JP4317317B2 - 自己会合型アミロイドβ蛋白質 - Google Patents

自己会合型アミロイドβ蛋白質 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質、及び該蛋白質の調製方法に関する。また、該蛋白質を用いた神経細胞死抑制作用を有する物質のスクリーニング方法、並びに該方法で得られた神経細胞死抑制作用を有する物質、及び該物質を有効成分として含むアルツハイマー病の予防及び/又は治療のための医薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、プリオン病等の加齢に伴って発症する複数の神経変性疾患において、現在「異常構造蛋白質」が共通の発症機構として注目され、その分子実体の探索が行われている。アルツハイマー病については、アミロイドβ蛋白質(Aβ)を主成分とする老人斑(Annu. Rev. Neurosci., 12, 463-490 (1989); Glenner, G. G. and Wong, C. W., Biochem. Biophys. Res. Commun., 120 (3), 885-890 (1984))と、リン酸化されたタウ蛋白質を主成分とする神経原線維変化(Paired Helical Filament; PHF)(J. Biochem., 99, 1807-1810 (1986); Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 83, 4913-4917 (1986))の二種の線維性凝集体が脳に沈着することが病理学的特徴として報告されている。また近年、複数の多様な病因により発症すると考えられてきたアルツハイマー病研究において、アミロイドβ蛋白質の沈着が全てに共通な発症経路であろうと考えられるようになってきた。アミロイドβ蛋白質は、その前駆体物質(Amyloid Precursor Protein; APP)から40残基(Aβ1-40)ないしは42残基(Aβ1-42)の分子種として切り出されて生じるペプチドであり、アルツハイマー病におけるアミロイドβ蛋白質の沈着は、切り出しの過程、又は分解の過程での脱制御の結果であると考えられる。
【0003】
このような代謝産物の沈着は細胞死を招くことが多いが、アミロイドβ蛋白質の場合には積極的に神経毒として作用して神経細胞死を引き起こすため、これがアルツハイマー病の進行性痴呆の原因となる選択的な神経細胞脱落の機構であると考えられている。また、アミロイドβ蛋白質は水溶性のペプチドとして細胞外に放出された状態では神経細胞死活性(以下、本明細書中において神経細胞死活性を「毒性」と称することがある)を示さず、自己会合しアミロイドβ線維を形成して初めて毒性を獲得することが報告されている(Lorezo, A. and Yankner, B. A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 91, 12243-12247 (1994))。このアミロイドβ線維を含む毒性アミロイドβ蛋白質含有液を神経系の培養細胞に高濃度で添加すると、これらの細胞を死に至らしめることが知られているため、アルツハイマー病においてはこのアミロイドβ線維が神経細胞死を誘発している本体であると考えられてきた。
【0004】
従って、このアミロイドβ線維を含む毒性アミロイドβ蛋白質の添加により神経系細胞等に細胞死を誘発する実験系は、アルツハイマー病における神経細胞死を反映していると見なされ、神経細胞死抑制剤のスクリーニング等に多く用いられてきた。しかし近年、(1)上記したLorezoらのアミロイドβ線維を含む毒性アミロイドβ蛋白質含有液で神経細胞死を誘導するのに必要な濃度は数十μMであり、アルツハイマー病患者の脳に存在するアミロイドβ蛋白質濃度の1000倍以上の濃度である、(2)アルツハイマー病患者の脳においてアミロイドβ線維の沈着と神経細胞脱落の部位が必ずしも一致していない、(3)APP過剰発現マウスの脳においてアミロイドβ線維の沈着以前、又は沈着なしに学習行動異常が生じる、(4)アルツハイマー病患者の脳における水溶性アミロイドβ蛋白質プールの増加は沈着よりも10年以上先行する、等、アミロイドβ蛋白質の毒性の本体がアミロイドβ線維ではないことを示唆する事実が報告されるようになってきた。
【0005】
一方では、上記の方法において調製され用いられている毒性アミロイドβ蛋白質含有液は、実際にはモノマーから線維までの複数のアミロイドβ蛋白質の構造体を含んでいることが報告され、アミロイドβ蛋白質の毒性の本体は線維形成の中間体であるとの仮説が提唱されて、インビトロで線維状構造体Protofibril(Hartley, D. M. et al., J. Neurosci., 19 (20), 8876-8884 (1999))と球状構造体ADDLs(Aβ-derived diffusible ligands; Lambert, M. P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 95, 6448-6453 (1998))がそれぞれ同定された。形態は全く異なるがこの二つの分子種は共に線維形成の過程で一過的に形成される中間体とされ、β-sheet構造をとる構造物である。線維構造を形成するためにはβ-sheet構造が必須であるため、その点においては線維形成の中間構造物であることが示唆されるが、しかし、どちらも複数サイズの構造物の集合体であり、毒性の本体が特定されているとはいえない。また、細胞膜上に特異的な受容体が存在するのかどうかなど、これらの構造物が神経細胞死を引き起こす作用機構も不明である上、アルツハイマー病の患者脳やAPP過剰発現マウス等の疾患モデルにおいて実際にこれらに相当する構造物は見つかっていない。
【0006】
さらにアミロイドβ蛋白質は、その機能は未だ明らかではないが本来生理的物質として健常者においても生成されることが確認されており、痴呆を伴わずに老化したヒトの脳においてアミロイドβ蛋白質の沈着が広範に認められるケースも存在する。このように、今までに報告されてきた線維あるいはその中間構造物とは異なる分子種が発症に関わっている可能性が示唆され、アミロイドβ蛋白質の毒性本体の解明、及び毒性本体の分子種の調製が望まれていた。
【0007】
本発明者らは、先に、アルツハイマー病等の患者の生体内に存在する自己会合したアミロイドβ蛋白質と同等の濃度で神経系細胞に細胞死を誘導する、高い活性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液、及びその調製方法を提案している(特願2000−064983号)。この自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液についても、線維状構造物を除いてもその毒性が維持されることからアミロイドβ線維以外の毒性の本体が含まれていることが示唆されていたが、その実体は明らかになっていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アミロイドβ蛋白質の毒性の本体を明らかにし、特に高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質、及び該蛋白質含有液を提供するためになされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を進めた結果、アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させて一定時間処理して自己会合を惹起させたのち、グリセロール密度勾配遠心法により分画を行うことによって、特に高い神経細胞死活性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質を提供できることを見いだした。また、このようにして特に高い神経細胞死活性を有する画分を分画することが可能になれば、得られた画分を解析することにより、毒性アミロイドβ蛋白質の毒性本体を解明することが可能になる。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
【0010】
