JP2001255318A - 神経細胞死抑制作用を有する薬剤及びそのスクリーニング方法 - Google Patents

神経細胞死抑制作用を有する薬剤及びそのスクリーニング方法

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JP2001255318A JP2000064984A JP2000064984A JP2001255318A JP 2001255318 A JP2001255318 A JP 2001255318A JP 2000064984 A JP2000064984 A JP 2000064984A JP 2000064984 A JP2000064984 A JP 2000064984A JP 2001255318 A JP2001255318 A JP 2001255318A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルツハイマー病等の患者の生体内に存在す
る自己会合型アミロイドβ蛋白質と同等の高い毒性を有
するアミロイドβ蛋白質を用いて、精度よく神経細胞死
抑制作用を有する薬剤をスクリーニングする方法を提供
する。 【解決手段】 神経細胞死抑制作用を有する薬剤のスク
リーニング方法であって、下記の工程:(1)アミロイド
β蛋白質を含む水溶液を対流させることなどにより得ら
れる高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質及
び被検物質の存在下で神経系細胞又は神経系器官を培養
する工程;及び(2)上記神経系細胞又は神経系器官の細
胞死が抑制された場合に上記被検物質が神経細胞死に対
して抑制作用を有すると判定する工程を含む方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い毒性を有する
自己会合型アミロイドβ蛋白質を用いた神経細胞死抑制
作用を有する化合物のスクリーニング方法、並びに該方
法でスクリーニングされた神経細胞死抑制作用を有する
化合物又はその塩、及び該化合物又はその塩を有効成分
として含むアルツハイマー病の予防及び/又は治療のた
めの医薬に関する。
【0002】
【従来の技術】アミロイドβ蛋白質はアミノ酸約40残
基の非常に凝集性の高い蛋白質であり、アルツハイマー
病(Alzheimer's disease:AD)
の主要な病理学的変化のひとつである老人斑の主要な構
成成分である。また、この蛋白質は、突然変異によって
早期発症型アルツハイマー病の原因遺伝子となるアミロ
イド前駆体蛋白質(APP)からプロテアーゼによるプ
ロセッシングにより産生されることが判明している(K
ang,J.et al.,Nature,325,7
33−736(1987);Goldgaber,D.
et al.,Science,235,877−88
0(1987);Robakis,N.K.et a
l.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,
84,4190−4194(1987))。
【0003】このプロセッシングによりアミロイドβ蛋
白質は水溶性のペプチドとして細胞外に放出されるが、
その状態では神経細胞死誘発活性(以下、本明細書にお
いて神経細胞死誘発活性を「毒性」と称することがあ
る。)を発揮せず、自己会合してアミロイドβ線維を形
成することにより初めて毒性を獲得することが知られて
いる(Lorezo,A.and Yanker,B.
A.,Proc.Natl.Acad.Sci.US
A,91,12243−12247(1994);以
下、自己会合して毒性を示すアミロイドβ蛋白質を「自
己会合型アミロイドβ蛋白質」又は「毒性アミロイドβ
蛋白質」と呼ぶ場合がある。)。Lorezoらの方法
は、アミロイドβ1-40を超純水に700μMになるよう
に溶解し、同量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で塩
濃度を調節した後、37℃で5日間インキュベートする
工程を含んでいる。アミロイドβ1-42を用いる場合に
は、超純水に350μMになるように溶解し、37℃で
3日間インキュベートする工程を含む。
【0004】この自己会合型アミロイドβ蛋白質を神経
系の培養細胞に高濃度で添加すると細胞を死に至らしめ
ることができることから、アルツハイマー病においては
自己会合して毒性を獲得した自己会合型アミロイドβ蛋
白質が神経変性を誘発していると考えられている。従っ
て、自己会合型アミロイドβ蛋白質の添加により神経系
細胞等に細胞死を誘発する実験系は、アルツハイマー病
における生体内での神経細胞死を反映していると考える
ことができ、神経細胞死の抑制剤のスクリーニング系な
どに有用である。
【0005】しかしながら、上記のLozeroらによ
る細胞死を誘発する系において用いられた自己会合型ア
ミロイドβ蛋白質はその毒性が低く、試験管内で神経細
胞死を誘発するために必要な濃度は、アルツハイマー病
等の患者の生体内に存在する毒性アミロイドβ蛋白質の
1,000倍以上であった。また、上記の方法では毒性
を有するアミロイドβ蛋白質含有液が再現性よく調製で
きず、調製された毒性を有するアミロイドβ蛋白質含有
液を保存すると、ある期間を過ぎて毒性が失われるとい
う問題もあった。
【0006】従来、神経細胞死の抑制剤をスクリーニン
グする方法として、上記の自己会合型アミロイドβ蛋白
質を用いてインビトロでスクリーニングを行う方法が採
用されているが、上記の理由から、この方法では生体内
の環境とは大きく乖離した条件を適用するものであり、
精度のよいスクリーニング方法であるとは言いがたい。
このため、生体内に存在する毒性アミロイドβ蛋白質と
同等の毒性を有する自己会合型アミロイドを用いて、生
体内環境により近い条件で精度よくスクリーニングを行
う方法の開発が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、アル
