JP3443806B2 - 造水方法 - Google Patents

造水方法

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JP3443806B2
JP3443806B2 JP2000067422A JP2000067422A JP3443806B2 JP 3443806 B2 JP3443806 B2 JP 3443806B2 JP 2000067422 A JP2000067422 A JP 2000067422A JP 2000067422 A JP2000067422 A JP 2000067422A JP 3443806 B2 JP3443806 B2 JP 3443806B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は造水方法に関する。
特に、それぞれ操作圧力の異なる2段以上の逆浸透分離
を適用して海水から淡水を造水する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、混合物(主に溶液)から特定の物
質を選択的に分離する方法として、膜分離法が広く用い
られている。そして、これらの膜分離法のうち、逆浸透
法は、海水やかん水(低濃度の塩水)を脱塩して工業
用、農業用、あるいは家庭用の淡水を提供する技術とし
て広く利用されている。
【0003】この逆浸透法は、水分子のみを透過させる
性質を有する逆浸透膜を用い、当該逆浸透膜を隔てて浸
透平衡にある溶液と水に対し、溶液の浸透圧より高い圧
力を溶液側から加えることにより、溶液中の水分子を水
側へ移行させる技術である。つまり、逆浸透法は、従来
の蒸発法のような相変化を起こすことなく溶液中から水
を取り出すことができるので、エネルギ的に有利である
上に運転管理が容易であるという利点がある。
【0004】そして、この逆浸透分離を実用規模で行う
場合、以下のような逆浸透分離装置が通常用いられる。
まず、逆浸透膜がスパイラル状、管状、平膜の積層体、
または中空糸膜状に加工され、適宜流路材を介装した状
態でケースに収容されてエレメントと呼ばれる膜素子を
構成する。このエレメントは適宜直列に接続され、耐圧
容器に収容されてモジュールとなり、さらに、このモジ
ュールが並列に接続されて逆浸透分離モジュールユニッ
トとなる。そして、モジュールユニット全体に所定の圧
力を負荷することにより、逆浸透分離が行われる。
【0005】なお、実際に逆浸透分離を行うと、逆浸透
膜を透過できない塩が膜面近傍の溶液側に滞留して膜面
での塩濃度が上昇し、いわゆる濃度分極現象が生じて膜
面の浸透圧が高くなる。そのため、溶液の浸透圧より高
い圧力(以下、「操作圧力」という)で逆浸透分離を行
うことが実用上必要である。ここで、操作圧力と溶液の
浸透圧との差を「有効圧力」といい、通常はモジュール
ユニットの出口側における有効圧力が2MPa程度になる
よう、操作圧力が決められている。
【0006】ところで、逆浸透分離において、海水から
淡水を回収する割合(回収率)は、逆浸透分離のプロセ
ス全体の設計のみならず、逆浸透分離して得られる淡水
の製造コストを決める上で重要な因子となっている。そ
して、回収率が高い程、上記造水コストが低減するの
で、回収率の向上を図ることが重要な課題となってい
る。例えば、塩濃度3.5%の海水を用いた場合、従来
の技術における回収率は約40%である。この場合、塩
濃度3.5%で供給される海水は、モジュールユニット
内で濃縮され、その出口側から塩濃度6%の濃縮水とな
って取り出され、当該モジュールユニッ内の海水の浸透
圧は約2.5〜4.5MPaとなる。従って、この浸透圧に
上記した有効圧力を加えた値(6.5MPa)を、操作圧力
としてモジュールユニット全体に負荷して運転が行われ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
技術の場合、以下の制約要因があるために40%を超え
る回収率を実現することは極めて困難である。まず、第
1の制約要因は、ファウリングの問題である。ファウリ
ングとは、海水に含まれる濁質成分等が逆浸透膜の膜面
に付着して目詰まりを起こす現象であり、膜寿命を低下
させて逆浸透分離時の運転コストを上昇させる原因とな
る。そして、有効圧力が高くなる程、膜面の透過水量は
多くなり、膜面に上記濁質成分が濃縮されるので、ファ
ウリングが生じ易くなる。
【0008】そして、モジュールユニットの入口側に導
入された海水は、出口側に向ってその濃度が高くなり、
そのため当該出口側の海水の浸透圧は入口側に比べて高
くなる。一方、操作圧力はモジュールユニットの入口側
と出口側でほぼ同一であることから、操作圧力と浸透圧
の差で表される有効圧力は当該入口側で上昇する。この
ように、モジュールユニットの入口側ではファウリング
が特に生じ易くなっていることから、全体の操作圧力
(=回収率)を制限してファウリングを防止することが
必要である。
【0009】第2の制約要因は、海水中のスケール成分
(炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、あるいは硫酸スト
ロンチウム等)や、溶質である塩(塩化ナトリウム)が
膜面に析出する問題である。この析出現象は、逆浸透分
離によって海水が濃縮されて、上記スケール成分や塩の
濃度がその溶解度を超えた場合に生じ、これらが膜面に
析出するとファウリングが生じ易くなるという問題があ
