JP2001253082A - インク乾燥防止装置、インクジェット記録ヘッド保管容器、インクジェット記録装置、およびインク乾燥防止方法 - Google Patents

インク乾燥防止装置、インクジェット記録ヘッド保管容器、インクジェット記録装置、およびインク乾燥防止方法

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JP2001253082A
JP2001253082A JP2000069089A JP2000069089A JP2001253082A JP 2001253082 A JP2001253082 A JP 2001253082A JP 2000069089 A JP2000069089 A JP 2000069089A JP 2000069089 A JP2000069089 A JP 2000069089A JP 2001253082 A JP2001253082 A JP 2001253082A
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ink
porous body
recording head
ejection surface
ink ejection
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JP2000069089A
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English (en)
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Yasushi Suwabe
恭史 諏訪部
Susumu Hirakata
進 平潟
Satoru Mori
哲 毛利
Yuji Suemitsu
裕治 末光
Hiroaki Sato
博昭 佐藤
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Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 記録ヘッド内部のインクの乾燥を長期間防止
し得るインク乾燥防止装置、インクジェット記録ヘッド
保管容器、およびインク乾燥防止方法と、インクジェッ
ト記録ヘッド内部のインクが乾燥することに起因する印
字品位の低下や、印字が不可能になるのを防止し得るイ
ンクジェット記録装置を提供する。 【解決手段】 シール液体14が含浸された多孔質体1
2は、インク吐出面104に対して傾斜した傾斜面16
Aが形成された弾性部材16に保持されている。弾性部
材16が弾性変形することで、インク吐出面104に多
孔質体12が密着され、インク吐出口が確実にシールさ
れる。多孔質体12はインク吐出面104から部分的に
時間差を持って離間されるため、離間させるために必要
な力が小さくて済むと共に、多孔質体12の損傷が防止
され、インクが飛散したり、インク吐出口7から空気が
流入したりすることもない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インク乾燥防止装
置、それを備えたインクジェット記録ヘッド保管容器、
インクジェット記録装置、およびインク乾燥防止方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、インクジェットプリンタは、噴射
ノズルのノズルプレートに形成された複数のオリフィス
からインクを噴射させ、媒体に付着させて印字を行って
いる。前記プリンタでは、印字していない状態が長時間
続くと、インクが乾燥してオリフィスが詰まったり、ノ
ズルプレートに埃(ほこり)が付着することによって、
印字時にドット抜けが発生し、印字品位が低下したり、
印字が不可能になる場合がある。そこで、一定期間記録
を休止するとき、異なった色のインクで記録を行うと
き、あるいは記録方式を変更するとき等には、記録ヘッ
ドをインクジェットプリンタ内の所定の場所に移動し
て、乾燥防止手段を作用させて休止するか、使用してい
た記録ヘッドをインクジェットプリンタから取り外して
乾燥防止手段を備えた保管容器に収容するようにしてい
る。
【0003】前記乾燥防止手段としては、底部に噴射ノ
ズルに対応した小部屋が形成され、該小部屋の周縁に、
ゴム製のキャップが配設されたものが知られている。記
録ヘッドは、例えば、前記乾燥防止手段に噴射ノズルを
底部に向けてセットすることによって、または、記録ヘ
ッドを前記乾燥防止手段にセットすると、記録ヘッドが
わずかに乾燥防止手段に向けて付勢されることによっ
て、記録ヘッドの噴射ノズルのノズルプレートがキャッ
プに押し付けられ、オリィフス内部のインクがノズルか
ら蒸発するのを防止している。
【0004】従来の乾燥防止手段としては、キャップを
利用した種々のものが知られている。例えば、密閉キャ
ップ方式に利用されるキャップは、ノズルプレートに当
接する部分以外には開口部を有していない形状のもので
ある。したがって、記録ヘッドをキャップを介して乾燥
防止手段にセットすると、小部屋を密閉することができ
るので、インクが乾燥してオリフィスが詰まったり、ノ
ズルプレートに埃が付着したりするのを防止することが
できる。その結果、印字時に、ドット抜けが発生して印
字品位が低下したり、印字が不可能になったりするのを
抑制できる。しかしながら、前記密閉キャップ方式で
は、噴射ノズルのノズルプレートを、前記キャップに機
械的に押し付けることによって小部屋を密閉するように
しているので、わずかな異物の存在や、部材表面の傷、
キャップの弾性特性の劣化、保管ケース内における記録
ヘッドの移動による圧接状態の変化等により、完全な密
閉状態を長期間にわたって保持するのは困難である。そ
の結果、時間の経過とともに、わずかながらインクが乾
燥して、オリフィスが詰まるという問題がある。また、
なんらかの理由で小部屋内の気圧が高くなると、オリフ
ィスのインクがインクタンク内に戻ってしまうので、ド
ット抜けが発生して印字品位が低下したり、印字が不可
能になったりする。
【0005】前記密閉キャップ方式の問題を解決する方
式として、連通口を有するキャップを用いる方式が知ら
れている。前記連通口を有するキャップでは、連通口が
小部屋と外界を連通することにより、前記小部屋内外の
気圧差を極小に維持することができるので、オリフィス
内のインクがインクタンク内に押し戻されるのを未然に
防ぐことができる。しかしながら、前記方式では、キャ
ップに設けられた連通口を通してのインク乾燥が増大す
るので、インク乾燥によるオリフィス詰まりは、密閉キ
ャップ方式よりも短時間で発生するという問題がある。
【0006】さらに改良された方式として、キャップ内
にインクと同様の成分で色材を含まない液体を充填する
方式や、保湿材として知られるグリセリンやジエチレン
グリコール等を充填する方式が知られている。これらの
方式は、密閉あるいは一部大気連通した前記小部屋の中
を、飽和蒸気圧状態に保つことによって、インクの乾燥
を防ぐものである。この方式により乾燥をより長時間防
止しつつ、気圧変化によるインク押し込みの問題を改善
することができる。しかしながら、用いられる液体自身
が蒸発し、時間とともに消失するので、長期間性能を発
揮させるには、必要に応じて補給しなければならない。
比較的蒸発し難い保湿材を用いる方式においても、消失
を防ぐことは困難である。また、上記方式においては、
キャップ内に充填される液体は、インクと相容性あるい
は親インク性を有するものが用いられる。したがって、
オリフィス内のインクと、前記充填液体が接すると2種
類の液体の溶液または混合液ができるので、インクの特
性を変化させてしまい、正常な印字が困難になる。さら
にキャップ内の液体にインクの色材が混ざることがあ
り、混色の原因となる。
【0007】さらに、撥水性保持効果のある液体がしみ
こまされた吸収体を吐出ノズル面(インク吐出面)に接
触させて、インクの乾燥を防止する構成が知られてい
る。しかし、撥水性保持効果のある液体を使用してイン
ク吐出面に接触させる場合、インク吐出口内にこの液体
が浸入して吐出不良が発生するおそれがある。また、長
期間にわたってインクの乾燥を防止しようとするときに
は、この液体がインクに溶けこんだりインクと混合され
たりして、インクに悪影響を与えるおそれがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記諸問題
を解決し、インクジェット記録ヘッド内部のインクの乾
燥を長期間防止し得るインク乾燥防止装置、インクジェ
ット記録ヘッド保管容器、およびインク乾燥防止方法を
提供することを目的とする。また、本発明は、インクジ
ェット記録ヘッド内部のインクが乾燥することに起因す
る印字品位の低下や、印字が不可能になるのを防止し得
るインクジェット記録装置を提供することを目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、請求項1のインク乾燥防止装置は、インクジェット
記録ヘッド内部のインクの乾燥を防止するインク乾燥防
止装置であって、不揮発性で且つ前記インクジェット記
録ヘッド内部のインクに対して非相溶性のシール液体を
含浸保持すると共にインクジェット記録ヘッドのインク
吐出面に接触してインク吐出口をシール可能とされた多
孔質体と、前記多孔質体を前記インクジェット記録ヘッ
ドのインク吐出面から部分的に時間差をもたせて離間さ
せる離間手段と、を有することを特徴とする。
【0010】請求項1のインク乾燥防止装置では、多孔
質体が吐出面に接触した状態で、多孔質体に含浸保持さ
れた不揮発性で且つインクジェット記録ヘッド内部のイ
ンクに対して非相溶性のシール液体が、インク吐出面と
の間で多数のメニスカスを形成する。その結果、インク
吐出口がシールされることとなり、インク吐出口から露
出しているインクと外界との連通を遮断することができ
る。多孔質体内部の空隙にはシール液体が含浸保持され
ているので、多孔質体の厚み方向(吐出面から離間する
方向)にもインクと外界とは完全に遮断される。従っ
て、インクジェット記録ヘッド内部のインクは周囲の大
気に曝されることがなく、その結果、インクの乾燥、固
化に起因するインク吐出口の目詰まりを軽減することが
できる。また、シール液体は多孔質体に含浸保持されて
いる(一般には多孔質体の細孔内の毛管力により多孔質
体内部に保持されている)ので、外部に放出され難く、
長期にわたって、インク乾燥防止機能を維持し得る。
【0011】請求項1に記載のインク乾燥防止装置では
離間手段を有しており、この離間手段によって、多孔質
体がインクジェット記録ヘッドのインク吐出面から部分
的に時間差を持って離間される。一般に多孔質体はイン
ク吐出面に密着してインク吐出口をシールしているの
で、このように時間差を持って離間されることなく一時
に(すなわち極めて短時間で瞬間的に)離間されるよう
な構成では、離間させるために大きな力が必要となり、
場合によっては多孔質体が損傷を受けたり、多孔質体を
保持する部材から多孔質体が分離されたりするおそれが
ある。また、多孔質体がインク吐出面から離れるとき
に、インク吐出口内のインクが飛散したり、インク吐出
口からインクを一時的に不要に引き出してしまって、そ
の反動でインク吐出口から不用意に空気が流入したりす
るおそれがある。さらに、多孔質体をインク吐出面から
離した状態で多孔質体のインク吐出口との接触部分にイ
ンクが残留して固着し、再度多孔質体をインク吐出面に
密着させるときに密着性が低下してインク吐出口を確実
にシールできないおそれがある。
【0012】これに対し、多孔質体がインクジェット記
録ヘッドのインク吐出面から部分的に時間差を持って離
間される本発明の構成では、まず多孔質体の一部が吐出
面から離間し、その後、他の部分が吐出面から離間する
ので、離間させるために必要な力が小さくて済むと共に
多孔質体自体に作用する力が小さくなり、多孔質体が損
傷を受けたり、多孔質体を保持する部材から多孔質体が
分離されてしまうことがない。また、多孔質体がインク
吐出面から離れるときに、多孔質体に付着したインク
は、多孔質体とインク吐出面とのギャップのより狭い側
に毛管力で移動するため、インクが飛散したり、インク
吐出口から空気が流入したりすることもない。さらに、
引き離した後に、インクが多孔質体のインク吐出面(特
にインク吐出口の周囲)との接触部分に残留して固着し
ないため、再度多孔質体をインク吐出面に密着させると
きに固着インクによって多孔質体のインク吐出面への密
着性が低下することがなく、いわゆるシール不良が確実
に防止される。
【0013】なお、本発明の離間手段は、多孔質体とイ
ンク吐出面とを相対的に離間させることが可能であれ
ば、これらのうちのどちらを移動させるかは特に限定さ
れない。すなわち、固定された多孔質体に対してインク
吐出面が離間する構成であってもよいし、逆に、固定さ
れたインク吐出面(インクジェット記録ヘッド)に対し
て多孔質体が離間する構成であってもよい。さらに、多
孔質体とインク吐出面の双方が移動して互いに離間する
構成であってもよい。
【0014】請求項2に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、前記多孔質体を保持する弾性変形可
能な弾性部材、を有し、前記離間手段が、前記多孔質体
と前記インク吐出面との距離が部分的に異なるように前