ツハイマー病等の患者の生体内に存在する自己会合型ア
ミロイドβ蛋白質と同等の高い毒性を有し、かつその毒
性が維持される自己会合型アミロイドβ蛋白質を用い
て、生体内環境により近い条件で精度よくスクリーニン
グを行う方法を提供することにある。また、本発明の別
の課題は、上記の方法によりスクリーニングされた神経
細胞死の抑制剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、アミロイ
ドβ蛋白質を含む水溶液を対流させて一定時間処理する
ことにより、あるいは該水溶液中にアミロイドβ蛋白質
の凝集媒体を添加することによりアミロイドβ蛋白質の
自己会合を誘起させることによってアミロイドβ蛋白質
の自己会合を再現性よく誘発できること、及びこの処理
によって得られる自己会合型アミロイドβ蛋白質が生体
内に存在する自己会合型アミロイドβ蛋白質と同等の高
い毒性を有しており、かつその毒性が長期にわたって保
持されることを見いだした。さらに、本発明者らは、上
記の自己会合型アミロイドβ蛋白質を用いることによっ
て、生体内環境により近い条件で精度よく神経細胞死の
抑制剤をスクリーニングできることを見出した。本発明
はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0009】すなわち、本発明は、神経細胞死抑制作用
を有する薬剤のスクリーニング方法であって、下記の工
程: (1)アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させること
により得られる、又はアミロイドβ蛋白質を含む水溶液
中にアミロイドβ蛋白質の凝集媒体を添加することによ
り得られる高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋
白質及び被検物質の存在下で神経系細胞又は神経系器官
を培養する工程;及び(2)上記神経系細胞又は神経系器
官の細胞死が抑制された場合に上記被検物質が神経細胞
死に対して抑制作用を有すると判定する工程を含む方法
を提供するものである。
【0010】この方法の好ましい態様によれば、アルツ
ハイマー病等の患者の生体内に存在する自己会合型アミ
ロイドβ蛋白質と実質的に同等の毒性を有する自己会合
型アミロイドβ蛋白質の存在下で行う上記の方法;その
毒性がアルツハイマー病等の患者の生体内に存在する自
己会合型アミロイドβ蛋白質と実質的に同等の濃度で神
経系細胞に細胞死を誘発するのに十分な毒性である自己
会合型アミロイドβ蛋白質の存在下で行う上記の方法が
提供される。
【0011】別の観点からは、上記の方法によりスクリ
ーニングされた神経細胞死抑制作用を有する化合物又は
その塩;上記の化合物又は生理学的に許容されるその塩
を有効成分として含む神経細胞死抑制剤;上記の化合物
又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含む
アルツハイマー病の予防及び/又は治療のための医薬が
本発明により提供される。
【0012】また、上記スクリーニングにより神経細胞
死の抑制作用を有すると判定される化合物の代表例とし
て、下記の一般式(I):
【化2】 (式中、R1はハロゲン原子及びC1-6アルキル基からな
る群から選ばれる1又は2以上の置換基を有していても
よいフェニル基を示し;R2は水素原子又はC1-6アルキ
ル基を示す)で表される神経細胞死抑制作用を有する化
合物又はその塩が本発明により提供される。
【0013】また、本発明により、上記の一般式(I)で
表される化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効
成分として含む神経細胞死抑制剤;上記の一般式(I)で
表される化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効
成分として含むアルツハイマー病の予防及び/又は治療
のための医薬;上記の医薬の製造のための上記の一般式
(I)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩
の使用;神経系細胞の神経細胞死の抑制方法であって、
上記の一般式(I)で表される化合物又は生理学的に許容
されるその塩の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与す
る工程を含む方法;並びにアルツハイマー病の予防及び
/又は治療方法であって、上記の一般式(I)で表される
化合物又は生理学的に許容されるその塩の予防及び/又
は治療有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を
含む方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明のスクリーニング方法に用
いられる自己会合型アミロイドβ蛋白質の調製原料とし
て使用されるアミロイドβ蛋白質の種類は特に限定され
ない。アミロイドβ蛋白質は、約40のアミノ酸残基か
らなる蛋白質であり、アミロイド前駆体蛋白質(AP
P)からプロテアーゼによるプロセッシングで産生され
る。このプロテアーゼの種類やその後の修飾によってさ
まざまな種類が存在することが知られているが、分泌直
後にはC末端のアミノ酸残基の長さの違いによりアミロ
イドβ40(AβX-40)とアミロイドβ42(A
βX-42)が存在する。
【0015】本発明のスクリーニング方法に用いられる
自己会合型アミロイドβ蛋白質の調製には、例えば、分
泌直後のアミロイドβ蛋白質の全長の分子種であるアミ
ロイドβ40(Aβ1-40:配列番号1)若しくはアミロ
イドβ42(Aβ1-42:配列番号2)、又はそれらの変
異体、あるいはそれらの誘導体が好ましく用いられる。
アミロイドβ蛋白質は、ペプチド合成機などを用いて合
成したもの、市販のもの、又は生体内から抽出精製した
もの、いかなるものを用いてもよい。アミロイドβ蛋白
