類磁石粉末の平均粒径
は、1〜150μmである上記(1)ないし(8)のい
ずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0021】(10) 前記希土類磁石粉末は、希土類
元素と遷移金属とを含む合金よりなるものである上記
(1)ないし(9)のいずれかに記載の希土類ボンド磁
石の製造方法。
【0022】(11) 前記希土類磁石粉末は、ソフト
磁性相とハード磁性相とを有する複合組織で構成される
ものである上記(1)ないし(10)のいずれかに記載
の希土類ボンド磁石の製造方法。
【0023】(12) 希土類ボンド磁石は、等方性で
ある上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の希土
類ボンド磁石の製造方法。
【0024】(13) 希土類ボンド磁石は、異方性で
ある上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の希土
類ボンド磁石の製造方法。
【0025】(14) 上記(1)ないし(13)のい
ずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法により製造
されたことを特徴とする希土類ボンド磁石。
【0026】(15) 希土類磁石粉末と、結合樹脂と
で構成される磁石成形体の表面に金属メッキ層が直接形
成された希土類ボンド磁石であって、前記磁石成形体の
空孔率が5vol%以下であり、かつ、前記磁石成形体
の前記表面の表面粗さRaが10μm以下であることを
特徴とする希土類ボンド磁石。
【0027】(16) 前記結合樹脂は、熱可塑性樹脂
である上記(15)に記載の希土類ボンド磁石。
【0028】(17) 前記金属メッキ層は、ニッケル
メッキ層である上記(15)または(16)に記載の希
土類ボンド磁石。
【0029】(18) 前記磁石成形体中の前記希土類
磁石粉末の含有量は、90〜99wt%である上記(1
4)ないし(17)のいずれかに記載の希土類ボンド磁
石。
【0030】(19) 圧縮応力を加えることにより測
定される破壊強度が21MPa以上である上記(14)
ないし(18)のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
【0031】(20) 室温での固有保磁力HcJが32
0〜1600kA/mである上記(14)ないし(1
9)のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
【0032】(21) 最大磁気エネルギー積(BH)
maxが50kJ/m3以上である上記(14)ないし(2
0)のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の希土類ボンド磁石
の製造方法および希土類ボンド磁石について、詳細に説
明する。
【0034】まず、本発明の希土類ボンド磁石の製造方
法について説明する。本発明の希土類ボンド磁石の製造
方法は、主に、以下の工程を有している。
【0035】[希土類ボンド磁石用組成物の製造]ま
ず、希土類ボンド磁石用組成物(以下単に、「組成物」
とも言う)を製造する。この組成物は、主に、希土類磁
石粉末と、結合樹脂(バインダー)とで構成されてい
る。また、組成物中には、必要に応じて、酸化防止剤等
の添加剤が含まれていてもよい。これらの各構成成分
は、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機等の混合
機や攪拌機により混合される。
【0036】以下、これらの各構成成分について説明す
る。
【0037】1.希土類磁石粉末 希土類磁石粉末(以下単に、「磁石粉末」とも言う)と
しては、希土類元素と遷移金属とを含む合金よりなるも
のが好ましく、特に、次の[1]〜[5]が好ましい。
【0038】[1] Smを主とする希土類元素と、C
oを主とする遷移金属とを基本成分とするもの(以下、
Sm−Co系合金と言う)。
【0039】[2] R(ただし、Rは、Yを含む希土
類元素のうちの少なくとも1種)と、Feを主とする遷
移金属(TM)と、Bとを基本成分とするもの(以下、
R−TM−B系合金と言う)。
【0040】[3] Smを主とする希土類元素と、F
eを主とする遷移金属と、Nを主とする格子間元素とを
基本成分とするもの(以下、Sm−Fe−N系合金と言
う)。
【0041】[4] R(ただし、Rは、Yを含む希土
類元素のうち少なくとも1種)とFe等の遷移金属とを
基本成分とし、ソフト磁性相とハード磁性相とが相隣接
して(粒界相を介して隣接する場合も含む)存在する複
合組織(特に、ナノコンポジット組織と呼ばれるものが
ある)を有するもの。
【0042】[5] 前記[1]〜[4]の組成のもの
のうち、少なくとも2種を混合したもの。この場合、混
合する各磁石粉末の利点を併有することができ、より優
れた磁気特性を容易に得ることができる。
【0043】Sm−Co系合金の代表的なものとして
は、SmCo5、Sm2TM17(ただしTMは、遷移金
属)が挙げられる。
【0044】R−Fe−B系合金の代表的なものとして
は、Nd−Fe−B系合金、Pr−Fe−B系合金、N