る。そして、回収率が高くなる程、濃縮水中の上記スケ
ール成分等の濃度も高くなることから、上記スケール成
分や塩が析出しない範囲に回収率を規制することが必要
となる。例えば、前記スケール成分の溶解度から規定さ
れる回収率の上限は約70%である。また、適当なスケ
ール防止剤を用いて前記スケール成分の析出を防止した
場合でも、前記した塩の溶解度が制限となるので、回収
率の上限は約85%に規制される。
【0010】第3の制約要因は、逆浸透膜や逆浸透分離
モジュールユニットの耐圧性である。例えば、回収率4
0%で逆浸透分離を行う場合の操作圧力は、上述の如く
6.5MPaであるが、回収率60%で逆浸透分離を行う場
合、その濃縮水(塩濃度8.8%)の浸透圧は7MPaにな
り、そのため操作圧力は9MPaに上昇する。従って、逆
浸透膜やモジュールユニットにはこれ以上の耐圧性が要
求される。
【0011】そして、上記した各制約要因のうち、特に
ファウリングの問題が逆浸透分離における回収率の向上
を図る点で大きな障害となっている。このようなことか
ら、特開平8−148048号公報には、多段に配置し
た逆浸透膜モジュールユニットを用い、前段の逆浸透分
離で得られた濃縮水をさらに昇圧して次段で逆浸透分離
する技術が開示されている。この技術においては、全体
の回収率(以下、「総回収率」という)は各段における
回収率を合わせたもので表され、例えば60%という高
い総回収率を達成することができる。
【0012】そして、かかる多段の逆浸透分離において
は、運転コストの低減を図るために、昇圧ポンプの一部
にターボチャージャが用いられることが多い。このター
ボチャージャは、逆浸透分離で生じた濃縮水が高い圧力
エネルギを持っていることを利用し、その高圧流体をタ
ービン羽根車に当ててポンプの駆動源とするものであ
り、例えば特開平1−294903号にその構造が開示
されている。そして、ターボチャージャに導入された流
体は、通常はその圧力に対して所定の昇圧割合だけ昇圧
されて該昇圧機から吐出するようになっている。
【0013】ところで、季節変動等により海水の温度が
上昇した場合、逆浸透分離時の透過水量が増え、それに
伴って逆浸透膜の塩阻止率が低下し、水質が劣化すると
いう問題がある。そのため、このような場合には、操作
圧力を上昇させて有効圧力を高くする運転を行うことに
より、膜の塩阻止率を向上させて水質の改善を図ってい
る。例えば、多段の逆浸透分離では、水質劣化が生じて
いる段(後段)とその前段との間に配設されている昇圧
ポンプの吐出圧を増し、当該後段における操作圧力を高
くすればよい。
【0014】しかしながら、上記昇圧ポンプとしてター
ボチャージャを用いた場合、以下のような問題が生じ
る。つまり、上述のようなターボチャージャの作動特性
から、その吐出圧(後段の操作圧力に相当)は、該昇圧
機の入口側の流体圧力(前段濃縮水の圧力)に依存す
る。そのため、後段の操作圧力を上昇させるには、前段
の操作圧力を高くすることが必要となるが、このように
すると前段の有効圧力が増大してこの部分でファウリン
グが生じるようになる。従って、後段の操作圧力を抑え
る必要があり、そのために水質劣化を有効に防止するこ
とが難しくなる。
【0015】本発明は、逆浸透分離における上記した問
題を解決し、海水からの淡水の回収率を向上させるとと
もに、淡水の水質劣化を防止せしめた、逆浸透分離を用
いた造水方法の提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、請求項1に記載の造水方法は、直列に接続して
設けた、逆浸透膜エレメントを含む少なくとも2個の逆
浸透膜モジュールユニットを設け、初段の逆浸透膜モジ
ュールユニットに海水を供給するとともに、前段の逆浸
透膜モジュールユニットから得られる濃縮海水を次段の
逆浸透膜モジュールユニットに供給し、各段から透過水
を得るにあたり、全体の透過水の総量が一定の値に保た
れるように前段の逆浸透膜の透過水側に背圧を加えなが
ら、前段と後段との間に設けたターボチャージャにより
前段から得られる濃縮海水を昇圧して後段に供給するこ
とを特徴とする。
【0017】請求項2の造水方法は、いずれの逆浸透膜
エレメントにおいても、逆浸透膜1m2当たりの透過水
量が0.07〜1.2m3/dの範囲内になるように海水
を処理することを特徴とする。請求項3の造水方法は、
いずれの逆浸透膜エレメントにおいても、供給海水の膜
面流速を0.03m/s以上になるように海水を処理す
ることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る、2段で逆浸
透分離を行う淡水の製造方法を図1に基づいて説明す
る。図1において、逆浸透分離装置1は、それぞれ操作
圧力の異なる初段逆浸透膜モジュールユニット2、およ
び後段逆浸透膜モジュールユニット4を備えている。
【0019】そして、この逆浸透分離装置1に供給海水
10を導入して逆浸透分離を行うことにより淡水50が
製造される。この場合、供給海水10は、高圧ポンプ6
により初段の操作圧力になるまで昇圧されて初段逆浸透
膜モジュールユニット2に導入され、ここで逆浸透処理
されて塩が除去された初段透過水20aと、塩が濃縮さ
れた初段濃縮水20bとに分離される。次に、初段濃縮
水20bは、後段逆浸透膜モジュールユニット4に導入
され、詳しくは後述するターボチャージャ8により、後
段の操作圧力になるまで昇圧されて逆浸透処理され、後
段透過水40aと後段濃縮水40bとに分離される。