質の合成、抽出精製は、それ自体公知の通常用いられて
いる方法で行うことができる。合成ペプチド等の精製は
高速液体クロマトグラフィにおいて単一のピークが得ら
れる程度行えば十分であるが、精製方法として、例え
ば、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィ等が用いられ
る。
【0016】本発明のスクリーニング方法に用いられる
自己会合型アミロイドβ蛋白質の調製は、通常、このよ
うにして得られたアミロイドβ蛋白質を滅菌精製水に溶
解し、得られた溶液を惹起して維持することにより行わ
れる。溶解に用いる滅菌精製水の量は、アミロイドβ蛋
白質が溶解する範囲であればよいが、好ましくは水溶液
中のアミロイドβ蛋白質の濃度が50nM〜2mM、好
ましくは1μM〜1mM、さらに好ましくは100〜7
00μMとなる範囲である。この溶液を適当な塩濃度に
調節することが望ましい。塩濃度は、アミロイドβ蛋白
質が溶解される範囲であればいかなるものでもよいが、
例えば、最終pHが3〜12、好ましくは5〜10で、
塩が1M以下であることが好ましい。このような塩濃度
に調節する方法として、例えば、PBS(−)をアミロ
イドβ蛋白質水溶液と等量加える方法が用いられる。溶
解の方法はアミロイドβ蛋白質が適当な量の適当な塩濃
度の溶液に完全に溶解する方法であれば特に制限はな
い。
【0017】上記水溶液中のアミロイドβ蛋白質を自己
会合させるために上記水溶液を対流させるが、対流の流
速及び維持時間は、水溶液中のアミロイドβ蛋白質が自
己会合し、アルツハイマー病の患者の生体内における毒
性アミロイドβ蛋白質と同等の濃度で神経細胞死を誘導
する活性を有するようになるものであれば特に制限はな
い。ここで、アミロイドβ蛋白質の自己会合とは、該蛋
白質の2分子以上が共有結合以外の分子間相互作用によ
って結合し、1個の分子のように行動する現象を意味し
ており、通常は、さらに多数の分子が会合することによ
り、顆粒状、線維状等の分子が形成され、その結果とし
てアミロイドβ蛋白質の毒性が獲得される。
【0018】例えば、アミロイドβ蛋白質水溶液を含む
容器を、適当な温度範囲中で一定時間、適当な速度で回
転し続ける方法が有効である。また、アミロイドβ蛋白
質水溶液が常に対流し、かつ疎水性の界面に接触する状
態を維持させてもよい。例えば、超音波分散機やスター
ラー等で該水溶液を攪拌する方法、またはアミロイドβ
蛋白質水溶液を適当な流速で疎水性チューブ内で対流さ
せる方法等も挙げられる。
【0019】また、アミロイドβ蛋白質水溶液中にアミ
ロイドβ蛋白質の凝集媒体を添加する方法では、凝集媒
体としてポリエチレングリコール(PEG:分子量30
00〜6000程度のもの)などを添加し、1M以下程
度の適当な塩濃度の存在下で静置することによる方法が
挙げられる。アミロイドβ蛋白質の自己会合を誘起する
凝集媒体としては、一般的に、蛋白質の結晶化を誘起す
る物質を用いることができる。例えば、塩化リチウム、
塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩
化カルシウム、ギ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、
クエン酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニ
ウム、硝酸アンモニウム、硝酸マグネシウム、硫酸アン
モニウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウムセチルトリメ
チルアンモニウム塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウ
ムなどの無機塩類;PEG100、PEG4000、P
EG6000、PEG10000などのポリエチレング
リコール類;アセトニトリル、アセトン、イソプロパノ
ール、エタノール、ジオキサン、ジメチルスルホキシ
ド、ブタノール、1,3−ブチロラクトン、1,3−プ
ロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、メタノー
ル、2−メチル−2,4−ペンタンジオールなどの有機
溶媒を挙げることができる。凝集媒体の添加方法として
は、一般的に蛋白質の結晶化に用いられる添加方法を採
用することができる。これらの技術については、例え
ば、「生命科学のための結晶解析入門−タンパク質結晶
解析のてびき、平山令明著、丸善株式会社」などに記載
されている。
【0020】対流を維持するにあたり一定温度を維持す
ることが望ましいが、その温度範囲はアミロイドβ蛋白
質が変性しない範囲であれば特に制限はない。具体的に
は4〜50℃、好ましくは4〜40℃、さらに好ましく
は4〜37℃の範囲が挙げられる。容器に回転を加え続
ける方法としては、アミロイドβ蛋白質の水溶液を含む
容器を回転培養機、攪拌機、振とう機等を用いて回転さ
せる方法が用いられるが、この中で回転培養器を用いる
のが最も好ましい。回転速度は、通常200rpm以
下、好ましくは5〜50rpm、さらに好ましくは20
〜40rpmで行われる。また、回転を維持する時間
は、水溶液中のアミロイドβ蛋白質が自己会合して十分
な毒性を獲得するまで行われるが、具体的には回転の速
度等の条件により4時間〜7日程度行われる。
【0021】アミロイドβ蛋白質水溶液を充填する容器
としては、アミロイドβ蛋白質以外の蛋白質の混入が防
げるものであればいかなるものでもよいが、一般的に
は、蛋白質が吸着しない素材の容器が望ましい。具体的
には、プラスチック容器や、市販のエッペンドルフチュ
ーブ等がさらに望ましい。容量にも特に制限はない。ま
た、他の蛋白質の混入を防ぐために、容器をあらかじめ
オートクレーブ等を用いて滅菌しておくことは効果的で
ある。容器に充填するアミロイドβ蛋白質水溶液の量
は、容器の全容積の30〜90%、さらには50〜80
%が望ましい。容器中でアミロイドβ蛋白質水溶液に十
