JP2001246315A - 積層塗膜の形成方法 - Google Patents

積層塗膜の形成方法

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JP2001246315A
JP2001246315A JP2000058976A JP2000058976A JP2001246315A JP 2001246315 A JP2001246315 A JP 2001246315A JP 2000058976 A JP2000058976 A JP 2000058976A JP 2000058976 A JP2000058976 A JP 2000058976A JP 2001246315 A JP2001246315 A JP 2001246315A
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coating
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JP2000058976A
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Takeshi Takagi
雄 高木
Yasushi Kuwabara
靖 桑原
Yoshiyuki Noritake
義幸 則武
Masahiko Ishii
正彦 石井
Seiji Hibi
誠司 日比
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Nippon Paint Co Ltd
Toyota Motor Corp
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Nippon Paint Co Ltd
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ハイソリッド型クリヤー塗料を用い、2コー
ト1ベーク塗装法により、光沢および外観に優れた、自
動車の上塗り塗装などに最適な光輝性積層塗膜を形成す
る方法を提供すること。 【解決手段】 ハイソリッド型メタリックベース塗料と
ハイソリッド型クリヤー塗料との組み合わせを用い、被
塗物の表面にメタリックベース塗膜とメタリックベース
を2コート1ベーク塗装法で形成する積層塗膜の形成方
法において、ハイソリッド型メタリックベース塗料が、
架橋剤としてメラミン樹脂を含有し、および前記ハイソ
リッド型クリヤー塗料が、(a)カルボキシル基含有ア
クリル樹脂、(b)カルボキシル基含有ポリエステル樹
脂、(c)エポキシ基含有アクリル樹脂、および(d)
HLB値が0〜5であって、重量平均分子量が8,00
0〜30,000であるアクリル系表面調整剤を含有し
かつ表面張力25.0〜35.0dyne/cmであ
る、積層塗膜の形成方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【用語の定義】本明細書において、「VOC」とは、Vo
latile Organic Compoundの略称であり、塗布粘度に希
釈された塗料において、塗料中に含まれる不揮発分と希
釈された後の塗料の比重をそれぞれ実測して、下記の式
に代入することよって算出される値をいう。
【数1】VOC(g/L)=1000×希釈された塗料の比
重×(1−希釈塗料中の不揮発分/100) 一般に、VOCが高いと、塗料中の不揮発分は少なく、
VOCが低いと不揮発分は多いとされる。また、ここに
おいて、HLB(Hydrophile-Lipophile-Balanceの略
称)とは、表面調整剤の発泡防止効果や消泡促進効果を
示す指標となるものであって、以下に示す川上式に従っ
て算出することができる。
【数2】HLB値=7+11.7LOG(Mw/Mo) (上記式中、Mwは活性剤親水基の分子量を表し、およ
びMoは活性剤疎水基の分子量を表す。) 本明細書において、上記式からの計算値が負の場合、す
なわち、表面調整剤が、より疎水性である場合には、便
宜上、HLB値=0(ゼロ)とする。
【0002】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の上塗り塗
装などに最適に用いられるハイソリッド型塗料を用い
て、光沢および外観に優れた光輝性積層塗膜を形成する
方法に関する。
【0003】
【従来の技術】アルミニウム顔料などの光輝性顔料を含
有する、いわゆるメタリック塗料をベース塗料として用
いた積層塗膜は、自動車の上塗り塗膜として広く用いら
れている。このような積層塗膜は、一般に、以下に説明
する2コート1ベーク塗装法によって形成される。先
ず、光輝性顔料を含有するメタリックベース塗料を被塗
物の表面に塗装して、メタリックベース塗膜を形成す
る。所定時間のセッティング時間経過後、メタリックベ
ース塗膜の表面にクリヤー塗料を塗装して、クリヤー塗
膜を形成する。その後、メタリックベース塗膜とクリヤ
ー塗膜とを同時に焼付硬化させて、積層塗膜を形成す
る。こうして得られる積層塗膜は、光沢、硬度等の点で
優れている。
【0004】自動車の上塗り塗膜形成用に使用されるメ
タリックベース塗料やクリヤー塗料は、通常、バインダ
ーとしての水酸基含有ポリマーと架橋剤としてのメラミ
ン樹脂との組み合わせを含有しているが、塗装時の不揮
発分が20〜45重量%と少ない。これをVOC値に換
算すると、メタリックベース塗料のVOCは700〜8
00g/Lで、クリヤー塗料のVOCは550〜650
g/Lである。塗膜外観を向上させるために塗料を厚膜
塗装して、塗膜の表面を平滑化しようとする場合、この
ような塗料を用いると、塗装時あるいは焼付硬化時に蒸
発する有機溶剤量が多いため、経済的ではない。そのた
め、より低いVOCを有するハイソリッド型(高固形分
含有硬化性)塗料を用いる必要がある。
【0005】他方、従来使用されているメタリックベー
ス塗料やクリヤー塗料に架橋剤として含有されているメ
ラミン樹脂は、その中にトリアジン環を有している。こ
のトリアジン環の存在は、形成される積層塗膜の酸性雨
への暴露に対する耐性(耐酸性雨性)を低下させる原因
であると考えられている。積層塗膜の耐酸性雨性を向上
させるためには、特に積層塗膜の上層塗膜を構成するク
リヤー塗料として、メラミン樹脂を含有しない塗料を使
用する必要があり、例えば、特開平8−259667号
公報に記載のハイソリッド型樹脂組成物が挙げられる。
このハイソリッド型樹脂組成物は、(a)カルボキシル基
含有樹脂、(b)カルボキシル基含有ポリエステル樹脂お
よび(c)エポキシ基含有アクリル樹脂を含有するが、メ
ラミン樹脂を含有しないことから、これをクリヤー塗料
として使用して積層塗膜を形成すると、優れた耐酸性雨
性を有する積層塗膜が形成でき、かつ揮散する有機溶剤
量も抑制でき、さらには一度の塗装工程で厚膜塗膜を形
成することができるものである。
【0006】しかしながら、前記特開平8−25966
7号公報に記載の樹脂組成物をクリヤー塗料として用
い、かつより低いVOCを有するハイソリッド型メタリ
ックベース塗料を用いた場合の両塗料間の適合性につい
ての検討は、未だ十分になされていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
問題を克服するために、ハイソリッド型メタリックベー
ス塗料とメラミン樹脂を含有しないハイソリッド型クリ
ヤー塗料との組み合わせを用いて、ワキ限界および表面
平滑性に優れ、かつ高い外観品質を有する積層塗膜を形
成することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、上記
目的を達成する手段として、(1)塗装粘度に希釈した
ときにVOC450〜600g/Lを有するハイソリッ
ド型メタリックベース塗料を被塗物の表面に塗装してメ
タリックベース塗膜を形成する工程、(2)塗装粘度に
希釈したときにVOC350〜550g/Lを有するハ
イソリッド型クリヤー塗料を、前記メタリックベース塗
膜上に塗布してハイソリッド型クリヤー塗膜を形成する
工程、および(3)ハイソリッド型メタリックベース塗
膜とハイソリッド型クリヤー塗膜を同時に焼付硬化する
工程を含む、ハイソリッド型メタリックベース塗膜とハ
イソリッド型クリヤー塗膜から成る積層塗膜の形成方法
において、前記ハイソリッド型メタリックベース塗料が
架橋剤としてメラミン樹脂を含有し、前記ハイソリッド
型クリヤー塗料が、(a)カルボキシル基含有アクリル
樹脂、(b)カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、
(c)エポキシ基含有アクリル樹脂および(d)HLB
値が0〜5であって、重量平均分子量(Mw)が8,0
00〜30,000であるアクリル系表面調整剤を含有
し、かつ前記ハイソリッド型クリヤー塗料の表面張力が
25.0〜35.0dyne/cmである、積層塗膜の
形成方法を提供することにある。本発明の積層塗膜の形
成方法で使用されるハイソリッド型クリヤー塗料は、成
分(d)アクリル系表面調整剤を、ハイソリッド型クリ
ヤー塗料中の樹脂固形分に対し0.001〜2重量%の
量で含有する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、本発明をより詳細につい
て説明する。本発明は、ハイソリッド型メタリックベー
ス塗料とハイソリッド型クリヤー塗料を用い、2コート
1ベーク塗装法に従ってハイソリッド型メタリックベー
ス塗膜とハイソリッド型クリヤー塗膜から成る積層塗膜
を形成する方法である。
【0010】ハイソリッド型クリヤー塗料 本発明の塗膜形成方法で使用されるハイソリッド型クリ
ヤー塗料は、(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂、
(b)カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、(c)エ
ポキシ基含有アクリル樹脂、および(d)HLB値が0
〜5であって、重量平均分子量(Mw)が8,000〜
30,000であるアクリル系表面調整剤を含有する。
このようなハイソリッド型クリヤー塗料は、加熱する
と、(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂樹脂中のカ
