JP2001252658A - 造水方法 - Google Patents

造水方法

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JP2001252658A
JP2001252658A JP2000067421A JP2000067421A JP2001252658A JP 2001252658 A JP2001252658 A JP 2001252658A JP 2000067421 A JP2000067421 A JP 2000067421A JP 2000067421 A JP2000067421 A JP 2000067421A JP 2001252658 A JP2001252658 A JP 2001252658A
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water
pressure
membrane
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Yoshinari Fusaoka
良成 房岡
Masahiro Kihara
正浩 木原
Kunihiko Hayashi
久仁彦 林
Toshiro Miyoshi
俊郎 三好
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 造水コストを低減し、さらに長期間の安定運
転を可能とする逆浸透分離を用いた造水方法を提供す
る。 【解決手段】 逆浸透膜エレメントを含む複数個の逆浸
透膜モジュールユニット2,4に原水を昇圧して供給
し、透過水を得るにあたり、いずれの逆浸透膜エレメン
トにおいても、原水の膜面流速を0.03m/s以上に
制御する造水方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は造水方法に関する。
特に、それぞれ操作圧力の異なる2段以上の逆浸透分離
を用いて淡水を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、混合物(主に溶液)から特定の物
質を選択的に分離する方法として、膜分離法が広く用い
られている。そして、これらの膜分離法のうち、逆浸透
法は、海水やかん水(低濃度の塩水)を脱塩して工業
用、農業用、あるいは家庭用の淡水を提供する技術とし
て広く利用されている。
【0003】この逆浸透法は、水分子のみを透過させる
性質を有する逆浸透膜を用い、当該逆浸透膜を隔てて浸
透平衡にある溶液と水に対し、溶液の浸透圧より高い圧
力を溶液側から加えることにより、溶液中の水分子を水
側へ移行させる技術である。つまり、逆浸透法は、従来
の蒸発法のような相変化を起こすことなく溶液中から水
を取り出すことができるので、エネルギ的に有利である
上に運転管理が容易で淡水を得ることができるという利
点がある。
【0004】そして、この逆浸透分離を実用規模で行う
場合、以下のような逆浸透分離装置が通常用いられる。
まず、逆浸透膜がスパイラル状、管状、平膜の積層体、
または中空糸膜状に加工され、適宜流路材を介装した状
態でケースに収容されてエレメントと呼ばれる膜素子を
構成する。このエレメントは適宜直列に接続され、耐圧
容器に収容されてモジュールとなり、さらに、このモジ
ュールが並列に接続されて逆浸透分離モジュールユニッ
トとなる。そして、モジュールユニット全体に所定の圧
力を負荷することにより、逆浸透分離が行われる。
【0005】なお、実際に逆浸透分離を行うと、逆浸透
膜を透過できない塩が膜面近傍の溶液側に滞留して膜面
での塩濃度が上昇し、いわゆる濃度分極現象が生じて膜
面の浸透圧が高くなる。そのため、溶液の浸透圧より高
い圧力(以下、「操作圧力」という)で逆浸透分離を行
うことが実用上必要である。ここで、操作圧力と溶液の
浸透圧との差を「有効圧力」といい、通常はモジュール
ユニットの出口側における有効圧力が2MPa程度になる
よう、操作圧力が決められている。
【0006】ところで、逆浸透分離において、海水から
淡水を回収する割合(回収率)は、逆浸透分離のプロセ
ス全体の設計のみならず、逆浸透分離して得られる淡水
の製造コストを決める上で重要な因子となっている。そ
して、回収率が高い程、上記淡水化のコストが低減する
ので、回収率の向上を図ることが重要な課題となってい
る。例えば、塩濃度3.5%の海水を用いた場合、従来
の技術における回収率は約40%である。この場合、塩
濃度3.5%で供給される海水は、モジュールユニット
内で濃縮され、その出口側から塩濃度6%の濃縮水とな
って取り出され、当該モジュールユニット内の海水の浸
透圧は約2.5〜4.5MPaとなる。従って、この浸透圧
に上記した有効圧力を加えた値(6.5MPa)を、操作圧
力としてモジュールユニット全体に負荷して運転が行わ
れる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
技術の場合、以下の制約要因があるために40%を超え
る回収率を実現することは極めて困難である。まず、第
1の制約要因は、ファウリングの問題である。ファウリ
ングとは、海水に含まれる濁質成分等が逆浸透膜の膜面
に付着して目詰まりを起こす現象であり、膜寿命を低下
させて逆浸透分離時の運転コストを上昇させる原因とな
る。そして、有効圧力が高くなる程、膜面の透過水量は
多くなり、膜面に上記濁質成分が引き寄せられるので、
ファウリングが生じ易くなる。
【0008】そして、モジュールユニットの入口側に導
入された海水は、出口側に向ってその濃度が高くなり、
そのため当該出口側の海水の浸透圧は入口側に比べて高
くなる。一方、操作圧力はモジュールユニットの入口側