d−Pr−Fe−B系合金、Nd−Dy−Fe−B系合
金、Ce−Nd−Fe−B系合金、Ce−Pr−Nd−
Fe−B系合金、これらにおけるFeの一部をCo、N
i等の他の遷移金属で置換したもの等が挙げられる。
【0045】Sm−Fe−N系合金の代表的なものとし
ては、Sm2Fe17合金を窒化して作製したSm2Fe17
3、TbCu7型相を主相とするSm−Zr−Fe−C
o−N系合金が挙げられる。
【0046】前記希土類元素としては、Y、La、C
e、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、D
y、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタルが
挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができ
る。また、前記遷移金属としては、Fe、Co、Ni等
が挙げられ、これらを1種または2種以上含むことがで
きる。
【0047】また、保磁力、最大磁気エネルギー積等の
磁気特性を向上させるため、あるいは、耐熱性、耐食性
を向上させるために、磁石材料中には、必要に応じ、A
l、Cu、Ga、Si、Ti、V、Ta、Zr、Nb、
Mo、Hf、Ag、Zn、P、Ge、Cr、W等を含有
することもできる。
【0048】前記複合組織(ナノコンポジット組織)
は、ソフト磁性相10とハード磁性相11とが、例え
ば、図1、図2または図3に示すようなパターン(モデ
ル)で存在しており、各相の厚さや粒径がナノメーター
レベルで存在している。そして、ソフト磁性相10とハ
ード磁性相11とが相隣接し(粒界相を介して隣接する
場合も含む)、磁気的な交換相互作用を生じる。
【0049】ソフト磁性相の磁化は、外部磁界の作用に
より容易にその向きを変えるので、ハード磁性相に混在
すると、系全体の磁化曲線はB−H図(J−H図)の第
二象現で段のある「へび型曲線」となる。しかし、ソフ
ト磁性相のサイズが数10nm以下と十分小さい場合に
は、ソフト磁性体の磁化が周囲のハード磁性体の磁化と
の結合によって十分強く拘束され、系全体がハード磁性
体として振舞うようになる。
【0050】このような複合組織(ナノコンポジット組
織)を持つ磁石は、主に、以下に挙げる特徴1)〜5)
を有している。
【0051】1)B−H図(J−H図)の第二象現で、
磁化が可逆的にスプリングバックする(この意味で「ス
プリング磁石」とも言う)。 2)着磁性が良く、比較的低い磁場で着磁できる。 3)磁気特性の温度依存性がハード磁性相単独の場合に
比べて小さい。 4)磁気特性の経時変化が小さい。 5)微粉砕しても磁気特性が劣化しない。
【0052】このように、複合組織で構成される磁石
は、優れた磁気特性を有する。したがって、磁石粉末
は、このような複合組織を有するものであるのが特に好
ましい。
【0053】なお、図1〜図3に示すパターンは、一例
であって、これらに限られるものではない。
【0054】磁石粉末の平均粒径は、1〜150μmで
あるのが好ましく、5〜80μmであるのがより好まし
い。磁石粉末の平均粒径が、下限値未満であると、酸化
による磁気特性の劣化が顕著となる。また、発火のおそ
れがあるなど取り扱い上の問題も生じる。一方、磁石粉
末の平均粒径が、上限値を超えると、混練時、温間成形
時等における組成物の流動性が十分に得られない可能性
がある。
【0055】なお、磁石粉末の粒径は、例えば、F.S.S.
S.(Fischer Sub-Sieve Sizer)法により測定すること
ができる。
【0056】また、磁石粉末の粒径分布は、均一でも、
ある程度分散されていてもよいが、少量の結合樹脂で成
形時のより良好な成形性を得るために、磁石粉末の粒径
分布は、ある程度分散されている(バラツキがある)の
が好ましい。これにより、得られた希土類ボンド磁石の
空孔率をより低減することもできる。
【0057】なお、前記[5]の場合、混合する磁石粉
末の組成毎に、その平均粒径が異なっていてもよい。
【0058】磁石粉末の製造方法は、特に限定されず、
例えば、溶解・鋳造により合金インゴットを作製し、こ
の合金インゴットを適度な粒度に粉砕し(さらに分級
し)て得られたもの、アモルファス合金を製造するのに
用いる急冷薄帯製造装置で、リボン状の急冷薄片(微細
な多結晶が集合)を製造し、この薄片(薄帯)を適度な
粒度に粉砕し(さらに分級し)て得られたもの、ガスア
トマイズのようなアトマイズ法により得られたもの等、
いずれでもよい。
【0059】以上のような磁石粉末の組成物中での含有
量は、90〜99wt%であるのが好ましく、93〜9
8wt%であるのがより好ましい。磁石粉末の含有量が
下限値未満であると、磁気特性の向上が図れない場合が
ある。一方、磁石粉末の含有量が上限値を超えると、相
対的に結合樹脂の含有量が少なくなり、成形性が低下す
る場合がある。
【0060】2.結合樹脂(バインダー) 結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑性樹脂、熱硬
化性樹脂が挙げられるが、特に、熱可塑性樹脂であるの
が好ましい。
