JP4646545B2 - 二液型熱硬化性樹脂組成物、塗膜形成方法および被塗物 - Google Patents

二液型熱硬化性樹脂組成物、塗膜形成方法および被塗物 Download PDF

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Description

本発明は、二液型熱硬化性樹脂組成物、それを用いる塗膜形成方法および被塗物に関する。
自動車などの被塗物の上には、着色塗膜とその上にクリヤー塗料が形成されている。以前はこの最外層のクリヤー塗料は、バインダー樹脂として水酸基含有ポリマーを用い、それをメラミン樹脂硬化剤で硬化するものが一般的であった。しかし、このようなメラミン樹脂を硬化剤として用いる硬化被膜はメラミン樹脂のトリアジン核に起因すると思われる耐酸性に劣る欠点があった。このメラミン樹脂を用いるメラミン硬化系は近年問題となっている酸性雨に対して弱く、代替技術の開発が必要となった。
この耐酸性に弱いメラミン硬化系に代わって開発されたのが、酸基とエポキシ基との反応を用いる酸/エポキシ硬化系を用いる技術であった。酸とエポキシとの反応は、古くから知られていたので、多くの先行技術が存在した。例えば、米国特許第4,681,811号(特許文献1)や同4,816,500号(特許文献2)などが存在した。
これらの古い技術に対して、本出願人らは改良を加えて、特許3243165号公報(特許文献3)や特開平8−100149号公報(特許文献4)などを中心とした特許群により完成し、現在多くの自動車などのクリヤー塗料として用いられている。この技術の根幹となる部分は、反応性の高い酸無水物基をハーフエステル化して、これを加熱硬化時に閉環することにより酸無水物基を再生して、反応基点とする硬化技術であった。この反応を化学式で示すと以下のようになる。
Figure 0004646545
ハーフエステル化するのは、基本的に反応性の高い酸無水物基を安定化して、取り扱いの容易な一液型の塗料とするためであった。しかしながら、最近になって、京都議定書にも謳われているように、地球温暖化を防止するために二酸化炭素の排出規制や、省資源の観点から、塗料の硬化時に用いる熱量も減少する必要が生じてきた。自動車など塗装ラインは被塗物がある一定速度で流れているが、加熱硬化時には100〜150メートルもの長さの長い加熱炉の中を被塗物が移動していく方法が取られている。熱量の減少は分かりやすく言えば、この加熱炉の長さを短縮することであり、特に半分の長さにすることを目標として考えられている。この要求はいろいろな技術的観点から達成される必要があるが、塗料から検討すると、例えば硬化時間を半減することによっても達成することができる。
米国特許第4,681,811号 米国特許第4,816,500号 特許3243165号 特開平8−100149号公報
本発明は、これまで耐酸性で高い評価を受けてきた酸/エポキシ硬化系の技術で、硬化時間を大きく減少させる(特に、半減させる)と共に、他の性能(特に、膜性能)の更なる改善を目的とする。
即ち、本発明は、(a)酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマーと酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとを共重合させることにより得られる酸無水物基を0.08〜5.3mmol/g(固形分)および数平均分子量を500〜8000有する酸無水物基含有アクリル樹脂(i)と、1〜12個の炭素原子を有するモノアルコール(ii)とを、酸無水物基と水酸基とがモル比で1/10〜1/1となる割合の量で反応させることにより得られる、ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸、
(b)3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールと酸無水物基含有化合物とを反応させて得られるカルボキシル基を0.8〜6.3mmol/g(固形分)、数平均分子量400〜3500および重量平均分子量/数平均分子量の比が1.8以下を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、
(c)水酸基含有エチレン性不飽和モノマーとエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと水酸基およびエポキシ基の両方とも有しないエチレン性不飽和モノマーとを共重合することにより得られる水酸基を0.08〜5.4mmol/g(固形分)、エポキシ基を1.2〜10.0mmol/g(固形分)および数平均分子量を200〜10000有する、水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂、および
(d)酸無水物基を0.9〜10.0mmol/g(固形分)有する酸無水物基含有化合物、
を含有する二液型熱硬化性樹脂組成物を提供する。
上記の成分(d)は、好ましくは、
一分子中に酸無水物基を少なくとも2個有する化合物、
一分子中に2個以上の酸無水物基を含有する数平均分子量200〜5000の酸無水物基含有ポリエステル樹脂、
酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマー5〜80重量%と酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー20〜95重量%とを共重合させることにより得られる酸無水物基含有アクリル樹脂(i)、および
これらの混合物
からなる群から選択されるものである。
上記組成物では、成分(a)、(b)および(d)を第1パッケージとし、成分(c)を第2パッケージとし、塗布前に、第1パッケージに含まれる酸無水物基成分と、第2パッケージに含まれるエポキシ基成分との当量比が2/1〜1/2になるように混合するのが好ましい。
上記の第1または第2のいずれかのパッケージ若しくは両方に、さらに(e)硬化触媒を含有することが一般的である。
各成分の配合量は、成分(a)が10〜50重量%、成分(b)が5〜50重量%、成分(c)が10〜80重量%、および成分(d)が5〜70重量%(ただし、重量%は成分(a)〜(d)の固形分重量を100%とした値である。)である場合が、好適である。
本発明は、また、下塗りまたは中塗りした基板上に水系または溶剤系ベース塗料を塗布する工程;ベース塗膜を硬化させずに、この上に、上記の二液型熱硬化性樹脂組成物を塗布する工程;および加熱することにより、ベース塗膜と二液型熱硬化性樹脂組成物とを硬化させる工程;を包含する塗膜形成方法を提供する。
本発明は、さらに、上記方法で得られる塗装物も提供する。
〔発明の機能〕
本発明では、結果的に見ると、本出願人らが開発してきた酸無水物基のハーフエステル化物を用いる酸/エポキシ硬化系の塗料組成物に、反応性の高い酸無水物基を有する化合物(成分(d))を添加剤的に加えて硬化促進をはかり、一液型の塗料から二液型の塗料にしたものであるが、実際には多くの考察と工夫が必要であった。単に酸無水物基含有化合物(d)を添加すると、反応性が高いので、硬化速度アップにつながるが、連鎖的な(爆発的な)硬化反応が起こり、最終で得られた塗膜の外観や膜物性が悪くなる。従って、配合量的なもの、官能基量、反応速度の調整、下層のベース塗料との相互作用など多くの点を考慮した上で、本発明に到ったものである。本発明では、酸無水物基のハーフエステル化物を用いる酸/エポキシ硬化系の塗料組成物に酸無水物含有化合物を、添加して2液硬化型塗料とした場合、反応時間をコントロールしやすく、約半分程度の硬化時間に短縮しても、十分な膜物性を持った塗膜が得られることが実験的に確かめられた。さらに、驚くべきことに、この組成物をクリヤー塗料に用いて、ベース塗膜の上にウェット・オン・ウェットで塗装した場合、下層のベース塗膜との混層を抑制することができ、仕上がり塗膜外観が著しく向上するのである。これは酸無水物含有化合物を塗料系に添加することにより、塗料としての極性が変化し、従来のハーフエステル化物を用いる塗料系に比べて下層との混層を防止できるものと考えている。
本発明では、上述のように、一液型から二液型に取り扱い上では不利になったが、地球規模での環境破壊を食い止めるべく、塗料の硬化時間を約半分にすることができ、加熱硬化炉での必要な熱量もほぼ半分にすることができる。また、塗装ラインも半分の熱量を考えると、加熱硬化炉の長さを半分にすることができ、スペースも小さくなり、設計も容易になる。
ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)