分な対流を惹起させ、その対流を一定に維持することが
望ましい。
【0022】このようにして得られた自己会合型アミロ
イドβ蛋白質は、このままでも神経系細胞に細胞死を誘
導することができ、本発明のスクリーニング方法にその
まま供することが可能である。もっとも、本発明のスク
リーニング方法に使用するにあたり、らにアミロイドβ
線維を取り除く等の精製を行ってもよい。精製の方法と
しては、自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を遠心分
離してその上清を分取する方法や、例えば0.45μm
以上の孔径を有するフィルター(例えば0.65μmの
フィルターと30kダルトン以上の分子量の物質をカッ
トするフィルターとの組み合わせなど)で線維を除去す
る方法、LPFFD(βシート破壊ペプチドiAβ5、
ペプチド研究所;アミノ酸配列は一文字標記で示した)
やKLVFF(アミノ酸配列は一文字標記で示した)等
のβシート破壊ペプチドで線維を分解して取り除く方
法、ゲル濾過等なども用いることが可能である。
【0023】本発明のスクリーニング方法は、下記の工
程; (1)アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させること
により得られる、又はアミロイドβ蛋白質を含む水溶液
中でアミロイドβ蛋白質の結晶化を誘起させることによ
り得られる高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋
白質及び被検物質の存在下で神経系細胞又は神経系器官
を培養する工程;及び(2)上記神経系細胞又は神経系器
官の細胞死が抑制された場合に上記被検物質が神経細胞
死に対して抑制作用を有すると判定する工程を含むこと
を特徴としている。
【0024】本発明の方法に用いられるスクリーニング
系では、被検薬物の非存在下において、上記の自己会合
型アミロイドβ蛋白質により神経系細胞又は神経系器官
の細胞死が誘導されるように調整する必要がある。本発
明のスクリーニング方法において、自己会合型アミロイ
ドβ蛋白質により誘導される細胞死は、アポトーシス又
はネクローシスのいずれでもよい。また、用いられる細
胞としては、神経系細胞であれば特に制限はなく、哺乳
動物(ヒト、ラット、マウス、サル、ブタ等)由来の神
経系細胞や、これらの細胞に分化が可能な細胞等でもよ
い。また、初代培養細胞又は樹立培養株のいずれでもよ
い。初代培養細胞としては、上記した動物の海馬、およ
び前脳基底野等から取得したものが好ましく、樹立培養
株としては、例えば、PC−12細胞(ATCC CR
L−1721)、B103(Schubert,D.e
t al.,Nature,249(454),224
−227(1974))等が好ましい。また上記動物の
海馬等の器官をそのまま用いることも可能である。
【0025】これらの細胞や器官は、通常の培養法によ
り培養することができる。具体的には、神経系細胞の初
代培養、および神経系細胞の培養方法としては、Hos
hi,M.et al.,Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA.,93,2719−2723(1
996)、およびSahubert,D.et a
l.,Nature,249(454),224−22
7(1974)に記載されている方法等を用いることが
でき、器官培養は、Gary Banker andK
imbery Goslin,Culturing n
erve cells,2nd Edition,MI
T Press,Cambridge(1998)に記
載された方法等を用いることができる。このようにして
培養された神経系細胞および神経系器官に細胞死を誘導
するために添加する上記の自己会合型アミロイドβ蛋白
質の量は適宜選択可能であるが、通常、アルツハイマー
病等の患者の生体内に存在する毒性アミロイドβ蛋白質
と実質的に同等の濃度で細胞死を誘導できる。例えば、
初代培養(1.25×106個/ml)あたり10nM以
上、400μm海馬スライス/1ml培養液あたり10
0pM以上などの量で細胞死を誘導できる。もっとも、
上記の濃度は例示のためのものであり、この量に限定さ
れることはない。
【0026】上記の自己会合型アミロイドβ蛋白質によ
って誘導される神経系細胞又は神経系器官の細胞死は、
通常の場合、本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質の
有効量を添加した後、約6時間程度から起こり、48時
間程度の後には顕著な細胞死の様子が観察できる。これ
らの細胞死を測定する方法としては、通常用いられる細
胞死検出法を用いることができる。具体的には、被検体
が細胞の場合、MTTアッセイ(Mossman,
T.,J.Immunol.Methods,65,5
5,(1983)、またはトリパンブルーダイエクスク
ルージョン法(Woo,K.B.,W.K.Funkh
ouser,C.Sullivan,andO.Ala
baster,Cell Tissue Kine
t.,13(6),591−604(1980))、プ
ロピディウムイオダイド等による染色法などが用いら
れ、器官スライス等の場合にはプロピディウムイオダイ
ド等による染色法等が用いられる。
【0027】上記の培養系に被検薬物を添加し、神経系
細胞又は神経系器官の細胞死が抑制された場合には、そ
の被検薬物が神経細胞死に対する抑制作用を有すると判
定することができる。例えば、神経系細胞または神経系
器官の培養液に予め被検物質を添加した後、上記の自己
会合型アミロイドβ蛋白質を添加し、あるいは神経系細
胞または神経系器官の培養液に上記の自己会合型アミロ
イドβ蛋白質を添加した後に被検物質を添加して、該神
経系細胞や組織の細胞死が被検薬物により抑制されるか
否かを検出すればよい。
【0028】本発明のスクリーニング方法により神経細
胞死に対して抑制作用を有すると判定された化合物は、