ルボキシル基および(b)カルボキシル基含有ポリエス
テル樹脂中のカルボキシル基とエポキシ基含有アクリル
樹脂(c)中のエポキシ基とが反応し、エステル結合を
形成することによって架橋する。
【0011】ハイソリッド型クリヤー塗料に含有される
(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂は、1分子中に
平均2個以上のカルボキシル基をもち、酸価5〜300
mgKOH/g(固形分)および数平均分子量(Mn)
500〜8,000を有するものが挙げられ、特に、(i)
アクリル系ポリ酸無水物と(ii)モノアルコールとを反応
させることにより得られる、カルボキシル基とカルボン
酸エステル基とが隣接した炭素に結合するカルボキシル
基含有アクリル樹脂を用いることが望ましい。
【0012】上記(a)−(i)アクリル系ポリ酸無水物
は、酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマー15〜4
0重量%、好ましくは15〜35重量%と、酸無水物基
を有しないエチレン性不飽和モノマー60〜85重量
%、好ましくは65〜85重量%とを共重合させること
により得られる。酸無水物基含有エチレン性不飽和モノ
マーの量が15重量%未満であると、硬化性が不足し、
40重量%を超えると塗膜が固く脆くなりすぎて耐候性
が不足する。
【0013】上記酸無水物基含有エチレン性不飽和モノ
マーとしては、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水
シトラコン酸などが例示される。
【0014】また酸無水物基を有しないエチレン性不飽
和モノマーは、酸無水物基に悪影響を与えないエチレン
性不飽和モノマーであれば特に制限されないが、エチレ
ン性不飽和結合を一つ有する炭素数3〜15、特に3〜
12のモノマーを用いることが好ましい。酸無水物基を
有しないエチレン性不飽和モノマーは、樹脂同士の相溶
性を向上させるために、2種以上を併用することも好ま
しい。このような酸無水物基を有しないエチレン性不飽
和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、
p−t−ブチルスチレン、各種の(メタ)アクリル酸エ
ステル、シェル社製のVeoVa−9およびVeoVa
−10などのバーサテイック酸グリシジルエステル等が
挙げられる。酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モ
ノマーとして、スチレンまたはスチレン誘導体を用いる
場合には、全モノマー中に5〜40重量%の範囲で用い
ることが望ましい。酸無水物基を有しないエチレン性不
飽和モノマーとしては、上記以外に、アクリル酸、メタ
クリル酸、イタコン酸、マレイン酸のようなカルボキシ
ル基を有するモノマー、および水酸基を有するエチレン
性不飽和モノマーと酸無水物基含有化合物との付加物等
を用いてもよい。特に、エチレン性不飽和基とカルボキ
シル基との間に炭素5〜20個分程度のスペーサー部分
を有する長鎖のカルボキシル基含有モノマーを酸無水物
基を有しないエチレン性不飽和モノマーとして用いる
と、形成されるクリヤー塗膜の耐擦傷性が向上するため
特に好ましい。
【0015】上記酸無水物基含有エチレン性不飽和モノ
マーと、酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマ
ーとの共重合により得られる(a)−(i)アクリル系ポ
リ酸無水物のMnは、500〜8,000、また800
〜6,000、特に1,500〜4,000とすることが
好ましい。(a)−(i)アクリル系ポリ酸無水物のMn
が8,000を超えると、ハイソリッド型クリヤー塗料
中に含有される樹脂(a)〜(d)同士の相溶性が低下
して、得られる塗膜の外観品質が低下する。(a)−
(i)アクリル系ポリ酸無水物のMnが500未満である
と、塗膜の硬化が不充分となる。(a)−(i)アクリル
系ポリ酸無水物は、1分子中に平均で少なくとも2個、
好ましくは2〜15個の酸無水物基を有することが望ま
しい。1分子中に含まれる酸無水物基の数が2個未満で
あると、塗膜の硬化性が低下し、15個を超えると塗膜
が固く脆くなりすぎて耐候性が低下する。
【0016】ハイソリッド型クリヤー塗料に含有される
(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂を構成するもう
一つの成分である(a)−(ii)モノアルコールとして、
炭素数が1〜12個、特に1〜8個のモノアルコールを
好ましく用いることで、前記(a)−(i)アクリル系ポ
リ酸無水物との反応時にアルコールが除去しやすく、ま
た酸無水物基を再生するのに好適である。このような
(a)−(2)モノアルコールとしては、メタノール、
エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n
−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n
−ヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、メチルセ
ロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロパノール、
エトキシプロパノール、フルフリルアルコール、ジメチ
ルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、アセ
トール、アリルアルコール、プロパルギルアルコールな
どが例示される。
【0017】(a)−(i)アクリル系ポリ酸無水物と
(a)−(ii)モノアルコールとの共重合により(a)カ
ルボキシル基含有アクリル樹脂を合成する場合、各成分
(a)−(i)および(a)−(ii)は、それらに含まれる
酸無水物基と水酸基とがそれぞれ、モル比で1/10〜
1/1、好ましくは1/5〜1/1、より好ましくは1
/2〜1/1となるように混合する。成分(a)−(i)
と(a)−(ii)とのモル比が1/10より小さいと、過
剰のアルコールに起因して、得られるクリヤー塗膜に、
硬化時にワキが発生することがある。成分(a)−(i)
と(a)−(ii)とのモル比が1/1を超えると、得られ
る(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂中に未反応の
酸無水物基が残存するため、塗料の貯蔵安定性が悪くな
る。上記反応により得られる、カルボキシル基とカルボ
ン酸エステル基とが隣接した炭素に結合するカルボキシ
ル基含有アクリル樹脂(a)は、酸価が5〜300mg
KOH/g、特に50〜250mgKOH/gであるこ
とが好ましい。(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂
の酸価が5mgKOH/gより低くなると、クリヤー塗
膜の硬化性が低下し、300mgKOH/gより高くな
ると、塗料の貯蔵安定性が低下する。
【0018】(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂
は、樹脂組成物中の全不揮発分を基準として10〜70
重量%、好ましくは15〜50重量%、より好ましくは
20〜45重量%の量で用いられる。この配合量が10
重量%未満では得られる塗膜の耐候性が低下し、70重
量%を超えると塗膜が固くなりすぎる。
【0019】本発明において、ハイソリッド型クリヤー
塗料に含有される(b)カルボキシル基含有ポリエステ
ル樹脂は、(i)3個以上の水酸基を有するポリエステル
ポリオールと(ii)酸無水物との反応によって得られるも
のである。
【0020】(b)−(i)ポリエステルポリオールは、
酸無水物基と反応して、1分子あたり2個以上の酸官能
性を有する多価アルコールをいい、少なくとも3個の水
酸基を有する炭素数3〜16までの低分子多価アルコー
ル、またはこの低分子多価アルコールにε−カプロラク
ロンなどのラクトン化合物を付加させて鎖延長し、線状
の脂肪族基が導入されたもの(ラクトン付加物)等であ
り得る。(b)−(i)ポリエステルポリオールとしてま
たはラクトン付加物を合成するために好ましく使用され
る低分子多価アルコールとしては、トリメチロールエタ
ン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリ
オール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプ
ロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトー
ル、グリセリン、およびこれらの混合物、またはラクト
ン付加物等が挙げられる。低分子多価アルコールと反応
し得る好ましいラクトン化合物としては、ε−カプロラ
クロン、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、δ
−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンなどが挙げ
られるが、特に、ε−カプロラクロン、γ−バレロラク
トンおよびγ−ブチロラクトンが好適である。(b)−
(i)ポリエステルポリオールとしてラクトン付加物を使
用して合成される(b)カルボキシル基含有ポリエステ
ル樹脂をクリヤー塗料中に含有させることにより、得ら
れる塗膜に可撓性が付与されて、耐衝撃性がより向上す
る。
【0021】(b)カルボキシル基含有ポリエステル樹
脂を構成するもう一つの成分である(b)−(ii)酸無水
物としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル
酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒド
ロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水コハク酸な
どが例示される。
【0022】(b)−(i)ポリエステルポリオールと
(b)−(ii)酸無水物とのハーフエステル化反応は、室
温〜150℃で常圧(1気圧)のような通常の反応条件
において行うことができる。ハーフエステル化反応にお
いて、(b)−(i)ポリエステルポリオールの水酸基の