【0020】このようにして得られた初段透過水20a
と後段透過水40aは混合されて適宜タンク9に貯留さ
れ、淡水50として使用に供される。一方、後段濃縮水
40bは、ターボチャージャ8の動力源として利用され
た後、逆浸透分離装置1の系外に送液される。なお、淡
水50は、例えば所定の飲料水基準(例えば、蒸発残留
物500mg/L以下、塩素イオン濃度200mg/L以
下)や所定の目的を満たすものであればよい。また、透
過水20aのラインには流量調節バルブ21が設けられ
ており、このバルブを調整することにより透過水側に背
圧が加えられるようになっている。この背圧の調整は、
例えば、ラインの上流側に設けた圧力計22に基づいて
行うことができる。
【0021】逆浸透分離に供される供給海水10は、原
海水をそのまま用いてもよいが、前処理を施して原海水
に含まれる濁質成分等を除去することが好ましい。前処
理としては、例えば、以下の操作を行うことができる。
まず、深海層の海水を汲み出す、いわゆる深層海水や、
海底砂層などをフィルタとして利用した浸透取水法、単
にポンプを海中に投入して行うオープンインテイク法な
どにより取水した原海水を沈殿池に導入して塩素等の殺
菌剤を添加し、海水中の粒子を沈殿除去するとともに微
生物を殺菌する。次にこの海水に塩化鉄等の凝集剤を添
加して濁質成分を凝集させ、これを砂濾過して除去す
る。そして、この処理海水に硫酸等のpH調整剤を添加
して海水のpHを下げ、カルシウム等の析出を防止した
後、亜硫酸ナトリウム等の還元剤を添加して前記殺菌剤
を除去し、さらに保安フィルタを通過させる。
【0022】なお、供給海水中の炭酸カルシウム、硫酸
カルシウム、あるいは硫酸ストロンチウム等は、逆浸透
分離時に濃縮されて膜面に析出し易いものであり、これ
らはスケール成分と呼ばれている。そこで、上記した前
処理に加え、供給海水にスケール防止剤を添加してこの
スケール成分の析出を抑制してもよい。スケール防止剤
は、上記スケール成分中の金属(イオン)と錯体を形成し
てこれを可溶化させるものであり、例えば、有機イオン
または無機イオンから成るポリマ、あるいはモノマを用
いることができる。また、NF膜等を用いて上述のスケ
ール成分を除去してもよい。このようにしてスケール成
分の析出を抑制した場合、回収率を更に向上させること
ができ、溶質である塩(塩化ナトリウム)の析出限界で
ある約85%の総回収率を実現することも可能である。
【0023】各逆浸透膜モジュールユニット2、4は、
図2、図3に示すようなエレメントを直列に接続し、図
4に示すように、耐圧容器に収容してモジュールとし、
このモジュールを単独で、または、並列に接続して構成
される。そして、各モジュールユニット2、4の全体に
はそれぞれ所定の操作圧力が負荷されるようになってい
る。
【0024】図2において、エレメント61は、供給液
流路材62と逆浸透膜63と透過液流路材64とを含む
膜ユニットが集水管65の周囲に配置され、端部にブラ
インシール66を配した構造になっている。上記膜ユニ
ットの配置は、図3に示すように、前記逆浸透膜の袋状
体を供給液流路材62と透過液流路材64とを介装した
状態で、集水管65の周囲にスパイラル状に巻回し、全
体を円筒状ケースに収容したものである。そして、前記
袋状体の一端は開口して集水管の透孔65aと連通する
ように接着されていて、供給海水10は前記袋状体の外
側を流れ、この袋状体を透過してその内側に透過水が流
入し、前記開口部を通って集水管に集められる。このよ
うな構造を持つエレメントは、図4に示すように、継手
67を介して順に接続され、それぞれブラインシール6
6にて区画されつつ耐圧容器68内に収納されモジュー
ル80を構成している。集水管の一端はプロダクトエン
ドキャップ72により封止されている。
【0025】耐圧容器68の一端側に設けられた供給液
口69から導入される海水は、エレメント61内に導か
れ、供給液流路材62、逆浸透膜63、透過液流路材6
4の順に通過したのち、集水管65に集められ透過液口
70から取り出される。また、逆浸透膜63を透過しな
かった濃縮水は順に下流側のエレメントに導かれて、上
記と同様に透過水と濃縮水とに分離され、最終的に排出
口71から排出される。
【0026】なお、上記においては、エレメントとし
て、平膜状の逆浸透膜を用いたスパイラル型エレメント
について説明したが、プレート・アンド・フレーム型エ
レメントや管状膜を用いたチューブラー型エレメント、
また、中空糸膜を束ねてケースに収納した中空糸膜エレ
メントを用いることもできる。逆浸透膜としては、溶液
中の溶媒(水分子)を選択的に透過させ、溶質(塩)の透
過を阻止できるものであればよい。膜構造としては、例
えば膜の少なくとも片面に緻密層を備え、緻密層から反
対面に向ってその径が徐々に大きくなっている微細孔が
形成された非対称膜や、この非対称膜の緻密層の上に他
の材料から成る厚みの薄い活性層を備えた複合膜を用い
ることができる。また、膜の形態としては、平膜や中空
糸膜を用いることができる。そして、膜の材料として
は、酢酸セルロース系ポリマ、ポリアミド、ポリエステ
ル、ポリイミド、およびビニルポリマ等の高分子材料を
用いることができる。代表的な逆浸透膜としては、酢酸
セルロース系またはポリアミド系の非対称膜、および、
ポリアミド系またはポリ尿素系の活性層を有する複合膜
を挙げることができる。特に、酢酸セルロース系非対称
膜、ポリアミド系活性層を有する複合膜、および芳香族
ポリアミド系の活性層を有する複合膜を用いることが好
ましい。