【0061】熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミ
ド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナ
イロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロ
ン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可
塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマ
ー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファ
イド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸
ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィ
ン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエー
テルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等、
またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマ
ーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種
以上を混合して用いることができる。
【0062】これらのうちでも、成形性が特に優れてお
り、機械的強度が高いことから、ポリアミド、耐熱性向
上の点から、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイ
ドを主とするものが好ましい。また、これらの熱可塑性
樹脂は、磁石粉末との混練性にも優れている。
【0063】このような熱可塑性樹脂は、その種類、共
重合化等により、例えば成形性を重視したものや、耐熱
性、機械的強度を重視したものというように、広範囲の
選択が可能となるという利点がある。
【0064】一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、ビ
スフェノール型、ノボラック型、ナフタレン系等の各種
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン
樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリ
イミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙
げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して
用いることができる。
【0065】これらのうちでも、成形性が特に優れてお
り、機械的強度が高く、耐熱性に優れるという点から、
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリ
コーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
また、これらの熱硬化性樹脂は、磁石粉末との混練性、
混練の均一性にも優れている。
【0066】なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)
は、室温で液状のものでも、固形(粉末状)のものでも
よい。
【0067】また、結合樹脂の融点は、特に限定されな
いが、130〜350℃であるのが好ましく、150〜
300℃であるのがより好ましい。結合樹脂の融点が下
限値未満であると、後述する磁石成形体の耐熱性が低下
し、十分な温度特性(磁気的または機械的)を確保する
のが困難となる場合がある。一方、結合樹脂の融点が上
限値を超えると、温間成形時等に、組成物の温度が上昇
し、磁石粉末等の酸化が生じ易くなる場合がある。
【0068】以上のような結合樹脂の組成物中での含有
量は、1〜10wt%であるのが好ましく、1.5〜5
wt%であるのがより好ましい。結合樹脂の含有量が下
限値未満であると、成形性が低下する可能性がある。一
方、結合樹脂の含有量が上限値を超えると、相対的に磁
石粉末の含有量が少なくなり、磁気特性の向上が図れな
い場合がある。
【0069】3.酸化防止剤 組成物中には、必要に応じて、酸化防止剤が含まれる。
【0070】酸化防止剤が組成物中に含有されることに
より、組成物の製造時等における磁石粉末の酸化や結合
樹脂の酸化が防止される。
【0071】この酸化防止剤の添加は、磁石粉末の酸化
が防止され、磁石の磁気特性の向上に寄与するととも
に、組成物の混練時、成形時などにおける熱的安定性の
向上に寄与し、少ない結合樹脂量で良好な成形性を確保
する上でも重要な役割を果たす。
【0072】この酸化防止剤は、組成物の製造時や磁石
への成形時等において、揮発したり、変質したりするの
で、製造された希土類ボンド磁石中には、その一部が残
留した状態で存在する。
【0073】酸化防止剤としては、磁石粉末等の酸化を
防止または抑制し得るものであればいかなるものでもよ