本発明の熱硬化性樹脂組成物で用いられるハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)は、酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマーと酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとを共重合させることにより得られる酸無水物基を0.08〜5.3mmol/g(固形分)および数平均分子量500〜8000を有する酸無水物基含有アクリル樹脂(i)と、1〜12個の炭素原子を有するモノアルコール(ii)とを、酸無水物基と水酸基とがモル比で1/10〜1/1となる割合の量で反応させることにより得られる。
上記酸無水物基含有アクリル樹脂(a)は、酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマー5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%と酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー20〜95重量%、好ましくは40〜90重量%とを共重合させることにより得られる。酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマーの量が5重量%を下回ると硬化性が不足し、80重量%を上回ると得られる塗膜が固くもろくなりすぎて耐候性が不足する。
上記酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、具体例には、無水イタコン酸、無水マレイン酸および無水シトラコン酸等が挙げられる。塗膜の硬化性に優れ、得られた塗膜の耐酸性が向上するからである。
上記酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーは、酸無水物基に悪影響を与えないものであれば特に限定されず、エチレン性不飽和結合を一つ有する炭素数3〜15、特に3〜12のモノマーであることが好ましい。2種以上のエチレン性不飽和モノマーを混合して酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとして用いることも可能である。樹脂同士の相溶性を向上させるのに有効だからである。
また、上記酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとして、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーを用いることができ、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびマレイン酸のようなカルボキシル基を有するモノマーも酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとして用いうる。中でも、これらとε−カプロラクトンの付加物(例えば、アロニックスM−5300)のようなエチレン性不飽和基とカルボキシル基との間に炭素数5〜20個程度分のスペーサー部分を有する長鎖カルボン酸モノマーを用いれば、塗膜の耐擦傷性が向上し好ましい。
更に、後述する式(I)で表される水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーと酸無水物基含有化合物の付加物を挙げることができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。酸無水物基含有化合物は、室温〜150℃、常圧のような通常の反応条件において水酸基とハーフエステル化反応することによりカルボキシ官能性を提供する。ここでは、炭素数4〜12、特に8〜10を有する環状(不飽和もしくは飽和)の基を有する酸無水物基含有化合物を用いることが好ましい。このような化合物を用いると得られる樹脂の相溶性が良好となるからである。
具体的には、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーと酸無水物基含有化合物とを水酸基と酸無水物基とがモル比で1/0.5〜1/1.0、好ましくは1/0.8〜1/1.0となる割合の量でハーフエステル化反応させることにより得られるカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーを、酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとして用いうる。このモル比が1/0.5を上回るとポリマー粘度が高くなり作業性不良となる。1/1.0を下回ると過剰の酸無水物基含有化合物が残り、塗膜の耐水性が低下する。
ここで用いる水酸基含有エチレン性不飽和モノマーの炭素数は5〜23であることが好ましく、5〜13であることがさらに好ましい。この鎖長が短すぎると架橋点近傍のフレキシビリティーがなくなるため固くなりすぎ、長すぎると架橋点間分子量が大きくなりすぎるからである。一般には、式
Figure 0004646545
[式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Xは、式
Figure 0004646545
(式中、Yは炭素数2〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、qは0〜4の整数である。)で示す有機鎖、または、式
Figure 0004646545
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、mは2〜50の整数である。)で示す有機鎖である。]で示す構造を有する水酸基含有エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシルおよびこれらのε−カプロラクトンとの反応物のような化合物および(メタ)アクリル酸と大過剰のジオール(例えば、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)をエステル化することにより調製することができる化合物が挙げられる。
このような化合物は市販されており、例えば、三菱化学(株)製のアクリル酸4−ヒドロキシブチル「4HBA」およびメタクリル酸4−ヒドロキシブチル「4HBMA」等、ダイセル化学工業(株)社製「プラクセルFM1」および「プラクセルFA1」等が挙げられる。プロピレンオキサイド系モノマーとしては日本油脂社製の「ブレンマーPP−1000」、「ブレンマーPP−800」およびエチレンオキサイド系モノマーとしては、「ブレンマーPE−90」がある。
ここで用いる酸無水物基含有化合物の具体例には、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水コハク酸等が挙げられる。
水酸基含有エチレン性不飽和モノマーと酸無水物基含有化合物とのハーフエステル化の反応は通常の方法に従い、室温から150℃の温度で行なわれる。
その他の酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーの具体例には、スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−、i−、およびt−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等)、シェル社製のVeoVa−9およびVeoVa−10等が挙げられる。カルボキシル基を有しないエチレン性不飽和モノマーとしてスチレンおよびスチレン誘導体を用いる場合は、5〜40重量%の量で使用するのが好ましい。
酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマーと酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとの共重合は、例えばラジカル重合等の溶液重合のような公知の方法により行われる、例えば、常圧または加圧下で重合温度100〜200℃、重合時間3〜8時間で行うことができる。開始剤としてはアゾ系またはパーオキサイド系の開始剤が好適に用いられる。連鎖移動剤のような他の添加剤も用いうる。
得られるポリマーの数平均分子量は500〜8000、また800〜6000、特に1500〜4000とすることが好ましい。数平均分子量が8000を上回ると樹脂同士の相溶性が低下し、外観が低下する。数平均分子量が500を下回ると樹脂組成物の硬化性が不充分となる。得られるポリマーは1分子中に平均で少なくとも2個、好ましくは2〜15個の酸無水物基を有する、1分子中に含有される酸無水物基が2個を下回ると、樹脂組成物の硬化性が不充分となる。15個を上回ると固くもろくなりすぎ、耐候性が不足する。