全てがカルボキシル基に変性される必要はなく、水酸基
が残っていてもよい。
【0023】このハーフエステル化反応によれば、分子
量分布がシャープな(b)カルボキシル基含有ポリエス
テル樹脂が得られ、これをクリヤー塗料に含有させるこ
とにより、塗料の更なるハイソリッド化が可能となるこ
とから、耐候性および耐水性に優れた塗膜が得られる。
【0024】上記ハーフエステル反応により得られる
(b)カルボキシル基含有ポリエステル樹脂の酸価は、
好ましくは50〜350mgKOH/g(固形分)、好
ましくは100〜300mgKOH/g(固形分)、よ
り好ましくは150〜250mgKOH/g(固形分)
であり、数平均分子量(Mn)は400〜3500、好
ましくは500〜2500、より好ましくは700〜
2,000であり、および重量平均分子量/数平均分子
量の比(Mw/Mn)は1.8以下、好ましくは1.5
以下、より好ましくは1.35以下であってよい。 (b)カルボキシル基含有ポリエステル樹脂の酸価が3
50を超えると、樹脂粘度が高くなりすぎて塗料不揮発
分濃度が低下し、酸価が50より低くなると、塗膜の硬
化が不十分となる。数平均分子量が3500を超える
と、樹脂粘度が高くなり過ぎることから、得られたクリ
ヤー塗料において、塗装粘度に希釈した後の不揮発分が
低下し、Mnが400より小さくなると、塗膜の硬化が
不充分となる。さらにMw/Mnが、1.8を超える
と、得られるクリヤー塗膜の耐水性および耐候性が低下
する。
【0025】上記(b)カルボキシル基含有ポリエステ
ル樹脂は、上述のハーフエステル化反応において分子中
に水酸基が残っていてもよいので、塗装後のクリヤー塗
膜の表面にカルボキシル基と水酸基が同時に提供され
る。このことは、このクリヤー塗膜表面上へ塗料を更に
重ね塗りした時に、それら塗膜間の密着性を向上させる
要因となる。そのため、(b)カルボキシル基含有ポリ
エステル樹脂の水酸基価は、150mgKOH/g(固
形分)以下、好ましくは5〜100mgKOH/g(固
形分)、より好ましくは10〜80mgKOH/g(固
形分)とするのがよい。水酸基価が150mgKOH/
g(固形分)を超えると、塗膜の耐水性が低下する。
【0026】水酸基とカルボキシル基を有する(b)カ
ルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、後述するよう
に、クリヤー塗膜の硬化時に(c)エポキシ基含有アク
リル樹脂および(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂
の両方と反応して、より強固なクリヤー塗膜を形成し得
る。そのためには、(b)カルボキシル基含有ポリエス
テル樹脂が、1分子中に平均0.1個以上の水酸基を有
することが望ましく、このような(b)カルボキシル基
含有ポリエステル樹脂を得るためには、(b)−(i)ポ
リエステルポリオールの水酸基のモル量に対し(b)−
(ii)酸無水物の酸無水物基のモル量を、0.2〜1.0
倍、特に0.5〜0.9倍とすることが好ましい。この
比が0.2倍未満の場合、得られるクリヤー塗膜の硬化
が不十分となる。
【0027】(b)カルボキシル基含有ポリエステル樹
脂成分は、塗料中の全不揮発分の重量を基準として、5
〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、より好まし
くは10〜40重量%の量で配合することができる。
(b)カルボキシル基含有ポリエステル樹脂の量が5重
量%未満では、塗料の不揮発分濃度が上がらず、70重
量%を超えると塗膜の耐候性が低下する。
【0028】ハイソリッド型クリヤー塗料に含有される
(c)エポキシ基含有アクリル樹脂は、1分子中にエポ
キシ基を平均で2個以上、好ましくは2〜10個、より
好ましくは3〜8個有する。このような(c)エポキシ
基含有アクリル樹脂としては、 (i)エポキシ基含有エチ
レン性不飽和モノマー10〜60重量%、好ましくは1
5〜50重量%と、(ii)エポキシ基を有しないエチレン
性不飽和モノマー40〜90重量%、好ましくは50〜
85重量%とを共重合することで得られるものを好まし
く使用する。エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー
が10重量%未満では硬化性が不足し、60重量%以上
では固くなりすぎて耐候性が不足する。 (c)−(i)エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー
としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β
−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポ
キシシクロヘキサニル(メタ)アクリレートなどが例示
される。形成されるクリヤー塗膜において、バランスの
とれた硬化性と貯蔵安定性を確保するためには、(c)
−(i)エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとして
グリシジル(メタ)アクリレートを用いることが好まし
い。 (c)−(ii)エポキシ基を有しないエチレン性不飽和モ
ノマーは、(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂の構
成成分の一つである(i)アクリル系ポリ酸無水物を合成
するのに使用する、上述の酸無水物基を有しないエチレ
ン性不飽和モノマーのうち、エポキシ基に影響を及ぼさ
ないものを好ましく使用することができる。
【0029】あるいは、(c)−(ii)エポキシ基を有し
ないエチレン性不飽和モノマーとして、以下の式(I)
で表される水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを使用
してもよい。
【化1】 上記式(I)中、R1は水素原子またはメチル基を表
し、およびXは、下記の式(II)または式(III):
【化2】 (式中、Yは炭素数2〜8の直鎖または分岐鎖のアルキ
レン基であり、mは3〜7の整数、およびqは0〜4の
整数である。)
【化3】 (式中、R2は水素原子またはメチル基であり、および
nは2〜50の整数である。)で表される有機鎖であ
る。このような水酸基含有エチレン性不飽和モノマー
は、炭素数5〜23、特に炭素数5〜13のものが好ま
しい。水酸基含有エチレン性不飽和モノマーは、鎖長が
短すぎると、架橋点近傍のフレキシビリティがなくなる
ため固くなりすぎ、鎖長が長すぎると、架橋点間分子量
が大きくなりすぎる。
【0030】水酸基含有エチレン性不飽和モノマーの具
体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチ
ル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メ
タ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリ
ル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒ
ドロキシヘキシル、およびこれらのε−カプロラクトン
との反応物、(メタ)アクリル酸と大過剰のジオール
(例えば1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオー
ル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコー
ル)をエステル化した化合物などが例示される。
【0031】(c)−(ii)エポキシ基を有しないエチレ
ン性不飽和モノマーとして、上記式(I)で表されるよ
うな水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを使用するこ
とで、水酸基とカルボキシル基とを有するエポキシ基含
有アクリル樹脂が合成される。この樹脂を成分(c)と
して本発明のクリヤー塗料中に含有させると、後述する
ように、本発明のクリヤー塗料中の成分(a)である、
カルボキシル基とカルボン酸エステル基とを有するカル
ボキシル基含有アクリル樹脂と、水酸基およびエポキシ
基の両方の官能基において反応し結合することから、よ
り強固なクリヤー塗膜を形成することができる。さら
に、この樹脂を使用して形成されるクリヤー塗膜は、ベ
ース塗膜などの下地塗膜との密着性やリコート性(クリ
ヤー塗膜表面と、その上へ更に重ね塗りされた塗膜との
密着性)が向上する。
【0032】上記モノマー(c)−(i)と(c)−(ii)
との共重合により得られる(c)エポキシ基含有アクリ
ル樹脂の数平均分子量(Mn)は500〜10,000、
好ましくは1,000〜8,000、より好ましくは1,
500〜5,000である。(c)エポキシ基含有アク
リル樹脂のMnが500未満であると、クリヤー塗膜の硬
化性が低下し、10,000を超えると、塗装粘度に希
釈されたクリヤー塗料において、不揮発分が低下する。 (c)エポキシ基含有アクリル樹脂のエポキシ当量は、
50〜700、好ましくは80〜600、より好ましく
は100〜500である。エポキシ当量が700を超え
るとクリヤー塗料の硬化性が低下し、50未満では固く
なりすぎてクリヤー塗膜が脆くなる。 (c)エポキシ基含有アクリル樹脂の水酸基価は、5〜
300mgKOH/g(固形分)、好ましくは10〜2
00mgKOH/g(固形分)、より好ましくは15〜
150mgKOH/g(固形分)である。水酸基価が3
00mgKOH/g(固形分)を超えると、クリヤー塗
料における不揮発分が低下したり、形成されるクリヤー
塗膜の耐水性が低下し、5mgKOH/g(固形分)未
満では、形成されるクリヤー塗膜の密着性が低下する。
【0033】(c)エポキシ基含有アクリル樹脂は、全
モノマー合計を100重量%として、(c)−(i)エポ
キシ基含有エチレン性不飽和モノマー10〜60重量%
と、(c)−(ii)エポキシ基を有しないエチレン性不飽
和モノマーとしての前述の式(I)で示される水酸基含
有エチレン性不飽和モノマー5〜70重量%、および必
要に応じて、水酸基およびエポキシ基の両方とも有しな
いエチレン性不飽和モノマー0〜85重量%とを用い、
それらを共重合することによって得られる。この場合、
得られる(c)エポキシ基含有アクリル樹脂は、1分子