く、例えば、アミン系化合物、アミノ酸系化合物、ニト
ロカルボン酸類、ヒドラジン化合物、シアン化合物、硫
化物等の、金属イオン、特にFe成分に対し、キレート
化合物を形成するキレート化剤等が挙げられる。
【0074】このような酸化防止剤を添加する場合、組
成物中での酸化防止剤の含有量は、0.2〜3wt%で
あるのが好ましく、0.5〜2wt%であるのがさらに
好ましい。
【0075】4.その他の添加剤 また、組成物中には、必要に応じて、例えば、可塑剤
(例えば、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸塩、オレイン酸
等の脂肪酸)、潤滑剤(例えば、シリコーンオイル、各
種ワックス、脂肪酸、アルミナ、シリカ、チタニア等の
各種無機潤滑剤)、その他成形助剤等の各種添加剤を添
加することができる。
【0076】[希土類ボンド磁石用組成物の混練]以上
のような希土類ボンド磁石用組成物は、各構成成分を混
合した混合物として、または、この混合物をさらに混練
した混練物として、後述する温間成形に供されるが、本
発明では、特に、この混練物を用いて温間成形を行うの
が好ましい。
【0077】各構成成分の混合は、前述したように、例
えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機等の混合機や攪
拌機を用いて行われる。
【0078】また、混練は、例えば、ロール式混練機、
ニーダー、二軸押出混練機等の混練機等を用いて行われ
る。
【0079】この混練は、常温下で行われてもよいが、
用いられる結合樹脂が軟化を開始する温度またはそれ以
上の温度で行われるのが好ましい。特に、結合樹脂が熱
硬化性樹脂である場合、結合樹脂が軟化を開始する温度
以上の温度で、かつ結合樹脂が硬化を開始する温度未満
の温度で混練されるのが好ましい。
【0080】このような温度で混練を行うことにより、
混練の効率が向上し、常温で混練する場合に比べて、よ
り短時間で均一に混練することが可能となるとともに、
結合樹脂の粘度が下がった状態で混練されるので、磁石
粉末の周囲を結合樹脂が覆うような状態となり、組成物
中およびそれより製造された磁石中の空孔率の減少に寄
与する。
【0081】[造粒または整粒]混合または混練するこ
とにより得られた組成物(コンパウンド)は、必要に応
じ、造粒または整粒され、粒状体として温間成形に供さ
れる。これにより、成形の作業、特に、成形金型への組
成物の充填作業等をより簡単に行うことができるととも
に、寸法のバラツキが抑制され、寸法安定性が向上す
る。
【0082】造粒または整粒の方法は、特に限定されな
いが、粉砕によりなされるのが好ましい。この粉砕は、
例えば、ボールミル、振動ミル、破砕機、ジェットミ
ル、ピンミル等を用いて行われる。
【0083】また、例えば、押出式造粒機のような造粒
機を用いて行うこともでき、さらには、造粒機による造
粒と、前記粉砕とを組み合わせて行うこともできる。
【0084】また、粒状体の粒径の調整は、篩い等を用
いて分級することにより行うことができる。
【0085】粒状体としては、その最大粒径が成形金型
のギャップ(粒状体を充填する空間)の最小寸法以下で
あるのが好ましく、また、その最大粒径が0.3mm以
上であるのが好ましく、0.5mm以上であるのがより
好ましい。粒状体の最大粒径が成形金型のギャップの最
小寸法を超えると、粒状体の金型への充填作業がし難く
なり、希土類ボンド磁石の寸法精度の向上が不十分とな
る。一方、粒状体の最大粒径が小さすぎると、得られた
希土類ボンド磁石の空孔率が上昇する傾向を示す。
【0086】また、同様の理由から、粒状体の平均粒径
は、0.01〜0.5mmであるのが好ましく、0.0
5〜0.3mmであるのがより好ましい。
【0087】このような粒状体は、粒径にある程度のバ
ラツキがあるものでもよいが、粒径ができるだけ均一な
ものであるのが好ましい。
【0088】[磁石成形体の成形(温間成形)]このよ
うにして得られたコンパウンドを所定の形状に成形する
ことにより、磁石成形体が製造される。この成形は、前
記結合樹脂が軟化または溶融状態となる温度で行われる
(温間成形)。
【0089】なお、成形の方法としては、前述した圧縮
成形、射出成形、押出成形等の方法のうちのいずれでも
よいが、表面粗さRaの値を小さくし易いという点で圧
縮成形が好ましい。以下、代表して圧縮成形について説
明する。
【0090】温間圧縮成形は、コンパウンドを圧縮成形
機の成形金型内に充填し、磁場中または無磁場中で、コ
ンパウンドを加圧することにより行われる。磁場中で成
形されることにより得られる磁石成形体は、異方性の希
土類ボンド磁石の製造に用いられ、無磁場中で成形され
ることにより得られる磁石成形体は、等方性の希土類ボ
ンド磁石の製造に用いられる。
【0091】この温間圧縮成形は、成形金型を加熱する
こと等により、成形時のコンパウンドの温度を、用いら
れる結合樹脂が溶融する所定の温度とした状態で行われ
る。
【0092】このときの金型温度は、用いられる結合樹
脂の軟化点以上の温度であればよいが、結合樹脂の融点
をt℃としたとき、t〜(t+80)℃程度であるのが
好ましい。ただし、結合樹脂が熱硬化性樹脂であり、か