記弾性部材に形成された非等長部であることを特徴とす
る。
【0015】従って、弾性部材を弾性変形させること
で、多孔質体をインク吐出面に密着させてインク吐出口
を確実にシールすることができる。
【0016】弾性部材には非等長部が形成されており、
この非等長部によって、多孔質体とインク吐出面との距
離が部分的に異なるようになっている。従って、弾性部
材に保持された多孔質体がインク吐出面から離間すると
き、まず、多孔質体のうち自然状態(多孔質体がインク
吐出面に接触していない状態)で相対的にインク吐出面
から遠くに位置する部分がインク吐出面から離れ、その
後、これ以外の部分がインク吐出面から離れる。このた
め、多孔質体とインク吐出面との間に強い密着力が発生
する事無く多孔質体をインク吐出面から離すことができ
る。
【0017】請求項2に記載の発明では、このように、
弾性部材に非等長部を形成するだけの簡単な構造で離間
手段を構成し、多孔質体をインク吐出面から時間差をも
たせて離間させることができる。
【0018】なお、非等長部としては、上記したように
多孔質体とインク吐出面との距離が部分的に異なるよう
に弾性部材に形成されて、多孔質体をインクジェット記
録ヘッドのインク吐出面から部分的に時間差をもたせて
離間させることが可能であれば、具体的構成は特に限定
されないが、例えば、インク吐出面から異なる距離を有
する少なくとも2つの平面を有するような形状(階段
状)でもよいし、インク吐出面に対して一定の角度で傾
斜した傾斜面であってもよい。傾斜面の場合には、多孔
質体がインク吐出面から徐々に連続的に離れるので、ス
ムーズに多孔質体をインク吐出口から離すことができ、
好ましい。
【0019】また、多孔質体と弾性部材とは、支持体に
よって一体的に配置されている構成でもよいし、多孔質
体と弾性部材とが接着されて一体的に配置されている構
成でもよい。支持体によって一体的に配置した構成で
は、接着剤等を使用する必要がなくなり、多孔質体の材
料選択の幅が広くなる。これに対し、多孔質体と弾性部
材とを接着した構成では、多孔質体と弾性部材とを一体
的に成形でき、しかも支持体が不要となるので、低コス
トで製造できる。
【0020】さらに、多孔質体と弾性部材との間に、多
孔質体に含浸保持されたシール液体が通過不可能な遮断
部材を配置してもよい。遮断部材を配置することで、多
孔質体のシール液体が弾性部材に吸収されてしまうこと
を防止できる。多孔質体、弾性部材及び遮断部材を一体
的に構成してもよい。
【0021】請求項3に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、前記多孔質体が前記インク吐出面に
接触してインク吐出口をシールした状態で、多孔質体の
うちインク吐出面に接触可能な接触可能面の少なくとも
一部がインク吐出面からはみ出すように多孔質体を保持
する保持部材、を有し、前記離間手段が、前記インク吐
出面の中心と、前記多孔質体の接触可能面中心と、をず
らせて多孔質体を吐出面に接触させるずらし手段である
ことを特徴とする。
【0022】すなわち、保持部材に保持された多孔質体
がインク吐出面に接触してインク吐出口をシールした状
態で、多孔質体はインク吐出口への接触可能面の少なく
とも一部がインク吐出面からはみ出している。また、ず
らし手段によって、インク吐出面の中心と、多孔質体の
接触可能面の中心と、がずれた状態で多孔質体はインク
吐出面に接触している。これは、換言すると、多孔質体
の接触可能面のうち、接触状態でインク吐出面からはみ
出した部分の面積(あるいははみ出した長さ)が、はみ
出した部分ごとに(例えば特定の方向から見たときの左
右で)異なっていることになる。従って、この状態で多
孔質体がインク吐出面から離間すると、多孔質体がイン
ク吐出面から離れる途中でのインク吐出面と多孔質体と
のなす角度が非対称となり、必ず多孔質体の一方の側か
ら多孔質体は剥離される。この結果、多孔質体とインク
吐出面との間に強い密着力が発生する事無く多孔質体を
インク吐出面から離すことができる。
【0023】なお、請求項3の記載における「インク吐
出面の中心」及び「多孔質体のうちインク吐出面に接触
可能な接触可能面の中心」とは、それぞれ、インク吐出
面の中心及び多孔質体の接触可能面の中心を矩形とみな
した(近似した)ときの長辺方向の中心および短辺方向
の中心をいう。これらの面の形状が円形・楕円形・異形
であっても、その形状に外接する矩形を想定した時の長
辺方向の中心および短辺方向の中心を本発明で言うとこ
ろの中心と見なして、その位置をずらすよう配置すれば
よい。
【0024】また、これらの中心をずらす場合に、矩形
の長辺方向及び短辺方向のいずれの方向にずらしても、
多孔質体のインク吐出面からの剥離を容易にする効果は
得られるが、例えば、多孔質体が張架されて保持されて
いるような構成では、多孔質体の張架方向にずらすの
が、容易に剥離する観点からは最も効果的であり、好ま
しい。
【0025】請求項3の構成において、ずらし手段は、
多孔質体がインク吐出面に接触するときのインクジェッ
ト記録ヘッドの位置を考慮して、インク吐出面の中心が
多孔質体の接触可能面の中心に対して所定のずれ量とな
るようにあらかじめ保持部材の位置を設定することで構
成できる。これにより、実質的に保持部材がずらし手段
を兼ねていることになり、ずらし手段として特別の構成
(部材等)が不要となる。
【0026】請求項4に記載の発明では、請求項1〜請
求項3のいずれかに記載の発明において、前記多孔質体
が、伸長可能な伸長部材で構成されていることを特徴と
する。
【0027】これにより、多孔質体のインク吐出面に対
する密着性及び追従性を向上させることができる。ま
た、例えば請求項3に記載の発明においては、多孔質体
がインク吐出面から離れる途中でのインク吐出面と多孔
質体とのなす角度を非対称とするためには、多孔質体が
部分的に、インク吐出面に対して接離する方向に移動可
能とされていることが好ましい。従って、請求項4に記
載のように、多孔質体を伸長可能な伸長部材で構成する
と、多孔質体を伸長させることにより、部分的にインク
吐出面に対して接離する方向に移動させることが可能に
なる。
【0028】請求項5に記載の発明では、請求項1〜請
求項4のいずれかに記載の発明において、前記多孔質体
が撥インク性を有することを特徴とする。
【0029】このため、多孔質体にインクが付着するこ
とが防止される。
【0030】請求項6の記載の発明では、請求項1〜請
求項5のいずれかに記載のインク乾燥防止装置を備えた
ことを特徴とする。
【0031】従って、このインクジェット記録ヘッド保
管容器にインクジェット記録ヘッドを保管することで、
インクジェット記録ヘッド内部からのインクの乾燥をイ
ンク乾燥防止装置によって防止でき、インクの乾燥、固
化に起因するインク吐出口の目詰まりを軽減することが
できると共に、多孔質体の損傷や、多孔質体を保持する
部材からの分離を防止できる。また、多孔質体がインク
吐出面から離れるときのインクの飛散や、インク吐出口
からの空気の流入を防止できる。さらに、再度多孔質体
をインク吐出面に密着させるときのいわゆるシール不良
が確実に防止される。
【0032】請求項7に記載の発明では、請求項6に記
載の発明において、請求項1〜請求項5のいずれかに記
載のインク乾燥防止装置を備えると共に前記インクジェ
ット記録ヘッドを収容可能な容器本体、を有し、前記離
間手段が、前記容器本体から前記インクジェット記録ヘ
ッドを取り出す動作に連動して前記多孔質体を前記イン
クジェット記録ヘッドのインク吐出面から部分的に時間
差をもたせて離間させる連動機構であることを特徴とす
る。
【0033】このインクジェット記録ヘッド保管容器で
は、容器本体にインクジェット記録ヘッドを収容するこ
とで、インクジェット記録ヘッド内部からのインクの乾
燥をインク乾燥防止装置によって防止できる。
【0034】また、離間手段は、容器本体からインクジ
ェット記録ヘッドを取り出す動作に連動して多孔質体を
インクジェット記録ヘッドのインク吐出面から部分的に
時間差をもたせて離間させる連動機構とされている。従
って、インクジェット記録ヘッドを取り出す動作のみで
(すなわち、これ以外の特別な動作を必要とすることな
く)、多孔質体をインクジェット記録ヘッドのインク吐
出面から部分的に時間差をもたせて離間させることがで
きる。しかも、多孔質体とインク吐出面とを積極的に離
間させる装置(例えばモータやソレノイド等の駆動装
置)を必要としないので、離間手段の構造が簡単にな
り、低コストとなる。
【0035】請求項8に記載の発明では、請求項1〜請
求項5のいずれかに記載のインク乾燥防止装置を備えた
ことを特徴とする。
【0036】このインクジェット記録装置は、インク乾
燥防止装置を有しているので、インクジェット記録ヘッ
ド内部のインクの乾燥を確実に防止できると共に、イン
ク乾燥防止装置の多孔質体の損傷や、多孔質体を保持す
る部材からの分離を防止できる。また、多孔質体がイン
ク吐出面から離れるときのインクの飛散や、インク吐出
口からの空気の流入を防止できる。さらに、再度多孔質
体をインク吐出面に密着させるときのいわゆるシール不
良が確実に防止される。
【0037】請求項9に記載の発明では、インクジェッ
ト記録ヘッド内部のインクの乾燥を防止するインク乾燥
防止方法であって、不揮発性で且つ前記インクジェット
記録ヘッド内部のインクに対して非相溶性のシール液体
が含浸保持された多孔質体をインクジェット記録ヘッド
の吐出面に接触させてインク吐出口をシールする接触工
程と、前記多孔質体を前記インクジェット記録ヘッドの
インク吐出面から部分的に時間差をもたせて離間させる
離間工程と、を有することを特徴とする。
【0038】接触工程によって多孔質体をインクジェッ
ト記録ヘッドのインク吐出面に接触させることで、不揮
発性で且つインクジェット記録ヘッド内部のインクに対
して非相溶性のシール液体がインク吐出面との間で多数
のメニスカスを形成し、インク吐出口がシールされるた
め、インクジェット記録ヘッド内部のインクは周囲の大
気に曝されることがなく、その結果、インクの乾燥、固
化に起因するインク吐出口の目詰まりを軽減することが
できる。
【0039】離間工程では、多孔質体をインク吐出面か
ら部分的に時間差をもたせて離間させるので、離間させ
るために必要な力が小さくて済むと共に多孔質体自体に
作用する力が小さくなり、多孔質体が損傷を受けたり、
多孔質体を保持する部材から多孔質体が分離されてしま
うことがない。また、多孔質体がインク吐出面から離れ
るときに、多孔質体に付着したインクは、多孔質体とイ
ンク吐出面とのギャップのより狭い側に毛管力で移動す
るため、インクが飛散したり、インク吐出口から空気が
流入したりすることもない。さらに、引き離した後に、
インクが多孔質体のインク吐出面との接触部分に残留し
て固着しないため、再度多孔質体をインク吐出面に密着
させるときに固着インクによって多孔質体のインク吐出
面への密着性が低下することがなく、いわゆるシール不
良が確実に防止される。
【0040】請求項10に記載の発明では、インクジェ
ット記録ヘッド内部のインクの乾燥を防止するインク乾
燥防止方法であって、不揮発性で且つ前記インクジェッ
ト記録ヘッド内部のインクに対して非相溶性のシール液
体が含浸保持された多孔質体を、インクジェット記録ヘ
ッドのインク吐出面の中心と、前記多孔質体のうち吐出
面に接触可能な接触可能面の中心と、をずらせてインク
吐出面に接触させるずらし接触工程と、前記多孔質体を
前記インクジェット記録ヘッドの吐出面から離間させる
離間工程と、を有することを特徴とする。
【0041】ずらし接触工程によって多孔質体をインク
ジェット記録ヘッドの吐面に接触させることで、不揮発
性で且つインクジェット記録ヘッド内部のインクに対し
て非相溶性のシール液体がインク吐出面との間で多数の
メニスカスを形成し、インク吐出口がシールされるた
め、インクジェット記録ヘッド内部のインクは周囲の大
気に曝されることがなく、その結果、インクの乾燥、固
化に起因するインク吐出口の目詰まりを軽減することが
できる。このとき、インクジェット記録ヘッドのインク
吐出面の中心と、多孔質体のうち吐出面に接触可能な接
触可能面の中心と、にはずれが生じている。このため、
次に離間工程によって、多孔質体をインク吐出面から離
間させると、多孔質体がインク吐出面から離れる途中で
のインク吐出面と多孔質体とのなす角度が非対称とな
り、必ず多孔質体の一方の側から多孔質体は剥離され
る。この結果、多孔質体とインク吐出面との間に強い密
着力が発生する事無く多孔質体をインク吐出面から離す
ことができる。
【0042】なお、請求項10に記載のインク乾燥防止
方法は、例えば、請求項3に記載のインク乾燥防止装置
を使用することにより実現可能である。この場合、請求
項3に記載のインク乾燥防止装置ではずらし手段を有し
ているので、多孔質体をインクジェット記録ヘッドのイ
ンク吐出面に接触させてインク吐出口をシールするだけ
で、インク吐出面の中心と多孔質体の接触可能面の中心
とをずらすことができる。
【0043】
【発明の実施の形態】[インク乾燥防止装置及びインク
ジェット記録ヘッド保管容器]本発明のインク乾燥防止
装置は、シール液体と、このシール液体を含浸保持する
多孔質体とを備えている。そして、インクジェット記録
ヘッド(以下、単に「記録ヘッド」ということがある)