中にエポキシ基を平均で2〜12個、より好ましくは3
〜10個、水酸基を平均で0.5〜10個、より好まし
くは1〜8個有する。
【0034】(c)エポキシ基含有アクリル樹脂成分
は、本発明のハイソリッド型クリヤー塗料中の全固形分
重量を基準として、10〜80重量%、好ましくは20
〜70重量%、より好ましくは30〜65重量%の量で
配合されてよい。エポキシ基含有アクリル樹脂の量が1
0重量%より少ないと、塗膜の硬化性が低下し、70重
量%を超えると、耐黄変性が悪化する。
【0035】本発明で使用されるハイソリッド型クリヤ
ー塗料は、更に(d)アクリル系表面調整剤を含有す
る。 (d)アクリル系表面調整剤は、以下に示す各種重合性
モノマーから選ばれる少なくとも1種を重合することに
より調製され得る。使用される重合性モノマーは、ラジ
カル重合性であれば特に制限されず、その具体例を以下
に例示する。 ・水酸基を有するモノマー:例えば、(メタ)アクリル
酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプ
ロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、メタク
リル酸ヒドロキシメチル、アリルアルコール、(メタ)
アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの
付加物等。 ・酸性基を有するモノマー:例えば、カルボキシル基、
スルホン酸基等が挙げられる。カルボキシル基を有する
エチレン性モノマーの例としては、アクリル酸、メタク
リル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリ
ル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレ
イン酸、フマール酸等。ただし、酸性基を有するエチレ
ン性モノマーの酸性基の一部は、カルボキシル基である
ことが好ましい。
【0036】・スルホン酸基を有するエチレン性モノマ
ー:例えば、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸
等。 ・パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニ
ル基を含有する(メタ)アクリレートモノマー類:例え
ば、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチルメチル、
(メタ)アクリル酸パーフルオロブチルエチル、(メ
タ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル、(メタ)
アクリル酸パーフルオロイソノニルエチル、(メタ)ア
クリル酸パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル
酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、(メタ)
アクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル
アクリレート等。 ・アルコキシシラン基含有不飽和モノマー:例えば、ビ
ニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、
ビニルトリス(2 −メトキシエトキシ)シラン、γ−
(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラ
ン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキ
シシラン、?−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリ
メトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロ
ピルトリエトキシシラン等。 ・その他の重合性モノマー:アクリロニトリル、メタク
リロニトリル、メチルイソプロペニルケトン、酢酸ビニ
ル、ベオバモノマー(シェル化学社製、商品名)、ビニ
ルプロピオネート、ビニルピバレート、プロピオン酸ビ
ニル、エチレン、プロピレン、ブタジエン、N,N−ジ
メチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルア
ミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、ビニルピ
リジン等。
【0037】更に、上記以外のエチレン性モノマーを使
用してもよく、例えば、アクリル酸アルキルエステル
(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イ
ソプロピル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−
ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチル
ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ラウリ
ルなど)、メタクリル酸アルキルエステル(メタクリル
酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロ
ピル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブ
チル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチ
ル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n
−オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステ
アリル、メタクリル酸トリデシルなど)、油脂肪酸とオ
キシラン構造を有するアクリル酸またはメタクリル酸エ
ステルモノマーとの付加反応物(例えば、ステアリン酸
とグリシジルメタクリレートの付加反応物等)、C3
上のアルキル基を含むオキシラン化合物とアクリル酸ま
たはメタクリル酸との付加反応物、スチレン、α−メチ
ルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレ
ン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、
アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、イタコン
酸エステル(イタコン酸ジメチルなど)、マレイン酸エ
ステル(マイレン酸ジメチルなど)、フマール酸エステ
ル(フマール酸ジメチルなど)等の中性モノマーが挙げ
られる。
【0038】(d)アクリル系表面調整剤は、上記重合
性モノマーから選ばれる少なくとも1種を、例えば2,2'
−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,
4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤、ベン
ゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、tert
−ブチルパーオクトエート等の過酸化物系開始剤から選
ばれるラジカル重合開始剤、重合性モノマーの合計10
0重量部当たり、0.2〜10重量部、好ましくは0.
5〜5重量部の存在下で(共)重合することにより調製
され得る。
【0039】(d)アクリル系表面調整剤は、HLB値
が0〜5の範囲のものが好ましい。HLB値が5を越え
ると、起泡性が高く、消泡性が低くなる(すなわち、界
面活性能が高くなる)ため、形成されるクリヤー塗膜に
おいてワキが生じ易くなる。このHLB値は、上記重合
反応において疎水部を有するエチレン性不飽和モノマー
[例えば、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモ
ノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸プロピレングリ
コールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプ
ロピレングリコールモノエチルエーテル等]を使用する
ことにより、所望の値に調節することができる。
【0040】(d)アクリル系表面調整剤は、重量平均
分子量(Mw)8,000〜30,000の範囲であるこ
とが好ましい。MwはGPCによりスチレン標準で測定
することができる。Mwが8,000より小さいと、ク
リヤー塗料中の上記樹脂成分(a)〜(c)と高い相溶
性を示すため、樹脂成分中に完全に溶解してしまい、結
果として塗膜にワキが生じ易くなる。Mwが30,00
0越えると、逆に、樹脂成分(a)〜(c)との相溶性
が低下するため、塗膜に白濁やハジキ等の不具合が発生
する。 (d)アクリル系表面調整剤のMwは、例えば、前記重
合性モノマーの重合反応を有機溶剤中で行なうことによ
り調節できる。
【0041】(d)アクリル系表面調整剤をハイソリッ
ド型クリヤー塗料に含有させることで、クリヤー塗料の
表面張力を25.0〜35.0dyne/cmの範囲と
する。ハイソリッド型クリヤー塗料の表面張力は、塗料
のレベリング機能、ダスト調整機能等を示す指標となる
ものであって、(d)アクリル系表面調整剤の分子量、
官能基の種類や分子中に含有される数および調製のため
の重合反応に供される重合性モノマー種などに依存して
変化し得る。ここで、「ダスト調整機能」とは、表面調
整剤の塗料への添加によって発現する機能の一つであっ
て、自動車車体の塗装ライン等のように異なる数種の塗
料を用いて順次塗装を行なう際に、塗装後のウエット塗
膜表面に、空気中に浮遊・飛散している同一または異種
塗料が付着して塗膜表面にブツや凹み等のような不具合
が発生するのを抑制する機能をいう。あるいは、ハイソ
リッド型クリヤー塗料の表面張力は、前記成分(d)以
外の表面調整剤、例えば、「KF−69」(信越シリコ
ーン社製)等のシリコーン系官能基を有する表面調整剤
等をクリヤー塗料に更に添加することによっても調節で
きる。ハイソリッド型クリヤー塗料の表面張力が25.