つこの結合樹脂の硬化を開始する温度が(t+80)よ
り低い場合、温間圧縮成形時における金型温度の上限
は、結合樹脂の硬化を開始する温度未満の温度であるの
が好ましい。
【0093】このような温度で温間圧縮成形を行うこと
により、成形時におけるコンパウンドの流動性が向上
し、低空孔率で、表面粗さRaの小さい磁石成形体を製
造することができる。
【0094】なお、n種類の樹脂を混合して用いる場
合、前述した結合樹脂の融点t(℃)は、例えば、次の
ようにして換算することができる。
【0095】結合樹脂として用いられる樹脂の合計を1
重量部としたときの各樹脂の量をそれぞれA1、A2、・
・・An重量部、各樹脂の融点をそれぞれt1、t2、・
・・tn(℃)としたとき、用いられる結合樹脂の融点
は、A11+A22+・・・Ann(℃)で表される。
【0096】温間圧縮成形時における成形圧力は、成形
時の金型温度等によって若干異なるが、100〜980
MPaであるのが好ましく、200〜700MPaであ
るのがより好ましい。
【0097】このようにして得られた磁石成形体の空孔
率は、5vol%以下であるのが好ましく、3vol%
以下であるのがより好ましい。希土類ボンド磁石の空孔
率が上限値を超えると、用途によっては、満足な磁気特
性が得られない場合がある。
【0098】また、磁石成形体の表面の表面粗さRa
は、10μm以下であり、特に、5μm以下であるのが
好ましく、0.05〜2μm以下であるのがより好まし
い。
【0099】表面粗さRaをこのような範囲に限定する
ことにより、後述する金属メッキ層を均一、均質に形成
することが可能となる。また、メッキ層におけるピンホ
ールの形成も防止されるため、得られる希土類ボンド磁
石の耐食性、機械的強度を向上することが可能となる。
また、湿式メッキによる金属メッキ層の形成時に、メッ
キ液が空孔部等に残存するのが防止されるため、残留メ
ッキ液が原因で発生する磁石の腐食等を防止することが
できる。
【0100】なお、磁石成形体の表面粗さRaは、少な
くとも金属メッキ層が形成される部位において、前述し
た範囲であればよい。
【0101】圧縮成形、射出成形、押出成形等の各種方
法により得られた磁石成形体に対しては、必要に応じ、
切断、切削、研削、研磨等の加工や、表面の清浄化、化
学処理等の後処理を施してもよい。このような処理は、
前記表面粗さの調整を目的として行われてもよい。
【0102】[金属メッキ層の形成]このようにして得
られた磁石成形体の前記表面(表面粗さRaが10μm
以下の表面)に対して、金属メッキ層の形成を行う。
【0103】この金属メッキ層の形成は、磁石成形体の
表面に対し、樹脂による封孔処理を施さずに直接行う。
【0104】このため、封孔処理の工程を必要とするこ
となく希土類ボンド磁石を製造することができ、生産性
の向上に寄与する。また、前述したように、磁石成形体
の表面は、その表面粗さRaが10μm以下と十分に平
滑になっているため、磁石成形体の表面に、直接金属メ
ッキ層を形成しても、各部位における金属メッキ層の厚
さや質が均一になる。これにより、得られる希土類ボン
ド磁石の耐食性、機械的強度を高いものとすることがで
きる。また、磁石成形体の表面粗さRaが小さく、表面
に存在する空孔等も少ない。このため、メッキ液の空孔
部等への残存が原因となる磁石の腐食等の問題も発生し
にくい。
【0105】この金属メッキ層を構成する金属として
は、例えば、Ni、Cu、Cr、Zn、Sn、Ag、A
u、Ptあるいは、これらを含む合金等が挙げられる
が、その中でもNi、またはNiを含む金属であるのが
好ましい。金属メッキ層がこのような金属で構成される
ことにより、良好な耐食性とともに、磁石としての高い
強度が得られる。
【0106】金属メッキ層の形成方法としては、例え
ば、電解メッキ、無電解メッキ、浸漬メッキ等の湿式メ
ッキや、例えば、蒸着、スパッタリング、CVD、PV
D等の乾式メッキ等が挙げられる。その中でも、湿式メ
ッキであるのが好ましく、電解メッキであるのがより好
ましい。このような方法で金属メッキ層を形成すること
により、低い工程コストで密着性の良好なメッキ層を形
成することができる。
【0107】金属メッキ層の厚さは、特に限定されない
が、3〜70μmであるのが好ましく、5〜50μmで
あるのがより好ましい。金属メッキ層の厚さが下限値未
満であると、得られる希土類ボンド磁石が十分な耐食
性、機械的強度を有さない場合がある。一方、金属メッ
キ層の厚さが上限値を超えると、希土類ボンド磁石の生
産性が低下する。
【0108】また、金属メッキ層の厚さをT[μm]と
したとき、前述した磁石成形体の表面粗さRa[μm]
との間で、下記式(I)を満足するのが好ましい。
【0109】1.2≦T/Ra≦100・・・(I) また、式(I)に代わり、式(II)を満足するのがより
好ましい。
【0110】3≦T/Ra≦50・・・(II) T/Raの値が前記式中の下限値未満であると、得られ
る希土類ボンド磁石が十分な耐食性、機械的強度を有さ
ない場合がある。一方、T/Raの値が前記式中の上限
値を超えると、希土類ボンド磁石の生産性が低下する場
合がある。
【0111】なお、金属メッキ層の形成の前処理とし