【0027】前述したターボチャージャ8を用いれば、
このターボチャージャに送られた低圧力の流体を電気的
エネルギ等を用いることなく昇圧することができる。そ
して、ターボチャージャに導入された流体は、通常その
入口側圧力Pinに対して所定の昇圧割合kだけ昇圧さ
れ、該ターボチャージャから吐出圧力Poutで排出され
る。つまり、 Pout=(1+k)×Pin …(1) の関係がある。なお、ターボチャージャ8は少なくとも
いずれかの段の上流側に配設されていればよく、その他
の段では通常の高圧ポンプを用いて逆浸透分離を行って
もよい。また、ターボチャージャ8のエネルギ源として
は、最も高圧になっている最終段の濃縮水を用いるのが
よい。
【0028】そして、この逆浸透分離装置1を用い、例
えば供給海水(塩濃度3.5%)に対する初段の回収率
を40%、供給海水に対する後段の回収率を20%、総
回収率を60%に設定した場合、実際の逆浸透分離は次
のようにして行われる。まず、初段逆浸透膜モジュール
ユニット2に供給海水を導入し、回収率40%に相当す
る操作圧力(6.5MPa)を負荷して逆浸透分離を行う。
次に、得られた初段濃縮水20bを後段逆浸透膜モジュ
ールユニット4に導入し、総回収率60%に相当する操
作圧力(9MPa)を負荷して後段の逆浸透分離を行い、
各段で得られた透過水20a、40aを上記回収率で回
収して淡水を得る。
【0029】なお、回収率の値は供給海水の塩濃度によ
って変動するので、本発明では、供給海水として塩濃度
が3.5重量%の海水を用いた場合の値で回収率を規定
する。また、各段の回収率は、供給海水の総量に対する
各段の透過水量の割合で算出される。上記の、塩濃度が
3.5重量%の海水とは、塩化ナトリウムや塩化マグネ
シウムなどの溶解性固形物質を3.5重量%含む海水の
ことをいう。実際の海水の塩濃度は、0.7重量%(バ
ルチック海)から4.5重量%(ペルシャ湾)に至るま
で広範囲であるため、以下に示す式にて回収率を変換し
て求める。
【0030】塩濃度が3.5重量%の海水を供給した場
合の各段の回収率(%)=(1−(3.5/各段の濃縮
水の塩濃度))×100 例えば、濃縮水の塩濃度が8.8重量%になるまで逆浸
透分離を行う場合は、供給海水の塩濃度に関わらず、そ
の回収率を約60%として用いる。各段の操作圧力は、
次のようにして設定する。まず、所定の回収率で逆浸透
分離した時の濃縮水の塩濃度を計算し、その浸透圧を浸
透圧式によって求める。そして、この浸透圧に所定の有
効圧力を加えることにより操作圧力とする。浸透圧式と
しては、例えばvan't Hoff式、三宅式、Stoughton式が
挙げられる。
【0031】また、各段の回収率が上述の値になるよう
運転する方法としては、例えば各段で得られる濃縮水量
と透過水量を逐次モニタしてその比から回収率を計算
し、その値が目標とする回収率からずれている場合に
は、操作圧力を変化させて透過水量を増減させる制御を
行うことができる。そして、このように多段で逆浸透分
離を行う本発明の場合、後段になるにつれて操作圧力が
上昇するため、例えば上記した総回収率60%で運転を
行う場合でも、後段での高い操作圧力(9MPa)が初段
に負荷されることはなく、初段にはファウリングを起こ
さない程度の操作圧力(6.5MPa)が負荷される。つま
り、本発明では高い回収率(例えば60%)で運転を行っ
た場合でも、従来の1段で逆浸透分離を行う場合のよう
に有効圧力が増大してファウリングが生じることがな
く、高い回収率で逆浸透分離することができる。そし
て、その結果として淡水の製造コスト(造水コスト)を
低減させることができる。
【0032】次に、所定の段の操作圧力を高くするため
の運転操作について、図5に基づいて説明する。ここ
で、所定の段の操作圧力を高くする必要がある場合とし
ては、供給海水の温度が上昇してこの段の透過水の水質
が劣化した場合が挙げられ、操作圧力を高くして有効圧
力を高めることにより、膜の塩阻止率を向上させて透過
水の水質を改善することができる。なお、以下の説明で
は、初段と後段の2段で逆浸透分離を行う場合について
述べるが、3段以上の逆浸透分離においては、任意の2
つの段(前段と後段)の間にターボチャージャを配設す
ることにより、本発明を同様に適用することができる。
この場合、少なくともいずれかの2つの段の間にターボ
チャージャを配設すればよい。
【0033】図5において、初段と後段の間にはターボ
チャージャが配設されており、初段の逆浸透分離は回収
率40%、操作圧力P1で行われ、後段の逆浸透分離は
回収率20%、操作圧力P2で行われる。この場合、初
段モジュールユニットの入口側の有効圧力はU1に、出
口側の有効圧力はU2になっていて、U1はU2より高く
なっている。一方、後段モジュールユニットの入口側の
有効圧力はU3に、出口側の有効圧力はU4になってい
て、U3はU4より高くなっている。また、初段の回収率
が高いことから、U1は上記した各有効圧力の中で最も
高い値になっている。
【0034】そして、上述の如く後段透過水の水質が劣
化した場合、後段の操作圧力をP2’に上昇させる運転
操作が行われ、膜の塩阻止率の向上が図られる。この場
合、昇圧ポンプであるターボチャージャの作動特性か
ら、操作圧力をP2’にするためには、式(1)に従っ
て前段の操作圧力をP1’に上昇させる必要がある。そ
して、後段の操作圧力をP2’に上昇させると、後段モ
ジュールユニットの入口側の有効圧力はU3’に、出口
側の有効圧力はU4’に増大するので、後段の逆浸透膜