次いで、得られた酸無水物基含有アクリル樹脂(i)を、酸無水物基と水酸基とがモル比で1/10〜1/1、好ましくは1/5〜1/1、より好ましくは1/2.0〜1/1となる割合の量でモノアルコール(ii)と反応させることにより、酸無水物基のハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)を調製する。1/10を下回ると過剰のアルコールが多すぎて硬化時にワキの原因となり、1/1を上回ると未反応の無水物基が残り、貯蔵安定性が悪くなる。
本発明に用いうるモノアルコール(ii)は、1〜12個、特に1〜8個の炭素原子を有することが好ましい。加熱時アルコールが揮発し酸無水物基を再生するのに良好だからである。好適に用い得るモノアルコールの具体例には、既に列挙したものが挙げられる。特に好ましいものはアセトール、フリフリルアルコール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、エタノールおよびメタノールである。
得られるハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)は、酸無水物の量として0.08〜5.3mmol/g(固形分)、好ましくは0.4〜4.5mmol/g(固形分)、より好ましくは0.8〜3.6mmol/g(固形分)有する。酸無水物基の量が0.08mmol/g(固形分)を下回ると硬化性不足となり、5.3mmol/g(固形分)を上回ると貯蔵安定性が不良となるので好ましくない。
アクリル系ポリカルボン酸(a)成分は、硬化性樹脂組成物中の全固形分の重量を基準として10〜70重量%、好ましくは15〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%の量で硬化性樹脂組成物に配合されうる。アクリル系ポリカルボン酸(a)成分の配合量が10重量%を下回ると得られる塗膜の耐酸性が低下し、70重量%を越えると塗膜が硬くなりすぎる。
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)は3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールと酸無水物基含有化合物とをハーフエステル化反応させて得られる。本明細書において「ポリエステルポリオール」とは、エステル結合鎖を2個以上有する多価アルコールをいう。また、多価アルコールとは、水酸基を2個以上有するアルコールをいう。
ここで用いるポリエステルポリオールは、酸無水物基含有化合物と反応して一分子当たり2個以上の酸官能性および下記の特性を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を提供する。
一般に、このようなポリエステルポリオールは、少なくとも3個の水酸基を有する炭素数3〜16までの低分子多価アルコールと線状脂肪族ジカルボン酸とを縮合させることにより調製される。低分子多価アルコールに線状の脂肪族基を導入することにより、得られる塗膜に可撓性が付与され耐衝撃性が向上する。
使用しうる低分子多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,4−ブタントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリンおよびこれらの混合物が挙げられる。
ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸およびこれらの混合物のような二塩基酸が挙げられる。また、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸およびこれらの混合物のような酸無水物基含有化合物も用いうる。
ポリエステルポリオールは通常のエステル化反応により合成される。すなわち、多価アルコールと多塩基酸による脱水縮合反応もしくは多価アルコールと酸無水物基含有化合物反応によるエステル化およびさらにアルキル成分との脱水反応によりポリエステル化する。このような操作により比較的低分子量のポリエステルポリオールのオリゴマーが得られ、ハイソリッドの塗料組成物が提供される。
本発明に用いるのに特に好ましいポリエステルポリオールは、低分子多価アルコールにε−カプロラクトンのようなラクトン化合物を付加させて鎖延長することにより得られる。分子量分布がシャープとなるので、更に塗料組成物のハイソリッド化が可能となり、耐候性および耐水性に優れた塗膜が得られるからである。この場合に特に好ましく用いられる低分子多価アルコールには、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
本発明で用いる「ラクトン化合物」は、環内に酸素原子を有するために吸核試薬と反応して開環し、末端に水酸基を生成する環状化合物であればよい。好ましいラクトン化合物は炭素数4〜7個のものである。開環付加反応を起こし易いからである。具体的には、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトン等が挙げられるが、好ましくはε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンが用いられる。
鎖延長は、通常の開環付加反応と同様の条件で行いうる。例えば、適当な溶媒中で、または無溶媒で、温度80〜200℃で5時間以内反応させることにより低分子多価アルコールが鎖延長されたポリエステルポリオールが得られる。スズ系触媒等を用いても良い。
その際、低分子多価アルコール水酸基のモル量に対し、ラクトン化合物のモル量は0.2〜10倍量であり、好ましくは0.25〜5倍量であり、より好ましくは0.3〜3倍量である。水酸基のモル量に対するラクトン化合物のモル量が0.2倍量を下回ると、樹脂が固くなって塗膜の耐衝撃性が低下し、10倍量を越えると塗膜の硬度が低下する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いるカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)は、カルボキシル基の量として、0.8〜6.3mmol/g(固形分)、好ましくは1.7〜5.4mmol/g(固形分)、より好ましくは2.6〜4.5mmol/g(固形分)および数平均分子量400〜3500、好ましくは500〜2500、より好ましくは700〜2000、重量平均分子量/数平均分子量が1.8以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.35以下を有する。
6.3mmol/g(固形分)を越えると塗料組成物の粘度が高くなりすぎ塗料組成物の固形分濃度の低下を招き、カルボキシル基量が0.8mmol/g(固形分)を下回ると塗料組成物の硬化性が不足する。分子量が3500を越えると塗料組成物の粘度が高くなりすぎて取扱が困難となり、塗料組成物の固形分濃度の低下を招き、分子量が400を下回ると塗料組成物の硬化性が不足または塗膜の耐水性が低下する。重量平均分子量/数平均分子量が1.8を越えると、塗膜の耐水性が低下または耐候性が低下する。
ポリエステルポリオールと酸無水物基含有化合物とのハーフエステル化反応は、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸及び無水コハク酸等のような酸無水物基含有化合物を用いて、室温〜150℃、常圧のような通常の反応条件において行いうる。但し、ポリエステルポリオールの全ての水酸基をカルボキシル基に変性する必要はなく、水酸基を残しても良い。
水酸基を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、塗膜の表面にカルボキシル基と水酸基とを同時に提供するので、例えば、リコートしたような場合、水酸基を有しないカルボキシル基含有ポリエステル樹脂に比べて、優れた密着性を提供するからである。
その場合、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)は、水酸基を含んでいてもよく、その量は2.6mmol/g(固形分)以下、好ましくは0.08〜1.8mmol/g、より好ましくは0.18〜1.4mmol/gを有しても良い。水酸基価が2.6mmol/gを越えると塗膜の耐水性が低下する。
また、水酸基とカルボキシル基とを有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、後述するように、水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)および酸無水物基含有アクリル樹脂(a)の両方と反応し結合しうるので、より強固な塗膜を得ることができる。1分子中に平均0.1個以上の水酸基を有するものが好ましい。