て、前記工程で得られた磁石成形体に対し、必要に応
じ、表面の清浄化、下地処理、その他種々の化学処理等
を施してもよい。
【0112】本発明の希土類ボンド磁石は、圧縮応力を
加えることにより測定される破壊強度が21MPa以上
であるのが好ましく、25MPa以上であるのがより好
ましい。
【0113】本発明の希土類ボンド磁石は、保磁力(室
温での固有保磁力)HcJが320〜1600kA/m程
度であるのが好ましく、400〜1200kA/m程度
であるのがより好ましい。保磁力が前記下限値未満で
は、用途によっては逆磁場がかかったときの減磁が顕著
になり、また、高温における耐熱性が劣る。また、保磁
力が前記上限値を超えると、着磁性が低下する。従っ
て、保磁力HcJを上記範囲とすることにより、希土類ボ
ンド磁石(特に、円筒状磁石)に多極着磁等をするよう
な場合に、十分な着磁磁場が得られないときでも、良好
な着磁が可能となり、十分な磁束密度が得られ、高性能
な希土類ボンド磁石を提供することができる。
【0114】本発明の希土類ボンド磁石は、最大磁気エ
ネルギー積(BH)maxが50kJ/m3以上であるのが
好ましく、80kJ/m3以上であるのがより好まし
い。最大磁気エネルギー積(BH)maxが50kJ/m3
未満であると、モータ用に用いた場合、その種類、構造
によっては、十分なトルクが得られない。
【0115】本発明の希土類ボンド磁石の形状、寸法等
は特に限定されず、例えば、形状に関しては、例えば、
円柱状、角柱状、円筒状(リング状)、円弧状、平板
状、湾曲板状等のあらゆる形状のものが可能であり、そ
の大きさも、大型のものから超小型のものまであらゆる
大きさのものが可能である。
【0116】
【実施例】次に、本発明の具体的実施例について説明す
る。
【0117】(実施例1)合金組成が(Nd0.7Pr
0.25Dy0.058.6FebalCo7.05.3Al0.5で表さ
れ、その構成組織が、R2(Fe・Co)14B型相(ハ
ード磁性相)と、α−(Fe,Co)型相(ソフト磁性
相)とからなる複合組織(ナノコンポジット組織)であ
る等方性の希土類磁石粉末を用意した。この希土類磁石
粉末の平均粒径は、40μmであった。
【0118】この希土類磁石粉末と、融点が178℃の
ポリアミド樹脂(ナイロン12)と、ヒドラジン系酸化
防止剤とを混合した後、さらにこれらを225℃×15
分間、混練して希土類ボンド磁石用組成物(コンパウン
ド)を作製した。このとき、希土類磁石粉末、ポリアミ
ド樹脂(ナイロン12)、ヒドラジン系酸化防止剤の配
合比率(重量比)は、それぞれ97wt%、1.6wt
%、1.4wt%とした。
【0119】次いで、このコンパウンドを粉砕して平均
粒径0.3mmの粒状体とし、この粒状体を圧縮成形機
の金型内に充填して、無磁場中で温間圧縮成形し、直径
10mm×高さ7mmの円柱状の磁石成形体を得た。こ
のとき、成形時の金型温度を130〜240℃の範囲で
変化させた7つの条件でそれぞれ30個の磁石成形体を
製造した(サンプルNo.1〜No.7)。成形圧力
は、いずれも400MPaであった。
【0120】得られた磁石成形体の表面を純水中で清浄
化した後、それぞれの条件で得られた磁石成形体につい
て、密度、表面の表面粗さRaの測定を行った。表面粗
さRaは、磁石成形体の両端面および周面上の10箇所
の点において、光学的方法により測定し、その平均値を
求めた。また、希土類磁石粉末等の配合比、磁石成形体
の密度から、磁石成形体の空孔率を算出した。各条件の
磁石成形体について、成形時の金型温度、密度、表面の
表面粗さRa、空孔率の平均値を表1に示す。
【0121】次に、各磁石成形体の表面に金属メッキ層
を形成し、等方性の希土類ボンド磁石とした。メッキ用
金属として、Niを用いて、バレルメッキにより電気メ
ッキを行った。ニッケルメッキ層の厚さTは、得られた
希土類ボンド磁石の両端面および周面上の10箇所の点
において、蛍光X線型厚さ計により測定した。これらの
平均値を表1に示す。併せて、T/Raの値も表1に示
す。
【0122】
【表1】
【0123】これらの希土類ボンド磁石について、磁場
強度3.2MA/mのパルス着磁を施した後、直流自記
磁束計(東英工業(株)製、TRF−5BH)にて最大
印加磁場2.0MA/mで磁気特性(磁束密度Br、保
磁力HcJおよび最大磁気エネルギー積(BH)max)を
測定した。測定時の温度は、23℃(室温)であった。
【0124】各希土類ボンド磁石について、磁束密度B
r、保磁力HcJ、および最大磁気エネルギー積(BH)
maxの値を表2に示す。
【0125】また、各希土類ボンド磁石(各20個)に
ついて、耐食性試験を行った。この耐食性試験は、各希
土類ボンド磁石を80℃×90%RHの雰囲気中に10
00時間静置した後、発錆の有無を検査した。各条件の
希土類ボンド磁石について、発錆の認められた個数を表
2に示す。
【0126】さらに、各希土類ボンド磁石(各10個)
について、破壊強度を測定した。破壊強度は、ロードセ
ルにより、圧縮応力を加えることにより測定し、その平
均値を求めた。その結果を表2に示す。
【0127】
【表2】
【0128】表2から明らかなように、サンプルNo.
