JP3683125B2 - 塗膜形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2コート1ベイク塗装法を用いて、光沢及び外観に優れた塗膜を形成する方法に関する。本発明の塗膜形成方法は、自動車の上塗り塗装あるいはコイル塗装などに最適に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
自動車の上塗り塗装として、従来よりメタリック塗装が広く用いられている。このメタリック塗装は、一般に2コート1ベイク塗装法によって塗装されている。
すなわち、アクリル樹脂やポリエステル樹脂などの水酸基含有ポリマーとメラミン樹脂とを主成分としアルミ顔料などを光輝材として含有するベース塗料を先ず塗装する。そして所定時間のセッティングの後、その表面にアクリル樹脂やポリエステル樹脂などの水酸基含有ポリマーとメラミン樹脂とを主成分とするクリヤ塗料を塗装する。その後140℃で30分程度加熱することにより、ベース塗膜とクリヤ塗膜を一体的に焼付硬化させる。こうして得られるメタリック塗膜は、光沢や硬度及び耐水性などに比較的優れ、自動車の上塗り塗装として広く用いられている。
【0003】
一方、自動車の上塗り塗装としては、著しく高い外観品質を与えることが求められ、膜厚の向上、表面光沢の向上、表面平滑性の向上などがさらに求められている。
ところが従来のローソリッド型のメラミン樹脂を架橋剤とするクリヤ塗料は、一般に塗装時の不揮発分が30〜50重量%と低い。そのため塗装時あるいは焼付硬化時に揮散する有機溶剤量が多く、その処理工数が多大となっている。また厚膜とする場合には、一度に厚塗りするとタレの問題があるために数回に分けて塗装せざるを得ず、塗装工数が多大となるという問題もある。
【0004】
また表面光沢や平滑性を向上させるには、レベリング剤などの添加剤を添加することが従来より行われている。しかし添加剤に頼る方法では本質的な改善には至らず、また、添加剤の添加によって塗料の安定性や作業性が損なわれるという不具合が生じる場合がある。
さらに、従来のメラミン樹脂を架橋剤として硬化した塗膜は、トリアジン環の存在により耐酸性が高いとはいえず、近年の酸性雨に対する耐性の向上も求められている。
【0005】
そこで特開平8−259667号公報には、カルボキシル基含有樹脂とポリエポキシドとを含む樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂液は高濃度で低粘度となるために、この樹脂組成物を用いた塗料はハイソリッド塗料となる。したがってこのハイソリッド塗料を用いれば、揮散する有機溶剤量を抑制することができ、一度の塗装工程で厚膜の塗膜を形成することができる。また塗膜中にトリアジン環が存在しないので、耐酸性雨性にも優れている。すなわち、このハイソリッド塗料は、自動車の上塗り用塗料として最適である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記した樹脂組成物からハイソリッド型ベース塗料とハイソリッド型クリヤ塗料を製造し、従来の2コート1ベイク塗装法で塗装すると、一度で厚膜に塗装することはできるものの、表面平滑性及び光沢が不足し、自動車の上塗り塗装としては外観品質に劣るという不具合があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、特開平8−259667号公報に開示されたような樹脂組成物を含むハイソリッド型クリヤ塗料を用いて2コート1ベイク塗装法により高い外観品質を有する塗膜を形成することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の塗膜形成方法の特徴は、架橋剤としてメラミン樹脂を含み、不揮発分が60〜70重量%の状態で、ずり速度が0.1/秒のときの粘度が2500〜10000ポイズ(25℃)であり、塗装粘度に希釈した希釈塗料におけるVOCが700〜800であるローソリッド型ベース塗料を塗布してウエットベース塗膜を形成する行程と、該ウエットベース塗膜を所定時間放置した後、該ウエットベース塗膜上に、カルボキシル基含有樹脂とポリエポキシドを含み、不揮発分が55〜75重量%の状態で、ずり速度が0.1/秒のときの粘度が20〜100ポイズ(25℃)であり、塗装粘度に希釈した希釈塗料におけるVOCが400〜500であるハイソリッド型クリヤ塗料を、該ウエットベース塗膜表面に塗布してウエットクリヤ塗膜を形成する行程と、該ウエットベース塗膜と該ウエットクリヤ塗膜とを同時に焼付硬化させる行程とよりなることにある。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の塗膜形成方法では、メラミン架橋型のローソリッド型ベース塗料と、ハイソリッド型クリヤ塗料とを2コート1ベイク塗装法により塗装している。つまり先ずローソリッド型ベース塗料を塗布し、所定時間セッティングの後、ウェットベース塗膜の表面にハイソリッド型クリヤ塗料を塗布する。そして所定の温度で所定時間保持することにより、ベース塗膜とクリヤ塗膜を一体的に焼付硬化させる。
【0010】
すなわち本発明の塗膜形成方法では、先に形成されたウェットベース塗膜は、セッティング中の溶剤揮散により不揮発分が増大し、ハイソリッド型ベース塗料を塗装した場合に比べてウェットベース塗膜の粘度が高くなっている。そのためハイソリッド型クリヤ塗料をウェットベース塗膜上に塗装した際、塗膜界面における両塗料の混ざりが生じにくく、塗膜外観の低下が抑制され、光沢及び表面平滑性に優れた塗膜が形成されると考えられる。また異なった樹脂成分のベース塗料とクリヤ塗料を組み合わせるため両塗膜の混ざりが抑制できる。この点からも良好な塗膜外観を形成できると考える。
【0011】