と出口側でほぼ同一であることから、操作圧力と浸透圧
の差で表される有効圧力は当該入口側で上昇する。この
ように、モジュールユニットの入口側ではファウリング
が特に生じ易くなっていることから、全体の操作圧力
(=回収率)を制限してファウリングを防止することが
必要である。
【0009】第2の制約要因は、海水中のスケール成分
(炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、あるいは硫酸スト
ロンチウム等)や、溶質である塩(塩化ナトリウム)が
膜面に析出する問題である。この析出現象は、逆浸透分
離によって海水が濃縮されて、上記スケール成分や塩の
濃度がその溶解度を超えた場合に生じ、これらが膜面に
析出するとファウリングが生じ易くなるという問題があ
る。そして、回収率が高くなる程、濃縮水中の上記スケ
ール成分等の濃度も高くなることから、上記スケール成
分や塩が析出しない範囲に回収率を規制することが必要
となる。例えば、前記スケール成分の溶解度から規定さ
れる回収率の上限は約70%である。また、適当なスケ
ール防止剤を用いて前記スケール成分の析出を防止した
場合でも、前記した塩の溶解度が制限となるので、回収
率の上限は約85%に規制される。
【0010】第3の制約要因は、逆浸透膜や逆浸透分離
モジュールユニットの耐圧性である。例えば、回収率4
0%で逆浸透分離を行う場合の操作圧力は、上述の如く
6.5MPaであるが、回収率60%で逆浸透分離を行う場
合、その濃縮水(塩濃度8.8%)の浸透圧は7MPaにな
り、そのため操作圧力は9MPaに上昇する。従って、逆
浸透膜やモジュールユニットにはこれ以上の耐圧性が要
求される。
【0011】そして、上記した各制約要因のうち、特に
ファウリングの問題が逆浸透分離における回収率の向上
を図る点で大きな障害となっている。このようなことか
ら、特開平8−108048号公報には、多段に配置し
た逆浸透膜モジュールユニットを用い、前段の逆浸透分
離で得られた濃縮水をさらに昇圧して次段で逆浸透分離
する技術が開示されている。この技術においては、全体
の回収率(以下、「総回収率」という)は各段における
回収率を合わせたもので表され、例えば60%という高
い総回収率を達成することができる。
【0012】ところで、多段の逆浸透分離を行う場合、
いずれか1つの段でファウリング等のトラブルが生じて
も全体の安定運転に影響が生じることになるので、各段
でのファウリングを確実に防止する運転条件を確立する
ことが必要である。特に、多段の逆浸透分離の運転に際
しては、各段での回収率や、各段へ送られる海水の塩濃
度がそれぞれ異なっているため、従来、すべての段にお
けるファウリングを防止できる運転条件を見出すことは
困難であった。そして、一旦ファウリングが生じると、
運転を中止してその段の膜の洗浄や交換を行う必要があ
るので、運転効率の低下、ひいては運転コストの増大を
招くという問題があった。
【0013】本発明は、逆浸透分離における上記した問
題を解決し、海水からの淡水の回収率を向上させるとと
もに、運転コストを低減させて造水コストを低減せし
め、さらに長期間の安定運転を可能とした、逆浸透分離
を用いた造水方法の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、請求項1に記載の造水方法は、逆浸透膜エレメ
ントを含む複数個の逆浸透膜モジュールユニットに原水
を昇圧して供給し、透過水を得るにあたり、いずれの逆
浸透膜エレメントにおいても、原水の膜面流速を0.0
3m/s以上に制御することを特徴とする。
【0015】そして、請求項2の造水方法は、逆浸透膜
モジュールユニットを多段に接続し、かつ、前段に位置
する逆浸透膜モジュールユニットから得られる非透過水
を昇圧して後段に位置する逆浸透膜モジュールユニット
に原水として供給し、各段から透過水を得ることを特徴
とする。また、原水として海水またはかん水を用いる造
水方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る、2段で逆浸
透分離を行う淡水の製造方法を図1に基づいて説明す
る。図1において、逆浸透分離装置1は、それぞれ操作
圧力の異なる初段逆浸透膜モジュールユニット2、およ
び後段逆浸透膜モジュールユニット4を備えている。
【0017】そして、この逆浸透分離装置1に供給海水
10を導入して逆浸透分離を行うことにより淡水50が
製造される。この場合、供給海水10は、高圧ポンプ6
により初段の操作圧力になるまで昇圧されて初段逆浸透
膜モジュールユニット2に導入され、ここで逆浸透処理
されて塩が除去された初段透過水20aと、塩が濃縮さ
れた初段濃縮水20bとに分離される。次に、初段濃縮
水20bは、後段逆浸透膜モジュールユニット4に導入
され、詳しくは後述するターボチャージャ8により、後
段の操作圧力になるまで昇圧されて逆浸透処理され、後
段透過水40aと後段濃縮水40bとに分離される。
【0018】このようにして得られた初段透過水20a
と後段透過水40aは混合されて適宜タンク9に貯留さ
れ、淡水50として使用に供される。一方、後段濃縮水
40bは、ターボチャージャ8の動力源として利用され
た後、逆浸透分離装置1の系外に送液される。なお、淡
水50は、例えば所定の飲料水基準(例えば、蒸発残留
物500mg/L以下、塩素イオン濃度200mg/L以
下)を満たすものであればよい。
【0019】逆浸透分離に供される供給海水10は、原
海水をそのまま用いてもよいが、前処理を施して原海水
に含まれる濁質成分等を除去することが好ましい。前処
理としては、例えば、以下の操作を行うことができる。
まず、深海層の海水を汲み出す、いわゆる深層海水や、