3〜No.7(本発明)の希土類ボンド磁石は、いずれ
も、優れた磁気特性(残留磁束密度Br、最大磁気エネ
ルギー積(BH)maxおよび保磁力HcJ)を有してお
り、耐食性試験においても発錆が認められなかったのに
対し、サンプルNo.1、No.2(比較例)の希土類
ボンド磁石は、磁気特性が劣っており、耐食性試験にお
いても、それぞれ10個、8個の希土類ボンド磁石に発
錆が認められた。
【0129】また、破壊強度の試験においても、本発明
の希土類ボンド磁石(サンプルNo.3〜No.7)
は、比較例の希土類ボンド磁石(サンプルNo.1、N
o.2)より、すぐれた機械的強度を有することが確認
された。
【0130】(実施例2)合金組成がNd12.6Fe80.5
6.5Ga0.3Zr0.1で表される異方性の希土類磁石粉
末を用意した。この希土類磁石粉末の平均粒径は、50
μmであった。
【0131】この希土類磁石粉末と、融点が178℃の
ポリアミド樹脂(ナイロン12)と、ヒドラジン系酸化
防止剤とを混合した後、さらにこれらを225℃×15
分間、混練して希土類ボンド磁石用組成物(コンパウン
ド)を作製した。このとき、希土類磁石粉末、ポリアミ
ド樹脂(ナイロン12)、ヒドラジン系酸化防止剤の配
合比率(重量比)は、それぞれ97wt%、1.6wt
%、1.4wt%とした。
【0132】次いで、このコンパウンドを粉砕して平均
粒径0.25mmの粒状体とし、この粒状物を圧縮成形
機の金型内に充填して、磁場強度1.2MA/mの磁場
中で温間圧縮成形し、直径10mm×高さ7mmの円柱
状の磁石成形体を得た。このとき、成形時の金型温度を
130〜240℃の範囲で変化させた7つの条件でそれ
ぞれ30個の磁石成形体を製造した(サンプルNo.8
〜No.14)。成形圧力は、いずれも350MPaで
あった。
【0133】得られた磁石成形体の表面を純水中で清浄
化した後、それぞれの条件で得られた磁石成形体につい
て、密度、表面の表面粗さRaの測定を行った。表面粗
さRaは、磁石成形体の両端面および周面上の10箇所
の点において、光学的方法により測定し、その平均値を
求めた。また、希土類磁石粉末等の配合比、磁石成形体
の密度から、磁石成形体の空孔率を算出した。各条件の
磁石成形体について、成形時の金型温度、密度、表面の
表面粗さRa、空孔率の平均値を表3に示す。
【0134】次に、各磁石成形体の表面に金属メッキ層
を形成し、異方性の希土類ボンド磁石とした。メッキ用
金属として、Niを用いて、バレルメッキにより電気メ
ッキを行った。ニッケルメッキ層の厚さTは、得られた
希土類ボンド磁石の両端面および周面上の10箇所の点
において、蛍光X線型厚さ計により測定した。これらの
平均値を表3に示す。併せて、T/Raの値も表3に示
す。
【0135】
【表3】
【0136】これらの希土類ボンド磁石について、磁場
強度3.2MA/mのパルス着磁を施した後、直流自記
磁束計(東英工業(株)製、TRF−5BH)にて最大
印加磁場2.0MA/mで磁気特性(磁束密度Br、保
磁力HcJおよび最大磁気エネルギー積(BH)max)を
測定した。測定時の温度は、23℃(室温)であった。
【0137】各希土類ボンド磁石について、磁束密度B
r、保磁力HcJ、および最大磁気エネルギー積(BH)
maxの値を表4に示す。
【0138】また、各希土類ボンド磁石(各20個)に
ついて、耐食性試験を行った。この耐食性試験は、各希
土類ボンド磁石を80℃、90%RHの雰囲気中に10
00時間静置した後、発錆の有無を検査した。各条件の
希土類ボンド磁石について、発錆の認められた個数を表
4に示す。
【0139】さらに、各希土類ボンド磁石(各10個)
について、破壊強度を測定した。破壊強度は、ロードセ
ルにより、圧縮応力を加えることにより測定し、その平
均値を求めた。その結果を表4に示す。
【0140】
【表4】
【0141】表4から明らかなように、サンプルNo.
10〜No.14(本発明)の希土類ボンド磁石は、い
ずれも、優れた磁気特性(残留磁束密度Br、最大磁気
エネルギー積(BH)maxおよび保磁力HcJ)を有して
おり、耐食性試験においても発錆が認められなかったの
に対し、サンプルNo.8、No.9(比較例)の希土
類ボンド磁石は、磁気特性が劣っており、耐食性試験に
おいても、それぞれ11個、7個の希土類ボンド磁石に
発錆が認められた。
【0142】また、破壊強度の試験においても、本発明
の希土類ボンド磁石(サンプルNo.10〜No.1
4)は、比較例の希土類ボンド磁石(サンプルNo.