ところで自動車用上塗り塗装は、高品質とするためにスプレー塗装によって行われるのが通常である。そしてウェットベース塗膜表面にクリヤ塗料をスプレー塗装すると、クリヤ塗料の塗粒がウェットベース塗膜に衝突する際に、ウェットベース塗膜には剪断応力が作用する。したがってウェットベース塗膜は、その剪断応力により粘度が変化し、一般的には剪断応力により粘度が低下する。またスプレー塗装されている塗料においても、飛行中の塗粒には剪断応力が作用しており、塗着した瞬間にも剪断応力が作用する。
【0012】
一方、ウエットベース塗膜を形成するために用いられるローソリッド型ベース塗料を自動車車体に塗装する場合には、一般にエアースプレー塗装、あるいは通称「ベル」と言われる回転霧化式の静電塗装機等により塗装され、所定時間のインターバルの後にクリヤ塗料が塗装される。
また、一般に塗膜外観は、ずり速度が0.1/秒での粘度に支配されると言われていることより、本発明の塗膜形成方法では、上述したようにクリヤ塗料の塗粒がウェットベース塗膜に衝突する時のウエットベース塗膜の粘度、すなわちセッティングにより溶剤が揮散し、不揮発分が増大した状態である不揮発分が60〜70重量%の状態で、ずり速度が0.1/秒の時のウエットベース塗料の粘度に着眼した。尚、ずり速度が0.1/秒のときの粘度は、円錐円板型粘度計を用いて定常流測定方法などを用いて測定することができる。
【0013】
本発明の塗膜形成方法に用いられるローソリッド型ベース塗料は、不揮発分が60〜70重量%の状態で、ずり速度が0.1/秒のときの粘度が2500〜10000ポイズ(25℃)であることが重要である。これによりクリヤ塗料のスプレー塗装による程度の剪断応力が作用した場合にも粘度が高いため、上述したように両塗料の混ざりによる塗膜表面の荒れが一層抑制されると考えられる。
【0014】
ローソリッド型ベース塗料の不揮発分が60〜70重量%の状態で、ずり速度が0.1/秒のときの粘度が2500ポイズ(25℃)より低くなると、ウェットベース塗膜とウェットクリヤ塗膜の界面において両塗料が混ざりやすくなり、塗膜表面に荒れが生じる。また10000ポイズ(25℃)より高くなると、ウエットベース塗膜の平滑化が困難となり、外観が低下する。
【0015】
また、ローソリッド型ベース塗料を塗装粘度に希釈し、希釈塗料におけるVOCが700〜800であるローソリッド型ベース塗料を用いることが好ましく、ローソリッド型ベース塗料の塗装粘度におけるVOCが700未満では、ウェットベース塗膜のフロー性が低下し塗膜表面に荒れが生じる。800を超えると塗装粘度におけるベース塗料中の不揮発分が低くなりすぎて、所望の膜厚の確保が困難となる。
【0016】
尚、VOCとは、Volatite Organic Compound の略であり、希釈塗料の不揮発分と希釈塗料比重を実測し、下記式に代入することよって算出される値をいう。
一般に、VOCが高いと、塗料中の不揮発分が少なくなり、VOCが低いと不揮発分が多くなると言うことである。
VOC=1000×希釈塗料比重×(1−希釈塗料不揮発分/100)
また、本発明の塗膜形成方法では、上述したようにクリヤ塗料の塗粒がウェットベース塗膜に衝突する時のクリヤ塗膜の粘度、すなわちクリヤ塗料の不揮発分が55〜75重量%の状態で、ずり速度が0.1/秒の時のクリヤ塗料の粘度にも着眼した。
【0017】
その結果、本発明の塗膜形成方法に用いられるハイソリッド型クリヤ塗料は、不揮発分が55〜75重量%の状態で、ずり速度が0.1/秒のときの粘度が20〜100ポイズ(25℃)であることが重要であると分かった。これによりスプレー塗装時(剪断応力が作用したとき)には高固形分であっても粘度が低く、その粘度が低い状態でウェットベース塗膜表面に塗布されるため、塗着後のフロー性に優れ表面平滑性が向上すると考えられる。
【0018】
ハイソリッド型クリヤ塗料の不揮発分が55〜75重量%でのずり速度が0.1/秒のときの粘度が20ポイズ(25℃)より低くなるとタレが生じやすくなり、100ポイズ(25℃)より高くなると形成される塗膜の表面平滑性が低下する。
また、ハイソリッド型クリヤ塗料を、塗装粘度に希釈した希釈塗料におけるVOCが400〜500であるハイソリッド型クリヤ塗料を用いることが好ましく、ハイソリッド型クリヤ塗料の塗装粘度におけるVOCが、400未満では形成される塗膜の表面平滑性が低下し、500を超えると所望の膜厚の確保が困難となる。
【0019】
以下、本発明の構成要件について詳述する。
本発明に用いられるローソリッド型ベース塗料は、従来のメラミン架橋型のベース塗料と同様のものであり、樹脂成分として水酸基をもつ樹脂と架橋剤となるメラミン樹脂とを含んでいる。水酸基をもつ樹脂としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを共重合させたアクリル樹脂、水酸基がカルボキシル基より過剰になる組成で縮合されたポリエステル樹脂などが例示される。またメラミン樹脂としては、ブチル化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂などが例示される。メラミン樹脂が必須であるが、ベンゾグアナミンや尿素を共縮合させたものを用いてもよい。また水酸基をもつ樹脂とメラミン樹脂との混合比率は、重量比で水酸基をもつ樹脂:メラミン樹脂=80:20〜60:40程度とされる。なお、物性を損なわない範囲内で、他の樹脂を混合することもできる。
【0020】
ローソリッド型ベース塗料は、上記した樹脂成分を有機溶剤に溶解した樹脂液のみで用いることもできるが、メタリック塗装の場合には一般に光輝材が含有される。またソリッドカラー塗装の場合には一般に充填材が含有される。光輝材としては、アルミ顔料、マイカ顔料、パールマイカ顔料、雲母状酸化鉄顔料などが例示され、目的とする光輝性に応じた量で混合される。また充填材としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルクなどの体質顔料を目的に応じて用いることができる。さらに従来と同様に、光輝材や充填材の他に沈殿防止剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤、あるいは有機顔料や無機顔料などの着色材を添加してもよい。