海底砂層などをフィルタとして利用した浸透取水法、単
にポンプを海中に投入して行うオープンインテイク法な
どにより取水した原海水を沈殿池に導入して塩素等の殺
菌剤を添加し、海水中の粒子を沈殿除去するとともに微
生物を殺菌する。次にこの海水に塩化鉄等の凝集剤を添
加して濁質成分を凝集させ、これを砂濾過して除去す
る。そして、この処理海水に硫酸等のpH調整剤を添加
して海水のpHを下げ、カルシウム等の析出を防止した
後、亜硫酸ナトリウム等の還元剤を添加して前記殺菌剤
を除去し、さらに保安フィルタを通過させる。
【0020】なお、供給海水中の炭酸カルシウム、硫酸
カルシウム、あるいは硫酸ストロンチウム等は、逆浸透
分離時に濃縮されて膜面に析出し易いものであり、これ
らはスケール成分と呼ばれている。そこで、上記した前
処理に加え、供給海水にスケール防止剤を添加してこの
スケール成分の析出を抑制してもよい。スケール防止剤
は、上記スケール成分中の金属(イオン)と錯体を形成し
てこれを可溶化させるものであり、例えば、有機イオン
または無機イオンから成るポリマ、あるいはモノマを用
いることができる。また、NF膜等を用いて上述のスケ
ール成分を除去してもよい。このようにしてスケール成
分の析出を抑制した場合、回収率を更に向上させること
ができ、溶質の主成分である塩(塩化ナトリウム)の析
出限界である約85%の総回収率を実現することも可能
である。
【0021】各逆浸透膜モジュールユニット2、4は、
図2、図3に示すようなエレメントを直列に接続し、図
4に示すように、耐圧容器に収容してモジュールとし、
このモジュールを単独で、または、並列に接続して構成
される。そして、各モジュールユニット2、4の全体に
はそれぞれ所定の操作圧力が負荷されるようになってい
る。
【0022】図2において、エレメント61は、供給液
流路材62と逆浸透膜63と透過液流路材64とを含む
膜ユニットが集水管65の周囲に配置され、端部にブラ
インシール66を配した構造になっている。上記膜ユニ
ットの配置は、図3に示すように、前記逆浸透膜の袋状
体を供給液流路材62と透過液流路材64とを介装した
状態で、集水管65の周囲にスパイラル状に巻回し、全
体を円筒状ケースに収容したものである。そして、前記
袋状体の一端は開口して集水管の透孔65aと連通する
ように接着されていて、供給海水10は前記袋状体の外
側を流れ、この袋状体を透過してその内側に透過水が流
入し、前記開口部を通って集水管に集められる。このよ
うな構造を持つエレメントは、図4に示すように、継手
67を介して順に接続され、それぞれブラインシール6
6にて区画されつつ耐圧容器68内に収納されモジュー
ル80を構成している。集水管の一端はプロダクトエン
ドキャップ72により封止されている。
【0023】耐圧容器68の一端側に設けられた供給液
口69から導入される海水は、エレメント61内に導か
れ、供給液流路材62、逆浸透膜63、透過液流路材6
4の順に通過したのち、集水管65に集められ透過液口
70から取り出される。また、逆浸透膜63を透過しな
かった濃縮水は順に下流側のエレメントに導かれて、上
記と同様に透過水と濃縮水とに分離され、最終的に排出
口71から排出される。
【0024】なお、上記においては、エレメントとし
て、平膜状の逆浸透膜を用いたスパイラル型エレメント
について説明したが、プレート・アンド・フレーム型エ
レメントや管状膜を用いたチューブラー型エレメント、
また、中空糸膜を束ねてケースに収納した中空糸膜エレ
メントを用いることもできる。逆浸透膜としては、溶液
中の溶媒(水分子)を選択的に透過させ、溶質(塩)の透
過を阻止できるものであればよい。膜構造としては、例
えば膜の少なくとも片面に緻密層を備え、緻密層から反
対面に向ってその径が徐々に大きくなっている微細孔が
形成された非対称膜や、この非対称膜の緻密層の上に他
の材料から成る厚みの薄い活性層を備えた複合膜を用い
ることができる。また、膜の形態としては、平膜や中空
糸膜を用いることができる。そして、膜の材料として
は、酢酸セルロース系ポリマ、ポリアミド、ポリエステ
ル、ポリイミド、およびビニルポリマ等の高分子材料を
用いることができる。代表的な逆浸透膜としては、酢酸
セルロース系またはポリアミド系の非対称膜、および、
ポリアミド系またはポリ尿素系の活性層を有する複合膜
を挙げることができる。特に、酢酸セルロース系非対称
膜、ポリアミド系活性層を有する複合膜、および芳香族
ポリアミド系の活性層を有する複合膜を用いることが好
ましい。
【0025】ターボチャージャ8は、逆浸透分離された
透過水や濃縮水が高い圧力エネルギを持っていることを
利用し、その高圧流体をタービン羽根車に当ててポンプ
の駆動源とするものであり、例えば特開平1−2949
03号に記載されたものを用いることができる。そし
て、ターボチャージャ8を用いれば、このターボチャー
ジャに送られた低圧力の流体を電気的エネルギ等を用い
ることなく昇圧することができる。なお、ターボチャー
ジャ8に代えて、通常の高圧ポンプを用いて2段目以降
の逆浸透分離を行ってもよく、初段の逆浸透分離にこの
ターボチャージャを用いてもよい。また、ターボチャー
ジャ8を用いずに、最終段の濃縮水を例えばペルトン水
車に当ててその圧力エネルギを回収してもよい。
【0026】そして、この逆浸透分離装置1を用い、例
えば原水である供給海水(塩濃度3.5%)に対する初
段の回収率を40%、後段の回収率を33%(後段へ送
られる初段濃縮水に対する後段透過水の割合)、供給海
水に対する各段で得られた透過水の総量の割合を示す総
回収率を60%に設定した場合、実際の逆浸透分離は次
のようにして行われる。
【0027】まず、初段逆浸透膜モジュールユニット2