すなわち本発明は、粒状の形態を有し、蛋白質濃度1μg/ml以下で神経系細胞に細胞死を誘導する活性を有することを特徴とする自己会合型アミロイドβ蛋白質を提供するものである。この発明の好ましい態様によれば、粒径が10〜20nmの範囲、又はグリセロール密度勾配遠心法により分画したときに、グリセロール濃度が15%以上の画分に得られる、上記の自己会合型アミロイドβ蛋白質が提供される。
【0011】
この発明の別の態様によれば、高い毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質の製造方法であって、アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させる工程及び対流させた水溶液中の自己会合型アミロイドβ蛋白質を分画する工程を含むことを特徴とする方法、及び、自己会合型アミロイドβ蛋白質の分画がグリセロール密度勾配遠心法により行われ、グリセロール濃度が15%以上の画分に得られる自己会合型アミロイドβ蛋白質を回収する工程を含む上記の方法が提供される。また、本発明によって、上記の自己会合型アミロイドβ蛋白質を含む試薬が提供される。
更に、本発明によって、上記の自己会合型アミロイドβ蛋白質を用いて、神経系細胞に細胞死を誘導する方法が提供される。
【0012】
また別の観点からは、神経細胞死抑制作用を有する薬剤のスクリーニング方法であって、下記の工程;
(1)上記自己会合型アミロイドβ蛋白質及び被検物質の存在下で神経系細胞又は神経系器官を培養する工程、又は上記自己会合型アミロイドβ蛋白質及び被検物質を動物に投与する工程、及び
(2)上記神経系細胞、神経系器官又は動物の神経系細胞の細胞死が抑制された場合に、上記被検物質が神経細胞死に対して抑制作用を有すると判定する工程
を含む方法が本発明により提供される。
【0013】
更に、神経細胞死抑制作用を有する薬剤のスクリーニング方法であって、下記の工程;
(1)アミロイドβ蛋白質及び被検物質を含む水溶液を対流させる工程、
(2)水溶液中の自己会合型アミロイドβ蛋白質生成の有無又はその程度を解析する工程、及び
(3)上記アミロイドβ蛋白質の生成が抑制された場合に、上記被検物質が神経細胞死に対して抑制作用を有すると判定する工程
を含む方法、及び、下記の工程;
(1)アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させて生成した自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液に、被検物質を添加する工程、
(2)上記アミロイドβ蛋白質の存在の有無又は程度を解析する工程、及び
(3)上記アミロイドβ蛋白質が消失又は存在量が減少した場合に、上記被検物質が神経細胞死に対して抑制作用を有すると判定する工程
を含む方法が提供される。
【0014】
更に別の観点からは、上記の方法により得られた神経細胞死抑制作用を有する物質、及び、上記の物質を有効成分として含む、アルツハイマー病の予防及び/又は治療のための医薬が本発明により提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
(1)自己会合型アミロイドβ蛋白質の物性
まず、本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質の物性について説明する。
【0016】
本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質は、アミロイドβ蛋白質が自己会合し、粒状の形態を有するものである。「粒状の形態」とは粒状を呈していればいかなる形状でもよく、顆粒状、細粒状、結晶、凝集塊等をすべて含む。粒径は、通常10〜20nm、好ましくは10〜18nm、より好ましくは12〜14nm、特に好ましくは約14nm付近である。また、本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質は蛋白質濃度1μg/ml以下、好ましくは0.45μg/ml以下で神経系細胞に細胞死を誘導する高い神経細胞死活性を有する。また、かかる物性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質は、グリセロール密度勾配遠心法により分画したときに、グリセロール濃度が15%以上の画分に得られる。
【0017】
(2)自己会合型アミロイドβ蛋白質の調製方法
上記物性を有する本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質は、次の通り製造することができる。まず、アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させ(第一の工程)、次に対流させた水溶液中の自己会合型アミロイドβ蛋白質を分画する(第二の工程)ことにより、調製することができる。
【0018】
ここで「アミロイドβ蛋白質」とは、約40のアミノ酸残基からなる蛋白質であり、生体においてはアミロイド前駆体蛋白質(APP)からプロテアーゼによるプロセッシングで産生される。このプロテアーゼの種類やその後の修飾によって様々な種類が存在することが知られているが、分泌直後にはC末端のアミノ酸残基の長さの違いによりアミロイドβ40(Aβ1-40:配列番号1)とアミロイドβ42(Aβ1-42:配列番号2)が存在する。本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質の調製には、例えば、分泌直後のアミロイドβ蛋白質の全長分子種であるAβX-40もしくはAβX-42、又はそれらの変異体あるいは誘導体が好ましく用いられるが、その中でも特にAβ1-40が好ましい。また、アミロイドβ蛋白質は、ペプチド合成機等を用いて合成したもの、市販のもの、又は生体試料から抽出精製したものなど、いかなるものを用いてもよい。アミロイドβ蛋白質として合成ペプチドを用いる場合、その合成、抽出精製方法は、それ自体公知の通常用いられている方法を用いることができる。また、合成ペプチドの精製度は高速液体クロマトグラフィーにおいて単一のピークが得られる程度行えば十分であるが、精製方法としては、例えば、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィー等が用いられる。
【0019】
本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質調製方法の第一の工程は、通常、このようにして得られたアミロイドβ蛋白質を、滅菌精製水に溶解し、得られた溶液に対流を惹起して維持することにより行われる。溶解に用いる滅菌精製水の量は、アミロイドβ蛋白質が溶解する範囲であればよいが、好ましくは水溶液中のアミロイドβ蛋白質の濃度が50nM〜2mM、より好ましくは1μM〜1mM、さらに好ましくは100〜700μMとなる範囲である。この溶液を適当な塩濃度に調節することが望ましい。塩濃度は、アミロイドβ蛋白質が溶解される範囲であればいかなるものでもよいが、例えば、最終pHが3〜12、好ましくは5〜10で、塩濃度が1M以下であることが好ましい。このような塩濃度に調節する方法として、例えば、PBS(-)をアミロイドβ蛋白質水溶液と等量加える方法が用いられる。溶解の方法はアミロイドβ蛋白質が適当な量の適当な塩濃度の溶液に完全に溶解する方法であれば特に制限はない。
【0020】
上記水溶液中のアミロイドβ蛋白質を自己会合させるために上記水溶液を対流させるが、対流の流速及び維持時間は、水溶液中のアミロイドβ蛋白質が自己会合し、アルツハイマー病の患者の生体内における毒性アミロイドβ蛋白質と同等の濃度で神経細胞死を誘導する活性を有するようになるものであれば特に制限はない。ここで、アミロイドβ蛋白質の自己会合とは、該蛋白質の2分子以上が共有結合以外の分子間相互作用によって結合し、1個の分子のように行動する現象を意味しており、通常は、さらに多数の分子が会合することにより、上記(1)に記載の物性を示す粒状の形態を有する分子が形成され、その結果としてアミロイドβ蛋白質の毒性が獲得される。
【0021】