0dyne/cmより小さいと、塗料中の上記樹脂成分
(a)〜(c)と、(d)アクリル系表面調整剤や更に
添加される表面調整剤との相溶性が低下するため、抑泡
性には優れるが、破泡性が低下する。その結果、形成さ
れる塗膜においてワキ性が著しく低下するとともに、白
濁やハジキ等の不具合が発生する。ハイソリッド型クリ
ヤー塗料の表面張力が35.0dyne/cmを越える
と、塗料中の上記樹脂成分(a)〜(c)と、(d)ア
クリル系表面調整剤や更に添加される表面調整剤との相
溶性が高くなり過ぎて、表面調整剤がいずれも樹脂成分
(a)〜(c)中に完全に溶解してしまうため、起泡機
能、消泡機能、レベリング機能およびダスト調整機能等
の各種機能が十分に発揮されない。
【0042】ここで、起泡機能(起泡性)とは、(d)
アクリル系表面調整剤を含有するハイソリッド型クリヤ
ー塗料における泡の立ち方あるいは巻き込み方等を含む
機能(性質)を意味するものである。本発明に用いられ
るクリヤー塗料は、起泡性が低いことが好ましく、例え
ば、卓上ディスパー等の攪拌機により攪拌しても、泡が
立ちにくいものである。
【0043】本発明で使用されるハイソリッド型クリヤ
ー塗料は、消泡機能にも優れるため、万一起泡した場合
であっても速やかに消泡できることが好ましい。
【0044】本発明に用いるハイソリッド型クリヤー塗
料は、(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂、(b)
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、(c)エポキシ
基含有アクリル樹脂および(d)アクリル系表面調整剤
を混合することにより製造することができる。特に、ハ
イソリッド型クリヤー塗料は、成分(d)アクリル系表
面調整剤を、ハイソリッド型クリヤー塗料中の樹脂固形
分に対し0.001〜2重量%の量で含有する。
【0045】特に、成分(a)としてカルボキシル基と
カルボン酸エステル基とを有するカルボキシル基含有ア
クリル樹脂を、および成分(c)として水酸基とエポキ
シ基とを有するエポキシ基含有アクリル樹脂を用いた場
合には、耐酸性に特に優れた塗膜を形成するハイソリッ
ド型クリヤー塗料が得られる。この場合、(a)カルボ
キシル基含有アクリル樹脂および(b)カルボキシル基
含有ポリエステル樹脂に含有されるカルボキシル基と、
(c)エポキシ基含有アクリル樹脂に含有されるエポキ
シ基とのモル比が、1/1.4〜1/0.6、好ましく
は1/1.2〜1/0.8となり、かつ(a)カルボキ
シル基含有アクリル樹脂に含有されるカルボキシル基、
またはカルボキシル基結合炭素に隣接する炭素に結合す
るカルボン酸エステル基と、(b)カルボキシル基含有
ポリエステル樹脂および(c)エポキシ基含有アクリル
樹脂に含有される水酸基とのモル比が1/2.0〜1/
0.5、より好ましくは1/1.5〜1/0.7となる
ような量で配合することが好ましい。 (a)カルボキシル基含有アクリル樹脂および(b)カ
ルボキシル基含有ポリエステル樹脂に含有されるカルボ
キシル基と、(c)エポキシ基含有アクリル樹脂に含有
されるエポキシ基とのモル比が、1/0.6を超えると
得られる塗料の硬化性が低下し、1/1.4より小さく
なると塗膜が黄変する。また、(a)カルボキシル基含
有アクリル樹脂に含有されるカルボキシル基、またはカ
ルボキシル基結合炭素に隣接する炭素に結合するカルボ
ン酸エステル基と、(b)カルボキシル基含有ポリエス
テル樹脂および(c)エポキシ基含有アクリル樹脂に含
有される水酸基とのモル比が、1/0.5を超えると得
られる塗料の硬化性が低下し、1/2.0より小さくな
ると水酸基が過剰となるため耐水性が低下する。
【0046】ハイソリッド型クリヤー塗料の硬化機構
は、先ず加熱により(a)カルボキシル基含有アクリル
樹脂中のカルボキシル基とカルボン酸エステル基とが反
応して、(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂中に酸
無水物基が生成し、遊離のモノアルコールが生成する。
生成したモノアルコールは蒸発して系外へ除去される。
そして(a)カルボキシル基含有アクリル樹脂中に生成
した酸無水物基は、(b)カルボキシル基含有ポリエス
テル樹脂および(c)エポキシ基含有アクリル樹脂に含
有される水酸基と反応することにより架橋点を形成し、
再度カルボキシル基を形成する。このカルボキシル基お
よび(b)カルボキシル基含有ポリエステル樹脂中に存
在するカルボキシル基は、(c)エポキシ基含有アクリ
ル樹脂中に存在するエポキシ基と反応することにより架
橋点を形成する。このように(a)〜(c)の3種類の
ポリマーが相互に反応することにより硬化が進行し、高
い密度で架橋した塗膜が形成される。
【0047】本発明に用いるハイソリッド型クリヤー塗
料は、例えば4級アンモニウム塩などのような酸とエポ
キシとのエステル化反応に通常用いられる硬化触媒を更
に含んでいてもよい。この硬化触媒としては、ベンジル
トリエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、テト
ラブチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、サリチ
レートまたはグリコレート、パラトルエンスルホネート
などが例示される。この硬化触媒の添加量は、ハイソリ
ッド型クリヤー塗料中の樹脂固形分に対して、一般に
0.01〜3.0重量%、好ましくは0.1〜1.5重
量%、より好ましくは0.4〜1.2重量%である。硬
化触媒の量が0.01重量%より少ないと、添加に起因
する効果が現れず、3.0重量%を超えて添加すると塗
料の貯蔵安定性が低下する。
【0048】ハイソリッド型クリヤー塗料は、特開平2
−151651号公報などに開示されたスズ系の化合物
を混合していてもよい。このようなスズ系触媒として
は、例えばジメチルスズビス(メチルマレート)、ジメ
チルスズビス(エチルマレート)、ジメチルスズビス
(ブチルマレート)、ジブチルスズビス(ブチルマレー
ト)などが挙げられる。このスズ系触媒の添加量は、ハ
イソリッド型クリヤー塗料中の樹脂固形分に対して、一
般に0.05〜6.0重量%、好ましくは0.1〜4.