【0021】
本発明に用いられるハイソリッド型クリヤ塗料としては、樹脂成分としてカルボキシル基含有樹脂とポリエポキシドを含むものが用いられ、加熱によるカルボキシル基とエポキシ基との反応により形成されるエステル結合を有しているものが好適に用いられる。
上記カルボキシル基含有樹脂としては、(a)1分子中に平均2個以上のカルボキシル基をもち、酸価5〜300 mgKOH/g(固形分)及び数平均分子量500〜8000を有するアクリル系ポリカルボン酸10〜70重量部と、(b)3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールと酸無水物とを反応させて得られる酸価50〜350 mgKOH/g(固形分)、数平均分子量400〜3500、及び重量平均分子量/数平均分子量が1.8以下のポリエステルポリカルボン酸5〜70重量部とからなるものを用いることが望ましい。
【0022】
上記(a)のアクリル系ポリカルボン酸としては、(1)アクリル系ポリ酸無水物と(2)モノアルコールとを反応させることにより得られるカルボキシル基とカルボン酸エステル基とが隣接した炭素に結合するアクリル系ポリカルボン酸を用いることが望ましい。
(a)−(1)アクリル系ポリ酸無水物は、酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマー15〜40重量%、好ましくは15〜35重量%と、酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー60〜85重量%、好ましくは65〜85重量%とを共重合させることにより得られる。酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマーの量が15重量%未満では硬化性が不足し、40重量%を超えると塗膜が固く脆くなりすぎて耐候性が不足する。
【0023】
酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが例示される。
また酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーは、酸無水物基に悪影響を与えないエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限されないが、エチレン性不飽和結合を一つ有する炭素数3〜15、特に3〜12のモノマーを用いることが好ましい。
【0024】
酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーは、樹脂どうしの相溶性を向上させるために、2種以上を併用することも好ましい。
このような酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、各種の(メタ)アクリル酸エステル、シェル社製のVeoVa-9及びVeoVa-10などのバーサテイック酸グリシジルエステル等が挙げられる。スチレン又はスチレン誘導体を用いる場合には、全モノマー中に5〜40重量%の範囲で用いることが望ましい。
【0025】
更に、酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸のようなカルボキシル基を有するモノマー、及び水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーと酸無水物基含有化合物との付加物等を用いることもできる。中でも、エチレン性不飽和基とカルボキシル基との間に炭素数5〜20個程度分のスペーサー部分を有する長鎖のカルボキシル基含有モノマーを用いれば、塗膜の耐擦傷性が向上するため特に好ましい。
【0026】
酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマーと、酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとの共重合により得られる(a)−(1)アクリル系ポリ酸無水物の数平均分子量は、500〜8000、また800〜6000、特に1500〜4000とすることが好ましい。数平均分子量が8000を超えると樹脂どうしの相溶性が低下して塗膜の外観品質が低下し、500未満であると硬化性が不充分となる。また得られるポリマーは、1分子中に平均で少なくとも2個、好ましくは2〜15個の酸無水物基を有することが望ましい。酸無水物基が2個未満では硬化性に不足し、15個を超えると塗膜が固く脆くなりすぎて耐候性が不足する。
【0027】
(a)−(2)モノアルコールとしては、炭素数が1〜12個、特に1〜8個のものを用いることが好ましい。これにより、上記したアクリル系ポリ酸無水物との反応時にアルコールが揮発しやすく、酸無水物基を再生するのに好適となるからである。
このようなモノアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、フルフリルアルコール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、アセトール、アリルアルコール、プロパルギルアルコールなどが例示される。
【0028】
(a)−(1)アクリル系ポリ酸無水物と(a)−(2)モノアルコールとを反応させて(a)アクリル系ポリカルボン酸を合成する場合、酸無水物基と水酸基とがモル比で1/10〜1/1、好ましくは1/5〜1/1、より好ましくは1/2〜1/1となる割合の量とする。モル比が1/10より小さいと過剰のアルコールによって硬化時のワキの原因となり、1/1を超えると未反応の酸無水物基の残存により貯蔵安定性が悪くなる。
【0029】