一般に、ポリエステルポリオールの水酸基のモル量に対する酸無水物基含有化合物の酸無水物基のモル量を0.2〜1.0倍、特に0.5〜0.9倍とすることが望ましい。水酸基のモル量に対する酸無水物基のモル量が0.2倍を下回ると得られる塗料組成物の硬化性が不足する。
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)成分は、熱硬化性樹脂組成物中の全固形分の重量を基準として5〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%の量で配合されうる。カルボキシル基含有ポリエステル樹脂の量が5重量%を下回ると得られる塗料の固形分濃度が上がらず、50重量%を越えると得られる塗膜の耐候性が低下する。
水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いる水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)は、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーと、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと水酸基およびエポキシ基の両方とも有しないエチレン性不飽和モノマーとを共重合することにより得ることができる。
得られるアクリル樹脂の数平均分子量は500〜10000、好ましくは1000〜8000、より好ましくは1500〜5000である。数平均分子量が500を下回ると得られる塗膜の硬化性が低下し、10000を上回ると得られる塗料の固形分が低下する。水酸基の量としては、0.08〜5.4mmol/g(固形分)、好ましくは0.17〜3.6mmol/g(固形分)より好ましくは0.2〜2.7mmol/g(固形分)である。水酸基の量が上限を超えると、塗料固形分が低下したり硬化塗膜の耐水性が十分でなく、下限を下回ると密着性が低下する。またエポキシ基の量として、1.2〜10.0mmol/g(固形分)、好ましくは1.6〜6.7mmol/g(固形分)、より好ましくは2.0〜5.0mmol/g(固形分)である。エポキシ基の量が上記下限より小さいと塗料組成物の硬化性が不充分となる。また、上限より大きいと硬くなりすぎて塗膜がもろくなるので好ましくない。
本発明で用いられる水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂は、水酸基含有エチレン性飽和モノマー5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%とエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマー10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%と水酸基およびエポキシ基の両方ともを有しないエチレン性不飽和モノマー0〜85重量%、好ましくは10〜60重量%とを、共重合することにより得られるアクリル樹脂である。水酸基含有エチレン性不飽和モノマーが下限を下回ると硬化性が不足し、上限を上回ると塗膜にした場合の耐水性が低下する。エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーが10重量%を下回ると硬化性が不足し、60重量%を超えると硬くなりすぎて耐候性不足となる。
上記水酸基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、既に成分(a)のポリマーを調整する時に説明した式(I)で表される水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを挙げることができる。また、エポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレートおよび3,4−エポキシシクロヘキサニル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。バランスのとれた硬化性と貯蔵安定性を示す塗料組成物を調製するためには、グリシジル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
水酸基およびエポキシ基の両方とも有しないエチレン性不飽和モノマーとしては、酸無水物含有アクリル樹脂を調製するために酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとして上述したエポキシ基に影響を及ぼさないモノマーが挙げられる。共重合も上述と同様に行いうる。
特に、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを用いた場合、得られる塗膜の密着性およびリコート性等が向上する。また水酸基とエポキシ基とを有するアクリル系アクリル樹脂は、後述するように、ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)および酸無水物基含有化合物(d)と、水酸基およびエポキシの両方の官能基において反応し結合するので、より強固な塗膜を得ることができる。
上記、水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)は、1分子中にエポキシ基を平均で好ましくは2〜12個、より好ましくは3〜10個、および水酸基を平均で好ましくは0.5〜10個、より好ましくは1〜8個有する。
水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)成分は、熱硬化性樹脂組成物中の全固形分の重量を基準として10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは35〜55重量%の量で配合されうる。アクリル樹脂の量が10重量%を下回ると得られる塗膜の硬化性が低下し、80重量%を越えると耐黄変性が悪化する。
酸無水物基含有化合物(d)
本発明では、酸無水物基を0.9〜10.0mmol/g(固形分)を有する酸無水物基含有化合物を、酸とエポキシ基を用いるエステル反応系に添加することにより、反応速度を速めることができる。反応速度が速くなるために、二液硬化型になるが、反応がほぼ半分の時間で完結し、しかも優れた物性の塗膜が得られる。酸無水物基含有化合物(d)は、具体的には、一分子中に酸無水物基を少なくとも2個有する化合物;一分子中に2個以上の酸無水物基を含有する数平均分子量200〜5000の酸無水物基含有ポリエステル樹脂;酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマー5〜80重量%と酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー20〜95重量%とを共重合させることにより得られる酸無水物基含有アクリル樹脂;およびこれらの混合物からなる群から選択される。
酸無水物基を一分子中に少なくとも二個有する化合物は、無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物や以下の化学式で示す化合物があげられる:
Figure 0004646545

Figure 0004646545
また、一分子中に2個以上の酸無水物基を含有する数平均分子量200〜5000の酸無水物基含有ポリエステル樹脂は上述の酸無水物基を2個以上含有する化合物に多価アルコールを反応させて得られるポリエステル樹脂である。上記ポリエステル樹脂中の酸無水物基のモル数は0.9〜10.0mmol/g、好ましくは1.5〜6.7mmol/gである。数平均分子量は好ましくは300〜2000である。分子量が下限を下回ると、硬化性が不足し、上限を超えると樹脂同士の相溶性が低下し、外観が悪くなる。酸無水物基のモル数が下限を下回ると、硬化性が不足し、上限を超えると塗膜が硬くて脆くなり、耐候性が低下する。
使用しうる多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルクリコール、2,2−ジエチルー1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,4−ブタントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリンおよびこれらの混合物が挙げられる。