の塩阻止率を向上させることができる。
【0035】一方、初段モジュールユニットの入口側の
有効圧力は次のようになる。この場合、操作圧力を上昇
させる前の有効圧力U1が高いために、操作圧力をP1
に上昇させると有効圧力の値はファウリングを引き起こ
す程度まで増大し、その結果としてファウリングが生じ
るようになる。このようなことから、本発明において
は、前段の逆浸透膜の透過水側に背圧をかけて、上記フ
ァウリングを防止する。この場合、背圧の負荷される方
向は、操作圧力の方向と逆になっているため、その分だ
け有効圧力が減じられる。そのため、背圧をかけた状態
で操作圧力をP1’に上昇させても、前段モジュールユ
ニットの入口側の有効圧力が過大になることはないの
で、ファウリングを防止することができる。つまり、図
5に示すように、背圧をかけることによって、初段モジ
ュールユニットの入口側の有効圧力はU1’に、出口側
の有効圧力はU2’になるが、これらは、背圧をかけず
に操作圧力をP1’に上昇させた場合に比べて低い値に
なっている。
【0036】背圧の値は、例えば1.5MPa以下とすれば
よい。特に逆浸透分離装置の配管系の耐圧性を考慮する
と、0.1〜1MPaとすることがより好ましい。ところ
で、後段の操作圧力を上昇させると後段の透過水量が増
大し、その分だけ全体の透過水量も増えるため、透過水
の総量を一定の値に保つことが困難となる。そこで、以
下のようにして背圧を制御することにより、透過水の総
量を一定に保つことができる。つまり、前段に背圧をか
けるとその有効圧力が低くなって前段の透過水量が減少
するので、前段での透過水の減少量と後段の透過水の増
加量に等しくなるように前段での背圧を制御すればよ
い。
【0037】このように後段の運転圧力が高くなると、
後段の透過水の水質は向上する。そのことにより、総合
的な透過水の塩濃度を下げることが可能となる。透過水
の水質を向上させたい場合や、膜が劣化していたときな
どに、例えば夏季の水温上昇により運転圧力が低下して
透過水質が悪化した場合などは、本来、膜を交換する必
要があるが、本発明により、膜の交換を行うことなく水
質の改善を行うことが可能となる。
【0038】なお、多段で逆浸透分離を行う場合、造水
コストのさらなる低減を図るためには、その運転コスト
を低減することが重要である。ここで、運転コストと
は、膜の交換費用、設備の動力コスト(電力使用量)等
から成るが、その大部分は各段に配設された高圧ポンプ
の動力コストで占められる。そして、ポンプの動力コス
トは、各段の操作圧力、ひいては各段の回収率によって
影響を受けるので、各段の回収率を適切に設定すれば、
ポンプの動力コストの低減を図ることが可能となる。
【0039】この場合、初段では塩濃度の比較的低い供
給海水を逆浸透分離すればよく、そのため、通常は初段
の透過水の水質はそれ以降の段に比べて優れたものとな
る。従って、初段の回収率をなるべく高くすることが淡
水の水質を向上する点で好ましく、そのため、特に初段
の回収率の設定が重要になる。このようなことから、総
回収率Xおよび初段の逆浸透分離における回収率Yに着
目し、両者の間に所定の関係を規定することにより、ポ
ンプの動力コストの低減を図ることができる。このこと
について、図6に基づいて説明する。なお、以下の説明
は、2段の逆浸透分離についてするが、3段以上の逆浸
透分離では、これを初段とそれ以降の段の2つに分ける
ことにより、2段の場合と同様にして本発明を適用する
ことができる。
【0040】図6において、上述の如く初段の逆浸透分
離は回収率Y(%)、操作圧力P1に設定され、後段の
逆浸透分離は操作圧力P2に設定され、あわせて総回収
率X(%)が設定されている。この場合、上記したポン
プの動力コストは、各ポンプへ導入される海水量、およ
びポンプの入口側と出口側の圧力差との積によって決ま
る。そして、初段のポンプにおいて、その圧力差は、図
6の縦軸の操作圧力P1で表される。また、その海水量
は、供給海水の全量(100%)に等しく、これは図6
の横軸の0から100(辺L)の長さに比例した値とな
る。つまり、初段のポンプの動力コストAは、P1×L
に比例する。
【0041】一方、後段のポンプにおける圧力差は、初
段で圧力P1に昇圧された濃縮水を圧力P2まで昇圧すれ
ばよいので、(P2−P1)で表される。また、その海水
量は、初段の濃縮水量に等しく、これは供給海水の全量
(横軸の0から100)から回収率Yで得られた透過水
(横軸の0からY)を差し引いた値、つまり横軸のYか
ら100(辺M)の長さに比例した値となる。つまり、
後段のポンプの動力コストBは、(P2−P1)×Mに比
例する。
【0042】従って、AとBの和であるポンプの動力コ
ストの総量Eは、 E∝P1×L+(P2−P1)×M …(2) で表される。これに対して、従来の1段法を用い、回収
率X、操作圧力P2で逆浸透分離した時のポンプの動力
コストE’は、 E’∝P2×L …(3) で表される。
【0043】つまり、多段で逆浸透分離を行った場合に
は、従来法に比べて、 E−E’=(P2−P1)×(L−M) …(4) に比例した量だけ、ポンプの動力コストを低減できるこ
とになる。ここで、E−E’の大きさは、図6における
面積Sで表され、面積Sが大きくなる程ポンプの動力コ
スト(運転コスト)は低減する。この場合、面積Sの大
きさは操作圧力P1、P2、および辺Mの値によって変動
し、しかもこれらの値は回収率X、Yによって決まる。
つまり、XとY、より具体的にはXに対するYの比を設