8、No.9)より、すぐれた機械的強度を有すること
が確認された。
【0143】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、次
のような効果が得られる。
【0144】・金属メッキ層が均一、均質であり、その
ため、耐食性にすぐれ、機械的強度が大きい。
【0145】・磁石成形体の表面上に従来のような封孔
処理を施すことなく、直接金属メッキ層が形成されるた
め、希土類ボンド磁石の製造において、工程数の増大が
抑えられ、生産性の向上に寄与する。
【0146】・磁石成形体の表面粗さRaが小さいた
め、湿式メッキによる金属メッキ層の形成時にメッキ液
が残留することによって生じる磁石の腐食等を防止する
ことができる。
【0147】・空孔率を低くすることができ、よって、
優れた磁気特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の希土類磁石粉末における複合組織(ナ
ノコンポジット組織)の一例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の希土類磁石粉末における複合組織(ナ
ノコンポジット組織)の一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の希土類磁石粉末における複合組織(ナ
ノコンポジット組織)の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
10 ソフト磁性相 11 ハード磁性相

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 希土類磁石粉末と、結合樹脂とを混合ま
    たは混練して希土類ボンド用組成物を製造する工程と、 前記希土類ボンド用組成物に対し、前記結合樹脂が軟化
    または溶融状態となる温度で温間成形を施し、表面粗さ
    Raが10μm以下となる表面を持つ磁石成形体を製造
    する工程と、 前記磁石成形体の前記表面に直接金属メッキ層を形成す
    る工程とを有することを特徴とする希土類ボンド磁石の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 前記温間成形は、圧縮成形である請求項
    1に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記結合樹脂は、熱可塑性樹脂である請
    求項1または2に記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記磁石成形体の空孔率は、5vol%
    以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の希土類
    ボンド磁石の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記金属メッキ層は、ニッケルメッキ層
    である請求項1ないし4のいずれかに記載の希土類ボン
    ド磁石の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記金属メッキ層の厚さは、3〜70μ
    mである請求項1ないし5のいずれかに記載の希土類ボ
    ンド磁石の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記金属メッキ層の厚さをT[μm]と
    したとき、前記表面の表面粗さRa[μm]との間で、
    1.2≦T/Ra≦100の関係を満足する請求項1な
    いし6のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 前記希土類ボンド磁石用組成物中の前記
    結合樹脂の含有量は、1〜10wt%である請求項1な
    いし7のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 前記希土類磁石粉末の平均粒径は、1〜
    150μmである請求項1ないし8のいずれかに記載の
    希土類ボンド磁石の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記希土類磁石粉末は、希土類元素と
    遷移金属とを含む合金よりなるものである請求項1ない
    し9のいずれかに記載の希土類ボンド磁石の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記希土類磁石粉末は、ソフト磁性相
    とハード磁性相とを有する複合組織で構成されるもので
    ある請求項1ないし10のいずれかに記載の希土類ボン
    ド磁石の製造方法。
  12. 【請求項12】 希土類ボンド磁石は、等方性である請
    求項1ないし11のいずれかに記載の希土類ボンド磁石
    の製造方法。
  13. 【請求項13】 希土類ボンド磁石は、異方性である請
    求項1ないし11のいずれかに記載の希土類ボンド磁石
    の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項1ないし13のいずれかに記載
    の希土類ボンド磁石の製造方法により製造されたことを
    特徴とする希土類ボンド磁石。
  15. 【請求項15】 希土類磁石粉末と、結合樹脂とで構成
    される磁石成形体の表面に金属メッキ層が直接形成され
    た希土類ボンド磁石であって、 前記磁石成形体の空孔率が5vol%以下であり、か
    つ、 前記磁石成形体の前記表面の表面粗さRaが10μm以
    下であることを特徴とする希土類ボンド磁石。
  16. 【請求項16】 前記結合樹脂は、熱可塑性樹脂である
    請求項15に記載の希土類ボンド磁石。
  17. 【請求項17】 前記金属メッキ層は、ニッケルメッキ
    層である請求項15または16に記載の希土類ボンド磁
    石。
  18. 【請求項18】 前記磁石成形体中の前記希土類磁石粉
    末の含有量は、90〜99wt%である請求項14ない
    し17のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
  19. 【請求項19】 圧縮応力を加えることにより測定され
    る破壊強度が21MPa以上である請求項14ないし1
    8のいずれかに記載の希土類ボンド磁石。
  20. 【請求項20】 室温での固有保磁力HcJが320〜1
    600kA/mである請求項14ないし19のいずれか
    に記載の希土類ボンド磁石。
  21. 【請求項21】 最大磁気エネルギー積(BH)max
    50kJ/m3以上である請求項14ないし20のいず
    れかに記載の希土類ボンド磁石。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7045923B2 (en) 2003-07-01 2006-05-16 Nidec Corporation Magnetizing method and permanent magnet magnetized thereby
CN113012885A (zh) * 2021-04-02 2021-06-22 向小燕 一种耐腐蚀的永磁材料及其制备方法

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