アルツハイマー病の予防及び/又は治療のための医薬の
有効成分として有用である。このような化合物の代表例
として、Genistein、Damnacantha
l、PP1、PP2(以上、いずれもCalbioch
em社より入手可能である)などのチロシンキナーゼの
阻害剤を例示することができるが、好ましくはSrcフ
ァミリーチロシンキナーゼの阻害剤を例示することがで
き、さらに好ましくは上記一般式(I)で表される化合物
を挙げることができる。もっとも、本発明のスクリーニ
ング方法で神経細胞死に対して抑制作用を有すると判定
される化合物は上記したチロシンキナーゼの阻害剤、S
rcファミリーチロシンキナーゼの阻害剤、及び上記式
(I)で表される化合物に限定されることはなく、上記ス
クリーニングの結果物として神経細胞死に対して抑制作
用を有すると判定された化合物は、いずれも本発明の範
囲に包含される。
【0029】一般式(I)中、R1はハロゲン原子及びC
1-6アルキル基からなる群から選ばれる1又は2以上の
置換基を有していてもよいフェニル基を示し;R2は水
素原子又はC1-6アルキル基を示す。R2が示すC1-6
ルキル基としては直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれら
の組み合わせのいずれでもよく、より具体例には、メチ
ル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シ
クロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−
ブチル基、イソブチル基、シクロブチル基、シクロプロ
ピルメチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などを挙
げることができる。R1が示すフェニル基上に置換する
置換基はハロゲン原子及びC1-6アルキル基からなる群
から選ばれ、その個数及び置換位置は特に限定されな
い。環上に置換するハロゲン原子は、フッ素原子、塩素
原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでもよく、ア
ルキル基としては上記R2について説明したものを用い
ることができ、好ましくはC1-4アルキル基である。
【0030】上記一般式(I)において、R1としてはp−
クロロフェニル基又はp−メチルフェニル基が好まし
く、R2としてはtert−ブチル基が好ましい。最も好ま
しい化合物は、4−アミノ−5−(4−クロロフェニ
ル)−7−(t−ブチル)ピラゾロ[3,4−d]ピリ
ミジン、又は4−アミノ−5−(4−メチルフェニル)
−7−(t−ブチル)ピラゾロ[3,4−d]ピリミジ
ンである。この化合物はHanke, J.H., et al., J. Bio
l. Chem., 271, 695, 1996に記載されており、Calbioch
em社から市販品を入手可能である。また、一般式(I)で
表される化合物は米国特許第5,593,997号明細
書に記載された方法で容易に製造することが可能であ
る。
【0031】本発明により提供される医薬は、本発明の
スクリーニング方法により神経細胞死に対して抑制作用
を有すると判定された化合物、好ましくは上記式(I)で
表される化合物及び生理学的に許容されるその塩、並び
にそれらの水和物及びそれらの溶媒和物からなる群から
選ばれる物質を有効成分として含み、アルツハイマー病
の予防及び/又は治療のための医薬として用いることが
できる。上記式(I)で表される化合物の生理学的に許容
される塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩などの鉱酸
類の塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、p-トルエンスルホン
酸塩などの有機酸の塩、グリシンなどのアミノ酸の塩な
どを挙げることができる。上記式(I)で表される化合物
は置換基の種類に応じて、1又は2以上の不斉炭素を有
する場合があるが、任意の光学活性体又はジアステレオ
異性体などの立体異性体、立体異性体の任意の混合物、
ラセミ体などを上記医薬の有効成分として用いてもよ
い。
【0032】本発明のスクリーニング方法により神経細
胞死に対して抑制作用を有すると判定された化合物、好
ましくは上記式(I)で表される化合物若しくはその塩、
又はそれらの水和物若しくはそれらの溶媒和物は、それ
自体を医薬として患者に投与してもよいが、一般には、
これらの有効成分の1種または2種以上を含む医薬組成
物を製造して患者に投与することが好適である。このよ
うな医薬組成物として、錠剤、カプセル剤、細粒剤、散
剤、丸剤、トローチ、舌下剤、又は液剤などの経口投与
の製剤、あるいは注射剤、座剤、軟膏、貼付剤などの非
経口投与用の製剤を例示することができる。
【0033】経口投与用の錠剤又はカプセル剤は、通常
は単位投与物として提供され、結合剤、充填剤、希釈
剤、打錠剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香味剤及び湿潤
剤のような通常の製剤用担体を添加して製造することが
できる。錠剤は、この当業界で周知の方法に従って、例
えば、腸溶性コーティング剤を用いてコーティングする
ことができ、例えばセルロース、マンニトール、又はラ
クトース等の充填剤;澱粉、ポリビニルポリピロリド
ン、澱粉誘導体、又はナトリウム澱粉グリコラート等の
崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;ラウリ
ル硫酸ナトリウム等の湿潤剤を用いて製造してもよい。
【0034】経口投与用の液剤は、例えば水性又は油性
懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ剤又はエリキシ
ル剤等の他、使用前に水又は適当な媒体により再溶解さ
れうる乾燥製剤として提供される。このような液剤に