0重量%、より好ましくは0.2〜2.0重量%であ
る。スズ系触媒の量が0.05重量%より少ないと貯蔵
安定性が低下し、6.0重量%を超えて添加すると耐候
性が低下する。
【0049】ハイソリッド型クリヤー塗料において、硬
化触媒とスズ系触媒とを併用する場合、硬化触媒とスズ
系触媒との重量比は、1/4〜1/0.2とすることが
好ましい。
【0050】本発明に用いるハイソリッド型クリヤー塗
料は、架橋密度を上げ、耐水性の向上を図るために、ブ
ロック化イソシアネートを更に加えてもよく、あるいは
公知の紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、公知のレ
オロジーコントロール剤や上記以外の表面調整剤を添加
してもよい。更にハイソリッド型クリヤーには、粘度調
整などの目的でアルコール系溶剤、芳香族炭化水素系溶
剤、エステル系溶剤またはケトン系溶剤などの溶剤を使
用してもよい。
【0051】ハイソリッド型メタリックベース塗料 本発明の積層塗膜形成方法において、前記ハイソリッド
型クリヤー塗料と共に使用されるハイソリッド型メタリ
ックベース塗料は、水酸基含有樹脂と、架橋剤としての
メラミン樹脂とを含んでいる。水酸基含有樹脂として
は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチル
メタクリレートなどの水酸基含有エチレン性不飽和モノ
マーを共重合させたアクリル樹脂、水酸基がカルボキシ
ル基より過剰になる組成で縮合されたポリエステル樹脂
などが例示される。これらは一種以上を併用して用いて
もよい。架橋剤として機能し得るメラミン樹脂として
は、ブチル化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂など
が例示される。メラミン樹脂が必須であるが、ベンゾグ
アナミンや尿素を共縮合させたものを用いてもよい。水
酸基含有樹脂とメラミン樹脂との混合比は、重量比で、
80:20〜60:40程度とされる。なお、物性を損
なわない範囲内で、他の樹脂を混合することもできる。
【0052】ハイソリッド型メタリックベース塗料は、
一般に光輝材を含有する。光輝材としては、アルミニウ
ム顔料、着色アルミニウム顔料、アルミナ顔料、マイカ
顔料、パールマイカ顔料、雲母状酸化鉄顔料、鱗片状グ
ラファイト顔料などが例示される。このような光輝材
は、形成された塗膜に、目的とする光輝性を付与するの
に適した量でハイソリッド型メタリックベース塗料に混
合される。
【0053】ハイソリッド型メタリックベース塗料に
は、必要に応じて、有機系のアゾキレート系顔料、不溶
性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔
料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、
ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリ
ノン系顔料、金属錯体顔料などが挙げられ、無機系では
黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸
化チタンなどの着色顔料を含有し、その他に、炭酸カル
シウム、硫酸バリウム、タルクなどの体質顔料を目的に
応じて添加してよい。ハイソリッド型メタリックベース
塗料には、従来と同様に、光輝材や充填材の他に沈殿防
止剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの
各種添加剤を更に添加してもよい。
【0054】積層塗膜の形成方法 本発明の積層塗膜形成方法に用いられるハイソリッド型
メタリックベース塗料のVOCは、塗装粘度に希釈した
時、450〜600g/Lであり、他方、ハイソリッド
型クリヤー塗料のVOCは、塗装粘度に希釈した時、3
50〜550g/Lである。本発明の積層塗膜形成方法
では、メラミン架橋型のハイソリッド型メタリックベー
ス塗料と、ハイソリッド型クリヤー塗料とを2コート1
ベーク塗装法により塗装する。先ず、被塗物表面にハイ
ソリッド型メタリックベース塗料を塗装してメタリック
ベース塗膜を形成する。その塗膜表面にハイソリッド型
クリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成する。所定
の温度で所定時間保持した後、メタリックベース塗膜と
クリヤー塗膜を同時に焼付硬化することにより、積層塗
膜が形成される。
【0055】本発明の方法により自動車車体に積層塗膜
を形成する場合、先ず、ハイソリッド型メタリックベー
ス塗料を、一般にはエアースプレー塗装により、あるい
は通称「ベル」と言われる回転霧化式の静電塗装機等に
より塗装し、所定時間のインターバルの後、クリヤー塗
料を塗装する。
【0056】ハイソリッド型メタリックベース塗料は、
一般に乾燥膜厚が10〜30μmとなる範囲で塗装され
る。乾燥膜厚がこの範囲を超えると、形成されるメタリ
ックベース塗膜の外観品質が低下する。本発明の方法に
おいて、ハイソリッド型メタリックベース塗料は、この
乾燥膜厚を達成するために、2パス以上で塗装されても
よい。
【0057】ハイソリッド型メタリックベース塗料の塗
装後、クリヤー塗料塗装までの間のセッティング時間
は、通常、室温で5〜15分とする。このセッティング
時間が5分より短いと、焼付時に塗膜にワキが生じる。
また、15分を超えても、セッティングによる効果が既
に飽和しており、逆に、塗膜表面に埃などが付着するた
め好ましくない。
【0058】次いで、ハイソリッド型クリヤー塗料を、
一般に、乾燥膜厚が25〜70μmとなる範囲で塗装す
る。乾燥膜厚が70μmより厚くなると、クリヤー塗膜
にタレが発生し、25μmより薄いと、平坦化が十分に
達成されないことから、塗膜の外観品質が低下する。本
発明では、ハイソリッド型クリヤー塗料を、この乾燥膜
厚を達成するために、2パス以上で塗装することができ
る。
【0059】ハイソリッド型クリヤー塗料を塗布後、焼
付硬化までのセッティング時間は、3〜15分程度とす
る。セッティング時間が3分より短いと、塗膜にワキが
発生し易く、15分より長くした場合も、セッティング
による効果が既に飽和しており、逆に、塗膜表面に埃な
どが付着するため好ましくない。
【0060】ハイソリッド型メタリックベース塗膜とハ
イソリッド型クリヤー塗膜のウェット塗膜を共に、10
0〜180℃、好ましくは120〜160℃に加熱し
て、一体的に焼付硬化することによって積層塗膜を形成
する。焼付時間は温度によって異なるが、120〜16
0℃で10〜30分間が適当である。
【0061】
【実施例】以下、実施例および比較例により本発明を具
体的に説明する。実施例1 (1)ハイソリッド型メタリックベース塗料の調製 アクリル樹脂(日本ペイント社製、不揮発分75重量
%、水酸基価100mgKOH/g、酸価30mgKO
H/g、数平均分子量2,000)20重量部、ポリエ
ステル樹脂(日本ペイント社製、不揮発分80重量%、
水酸基価150mgKOH/g、酸価30mgKOH/
g、数平均分子量2,000)30重量部、メラミン樹
脂「サイメル254」(三井サイテック社製、不揮発分
80%)50重量部およびアルミニウム顔料「アルペー
ストAl60−600」(東洋アルミニウム社製、固形
分65重量%)10重量部を撹拌混合してハイソリッド
型メタリックベース塗料を調製した。次いで、このメタ
リックベース塗料を、芳香族炭化水素系溶剤とアルコー
ル系溶剤を主成分とするシンナーにより、塗装粘度(フ
ォードカップNo.3、20℃で20秒)に希釈した。
希釈されたメタリックベース塗料を0.5±0.1g精
秤した後、110±5℃で60分間乾燥し、その後、塗
料の質量を再度精秤した。不揮発分[=(乾燥後の塗料の
質量)/(乾燥前の塗料の質量)×100]は、49.0重量
%であり、VOCは525g/Lであった。
【0062】(2)ハイソリッド型クリヤー塗料の調製 (a)カルボキシル基含有アクリル樹脂の合成 温度計、撹拌機、冷却管、窒素導入管および滴下ロート
を備えた3Lの反応槽に、キシレン700重量部、ソル
ベッソ100(エッソ社製芳香族炭化水素系溶剤)35
0重量部を仕込み、130℃に昇温して保持した。スチ
レンモノマー300重量部、メタクリル酸2−エチルヘ
キシル109重量部、アクリル酸イソブチル325重量
部、アクリル酸26重量部、無水マレイン酸240重量
部、プロピレングリコールモノメチエーテルアセテート
300重量部、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサ
ノエイト150重量部およびキシレン150重量部から