定することによって、面積Sの値が決められる。
【0044】このようなことから、面積Sを最大とする
XとYを設定することが必要になるが、その設定に当っ
ては、以下のファウリングの問題が制約条件となってい
る。これについて図7、図8に基づいて説明する。図7
において、この運転条件においては、Xに対するYの割
合が少なくなるように設定されている。そして、初段モ
ジュールユニット入口側の有効圧力はU1に、出口側の
有効圧力はU0になっていて、かつ、U1はU0より高く
なっている。同様に、後段モジュールユニット入口側の
有効圧力はU2に、出口側の有効圧力はU0になってい
て、U2はU0より高くなっている。ここで、U2は、 U2=(P2−P1)+U0 …(5) で表され、U0は最低有効圧力(通常は2MPa程度)を示し
ている。
【0045】この場合、Xに対するYの割合が少ないた
め、P1はP2に比べて非常に小さくなる。そして、その
ために(P2−P1)は大幅に増大し、それに伴って式
(5)で表されるU2の値が増大して、後段モジュール
ユニットの入口側でファウリングが生じるようになる。
一方、図8において、この運転条件においては、Xに対
するYの割合が多くなるよう設定されている。そして、
そのためにP1がP2に近い値まで増大し、それに伴って
1の値が増大して、初段モジュールユニットの入口側
でファウリングが生じるようになる。
【0046】特に、上記したファウリングの問題は、高
回収率を実現するためにX、すなわちP2の値を大きく
した場合に顕著となるので、どの段においてもファウリ
ングが生じないようX、Yを規定する必要がある。以上
のことを検討し、本発明ではX、Yについて、 0.2X≦Y≦0.8X …(6) の関係式を満たして運転することが好ましい。そして、
X、Yが式(6)の関係にある場合には、面積Sは運転
コストの約15〜25%の大きさに増え、それだけ運転
コストが低減する。さらに、この場合には、いずれの段
においてもファウリングが防止されるので、多段の逆浸
透分離を長期にわたり安定運転することができる。
【0047】ここで、回収率Yが0.2X未満である場
合は、Xに対するYの割合が少なくなるため、上記した
ように後段モジュールユニットの入口側でその有効圧力
が増大してファウリングが生じるので好ましくない。ま
た、Yの値が小さくなると、式(4)における(L−
M)の値が小さくなって面積Sが減少するので、運転コ
ストが増大する。さらに、透過水全体に占める初段の透
過水の割合が少なくなるので、淡水の水質が低下する。
【0048】また、回収率Yが0.8Xを超えた場合
は、Xに対するYの割合が多くなるため、初段モジュー
ルユニットの入口側の有効圧力が増大してファウリング
が生じるので好ましくない。また、Yの値が大きくなる
と、式(4)における(P2−P1)の値が小さくなって
面積Sが減少するので、運転コストが増大する。なお、
X、Yについて、 0.4X≦Y≦0.7X …(7) の関係式を満たして運転するとより好ましい。
【0049】ところで、総回収率Xの値は特に制限され
ないが、30〜85%とすることが好ましい。Xが30
%未満である場合は、従来の逆浸透分離に比べて造水コ
ストの低減効果が充分でなく、本発明を適用する必要性
が少なくなるからである。また、Xが85%を超える
と、溶質である塩の析出限界を超えるので、これ以上の
回収率で運転することは困難となる。
【0050】特に、Xを45〜65%とし、Yを25〜
45%とすることが好ましい。このようにすると、面積
Sは最大となり、運転コストを最小にして造水コストを
より一層低減することができる。また、各段でのファウ
リングを防止し、淡水の水質を向上させることができ
る。なお、高圧ポンプとして上述のターボチャージャを
用いた場合、その段におけるポンプの動力コストは0と
なる。しかし、このターボチャージャを作動させるエネ
ルギは、他の段の高圧ポンプの圧力エネルギを回収して
得られることから、実際にはターボチャージャの動力コ
ストは、他の段のポンプの動力コストに転嫁される。そ
して、この場合のポンプ全体の動力コストは、各段に高
圧ポンプを用いた場合の動力コストから、ターボチャー
ジャの作動のために回収した圧力エネルギを差し引いた
値になる。このようなことから、ターボチャージャを用
いた場合でも、ポンプ全体の動力コストを低減させるた
めには、式(6)の関係を満たして運転を行うことが必
要となる。
【0051】また、前記初段における操作圧力と最終段
における操作圧力の比は、1.25〜1.8の範囲内にす
ることが好ましい。この場合、前記比が1.25未満で
ある場合は、総回収率Xに対する初段の回収率Yの割合
が非常に少なくなり、上述のように後段でファウリング
が生じるので好ましくない。また、前記比が1.8を超
えた場合は、総回収率Xに対する初段の回収率Yの割合
が非常に多くなり、上述のように初段でファウリングが
生じるので好ましくない。
【0052】また、初段の濃縮水の塩濃度は3.7〜1
1重量%の範囲内にあることが好ましく、5〜6.5重
量%の範囲内にあることがより一層好ましい。さらに、
後段(最終段)の濃縮水の塩濃度は5〜24重量%の範
囲内にあることが好ましく、7〜10重量%の範囲内に
あることがより一層好ましい。ところで、多段の逆浸透
分離においては、上述のように各段のファウリングを防
止することが極めて重要である。特に、以下に述べる項
目については、ファウリングに大きな影響を及ぼすの