のインク吐出面に多孔質体が接触されることにより、記
録ヘッドのインク吐出面に1以上設けられたインク吐出
口(一般的にはインク吐出面でのノズルの開口部)が、
多孔質体に含浸保持されているシール液体によってシー
ルされ、インク吐出口に露出しているインクジェット記
録ヘッド内部のインクの乾燥を防止することができる。
【0044】本発明において、記録ヘッドのインク吐出
口をシールするのに用いられるシール液体は不揮発性で
ある。従って、このシール液体は、記録ヘッドの保管中
に蒸発せず、シール液体によるインク吐出口へのシール
状態に変化が生じない。その結果、長期にわたって、イ
ンクの乾燥を防止することができる。シール液体は、蒸
気圧が常温(25°C)で約13.3Pa(0.1mm
Hg)以下であるのがより好ましい。
【0045】さらに、このシール液体は、記録ヘッド内
部のインクと非相溶性を有する。従って、シール液体が
長期にわたってインク吐出口をシールした状態にあって
も、インクと混合することがなく、シール液体がインク
と混合することによって生じる混色や、印字画質の低下
等が起こりにくい。シール液体のインクに対する溶解度
は、常温(25°C)で0.1重量%以下であるのがよ
り好ましい。さらに、シール液体は、使用されるインク
に対して、後述するように撥インク性を有するのが好ま
しい。
【0046】シール液体は、多孔質体の微細孔に含浸さ
れ易い性質のものが好ましい。この点から、シール液体
は表面張力が小さいものが好ましく、具体的には表面張
力が30mN/m以下であるのがより好ましい。シール
液体の表面張力γsと、インクの表面張力γiが、γs
<γiの関係にあると、シール液体がインクに対して撥
インク性を有するため、インク汚れを防止できるので好
ましい。また、シール液体の動粘度は、常温で1〜10
00mm2/sであるのが好ましい。シール液体の動粘
度が1mm2/s未満の場合、常温におけるシール液体
自身の蒸発量が増加し、長期間性能を維持するのが困難
になる。一方、動粘度が1000mm2/sを超える
と、流動に対する抵抗が高くなり、多孔質体への含浸に
要する時間が長くなり好ましくない。
【0047】水性インクを用いる場合、シール液体とし
ては、常温で液体の有機溶媒やオイル類を使用できる。
より具体的には、オクタン、ノナン、テトラデカン、ド
デカン、オレイン酸、リノール酸、n−デカノール、ジ
メチルブタノール、フタル酸ジブチル、マレイン酸ジブ
チル等の有機溶媒、および植物油、鉱物油、シリコーン
オイル、フッ素オイル等のオイル類が好ましい。これら
は、1種を単独で用いても、あるいは均一に混合し得る
ものであれば、複数種を混合して用いてもよい。また、
複数の材料を混合して粘度や表面張力を好ましい範囲に
調整して使用してもよい。
【0048】本発明のインク乾燥防止装置は、シール液
体を含浸保持する多孔質体を有する。多孔質体として
は、平均孔径が0.01〜100μmのものが好まし
い。孔径が小さ過ぎると、シール液体が浸透しにくくな
り、多孔質体に所定量含浸させるために、加圧法等特殊
な方法が必要になる。また、孔径が大き過ぎるとメニス
カスの保持力が小さくなる。その結果、シール液体が記
録ヘッドの吐出面へ転移したり、振動や衝撃等の外力に
より、シール液体が多孔質体から放出されてしまい、乾
燥防止性能を発揮できなくなる場合がある。多孔質体の
空孔率が大きい程、より多くのシール液体を含浸するこ
とができ、より長期間にわたってインク乾燥防止装置と
して機能し得るが、大き過ぎると機械的強度が低下す
る。一方、空孔率が小さい程、機械的強度が向上する
が、小さ過ぎると大気からの完全な遮蔽が困難になり、
インク乾燥防止性能が低下する場合がある。
【0049】多孔質体としては、シール液体に対しては
親シール液体性を有し、使用されるインクに対しては撥
インク性を有しているのが好ましい。具体的には、多孔
質体は、インクの接触角が90°より大きく且つシール
液体の接触角が90°以下となるような表面エネルギを
有するものであるのが好ましい。表面エネルギが上記し
た接触角を満たすような範囲であると、多孔質体にイン
クが付着するのを防止することができ、且つ記録ヘッド
のインク吐出口の内側のインクの状態を乱すのを防止で
きるので好ましい。多孔質体の孔構造は、多孔質体の記
録ヘッドのインク吐出面と接する側に、含浸保持するシ
ール液体が露出した状態となるように含浸可能な微細孔
を有する構造であればよい。多孔質体の孔構造は、孤立
孔が離散的に存在した構造であってもよいし、極細繊維
を編んだ細溝構造であってもよい。また、中空糸等の毛
管構造を有する素材を束ねて接着し、毛管方向に垂直な
面で薄くスライスすることによって形成される孔構造で
あってもよい。中でも、各種の多孔質樹脂が有する3次
元網目構造が好ましい。多孔質体が3次元網目構造を有
していると、インク乾燥部材の製造段階あるいは使用途
中で、シール液体を多孔質体に含浸させる場合に、多孔
質体の任意の箇所にシール液体を供給するだけで、シー
ル液体は多孔質体中に速やかに且つ均質に浸透し、所望
の含浸状態が得られるので好ましい。
【0050】多孔質体は、記録ヘッド吐出面への追従性
および密閉性を向上するためには、柔軟に変形する部材
で構成することが好ましい。前記した多孔質樹脂を用い
る場合、厚さ1mm以下の薄層であることが好ましい。
中でも、以下に示す各種材料からなる多孔質樹脂フィル
ムが好適である。具体的には、多孔質フッ素樹脂(PT
FE(四フッ化エチレン重合体)、PFA(四フッ化エチ
レン/パーフルオロビニルエーテル共重合体)、PVD
F(ポリフッ化ビニリデン)、FEP(四フッ化エチレン
/六フッ化プロピレン共重合体)、ETFE(エチレン/
四フッ化エチレン共重合体)、PCTFE(三フッ化塩化
エチレン重合体)など)、多孔質ポリオレフィン樹脂
(PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン))、多孔
質ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン重合体)、多孔質
ポリエステル系樹脂(PET(ポリエチレンテレフタレ
ート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート))、多
孔質ポリアミド系樹脂(ポリアミド)、多孔質ポリイミ
ド系樹脂(ポリイミド、ポリアミドイミド)、多孔質ポ
リウレタン樹脂(ポリウレタン)、多孔質ポリアクリル
系樹脂(ポリアクリルニトリル重合体、メタアクリル酸
アルキルエステル、N-アルキル(メタ)アクリルアミ
ド、カルボキシ(メタ)アクリレート)、多孔質ポリス
チレン系樹脂(ヒドロキシスチレン樹脂)、多孔質ポリ
ケトン系樹脂(ポリエーテルケトン樹脂)、多孔質シリ
コーン系樹脂(シリコーンゲル)のフィルムが挙げられ
る。
【0051】多孔質樹脂を製造する場合は、例えば、発
泡法、燒結法、延伸法、抽出法、トラックエッチング
法、溶融相分離法、相転換法等を利用でき、材料にあわ
せて最適な方法を選択することができる。例えば、フッ
素樹脂を用いる場合は、樹脂の融点以上の熱処理を施さ
ない延伸法あるいは抽出法等の未焼成処理を利用するの
が好ましい。未焼成処理により多孔質化した、いわゆる
未焼成の多孔質フッ素樹脂は、変形しやすく、記録ヘッ
ドのインク吐出面との密着性がより向上するので好まし
い。フッ素樹脂は撥水性を有するので、水性インクを用
いる場合の多孔質体の材料として好ましい。また、水性
インクを用いる場合は、フッ素樹脂以外の材料からなる
多孔質樹脂フィルムに、フッ素樹脂を塗布、スプレー、
またはディップによりコートする等、一般的な多孔質体
に撥水性を付与したものを、本発明における多孔質体と
して用いることもできる。
【0052】多孔質体は、内部に多数の細孔を有するの
で、シール液体は細孔内の毛管力により多孔質体内部に
保持され得る。細孔内のシール液体の毛管力を、インク
吐出口のインクメニスカスに作用している記録ヘッド内
の負圧に対してバランスさせることにより、シール液体
を多孔質体内部に保持させ、記録ヘッド内に浸入するの
を防止することができる。シール液体の含浸率、即ち、
多孔質体の総空孔体積に対する含浸されたシール液体の
割合は、記録ヘッドと多孔質体が相互に押圧されて密着
した状態(記録ヘッドの休止状態や保管状態等)で、1
00%を超えないのが好ましい。100%を超えると多
孔質体からあふれたシール液体が、記録ヘッド内に進入
する可能性があり、記録ヘッドの吐出性能を劣化させる
場合がある。初期状態の適正な含浸率は、使用する多孔
質体の平均孔径や圧縮特性、印加する押圧力等により決
定されるが、装置の設計公差を考慮した上で不測の事態
が発生した場合においても、使用時の含浸率が100%
を超えることのないように設計するのがよい。
【0053】本発明のインク乾燥防止装置は、不揮発性
で且つインクに対して非相溶性のシール液体を含浸保持
する多孔質体を、記録ヘッドのインク吐出面に接触させ
てインク吐出口を閉塞することで、インクと大気との接
触を防止し、記録へッド内部のインクの乾燥を防止する
ものである。本発明のインク乾燥防止装置は、シール液
体が多孔質体とインク吐出面との間でメニスカスを形成
しているという特徴を有する。シール液体が、多孔質体
に含浸保持された状態の概念図を図1に示す。図1にお
いて、多孔質体1が記録ヘッド3のインク吐出面4と接
触すると、この接触部において、多孔質体1に含浸保持
されたシール液体2の一部(微量のシール液体2)がイ
ンク吐出面4と接触することになる。
【0054】その結果、インク吐出面4と多孔質体1と
の間には、シール液体2によるメニスカスが形成される
ので、吐出面4に露出しているノズル5内のインク6と
外界の連通を遮断することができる。多孔質体1の細孔
の孔径が十分に小さいと、インク吐出面4の周囲に無数
のメニスカス8が形成されるので、ノズル5の密封がよ
り完全になる。多孔質体1内部の空隙にはシール液体2
が充填されているので、多孔質体1の厚み方向の連通路
も完全に遮断される。その結果、ノズル5内部のインク
6が、記録ヘッド3の周囲の大気に曝されることがな
く、インク6の乾燥、固化に起因するノズル5(特にイ
ンク吐出口)の目詰まりが発生しない。
【0055】なお、図1では、多孔質体1とインク吐出
面4との界面に空気9が存在しているが、この空気は、
多孔質体1とインク吐出面4との接触時に微量に残留す
る空気であり、多孔質体1とインク吐出面4との接触状
態や、多孔質体1へのシール液体2の含浸状態によっ
て、存在状態は多少異なることもある。いずれの状態で
も、この空気は、多孔質体1に含浸されたシール液体2
によって、外部の空気と遮断されており、インク吐出口
からの水分蒸発にはほとんど影響を与えない。
【0056】また、シール液体2は不揮発性であるとと
もに、細孔の毛管力の作用により多孔質体1の内部に保
持されるので、容易に多孔質体1から放出されることが
なく、インク乾燥防止機能を長期間にわたって維持する
ことができる。さらに、シール液体2は、使用されてい
るインク6とは非相溶性であり、シール液体2がインク
6と接触しても、インク6とシール液体2とは相溶せず
分離するので、ダミージェット等で容易に除去すること
ができ、記録ヘッドの吐出性能に悪影響を及ぼすことが
ない。
【0057】本発明のインク乾燥防止装置は、多孔質体
を記録ヘッドのインク吐出面から離間させるときに、多
孔質体の部分ごとに時間差をもって離間させる離間手段
を有している。すなわち、図2(a)に示すように、多
孔質体1がインク吐出面4に接触している状態では、少
なくともインク吐出口7を完全に閉塞することができる
程度に多孔質体1はインク吐出面4に密着しているが、
図2(b)に示すように、多孔質体1がインク吐出面4
に対して相対的に離間すると、多孔質体1の一部分(図
2(b)において一点鎖線で示した位置に対応する部分
の多孔質体1)が他の部分よりも先に離間する。そし
て、最終的には、図2(c)に示すように、多孔質体1
がインク吐出面4から完全に離れる。
【0058】このように、多孔質体1が記録ヘッド3の
インク吐出面4から部分的に時間差を持って離間される
ため、離間させるために必要な力が小さくて済むと共に
多孔質体1自体に作用する力が小さくなり、多孔質体1
が損傷を受けることがない。また、後述するように、多
孔質体1が保持部材等に保持されている構成では、多孔
質体1が保持部材から分離されてしまうことがない。
【0059】また、多孔質体1がインク吐出面4から離
れるときに、多孔質体1に付着したインク6は、多孔質
体1とインク吐出面4とのギャップのより狭い側(図2
(b)では左側)に毛管力で移動するため、インクが飛
散したり、インク吐出口7から空気が流入したりするこ
ともない。
【0060】さらに、引き離した後に、インクが多孔質
体1のインク吐出面4(特にインク吐出口7の周囲)と
の接触部分に残留して固着しないため、再度多孔質体1
をインク吐出面4に密着させるときに固着インクによっ
て多孔質体1のインク吐出面4への密着性が低下するこ
とがなく、シール不良が確実に防止される。
【0061】以下、図面を用いて、本発明のインク乾燥
防止装置の実施の形態を説明する。
【0062】図3(a)には、本発明の第1の実施の形
態のインク乾燥防止装置10が示されている。このイン
ク乾燥防止装置10は、多孔質樹脂のフィルム等からな
る多孔質体12と、シール液体14、及び支持体13を