上記反応により得られるカルボキシル基とカルボン酸エステル基とを有する(a)アクリル系ポリカルボン酸は、酸価が5〜300 mgKOH/g、特に50〜250 mgKOH/gであることが好ましい。酸価が5 mgKOH/gより低くなると硬化性が不足し、300 mgKOH/gより高くなると貯蔵安定性が不良となる。
(a)アクリル系ポリカルボン酸は、樹脂組成物中の全不揮発分を基準として10〜70重量%、好ましくは15〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%の量で用いられる。この配合量が10重量%未満では得られる塗膜の耐候性が低下し、70重量%を超えると塗膜が固くなりすぎる。
【0030】
カルボキシル基含有樹脂のもう一つの成分である(b)ポリエステルポリカルボン酸は、3個以上の水酸基を有する(1)ポリエステルポリオールと(2)酸無水物とをハーフエステル化反応させて得られる。なお、ポリエステルポリオールとはエステル結合鎖を2個以上有する多価アルコールをいい、酸無水物基と反応して一分子あたり2個以上の酸官能性及び下記の特性を有するポリエステルポリカルボン酸となる。
【0031】
このような(b)−(1)ポリエステルポリオールは、少なくとも3個の水酸基を有する炭素数3〜16までの低分子多価アルコール、あるいは該低分子多価アルコールにε−カプロラクロンなどのラクトン化合物を付加させて鎖延長することで合成することもできる。低分子多価アルコールに線状の脂肪族基を導入することにより、得られる塗膜に可撓性が付与され耐衝撃性が向上する。
【0032】
用いられる低分子多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン及びこれらの混合物が例示される。
好ましく用いられる低分子多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびこれらとラクトン化合物との付加物等が例示される。またラクトン化合物としては、ε−カプロラクロン、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン及びγ−ブチロラクトンなどが挙げられるが、ε−カプロラクロン、γ−バレロラクトン及びγ−ブチロラクトンが好適である。
【0033】
(b)−(2)酸無水物としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水コハク酸などが例示される。
(b)−(1)ポリエステルポリオールと(b)−(2)酸無水物とのハーフエステル化反応は、室温〜150℃、常圧のような通常の反応条件において行うことができる。但し、ポリエステルポリオールの水酸基の全てをカルボキシル基に変性する必要はなく、水酸基を残してもよい。上述の方法によれば、分子量分布がシャープとなるので、さらなるハイソリッド化が可能となり、耐候性及び耐水性に優れた塗膜を形成することができる。
【0034】
上記した反応により得られる(b)ポリエステルポリカルボン酸は、酸価が50〜350mgKOH/g(固形分)、好ましくは100〜300mgKOH/g(固形分)、より好ましくは150〜250mgKOH/g(固形分)であり、数平均分子量は400〜3500、好ましくは500〜2500、より好ましくは700〜2000、であり、重量平均分子量/数平均分子量が1.8以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.35以下である。
【0035】
酸価が350を超えると樹脂粘度が高くなりすぎて塗料不揮発分濃度の低下を招き、酸価が50より低くなると塗料の硬化性が不足する。また分子量が3500を超えると樹脂粘度が高くなりすぎて塗装粘度に希釈された希釈塗料の不揮発分の低下を招き、400より小さくなると硬化性が不足する。さらに重量平均分子量/数平均分子量が1.8を超えると、塗膜の耐水性及び耐候性が低下する。
【0036】
(b)ポリエステルポリカルボン酸は、分子中に水酸基を有することで、塗膜表面にカルボキシル基と水酸基が同時に提供されるため、例えばリコート時の密着性が向上する。この場合ポリエステルポリカルボン酸の水酸基価を150 mgKOH/g(固形分)以下、好ましくは5〜100 mgKOH/g(固形分)、より好ましくは10〜80mgKOH/g(固形分)とするのがよい。水酸基価が150 mgKOH/g(固形分)を超えると耐水性が低下するようになる。
【0037】
水酸基とカルボキシル基とを有する(b)ポリエステルカルボン酸は、後述するように(c)ポリエポキシド及び(a)アクリル系ポリカルボン酸の両方と反応するため、より強固な塗膜を形成することができる。したがって(b)ポリエステルカルボン酸は、1分子中に平均0.1個以上の水酸基を有することが望ましい。
【0038】
このようなポリエステルカルボン酸とするには、(b)−(1)ポリエステルポリオールの水酸基のモル量に対する(b)−(2)酸無水物の酸無水物基のモル量を0.2〜1.0倍、特に0.5〜0.9倍とすることが好ましい。この比率が0.2倍未満では塗料の硬化性が不足する。
(b)ポリエステルポリカルボン酸成分は、塗料中の全不揮発分の重量を基準として5〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%の量で配合することができる。(b)ポリエステルポリカルボン酸の量が5重量%未満では、塗料の不揮発分濃度が上がらず、70重量%を超えると塗膜の耐候性が低下する。
【0039】
本発明に用いられるハイソリッド型クリヤ塗料のもう一つの構成成分である(c)ポリエポキシドは、1分子中にエポキシ基を平均で2個以上、好ましくは2〜10個、より好ましくは3〜8個有する化合物である。