に原水として供給海水を導入し、回収率40%に相当す
る操作圧力(6.5MPa)を負荷して逆浸透分離を行う。
次に、得られた非透過水である初段濃縮水20bを後段
逆浸透膜モジュールユニット4に原水として導入し、総
回収率60%に相当する操作圧力(9MPa)を負荷して
後段の逆浸透分離を行い、各段で得られた透過水20
a、40aを上記回収率で回収して淡水を得る。
【0028】ところで、本発明における回収率の値と
は、供給する海水の塩濃度により変動することを考慮
し、塩濃度が3.5重量%の海水を用いた場合の値のこ
とをいう。また、各段の回収率は、初段に導入される海
水に対する各段の透過水の割合で算出される。上記の、
塩濃度が3.5重量%の海水とは、塩化ナトリウムや塩
化マグネシウムなどの溶解性固形物質を3.5重量%含
む海水のことをいう。実際の海水の塩濃度は、0.7重
量%(バルチック海)から4.5重量%(ペルシャ湾)
に至まで広範囲であるため、以下に示す式にて回収率を
変換して求める。 塩濃度が3.5重量%の海水を供給した場合の各段の回
収率(%)=(1−(3.5/各段の濃縮水の塩濃
度))×100
【0029】例えば、濃縮水の塩濃度が8.8重量%に
なるまで逆浸透分離を行う場合は、供給海水の塩濃度に
関わらず、その回収率を約60%として用いる。各段の
操作圧力は、次のようにして設定する。まず、上記した
上限塩濃度を超えない範囲内で、所定の回収率で逆浸透
分離した時の濃縮水の塩濃度を計算し、その浸透圧を浸
透圧式によって求める。そして、この浸透圧に所定の有
効圧力を加えることにより操作圧力とする。浸透圧式と
しては、例えばvan't Hoff式、三宅式、Stoughton式が
挙げられる。
【0030】また、各段の回収率が上述の値になるよう
運転する方法としては、例えば各段で得られる濃縮水量
と透過水量を逐次モニタしてその比から回収率を計算
し、その値が目標とする回収率からずれている場合に
は、操作圧力を変化させて透過水量を増減させる制御を
行うことができる。このようにして多段で逆浸透分離を
行う場合、上述の如く各段での運転条件はそれぞれ大き
く異なっている。例えば初段では、塩濃度3.5%の供
給海水を用いて回収率40%で逆浸透分離が行われる
が、後段では塩濃度6%の初段濃縮水を用いて回収率3
3%で逆浸透分離が行われる。
【0031】以上のことから、本発明は、ファウリング
に影響を与える要因として、各段の逆浸透膜における濃
縮水の膜面流速に着目し、その値を最適化することによ
り、各段での運転条件が異なっていても、すべての段に
おけるファウリングを有効に防止することを可能とす
る。ここで、膜面流速は、膜面での濃度分極に関係し、
膜面流速が小さい程濃度分極が生じ易くなる。そして、
濃度分極が顕著になると、膜の分離性能が低下し、ま
た、前記スケール成分や塩が膜面へ析出してファウリン
グが生じる可能性が高くなる。
【0032】そのため、本発明では、各段の逆浸透膜エ
レメントにおける原水の膜面流速を、いずれも0.03
m/s以上とする。膜面流速が0.03m/s未満であ
る場合には、上述の如く膜面で濃度分極が顕著に生じ、
ファウリングが生じるからである。ここで、逆浸透膜エ
レメントにおける原水の膜面流速とは、エレメント内部
を通過する単位時間当たりの平均原水流量を、エレメン
トの原水通水方向に垂直な断面積のうち、原水が通過可
能な断面積(以後、原水流路横断面積という)で除した
値のことをいう。この原水流路横断面積は、例えば、中
空糸膜や管状膜を用いたエレメントの場合は、各膜の内
径や外径から算出することができるし、スパイラル型の
エレメントの場合は、原水の流路には、通常、原水流路
材を用いるため、この原水流路材の空隙率をもとに算出
すればよい。ここで空隙率とは、原水流路材が占める全
体積から、原水流路材を構成する部材の体積を除いた、
原水の通水可能な範囲の割合のことをいい、上述の膜面
流速は、エレメントの横断面でみた場合の原水流路材の
長さ、厚み、空隙率および用いた原水流路材の数を乗算
して算出する。本発明において、逆浸透膜モジュールユ
ニットを多段に接続する場合は、後段に位置するユニッ
トに供給される供給水は前段から得られる濃縮水である
が、この後段においては、供給水たる濃縮水を原水とし
て扱い、前述の膜面流速を算出する。
【0033】なお、実際の逆浸透分離モジュールユニッ
ト内においては、図5に示すように、モジュールユニッ
トの入口側に比べて出口側の方が膜面流速が小さくなっ
ているのが通例である。従って、本発明では、このよう
にモジュールユニット内で膜面流速が異なることを考慮
し、どの逆浸透膜エレメントについても、膜面流速が前
述の範囲内にあることを必須としている。そして、膜面
流速をかかる範囲に規定するためには、各モジュールユ
ニットへ導入する原水の流速を大きくすればよい。
【0034】すなわち、各段に供給する原水の供給圧力
を高めて単位時間当たりの供給量を増加させたり、ま
た、膜面流速が低下しやすい後段のエレメントほど、前
述の原水流路横断面積を小さくしておいたりするとよ
い。この原水流路横断面積は、中空糸膜や管状膜を用い
るエレメントの場合は、各膜の径や、エレメント1本当
たりに用いる膜本数を調節することにより、また、原水
流路材を用いたスパイラル型エレメントの場合は、原水
流路材の数や長さ、空隙率などを調節することにより変
化させることができる。
【0035】さらに、膜面流速を上昇させることに加
え、流路材の形状を工夫して原水の流れを乱流にする
と、濃度分極層の厚みが薄くなるので、濃度分極をより
一層抑制できる。具体的には、例えば、原水流路材とし
て菱目状の網体などを用いて原水の流れを乱すとよい。
そして、このように多段で逆浸透分離を行う本発明の場