有している。シール液体14は、多孔質体12に含浸保
持されている。図3(a)に示す様に、多孔質体12
は、記録ヘッド102のインク吐出面104に対向して
配置され、多孔質体12に含浸保持されたシール液体1
4によってインク吐出口がシールされることで、ノズル
106(インク吐出口までのインク流路)の目詰まり
(特にインク吐出口での目詰まり)が防止される。
【0063】また、多孔質体12は、記録ヘッド102
のインク吐出面104に対向する面が開放された支持体
13に、その長手方向の両端が固定されて支持されてい
る。支持体13内にはゴム等の所定の弾性を有する材料
によって構成された弾性部材16が配置されている。図
3(c)に示すように、この弾性部材16のインク吐出
面104と対向する面は、支持体13よりもインク吐出
面104側に突出すると共に、インク吐出面104に対
して一定角度で傾斜した傾斜面16Aとされており、多
孔質体12は傾斜面16Aによって保持されている。従
って、図3(a)からも分かるように、弾性部材16が
弾性変形することで、インク吐出面104に多孔質体1
2が密着され、インク吐出口が確実にシールされる。
【0064】そして、図3(b)から分かるように、記
録ヘッド102がインク乾燥防止装置10から相対的に
離間する方向に移動すると、弾性部材16が弾性復元し
つつ、多孔質体12がインク吐出面104から離れる。
ここで、多孔質体12は弾性部材16の傾斜面16Aに
保持されているので、その一端側(図3(b)では右
側)から徐々にインク吐出面104から離れる。
【0065】なお、多孔質体12は、少なくとも長手方
向に伸長可能な部材で構成されていると、インク吐出面
104に対する密着性及び追従性を向上させることがで
きるので、好ましい。
【0066】図4には、本発明の第2の実施の形態のイ
ンク乾燥防止装置10’が示されている。このインク乾
燥防止装置10’は図3に示したような支持体13を有
することなく、多孔質体12を、弾性部材16に直接固
定した構成である。固定は、例えば、弾性部材16と多
孔質体12の対向面に接着剤を塗布して接着してもよ
い。その場合には、多孔質体12を弾性部材16に接着
して乾燥させた後、シール液体14を多孔質体12に含
浸させるのが好ましい。
【0067】本発明に用いるシール液体14が含浸され
た多孔質体12を保持する弾性部材16は、記録ヘッド
102の相対的な押しこみに対して、インク吐出面10
4に多孔質体12を密着させることができる程度に変形
可能であり、使用するシール液体14により変質、劣化
しないものであれば、特に制限は無い。すなわち、この
ような条件を満足していれば、記録ヘッド102によっ
て押圧された際の反発力が得られ、その反発力によって
持続的に押圧状態を維持できるので、より安定な密着状
態を簡易に実現できる。
【0068】弾性部材16の具体的な材料としては、各
種ゴム・エラストマーなどの他、ポリウレタンフォー
ム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポ
リ塩化ビニルフォーム、ゴムフォームなどの各種高分子
材料で多孔質構造に成型されたもの(フォーム)を用い
ることができる。高分子多孔質体のフォームを用いる場
合は、気孔率が低くなると圧縮応力の値が高くなるの
で、気孔率は30%以上であることが好ましい。弾性部
材のヤング率は、102 MPa以下であることが好ま
しい。弾性率が102 MPaより大きいと変形に対し
て反発力が大きくなるので、記録ヘッド102の押し込
み量を高精度に制御する必要があり好ましくない。
【0069】図5には、本発明の第3の実施の形態のイ
ンク乾燥防止装置10’’が示されている。このインク
乾燥防止装置10’’は、図4に示すインク乾燥防止装
置10' と略同一構成とされているが、弾性部材16
とシール液体14を含浸保持する多孔質樹脂等からなる
多孔質体12との間に、遮断部材18を配置した構成で
ある。遮断部材18は、シール液体14が通過不可能な
部材であり、多孔質体12中のシール液体14が弾性部
材16に吸収されることを防止する機能を有する。この
ような遮断部材18を用いると、多孔質体12に含浸保
持されたシール液体14が弾性部材16に吸収されるこ
とがないので、より長期間にわたって多孔質体12に保
持されたシール液体14の含浸率を良好な範囲に保つこ
とができ、目詰まり防止効果をより長い期間維持するこ
とができる。
【0070】遮断部材18を構成する材料としては、シ
ール液体14の流通を遮断できるものであればよく、各
種樹脂材料、金属材料等が使用可能である。遮断部材1
8が薄層であると、記録ヘッド102の吐出面104と
多孔質体12との密着を阻害しないので好ましい。例え
ば、遮断部材18は、樹脂フィルムや金属箔であるのが
好ましい。遮断部材18は、弾性部材16の多孔質体1
2の対向面に一体的に形成されていてもよい。例えば、
スプレー法、ディップ法、およびスピンコート法等の製
膜法を利用して、支持体16の対向面に樹脂膜を形成
し、該樹脂膜を遮断部材18として機能させてもよい
し、蒸着法、スパッタ法等の着膜法を利用して、支持体
16の対向面に金属薄膜を形成し、該金属膜を遮断部材
18として機能させてもよい。
【0071】なお、例えば図6に示すように、図3に示
すインク乾燥防止装置10に、上記した遮断部材18を
設けてもよい。
【0072】インク乾燥防止装置10、10’及び1
0’’は、各部材がユニット化されることで、インクジ
ェット記録装置や、記録ヘッドの保管容器の部品として
使用可能とされることが好ましいが、必ずしもユニット
化されている必要はない。
【0073】次に、上記したインク乾燥防止装置10、
10’及び10’’が適用され得る、本発明のインクジ
ェット記録ヘッド保管容器の実施の形態を図面を用いて
説明する。尚、図3〜図5と同一の部材には同一の番号
を付し、詳細な説明は省略する。なお、以下では、一例
としてインク乾燥防止装置10’をインクジェット記録
ヘッド保管容器に適用したものを挙げるが、これ以外の
インク乾燥防止装置でも適用可能である。
【0074】図7に示すインクジェット記録ヘッド保管
容器50は、インクジェット記録ヘッドを収納可能な室
52を備えた容器本体51と、容器本体51の上部に開
閉可能に支持された蓋54とを有する。室52の底部に
は、本発明のインク乾燥防止装置(ユニット化されたイ
ンク乾燥防止装置10’)が、多孔質体12を上部に向
けて固定されている。図7(b)に示すように、記録ヘ
ッド102は吐出面104を下方にして室52に収納さ
れ、蓋54が閉められると、記録ヘッド102の重さ
と、蓋54からの押し込み力によって弾性部材16が変
形し、インク吐出面104がインク乾燥防止装置10’
の多孔質体12に密着してインク吐出口が閉塞される。
従って、記録ヘッド102が保管容器50に保管されて
いる間、インク吐出口はシール液体によってシールされ
ているので、ノズル106(特にインク吐出口)の目詰
まりを防止することができる。インク乾燥防止装置1
0’の弾性部材16には傾斜面16Aが形成されている
ので、蓋54を開放して室52からインクジェット記録
ヘッドを取り出すと、弾性部材16が弾性復元しつつ、
多孔質体12が部分的に時間差をもってインク吐出面か
ら離れる。
【0075】この実施の形態では、記録ヘッド102の
全体を収納可能な室50を備えている保管容器50を示
したが、本発明のインクジェット記録ヘッドの保管容器
は、記録ヘッド全体を収納可能な室を備えている必要は
なく、少なくとも、記録ヘッドの先端部(吐出面がある
先端部)を収納可能な容積を有していればよい。例え
ば、記録ヘッドの先端が凸形状になっていて、該凸形状
の先端面が吐出面である場合は、該凸形状部分を収納可
能(吐出面とインク乾燥防止装置とを接触させながら収
納可能)な室を備えている形態であってもよい。この場
合には、蓋54に代えて、記録ヘッドをインク乾燥防止
装置に向かって押圧することが可能な部材を別途設ける
ことが、多孔質体12をインク吐出面104により確実
に密着させることができるので、好ましい。
【0076】本発明のインクジェット記録ヘッド保管容
器の他の実施の形態を図8に示す。尚、図2〜図5と同
一の部材には同一の番号を付し、詳細な説明は省略す
る。なお、以下では、一例としてインク乾燥防止装置1
0をインクジェット記録ヘッド保管容器に適用したもの
を挙げるが、これ以外のインク乾燥防止装置でも適用可
能である。
【0077】図8に示すインクジェット記録ヘッド保管
容器50’は、多孔質体12と弾性部材16とを支持体
13によって一体にし、支持体13の一端をヒンジ56
によって回動可能とすることで、記録ヘッド102のイ
ンク吐出面104に対して0度から10度程度の範囲で
角度を変えるように支持している。支持体13のヒンジ
56から離れた部分と室52の底部の間にはバネ材58
(圧縮コイルスプリング)が設けられており、インク乾
燥防止装置10が上方へ付勢されている。そして、記録
ヘッド102が押し込まれると、バネ材58が圧縮され
つつインク乾燥防止装置10が回動してこの角度が0度
になって、多孔質体12はインク吐出面104に密着す
る(図8(a)参照)。記録ヘッド102が引き離され
る時は、バネ材58の付勢力によって角度を有して離間
する(図8(b)参照)ように、各部材の形状等が決め
られている。
【0078】このように構成することで、記録ヘッド1
02が押し込まれた時の弾性部材16の圧縮変形率が、
ヘッドとの接触部分全面で均一になり、長期間の押し込
みでの偏ったへたりが発生せず、部分的な押しあて性能
劣化によるシール不良が発生しない。
【0079】また、記録ヘッド102をインクジェット
記録ヘッド保管容器50’から取り出すときには、この
動作に連動してインク乾燥防止装置10がバネ材58の
付勢力を受けて回動するため、多孔質体12が部分的に
時間差をもってインク吐出面104から離れる。
【0080】本発明のインクジェット記録ヘッド保管容
器の他の実施の形態を図9に示す。尚、図2〜図5及び
図8と同一の部材には同一の番号を付し、詳細な説明は
省略する。
【0081】図9に示すインクジェット記録ヘッド保管
容器50’’は、室52に、記録ヘッド102の収容方
向と同方向(図9では上下方向)にスライド可能に、且
つ記録ヘッド102と接触しない位置に棒体60が設け
られている。
【0082】室52の底部には、ヒンジ56によってア
ーム62が揺動可能に取り付けられており、アーム62
の一端に棒体60の下端が、アーム62の他端にインク
乾燥防止装置10が取り付けられている。インク乾燥防
止装置10の支持体13と室52の底部との間にはバネ
部材64(引張コイルスプリング)が設けられており、
インク乾燥防止装置10を下方に付勢している。この付
勢力により棒体60は上方に移動して、その上端が室5
2の上方に突出する。棒体60の上方への移動は、棒体
60の突き当たり部60Aが室52に設けられた突き当
り壁51Aにあたって一定範囲に制限される。
【0083】蓋54を閉じると、棒体60が蓋54に押
されて下方に移動し、バネ部材64の付勢力に抗してイ
ンク乾燥防止装置10が上方に移動してインク吐出面1
04に対する多孔質体12の角度が0度になる。そし
て、多孔質体12がインク吐出面104に密着する。
【0084】このインクジェット記録ヘッド保管容器5
0’’においても、記録ヘッド102が押し込まれた時
の弾性部材16の圧縮変形率が、ヘッドとの接触部分全
面で均一になり、長期間の押し込みでの偏ったへたりが
発生せず、部分的な押しあて性能劣化によるシール不良
が発生しない。
【0085】また、記録ヘッド102をインクジェット
記録ヘッド保管容器50’’から取り出すときには、こ
の動作に連動してインク乾燥防止装置10がバネ材64
の付勢力を受けて回動するため、多孔質体12が部分的
に時間差をもってインク吐出面104から離れる。
【0086】なお、図7〜図9に示す構成において、多
孔質体12がインク吐出面104に密着する位置で記録
ヘッド102が室52に固定されるように、例えば図8
に示す爪部66のような係止部材を設けると、弾性部材
16の弾性力やバネ材58、64の付勢力によって多孔
質体12がインク吐出面104から不用意に離れてしま
わないので、好ましい。また、保管容器に衝撃や振動が
与えられても、多孔質体12とインク吐出面104との
密着性が維持でき、インク乾燥防止機能が低下しないの
で好ましい。
【0087】インクジェット記録ヘッド保管容器5
0’、50’’のいずれも、記録ヘッド102を容器本
体51から取り出す動作のみで、多孔質体12が部分的
に時間差をもってインク吐出面104から離れるように
構成でき、多孔質体12とインク吐出面104とを積極
的に離間させる構成が不要となるので、簡単な機構で離
間手段を構成できる。モーターやソレノイド等の駆動装
置を使用してインク乾燥防止装置10を回動させる必要
もないので、構造が簡単で且つ低コストになる。
【0088】インクジェット記録ヘッド保管容器5
0’、50’’において、必ずしもインク乾燥防止装置
はヒンジ56によって回動可能とされている必要はな
い。例えば、弾性率や長さの異なる2つあるいはそれ以
上の弾性体によってインク乾燥防止を支持し、インク吐
出面104と多孔質体12とが離れるときにインク防止
装置が傾斜するような構成としてもよい。
【0089】また、記録ヘッド102を室52内に収納