は、通常の添加剤、例えばソルビール、シロップ、メチ
ルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロー
ス、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミ
ニウムゲル又は水素化食用脂肪のような沈殿防止剤、レ
シチン、ソルビタンモノオレート、アラビアゴムのよう
な乳化剤、アーモンド油、精製ココナッツ油、油状エス
テル(例えばグリセリンのエステル)、プロピレングリ
コール、エチルアルコールのような(食用油も包含しう
る)非水性媒体、p-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステ
ル、エチルエステル、もしくはプロピルエステル、又は
ソルビン酸のような保存剤及び必要に応じて通常の香味
剤又は着色剤を配合することができる。
【0035】経口投与剤の製剤は、混合、充填、又は打
錠などの当業界で周知の方法により製造することができ
る。また、反復配合操作を用いて多量の充填剤等を使用
した製剤中に有効成分を分布させてもよい。非経口投与
用の製剤は、一般には有効成分である化合物と滅菌媒体
とを含有する液体担体投与量製剤として提供される。非
経口投与用の溶剤は、通常、化合物を媒体に溶解させて
滅菌濾過し、次に適当なバイアル又はアンプルに充填し
て密封することにより製造される。安定性を高めるため
に組成物を凍結させた後にバイアル中に充填し、水を真
空下で除去してもよい。非経口懸濁液は実質的に非経口
溶液の場合と同じ方法で製造されるが、有効成分を媒体
に懸濁させてエチレンオキシド等により滅菌することに
より好適に製造できる。また、有効成分が均一分布とな
るように必要に応じて界面活性剤、湿潤剤等を添加して
もよい。
【0036】有効成分である上記式(I)の化合物の投与
量は、治療や予防の目的、患者の症状、体重、年齢や性
別等を考慮して適宜決定すればよいが、通常の場合、成
人一日あたり経口投与により0.05〜30mg/kg
程度を投与することができる。このような投与量を1日
あたり1〜数回に分けて投与するのが望ましい。
【0037】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定される
ことはない。 例1:自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の調製 (1)アミロイドβ(Aβ1-40:配列番号1)樹脂の製
造 Fmoc−Val樹脂342mg(アミン含量0.73
mmol/g樹脂)をパーキンエルマーアプライドバイ
オシステムズ社製A433型自動ペプチド合成機にセッ
トし、これにFmoc−Val−OH,Fmoc−Gl
y−OH,Fmoc−Gly−OH,Fmoc−Val
−OH,Fmoc−Met−OH,Fmoc−Leu−
OH,Fmoc−Gly−OH,Fmoc−Ile−O
H,Fmoc−Ile−OH,Fmoc−Ala−O
H,Fmoc−Gly−OH,Fmoc−Lys(Bo
c)−OH,Fmoc−Asn(Trt)−OH,Fm
oc−Ser(tBu)−OH,Fmoc−Gly−O
H,Fmoc−Val−OH,Fmoc−Asp(Ot
Bu)−OH,Fmoc−Glu(OtBu)−OH,
Fmoc−Ala−OH,Fmoc−Phe−OH,F
moc−Phe−OH,Fmoc−Val−OH,Fm
oc−Leu−OH,Fmoc−Lys(Boc)−O
H,Fmoc−Gln(Trt)−OH,Fmoc−H
is(Trt)−OH,Fmoc−His(Trt)−
OH,Fmoc−Val−OH,Fmoc−Glu(O
tBu)−OH,Fmoc−Tyr(tBu)−OH,
Fmoc−Gly−OH,Fmoc−Ser(tBu)
−OH,Fmoc−Asp(OtBu)−OH,Fmo
c−His(Trt)−OH,Fmoc−Arg(Pm
c)−OH,Fmoc−Phe−OH,Fmoc−Gl
u(OtBu)−OH,Fmoc−Ala−OH,Fm
oc−Asp(OtBu)−OHを供給し、HBTU
[2−(1H−Benzotriazole−1−y
l)−1,1,3,3,−tetramethylur
onium hexafluorophosphat
e]を縮合剤として順次縮合させて上記の側鎖保護アミ
ロイドβ(Aβ1-40)樹脂1.515gを得た。
【0038】(2)トリフルオロ酢酸処理 上記(1)で得た側鎖保護アミロイドβ(Aβ1-40)樹
脂中の304mgを採取し、これにフェノール0.75
mlとチオアニソール0.5mlとトリフルオロ酢酸
8.25mlとエタンジチオール0.25mlと蒸留水
0.5mlを加え、氷冷下5分、続いて室温で1.5時
間反応させた。反応終了後、氷冷したジエチルエーテル
200mlを加えてペプチドを沈殿させた。全内容物を
グラスフィルターで濾取し、冷ジエチルエーテルで洗浄
した後、35%のアセトニトリルを含む0.1%トリフ
ルオロ酢酸(約200ml)で抽出処理してH−Asp
−Ala−Glu−Phe−Arg−His−Asp−
Ser−Gly−Tyr−Glu−Val−His−H
is−Gln−Lys−Leu−Val−Phe−Ph
e−Ala−Glu−Asp−Val−Gly−Ser
−Asn−Lys−Gly−Ala−Ile−Ile−
Gly−Leu−Met−Val−Gly−Gly−V
al−Val−OHで表される粗ペプチド191mgを
得た。
【0039】(3)ペプチドの精製 この粗ペプチドを35%のアセトニトリルを含む0.1
%トリフルオロ酢酸(40ml)に溶解しODS(オク
タデシルシラン)をシリカに結合した逆相系のカラム
(内径2cm、長さ25cm)を用いたHPLCにより
精製した。溶出は0.1%トリフルオロ酢酸中、アセト
ニトリル濃度を22%から42%へ直線的に20分間で
上昇させることによりおこなった。精製物の収量は35
mgであった。本物質の構造はMALDI−TOF質量
分析により確認された。測定値[M+H]+4330.