で、次のようにその管理範囲を定めることが好ましい。
【0053】まず、供給海水の濁度は、ファウリングを
発生させる直接の要因となり、濁度が少ない程ファウリ
ングが生じ難い。このようなことから、濁度の指標とな
る供給海水のSDI値を好ましくは4以下、より好まし
くは3以下とする。ここで、SDI値(FI値)とは、
対象水中の微細な濁質濃度を示し、(1−T0/T15
×100/15で表される(但し、T0:0.45μmの
精密濾過膜を用いて試料水を0.2MPaで加圧濾過したと
きに最初の500mlの試料水の濾過に要した時間、
15:T0の後さらに同じ条件で15分間濾過した後に
500mlの試料水の濾過に要した時間)。そして、濁質
のない場合は0となり、最も汚れた水における最大値は
6.67となる。特に、供給海水のSDI値を3以下に
するとファウリングがより起き難くなり、その分だけ以
下の透過水量を増大させることができるので、操作圧力
を高くして回収率を向上させることができる。
【0054】次に、各段の逆浸透分離時における透過水
量を、いずれの逆浸透膜エレメントにおいても、単位膜
面積(単位:m2)当り0.07〜1.2m3/dとするこ
とが好ましい。ここで、透過水量が0.07m3/d未満
である場合には、充分な量の淡水を回収することができ
ず、逆浸透分離の運転コスト、および設備コストが増大
する虞がある。また、1.2m3/dを超えた場合には、
膜面を透過水が通過する速度が大きくなるので、上記濁
質が供給水側から膜面に吸い寄せられて膜面に付着し、
ファウリングが生じ易くなる。
【0055】さらに、各段における操作圧力を、当該段
の濃縮水の浸透圧より0.5〜5MPa高くすることが好ま
しい。操作圧力が0.5MPa未満である場合は、膜面の濃
度分極により逆浸透分離が充分進行しなくなる虞があ
り、また、5MPaを超えた場合は、透過水量が増えてフ
ァウリングが生じる虞があるからである。なお、濃度分
極が顕著になると、膜の分離性能が低下し、また、前記
スケール成分や塩が膜面へ析出してファウリングが生じ
る可能性が高くなる。従って、かかる濃度分極を抑制し
た運転条件で運転することが好ましい。この濃度分極
は、逆浸透膜における供給水の膜面流速が小さい程生じ
易く、特に、モジュールユニットの入口側に比べて出口
側の方が流速が小さくなるため、当該出口側で顕著に濃
度分極が生じ易い。このようなことから、いずれの逆浸
透膜エレメントにおいても供給水の膜面流速も0.03
m/s以上とすることが、濃度分極を抑制する点で好ま
しい。
【0056】この膜面流速が0.03m/s未満である
と、上述したように膜面での濃度分極が顕著に生じ、フ
ァウリングが発生する。ここで、逆浸透膜エレメントに
おける供給水の膜面流速とは、エレメント内部を通過す
る単位時間当たりの平均供給水流量を、エレメントの供
給水通水方向に垂直な断面積のうち、供給水が通過可能
な断面積(以後、供給水流路横断面積という)で除した
値のことをいう。この供給水流路横断面積は、例えば、
中空糸膜や管状膜を用いたエレメントの場合は、各膜の
内径や外径から算出することができるし、スパイラル型
のエレメントの場合は、供給水の流路には、通常、供給
水(原水)流路材を用いるため、この原水流路材の空隙
率をもとに算出すればよい。ここで空隙率とは、原水流
路材が占める全体積から、原水流路材を構成する部材の
体積を除いた、原水の通水可能な範囲の割合をいい、上
述の膜面流速は、エレメントの横断面でみた場合の原水
流路材の長さ、厚み、空隙率および用いた原水流路材の
数を乗算して算出する。なお、本発明において供給水と
は、初段においては処理を行うとする海水のことをい
い、初段以外の各段においては前段から得られる濃縮海
水のことをいう。
【0057】上記の膜面流速を0.03m/s以上に制
御するためには、例えば、各段に供給する供給水の供給
圧力を高めて単位時間当たりの供給量を増加させたり、
また、膜面流速が低下しやすい後段のエレメントほど、
前述の供給水流路横断面積を小さくしておいたりして実
現することができる。この供給水流路横断面積は、中空
糸膜や管状膜を用いるエレメントの場合は、各膜の径
や、エレメント1本当たりに用いる膜本数を調節するこ
とにより、また、原水流路材を用いたスパイラル型エレ
メントの場合は、原水流路材の数や長さ、空隙率などを
調節することのより変化させることができる。
【0058】さらに、膜面流速を0.03m/s以上に
制御することに加え、流路材の形状を工夫して供給水の
流れを乱してやると、濃度分極層の厚みが小さくなるの
で、濃度分極をより一層抑制することができる。具体的
には、例えば、原水流路材として菱目状の網体を用いて
供給水の流れを乱せばよい。
【0059】
【実施例】実施例、比較例 図1に示す逆浸透分離装置を用いて2段の逆浸透分離を
行い、淡水を製造した。ここで、各エレメントは、脱塩
率99.75%、膜面積28m2のポリアミド系逆浸透膜
を組み込んで成り、エレメント1個当り約13m3/d
の淡水を製造することができる。そして、このエレメン
トを6本直列に接続して耐圧容器に収容してモジュール
が構成され、初段のモジュールユニットではこのモジュ
ールが2個並列され、後段モジュールユニットではこの
モジュールが1個使用されている。つまり、初段と後段
の膜面積比は2:1となっている。
【0060】また、供給海水は、塩濃度約3.5%の原
水に殺菌剤(NaOCl)、凝集剤(FeCl3)、p
H調整剤(H2SO4)を順次添加した後、所定の濾過を