するときに、インク吐出面104が多孔質体12に確実
に接触するように、記録ヘッド102の挿入を案内する
案内溝や案内板を室52に設けることが好ましい。
【0090】なお、上記説明では、インク吐出面と多孔
質体とが離間するときに、多孔質体がインク吐出面に対
して一様に傾斜している構成を取り上げて説明したが、
多孔質体がインク吐出面から部分的に時間差をもって離
れるようになっていれば、その具体的構成は特に限定さ
れない。例えば、多孔質体を保持する弾性部材に、イン
ク吐出面との距離が部分的に異なるように非等長部が形
成されているような構成であればよい、非等長部として
は、例えば図10に示すように、多孔質体12が幅方向
両側から徐々に、インク吐出面104から離れるように
なっていたり、図11に示すように、多孔質体12の中
央から離れるようになっていたりしてもよい。要する
に、多孔質体のインク吐出面との対向部分の少なくとも
一部がインク吐出面に対して傾斜していれば、この傾斜
部分全体に非等長部が形成されていることになる。な
お、図11に示す構成では、多孔質体12とインク吐出
面104との間に生じた空隙が負圧になると、引き離し
により多くの力が必要になる。従って、例えば多孔質体
12がインク吐出面104から離れる初期段階で空隙内
が大気圧に開放されるように構成することが好ましい。
具体的には、例えば多孔質体12が図11の紙面と直交
する方向には同一の形状でインク吐出面104から離間
するように構成したり、多孔質体12に、シール性に影
響を与えない程度の空気流入孔を設けたりすることがで
きる。
【0091】また、非等長部の他の例として、図12に
示すように、多孔質体12がインク吐出面104から離
間するときに、インク吐出面104と平行で、しかもイ
ンク吐出面104からの距離が異なる少なくとも複数
(図12では一例として2つ)の面を有するように(階
段状に)構成されていてもよい。この場合には、弾性部
材の特定の面を取り上げたとき、この面が他の面に対し
て非等長部になっている。なお、この階段状の面をより
多く構成することで、実質的に傾斜面が形成されている
ものに近似されることになる。
【0092】図10〜図12のいずれの構成において
も、弾性部材16(図3〜図5参照)の形状を、多孔質
体12がインク吐出面104から離れるときの形状に対
応させることで、容易に実現することができる。
【0093】図13には、本発明の第4の実施の形態の
インク乾燥防止装置210が示されている。このインク
乾燥防止装置210は、ケース部材212、保持部材2
14及び多孔質体216で構成されている。
【0094】図13(b)に示すように、ケース部材2
12は、上面が開放された箱状に形成されており、内部
に保持部材214及び多孔質体216が収容される。保
持部材214はケース部材212の内側寸法よりも僅か
に小さく形成されているが、その上面は、記録ヘッド1
02のインク吐出面104(図14参照)よりも大きく
されている。多孔質体216は、伸長可能な材料によっ
て構成されており、保持部材214の周囲に巻きつけた
ときに長手方向両端近傍が保持部材214の下面に回り
込むように、所定の長さを有する短冊状に形成されてい
る。このようにして多孔質体216を保持部材214に
巻きつけてケース部材212に収容することで、ケース
部材212と保持部材214との間に多孔質体216が
圧迫挟持されている。これにより、多孔質体216は、
保持部材214の上面に張架されていることになる。そ
して、保持部材214の上面側の多孔質体216、すな
わち、図13(b)において網点を付した部分が、請求
項3における多孔質体の「接触可能面」(以下、符号2
16Aで示す)となっている。
【0095】なお、多孔質体216及び保持部材214
の材質は、本発明の作用を奏するものであれば特に限定
されないが、例えば、多孔質体216としてはPTFE
樹脂フィルム、保持部材214としてはポリウレタンフ
ォームを採用することが可能である。この場合、PTF
Eフィルムとポリウレタンフォームを接着や溶着により
一体化することも可能である。しかし、元来フッ素樹脂
はその低表面エネルギゆえ他部材との接着が困難であ
り、十分な接着強度を得るためには、表面をコロナ放電
処理やプラズマ照射処理等の特殊な前処理を施して活性
化させる必要がある。また、接着剤が多孔質体の微細孔
を封止する恐れもあり、材料の選択や接着時の圧接力の
制御等が必要となるため、工程が複雑になると共に高コ
スト化すると言う問題がある。しかも、接着剤はシール
液体14と接しても変質、劣化せず接着力を保持しなけ
ればならないという条件も加わり、簡易な工程でかつ安
価な材料による接着は現実問題としては課題が多い。以
上の理由により、図13に示すように、フィルム状のP
TFE樹脂製とされた多孔質体216の端部を保持部材
214の底部または側部において、保持部材214とケ
ース部材212間で圧迫挟持する構成が簡易であり好ま
しい。この状態では、多孔質体216は保持部材214
の上面に接しているが、実質的には保持部材214の角
部で支持され張架された構造になる。
【0096】図14には、本実施の形態に係る記録ヘッ
ド102が示されている。図15には、インク乾燥防止
装置210と記録ヘッド102との位置関係が示されて
いる。なお、図14では、記録ヘッド102の一例とし
て、インクタンクと、このインクタンクからインク吐出
口までのインク流路であるノズルとが一体構造とされた
記録ヘッドを示している。この記録ヘッド102では、
3色のノズルの開口部分が同一ノズル面(インク吐出
面)に形成されており、図14(b)における網点部分
がインク吐出面104である。インク吐出面104に、
多孔質体216の接触可能面216Aが接触する。図1
5及び後述する図16、図17では、インク乾燥防止装
置210のケース部材212の図示を省略している。
【0097】図15から分かるように、多孔質体216
の接触可能面216Aは少なくともインク吐出面104
のインク吐出口(ノズル106の開口部分)の全てを覆
うことができ、しかも少なくとも一部が、インク吐出面
104からはみ出すように設けられる(図15では一例
として、接触可能面216Aの外縁近傍が全周にわたっ
てはみ出した状態のものを図示している)。そして、図
15(a)から分かるように、インク吐出面104の長
手方向の中心(中心線C1で示す)と、接触可能面21
6Aの長手方向中心(中心線C2で示す)とがずれるよ
うに、記録ヘッド102及びインク乾燥防止装置210
が配置される。この状態では、多孔質体216がインク
吐出面104に密着してインク吐出口を完全に閉塞して
おり、適当な押圧力で圧接するとより安定な密封状態を
得られる。
【0098】図16には、本実施の形態のインク乾燥防
止装置210から、記録ヘッド102を引き離す過程が
(a)〜(d)まで順に示されている。これに対し、図
17には、インク吐出面の長手方向の中心と、接触可能
面の長手方向中心とがずれることなく一致するように接
触されたインク乾燥防止装置210’と記録ヘッド10
2’において、インク乾燥防止装置210’から記録ヘ
ッド102’を引き離す過程が(a)〜(d)まで順に
示されている。
【0099】これらの図16及び図17から分かるよう
に、一般に記録ヘッドをインク乾燥防止装置から取り外
す際に、インク吐出面と多孔質体との密着力(主にシー
ル液体とインク吐出面および多孔質体間、インクとイン
ク吐出面および多孔質体間の界面張力に起因する)によ
り多孔質体が引っ張られる。フィルム状の多孔質体21
6は、保持部材214の角部で張架、支持されており、
しかも、伸長可能な材料で構成されているので、接触可
能面216Aの多孔質体216は面方向の張力が作用し
ているだけで、面に垂直な方向(取り外し方向)には追
従しやすい構成である。
【0100】その結果、インク吐出面104の中心と接
触可能面216Aの中心とにずれが生じていないと、図
17(a)〜(d)に詳細に示すように、多孔質体21
6は記録ヘッド102に引っ張られて保持部材214か
ら僅かに浮き上がり、やがてインク吐出面から瞬間的に
剥離されて初期状態に戻る。この時、ノズル内のインク
を不要に引き出してしまうことによるノズル内への空気
の混入や、記録ヘッド102と多孔質体216が離れた
瞬間のインクおよびシール液体の飛び散り、過剰に強く
引っ張られる事による多孔質体216の損傷等が発生す
る。
【0101】これに対し、本実施の形態のインク乾燥防
止装置は、図13で説明した通り、インク吐出面104
の中心と多孔質体216の接触可能面216Aの中心と
をずらして配置しているので、図16(a)〜(d)に
詳細に示すように、インク吐出面104と多孔質体21
6のなす角度が非対称となり、必ず一方の側から剥離さ
れる。この結果、両者の間に強い密着力が発生する事無
く記録ヘッド102を取り外せるので上記問題を防止す
る事ができる。
【0102】図18には、本発明の第5の実施の形態の
インク乾燥防止装置220が示されている。以下、第4
の実施の形態と同一の部材については同一符号を付して
説明を省略する。
【0103】このインク乾燥防止装置220は、ケース
部材212、保持部材214、多孔質体216に加え
て、押さえ部材222を有している。押さえ部材222
は、多孔質体216の接触可能面216Aを露出させる
ための開口を有する枠体であり、多孔質体216の長手
方向端部を保持部材214とケース部材212の内壁と
の間に押し込むための突起222Aを有している。ケー
ス部材212にはめ込まれた押さえ部材222はケース
部材212との不図示の繋止機構で固定される。なお、
多孔質体216は、接触可能面216Aと、固定のため
の折り返し部分とを少なくとも有するように、適当な長
さの短冊状とされている。これにより、第4の実施の形
態のインク乾燥防止装置210と同様、多孔質体216
は、保持部材214の上面に張架されていることにな
る。
【0104】なお、第5の実施の形態においても、第4
の実施の形態と同様、それぞれの部材の寸法、弾性特性
等を考慮して適宜設計することにより、接着や溶着する
こと無しに多孔質体216を張架、支持できる。
【0105】第4の実施の形態及び第5の実施の形態に
おいて、保持部材214を弾性変形可能な弾性部材で構
成してもよい。これにより、例えば第1の実施の形態の
インク乾燥防止装置10と同様、記録ヘッド102の押
し込みに対して弾性部材が弾性変形するので、多孔質体
216とインク吐出面104(図14参照)との密着性
を高めることが可能になる。
【0106】また、このように保持部材214として弾
性部材を使用した場合には、多孔質体216を保持部材
214に固着(接着や融着等)してもよい。すなわち、
記録ヘッド102がインク乾燥防止装置210、220
から離間するときに、多孔質体216が引っ張られて、
保持部材214が弾性的に伸びつつインク吐出面104
と多孔質体216のなす角度が非対称となり、多孔質体
216はインク吐出面104から剥離される。この引張
力を小さくする観点からは、保持部材214の弾性率は
1MPa以下であることが好ましい。
【0107】図19には、本発明の第4の実施の形態の
インク乾燥防止装置210、又は第5の実施の形態のイ
ンク乾燥防止装置220が適用されたインクジェット記
録ヘッド保管容器240が示されている。
【0108】インクジェット記録ヘッド保管容器240
は、上面が開放された容器本体242と、蓋体244と
で構成されている。インク乾燥防止装置210は容器本
体242の底部中央に配置されており、収容される記録
ヘッド102が位置決め用のガイド部材(不図示)に沿
って挿入されることにより、インク吐出面104と多孔
質体216の接触可能面216Aとが相対的に所定のず
れ状態(中心腺C1及びC2参照)で当接するようにな
っている。ガイド部材は通常の保管容器で位置決めガイ
ド用に用いられる構造でよく、容器本体242の内壁に
突設されるリブ構造やピン部材とピン部材が嵌合する穴
構造の組み合わせでもよい。
【0109】さらに、このインクジェット記録ヘッド保
管容器において、図8に示す爪部66のような係止部材
を設け、保管容器に衝撃や振動が与えられても、多孔質
体12とインク吐出面104との密着性が維持して不用
意なインクの乾燥をより効果的に防止できるようにして
もよい。
【0110】[インクジェット記録装置]本発明のイン
クジェット記録装置の実施の形態を図20に示す。尚、
図2〜図19に示すのと同一の部材には同一の番号を付
し、詳細な説明は省略する。
【0111】図20に示す本実施の形態のインクジェッ
ト記録装置100は、記録ヘッド102と、画像信号に
従って記録ヘッド102内に配置された吐出手段(不図
示)を制御する制御手段(不図示)と、画像信号に応じ
て記録ヘッド102を移動させる移動手段110と、記
録紙112を搬送するオートシートフィーダ等の搬送手
段114とを備えている。移動手段110は、ヘッド1
02が装着されたキャリッジ部110aと、インクジェ
ット記録装置100の外枠(不図示)に固定されている
とともに、キャリッジ部110aを図面中左右方向に移
動可能に支持するキャリッジシャフト110b、及びキ
ャリッジ部100aが取りつけられた無端状の駆動ベル
ト110cとから構成されている。記録ヘッド102の
待機領域近傍には、インク乾燥防止装置(図20では一
例として第1の実施の形態のインク乾燥防止装置10を
図示しているが、上述したいずれのインク乾燥防止装置