なる溶液を別途調製し、それを滴下ロートから上記反応
槽内に3時間かけて滴下した。滴下終了後、130℃で
30分間保持した後、t−ブチルパーオキシ2−エチル
ヘキサノエイト20重量部およびキシレン20重量部か
らなる溶液を30分間で滴下した。滴下終了後、さらに
130℃にて1時間反応を継続させた後、溶剤を1,1
00重量部除去して、数平均分子量2,000のアクリ
ル系ポリ酸無水物を含む不揮発分70重量%のワニスを
調製した。
【0063】得られたワニス1,590重量部に、メタ
ノール125重量部を加え、70℃で23時間反応させ
ることにより、酸価158mgKOH/g(固形分)の
カルボキシル基含有アクリル樹脂を得た。得られたカル
ボキシル基含有アクリル樹脂について、赤外線吸収スペ
クトルを測定し、酸無水物基の吸収(1785cm-1
が消失していることを確認した。
【0064】(b)カルボキシル基含有ポリエステル樹脂
の合成 温度計、撹拌機、冷却管、窒素導入管を備えた3Lの反
応槽に、3−エトキシプロピオン酸エチル278重量
部、トリメチロールプロパン268重量部、ε−カプロ
ラクトン228重量部、酸化ジブチルスズ0.1重量部
を仕込み、150℃に昇温して保持した。150℃で2
時間保持した後、加温して溶解したヘキサヒドロ無水フ
タル酸616重量部を加え、150℃で1時間保持する
ことにより、数平均分子量800、重量平均分子量/数
平均分子量=1.18、酸価202mgKOH/g(固
形分)および水酸基価101mgKOH/g(固形分)
のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を含む不揮発分
80重量%のワニスを得た。
【0065】(c)エポキシ基含有アクリル樹脂の合成 温度計、撹拌機、冷却管、窒素導入管および滴下ロート
を備えた2Lの反応槽に、キシレン250重量部、プロ
ピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200
重量部を仕込み、130℃に昇温して保持した。メタク
リル酸グリシジル450重量部、メタクリル酸イソボル
ニル236重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル6
4重量部、t−ブチルスチレン250重量部、t−ブチ
ルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト110重量部お
よびキシレン150重量部からなる溶液を別途調製し、
それを滴下ロートから上記反応槽内に3時間かけて滴下
した。この間、溶液温度は130℃に保持した。滴下終
了後、130℃で30分間保持した後、ここへ、t−ブ
チルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト10重量部お
よびキシレン50重量部からなる溶液を30分間で滴下
した。滴下終了後、さらに130℃で1時間反応を継続
さた後、溶剤を270重量部除去することにより、数平
均分子量2,200、エポキシ当量316および水酸基
価25mgKOH/g(固形分)のアクリル系エポキシ
基含有アクリル樹脂を含む不揮発分72重量%のワニス
を得た。
【0066】(d)アクリル系表面調整剤1の合成 温度計、撹拌機、冷却管、窒素導入管および滴下ロート
を備えた2Lの反応槽に、キシレン70部、n−ブタノ
ール30部を仕込み、110℃に昇温して保持した。ア
クリル酸2−エチルヘキシル40部、アクリル酸n−ブ
チル40部およびアクリル酸ジエチレングリコールモノ
エチルエーテル20部を滴下ロートに仕込んだ。この滴
下ロート内容物と、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘ
キサノエイト2.0重量部およびキシレン3.0重量部
からなる混合溶液とを同時に、3時間かけて前記反応槽
中へ滴下した。滴下終了後、さらに、t−ブチルパーオ
キシ2−エチルヘキサノエイト1.0重量部およびキシ
レン10重量部からなる混合溶液を、60分間で滴下に
より添加した。その後、110℃において更に90分間
反応を継続させることにより、アクリル系表面調整剤1
を得た。このアクリル系表面調整剤1の分子量Mwを、
GPCによりスチレン標準で測定したところ、8,00
0であった。固形分は50%であった。
【0067】得られたアクリル系表面調整剤1のHLB
値を、川上式による計算方法:
【数3】HLB値=7+11.7LOG(Mw/Mo) (式中、活性剤親水基の分子量Mwは1,600であ
り、活性剤疎水基の分子量Moは6,400であっ
た。)に従って算出した。結果は、HLB=0であっ
た。
【0068】上記合成例で得られた、(a)カルボキシル
基含有アクリル樹脂ワニス、(b)カルボキシル基含有ポ
リエステル樹脂ワニスおよび(c)エポキシ基含有アクリ
ル樹脂ワニスを、それぞれ不揮発分重量比で24:2
5:51となるように混合した。この混合物と、テトラ
ブチルアンモニウムブロミド硬化触媒0.5重量部、ジ
ブチルスズビス(ブチルマレート)触媒0.5重量部、
紫外線吸収剤「チヌビン900」(チバガイギー社製)
2重量部、光安定剤「サノールLS−440」(三共社
製)1重量部および先の調製例で得られた(d)アクリル
系表面調整剤1 1.0重量部とを、ディスパーを用い
撹拌しながら混合することにより、本発明のハイソリッ
ド型クリヤー塗料を得た。得られた塗料を3−エトキシ
プロピオン酸エチル/S−150(エッソ社製)=1/
1からなるシンナーを用い、塗装粘度(フォードカップ
NO.4、20℃で30秒)に希釈した。希釈された塗
料0.5±0.1gを精秤し、110±5℃で60分乾
燥した後、塗料の質量を再度精秤した。乾燥前および乾
燥後の塗料の質量から算出された不揮発分は、56.0
重量%であり、VOCは440g/lであった。希釈後
の塗料の表面張力をダイノメータ(ビックケミージャパ
ン社製)により白金リング引き上げ式で測定したとこ
ろ、35.0dyne/cmであった。
【0069】(3)ハイソリッド型クリヤー塗料につい
ての評価 塗料の起泡性および消泡性試験(ワキ防止機能評価) 希釈後のハイソリッド型クリヤー塗料の起泡性を、T.
K,HOMO DISPER(特殊機化工業社製)を用
いて、1/5リッターの内面コート缶(高さ:75m
m、直径:75mm)に150mL充填し、直径:40
mm、高さ:15mmおよび羽根数:12枚の交互櫛形
状羽根を用いて、1,000rpmにて5分間攪拌し
た。攪拌を停止し、静置1分後のかさ比重を比重カップ
により測定し、その値を下式に代入して、起泡性(%)
を算出した。
【数4】起泡性(%)=(攪拌後1分間静置後の液体の
かさ比重/攪拌前の液体のかさ比重)×100 算出された起泡性は96.0%であった。
【0070】上記攪拌処理後、攪拌を停止し、静置5分
後のかさ比重を上記と同様にして測定した。得られた値
を用いて下式により消泡性(%)を算出した。
【数5】消泡性(%)=(攪拌後5分間静置後の液体の
かさ比重/攪拌前の液体のかさ比重)×100 算出された消泡性は、98.0%であった。
【0071】白濁度試験 ハイソリッド型クリヤー塗料をガラス板上に、乾燥膜厚
が40〜60μmとなるように塗布し、セッティング
後、140℃で18分キープ焼付けした。焼付硬化後の
ハイソリッド型クリヤー塗膜の白濁度を目視により評価
し、以下の判定基準により判断した。 <判断基準> ×:著しい白濁 △:半透明 〇△:わずかに白濁 〇:透明
【0072】クリヤー塗膜のハジキ性試験 希釈されたハイソリッド型クリヤー塗料400mLを5
00mLガラスビーカーに入れた後、マグネチックスタ
ーラー上にセットし、テフロン回転子を用いて、24時
間攪拌した。攪拌終了後、スパチュラにて渦の中心部よ
り100mLサンプリングし、300×400mm/m
mの中塗水研パネルに塗装した。塗装後、10分間のセ
ッティングし、その後140℃で18分間キープ焼付し
た。焼付後、塗膜表面のハジキ・ヘコミ点数を目視によ
り計測したところ、0個であった。
【0073】(4)塗膜形成方法 厚さ0.8mmのりん酸処理鋼板に、カチオン電着塗料
および中塗り塗料がそれぞれ乾燥膜厚25μmおよび4
0μmとなるように塗装された試験板(200×300
mm/mmパネルを使用)に、静電塗装機「ミニベル」
(ランズバーグゲマ社製)により、霧化圧5kg/cm
2で先に調製したハイソリッド型メタリックベース塗料
を塗装した。室温で1.5分間放置後、上記ハイソリッ
ド型メタリックベース塗料を、合計の乾燥膜厚が14〜
18μmとなるように再度塗装した。その後、約4分間
セッティングすることによって、メタリックベース塗膜