(c)ポリエポキシドとして好ましいものは、(1)エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%と、(2)エポキシ基を有しないエチレン性不飽和モノマー40〜90重量%、好ましくは10〜60重量%とを共重合することで得られるアクリル系ポリエポキシドである。エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーが10重量%未満では硬化性が不足し、60重量%以上では固くなりすぎて耐候性が不足する。
【0040】
(c)−(1)エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキサニル(メタ)アクリレートなどが例示される。バランスのとれた硬化性と貯蔵安定性を確保するためには、グリシジル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0041】
(c)−(2)エポキシ基を有しないエチレン性不飽和モノマーとしては、上述の酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーのうちエポキシ基に影響を及ぼさないものを同様に用いることができる。
上記モノマーの共重合により得られるアクリル系ポリエポキシドの数平均分子量は500〜10000、好ましくは1000〜8000、より好ましくは1500〜5000である。数平均分子量が500未満では塗料の硬化性が不足し、10000を超えると塗装粘度に希釈された希釈塗料の不揮発分が低下する。またエポキシ当量は50〜700、好ましくは80〜600、より好ましくは100〜500である。エポキシ当量が700を超えると塗料の硬化性が不充分となり、50未満では固くなりすぎて塗膜が脆くなるので好ましくない。
【0042】
また(c)−(2)エポキシ基を有しないエチレン性不飽和モノマーとして、化1式に示す水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを用いることもできる。
【0043】
【化1】
【0044】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Xは化2式又は化3式で示す有機鎖である。)
【0045】
【化2】
【0046】
(式中、Yは炭素数2〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、mは3〜7の整数、qは0〜4の整数である。)
【0047】
【化3】
【0048】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、nは2〜50の整数である。)
化1式に示す水酸基含有エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、およびこれらのε−カプロラクトンとの反応物、(メタ)アクリル酸と大過剰のジオール(例えば 1,4ブタンジオール、 1,6ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)をエステル化した化合物などが例示される。
【0049】
ここで用いる水酸基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数が5〜23、特に5〜13のものを好ましく用いることができる。このモノマーの鎖長が短すぎると架橋点近傍のフレキシビリティがなくなるため固くなりすぎ、長すぎると架橋点間分子量が大きくなりすぎるからである。
上記水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを用いると、得られる塗膜の密着性及びリコート性が向上する。また水酸基とカルボキシル基とを有するアクリル系ポリエポキシドは、後述するように、カルボキシル基とカルボン酸エステル基とを有する(a)アクリル系ポリカルボン酸と、水酸基及びエポキシ基の両方の官能基において反応し結合するので、より強固な塗膜を得ることができる。
【0050】
アクリル系ポリエポキシドの水酸基価は5〜300 mgKOH/g(固形分)、好ましくは10〜200 mgKOH/g(固形分)、より好ましくは15〜150 mgKOH/g(固形分)である。水酸基価が300 mgKOH/g(固形分)を超えると、塗料不揮発分が低下したり塗膜の耐水性が不足し、5 mgKOH/g(固形分)未満では密着性に劣る。
【0051】
本発明に用いて好適な(c)ポリエポキシドは、前述の化1〜3式で示した構造の水酸基含有エチレン性不飽和モノマー5〜70重量%と、(c)−(1)エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー10〜60重量%と、必要に応じて水酸基及びエポキシ基の両方とも有しないエチレン性不飽和モノマー0〜85重量%とを共重合することによって得られる。この場合、得られる(c)ポリエポキシドは、1分子中にエポキシ基を平均で2〜12個、より好ましくは3〜10個、水酸基を平均で0.5〜10個、より好ましくは1〜8個有する。
【0052】
(c)ポリエポキシド成分は、硬化性樹脂組成物中の全固形分の重量を基準として、10〜80重量%好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜65重量%の量で配合することができる。ポリエポキシドの量が10重量%より少ないと硬化性が低下し、70重量%を超えると耐黄変性が悪化する。
本発明にいうハイソリッド型クリヤ塗料は、(a)アクリル系ポリカルボン酸と、(b)ポリエステルポリカルボン酸と、(c)ポリエポキシドとの3成分を混合することにより製造することができる。特にカルボキシル基とカルボン酸エステル基とを有する(a)アクリル系ポリカルボン酸を用い、水酸基とエポキシ基とを有する(c)ポリエポキシドを用いた場合には、耐酸性に特に優れた塗膜を形成するハイソリッド型クリヤ塗料が得られる。
【0053】