でもよい)が位置し、シール液体を含浸保持する多孔質
体12が吐出面104に接触可能に支持されている。ま
た、インク乾燥防止装置10の近傍には、ブレード等か
らなるクリーニング手段108が配置され、記録ヘッド
102が印字領域に移動する際に、吐出面に付着したシ
ール液体を除去可能になっている。さらに、メンテナン
ス装置116によって、記録ヘッド102がメンテナン
スされ、所望の印字性能を維持できるようにされてい
る。
【0112】印字時には、画像信号に応じてインクが記
録ヘッド102のインク吐出口から吐出されると共に、
駆動ベルトによって記録ヘッド102がキャリッジシャ
フト110bに沿って移動する。さらに記録紙112
も、搬送手段114によって任意の方向(一般的には、
記録ヘッド102の移動方向と直交する方向)へと移動
する。これらの動作により、記録紙112上に絵や文字
などの画像が記録される。
【0113】インクジェット記録装置100が非印字モ
ードになったり、電源OFFになったりすると、記録ヘ
ッド102は待機領域に戻る。記録ヘッド102が待機
領域に位置すると、インク乾燥防止装置10は、記録ヘ
ッド102の吐出面104方向に押出され、多孔質体1
2が吐出面104に接触する。多孔質体12はシール液
体を含浸保持しているので、吐出面104には、シール
液体のメニスカスが多数存在し、大気との接触が遮蔽さ
れ、ノズルの目詰まりが生じない。従って、従来、イン
クジェット記録装置の電源がOFFになったり、長期間
非印字モードとなっている場合に生じていたノズルの目
詰まりを解消することができる。
【0114】インクジェット記録装置100が印字モー
ドに移行するときには、インク乾燥防止装置10が記録
ヘッド102から離間する方向へ移動する。これによ
り、多孔質体12がインク吐出面104から離れる。イ
ンク乾燥防止装置10の弾性部材16は傾斜面16A
(図3参照)を有しているため、多孔質体12がインク
吐出面102から離れるときに一時に離れず、一方の側
から徐々に離れる。このため、インク乾燥防止装置10
をインク吐出面104から離れる方向へ移動させる力が
小さくて済む。多孔質体12に作用する力も小さくなる
ので、多孔質体12の損傷等が防止される。また、多孔
質体12をインク吐出面104から離した状態でインク
が多孔質体12のインク吐出面104(特にインク吐出
口の周囲)との接触部分に残らないので、インク吐出口
の周囲との接触部分でインクが固着することを防止でき
る。その結果、再度多孔質体12をインク吐出面104
に密着させるときに、密着性が低下することもなく、確
実にシールできる。なお、インク乾燥防止装置10を記
録ヘッド102に対して接離する方向に移動させる手段
は特に限定されないが、例えば、モーターによってカム
を回転させるカム式の移動手段や、駆動ソレノイドを利
用した移動手段等が挙げられる。
【0115】また、インク乾燥防止装置を配置する位置
は、例えば、記録ヘッドが運動する軌道内であって、印
字に影響を与えない位置であれば、インクジェット記録
装置100内のどこでも可能であるが、通常メンテナン
スポジション、あるいはホームポジションと呼ばれる場
所が最適である。第4の実施の形態或いは第5の実施の
形態のインク乾燥防止装置を配置する場合には、記録ヘ
ッドのインク吐出面と多孔質体の接触可能面との間に上
述した所定のずれが生じるような位置にインク乾燥防止
装置を取り付ければよい。これによって、実質的に本発
明の請求項3のずらし手段が構成される。
【0116】本発明のインクジェット記録装置では、従
来のメンテナンス機構に加えて本発明の乾燥防止装置を
配置してもよいし、従来の密封用ゴムキャップに換えて
本発明の乾燥防止装置を配置してもよい。
【0117】インク吐出面と多孔質体を当接させるため
の機構は従来公知の紙送りモータと連動したカム機構等
の組み合わせによる昇降手段等を採用することも可能で
ある。この場合においても、第4の実施の形態或いは第
5の実施の形態のインク乾燥防止装置を配置する場合に
は、『記録ヘッドの接触面』の中心と『多孔質体の接触
面』中心がずれるよう配置すればよい。
【0118】
【実施例】[実施例1](PTFEフィルムによるイン
ク乾燥防止装置) 多孔質体12として、ニ軸延伸により多孔質化したPT
FE樹脂フィルムを用意した。この樹脂フィルムは、樹
脂の融点以上の熱処理をした焼成品であり、その平均孔
径は1.0μm、空孔率80%、厚さ85μmであっ
た。また、下記で使用した水性染料インク(表面張力4
0mN/m、動粘度3mm2/s)の前記多孔質フィル
ムにおける接触角は100度であった。この多孔質フィ
ルムを、延伸方向の長さ60mm、延伸方向に垂直な幅
20mmの大きさに切断し、シリコーンオイル(蒸気圧
13.3Pa以下(25℃)、対インク溶解度0.1w
t%以下(25℃)、表面張力20mN/m、動粘度2
0mm2/s)に1分間浸して引き上げた。その後、多
孔質フィルム表面に付着した余分なシリコーンオイル
を、乾燥した濾紙で除去した。多孔質フィルムの全空孔
体積に対するシリコーンオイルの初期含浸率は80体積
%であった。前記シリコーンオイルの多孔質フィルムに
おける接触角は5度以下であった。また、前記シリコー
ンオイルの下記に使用した記録ヘッドの吐出面における
接触角は5度以下、前記シリコーンオイルに対する下記
で使用した水性染料インクの接触角は100度以上であ
った。
【0119】図3に示すように、ポリプロピレン樹脂製
の支持体13を用意し、前記シリコーンオイルを含浸保
持する多孔質フィルムと、ポリウレタンフォーム(平均
孔径0.1mm、ヤング率100kPa)からなる長さ
40mm、幅20mm、厚さ10mmの弾性部材16と
を一体的に、且つ弾性部材16が多孔質フィルムを介し
てインク吐出面104に接触可能となるように配置し
た。弾性部材16の傾斜面16Aがインク吐出面104
と成す角度は3度とした。
【0120】次に、記録ヘッドを用意した。この記録ヘ
ッドは、長さ25mm、幅8mmのインク吐出面を有
し、インク吐出面には口径30μmの吐出口が300個
配置されていた。記録ヘッド内部のノズルには水性染料
インクが充填されていて、インク吐出口には水性染料イ
ンクが露出していた。この記録ヘッドをインク吐出面1
04を下方にして、多孔質フィルムの表面がインク吐出
面104に対して上記した角度(3度)を保ったまま、
インク吐出面104の全面が多孔質フィルムに密着する
までヘッドを押し込んで固定した。その状態で、温度2
0℃、相対湿度50%の室内に3ヶ月放置した。その
後、記録ヘッドをインク乾燥防止装置から取り外し、イ
ンクジェット記録装置に取り付けて印字テストを行っ
た。その結果、通常のメンテナンス過程(ワイピングと
空吐出)を付すのみで、良好な印字画像を形成できるこ
とが確認できた。
【0121】また、記録ヘッドをインク乾燥防止装置か
ら取り外すときは、上記した角度を保ったまま、記録ヘ
ッドを引き戻して、多孔質フィルムを一端側から徐々
に、インク吐出面104から離すことができた。このた
め、引き離しに必要な力が小さくで済み、多孔質フィル
ムが損傷を受けることも無かった。ノズルから不要なイ
ンクを引き出すこともなかった。さらに、多孔質フィル
ムに余分なインクが付着して固着してしまうこともな
く、再度多孔質フィルムをインク吐出面104に密着さ
せるときに、高い密着性を確保できた。
【0122】また、実施例1において、多孔質フィルム
をシリコーンオイル(表面張力20mN/m、動粘度2
0mm2/s)に1分間浸して引き上げた後、多孔質フ
ィルム表面に付着した余分なシリコーンオイルを除去せ
ずに、そのまま使用した以外は、実施例1と同様にし
て、インク乾燥防止装置を作製した。多孔質フィルムの
全空孔体積に対するシリコーンオイルの初期含浸率は1
00体積%を超えていた。この多孔質フィルム表面を観
察したところ、多孔質フィルム表面にはシリコーンオイ
ルが多量に滲み出た状態であった。
【0123】そして、実施例1で用いたインク乾燥防止
装置を前記装置と代えた以外は、実施例1と同条件で記
録ヘッドを放置した後、実施例1と同条件で印字テスト
を行った。その結果、形成された画像は良好であった
が、画像部の印字ドットを拡大して調べたところ、一部
にインク濃度が薄いドットがあることが確認された。ま
た、一部にドットの方向の乱れや、吐出不良によるドッ
ト抜けがあることが分かった。これは、多孔質フィルム
の表面に過剰に存在していたシール液体が、記録ヘッド
を放置している間に、吐出口からノズルに浸入し、イン
クに一部シール液体が混入したため、あるいは、吐出口
内にシール液体が付着しインク吐出に乱れを生じさせた
ためと考えられる。但し、混入したシール液体はインク
と相溶せず、分離しているため、印字開始前に空吐出
(ダミージェット)を行うことで、除去することがで
き、ダミージェット後に記録された画像は良好であっ
た。しかし、少量のインクを無駄にすることになった。
従って、安定的に高画質な画像を形成するには、シール
液体の多孔質フィルムに対する含浸率は100%を超え
ていないのが好ましい。
【0124】[実施例2](ポリオレフィンフィルムに
よるインク乾燥防止装置) ニ軸延伸により多孔質化したポリオレフィン樹脂フィル
ムを用意した。この樹脂フィルムの平均孔径は0.2μ
m、空孔率46%、厚さ40μmであった。また、下記
で使用した水性染料インク(表面張力40mN/m、動
粘度3mm2/s)の前記多孔質フィルムにおける接触
角は100度であった。この多孔質フィルムを、延伸方
向の長さ60mm、延伸方向に垂直な幅20mmの大き
さに切断し、シリコーンオイル(蒸気圧13.3Pa以
下(25℃)、対インク溶解度0.1wt%以下(25
℃)、表面張力20mN/m、動粘度20mm2/s)
に1分間浸して引き上げた。その後、多孔質フィルム表
面に付着した余分なシリコーンオイルを、乾燥した濾紙
で除去した。多孔質フィルムの全空孔体積に対するシリ
コーンオイルの初期含浸率は80体積%であった。前記
シリコーンオイルの多孔質フィルムにおける接触角は5
度以下であった。また、前記シリコーンオイルの下記に
使用した記録ヘッドの吐出面における接触角は5度以
下、前記シリコーンオイルに対する下記で使用した水性
染料インクの接触角は100度以上であった。
【0125】そして、実施例1と同様、図3に示すよう
に、ポリプロピレン樹脂製の支持体13を用意し、前記
シリコーンオイルを含浸保持する多孔質フィルムと、ポ
リウレタンフォーム(平均孔径0.1mm、ヤング率1
00kPa)からなる長さ40mm、幅20mm、厚さ
10mmの弾性部材16とを一体的に、且つ弾性部材1
6が多孔質フィルムを介してインク吐出面104に接触
するように配置した。弾性部材16の傾斜面16Aがイ
ンク吐出面104と成す角度は3度とした。
【0126】次に、記録ヘッドを用意した。この記録ヘ
ッドは、長さ25mm、幅8mmのインク吐出面を有
し、インク吐出面には口径30μmの吐出口が300個
配置されていた。記録ヘッド内部のノズルには水性染料
インクが充填されていて、インク吐出口には水性染料イ
ンクが露出していた。この記録ヘッドを吐出面を下方に
して、多孔質フィルムの表面がインク吐出面104に対
して上記した角度(3度)を保ったまま、インク吐出面
104の全面が多孔質フィルムに密着するまでヘッドを
押し込んで固定した。その状態で、温度20℃、相対湿
度50%の室内に3ヶ月放置した。その後、記録ヘッド
をインク乾燥防止装置から取り外し、インクジェット記
録装置に取り付けて印字テストを行った。その結果、通
常のメンテナンス過程(ワイピングと空吐出)を付すの
みで、良好な印字画像を形成できることが確認できた。
【0127】また、記録ヘッドをインク乾燥防止装置か
ら取り外すときは、上記した角度を保ったまま、記録ヘ
ッドを引き戻して、多孔質フィルムを一端側から徐々
に、インク吐出面104から離すことができた。このた
め、引き離しに必要な力が小さくで済み、多孔質フィル
ムが損傷を受けることも無かった。ノズルから不要なイ
ンクを引き出すこともなかった。さらに、多孔質フィル
ムに余分なインクが付着して固着してしまうこともな
く、再度多孔質フィルムをインク吐出面104に密着さ
せるときに、高い密着性を確保できた。
【0128】[実施例3](未焼成PTFEフィルムに
よる乾燥防止装置) 圧延により薄層化したPTFEから添加剤を抽出して多
孔質化した未焼成(樹脂の融点以上の熱処理をしていな
い)のフッ素樹脂フィルムを用意した。その平均孔径は
2.0μm、空孔率50%、厚さ100μmであった。
また、下記で使用した水性染料インク(表面張力40m
N/m、動粘度3mm2/s)の前記多孔質フィルムに
おける接触角は100度であった。この多孔質フィルム
を、延伸方向の長さ60mm、延伸方向に垂直な幅20
mmの大きさに切断し、シリコーンオイル(蒸気圧1
3.3Pa以下(25℃)、対インク溶解度0.1wt
%以下(25℃)、表面張力20mN/m、動粘度20
mm2/s)に1分間浸して引き上げた。その後、多孔
質フィルム表面に付着した余分なシリコーンオイルを、
乾燥した不織布で除去した。多孔質フィルムの全空孔体
積に対するシリコーンオイルの初期含浸率は80体積%
であった。前記シリコーンオイルの多孔質フィルムにお
ける接触角は5度以下であった。また、前記シリコーン
オイルの下記に使用した記録ヘッドの吐出面における接