酸無水物基含有化合物(d)はまた、酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマー5〜80重量%と酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー20〜95重量%とを共重合させることにより得られる酸無水物基含有アクリル樹脂であってもよい。この酸無水物基含有アクリル樹脂は、成分(a)のハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸を形成する際の中間体として得られるものであり、詳細は成分(a)の説明に記載した。
成分(d)の酸無水物基含有化合物は、熱硬化性樹脂組成物中の全固形分の重量を基準として5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%の量で配合されうる。酸無水物基含有化合物の量が5重量%を下回ると得られる硬化時間短縮効果が低下し、70重量%を越えると塗膜の耐水性が悪化する。
本発明では、上記ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)、水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)、および酸無水物基含有化合物(d)を配合することにより熱硬化性樹脂組成物が得られる。特に、耐酸性に優れた塗膜を形成する高固形分の熱硬化性樹脂組成物が得られる。
ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)、水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)、および酸無水物基含有化合物(d)の配合は、当業者に周知の量および方法で行いうる。
上記ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)および酸無水物基含有化合物(d)に含有されるカルボキシル基と、水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)に含有されるエポキシ基とのモル比が1/1.4〜1/0.6、好ましくは1/1.2〜1/0.8となり、かつハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)、および酸無水物基含有化合物(d)に含有される酸無水物または酸無水物基に由来するハーフエステル基と、水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)およびカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)に含有される水酸基とのモル比が1/1.0〜1/0.1、より好ましくは1/0.9〜1/0.2となるような量で配合を行うことが好ましい。
ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)および酸無水物基含有化合物(d)に含有されるカルボキシル基と水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂(c)に含有されるエポキシ基との割合が1/0.6を上回ると得られる塗料組成物の硬化性が低下し、1/1.4を下回ると塗膜が黄変する。ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)および酸無水物基含有化合物(d)に含有される酸無水物基または酸無水物基に由来するハーフエステル基と、水酸基とエポキシ基とを含有するアクリル樹脂(c)およびカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)に含有される水酸基とのモル比が1/0.1を上回ると硬化速度が速すぎて外観異常を起こし、1/1.0を下回ると逆に硬化速度が遅くなることと、水酸基が過剰となるので耐水性が低下する。この配合量はそれぞれのポリマーの酸無水物基、水酸基、カルボキシル基およびエポキシ基から当業者に周知の計算法により計算することができる。
このようにして得られる本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化機構は、まず、加熱により酸無水物基含有化合物(d)中の酸無水物基はカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)および水酸基とエポキシ基とを含有するアクリル樹脂(c)中に含有される水酸基と反応することにより架橋点を形成し、再度カルボキシル基を生成する。一方、ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(a)のハーフエステル基が閉館して、酸無水物基を形成し、その酸無水物基も成分(c)の水酸基と反応すると同時に、カルボキシル基を一個再生する。このカルボキシル基およびカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(b)に存在するカルボキシル基は、水酸基とエポキシ基とを含有するアクリル樹脂(c)中に存在するエポキシ基と反応することにより架橋点を形成する。このように、4種類のポリマーが相互に反応することにより硬化が進行して高い架橋密度を提供することができる。
触媒(e)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化反応を促進するために適当な硬化触媒を配合することができる。硬化触媒はエポキシと酸とのエステル化反応に通常用いられるもので、下記に示すホスファイト化合物や4級アンモニウム塩などが上げられる。それぞれについて説明を加える。
ホスファイト化合物
本発明で用いるホスファイト化合物は、下記式(II)で示される亜リン酸トリエステル及び下記式(III)で示されるジ亜リン酸エステルをあげることができる
Figure 0004646545
(式中、R,R,Rはアルキル基及び/又はアリール基を示す。)
式(II)の亜リン酸トリエステルにおいてR,R,Rがアルキル基であるトリアルキルホスファイトとしてトリブチルホスファイト、トリiso−オクチルホスファイト、トリiso−デシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリアリルホスファイト等を、式(II)のR,R,Rがアルキル基及びアリール基であるアルキルアリールホスファイトとしては、モノiso−オクチルジフェニルホスファイト、モノiso−デシルジフェニルホスファイト、ジiso−オクチルモノフェニルホスファイト、ジiso−デシルモノフェニルホスファイト、等を、式(VI)のR,R,Rがアリール基であるトリアリールホスファイトとしては、トリフェニルホスファイト、トリス(p−フェニルフェニル)ホスファイト、トリス(o−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、トリ(モノノニル/ジノニルフェニル)ホスファイト、フェニルp−ノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等を用いることができる。これらの化合物を単独又は2種以上併用してもよい。
Figure 0004646545
(式中、R,R,R及びRはアルキル基及び/又はアリール基を、Rは、フェニレン基、ビフェニレン基又はアルキレン基を示し、sは1〜5である。)
式(III) のジ亜リン酸エステルにおいてR,R,R及びRは、具体的には、上述した式(II)で用いたものと同じアルキル基、アリール基を組み合せた化合物である。式(III) のRは、フェニレン基、ビフェニレン基及び炭素数1〜6のアルキル基である。
好ましい亜リン酸エステルとしては、例えばトリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリブチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、モノイソオクチルジフェニルホスファイト、トリス(P−ノニルフェニル)ホスファイト等をあげることができ、特に好ましくは、トリフェニルホスファイト、トリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをあげることができる。
好ましいジ亜リン酸エステルとしては、例えばテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4′−ビフェニレンジホスナイトをあげることができる。
本発明の塗料組成物の樹脂固形分100重量部に対してホスファイト化合物を0.1〜5固形分重量部、好ましくは0.2〜4固形分重量部、更に好ましくは0.5〜3固形分重量部配合する。ホスファイト化合物の配合量が0.1固形分重量部未満では、塗膜の黄変防止の効果が得られず、5固形分重量部を越えると塗膜の耐水性が低下するので好ましくない。本発明に従えば、塗料組成物中にホスファイト化合物を加えることにより、得られる塗料組成物により、塗膜を形成することにより、塗膜の耐黄変性、特に塗膜形成時のオーバーベークによる耐黄変性が大幅に向上する。