合、後段になるにつれて操作圧力が上昇するため、例え
ば上記した総回収率60%で運転を行う場合でも、後段
での高い操作圧力(9MPa)が初段に負荷されることは
なく、初段にはファウリングを起こさない程度の操作圧
力(6.5MPa)が負荷される。つまり、本発明では、高
い回収率(例えば60%)で運転を行った場合でも、従来
の1段で逆浸透分離を行う場合のように透過水量が増大
してファウリングが生じることがなく、高い回収率で逆
浸透分離することができる。そして、その結果として淡
水の製造コスト(造水コスト)を低減させることができ
る。
【0036】本発明において、上記した総回収率の値は
特に制限されないが、30〜85%とすることが好まし
い。30%未満である場合は、従来の逆浸透分離に比べ
て造水コストの低減効果が充分でなく、本発明を適用す
る必要性が少なくなるからである。また、85%を超え
ると、溶質である塩の析出限界を超えるので、これ以上
の回収率で運転することは困難となる。
【0037】また、多段の逆浸透分離においては、上述
のように各段のファウリングを防止することが極めて重
要である。特に、以下に述べる項目については、ファウ
リングに大きな影響を及ぼすので、次のようにその管理
範囲を定めることが好ましい。まず、供給海水の濁度
は、ファウリングを発生させる直接の要因となり、濁度
が少ない程ファウリングが生じ難い。このようなことか
ら、濁度の指標となる供給海水のSDI値を好ましくは
4以下、より好ましくは3以下とする。ここで、SDI
値(FI値)とは、対象水中の微細な濁質濃度を示し、
(1−T0/T15)×100/15で表される(但し、
0:0.45μmの精密濾過膜を用いて試料水を0.2M
Pa/cm2で加圧濾過したときに最初の500mlの試料水
の濾過に要した時間、T15:T0の後さらに同じ条件で
15分間濾過した後に500mlの試料水の濾過に要した
時間)。そして、濁質のない場合は0となり、最も汚れ
た水における最大値は6.67となる。特に、供給海水
のSDI値を3以下にするとファウリングがより起き難
くなり、その分だけ以下の透過水量を増大させることが
できるので、操作圧力を高くして回収率を向上させるこ
とができる。
【0038】次に、各段の逆浸透分離時における透過水
量を、各段のいずれの逆浸透膜エレメントにおいても、
単位膜面積(単位:m2)当り0.07〜1.2m3/dと
することが好ましい。ここで、透過水量が0.07m3
d未満である場合には、充分な量の淡水を回収すること
ができず、逆浸透分離の運転コスト、および設備コスト
が増大する虞がある。また、1.2m3/dを超えた場合
には、膜面を透過水が通過する速度が大きくなるので、
上記濁質が供給水側から膜面に吸い寄せられて膜面に付
着し、ファウリングが生じ易くなる。
【0039】さらに、各段における操作圧力を、当該段
の濃縮水の浸透圧より0.5〜5MPa高くすることが好ま
しい。操作圧力と浸透圧の差が0.5MPa未満である場合
は、膜面の濃度分極により逆浸透分離が充分進行しなく
なる虞があり、また、5MPaを超えた場合は、透過水量
が増えてファウリングが生じる虞があるからである。さ
らに、上記に加え、逆浸透膜の透過水側に背圧をかけて
もよい。通常、逆浸透膜モジュールユニットの入口側で
は有効圧力が高いために透過水量が増え、そのためファ
ウリングが生じ易くなっている。従って、当該入口側の
逆浸透膜の透過水側に背圧をかけることによって、この
部分での有効圧力を減じさせ、ファウリングを防止する
ことができる。そして、通常、モジュールユニットはエ
レメントを直列に接続して成るので、ファウリングを生
じる虞がある上流側の所定エレメントに選択的に背圧を
かければよい。この背圧の値は、例えば0.1〜1.5MP
aとすればよい。
【0040】また、所定の段の透過水側に背圧をかけて
もよい。例えば、海水温度が上昇していずれかの段の逆
浸透膜の塩阻止能が低下すると、水質が劣化するので、
通常は当該段の有効圧力(操作圧力)を上昇させてこれ
を防止している。ところが、昇圧ポンプとしてターボチ
ャージャを用いる場合、前段の濃縮水の圧力に一定の昇
圧分を加えたものが後段の操作圧力となるので、後段の
操作圧力を上昇させるためには、前段の操作圧力をも高
くする必要がある。そして、かかる場合には上記と同様
にして当該前段でファウリングが生じ易くなるので、前
段、より詳しくは、膜性能が低下している段の前段に背
圧をかけることが好ましい。
【0041】ところで、多段で逆浸透分離を行う場合、
造水コストのさらなる低減を図るためには、その運転コ
ストを低減することが重要である。ここで、運転コスト
とは、膜の交換費用、設備の動力コスト(電力使用量)
等から成るが、その大部分は各段に配設された高圧ポン
プの動力コストで占められる。そして、ポンプの動力コ
ストは、各段の操作圧力、ひいては各段の回収率によっ
て影響を受けるので、各段の回収率を適切に設定すれ
ば、ポンプの動力コストの低減を図ることが可能とな
る。
【0042】この場合、初段では塩濃度の比較的低い供
給海水を逆浸透分離すればよく、そのため、通常は初段
の透過水の水質はそれ以降の段に比べて優れたものとな
る。従って、初段の回収率をなるべく高くすることが淡
水の水質を向上する点で好ましく、そのため、特に初段
の回収率の設定が重要になる。このようなことから、総
回収率Xおよび初段の逆浸透分離における回収率Yに着
目し、両者の間に所定の関係を規定することにより、ポ
ンプの動力コストの低減を図ることができる。このこと
について、図6に基づいて説明する。なお、以下の説明
は、2段の逆浸透分離についてするが、3段以上の逆浸
透分離では、これを初段とそれ以降の段の2つに分ける
ことにより、2段の場合と同様にして本発明を適用する