触角は5度以下、前記シリコーンオイルに対する下記で
使用した水性染料インクの接触角は100度以上であっ
た。
【0129】図3に示すように、ポリプロピレン樹脂製
の支持体13を用意し、前記シリコーンオイルを含浸保
持する多孔質フィルムと、ポリウレタンフォーム(平均
孔径0.1mm、ヤング率100kPa)からなる長さ
40mm、幅20mm、厚さ10mmの弾性部材16と
を一体的に、且つ弾性部材16が多孔質フィルムを介し
てインク吐出面104に接触するように配置した。弾性
部材16の傾斜面16Aがインク吐出面104と成す角
度は3度とした。
【0130】次に、記録ヘッドを用意した。この記録ヘ
ッドは、長さ25mm、幅8mmのインク吐出面を有
し、インク吐出面には口径30μmの吐出口が300個
配置されていた。記録ヘッド内部のノズルには水性染料
インクが充填されていて、インク吐出口には水性染料イ
ンクが露出していた。この記録ヘッドを吐出面を下方に
して、多孔質フィルムの表面がインク吐出面104に対
して上記した角度(3度)を保ったまま、インク吐出面
104の全面が多孔質フィルムに密着するまでヘッドを
押し込んで固定した。その状態で、温度20℃、相対湿
度50%の室内に3ヶ月放置した。その後、記録ヘッド
をインク乾燥防止装置から取り外し、インクジェット記
録装置に取り付けて印字テストを行った。その結果、通
常のメンテナンス過程(ワイピングと空吐出)を付すの
みで、良好な印字画像を形成できることが確認できた。
【0131】また、記録ヘッドをインク乾燥防止装置か
ら取り外すときは、上記した角度を保ったまま、記録ヘ
ッドを引き戻して、多孔質フィルムを一端側から徐々
に、インク吐出面104から離すことができた。このた
め、引き離しに必要な力が小さくで済み、多孔質フィル
ムが損傷を受けることも無かった。ノズルから不要なイ
ンクを引き出すこともなかった。さらに、多孔質フィル
ムに余分なインクが付着して固着してしまうこともな
く、再度多孔質フィルムをインク吐出面104に密着さ
せるときに、高い密着性を確保できた。
【0132】[実施例4](遮断部材の実施例) 実施例1において、図6にも示すように、多孔質フィル
ムとウレタンフォームとの間に、遮断部材18としてP
ET製フィルム(厚さ15μm)を配置して、接着剤で
固定した以外は、実施例1と同様にして、インク乾燥防
止装置を作製した。このインク乾燥防止装置は、実施例
1の効果に加えて、ウレタンフォームへのシリコーンオ
イルの浸透をより長期間にわたって防止し、多孔質フィ
ルムのシリコーンオイルの含浸率をより長期間にわたっ
て保ち、目詰まり防止効果をより長い期間維持すること
ができた。
【0133】[実施例5](PTFEフィルムによるイ
ンク乾燥防止装置) 一軸延伸により多孔質化したPTFE樹脂フィルムを用
意した。この樹脂フィルムは、樹脂の融点以上の熱処理
をした焼成品であり、その平均孔径は1.0μm、空孔
率80%、厚さ85μmであった。また、下記で使用し
た水性染料インク(表面張力40mN/m、動粘度3m
2/s)の前記多孔質フィルムにおける接触角は10
0度であった。この多孔質フィルムを、延伸方向の長さ
90mm、延伸方向に垂直な幅20mmの大きさに切断
し、シリコーンオイル(蒸気圧13.3Pa以下(25
℃)、対インク溶解度0.1wt%以下(25℃)、表
面張力20mN/m、動粘度20mm2/s)に1分間
浸して引き上げた。その後、多孔質フィルム表面に付着
した余分なシリコーンオイルを、乾燥した濾紙で除去し
た。多孔質フィルムの全空孔体積に対するシリコーンオ
イルの初期含浸率は80体積%であった。前記シリコー
ンオイルの多孔質フィルムにおける接触角は5度以下で
あった。また、前記シリコーンオイルの下記に使用した
記録ヘッドの吐出面における接触角は5度以下、前記シ
リコーンオイルに対する下記で使用した水性染料インク
の接触角は100度以上であった。
【0134】図13に示すように、ポリウレタンフォー
ム製の保持部材216(平均孔径0.1mm、弾性率1
00kPa、気孔率50%、長さ50mm、幅20m
m、厚さ10mm)を用意し、前記シリコーンオイルを
含浸保持する多孔質フィルムをこの保持部材216に巻
きつけるようにして固定したのち、ポリプロピレン製の
ケース部材212に収容して、ケース部材212と保持
部材216との間で、多孔質フィルムの端部近傍を圧迫
挟持して張架されるようにし、且つ保持部材216が多
孔質フィルムを介してインク吐出面104に接触するよ
うに配置した。上記した保持部材216と、下記のイン
ク吐出面104の大きさから分かるように、多孔質フィ
ルムの接触可能面は、長さ50mm、幅20mmであ
り、長手方向にも短手方向にも、インク吐出面104か
らはみ出し可能なサイズである。
【0135】次に、記録ヘッドを用意した。この記録ヘ
ッドは、図14に示すように、長さ35mm、幅15m
mのインク吐出面を有し、インク吐出面には口径30μ
mの吐出口が300個配置されていた。記録ヘッド内部
のノズルには水性染料インクが充填されていて、インク
吐出口には水性染料インクが露出していた。この記録ヘ
ッド102を吐出面を下方にして、インク吐出面104
の全面が多孔質フィルムに密着するまでヘッドを押し込
んで固定した。このとき、インク吐出面104の長手方
向中心と、多孔質フィルムの接触可能面の長手方向中心
とが5mmずれて当接するように配置した。その状態
で、温度20℃、相対湿度50%の室内に3ヶ月放置し
た。その後、記録ヘッドをインク乾燥防止装置から取り
外し、インクジェット記録装置に取り付けて印字テスト
を行った。その結果、通常のメンテナンス過程(ワイピ
ングと空吐出)を付すのみで、良好な印字画像を形成で
きることが確認できた。
【0136】また、記録ヘッドをインク乾燥防止装置か
ら取り外すときは、図16に示すように、記録ヘッドを
引き戻すと、インク吐出面104と多孔質体216のな
す角度が非対称となり、一方の側から剥離された。この
結果、両者の間に強い密着力が発生する事無く記録ヘッ
ド102を取り外すことが可能であった。このため、引
き離しに必要な力が小さくで済み、多孔質フィルムが損
傷を受けることも無かった。ノズルから不要なインクを
引き出すこともなかった。さらに、多孔質フィルムに余
分なインクが付着して固着してしまうこともなく、再度
多孔質フィルムをインク吐出面104に密着させるとき
に、高い密着性を確保できた。 [実施例6](ポリオレフィンフィルムによるインク乾
燥防止装置) 実施例2と同様に、ニ軸延伸により多孔質化したポリオ
レフィン樹脂フィルムを用意した。この樹脂フィルムの
平均孔径は0.2μm、空孔率46%、厚さ40μmで
あった。また、下記で使用した水性染料インク(表面張
力40mN/m、動粘度3mm2/s)の前記多孔質フ
ィルムにおける接触角は100度であった。この多孔質
フィルムを、延伸方向の長さ60mm、延伸方向に垂直
な幅20mmの大きさに切断し、シリコーンオイル(蒸
気圧13.3Pa以下(25℃)、対インク溶解度0.
1wt%以下(25℃)、表面張力20mN/m、動粘
度20mm2/s)に1分間浸して引き上げた。その
後、多孔質フィルム表面に付着した余分なシリコーンオ
イルを、乾燥した濾紙で除去した。多孔質フィルムの全
空孔体積に対するシリコーンオイルの初期含浸率は80
体積%であった。前記シリコーンオイルの多孔質フィル
ムにおける接触角は5度以下であった。また、前記シリ
コーンオイルの下記に使用した記録ヘッドの吐出面にお
ける接触角は5度以下、前記シリコーンオイルに対する
下記で使用した水性染料インクの接触角は100度以上
であった。
【0137】そして、実施例5と同様、図13に示すよ
うに、ポリウレタンフォーム製の保持部材216(平均
孔径0.1mm、弾性率100kPa、気孔率50%、
長さ50mm、幅20mm、厚さ10mm)を用意し、
前記シリコーンオイルを含浸保持する多孔質フィルムを
この保持部材216に巻きつけるようにして固定したの
ち、ポリプロピレン製のケース部材212に収容して、
ケース部材212と保持部材216との間で、多孔質フ
ィルムの端部近傍を圧迫挟持して張架されるようにし、
且つ保持部材216が多孔質フィルムを介してインク吐
出面104に接触するように配置した。上記した保持部
材216と、下記のインク吐出面104の大きさから分
かるように、多孔質フィルムの接触可能面は、長さ50
mm、幅20mmであり、長手方向にも短手方向にも、
インク吐出面104からはみ出し可能なサイズである。
【0138】次に、記録ヘッドを用意した。この記録ヘ
ッドは、図14に示すように、長さ35mm、幅15m
mのインク吐出面を有し、インク吐出面には口径30μ
mの吐出口が300個配置されていた。記録ヘッド内部
のノズルには水性染料インクが充填されていて、インク
吐出口には水性染料インクが露出していた。この記録ヘ
ッドを吐出面を下方にして、インク吐出面104の全面
が多孔質フィルムに密着するまでヘッドを押し込んで固
定した。このとき、インク吐出面104の長手方向中心
と、多孔質フィルムの接触可能面の長手方向中心とが5
mmずれて当接するように配置した。その状態で、温度
20℃、相対湿度50%の室内に3ヶ月放置した。その
後、記録ヘッドをインク乾燥防止装置から取り外し、イ
ンクジェット記録装置に取り付けて印字テストを行っ
た。その結果、通常のメンテナンス過程(ワイピングと
空吐出)を付すのみで、良好な印字画像を形成できるこ
とが確認できた。
【0139】また、記録ヘッドをインク乾燥防止装置か
ら取り外すときは、図16に示すように、記録ヘッドを
引き戻すと、インク吐出面104と多孔質体216のな
す角度が非対称となり、一方の側から剥離された。この
結果、両者の間に強い密着力が発生する事無く記録ヘッ
ド102を取り外すことが可能であった。このため、引
き離しに必要な力が小さくで済み、多孔質フィルムが損
傷を受けることも無かった。ノズルから不要なインクを
引き出すこともなかった。さらに、多孔質フィルムに余
分なインクが付着して固着してしまうこともなく、再度
多孔質フィルムをインク吐出面104に密着させるとき
に、高い密着性を確保できた。
【0140】[実施例7](未焼成PTFEフィルムに
よる乾燥防止装置) 実施例3と同様に、圧延により薄層化したPTFEから
添加剤を抽出して多孔質化した未焼成(樹脂の融点以上
の熱処理をしていない)のフッ素樹脂フィルムを用意し
た。その平均孔径は2.0μm、空孔率50%、厚さ1
00μmであった。また、下記で使用した水性染料イン
ク(表面張力40mN/m、動粘度3mm2/s)の前
記多孔質フィルムにおける接触角は100度であった。
この多孔質フィルムを、延伸方向の長さ60mm、延伸
方向に垂直な幅20mmの大きさに切断し、シリコーン
オイル(蒸気圧13.3Pa以下(25℃)、対インク
溶解度0.1wt%以下(25℃)、表面張力20mN
/m、動粘度20mm2/s)に1分間浸して引き上げ
た。その後、多孔質フィルム表面に付着した余分なシリ
コーンオイルを、乾燥した不織布で除去した。多孔質フ
ィルムの全空孔体積に対するシリコーンオイルの初期含
浸率は80体積%であった。前記シリコーンオイルの多
孔質フィルムにおける接触角は5度以下であった。ま
た、前記シリコーンオイルの下記に使用した記録ヘッド
の吐出面における接触角は5度以下、前記シリコーンオ
イルに対する下記で使用した水性染料インクの接触角は
100度以上であった。
【0141】そして、実施例5と同様、図13に示すよ
うに、ポリウレタンフォーム製の保持部材216(平均
孔径0.1mm、弾性率100kPa、気孔率50%、
長さ50mm、幅20mm、厚さ10mm)を用意し、
前記シリコーンオイルを含浸保持する多孔質フィルムを
この保持部材216に巻きつけるようにして固定したの
ち、ポリプロピレン製のケース部材212に収容して、
ケース部材212と保持部材216との間で、多孔質フ
ィルムの端部近傍を圧迫挟持して張架されるようにし、
且つ保持部材216が多孔質フィルムを介してインク吐
出面104に接触するように配置した。上記した保持部
材216と、下記のインク吐出面104の大きさから分
かるように、多孔質フィルムの接触可能面は、長さ50
mm、幅20mmであり、長手方向にも短手方向にも、
インク吐出面104からはみ出し可能なサイズである。
【0142】次に、記録ヘッドを用意した。この記録ヘ
ッドは、図14に示すように、長さ35mm、幅15m
mのインク吐出面を有し、インク吐出面には口径30μ
mの吐出口が300個配置されていた。記録ヘッド内部
のノズルには水性染料インクが充填されていて、インク
吐出口には水性染料インクが露出していた。この記録ヘ
ッドを吐出面を下方にして、インク吐出面104の全面
が多孔質フィルムに密着するまでヘッドを押し込んで固
定した。このとき、インク吐出面104の長手方向中心
と、多孔質フィルムの接触可能面の長手方向中心とが5
mmずれて当接するように配置した。その状態で、温度
20℃、相対湿度50%の室内に3ヶ月放置した。その
後、記録ヘッドをインク乾燥防止装置から取り外し、イ
ンクジェット記録装置に取り付けて印字テストを行っ
た。その結果、通常のメンテナンス過程(ワイピングと
空吐出)を付すのみで、良好な印字画像を形成できるこ
とが確認できた。
【0143】また、記録ヘッドをインク乾燥防止装置か
ら取り外すときは、図16に示すように、記録ヘッドを
引き戻すと、インク吐出面104と多孔質体216のな