本発明に従って、塗料組成物中に、ホスファイト化合物を添加することにより、酸−エポキシ硬化形式において、黄変要因であるエポキシに対してホスファイト化合物の還元作用により、酸化が防止され、形成された塗膜の黄変性を著しく低減することができる。
4級アンモニウム塩
上記成分の他にも、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、例えば4級アンモニウム塩のような酸とエポキシとのエステル化反応に通常用いられる硬化触媒を含んでもよい。本発明の熱硬化性樹脂組成物に用い得る他の触媒の具体例には、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリドもしくはブロミド、サリチレートもしくはグリコレート、パラトルエンスルホネート等が挙げられる。これらの硬化触媒は混合して用いてもよい。
4級アンモニウム塩は、熱硬化性樹脂組成物の樹脂固形分に対し一般に0.1〜5.0重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、より好ましくは0.4〜1.2重量%の配合量で用いうる。用いる触媒の量が0.01重量%を下回ると硬化性が低下し、3.0重量%を上回ると貯蔵安定性が低下する。
また、特開平2−151651号公報および同第2−279713号公報に記載のように、スズ系の化合物をこれらと併用してもよい。スズ系触媒には、例えば、ジメチルスズビス(メチルマレート)、ジメチルスズビス(エチルマレート)、ジメチルスズビス(ブチルマレート)、ジブチルスズビス(ブチルマレート)等が挙げられる。
スズ系の化合物は、塗料組成物の樹脂固形分に対し一般に0.1〜5.0重量%、好ましくは0.1〜4.0重量%、より好ましくは0.2〜2.0重量%の配合量で用いうる。用いるスズ系の化合物の量が0.05重量%を下回ると貯蔵安定性が低下し、5.0重量%を上回ると耐候性が低下する。硬化触媒とスズ系化合物とを併用する場合は、硬化触媒とスズ化合物の重量比は1/4〜1/0.2とすることが好ましい。
パッケージの形態
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、二液型であり、ツーパッケージで保存して、塗装の前に両者を混合することにより使用する。上記成分(a)〜(e)が主たる成分であるので、これらを二つのパッケージに分ければよいのであるが、互いに反応する成分をひとつのパッケージにすることはできない。成分(c)が成分(a)、(b)および(d)の硬化剤成分であるので、成分(c)は成分(a)、成分(b)および成分(d)とは分離しなければならない。従って、通常、成分(a)、成分(b)および成分(d)は一つのパッケージ(第1パッケージと呼ぶ。)にし、成分(c)を別のパッケージ(第2パッケージと呼ぶ。)にする。成分(e)はどちらにパッケージでも良いが、一般には第1パッケージに配合するのが好ましい。
二つのパッケージの混合時期については、使用直前に第1パッケージと第2パッケージを混合して、通常の塗装ガンで塗装してもよい。また、2液混合ガンでそれぞれの液をガンまで送液しガン先で混合する方法で塗装してもよい。
その他の(任意)成分
本発明の二液型熱硬化性樹脂組成物には、架橋密度を上げ、耐水性の向上をはかるために、ブロック化イソシアネートを加えてもよい。また、塗装膜の耐候性向上のために、紫外線吸収剤およびヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤等を加えても良い。更にレオロジーコントロール剤として架橋樹脂粒子や、外観の調整の為表面調整剤を添加しても良い。更にまた、粘度調整等のために希釈剤としてアルコール系溶剤(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノール等)、ヒドロカーボン系、およびエステル系等の溶剤を使用しても良い。
架橋樹脂粒子を用いる場合は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の樹脂固形分100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の量で添加される。架橋樹脂粒子の添加量が10重量部を上回ると外観が悪化し、0.01重量部を下回るとレオロジーコントロール効果が得られない。
本発明は、上述の熱硬化性樹脂組成物をバインダー成分として含有する塗料組成物も提供する。本発明の塗料組成物の製造法は特に限定されず、当業者に周知の全ての方法を用いうる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には着色顔料を含んでもよい。着色顔料としては、例えば有機系の顔料、および無機系の顔料が挙げられる。また、体質顔料、更に、アルミニウム粉、マイカ粉等の扁平顔料を併用しても良い。
塗膜形成方法
本発明の塗膜形成方法は、被塗物に電着塗膜等の下塗り塗膜を形成した後、中塗り塗料により中塗り塗膜を形成し硬化した後、基板上に水系または溶剤系ベース塗料によりベース塗膜を塗布する工程、ベース塗膜を硬化させずに、この上に、本発明の熱硬化性樹脂組成物を塗布する工程および加熱することにより、ベース塗膜とクリヤー塗膜とを硬化させる工程を包含する積層塗膜の形成方法において、上記熱硬化性樹脂組成物が、(a)ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸、(b)カルボキシル基含有ポリエステル樹脂および(d)酸無水物基含有化合物を含有する主剤と(c)水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂を含有する硬化剤とを、塗布前に、前記主剤に含まれる酸無水物基成分と、前記硬化剤に含まれるエポキシ基成分との当量比が2/1〜1/2になるように混合し調整することを特徴とする二液型熱硬化性樹脂組成物である。
本発明の塗膜形成方法は、種々の基材、例えば金属、プラスチック、発泡体等、特に金属表面、および鋳造物に有利に用い得るが、カチオン電着塗装可能な金属製品に対し、特に好適に使用できる。上記金属製品としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等およびこれらの金属を含む合金が挙げられる。具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体および部品が挙げられる。これらの金属は予めリン酸塩、クロム酸塩等で化成処理されたものが特に好ましい。
上記下塗り塗膜を形成する電着塗料としては、カチオン型およびアニオン型を使用できるが、カチオン型電着塗料組成物が防食性において優れた積層塗膜を与える。
上記中塗り塗膜を形成する中塗り塗料は、有機系、無機系の各種着色顔料、体質顔料等、塗膜形成性樹脂および硬化剤等を含有する。中塗り塗膜は、下地を隠蔽し、上塗り塗装後の表面平滑性を確保(外観向上)し、塗膜物性(耐衝撃性、耐チッピング性等)を付与することができる。
上記中塗り塗料に用いられる着色顔料としては、例えば有機系の顔料、および無機系の顔料が挙げられる。また、体質顔料、更に、アルミニウム粉、マイカ粉等の扁平顔料を併用しても良い。標準的には、カーボンブラックと二酸化チタンを主要顔料としたグレー系中塗り塗料が用いられる。更に、上塗り塗色と明度あるいは色相等を合わせたセットグレーや各種の着色顔料を組み合わせた、いわゆるカラー中塗り塗料を用いることもできる。
上記中塗り塗料に用いられる塗膜形成性樹脂としては、特に限定されるものではなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができ、これらはアミノ樹脂および/またはブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いられる。顔料分散性あるいは作業性の点から、アルキド樹脂および/またはポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組合せが好ましい。
ベース塗料を、自動車車体等に塗装する場合には、意匠性を高めるためにエアー静電スプレー塗装、あるいは、通称「μμ(マイクロマイクロ)ベル」、「μ(マイクロ)ベル」あるいは「メタベル」等と言われる回転霧化式の静電塗装機による多ステージ塗装、好ましくは2ステージが好適に用い得る。
本発明の塗膜形成方法において、上記ベース塗膜を形成した後に塗装されるクリヤー塗膜は、上記ベース塗膜に含まれる光輝性顔料に起因する凹凸、チカチカ等を平滑にし、保護するために形成される。塗装方法として具体的には、先に述べたμμベル、μベル等の回転霧化式の静電塗装機により塗膜形成することが好ましい。