例えば、アミロイドβ蛋白質水溶液を適当な容器に充填し、これに適当な温度範囲中で一定時間、適当な速度で回転を加え続ける方法が有効である。また、アミロイドβ蛋白質水溶液が常に対流し、かつ疎水性の界面に接触する状態を維持させてもよい。例えば、超音波分散機やスターラー等で該水溶液を攪拌する方法、又はアミロイドβ蛋白質水溶液を適当な流速で疎水性チューブ内で対流させる方法等も用いることができる。
【0022】
容器に回転を加え続ける方法としては、アミロイドβ蛋白質水溶液を含む容器を回転培養機、攪拌機、振とう機等を用いて回転させる方法が用いられるが、この中で回転培養器を用いるのが最も好ましい。回転速度は、通常200rpm以下、好ましくは5〜50rpm、さらに好ましくは20〜40rpmで行われる。また、回転を維持する時間は、水溶液中のアミロイドβ蛋白質が自己会合して十分な神経細胞死活性を獲得するまで行われるが、具体的には回転の速度等の条件により4時間〜7日程度行われる。
【0023】
アミロイドβ蛋白質水溶液を充填する容器としては、アミロイドβ蛋白質以外の蛋白質の混入が防げるものであればいかなるものでもよいが、一般的には、蛋白質が吸着しない材質の容器が望ましい。具体的には、プラスチック容器や、市販のエッペンドルフチューブ等がさらに望ましい。容量にも特に制限はない。また、他の蛋白質の混入を防ぐために、容器をあらかじめオートクレーブ等を用いて滅菌しておくことは効果的である。容器に充填するアミロイドβ蛋白質水溶液の量は、容器中でアミロイドβ蛋白質水溶液に十分な対流を惹起させ、その対流を一定に維持することができる量であることが望ましい。具体的には、容器の全容積の30〜90%、さらには50〜80%が望ましい。
【0024】
また、アミロイドβ蛋白質を自己会合させる第一の工程として、アミロイドβ蛋白質水溶液中にアミロイドβ蛋白質の凝集媒体を添加する方法を用いることもできる。凝集媒体を添加し、1M以下程度の適当な塩濃度の存在下で静置することによる方法等が挙げられる。アミロイドβ蛋白質の自己会合を誘起する凝集媒体としては、一般的に蛋白質の結晶化を誘起する物質を用いることができる。例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、ギ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウムセチルトリメチルアンモニウム塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどの無機塩類;PEG100、PEG4000、PEG6000、PEG10000などのポリエチレングリコール類;アセトニトリル、アセトン、イソプロパノール、エタノール、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ブタノール、1,3-ブチロラクトン、1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、メタノール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等の有機溶媒を挙げることができる。凝集媒体の添加方法としては、一般的に蛋白質の結晶化に用いられる添加方法を採用することができる。これらの技術については、例えば、「生命科学のための結晶解析入門-タンパク質結晶解析のてびき(平山令明著、丸善株式会社)」等に記載されている。
【0025】
対流を維持する、あるいは凝集媒体を加えて静置する等の方法でアミロイドβ蛋白質を自己会合させる際には、一定温度を維持することが望ましいが、その温度範囲はアミロイドβ蛋白質が変性しない範囲であれば特に制限はない。具体的には4〜50℃、好ましくは4〜40℃、さらに好ましくは4〜37℃の範囲が挙げられる。
【0026】
このようにして得られた自己会合型アミロイドβ蛋白質は、このままでも神経系細胞に細胞死を誘導する活性を有し、薬理学や生化学の実験等に供することが可能であるが、第二の工程として分画を行い、さらに高い神経細胞死活性を有する画分を得ることができる。分画の方法としては、遠心分離法、クロマトグラフィー法、フィルター濾過法等を用いることができるが、中でも遠心分離法を用いるのが好ましい。遠心分離法としては、密度勾配遠心法、平衡密度勾配遠心法、及び通常の分画遠心法等が挙げられ、この中でも密度勾配遠心法が特に好ましい。
【0027】
密度勾配遠心法は、前もって作成した密度勾配の上に試料溶液を重層して遠心する方法であって、それ自体公知の通常用いられている方法で行うことができる。密度勾配を作製する機器としては、安定な密度勾配を作製することができるものであれば、市販のものでも、公知の方法に従って任意の装置を組み合わせたものでもよい。密度勾配を形成する溶媒としては、グリセロール、ショ糖、重水(D2O)、無機塩類溶液等が用いられるが、中でもグリセロールが好ましく用いられる。グリセロールの濃度は、上記の自己会合型アミロイドβ蛋白質を安定的かつ十分に分離できる濃度であれば特に制限はなく、一般的には、5〜50%程度の密度勾配で行われ、中でも15〜30%の密度勾配で行うのが好ましい。また、溶媒と混合する緩衝液としては、自己会合型アミロイドβ蛋白質の失活を防ぎ、安定に保つことのできるものであればいかなるものでもよく、例えば、PBS(−)と水を等量混合した溶液等を用いることができる。
【0028】
密度勾配遠心法を行う遠心機の種類としては、超遠心機、小型超遠心機、高速遠心機等を用いることができ、この中で小型超遠心機を用いるのが好ましい。遠心機内に設置して用いるローターとしては、スイングローター、アングルローター、垂直ローター等が挙げられ、通常スイングローターが好ましく用いられる。密度勾配遠心法を行う際に用いられる容器としては、自己会合型アミロイドβ蛋白質の分画が安定的に行えるものであればいずれのものでもよいが、一般的には、高い回転速度と長い遠心時間に耐えうる強靱な性質であって蛋白質が吸着しない材質のものが望ましく、遠心管等が好ましく用いられる。材質としては、ポリアロマー(Eastman Chemical Company)やポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のプラスチック、ガラス、ステンレス鋼などが挙げられ、中でもポリアロマー製の遠心管が好ましく用いられる。また、容量には特に制限はなく、試料や用いる遠心機、遠心管の容量等に応じて選択することができるが、具体的には、0.2〜5ml、好ましくは約2mlの遠心管中に密度勾配を形成させて実験に供することができる。密度勾配を形成した溶液に対して、試料の体積は一般に1/10以下で行われるのが望ましい。
【0029】
遠心機の回転速度は、溶液中の自己会合型アミロイドβ蛋白質が十分に分離される速度であって、遠心機本体、ローター、遠心管のいずれにも許容される速度であればよいが、通常25000rpm以上、好ましくは30000rpm以上、より好ましくは36000rpm付近で行われる。遠心を行う時間は、溶液中の自己会合型アミロイドβ蛋白質が十分に分離される時間であれば特に制限はないが、具体的には、回転速度等の条件により1〜20時間程度、好ましくは16時間程度行うことができる。また、遠心を行っている間の温度は自己会合型アミロイドβ蛋白質の活性が保たれる範囲であればよい。一般的には室温以下、より具体的には4〜37℃の範囲で行われるのが好ましいが、遠心機の冷却装置により一定に保たれているのがさらに望ましく、具体的には、4℃付近に保たれているのが最も望ましい。
【0030】
密度勾配遠心を行ったのち、遠心管から試料の分画を行う。上記(1)に示した形態及び物性を有する本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質を含む画分は、溶媒としてグリセロールを用いた場合、グリセロール濃度が15%以上の画分を取得することによって得られる。分画は、密度勾配回収器、注射器、ピペット等を用いて行うことができるが、密度勾配全体を連続的に分画するためには密度勾配回収器を用いるのが好ましい。密度勾配回収器は、安定的に分画を行うことができるものであれば、市販のものでも、公知の方法に従って任意の装置を組み合わせたものでもよい。また、試料の分画は、遠心管底部より行う方法、遠心管上部より行う方法、及び遠心管側面より目的の画分のみを分取する方法等が挙げられるが、遠心管底部より行う方法が好ましい。
【0031】