この場合、(a)アクリル系ポリカルボン酸及び(b)ポリエステルポリカルボン酸に含有されるカルボキシル基と、(c)ポリエポキシドに含有されるエポキシ基とのモル比が1/1.4〜1/0.6、好ましくは1/1.2〜1/0.8となり、かつ(a)アクリル系ポリカルボン酸に含有されるカルボキシル基又はカルボキシル基結合炭素に隣接する炭素に結合するカルボン酸エステル基と(b)ポリエステルポリカルボン酸及び(c)ポリエポキシドに含有される水酸基とのモル比が1/2.0〜1/0.5、より好ましくは1/1.5〜1/0.7となるような量で配合することが好ましい。
【0054】
(a)アクリル系ポリカルボン酸及び(b)ポリエステルポリカルボン酸に含有されるカルボキシル基と、(c)ポリエポキシドに含有されるエポキシ基とのモル比が1/0.6を超えると得られる塗料の硬化性が低下し、1/1.4より小さくなると塗膜が黄変する。また、(a)アクリル系ポリカルボン酸に含有されるカルボキシル基又はカルボキシル基結合炭素に隣接する炭素に結合するカルボン酸エステル基と(b)ポリエステルポリカルボン酸及び(c)ポリエポキシドに含有される水酸基とのモル比が1/0.5を超えると得られる塗料の硬化性が低下し、1/2.0より小さくなると水酸基が過剰となるため耐水性が低下する。
【0055】
このようにして得られるハイソリッド型クリヤ塗料の硬化機構は、先ず加熱により(a)アクリル系ポリカルボン酸中のカルボキシル基とカルボン酸エステル基とが反応して(a)アクリル系ポリカルボン酸中に酸無水物基が生成し、遊離のモノアルコールが生成する。生成したモノアルコールは蒸発して系外へ除去される。そして(a)アクリル系ポリカルボン酸中に生成した酸無水物基は(b)ポリエステルポリカルボン酸及び(c)ポリエポキシドに含有される水酸基と反応することにより架橋点を形成し、再度カルボキシル基を形成する。このカルボキシル基及び(b)ポリエステルポリカルボン酸中に存在するカルボキシル基は、(c)ポリエポキシド中に存在するエポキシ基と反応することにより架橋点を形成する。このように3種類のポリマーが相互に反応することにより硬化が進行し、高い密度で架橋した塗膜が形成される。
【0056】
本発明にいうハイソリッド型クリヤ塗料中には、例えば4級アンモニウム塩などのような、酸とエポキシとのエステル化反応に通常用いられる硬化触媒を含んでもよい。この硬化触媒としては、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド又はブロミド、サリチレート又はグリコレート、パラトルエンスルホネートなどが例示される。
【0057】
この硬化触媒の添加量は、樹脂組成物の固形分に対して一般に0.01〜3.0重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、より好ましくは0.4〜1.2重量%である。硬化触媒の量が0.01重量%より少ないと添加した効果が得られず、3.0重量%を超えて添加すると貯蔵安定性が低下する。
また本発明にいうハイソリッド型クリヤ塗料中には、特開平2-151651号公報などに開示されたスズ系の化合物を混合することもできる。このようなスズ系触媒としては、例えばジメチルスズビス(メチルマレート)、ジメチルスズビス(エチルマレート)、ジメチルスズビス(ブチルマレート)、ジブチルスズビス(ブチルマレート)などが挙げられる。
【0058】
このスズ系触媒の添加量は、樹脂組成物の固形分に対して一般に0.05〜6.0重量%、好ましくは0.1〜4.0重量%、より好ましくは0.2〜2.0重量%である。スズ系触媒の量が0.05重量%より少ないと貯蔵安定性が低下し、6.0重量%を超えて添加すると耐候性が低下する。なお硬化触媒とスズ系触媒とを併用する場合には、硬化触媒とスズ系触媒の重量比は1/4〜1/0.2とすることが好ましい。
【0059】
本発明にいうハイソリッド型クリヤ塗料には、架橋密度を上げ、耐水性の向上を計るために、ブロック化イソシアネートを加えることもできる。また公知の紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などを添加してもよい。さらに公知のレオロジーコントロール剤、表面調整剤などを添加してもよいし、粘度調整などの目的でアルコール系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤などの溶剤を用いることもできる。
【0060】
本発明の塗膜形成方法において、ローソリッド型ベース塗料及びハイソリッド型クリヤ塗料の塗装法としては、スプレー塗装、刷毛塗り塗装、浸漬塗装、ロール塗装、流し塗装などが例示される。自動車の上塗り塗装の場合には霧化塗装が適し、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装などを利用することができる。
【0061】
ローソリッド型ベース塗料は、一般に乾燥膜厚が10〜30μmとなる範囲で塗装される。この膜厚が30μmより厚い場合や、10μmより薄いと外観品質が低下する。またローソリッド型ベース塗料の塗布後のセッティング時間は、従来と同様に室温で5〜15分とされる。このセッティング時間が5分より短いと焼付時にワキが生じる場合があり、15分以上としても効果が飽和し埃などが付着するため好ましくない。
【0062】
またハイソリッド型クリヤ塗料は、一般に乾燥膜厚が25〜70μmとなる範囲で塗装される。この膜厚が70μmより厚くなるとタレが発生し、25μmより薄いと最終塗膜の膜厚に不足して外観品質が低下する。
ハイソリッドクリヤ塗料を塗布後のセッティング時間は、3〜15分程度とされる。セッティング時間が3分より短いとワキが発生しやすく、15分より長くなっても効果が飽和し埃などが付着するため好ましくない。
【0063】
その後、両ウェット塗膜は100〜180℃、好ましくは120〜160℃に加熱され、一体的に焼付硬化されて塗膜が形成される。焼付時間は温度によって異なるが、120〜160℃で10〜30分が適当である。
【0064】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