す角度が非対称となり、一方の側から剥離された。この
結果、両者の間に強い密着力が発生する事無く記録ヘッ
ド102を取り外すことが可能であった。このため、引
き離しに必要な力が小さくで済み、多孔質フィルムが損
傷を受けることも無かった。ノズルから不要なインクを
引き出すこともなかった。さらに、多孔質フィルムに余
分なインクが付着して固着してしまうこともなく、再度
多孔質フィルムをインク吐出面104に密着させるとき
に、高い密着性を確保できた。
【0144】[実施例8](未焼成PTFEフィルムに
よるインクジェット記録ヘッド保管容器) 実施例7と同一構成のインク乾燥防止装置及びを使用
し、図19に示す保管容器240を作製した。容器本体
242及び蓋体244とはABS樹脂製の一体構造と
し、薄肉ヒンジによって蓋体244が容器本体242に
対して回動するようにした。
【0145】容器本体242の底部に、記録ヘッドのイ
ンク吐出面104の長手方向中心と、多孔質フィルムの
接触可能面の長手方向中心とがずれ量5mmでずれるよ
うに、インク乾燥防止装置を固定した。
【0146】記録ヘッドが位置決め用のガイド部材(不
図示)に沿って挿入されることにより、所定のずれ状態
(上記した5mm)で乾燥防止装置の多孔質体と当接し
た。。
【0147】この状態で、温度20℃、相対湿度50%
の室内に3ヶ月放置した。その後、記録ヘッドをインク
乾燥防止装置から取り外し、インクジェット記録装置に
取り付けて印字テストを行った。その結果、通常のメン
テナンス過程(ワイピングと空吐出)を付すのみで、良
好な印字画像を形成できることが確認できた。
【0148】また、記録ヘッドを容器本体242から持
ち上げるときには、持ち上げられるとすぐにインク吐出
面104と多孔質フィルムとの剥離が生じて、多孔質体
が過剰に引っ張られることがなかった。従って、多孔質
フィルムが損傷を受けることもなかった。
【0149】
【発明の効果】本発明によれば、インクジェット記録ヘ
ッド内部のインクの乾燥を長期間防止し得るインク乾燥
防止装置、インクジェット記録ヘッド保管容器、および
インク乾燥防止方法を提供することができる。また、本
発明によれば、インクジェット記録ヘッド内部のインク
が乾燥することに起因する印字品位の低下や、印字が不
可能になるのを防止し得るインクジェット記録装置を提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のインク乾燥防止装置の作用を概念的
に示す模式図である。
【図2】 本発明のインク乾燥防止装置とインク吐出面
との関係を示す概略断面図であり、(a)は多孔質体が
インク吐出面に密着した状態、(b)は多孔質体がイン
ク吐出面から離れる途中の状態、(c)は多孔質体がイ
ンク吐出面から離れた状態である。
【図3】 本発明の第1の実施の形態のインク乾燥防止
装置とインク吐出面との関係を示す概略断面図であり、
(a)は多孔質体がインク吐出面に密着した状態、
(b)は多孔質体がインク吐出面から離れる途中の状
態、(c)は多孔質体がインク吐出面から離れた状態で
ある。
【図4】 本発明の第2の実施の形態のインク乾燥防止
装置とインク吐出面との関係を示す概略断面図であり、
(a)は多孔質体がインク吐出面に密着した状態、
(b)は多孔質体がインク吐出面から離れる途中の状
態、(c)は多孔質体がインク吐出面から離れた状態で
ある。本発明のインク乾燥防止装置の一実施の形態の概
略断面図である。本発明のインク乾燥防止装置の一実施
の形態の概略断面図である。
【図5】 本発明の第3の実施の形態のインク乾燥防止
装置とインク吐出面との関係を示す概略断面図であり、
(a)は多孔質体がインク吐出面に密着した状態、
(b)は多孔質体がインク吐出面から離れる途中の状態
である。
【図6】 本発明の第3の実施の形態のインク乾燥防止
装置に遮断部材が設けられたものにおいてインク吐出面
との関係を示す概略断面図であり、(a)は多孔質体が
インク吐出面に密着した状態、(b)は多孔質体がイン
ク吐出面から離れる途中の状態、(c)は多孔質体がイ
ンク吐出面から離れた状態である。
【図7】 本発明の一実施の形態のインクジェット記録
ヘッド保管容器を示す断面図であり、(a)は多孔質体
がインク吐出面に密着した状態、(b)は多孔質体がイ
ンク吐出面から離れた状態である。
【図8】 本発明の一実施の形態のインクジェット記録
ヘッド保管容器を示す断面図であり、(a)は多孔質体
がインク吐出面に密着した状態、(b)は多孔質体がイ
ンク吐出面から離れた状態である。
【図9】 本発明の一実施の形態のインク乾燥防止装置
を示す断面図であり、(a)は多孔質体がインク吐出面
に密着した状態、(b)は多孔質体がインク吐出面から
離れた状態である。
【図10】 本発明において多孔質体がインク吐出面か
ら離間する状態の他の例を示す概略断面図である。
【図11】 本発明において多孔質体がインク吐出面か
ら離間する状態の他の例を示す概略断面図である。
【図12】 本発明において多孔質体がインク吐出面か
ら離間する状態の他の例を示す概略断面図である。
【図13】 本発明の第4の実施の形態のインク乾燥防
止装置を示し、(a)は概略断面図、(b)は分解斜視
図である。
【図14】 本発明の第4の実施の形態に適用されるイ
ンクジェット記録ヘッドを示し、(a)は概略側面図、
(b)は概略底面図である。
【図15】 本発明の第4の実施の形態のインク乾燥防
止装置とインクジェット記録ヘッドとの関係を示し、
(a)は概略正面図、(b)は概略側面図である。
【図16】 (a)〜(d)は、本発明の第4の実施の
形態のインク乾燥防止装置から、インクジェット記録ヘ
ッドを引き離す過程を順に示す概略正面図である。
【図17】 (a)〜(d)は、インク吐出面の中心と
多孔質体の接触可能面の中心とがずれていないインク乾
燥防止装置から、インクジェット記録ヘッドを引き離す
過程を順に示す概略正面図である。
【図18】 本発明の第5の実施の形態のインク乾燥防
止装置を示し、(a)は概略断面図、(b)は分解斜視
図である。
【図19】 本発明の第4の実施の形態のインク乾燥防
止装置が適用されたインクジェット記録ヘッド保管容器
と、このインクジェット記録ヘッド保管容器に保管され
るインクジェット記録ヘッドを示し、(a)はインクジ
ェット記録ヘッドの平面図、(b)はインクジェット記
録ヘッドの側面図、(c)はインクジェット記録ヘッド
保管容器の平面図、(d)はインクジェット記録ヘッド
保管容器の断面図である。
【図20】 本発明の一実施の形態のインクジェット記
録装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
10 インク乾燥防止装置 12 多孔質体(伸長部材) 14 シール液体 16 弾性部材 16A 傾斜面(非等長部、離間手段) 18 遮断部材 20 インク乾燥防止装置 50 インクジェット記録ヘッド保管容器 51 容器本体 56 ヒンジ(連動機構) 58 バネ部材(連動機構) 60 棒体(連動機構) 62 (連動機構) 66 爪部(保持部材) 102 インクジェット記録ヘッド 104 インク吐出面 210 インク乾燥防止装置 214 保持部材 216 多孔質体(伸長部材) 216A 接触可能面 220 インク乾燥防止装置 240 インクジェット記録ヘッド保管容器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 毛利 哲 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 末光 裕治 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 佐藤 博昭 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 Fターム(参考) 2C056 EA17 HA06 JA10 JA11 JA24 3E067 AA11 AB91 AC01 BA02A BA05A BB14A BC06A EE26 EE28 EE31 FA01 FC01 GA21

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクジェット記録ヘッド内部のインク
    の乾燥を防止するインク乾燥防止装置であって、 不揮発性で且つ前記インクジェット記録ヘッド内部のイ
    ンクに対して非相溶性のシール液体を含浸保持すると共
    にインクジェット記録ヘッドのインク吐出面に接触して
    インク吐出口をシール可能とされた多孔質体と、 前記多孔質体を前記インクジェット記録ヘッドのインク
    吐出面から部分的に時間差をもたせて離間させる離間手
    段と、 を有することを特徴とするインク乾燥防止装置。
  2. 【請求項2】 前記多孔質体を保持する弾性変形可能な
    弾性部材、を有し、 前記離間手段が、前記多孔質体と前記インク吐出面との
    距離が部分的に異なるように前記弾性部材に形成された
    非等長部であることを特徴とする請求項1に記載のイン
    ク乾燥防止装置。
  3. 【請求項3】 前記多孔質体が前記インク吐出面に接触
    してインク吐出口をシールした状態で、多孔質体のうち
    インク吐出面に接触可能な接触可能面の少なくとも一部
    がインク吐出面からはみ出すように多孔質体を保持する
    保持部材、を有し、 前記離間手段が、前記インク吐出面の中心と、前記多孔
    質体の接触可能面中心と、をずらせて多孔質体を吐出面
    に接触させるずらし手段であることを特徴とする請求項
    1の記載のインク乾燥防止装置。
  4. 【請求項4】 前記多孔質体が、伸長可能な伸長部材で
    構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の
    いずれかに記載のインク乾燥防止装置。
  5. 【請求項5】 前記多孔質体が撥インク性を有すること
    を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のイ
    ンク乾燥防止装置。
  6. 【請求項6】 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の
    インク乾燥防止装置を備えたことを特徴とするインクジ
    ェット記録ヘッド保管容器。
  7. 【請求項7】 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の
    インク乾燥防止装置を備えると共に前記インクジェット
    記録ヘッドを収容可能な容器本体、を有し、 前記離間手段が、前記容器本体から前記インクジェット
    記録ヘッドを取り出す動作に連動して前記多孔質体を前
    記インクジェット記録ヘッドのインク吐出面から部分的
    に時間差をもたせて離間させる連動機構であることを特
    徴とする請求項6に記載のインクジェット記録ヘッド保
    管容器。
  8. 【請求項8】 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の
    インク乾燥防止装置を備えたことを特徴とするインクジ
    ェット記録装置。
  9. 【請求項9】 インクジェット記録ヘッド内部のインク
    の乾燥を防止するインク乾燥防止方法であって、 不揮発性で且つ前記インクジェット記録ヘッド内部のイ
    ンクに対して非相溶性のシール液体が含浸保持された多
    孔質体をインクジェット記録ヘッドのインク吐出面に接
    触させてインク吐出口をシールする接触工程と、 前記多孔質体を前記インクジェット記録ヘッドのインク
    吐出面から部分的に時間差をもたせて離間させる離間工
    程と、 を有することを特徴とするインク乾燥防止方法。
  10. 【請求項10】 インクジェット記録ヘッド内部のイン
    クの乾燥を防止するインク乾燥防止方法であって、 不揮発性で且つ前記インクジェット記録ヘッド内部のイ
    ンクに対して非相溶性のシール液体が含浸保持された多
    孔質体を、インクジェット記録ヘッドのインク吐出面の
    中心と、前記多孔質体のうち吐出面に接触可能な接触可
    能面の中心と、をずらせてインク吐出面に接触させるず
    らし接触工程と、 前記多孔質体を前記インクジェット記録ヘッドの吐出面
    から離間させる離間工程と、 を有することを特徴とするインク乾燥防止方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007190849A (ja) * 2006-01-20 2007-08-02 Seiko Precision Inc プリンタ及び印刷ヘッド装置
JP2011073253A (ja) * 2009-09-30 2011-04-14 Brother Industries Ltd 液体吐出ヘッド用保護ケース
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JP2014208474A (ja) * 2013-03-29 2014-11-06 ブラザー工業株式会社 液体吐出記録装置及び液体回収方法

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