分画した試料は、一般的な容器等に回収することができるが、異物の混入が防げるものであって、蛋白質が吸着しない材質の容器が望ましく、具体的には、プラスチック容器や、市販のエッペンドルフチューブ等がさらに望ましい。
【0032】
かくして高い神経細胞死活性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液が得られる。この含有液は必要に応じて、後述する方法により物性の解析、神経細胞死活性を測定したあと、所望により濃縮等の処理を行って、所望する薬剤のスクリーニング用等の試薬として用いることができる。
【0033】
(3)自己会合型アミロイドβ蛋白質の物性の解析方法
次に、上記した自己会合型アミロイドβ蛋白質の物性の解析方法について説明する。本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質は、上記の方法に従って分画を行うことにより複数の画分を得ることができるが、さらにそれらの画分に含まれる自己会合型アミロイドβ蛋白質の物性を解析することにより、各画分に含まれる自己会合型アミロイドβ蛋白質の神経細胞死活性を確認することができる。
【0034】
物性としては、粒度分布、粒径、沈降係数、濃度、会合度、電気泳動度、立体構造等が挙げられるが、その中でも粒度分布及び粒径の解析は、神経細胞死活性の高い自己会合型アミロイドβ蛋白質を得るための手段として有効である。粒度分布及び粒径は、電子顕微鏡観察による方法、ふるい分け法、クロマトグラフィー法、沈降法等により求めることができるが、中でも電子顕微鏡観察による方法が好ましい。電子顕微鏡観察により粒度分布及び粒径を求める方法としては、具体的には、ネガティブ染色法等が好ましく用いられる。ネガティブ染色法は、通常用いられる公知の方法に従って行うことができ、観察される視野中の自己会合型アミロイドβ蛋白質の粒径を直接得ることができる。また、同視野中の粒子数を測定することにより各画分の粒度分布を得ることができる。このようにして測定される粒径が10〜20nm、好ましくは10〜18nm、より好ましくは12〜14nm、特に好ましくは約14nm付近である自己会合型アミロイドβ蛋白質を含む画分であることを確認し、高い神経細胞死活性を有する画分を取得する。
【0035】
また、各画分のアミロイドβ蛋白質の蛋白質濃度及び収率の測定は、通常用いられる公知の方法を用いて行うことができるが、その中でも、アミロイドβ蛋白質が極微量である場合にはウエスタンブロット法によって得られた結果から間接的に求める方法が好ましい。ウエスタンブロット法は、それ自体公知の通常用いられる方法に従って行うことができる。例えば、Tris−Tricine系ポリアクリルアミドゲル電気泳動法等を用いて各画分及び分画前の自己会合型アミロイドβ蛋白質の電気泳動を行い、通常用いられる蛋白質転写装置、例えばタンク式ブロッター等により、通常蛋白質の転写に用いられる膜、例えばニトロセルロース膜等に転写する。一般に用いられる方法に従ってこの膜に抗アミロイドβ蛋白質抗体を反応させて免疫染色を行い、化学発光シグナルを検出する。得られた各画分に含まれるアミロイドβ蛋白質のシグナル強度と分画前のアミロイドβ蛋白質のシグナル強度とを比較して、各画分のアミロイドβ蛋白質の存在量及び収率を間接的に知ることができる。
【0036】
(4)自己会合型アミロイドβ蛋白質の神経細胞死活性の測定方法
次に、上記した自己会合型アミロイドβ蛋白質の神経細胞死活性の測定方法について説明する。
【0037】
本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を用いた神経細胞死の誘導は、神経系の細胞等の培養液に本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を添加し、通常の方法に従って培養することにより行うことができる。本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質により誘導される細胞死は、アポトーシス又はネクローシスのいずれでもよい。また、用いられる細胞としては、神経系細胞であれば特に制限はなく、哺乳動物(ヒト、ラット、マウス、サル、ブタ等)由来の神経系細胞や、これらの細胞に分化が可能な細胞等でもよい。また、初代培養細胞又は樹立培養株のいずれでもよい。初代培養細胞としては、上記した動物の海馬、及び前脳基底野等から取得したものが好ましく、樹立培養株としては、例えば、PC-12細胞(ATCC CRL-1721)、B103(Schubert, D. et al., Nature, 249 (454), 224-227 (1974))、N1E−115(Amano, T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 69, 258-263 (1972))等が好ましい。また上記動物の海馬等の器官を培養したものをそのまま用いることも可能である。
【0038】
これらの細胞や器官は、通常の培養法に従って培養することができる。具体的には、神経系細胞の初代培養、及び神経系樹立細胞株の培養方法としては、Hoshi, M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 93, 2719-2723 (1996)、及び Schubert, D. et al., Nature, 249 (454), 224-227 (1974) に記載されている方法等を用いることができ、器官培養は、Gary Banker and Kimbery Goslin, Culturing nerve cells, 2nd Edition, MIT Press, Cambridge (1998) に記載されている方法等を用いることができる。このようにして培養された神経系の細胞、及び器官に細胞死を誘導するために添加する本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質の量は適宜選択可能であるが、通常、アルツハイマー病等の患者の生体内に存在する毒性アミロイドβ蛋白質と実質的に同等の濃度で細胞死を誘導できる。例えば、本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質は、前記のとおり、初代培養細胞に対して培養液中のアミロイドβ蛋白質濃度1μg/ml以下、さらに好ましくは0.45μg/ml以下等の量で細胞死を誘導することができる。もっとも、上記の濃度は例示のためのものであり、この量に限定されることはない。
【0039】
本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質によって誘導される神経系細胞の細胞死は、通常の場合、本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質の有効量を添加した後、約6時間程度から起こり、48時間程度の後には顕著な細胞死の様子が観察できる。これらの細胞死活性を測定する方法としては、通常用いられる細胞死検出法を用いることができる。具体的には、MTT活性測定法(Mossman, T., J. Immunol. Methods, 65, 55 (1983))、プロピディウムイオダイド(Ankarcrona, M. et al., Neuron, 15, 961 (1995))等による染色法、又はトリパンブルーダイエクスクルージョン法(Woo, K. B., Funkhouser, W. K., Sullivan, C. and Alabaster, O., Cell Tissue Kinet., 13 (6), 591-604 (1980))等が用いられるが、MTT活性測定法及びプロピディウムイオダイド等による染色法が特に好ましい。プロピディウムイオダイド等による染色法は、死細胞を選択的に染色するプロピディウムイオダイドのみによる単一染色でもよいし、他の複数の染色色素と組み合わせて行ってもよい。組み合わせられる染色色素としては、具体的には、生細胞を選択的に染色するCalcein−AM(Molecular Probes社製)、全細胞を染色するHoechst33258(H33258; Bisbenzimide H33258)等が好ましい。
【0040】