(1)ローソリッド型ベース塗料の調製
先ず下記の樹脂を用意した。
アクリル樹脂A(日本ペイント(株)製、不揮発分50重量%、水酸基価45 mgKOH/g、酸価15 mgKOH/g、数平均分子量12000)
アクリル樹脂B(日本ペイント(株)製、不揮発分55重量%、水酸基価75 mgKOH/g、酸価20 mgKOH/g、数平均分子量6000)
メラミン樹脂(品名「ユーバン20N−60」三井東圧(株)製、不揮発分60重量%)
上記アクリル樹脂Aを25重量部、アクリル樹脂Bを45重量部、メラミン樹脂を30重量部、アルミ顔料(「アルペーストAl60−600」東洋アルミニウム社製、固形分65重量%)10重量部を攪拌混合し、芳香族炭化水素系溶剤とアルコール系溶剤を主成分とするシンナーにて、塗装粘度(フォードカップNo.3、20℃で17秒)に希釈した。このときの不揮発分(塗料0.5±0.1gを精秤し、110±5℃で60分乾燥後の塗料の質量を精秤し、乾燥前の塗料の質量で割った値を100倍して算出した)は18重量%であり、VOCは770であった。また(株)レオロジー社製ソリキドメーター粘度計を用い、径4cm 角度1.3°のロータにより測定された、不揮発分(塗料0.5±0.1gを精秤し、110±5℃で60分乾燥後の塗料の質量から計算)が70重量%でずり速度が0.1/秒のときの粘度は6500ポイズ(25℃)であった。
【0065】
(2)ハイソリッド型クリヤ塗料の調製
a.アクリル系ポリカルボン酸の合成
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管、滴下ロートを備えた3Lの反応槽にキシレン700重量部、ソルベッソ100(エッソ社製芳香族炭化水素系溶剤)350重量部を仕込み、130℃に昇温して保持した。
【0066】
一方、スチレンモノマー300重量部、メタクリル酸2−エチルヘキシル109重量部、アクリル酸イソブチル325重量部、アクリル酸26重量部、無水マレイン酸240重量部、プロピレングリコールモノメチエーテルアセテート300重量部、およびt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト150重量部及びキシレン150重量部からなる溶液を調製し、滴下ロートから上記反応槽内に3時間かけて滴下した。
【0067】
滴下終了後30分間にわたり130℃で保持した後、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト20重量部及びキシレン20重量部からなる溶液を30分間で滴下した。この滴下終了後、さらに1時間130℃にて反応を継続させ、その後溶剤を1100重量部脱溶剤して、数平均分子量2000のアクリル系ポリ酸無水物を含む不揮発分70重量%のワニスを調製した。
【0068】
得られたワニス1590重量部に、メタノール125重量部を加え、70℃で23時間反応させ、酸価158 mgKOH/g(固形分)のアクリル系ポリカルボン酸を得た。
尚、このアクリル系ポリカルボン酸について赤外線吸収スペクトルを測定し、酸無水物基の吸収(1785cm-1)が消失するのを確認した。
【0069】
b.ポリエステルポリカルボン酸の合成
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管を備えた3Lの反応槽に3−エトキシプロピオン酸エチル278重量部、トリメチロールプロパン268重量部、ε−カプロラクトン228重量部、酸化ジブチルスズ0.1重量部を仕込み、150℃に昇温して保持した。
【0070】
2時間にわたり150℃で保持した後、加温して溶解したヘキサヒドロ無水フタル酸616重量部を加え、150℃で1時間保持して、数平均分子量800、重量平均分子量/数平均分子量=1.18、酸価202 mgKOH/g(固形分)及び水酸基価101 mgKOH/g(固形分)のポリエステルポリカルボン酸を含む不揮発分80重量%のワニスを得た。
【0071】
c.ポリエポキシドの合成
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管、滴下ロートを備えた2Lの反応槽にキシレン250重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200重量部を仕込み、130℃に昇温して保持した。
一方、メタクリル酸グリシジル450重量部、メタクリル酸イソボルニル236重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル64重量部、t−ブチルスチレン250重量部、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト110重量部及びキシレン150重量部からなる溶液を調製し、滴下ロートから上記反応槽内に3時間かけて滴下した。溶液温度は130℃に保持した。
【0072】
滴下終了後30分間にわたり130℃で保持した後、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト10重量部及びキシレン50重量部からなる溶液を30分間で滴下した。この滴下終了後、さらに1時間130℃にて反応を継続させ、その後溶剤を270重量部脱溶剤して、数平均分子量2200、エポキシ当量316及び水酸基価25 mgKOH/g(固形分)のアクリル系ポリエポキシドを含む不揮発分72重量%のワニスを得た。
【0073】
d.塗料化
上記により合成されたアクリル系ポリカルボン酸ワニスと、ポリエステルポリカルボン酸ワニス及びアクリル系ポリエポキシドワニスを、それぞれ不揮発分で24重量部:25重量部:51重量部となるように混合し、テトラブチルアンモニウムブロミド硬化触媒0.5重量部、ジブチルスズビス(ブチルマレート)触媒0.5重量部、紫外線吸収剤(「チヌビン900」チバガイギー社製)2重量部、光安定剤(「サノールLS-440」三井社製)1重量部及び表面調整剤(「モダフロー」)0.1重量部をディスパー攪拌しながら混合した。