ことができる。
【0043】図6において、上述の如く総回収率はX
(%)となっていて、初段の逆浸透分離は回収率Y
(%)、操作圧力P1に設定され、後段の逆浸透分離は
回収率(X−Y)/(100−Y)%、操作圧力P2
設定されている。但し、供給海水全体に対する後段の回
収率は、(X−Y)%で表される。この場合、上記した
ポンプの動力コストは、各ポンプへ導入される海水量、
およびポンプの入口側と出口側の圧力差との積によって
決まる。そして、初段のポンプにおいて、その圧力差
は、図6の縦軸の操作圧力P1で表される。また、その
海水量は、供給海水の全量(100%)に等しく、これ
は図6の横軸の0から100(辺L)の長さに比例した
値となる。つまり、初段のポンプの動力コストAは、P
1×Lに比例する。
【0044】一方、後段のポンプにおける圧力差は、初
段で圧力P1に昇圧された濃縮水を圧力P2まで昇圧すれ
ばよいので、(P2−P1)で表される。また、その海水
量は、初段の濃縮水量に等しく、これは供給海水の全量
(横軸の0から100)から回収率Yで得られた透過水
(横軸の0からY)を差し引いた値、つまり横軸のYか
ら100(辺M)の長さに比例した値となる。つまり、
後段のポンプの動力コストBは、(P2−P1)×Mに比
例する。
【0045】従って、AとBの和であるポンプの動力コ
ストの総量Eは、 E∝P1×L+(P2−P1)×M …(1) で表される。これに対して、従来の1段法を用い、回収
率X、操作圧力P2で逆浸透分離した時のポンプの動力
コストE’は、 E’∝P2×L …(2) で表される。
【0046】つまり、多段で逆浸透分離を行った場合に
は、従来法に比べて、 E−E’=(P2−P1)×(L−M) …(3) に比例した量だけ、ポンプの動力コストを低減できるこ
とになる。ここで、E−E’の大きさは、図6における
面積Sで表され、面積Sが大きくなる程ポンプの動力コ
スト(運転コスト)は低減する。この場合、面積Sの大
きさは操作圧力P1、P2、および辺Mの値によって変動
し、しかもこれらの値は回収率X、Yによって決まる。
つまり、XとY、より具体的にはXに対するYの比を設
定することによって、面積Sの値が決められる。
【0047】このようなことから、面積Sを最大とする
XとYを設定することが必要になるが、その設定に当っ
ては、以下のファウリングの問題が制約条件となってい
る。これについて図7、図8に基づいて説明する。図7
において、この運転条件においては、Xに対するYの割
合が少なくなるように設定されている。そして、初段モ
ジュールユニット入口側の有効圧力はU1に、出口側の
有効圧力はU0になっていて、かつ、U1はU0より高く
なっている。同様に、後段モジュールユニット入口側の
有効圧力はU2に、出口側の有効圧力はU0になってい
て、U2はU0より高くなっている。ここで、U2は、 U2=(P2−P1)+U0 …(4) で表され、U0は最低有効圧力(通常は2MPa程度)を示し
ている。
【0048】この場合、Xに対するYの割合が少ないた
め、P1はP2に比べて非常に小さくなる。そして、その
ために(P2−P1)は大幅に増大し、それに伴って式
(4)で表されるU2の値が増大して、後段モジュール
ユニットの入口側でファウリングが生じるようになる。
一方、図8において、この運転条件においては、Xに対
するYの割合が多くなるよう設定されている。そして、
そのためにP1がP2に近い値まで増大し、それに伴って
1の値が増大して、初段モジュールユニットの入口側
でファウリングが生じるようになる。
【0049】特に、上記したファウリングの問題は、高
回収率を実現するためにX、すなわちP2の値を大きく
した場合に顕著となるので、どの段においてもファウリ
ングが生じないようX、Yを規定する必要がある。以上
のことを検討し、本発明ではX、Yについて、 0.2X≦Y≦0.8X …(5) の関係式を満たして運転することが好ましい。そして、
X、Yが式(5)の関係にある場合には、面積Sは運転
コストの約15〜25%の大きさに増え、それだけ運転
コストが低減する。さらに、この場合には、いずれの段
においてもその透過水量が前述の範囲となり、ファウリ
ングが防止されるので、多段の逆浸透分離を長期にわた
り安定運転することができる。
【0050】ここで、回収率Yが0.2X未満である場
合は、Xに対するYの割合が少なくなるため、上記した
ように後段モジュールユニットの入口側でその有効圧力
が増大してファウリングが生じるので好ましくない。ま
た、Yの値が小さくなると、式(3)における(L−
M)の値が小さくなって面積Sが減少するので、運転コ
ストが増大する。さらに、透過水全体に占める初段の透
過水の割合が少なくなるので、淡水の水質が低下する。
【0051】また、回収率Yが0.8Xを超えた場合
は、Xに対するYの割合が多くなるため、初段モジュー
ルユニットの入口側の有効圧力が増大してファウリング
が生じるので好ましくない。また、Yの値が大きくなる
と、式(3)における(P2−P1)の値が小さくなって
面積Sが減少するので、運転コストが増大する。なお、
X、Yについて、 0.4X≦Y≦0.7X …(6) の関係式を満たして運転するとより好ましい。
【0052】特に、Xを45〜65%とし、Yを25〜
45%とすることが好ましい。このようにすると、面積
Sは最大となり、運転コストを最小にして造水コストを
より一層低減することができる。また、各段でのファウ
リングを防止し、淡水の水質を向上させることができ
る。なお、高圧ポンプとして上述のターボチャージャを
用いた場合、その段におけるポンプの動力コストは0と
なる。しかし、このターボチャージャを作動させるエネ
ルギは、他の段の高圧ポンプの圧力エネルギを回収して