99、計算値(C19429553581+H)433
0.89。
【0040】(4)自己会合型アミロイドβ蛋白質含有
液の調製 上記(3)で精製を行ったアミロイドβ蛋白質0.4μ
molを1.5ml容量のエッペンドルフチューブに入
れ、これに532μlの超純水と532μlのPBS
(SIGMA社製)を順次加え、アミロイドβ蛋白質を
完全に溶解させた。このアミロイドβ蛋白質水溶液の入
ったエッペンドルフチューブをダックローター(TAI
TEC社製、ローター:RT50)に取り付け、37℃
において35rpmの速度で7日間回転させた。
【0041】例2:自己会合型アミロイドβ蛋白質含有
液の毒性の検定 (1)初代培養細胞の調製 ラット18日胎児(2腹分)の前脳基底野より分散培養
によって初代培養細胞を調製した。この初代培養細胞を
ポリエルリジン(ナカライテスク社製)によりコーティ
ングした24ウェルプラスチック細胞培養プレート中で
培養した。コーティングは0.5mgポリエルリジン/
1ml 0.15Mホウ酸バッファー(pH8.3)の
ポリエルリジン溶液に培養プレートを1晩浸漬した後、
滅菌精製水で洗浄し、自然乾燥させて行った。初代培養
細胞は培養プレート1ウェルの底面積に対して、3×1
5cells/cm2の密度となるように、5%牛胎児
血清(ハイクローン社製)/5%馬血清(ライフテック
オリエンタル社製)1mMPyruvate/50μg
/ml Gentamicin(ライフテックオリエン
タル社製)/DMEM high glucose培地
(ライフテックオリエンタル社製)で調製した。培養は
37℃、10%CO2中で4日間行った。
【0042】(2)自己会合型アミロイドβ蛋白質の添
加 上記(1)で得られた初代培養細胞について、培養液を
B27(ライフテックオリエンタル社製)、Neuro
basal(ライフテックオリエンタル社製)、0.5
mM L−Glutamine、50μg/ml Ge
ntamicin(ライフテックオリエンタル社製)培
地0.5ml/1ウェルに交換した。培地交換後、37
℃、10%CO2中で3日間さらに培養を行った。この
培養細胞に対し、例1で得られた自己会合型アミロイド
β蛋白質含有液を最終アミロイドβ蛋白質濃度が1、
2、5、10μM/1ウェル、またコントロールとして
PBS/H2Oを等容量2ウェルのそれぞれ細胞外液に
添加した。添加後、37℃、10%CO2中で16時間
培養を行った。
【0043】(3)MTT活性測定 上記(2)で自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を添
加していない2ウェルのうちの1つにTritonX−
100を最終濃度が0.1%となるように添加し、37
℃、10%CO2中で10分間培養した。このようにし
て毒性アミロイドβ蛋白質含有液を添加した4ウェル、
コントロールの1ウェル、及びTritonX−100
を添加してウェル内の培養細胞を死滅させた1ウェルの
計6ウェルについて培地を除去し、250μg MTT
(シグマ社製)/PBS50μlを注入した。これらを
37℃、10%CO2中で3時間培養した後、20%
SDS(ナカライテスク社製)、50% DMF(di
metylformamide)pH3.5/H2Oを
50μl添加した。これをさらに37℃、10%CO2
中で2時間静置し、細胞を完全に融解させた。この各ウ
ェル中の細胞融解液について570nmの吸光度を測定
した。この570nmの吸光度について、Triton
X−100を加えて細胞をすべて死滅させたウェルにお
ける値をバックグラウンドとして他のウェルにおける値
から差し引いた値の結果を図1(白丸)に示した。
【0044】例3:アミロイドβ蛋白質水溶液を回転を
加えず調製したアミロイドβ蛋白質含有液の毒性の検定 アミロイドβ蛋白質を可溶化後、回転を加えないで調製
したアミロイドβ蛋白質含有液を用いた他は、例2と同
様の実験を行った。結果を図1(黒四角)に示した。例
2で得られた結果との比較から、アミロイドβ蛋白質を
可溶化後、回転をさせて自己会合型アミロイドβ蛋白質
を調製した場合にのみ、神経系細胞に細胞死を誘導する
活性を有する毒性アミロイドβ蛋白質を調製できること
が明らかになった。
【0045】例4:自己会合型アミロイドβ含有液によ
る神経細胞死のPP2による抑制試験 (1)初代培養細胞の調製 ラット18日胎児(2腹分)の前脳基底野より分散培養
によって初代培養細胞を調製した。この初代培養細胞を
ポリエルリジン(ナカライテスク社製)によりコーティ
ングした24ウェルプラスチック細胞培養プレート中で
培養した。コーティングは0.5mgポリエルリジン/
1ml 0.15Mホウ酸バッファー(pH8.3)の
ポリエルリジン溶液に培養プレートを1晩浸漬した後、
滅菌精製水で洗浄し、自然乾燥させて行った。初代培養
細胞は培養プレート1ウェルの底面積に対して、3×1
5cells/cm2の密度となるように、5%牛胎児
血清(ハイクローン社製)/5%馬血清(ライフテック
オリエンタル社製)1mMPyruvate/50μg
/ml Gentamicin(ライフテックオリエン
タル社製)/DMEM high glucose培地
(ライフテックオリエンタル社製)で調製した。培養は
37℃、10%CO2中で4日間行った。
【0046】(2)自己会合型アミロイドβ蛋白質の添
加 上記(1)で得られた初代培養細胞について、培養液を
B27(ライフテックオリエンタル社製)、Neuro
basal(ライフテックオリエンタル社製)、0.5
mM L−Glutamine、50μg/ml Ge
ntamicin(ライフテックオリエンタル社製)培
地0.5ml/1ウェルに交換した。培地交換後、37
℃、10%CO2中で3日間さらに培養を行った。この
培養細胞のうち3ウェルに対してPP2(4−アミノ−
5−(4−クロロフェニル)−7−(t−ブチル)ピラ
ゾロ[3,4−d]ピリミジン、カルバイオケム社製:
Cat.No.529573)を最終濃度50nMとな
るように添加した。これを37℃、10%CO2中で1
時間培養した後、例1で得られた自己会合型アミロイド
β蛋白質含有液を最終アミロイドβ蛋白質濃度が0.
5、2、5μM/1ウェルとなるように1ウェルずつ、
またコントロールとして2ウェルにPBS/H2Oを等
容量を、それぞれ細胞外液に添加した。添加後、37
℃、10%CO2中で16時間培養を行った。また、P
P2の替わりにPBSを添加した以外は上記と同様に調
製した細胞外液に例1で得られた自己会合型アミロイド
β蛋白質含有液を最終アミロイドβ蛋白質濃度が0.