行って調製した。実施例における供給海水の温度は、3
0℃であった。そして、初段の逆浸透分離は、逆浸透膜
の透過水側に背圧をかけた状態で、かつ表1に示す操作
圧力で行った。さらに、初段で得られた濃縮水について
表1に示す操作圧力で後段の逆浸透分離を行った。各段
のモジュールユニット入口側の有効圧力および回収率を
表1に示す。また、各段で得られた透過水、および淡水
の水質を表2に示す。なお、比較のため、初段で背圧を
かけずに逆浸透分離を行った。これを比較例とする。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】表1、2から明らかなように、実施例の場
合、後段の有効圧力が高くなっていて、その透過水の水
質は改善されている。また、前段の有効圧力は低いの
で、前段でファウリングが生じることもない。前段に背
圧をかけなかった比較例の場合は、後段の有効圧力が低
く、その透過水の水質が劣化したものとなっている。
【0064】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
係る逆浸透分離を用いた造水方法によれば、各段で段階
的に操作圧力を上げて逆浸透分離を行うので、全体とし
て高い回収率を設定した場合でも、前段のモジュールユ
ニットに次段の高い操作圧力が直接負荷されることはな
く、そのため当該前段の有効圧力が上昇してファウリン
グが生じることがない。つまり、高い回収率で逆浸透分
離を行うことができ、造水コストを低減することができ
る。
【0065】そして、本発明では、後段の操作圧力を高
くするために、その前段の逆浸透膜の透過水側に背圧を
かけた状態で当該前段の操作圧力を上昇させている。そ
のため、前段の有効圧力を抑えつつ後段の有効圧力を高
くすることができるので、前段でファウリングを生じる
ことなく、後段の透過水の水質を改善させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る逆浸透分離を用いた造水方法のフ
ローを示す図である。
【図2】スパイラル型逆浸透膜エレメントを示す部分切
欠斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】逆浸透膜モジュールを示す概略図である。
【図5】初段に背圧をかけた状態における、初段と後段
の操作圧力の関係を示すグラフである。
【図6】回収率と操作圧力との関係、および各段のポン
プの動力コストを表す領域を示すグラフである。
【図7】総回収率Xに対して所定の割合で初段の回収率
Yを規定した場合の、各モジュールユニットにおける有
効圧力を示す図である。
【図8】総回収率Xに対して別の割合で初段の回収率Y
を規定した場合の、各モジュールユニットにおける有効
圧力を示す図である。
【符号の説明】
1 逆浸透分離装置 2 初段逆浸透膜モジュールユニット 4 後段逆浸透膜モジュールユニット 6 高圧ポンプ 8 無動力昇圧機(ターボチャージャ)9 タンク 10 供給海水 20a (初段)透過水 20b (初段)濃縮水 21 流量調節バルブ 22 圧力計 40a (後段)透過水 40b (後段)濃縮水 50 淡水 61 スパイラル型逆浸透膜エレメント 62 供給液流路材 63 逆浸透膜 64 透過液流路材 65 集水管 65a 透孔 66 ブラインシール 67 継手 68 耐圧容器 69 供給液口 70 透過液口 71 排出口 72 プロダクト・エンド・キャップ 80 モジュール
フロントページの続き (72)発明者 房岡 良成 滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ 株式会社 滋賀事業場内 (72)発明者 木原 正浩 滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ 株式会社 滋賀事業場内 (56)参考文献 特開2000−51663(JP,A) 特開 平9−276663(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C02F 1/44 B01D 61/02 - 61/58

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 直列に接続して設けた、逆浸透膜エレメ
    ントを含む少なくとも2個の逆浸透膜モジュールユニッ
    トを設け、初段の逆浸透膜モジュールユニットに海水を
    供給するとともに、前段の逆浸透膜モジュールユニット
    から得られる濃縮海水を次段の逆浸透膜モジュールユニ
    ットに供給し、各段から透過水を得るにあたり、全体の
    透過水の総量が一定の値に保たれるように前段の逆浸透
    膜の透過水側に背圧を加えながら、前段と後段との間に
    設けたターボチャージャにより前段から得られる濃縮海
    水を昇圧して後段に供給することを特徴とする造水方
    法。
  2. 【請求項2】 いずれの逆浸透膜エレメントにおいて
    も、逆浸透膜1m2当たりの透過水量が0.07〜1.2
    3/dの範囲内になるように海水を処理する、請求項
    1に記載の造水方法。
  3. 【請求項3】 いずれの逆浸透膜エレメントにおいて
    も、供給海水の膜面流速を0.03m/s以上になるよ
    うに海水を処理する、請求項1または2に記載の造水方
    法。
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