得られることから、実際にはターボチャージャの動力コ
ストは、他の段のポンプの動力コストに転嫁される。そ
して、この場合のポンプ全体の動力コストは、各段に高
圧ポンプを用いた場合の動力コストから、ターボチャー
ジャの作動のために回収した圧力エネルギを差し引いた
値になる。このようなことから、ターボチャージャを用
いた場合でも、ポンプ全体の動力コストを低減させるた
めには、式(5)の関係を満たして運転を行うことが必
要となる。
【0053】ここで、XとYの割合を式(5)のように
規定した場合、各段の操作圧力、および、各段の濃縮水
の塩濃度は以下のように決められる。まず、前記初段に
おける操作圧力と最終段における操作圧力の比は、1.
25〜1.8の範囲内にすることが好ましい。この場
合、前記比が1.25未満である場合は、総回収率Xに
対する初段の回収率Yの割合が非常に少なくなり、上述
のように後段でファウリングが生じるので好ましくな
い。また、前記比が1.8を超えた場合は、総回収率X
に対する初段の回収率Yの割合が非常に多くなり、上述
のように初段でファウリングが生じるので好ましくな
い。
【0054】また、総回収率Xを30〜85%とした場
合、後段(最終段)の濃縮水の塩濃度は5〜23.3重
量%となり、初段の濃縮水の塩濃度は3.7〜11重量
%となる。特に、Xを45〜65%とし、Yを25〜4
5%とした場合、後段(最終段)の濃縮水の塩濃度は7
〜10重量%となり、初段の濃縮水の塩濃度は5〜6.
5重量%となる。
【0055】
【実施例】実施例1〜3 図1に示す逆浸透分離装置を用いて2段の逆浸透分離を
行い、淡水を製造した。ここで、各エレメントは、脱塩
率99.75%、膜面積28m2のポリアミド系逆浸透膜
を組み込んで成り、エレメント1個当り12m3/dの
淡水を製造することができる。そして、このエレメント
を6本直列に接続して耐圧容器に収容してモジュールが
構成され、初段のモジュールユニットではこのモジュー
ルが2個並列され、後段モジュールユニットではこのモ
ジュールが1個使用されている。つまり、初段と後段の
膜面積比は2:1となっている。
【0056】また、供給海水は、塩濃度約3.5%の原
水に殺菌剤(NaOCl)、凝集剤(FeCl3)、p
H調整剤(H2SO4)を順次添加した後、所定の濾過を
行って調製した。そして、それぞれ表1に示す操作圧力
および膜面流速で初段の逆浸透分離を行い、得られた濃
縮水について後段の逆浸透分離を行った。各段の回収率
および総回収率を表1に示す。また、各実施例における
運転コストを表2に、各段で得られた透過水および濃縮
水、並びに淡水の水質を表3に示す。
【0057】なお、膜面流速の値は、各段を構成してい
る膜モジュールの中で最も下流に位置している(したが
って、その段の中で最も膜面流速の値が小さい)エレメ
ントの値を示した。また、運転コストは、表1に示す運
転条件で逆浸透分離装置を運転した時の電力使用量で見
積もった。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】表1〜3から明らかなように、各段の逆浸
透膜における濃縮水の膜面流速が0.03m/秒以上で
ある実施例1〜3においては、各段のいずれにおいても
ファウリングを生じることがなく、60%を超える高い
総回収率が得られている。また、従来の1段、回収率4
0%での逆浸透分離を行った場合の運転コスト(ターボ
チャージャによる圧力エネルギ回収あり、淡水製造量1
40m3/日、海水温度12.7℃)は約4.4kWhであった
が、各実施例においては、4.1〜3.3kWhに低減さ
れ、さらに、得られた淡水の水質も従来と同等なものと
なっている。さらに、各実施例における運転条件で本発
明を約3年間実施しているが、逆浸透膜へのスケールの
析出や膜の目詰まり等もなく、安定運転がなされてい
る。
【0062】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
造水方法によれば、各段で段階的に操作圧力を上げて逆
浸透分離を行うので、全体として高い回収率を設定した
場合でも、前段のモジュールユニットに次段の高い操作
圧力が直接負荷されることはない。そして、当該前段の
有効圧力が上昇してその透過水量が過大になることがな
く、ファウリングを確実に防止することができる。
【0063】そして、各段での運転条件(回収率や被処
理海水の塩濃度)が異なっていても、各段の逆浸透膜に
おける濃縮水の膜面流速を所定の範囲に保つことによ
り、すべての段におけるファウリングを防止できる。つ
まり、多段の逆浸透分離を、高い回収率で、かつ安定的
に行うことができ、淡水の製造コスト、および運転コス
トを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る逆浸透分離を用いた造水方法のフ
ローを示す図である。
【図2】スパイラル型逆浸透膜エレメントを示す部分切
欠斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】逆浸透膜モジュールを示す概略図である。
【図5】エレメントを3本直列に接続したモジュールか
ら成る逆浸透膜モジュールユニットにおける、濃縮水の
膜面流速を示す図である。
【図6】回収率と操作圧力との関係、および各段のポン
プの動力コストを表す領域を示すグラフである。
【図7】総回収率Xに対して所定の割合で初段の回収率
Yを規定した場合の、各モジュールユニットにおける有
効圧力を示す図である。
【図8】総回収率Xに対して別の割合で初段の回収率Y
を規定した場合の、各モジュールユニットにおける有効
圧力を示す図である。
【符号の説明】