5、2、5μM/ウェルとなるように1ウェルずつ添加
した。さらに、コントロールとしてPP2のみを添加し
たウェルを用意した。
【0047】(3)MTT活性測定 上記(2)で自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を添
加していない2ウェルのうちの1つにTritonX−
100を最終濃度が0.1%となるように添加し、37
℃、10%CO2中で10分間培養した。このようにし
て毒性アミロイドβ蛋白質含有液を添加した3ウェル、
毒性アミロイドβ蛋白質を添加したがPP2を添加して
いない3ウェル、PP2のみの1ウェル、コントロール
の1ウェル、及びTritonX−100を添加してウ
ェル内の培養細胞を死滅させた1ウェルの計9ウェルに
ついて培地を除去し、250μg MTT(シグマ社
製)/PBS50μlを注入した。これらを37℃、1
0%CO2中で3時間培養した後、20% SDS(ナ
カライテスク社製)、50% DMF(dimetyl
formamide)pH3.5/H2Oを50μl添
加した。これをさらに37℃、10%CO2中で2時間
静置し、細胞を完全に融解させた。この各ウェル中の細
胞融解液について570nmの吸光度を測定した。この
570nmの吸光度について、TritonX−100
を加えて細胞をすべて死滅させたウェルにおける値をバ
ックグラウンドとして、他のウェルにおける値から差し
引いた値の結果を図2(白丸)に示した。 以上の結果
より、毒性アミロイドβ含有液による神経細胞の細胞死
はPP2により阻害されることが明らかになった。
【0048】
【発明の効果】本発明のスクリーニング方法では、アル
ツハイマー病等の患者の生体内に存在する自己会合型ア
ミロイドβ蛋白質と同等の高い毒性を有し、かつその毒
性が維持される自己会合型アミロイドβ蛋白質を用いる
ことにより、生体内環境により近い条件で精度よくスク
リーニングを行うことができる。
【0049】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Mitsubishi Chemical Corporation <120> Agent having inhibitory action on nerve cell death and method for screening said agent <130> A01091M <160> 2 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 40 <212> PRT <213> Human <400> 1 Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val His His Gln Lys 5 10 15 Leu Val Phe Phe Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys Gly Ala Ile Ile 20 25 30 Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val 35 40 <210> 2 <211> 42 <212> PRT <213> Human <400> 2 Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val His His Gln Lys 5 10 15 Leu Val Phe Phe Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys Gly Ala Ile Ile 20 25 30 Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val Ile Ala 35 40
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスクリーニング方法で用いる自己会
合型アミロイドβ蛋白質が神経系細胞に細胞死を誘導す
る高い毒性を有することを示した図である。図中、白丸
は本発明のスクリーニング方法に用いる自己会合型アミ
ロイドβ蛋白質の結果を示し、黒四画はアミロイドβ蛋
白質の溶液に回転を加えずに調製したアミロイドβ蛋白
質溶液についての結果を示す。
【図2】 毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質
を添加した神経細胞にPP2を添加することにより、細
胞死が抑制された結果を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07D 487/04 143 C07D 487/04 143 C12Q 1/02 C12Q 1/02 G01N 33/50 G01N 33/50 Z Fターム(参考) 2G045 AA40 BB20 CB01 CB26 4B063 QA01 QA07 QA18 QQ61 QR41 QR48 QR66 QR77 QS07 QS36 QX01 4C050 AA01 BB05 CC08 EE04 FF02 FF05 GG04 HH01 4C084 AA17 MA01 NA14 ZA162 ZB222 4C086 AA01 AA02 CB06 MA01 MA04 NA14 ZA16 ZB22

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 神経細胞死抑制作用を有する薬剤のスク
    リーニング方法であって、下記の工程: (1)アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させること
    により得られる、又はアミロイドβ蛋白質を含む水溶液
    中にアミロイドβ蛋白質の凝集媒体を添加することによ
    り得られる高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋
    白質及び被検物質の存在下で神経系細胞又は神経系器官
    を培養する工程;及び(2)上記神経系細胞又は神経系器
    官の細胞死が抑制された場合に上記被検物質が神経細胞
    死に対して抑制作用を有すると判定する工程を含む方
    法。
  2. 【請求項2】 アルツハイマー病等の患者の生体内に存
    在する自己会合型アミロイドβ蛋白質と実質的に同等の
    毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質の存在下で
    行う請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 その毒性がアルツハイマー病等の患者の
    生体内に存在する自己会合型アミロイドβ蛋白質と実質
    的に同等の濃度で神経系細胞に細胞死を誘発するのに十
    分な毒性である自己会合型アミロイドβ蛋白質の存在下
    で行う請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項に記載
    の方法によりスクリーニングされた神経細胞死抑制作用
    を有する化合物又はその塩。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の化合物又は生理学的に
    許容されるその塩を有効成分として含むアルツハイマー
    病の予防及び/又は治療のための医薬。
  6. 【請求項6】 下記の一般式(I): 【化1】 (式中、R1はハロゲン原子及びC1-6アルキル基からな
    る群から選ばれる1又は2以上の置換基を有していても
    よいフェニル基を示し;R2は水素原子又はC1-6アルキ
    ル基を示す)で表される神経細胞死抑制作用を有する化
    合物又はその塩。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の一般式(I)で表される
    化合物又は生理学的に許容されるその塩を含む神経細胞
    死抑制剤。
  8. 【請求項8】 請求項6に記載の一般式(I)で表される
    化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効成分とし
    て含むアルツハイマー病の予防及び/又は治療のための
    医薬。
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