【0074】
得られた塗料を3−エトキシプロピオン酸エチル/S−150(エッソ社製)=1/1からなるシンナーにて、塗装粘度(フォードカップNO.4、20℃で35秒)に希釈し、ハイソリッド型クリヤ塗料を調製した。このときの不揮発分(塗料0.5±0.1gを精秤し、110±5℃で60分乾燥後の塗料の質量から計算)は53重量%であり、VOCは470である。また(株)レオロジー社製ソリキドメーター粘度計を用い、ローター径4cm、角度1.3°ロータにより測定された、不揮発分(塗料0.5±0.1gを精秤し、110±5℃で60分乾燥後の塗料の質量から計算)が65重量%でずり速度が0.1/秒のときの粘度は50ポイズ(25℃)であった。
【0075】
(3)塗装
厚さ0.8mmのりん酸処理鋼板にカチオン電着塗料及び中塗り塗料がそれぞれ乾燥膜厚25μm及び40μmとなるように塗装された試験板に、静電塗装機(「ミニベル」ランズバーグゲマ社製)により、霧化圧5kg/cm2 で上記のローソリッド型ベース塗料を塗装し、室温で1.5分間放置後さらに上記のローソリッド型ベース塗料を、合計の乾燥膜厚が14〜18μmとなるように塗装した。その後約4分間セッティングすることによってウェットベース塗膜を形成した。この塗装は、試験板が水平状態と垂直状態の2種類について行った。
【0076】
その上に、上記ハイソリッド型クリヤ塗料を、静電塗装機(「ミニベル」ランズバーグゲマ社製)により、霧化圧5kg/cm2 で乾燥膜厚が30μm前後と50μm前後になるように2種類に塗り分けて塗装し、約7分後140℃で25分間焼付けて、ベース塗膜とクリヤ塗膜を一体的に硬化させた。なお、ベース塗料が水平状態で塗装された試験板に対しては水平状態で塗装し、ベース塗料が垂直状態で塗装された試験板に対しては垂直状態で塗装した。また焼付ける際にも、水平状態で塗装された試験板は水平状態で焼付け、垂直状態で塗装された試験板は垂直状態で焼付けた。
【0077】
(比較例1)
実施例1と同様のローソリッド型ベース塗料と、「マックフロー O−380(日本ペイント社製ローソリッド型クリヤ塗料)」とを用意し、ローソリッド型クリヤ塗料は予め、フォードカップNo.4、20℃で20秒に希釈し、実施例1と同様にして塗装・焼付を行った。
【0078】
またベース塗料及びクリヤ塗料の特性値を実施例1と同様に測定し、結果を表1に示す。
(比較例2)
ハイソリッド型ベース塗料として「スーパーラック M−1300(日本ペイント社製)」を予め、酢酸ブチル/n−ヘキシルアセテート=1/1からなるシンナーにて、塗装粘度(フォードカップNo.3、20℃で20秒)に希釈した。
【0079】
上記ハイソリッド型ベース塗料と、実施例1と同様のハイソリッド型クリヤ塗料とを用い、実施例1と同様にして塗装・焼付を行った。
またベース塗料及びクリヤ塗料の特性値を実施例1と同様に測定し、結果を表1に示す。
(評価)
【0080】
【表1】
【0081】
実施例及び比較例で得られたそれぞれ4種類の塗装板について、GT計(東海理化社製)を用いて塗膜表面の外観を測定した。このGT計によれば、塗膜の表面光沢と肌の荒れ程度が組合わさった状態で数値として評価でき、その数値が高いほど外観品質に優れていることを示す。それぞれの結果を表1に示す。
表1より、本発明の実施例1の塗膜形成方法によれば、特に垂直状態で塗装したもののGT値が各比較例より高くなっており、これは本発明の構成とした効果であることが明らかである。
【0082】
一方、比較例1においては、クリヤ塗料の膜厚が薄い場合にはGT値が低く、膜厚を厚くしても実施例1には及ばない。これはタレが生じたことに起因している。また比較例2においては、クリヤ塗料を厚く塗装した場合にもタレは生じなかったが、GT値は実施例1より低い。これはクリヤ塗料を塗装したときに界面において相互に溶解する現象が多大となり、そのためクリヤ塗膜表面に荒れが生じたためと考えられる。
【0083】
そして実施例1で用いたハイソリッド型クリヤ塗料はVOCが低く、塗装粘度における不揮発分が高いので、揮発する有機溶剤量が少なく排気処理工数を低減することができる。またタレない程度に塗装した場合でも得られる塗膜は厚膜となり、高い外観品質を示す。さらに実施例1で用いたハイソリッド型クリヤ塗料は、トリアジン環を含まないため酸性雨に対して大きな耐性を示し、実施例1の塗膜形成方法は自動車の上塗り塗装に最適である。
【0084】
【発明の効果】
すなわち本発明の塗膜形成方法によれば、2コート1ベイク塗装法によってきわめて高品質の塗膜外観をもつ塗膜を確実に形成することができる。またハイソリッド型クリヤ塗料を用いているため、有機溶剤の排出量を抑制しつつ厚膜の塗膜を形成することができ、かつ形成された塗膜は耐酸性雨性に優れている。したがって本発明の塗膜形成方法は、自動車の上塗り塗装に用いてきわめて好適である。
Claims (1)
- 架橋剤としてメラミン樹脂を含み、不揮発分が60〜70重量%の状態で、ずり速度が0.1/秒のときの粘度が2500〜10000ポイズ(25℃)であり、塗装粘度に希釈した希釈塗料におけるVOCが700〜800であるローソリッド型ベース塗料を塗布してウエットベース塗膜を形成する行程と、
該ウエットベース塗膜を所定時間放置した後、該ウエットベース塗膜上に、カルボキシル基含有樹脂とポリエポキシドを含み、不揮発分が55〜75重量%の状態で、ずり速度が0.1/秒のときの粘度が20〜100ポイズ(25℃)であり、塗装粘度に希釈した希釈塗料におけるVOCが400〜500であるハイソリッド型クリヤ塗料を、該ウエットベース塗膜表面に塗布してウエットクリヤ塗膜を形成する行程と、
該ウエットベース塗膜と該ウエットクリヤ塗膜とを同時に焼付硬化させる行程とよりなることを特徴とする塗膜形成方法。
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