上記クリヤー塗料により形成されるクリヤー塗膜の乾燥膜厚は、所望の用途により変化するが、多くの場合10〜80μm、より好ましくは20〜60μm程度である。上限を越えると、鮮映性が低下したり、塗装時にムラ、ピンホールあるいは流れ等の不具合が起こることがあり、下限を下回ると、下地が隠蔽できず膜切れが発生する。
上記クリヤー塗膜の塗装後、塗膜を硬化させる硬化温度を80〜180℃、好ましくは120〜160℃に設定することで高い架橋度の硬化塗膜を得られる。上限を越えると、塗膜が固く脆くなり、下限未満では硬化が充分でない。硬化時間は硬化温度により変化するが、120℃〜160℃で5〜15分、好ましくは7〜10分が適当である。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、従来一般的な18〜20分の硬化時間を、5〜15分に短縮することにより効果上の意義を有する。
本発明で形成される積層塗膜の膜厚は、多くの場合30〜300μmであり、好ましくは50〜250μmである。上限を越えると、冷熱サイクル等の膜物性が低下し、下限を下回ると膜自体の強度が低下する。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
合成例1
ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸の合成(成分(a))
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管、適下ロートを備えた反応槽にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート46.5重量部、ソルベッソ100(エッソ社製芳香族系炭化水素溶媒)51.8重量部を仕込み、130℃に昇温した。上記の容器に、適下ロートを用い、スチレンモノマー16.4重量部、アクリル酸n−ブチル18.86重量部、アクリル酸イソボルニル7.7重量部、メタクリル酸シクロヘキシル22.53重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル13.94重量部、無水マレイン酸18重量部およびアクリル酸2.57重量部、及びt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト8.5重量部と5.2重量部のソルベッソ100からなる溶液を3時間かけて適下した。滴下終了後30分間にわたり130℃で保持した後、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト1重量部及び2.2重量部のソルベッソ100からなる溶液を30分間で滴下した。この滴下終了後、更に1時間の間130℃にて反応を継続させて、数平均分子量3100、酸無水物基1.84mmol/g(固形分)の酸無水物基含有アクリル樹脂を含む不揮発分58%のワニスを得た。
得られたワニス191重量部に、メタノール9.92重量部を加え、70°Cで23時間反応させ、カルボキシル基2.0mmol/gのハーフエステル基含有アクリル樹脂を含むワニスを得た。なお、この酸無水物基含有アクリル樹脂について、赤外線吸収スペクトルを測定し、酸無水物基の吸収(1785cm−1)が消失するのを確認した。
合成例2
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂の合成(成分(b))
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管を備えた反応槽にペンタエリスリトール8.85重量部、プラクセルM(ダイセル社製ε−カプロラクトンモノマー、商品名)57.5重量部、リカシッドHH-A(新日本理化社製ヘキサヒドロ無水フタル酸、商品名)33.92重量部、酸化ジブチルスズ0.1部を仕込み、150℃に昇温した。
2時間にわたり150℃で保持した後、加温して溶解したヘキサヒドロ無水フタル酸616部を加え、1時間の間150℃で保持した後冷却し、3−エトキシエチルプロピオネート33.4重量部で希釈して数平均分子量2500、重量平均分子量/数平均分子量=1.3、カルボキシル基2.2mmol/g(固形分)および水酸基0.32mmol/g(固形分)のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を含む不揮発分75%のワニスを得た。
合成例3
水酸基とエポキシ基とを含有するアクリル樹脂の合成(成分(c))
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管、適下ロートを備えたオートクレーブに3−エトキシエチルプロピオネート23.7重量部を仕込み、170℃に昇温した。
上記の反応槽に、送液ポンプを用い、スチレン25重量部、メタクリル酸グリシジル30.3重量部、アクリル酸n−ブチル8重量部、アクリル酸イソボルニル23.9重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート12.8重量部、及び、ジ−tert−アミルパーオキサイド3.0部と3−エトキシエチルプロピオネート2.6部とからなる溶液を3時間かけて滴下した。
滴下終了後30分間にわたり170℃で保持した後、ジ−tert−ブチルパーオキサイド0.4部と3−エトキシエチルプロピオネート1.5部からなる溶液を送液ポンプを用いて30分間で滴下した。
この滴下終了後、更に1時間の間170℃にて反応を継続させた後、数平均分子量2200、エポキシ基2.1mmol/g、水酸基0.9mmol/g(固形分)のアクリル樹脂を含む不揮発分76%のワニスを得た。
合成例4
合成例1の最終のメタノールでのハーフエステル化を行なわずに、数平均分子量3100、酸無水物基1.84mmol/g(固形分)の酸無水物基含有アクリル樹脂を含む不揮発分58%のワニスをそのまま用いた。
合成例5
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管を備えた反応槽に1,6−ヘキサンジオール118部、下記構造式を有する化合物596部、キシレン87部、メチルアミルケトン87部を仕込み、130°Cに昇温した。
Figure 0004646545
2時間にわたり130°Cで保持した後、反応を終了して数平均分子量800、酸無水物基のモル数2.8mmol/gの酸無水物基含有ポリエステル樹脂を含む不揮発分80%のワニスを得た。
合成例6
ポリアクリル酸樹脂の合成
温度計、攪拌機、冷却管、窒素導入管、適下ロートを備えた反応槽にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート46.5部、ソルベッソ100(エッソ社製芳香族系炭化水素溶媒)51.8重量部を仕込み、130℃に昇温した。上記の容器に、適下ロートを用い、スチレンモノマー16.45重量部、アクリル酸n−ブチル37.84重量部、アクリル酸イソボルニル16.45重量部、メタクリル酸シクロヘキシル13.46重量部およびアクリル酸15.8重量部、及びt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト8.5重量部と5.2重量部のソルベッソ100からなる溶液を3時間かけて適下した。滴下終了後30分間にわたり130℃で保持した後、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト1重量部及び2.2重量部のソルベッソ100からなる溶液を30分間で滴下した。この滴下終了後、更に1時間の間130℃にて反応を継続させて、数平均分子量2600、カルボキシル基2.2mmol/g(固形分)のポリアクリル酸樹脂を含む不揮発分58%のワニスを得た。
実施例1〜5
熱硬化性樹脂組成物の調製
表1に示す配合で、合成例1で得たハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸(成分(a))、合成例2で得たカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(成分(b))、合成例4または5で得られた酸無水物基含有化合物(成分(d))およびテトラブチルアンモニウムブロマイド硬化触媒0.5部を混合して第1パッケージとした。合成例3で得たアクリル樹脂(成分(c))、チバ・スペシャリティー社製紫外線吸収剤「チヌビン900」2部、三共有機社製光定化剤「サノールLS−440」1部およびUCB社製表面調整剤「モダフロー」0.1部を混合して第2パッケージとした。この2液の状態で保存すれば、室温条件下では反応することはない。上で得られた第1パッケージおよび第2パッケージを使用直前に混合して、酢酸ブチル/キシレン=1/1からなる混合溶剤でフォードカップNo.4で28秒に粘度調整して塗装に用いた。