また、本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を用いた神経細胞死の誘導は、本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質を動物個体に直接投与することにより行うこともできる。本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質により誘導される細胞死は、アポトーシス又はネクローシスのいずれでもよい。また、用いられる動物としては、哺乳動物(マウス、ラット等)等の神経系細胞を有する動物であれば特に制限はない。また、投与方法は、脳等の神経系細胞の存在する部位に直接投与する方法の他、経口投与法、静脈注射法、腹腔投与法等の通常薬物の投与に用いられる方法を用いることができる。脳等の神経系細胞の存在する部位に直接投与する方法としては、具体的には、例えば、ラットあるいはマウス等の脳組織の場合、オスモティックポンプを用いて目標部位近傍の脳室内に投与する方法、マイクロピペット等を用いて目標部位の脳実質にマイクロフュージョンする方法等が用いられ、一定期間投与した後、投与部位周辺の組織を速やかに取り出し、組織切片を作製して、神経細胞死の有無を検証することができる。神経細胞死の有無の検証は、組織染色法やウェスタンブロット法等によって行うことができ、組織染色法としては、TUNNEL染色、又は抗Caspase抗体等による免疫染色等が挙げられる。
【0041】
本発明の神経系細胞に細胞死を誘導する活性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質は、神経系細胞等に細胞死を誘導する活性を有する試薬として用いることができる。試薬としての形状は、自己会合型アミロイドβ蛋白質の活性を安定的に維持できる形状であれば特に制限はなく、水溶液、懸濁液等のいかなる形状であってもよい。
【0042】
(5)自己会合型アミロイドβ蛋白質を用いた薬剤のスクリーニング方法
神経系細胞又は神経系器官の培養液に本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質を添加することによりこれらの神経細胞死を誘導する系は、例えば、毒性アミロイドβ蛋白質による神経系細胞の細胞死に対して抑制作用を有する薬剤のスクリーニングに用いることが可能である。
【0043】
このようなスクリーニングは、例えば、神経系細胞又は組織培養液に予め被検物質を添加した後に本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質を添加し、あるいは神経系細胞又は組織培養液に本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質を添加した後に被検物質を添加して、上記(4)に記載の方法により該神経系細胞や組織の細胞死が被検物質により抑制されるか否かを検出することにより行うことができる。上記の培養系に被検物質を添加し、神経系細胞又は神経系器官の細胞死が抑制された場合には、その被検物質が神経細胞死に対する抑制作用を有すると判定することができる。
【0044】
また、毒性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質の生成の有無を指標として、試験管等の容器内で毒性アミロイドβ蛋白質による神経細胞死に対して抑制作用を有する薬剤のスクリーニングを行うことができる。このようなスクリーニングは、例えば、試験管等の容器内でアミロイドβ蛋白質及び被検物質を含む水溶液を対流させて溶液中に生成する自己会合型アミロイドβ蛋白質の有無又は程度を解析する、あるいは、アミロイドβ蛋白質水溶液を対流させて生成させた自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液に被検物質を添加して、溶液中の自己会合型アミロイドβ蛋白質の有無又は程度を解析することによって、行うことができる。上記の方法で溶液中の自己会合型アミロイドβ蛋白質が消失又は減少した場合には、その被検物質が神経細胞死に対する抑制作用を有すると判定することができる。溶液中の自己会合型アミロイドβ蛋白質の解析は、上記(3)及び/又は(4)に記載の方法により行えばよい。
【0045】
本発明のスクリーニング方法により神経細胞死に対して抑制作用を有すると判定された物質は、アルツハイマー病の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として有用である。ここで「物質」とは、合成物、天然物、低分子化合物、蛋白質、糖質等のいかなるものでもよく、生理学的に許容されるそれらの塩、水和物並びに溶媒和物等であってもよい。生理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩などの鉱酸類の塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などの有機酸の塩、グリシンなどのアミノ酸の塩等を挙げることができる。
【0046】
本発明により提供される医薬は、本発明のスクリーニング方法により神経系細胞の細胞死に対して抑制作用を有すると判定された物質を有効成分として含み、アルツハイマー病の予防及び/又は治療のための医薬として用いることができる。本発明のスクリーニング方法により神経細胞死に対して抑制作用を有すると判定された物質は、それ自体を医薬として患者に投与してもよいが、一般には、これらの有効成分の1種又は2種以上を含む医薬組成物を製造して患者に投与することが好適である。このような医薬組成物として、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、トローチ、舌下剤、又は液剤などの経口投与の製剤、あるいは注射剤、座剤、軟膏、貼付剤などの非経口投与用の製剤を例示することができる。
【0047】
経口投与用の錠剤又はカプセル剤は、通常は単位投与物として提供され、結合剤、充填剤、希釈剤、打錠剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香味剤及び湿潤剤のような通常の製剤用担体を添加して製造することができる。錠剤は、この当業界で周知の方法に従って、例えば、腸溶性コーティング剤等を用いてコーティングすることができ、例えばセルロース、マンニトール、又はラクトース等の充填剤;澱粉、ポリビニルポリピロリドン、澱粉誘導体、又はナトリウム澱粉グリコラート等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の湿潤剤を用いて製造してもよい。
【0048】
経口投与用の液剤は、例えば水性又は油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ剤又はエリキシル剤等の他、使用前に水又は適当な媒体により再溶解されうる乾燥製剤として提供される。このような液剤には、通常の添加剤、例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は水素化食用脂肪のような沈殿防止剤、レシチン、ソルビタンモノオレート、アラビアゴムのような乳化剤、アーモンド油、精製ココナッツ油、油状エステル(例えばグリセリンのエステル)、プロピレングリコール、エチルアルコールのような(食用油も包含しうる)非水性媒体、p-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、エチルエステル、もしくはプロピルエステル、又はソルビン酸のような保存剤及び必要に応じて通常の香味剤又は着色剤を配合することができる。
【0049】
経口投与剤の製剤は、混合、充填、又は打錠などの当業界で周知の方法により製造することができる。また、反復配合操作を用いて多量の充填剤等を使用した製剤中に有効成分を分布させてもよい。非経口投与用の製剤は、一般には有効成分である化合物と滅菌媒体とを含有する液体担体投与量製剤として提供される。非経口投与用の溶剤は、通常、化合物を媒体に溶解させて滅菌濾過し、次に適当なバイアル又はアンプルに充填して密封することにより製造される。安定性を高めるために組成物を凍結させた後にバイアル中に充填し、水を真空下で除去してもよい。非経口懸濁液は実質的に非経口溶液の場合と同じ方法で製造されるが、有効成分を媒体に懸濁させてエチレンオキシド等により滅菌することにより好適に製造できる。また、有効成分が均一分布となるように必要に応じて界面活性剤、湿潤剤等を添加してもよい。