1 逆浸透分離装置 2 初段逆浸透膜モジュールユニット 4 後段逆浸透膜モジュールユニット 6 高圧ポンプ 8 ターボチャージャ 10 供給海水 20a (初段)透過水 20b (初段)濃縮水 40a (後段)透過水 40b (後段)濃縮水 50 淡水 61 スパイラル型逆浸透膜エレメント 62 供給液流路材 63 逆浸透膜 64 透過液流路材 65 集水管 65a 透孔 66 ブラインシール 67 継手 68 耐圧容器 69 供給液口 70 透過液口 71 排出口 72 プロダクト・エンド・キャップ 80 モジュール
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年3月2日(2001.3.2)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正内容】
【0037】また、多段の逆浸透分離においては、上述
のように各段のファウリングを防止することが極めて重
要である。特に、以下に述べる項目については、ファウ
リングに大きな影響を及ぼすので、次のようにその管理
範囲を定めることが好ましい。まず、供給海水の濁度
は、ファウリングを発生させる直接の要因となり、濁度
が少ない程ファウリングが生じ難い。このようなことか
ら、濁度の指標となる供給海水のSDI値を好ましくは
4以下、より好ましくは3以下とする。ここで、SDI
値(FI値)とは、対象水中の微細な濁質濃度を示し、
(1−T0/T15)×100/15で表される(但し、
0:0.45μmの精密濾過膜を用いて試料水を0.2M
Paで加圧濾過したときに最初の500mlの試料水の濾過
に要した時間、T15:T0の後さらに同じ条件で15分
間濾過した後に500mlの試料水の濾過に要した時
間)。そして、濁質のない場合は0となり、最も汚れた
水における最大値は6.67となる。特に、供給海水の
SDI値を3以下にするとファウリングがより起き難く
なり、その分だけ以下の透過水量を増大させることがで
きるので、操作圧力を高くして回収率を向上させること
ができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正内容】
【0061】表1〜3から明らかなように、各段の逆浸
透膜における濃縮水の膜面流速が0.03m/以上で
ある実施例1〜3においては、各段のいずれにおいても
ファウリングを生じることがなく、60%を超える高い
総回収率が得られている。また、従来の1段、回収率4
0%での逆浸透分離を行った場合の運転コスト(ターボ
チャージャによる圧力エネルギ回収あり、淡水製造量1
40m3/、海水温度12.7℃)は約4.4kWhであった
が、各実施例においては、4.1〜3.3kWhに低減さ
れ、さらに、得られた淡水の水質も従来と同等なものと
なっている。さらに、各実施例における運転条件で本発
明を約3年間実施しているが、逆浸透膜へのスケールの
析出や膜の目詰まり等もなく、安定運転がなされてい
る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】符号の説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【符号の説明】 1 逆浸透分離装置 2 初段逆浸透膜モジュールユニット 4 後段逆浸透膜モジュールユニット 6 高圧ポンプ 8 ターボチャージャ9 タンク 10 供給海水 20a (初段)透過水 20b (初段)濃縮水 40a (後段)透過水 40b (後段)濃縮水 50 淡水 61 スパイラル型逆浸透膜エレメント 62 供給液流路材 63 逆浸透膜 64 透過液流路材 65 集水管 65a 透孔 66 ブラインシール 67 継手 68 耐圧容器 69 供給液口 70 透過液口 71 排出口 72 プロダクト・エンド・キャップ 80 モジュール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三好 俊郎 滋賀県大津市富士見台52番4号 Fターム(参考) 4D006 GA03 HA01 HA21 HA61 KA12 KA52 KA54 KA66 KE01R KE06P MA01 MA02 MA03 MC54 PA02 PB03

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 逆浸透膜エレメントを含む複数個の逆浸
    透膜モジュールユニットに原水を昇圧して供給し、透過
    水を得るにあたり、いずれの逆浸透膜エレメントにおい
    ても、原水の膜面流速を0.03m/s以上に制御する
    ことを特徴とする造水方法。
  2. 【請求項2】 逆浸透膜モジュールユニットを多段に接
    続し、かつ、前段に位置する逆浸透膜モジュールユニッ
    トから得られる非透過水を昇圧して後段に位置する逆浸
    透膜モジュールユニットに原水として供給し、各段から
    透過水を得る、請求項1に記載の造水方法。
  3. 【請求項3】 原水として海水またはかん水を用いる、
    請求項1または2に記載の造水方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN108383315A (zh) * 2015-12-23 2018-08-10 倍杰特国际环境技术股份有限公司 一种多级电驱动离子膜的废水回收装置
WO2019117121A1 (ja) * 2017-12-15 2019-06-20 ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 排水処理方法
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