塗膜形成
厚さ0.8mmのりん酸処理鋼板にカチオン電着塗料(日本ペイント株式会社製パワートップU−50)及び中塗り塗料(日本ペイント株式会社製オルガP−2)をそれぞれ乾燥厚さ25μmおよび40μmとなるように塗装した工程試験板に、水性ベース塗料(日本ペイント社製AR−2000シルバーメタリック)を乾燥塗膜の厚さが約16μmとなるようにエアースプレー塗装し、80℃×5分プレヒートすることによりベース塗膜を形成した。
その上に、粘度調整した熱硬化性樹脂組成物を、乾燥膜厚が約40μmとなるように塗装し、約7分間セッティング後、140℃で9分間焼き付けた。また、同じ試料もう一つ作成し、こちらは150℃で9分間焼き付けた。得られた2つの塗膜の硬化性(耐溶剤性および耐酸性)および外観(フリップ・フロップ性(FF性)および肌)を評価した。結果を表1に示す。
評価方法は以下の通りであった。
耐溶剤性
試料表面にキシレンをマイクロピペットで約0.2ml滴下し、20℃で30分間放置した。30分放置後、残留キシレンを拭き取り、24時間後の塗膜の状態を目視評価した。評価は以下の通りであった。
×:膨潤、チジミが著しい。
△:膨潤、チジミが認められるもの。
○:異常の無いもの。
耐酸性
試料表面に40重量%硫酸水溶液をマイクロピペットで0.5ml滴下し、熱風乾燥機で60℃で15分間加熱した。15分加熱後、試料を水洗し、目視評価した。評価は以下の通りであった。
×:シミ、白化、フクレが著しいもの。
△:シミが認められるもの。
○:異常の無いもの。
フリップ・フロップ性(FF性
ミノルタ製分光色差計CM-512M3の受光角度25°(ハイライト)と75°(シェード)のL値の比で評価した。尚、評価した塗色は淡彩シルバーで受光角度25°(正面)のL値が約105のものとした。評価は以下の通りであった。
×:25°に対する75°のL値の比が2.2のもの。
△:25°に対する75°のL値の比が2.2〜2.5のもの。
○:25°に対する75°のL値の比が2.5のもの。

目視により判断した。評価は以下の通りであった。
×:シワ、チヂミが存在し、ツヤ感も劣る。
△:平滑な肌であるが、細かい凹凸(ムジ感)があり、ツヤ感劣る。
○:平滑な肌で、ツヤ感良好。
混層性
比較用ベース単層塗膜の形成
先の実施例の塗膜形成方法と同様の手順で作成した中塗塗板に、先の実施例と同様の方法で、同じベース塗料を乾燥膜厚が同じになるように塗装し、ベース塗膜のみの(クリヤー塗膜のない)塗板を作成した。ついで、実施例と同じ条件でプレヒートおよび焼き付けを行い、ベース単層の積層塗膜を作成した。
評価方法
ベース単層塗膜を基準として、2コート1ベーク塗装方法によりえられた(クリヤー塗料をベース塗膜上にウェットオンウェットで塗装した)実施例の積層塗膜との色差(ΔL)を測定しミノルタ製分光色差計「CM−512M3」で測定し、色差の値を混層性の評価とした。値が小さいほど混層性に優れていることを示す。
判断基準
○:ΔL値が0.5以下である。
△:ΔL値が0.5を越えて、2以下である。
×:ΔL値が2を越える。
比較例1
成分(d)の酸無水物基含有化合物を用いずに、成分(a)の配合量を32重量%にする以外は実施例1と同様に処理し、塗膜を評価した。結果を表1に示す。
比較例2
成分(a)と成分(b)の樹脂を用いずに、酸成分として合成例6のポリアクリル酸を49重量%用いる以外は実施例と同様に処理し、塗膜を評価した。結果を表1に示す。
比較例3
この例は、先行例の米国特許4,816,500号に近い例である。成分(a)と(b)の代わりに、合成例3で合成したポリグリシジルメタクリレートを51重量%にする以外は実施例と同様に処理し、塗膜を評価した。結果を表1に示す。
Figure 0004646545
(注)配合欄の数値は固形分重量を示す。
上記実施例と比較例を見ると、130℃または150℃のいずれの硬化温度でも、実施例の成分(a)、(b)、(c)および(d)を含む例では、9分間の短い硬化温度で十分な硬化性と、外観(FF性、肌、混層性)が得られており、従来用いられている18〜20分の硬化時間の半分に近い硬化時間で十分な性能を発揮することが分かる。比較例1においては、極性の低い酸無水物化合物(d)が配合されていないので硬化性が不十分なことに加えて、混層性レベルが低い。また、比較例3では、酸−エポキシ硬化系の従来技術のヒドロキシル基を含まないエポキシ含有アクリルを用いた例では150℃の硬化温度でも外観が不十分であり、130℃の硬化温度ではやはり硬化が悪化してくる。比較例2は酸性分としてハーフエステル基や酸無水物基を用いないでポリアクリル酸を用いた例であるが、本発明のように酸性分として成分(a)と(d)の両方を用いない場合は、硬化性および外観共に不足する。比較例1は、成分(d)の酸無水物基含有化合物を含まない例であるが、外観が不足してくる。

Claims (6)

  1. (a)酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマーと酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマーとを共重合させることにより得られる酸無水物基を0.08〜5.3mmol/g(固形分)および数平均分子量を500〜8000有する酸無水物基含有アクリル樹脂(i)と、1〜12個の炭素原子を有するモノアルコール(ii)とを、酸無水物基と水酸基とがモル比で1/10〜1/1となる割合の量で反応させることにより得られる、ハーフエステル基を有するアクリル系ポリカルボン酸、
    (b)3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールと酸無水物基含有化合物とを反応させて得られるカルボキシル基を0.8〜6.3mmol/g(固形分)、数平均分子量400〜3500および重量平均分子量/数平均分子量の比が1.8以下を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、
    (c)水酸基含有エチレン性不飽和モノマーとエポキシ基含有エチレン性不飽和モノマーと水酸基およびエポキシ基の両方とも有しないエチレン性不飽和モノマーとを共重合することにより得られる水酸基を0.08〜5.4mmol/g(固形分)、エポキシ基を1.2〜10.0mmol/g(固形分)および数平均分子量を200〜10000有する、水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂、および
    (d)酸無水物基を0.9〜10.0mmol/g(固形分)有する酸無水物基含有化合物、を、
    成分(a)が10〜50重量%、成分(b)が5〜50重量%、成分(c)が10〜80重量%、および成分(d)が5〜70重量%(ただし、重量%は二液型熱硬化性樹脂組成物の全固形分重量を100%とした値である)の範囲で含有する
    二液型熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記成分(d)が、
    一分子中に酸無水物基を少なくとも2個有する化合物、
    一分子中に2個以上の酸無水物基を含有する数平均分子量200〜5000の酸無水物基含有ポリエステル樹脂、
    酸無水物基含有エチレン性不飽和モノマー5〜80重量%と酸無水物基を有しないエチレン性不飽和モノマー20〜95重量%とを共重合させることにより得られる酸無水物基含有アクリル樹脂(i)、および
    これらの混合物
    からなる群から選択される、請求項1記載の二液型熱硬化性樹脂組成物。
  3. 成分(a)、(b)および(d)を第1パッケージとし、成分(c)を第2パッケージとし、塗布前に、第1パッケージと第2パッケージを、第1パッケージに含まれる酸無水物基成分である成分(a)および成分(d)と、第2パッケージに含まれるエポキシ基成分とが、酸無水物基成分/エポキシ基成分の当量比2/1〜1/2になるように混合する請求項1記載の二液型熱硬化性樹脂組成物。
  4. 第1または第2のいずれかのパッケージ若しくは両方に、(e)硬化触媒を含有することを特徴とする請求項記載の二液型熱硬化性樹脂組成物。
  5. 下塗りまたは中塗りした基板上に水系または溶剤系ベース塗料を塗布する工程;ベース塗膜を硬化させずに、この上に、請求項1〜いずれかに記載の二液型熱硬化性樹脂組成物を塗布する工程;および加熱することにより、ベース塗膜と二液型熱硬化性樹脂組成物とを硬化させる工程;を包含する塗膜形成方法。
  6. 請求項記載の方法で得られる塗装物。
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