【0050】
有効成分である物質の投与量は、物質の活性の強度、治療や予防の目的、患者の症状、体重、年齢や性別等を考慮して適宜決定すればよい。また、1日あたり1〜数回に分けて投与するのが望ましい。
【0051】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれの実施例より何ら限定されるものではない。なお、下記の実施例において、「PBS」は「Phosphate Buffered Saline」、「TTBS」は「Tween−Tris Buffered Saline」、「HRP」は「Horseradish Peroxidase」を示す。
【0052】
実施例1 自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の調製
(1)アミロイドβ(Aβ1-40:配列番号1)樹脂の製造
Fmoc-Val樹脂342mg(アミン含量0.73mmol/g樹脂)をパーキンエルマーアプライドバイオシステムズ社製A433型自動ペプチド合成機にセットし、これにFmoc-Val-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Val-OH,Fmoc-Met-OH,Fmoc-Leu-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Ile-OH,Fmoc-Ile-OH,Fmoc-Ala-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Lys(Boc)-OH,Fmoc-Asn(Trt)-OH,Fmoc-Ser(tBu)-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Val-OH,Fmoc-Asp(OtBu)-OH,Fmoc-Glu(OtBu)-OH,Fmoc-Ala-OH,Fmoc-Phe-OH,Fmoc-Phe-OH,Fmoc-Val-OH,Fmoc-Leu-OH,Fmoc-Lys(Boc)-OH,Fmoc-Gln(Trt)-OH,Fmoc-His(Trt)-OH,Fmoc-His(Trt)-OH,Fmoc-Val-OH,Fmoc-Glu(OtBu)-OH,Fmoc-Tyr(tBu)-OH,Fmoc-Gly-OH,Fmoc-Ser(tBu)-OH,Fmoc-Asp(OtBu)-OH,Fmoc-His(Trt)-OH,Fmoc-Arg(Pmc)-OH,Fmoc-Phe-OH,Fmoc-Glu(OtBu)-OH,Fmoc-Ala-OH,Fmoc-Asp(OtBu)-OHを供給し、HBTU[2-(1H-Benzotriazole-1-yl)-1,1,3,3,-tetramethyluronium hexafluorophosphate]を縮合剤として順次縮合させて側鎖保護アミロイドβ(Aβ1-40)樹脂1.515gを得た。
【0053】
(2)トリフルオロ酢酸処理
上記(1)で得た側鎖保護アミロイドβ(Aβ1-40)樹脂中の304mgを採取し、これにフェノール0.75mlとチオアニソール0.5mlとトリフルオロ酢酸8.25mlとエタンジチオール0.25mlと蒸留水0.5mlを加え、氷冷下5分、続いて室温で1.5時間反応させた。反応終了後、氷冷したジエチルエーテル200mlを加えてペプチドを沈殿させた。全内容物をグラスフィルターで濾取し、冷ジエチルエーテルで洗浄した後、35%のアセトニトリルを含む0.1%トリフルオロ酢酸(約200ml)で抽出処理してH-Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-Glu-Asp-Val-Gly-Ser-Asn-Lys-Gly-Ala-Ile-Ile-Gly-Leu-Met-Val-Gly-Gly-Val-Val-OHで表される粗ペプチド191mgを得た。
【0054】
(3)ペプチドの精製
この粗ペプチドを35%のアセトニトリルを含む0.1%トリフルオロ酢酸(40ml)に溶解しODS(オクタデシルシラン)をシリカに結合した逆相系のカラム(内径2cm、長さ25cm)を用いたHPLCにより精製した。溶出は0.1%トリフルオロ酢酸中、アセトニトリル濃度を22%から42%へ直線的に20分間で上昇させることにより行った。精製物の収量は35mgであった。本物質の構造はMALDI-TOF質量分析により確認された。測定値[M+H]+4330.99に対して、計算値は(C19429553581+H)4330.89であった。
【0055】
(4)自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の調製
上記(3)で精製を行ったアミロイドβ蛋白質0.4μmolを1.5ml容量のエッペンドルフチューブに入れ、これに532μlの超純水と532μlのPBS(−)(ナカライテスク社製)を順次加え、アミロイドβ蛋白質を完全に溶解させた。このアミロイドβ蛋白質水溶液の入ったエッペンドルフチューブをダックローター(TAITEC社製、ローター:RT50)に取り付け、37℃において35rpmの速度で7日間回転させた。
【0056】
(5)グリセロール密度勾配遠心法による自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の分画
密度勾配作製器(Pharmacia社製)を用いて、容量2.2mlのポリアロマー製遠心管(Beckman社製)中に全量2mlの15−30%グリセロール密度勾配を作製した。緩衝液としては、PBS(−)と水を等量混和したもの(以下、「PBS(−)/Water」と表記することがある)を用いた。作製した15−30%グリセロール密度勾配上に、上記(4)で調製した自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を100μl重層し、これを小型卓上超遠心機(Beckman社製)にスイングローターを設置したものを用いて、36000rpmで16時間、4℃で遠心した。遠心後、試料を遠心管底部の方からペリスタポンプを用いて流速を一定に保ちながら流出させて分取し、12の画分に分画して、遠心管底部に近い画分から順にフラクション1〜12(Fr01〜12)とした。遠心管最下部に残った沈殿は、最初に用いた試料と同量の100μlのPBS(−)/Waterで懸濁して回収した。また、コントロールとして、PBS(−)/Waterを100μl用いて同様の実験を行った。
【0057】
実施例2 自己会合型アミロイドβ蛋白質の粒子解析
(1)電子顕微鏡観察及び写真撮影
直径18cmのシャーレに30〜40℃の蒸留水を入れてその水面にコロジオン1.5%(w/v)酢酸イソアミル溶液を30μl滴下し、直ちに溶媒が揮発して生じる薄膜を得た。この支持膜をグリッドに張り付けて乾燥させたのち、カーボンを真空蒸着してグロー放電による親水化処理装置を用いて表面を親水化した。次に、支持膜を張り付けたグリッド面を下にして実施例1の(4)及び(5)で調製した各自己会合型アミロイド蛋白質含有液の小滴(数μl)を触れさせ、直ちに濾紙で余分な水分を吸い取ってから、酢酸ウラニウム溶液を添加して観察を行った。電子顕微鏡は安定させた100〜120kVの高圧加速で使用し、汚染防止用のトラップには液体窒素を充填した。試料の電子線による損傷を極力防ぐためにグリッドの端等を利用して非点収差補正を行ったのち、電子線損傷低減法を用いて観察及び写真撮影を行った。
【0058】
(2)電子顕微鏡写真を用いた粒子解析
写真撮影はランダムに複数の視野を選ぶようにして行い、得られた顕微鏡写真を用いて粒子解析を行った。ネガ上で粒状構造物の赤道面を通るところで各粒状構造物の直径を測定して、粒径及び粒度分布を求めた。粒子解析は直接ネガを用いて行っても、スキャナー等で画像データとして取り込んで行っても同程度の解析精度が得られた。図3には、実施例1の(5)で調製したFr02の粒度分布を示した。この結果より、Fr02中の粒状構造物は約14nm付近をピークとする粒度分布を示すことが解った。
【0059】