を形成した。この塗装は、試験板が水平状態と垂直状態
の2種類について行った。このメタリックベース塗膜上
に、先に調製したハイソリッド型クリヤー塗料を、静電
塗装機「ミニベル」(ランズバーグゲマ社製)により、
霧化圧5kg/cm2で乾燥膜厚が30μm前後と50
μm前後になるように2種類に塗り分けて塗装し、約7
分間セッティング後、メタリックベース塗膜とクリヤー
塗膜を同時に140℃で25分間焼付けることにより、
積層塗膜を形成した。得られた積層塗膜のワキ性を目視
観察により試験した。ワキの個数は10個だった。
【0074】(5)積層塗膜の表面平滑性試験 また、この積層塗膜表面のユズ肌の程度を、表面平滑性
の評価として、下記判断基準により目視評価した。 <判断基準> 5;極めて平滑である 4;平滑である 3;ややラウンドがある 2;ラウンドが大きい 1;ラウンドが極めて大きい 結果を表1に示す。
【0075】実施例2〜8 アクリル系表面調整剤2〜8をそれぞれ、表1中の特性
(重量平均分子量MwおよびHLB値)を有するように
予め調製した。本実施例2〜8で使用したハイソリッド
型クリヤー塗料は、これらアクリル系表面調整剤2〜8
をそれぞれ表1に示す配合量で用いたこと以外は、実施
例1と同様にして調製した。実施例1で用いたハイソリ
ッド型メタリックベース塗料と、各ハイソリッド型クリ
ヤー塗料とをそれぞれ用いて、実施例1と同様に塗装・
焼付処理を行った後、得られた積層塗膜について、ハジ
キ性および表面平滑度を評価した。結果を表1にまとめ
る。
【0076】
【表1】 表1中、「KF−69」は、信越シリコーン社製シリコ
ーン系添加剤を示し、「アクリル酸ポリプロピレングリ
コールモノエチルエーテル1」は、プロピレン鎖を{−
CH2−CH(CH3)−O−}nで表した場合に、n=
2の化合物を示し、「アクリル酸ポリプロピレングリコ
ールモノエチルエーテル2」は、n=3の化合物を示
し、および「アクリル酸ポリプロピレングリコールモノ
エチルエーテル3」は、n=4の化合物を示す。
【0077】得られた各ハイソリッド型クリヤー塗料の
不揮発分およびVOCを、実施例1と同様に算出した。
不揮発分は、56.0〜57.5重量%であり、VOC
は、440〜450g/Lの範囲であった。
【0078】比較例1 アクリル系表面調整剤を含まないこと以外は、ハイソリ
ッド型クリヤー塗料を実施例1と同様にして調製した。
得られたハイソリッド型クリヤー塗料の不揮発分および
VOCを、実施例1と同様に算出した。不揮発分は、5
6.0重量%であり、VOCは440g/lであった。
ハイソリッド型クリヤー塗料についての表面張力および
ワキ防止機能評価結果(起泡性および消泡性)、塗膜の
ワキ性および白濁度についての試験結果を表2に示す。
さらに、実施例1で用いたハイソリッド型メタリックベ
ース塗料と、このハイソリッド型クリヤー塗料とを用い
て、実施例1と同様に塗装・焼付処理を行った後、得ら
れた積層塗膜について、ハジキ性および表面平滑度を評
価した。結果を表2にまとめる。
【0079】比較例2〜6 アクリル系表面調整剤9〜13をそれぞれ、表2中の特
性(重量平均分子量MwおよびHLB値)を有するよう
に予め調製した。比較例1〜6で使用したハイソリッド
型クリヤー塗料は、これらアクリル系表面調整剤9〜1
3をそれぞれ表2に示す配合量で用いたこと以外は、実
施例1と同様にして調製した。得られた各ハイソリッド
型クリヤー塗料の不揮発分およびVOCを、実施例1と
同様に算出した。不揮発分は、56.0〜57.5重量
%であり、VOCは、440〜450g/Lの範囲であ
った。ハイソリッド型クリヤー塗料についての表面張力
およびワキ防止機能評価結果(起泡性および消泡性)、
塗膜のワキ性および白濁度を表2に示す。実施例1で用
いたハイソリッド型メタリックベース塗料と、各ハイソ
リッド型クリヤー塗料とをそれぞれ用いて、実施例1と
同様に塗装・焼付処理を行った後、得られた積層塗膜に
ついて、ハジキ性および表面平滑度を評価した。結果を
表2にまとめる。
【0080】
【表2】
【0081】表1および表2に示す結果より、本発明に
係る実施例1〜8のハイソリッド型クリヤー塗料を用い
た積層塗膜は、優れたワキ防止機能および表面平滑性を
有するが、各比較例では、ワキ防止機能が低く、塗膜表
面の平滑性、塗膜の濁り等の不具合を有することが分か
る。
【0082】
【発明の効果】本発明の塗膜形成方法では、ハイソリッ
ド型メタリックベース塗料とハイソリッド型クリヤー塗
料の組み合わせを使用することから、ローソリッド型メ
タリックベース塗料を使用する場合に比べて、メタリッ
クベース塗膜の厚膜化のみならず、積層塗膜の合計膜厚
をも厚くすることができる。本発明で使用されるハイソ
リッド型クリヤー塗料は、ワキ、ピン等の外観異常が誘
発されることなく、光沢および表面平滑性に優れた塗膜
を形成することができる。
【0083】メタリックベース塗料とクリヤー塗料とに
含有される樹脂系がそれぞれ異なるため、両塗膜間での
「混ざり」が抑制でき、外観に優れた積層塗膜を提供す
ることができる。本発明の積層塗膜形成方法では、2コ
ート1ベーク塗装法を適用し、さらにハイソリッド型ク
リヤー塗料を用いることから、有機溶剤の排出量が抑制
できかつ塗膜の厚膜化が達成できる。形成される積層塗
膜は、耐酸性雨性にも優れている。
【0084】本発明の塗膜形成方法は、自動車の上塗り
塗装に好適な、高品質の塗膜外観をもつ積層塗膜を確実
に形成することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 桑原 靖 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 (72)発明者 則武 義幸 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 石井 正彦 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 日比 誠司 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 4D075 AE03 CB04 CB13 DA06 DB02 DC12 EA08 EA43 EB22 EB35 EB45 EB52 EB55 EB56 EC35

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)塗装粘度に希釈したときにVOC
    450〜600g/Lを有するハイソリッド型メタリッ
    クベース塗料を被塗物の表面に塗装してメタリックベー
    ス塗膜を形成する工程、 (2)塗装粘度に希釈したときにVOC350〜550
    g/Lを有するハイソリッド型クリヤー塗料を、前記メ
    タリックベース塗膜上に塗布してハイソリッド型クリヤ
    ー塗膜を形成する工程、および(3)ハイソリッド型メ
    タリックベース塗膜とハイソリッド型クリヤー塗膜を同
    時に焼付硬化する工程を含む、ハイソリッド型メタリッ
    クベース塗膜とハイソリッド型クリヤー塗膜から成る積
    層塗膜の形成方法において、前記ハイソリッド型メタリ
    ックベース塗料が、架橋剤としてメラミン樹脂を含有
    し、および前記ハイソリッド型クリヤー塗料が、 (a)カルボキシル基含有アクリル樹脂、 (b)カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、 (c)エポキシ基含有アクリル樹脂、および(d)HL
    B値が0〜5であって、重量平均分子量が8,000〜
    30,000であるアクリル系表面調整剤を含有しかつ
    表面張力25.0〜35.0dyne/cmである、積
    層塗膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 ハイソリッド型クリヤー塗料が、成分
    (d)アクリル系表面調整剤を、ハイソリッド型クリヤ
    ー塗料中の樹脂固形分に対し0.001〜2重量%の量
    で含有している請求項1記載の積層塗膜の形成方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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WO2022107847A1 (ja) * 2020-11-18 2022-05-27 関西ペイント株式会社 高固形分塗料組成物及び複層塗膜形成方法

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