実施例3 自己会合型アミロイドβ蛋白質の濃度及び収率の解析
(1)自己会合型アミロイドβ蛋白質のウエスタンブロット
上記の実施例1の(5)で調製した沈殿画分以外の各自己会合型アミロイド蛋白質含有液をそれぞれ10μlずつ、また、沈殿画分及び実施例1の(4)で調製した分画前の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液は2μgずつ、10−20%クラディエントのTris−Tricine系ポリアクリルアミドゲルで電気泳動(NOVEX社製キット使用)し、タンク式ブロッター(NOVEX社製)を用いて100Vで2時間、厚さ0.2μmのニトロセルロース膜(Schleicher&Schull社製)に転写した。転写後の膜を5%スキムミルク/0.05%TTBSで1時間ブロッキングしたのち、1μg/mlの抗アミロイドβ蛋白質抗体「4G8」(Senetek社製)に浸し、湿潤箱中で一晩、4℃で反応させた。膜を0.05%TTBSで洗浄し、二次抗体として1μg/mlのHRP−Rabbit anti−Mouse IgG+A+M(Zymed社製)を1時間反応させてから、0.05%TTBSで洗浄して未反応の二次抗体を除去した。この膜をSuper Signal West−Dura(Pierce社製)に浸して5分間インキュベーションしたのち、イメージアナライザー「LAS−1000 plus」(富士写真フィルム社製)で化学発光シグナルの検出及び画像データの取り込みを行った。
【0060】
(2)画像解析
上記(1)で得た画像データをLAS−1000 plusにより解析し、実施例1の(5)で調製した分画後の各自己会合型アミロイド蛋白質含有液の値を、実施例1の(4)で調製した濃度既知の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の値と比較することにより、相対的に濃度及び収率を求めた。求めた収率を「回収率」として図1に示した。
【0061】
実施例4 自己会合型アミロイドβ蛋白質の細胞死活性の測定
(1)初代培養細胞の調製
ラット18日胎児の前脳基底野より分散培養によって初代培養細胞を調製した。調製した初代培養細胞は、次に行う細胞死活性測定法に応じてそれぞれ適切なコーティングを行った培養プレート等に播種して培養した。すなわち、MTT活性測定に用いる場合は、ポリエルリジン(ナカライテスク社製)によりコーティングした24ウェルプラスチック製細胞培養プレートに播種して培養した。三重染色法による細胞死の検定に用いる場合は、シリコンゴム製のウェルを作製できるFlexiperm(Heraeus Instruments GmbH社製)をグリッド付きカバーガラスに接着させて組み合わせ、この組み立てた培養プレートをポリエチレンイミン(Sigma社製)によりコーティングしたものに播種して培養した。コーティングは、0.1%ポリエルリジン/0.15Mホウ酸バッファー(pH8.3)のポリエルリジン溶液、又は0.01%ポリエチレンイミン/0.15Mホウ酸バッファー(pH8.3)のポリエチレンイミン溶液に培養プレート等を1晩浸漬した後、滅菌精製水で洗浄し、自然乾燥させて行った。初代培養細胞の密度は、MTT活性測定に用いる場合は培養プレートの底面積に対して3×105cells/cm2、三重染色法による細胞死の検定に用いる場合は2×105cells/cm2となるように、5%牛胎児血清(ハイクローン社製)/5%馬血清(ライフテックオリエンタル社製)/1mM Pyruvate/50μg/ml Gentamicin(ライフテックオリエンタル社製)/DMEM high glucose培地(ライフテックオリエンタル社製)で調製して播種した。培養は37℃、10%CO2中で3日間行った。
【0062】
(2)自己会合型アミロイドβ蛋白質の添加
上記(1)で調製した初代培養細胞について、培養液を無血清培地(0.5mM L-Glutamine/50μg/ml Gentamicin(ライフテックオリエンタル社製)/B27 Supplement(ライフテックオリエンタル社製)/Neurobasal medium(ライフテックオリエンタル社製))に交換した。培地交換後、37℃、10%CO2中で3日間さらに培養を行った。この培養細胞に対し、実施例1の(4)で得られた分画前の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を最終アミロイドβ蛋白質濃度が5μMとなるように1ウェルの細胞外液に添加した。実施例1の(5)で分画した自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液はそれぞれ10μl、1ウェルずつに添加した。またコントロールとして、実施例1の(5)で自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液と同様に分画したPBS(−)/Waterの各画分をそれぞれ10μl、1ウェルずつに添加し、さらに全体のコントロールとして、PBS(−)/Water 10μlを2ウェルに添加した。添加後、MTT活性測定に用いる場合は16時間、三重染色法による細胞死の検定に用いる場合は40時間、37℃、10%CO2中で培養を行った。
【0063】
(3)MTT活性測定
上記(2)で何も処理を行っていない1ウェルにTritonX-100を最終濃度が0.1%となるように添加し、37℃、10%CO2中で10分間培養した。このようにして、分画前及び分画後の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を添加したウェル、コントロールのウェル、及びTritonX-100を添加してウェル内の培養細胞を死滅させたウェルについて、それぞれ培地中に50μlの5mg/ml MTT(Sigma社製)/PBS(−)を添加し、37℃、10%CO2中で3時間培養した。培養後、20% SDS/50% DMF(dimethylformamide)/H2O(pH3.5)を50μl添加して、さらに37℃、10%CO2中で2時間静置して細胞を完全に融解させた。この各ウェルの細胞融解液について570nmの吸光度を測定し、TritonX-100を加えて細胞を死滅させたウェルにおける値をバックグラウンドとして他のウェルにおける値から差し引いて、各試料の値とした。この値を用いて、コントロールのウェルの値から分画前及び分画後の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を添加したウェルの値をそれぞれ差し引き、さらにコントロールの値で除して100を乗じて、各試料の細胞死活性(MTT活性を阻害する活性)のコントロールに対する比率(%)として図1に示した。
【0064】
(4)三重染色法による細胞死の検定
(I)培養細胞の染色及び固定
上記(2)で調製した培養細胞の培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄したのち、Calcein−AMの最終濃度が1μg/ml、プロピディウムイオダイドの最終濃度が5μg/mlになるように無血清培地(0.5mM L-Glutamine/50μg/ml Gentamicin(ライフテックオリエンタル社製)/B27 Supplement(ライフテックオリエンタル社製)/Neurobasal medium(ライフテックオリエンタル社製))中に混合したものを添加して、37℃、10%CO2中で30分間培養した。培養後Flexipermを剥離したスライドガラスを10%中性ホルマリン中に浸漬して、4℃で30分間処理して固定し、PBS(−)で洗浄したのち、0.5μg/ml H33258(Molecular Probes社製)を室温で5分間作用させて染色した。
【0065】
(II)蛍光画像の処理及び細胞死活性の解析
上記(I)で調製した試料に、蛍光顕微鏡(オリンパス社製)下で、注目する蛍光波長だけを取得できるようにバンドパスフィルターを設定して目的の蛍光色素にふさわしい励起レーザーを照射し、励起された蛍光をCCDカメラで検出して画像を取り込み、画像データとして保存した。各蛍光色素の励起波長はそれぞれ、Calcein−AMは460−490nm、プロピディウムイオダイドは510−550nm、H33258は364nmで行った。また、各蛍光色素についてそれぞれ画像データを保存したのち、ノマルスキー微分干渉画像を取り込み、最後に各蛍光色素及びノマルスキー微分干渉画像をすべて重ね合わせて画像を再構築した。蛍光の検出、画像の取り込み、及び画像の解析はすべて「IPLab Spectrum」(日本ローパー社製)を用いて行った。ランダムに4つの視野を選んで上記の画像処理を行ったのち、得られた画像データについて、H33258で染色された全細胞数及びプロピディウムイオダイドで染色された死細胞数を計数した。1つの試料につき計数した全細胞数は平均でおよそ1000〜1200個程度であった。得られた死細胞数を全細胞数で除して100を乗じた値を細胞死活性(%)とし、図1に示した。なお、「死細胞」はプロピディウムイオダイドで染色された細胞で核の分断や萎縮などのアポトーシス様変化を呈した細胞とした。
【0066】
(5)分画前及び分画後の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の活性の比較
上記(3)及び(4)の結果を用いて、分画前の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の神経細胞死活性と、分画後の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の神経細胞死活性を比較し、それぞれ表1及び表2に示した。分画後の画分としては、Fr02及び沈殿画分を用いた。
【0067】
【表1】
Figure 0004317317
【0068】
【表2】
Figure 0004317317
【0069】
表1及び表2から明らかなように、分画前の自己会合型アミロイドβ蛋白質に対して、分画後の画分(Fr02)の比活性はMTT活性測定法による解析では40倍以上、三重染色法による解析では80倍以上に上昇していることが解り、分画によってより神経細胞死活性の高い自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を調製できることが確認された。また、自己会合型アミロイドβ蛋白質の神経細胞死活性は線維等が含まれる沈殿画分よりも、粒径14nm付近の粒状構造物を多く含有する画分(Fr02)においてより高いことが確認できた。なお、使用濃度とは細胞外液中に加えた各自己会合型アミロイドβ蛋白質の最終濃度であり、比活性の単位中の「unit」とはMTT活性測定法による解析では「1%のMTT活性を阻害する細胞死活性=1unit」、三重染色法による解析では「一定の視野あたり1%の細胞死を起こす活性=1unit」として定義した。
【0070】
【発明の効果】
本発明により、高い神経細胞死活性を有する自己会合型アミロイドβ蛋白質が安定的に供給される。また、本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質を培養神経系細胞、培養神経系器官又は動物脳等に作用させることにより、患者生体内で見られる神経細胞死を簡便かつ生体内環境に近い状態で再現することができ、この系を用いて神経細胞死抑制作用を有する物質のスクリーニングを精度良く行うことができる。
【0071】
【配列表】
Figure 0004317317
【0072】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自己会合型アミロイドβ蛋白質について、分画された各画分におけるアミロイドβ蛋白質回収率、MTT活性測定法によって求めた神経細胞死活性、及び三重染色法によって求めた神経細胞死活性をそれぞれ示した図である。図中、「BG」はバックグラウンド、「B」は分画前の自己会合型アミロイドβ蛋白質、「Pt」は沈殿画分を示す。「Fraction number」は遠心管底部に近い画分から順にFr01〜12としてつけたフラクション番号である。
【図2】本発明の方法で分画された自己会合型アミロイドβ蛋白質について、各フラクションの電子顕微鏡写真である。写真中、「Pt」は沈殿画分を示す。
【図3】本発明の方法で分画された自己会合型アミロイド蛋白質の、フラクション2(Fr02)の粒度分布図である。縦軸の「出現頻度」とは、ある一定の電子顕微鏡の視野あたりに見られた粒状自己会合型アミロイドβ蛋白質の個数である。

Claims (10)

  1. 自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液の製造方法であって、アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させる工程及び対流させた水溶液中の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液をグリセロール密度勾配遠心法により分画する工程を含み、
    さらに、グリセロール濃度が15%以上の画分に得られる自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を回収する工程を含むことを特徴とする方法。
  2. 水溶液を対流させる工程が水溶液を含む容器を回転させる工程である請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程が回転培養器を用いて行われる請求項2に記載の方法。
  4. 回転が5〜50rpmで4時間〜7日間行われる請求項2又は3に記載の方法。
  5. アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させ、対流させた水溶液中の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液をグリセロール密度勾配遠心法により分画することにより得られ、
    前記分画が、グリセロール濃度が15%以上の画分に得られる自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を回収する工程を含むことを特徴とする自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液。
  6. 請求項5に記載の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を用いて、インビトロで神経系細胞に細胞死を誘導する方法。
  7. 神経細胞死抑制作用を有する薬剤のスクリーニング方法であって、下記の工程;
    (1)請求項5に記載の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液及び被検物質の存在下で神経系細胞又は神経系器官を培養する工程、又は請求項5に記載の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液及び被検物質をヒトを除く動物に投与する工程、及び(2)上記神経系細胞、神経系器官又は動物の神経系細胞の細胞死が抑制された場合に、上記被検物質が神経細胞死に対して抑制作用を有すると判定する工程を含む方法。
  8. 神経細胞死抑制作用を有する薬剤のスクリーニング方法であって、下記の工程;
    (1)アミロイドβ蛋白質及び被検物質を含む水溶液を対流させる工程、(2)水溶液中の自己会合型アミロイドβ蛋白質生成の有無又はその程度を解析する工程、及び(3)上記自己会合型アミロイドβ蛋白質の生成が抑制された場合に、上記被検物質が神経細胞死に対して抑制作用を有すると判定する工程を含む方法。
  9. 神経細胞死抑制作用を有する薬剤のスクリーニング方法であって、下記の工程;
    (1)アミロイドβ蛋白質を含む水溶液を対流させて生成した自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液に、被検物質を添加する工程、(2)上記自己会合型アミロイドβ蛋白質の存在の有無又は程度を解析する工程、及び(3)上記自己会合型アミロイドβ蛋白質が消失又は存在量が減少した場合に、上記被検物質が神経細胞死に対して抑制作用を有すると判定する工程を含む方法。
  10. 神経細胞死抑制作用を有する薬剤のスクリーニング方法に用いられる請求項5に記載の自己会合型アミロイドβ蛋白質含有液を含む試薬。
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