JP2014189687A - 艶消し塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐アルカリ性、耐擦り傷性、耐候性及び塗膜外観に優れた艶消し塗膜を形成することができる艶消し塗料組成物を提供すること。
【解決手段】(A)アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体、及び(B)カルボキシル基含有化合物、または(A)アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体、(B)カルボキシル基含有化合物、及びポリエポキシド(C)を含有することを特徴とする艶消し塗料組成物であって、アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)が、(a1)シリカ粒子、(a2)アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー、(a3)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、ならびに(a4)その他の重合性不飽和モノマーを反応させて得られるアクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体である艶消し塗料組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐アルカリ性、耐擦り傷性、耐候性及び塗膜外観に優れた艶消し塗膜を形成することができる艶消し塗料組成物に関する。
従来、自動車等の車体の外板塗膜は、光沢のある意匠が一般的であったが、近年新しい意匠として光沢のおさえられた、所謂艶消し意匠が注目されている。
艶消し意匠を呈する塗膜(以下「艶消し塗膜」と称することがある)を形成する手段として、シリカ粉末を配合した塗料が知られている。シリカ粉末を配合した塗料を塗装することによって得られる塗膜が艶消し意匠を呈する理由は、シリカ粉末が塗膜表面に微小な凹凸を形成することによって、光が散乱されるためであるといわれている。
例えば、特許文献1には、ウレタン樹脂を含むベース樹脂、低光沢二成分クリアコートの適用直前に前記ベース樹脂と組み合わされて二成分ベース樹脂混合物を形成するイソシアネート樹脂及びシリカベースの艶消剤をそれぞれ特定量含む低光沢二成分クリアコートが記載されている。
特開2012−97260号公報
一方、自動車車体等の被塗物に塗装される塗料には耐アルカリ性、耐擦り傷性、耐候性及び塗膜外観等の塗膜性能に優れることが要求されている。
しかしながら、特許文献1に記載の低光沢二成分クリアコートによって形成される艶消し塗膜では、耐アルカリ性、耐擦り傷性、耐候性及び塗膜外観が不十分であった。
したがって、本発明は、耐アルカリ性、耐擦り傷性、耐候性及び塗膜外観に優れた艶消し塗膜を形成することができる艶消し塗料組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、特定のアクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体及びカルボキシル基含有化合物、または、特定のアクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体、カルボキシル基含有化合物及びポリエポキシドを含有することを特徴とする艶消し塗料組成物が、耐アルカリ性、耐擦り傷性、耐候性及び塗膜外観に優れた艶消し塗膜を形成することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、(A)アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体、及び(B)カルボキシル基含有化合物、または(A)アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体、(B)カルボキシル基含有化合物、及びポリエポキシド(C)を含有することを特徴とする艶消し塗料組成物であって、アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)が、(a1)シリカ粒子、(a2)アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー、(a3)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、ならびに(a4)その他の重合性不飽和モノマーを反応させて得られるアクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体である艶消し塗料組成物を提供するものである。
さらに、本発明は上記の艶消し塗料組成物を塗装して得られる塗膜を含む物品を提供するものである。
またさらに、本発明は被塗物に順次、少なくとも1層の着色ベースコート塗料及び少なくとも1層のクリヤコート塗料を塗装することにより複層塗膜を形成する方法であって、最上層のクリヤコート塗料として上記艶消し塗料組成物を塗装することを含む複層塗膜形成方法を提供するものである。
本発明の艶消し塗料組成物は、耐アルカリ性、耐擦り傷性、耐候性及び塗膜外観に優れた艶消し塗膜を形成することができる。
以下、本発明の艶消し塗料組成物について詳細に説明する。本発明の艶消し塗料組成物(以下、「本塗料」と略称する場合がある)は、(A)アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体、及び(B)カルボキシル基含有化合物、または(A)アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体、(B)カルボキシル基含有化合物、及びポリエポキシド(C)を含有することを特徴とする艶消し塗料組成物であって、アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)が、(a1)シリカ粒子、(a2)アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー、(a3)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、ならびに(a4)その他の重合性不飽和モノマーを反応させて得られるアクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体である、艶消し塗料組成物である。
アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)
アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)は、アクリル樹脂で被覆されたシリカ粒子が分散媒中に分散しているものである。
上記分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール等の多価アルコール系溶剤;3−メトキシブチルアセテート、ブチルプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン、「スワゾール1000」(丸善石油化学社製、商品名、高沸点石油系溶剤)等の芳香族系溶剤;等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することが出来る。上記分散媒としては、本発明の艶消し塗料組成物に含まれる他の成分との相溶性が良く、耐アルカリ性等に優れた塗膜を得る観点からエステル系溶剤が好ましく、そのなかでも特にエチル−3−エトキシプロピオネートが好ましい。
アクリル樹脂で被覆されたシリカ分散体(A)は例えば、シリカ粒子(a1)、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)及びその他の重合性不飽和モノマー(a4)を反応させて得ることができる。
シリカ粒子(a1)
上記シリカ粒子(a1)は、後述するアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)との反応により共有結合を形成して重合性不飽和基による表面修飾が可能で艶消し用途に適用できるシリカ粒子であれば何れでも使用することができる。このようなシリカ粒子(a1)としては、乾式シリカ、湿式シリカ、シリカゲル、カルシウムイオン交換シリカ微粒子、コロイダルシリカ等を挙げることができる。
特に、艶消し性の観点から、乾式シリカ及び湿式シリカが好ましい。このうち溶媒を吸収しにくく、アクリル樹脂被覆シリカ粒子を調製しやすいという観点から、湿式シリカが好ましい。また、少量で艶消し性能を発揮する観点から乾式シリカも好ましい。
なお、本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。また、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
シリカ粒子(a1)の平均一次粒子径は、1.0〜50μmが好ましく、4.0〜40μmがより好ましい。平均一次粒子径が1μm未満であると、つや消し効果に劣る場合がある。平均一次粒子径が50μm以上であると、塗膜外観が損なわれる場合がある。
本明細書において、シリカ粒子(a1)の平均一次粒子径は、レーザー散乱法を用いて測定された粒度分布のD50値のことを指す。D50値とは体積基準の粒度分布から、小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒径のことである。本明細書において、シリカ粒子の体積基準の粒度分布はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「マイクロトラックNT3300」(商品名、日機装社製)を使用して測定された。その際、前処理としてシリカ粒子をアセトン及びイソプロピルアルコールの混合溶剤に加えて1分間超音波をかけることによって分散し、シリカ粒子濃度を装置に設定された所定の透過率範囲となる濃度に調整した。
上記シリカ粒子(a1)として使用できる市販品としては例えば、
富士シリシア社製のサイリシアシリーズ(サイリシア350、サイリシア430、サイリシア435、サイリシア436、サイリシア450等)、サイロホービックシリーズ(サイロホービック100、サイロホービック200、サイロホービック702、サイロホービック100、4004等)、サイロスフェアシリーズ(サイロスフェア1504、サイロスフェア1510等)、
グレースジャパン社製のSYLOIDシリーズ(サイロイドW300、サイロイドW500等)、
エボニックデグサジャパン社製のACEMATTシリーズ(ACEMATT HK460、ACEMATT HK400、ACEMATT OK412、ACEMATT TS100、ACEMATT 3200、ACEMATT 3300、ACEMATT 3600等)、
日本シリカ工業社製のNIPGELシリーズ(NIPGEL AZ−200等)、NIPSILシリーズ(NIPSIL E−200A等)、
水澤化学社製のミズカシルシリーズ(ミズカシルP−73、P−526等)、
塩野義製薬社製のカープレックスシリーズ(カープレックス CS−8等)、
日本アエロジル社製のAEROSILシリーズ(AEROSIL 200、AEROSIL R805及びAEROSIL R972等)、
昭和化学工業社製のラヂオライトシリーズ(ラヂオライト100、ラヂオライト200、ラヂオライト500、ラヂオライト500R、ラヂオライト500RS等)、
等が挙げられる。
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)(以下、「モノマー成分(a2)」と略記することがある)としては、1分子中にアルコキシシリル基と不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物であれば特に制限なく使用できる。なかでも例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、各種シランカップリング剤の有する加水分解性シリル基以外の官能基と不飽和化合物の不飽和基以外の官能基との反応により得られるアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。
上記各種シランカップリング剤の有する加水分解性シリル基以外の官能基と不飽和化合物の不飽和基以外の官能基との反応としては、例えば、「イソシアネート基及び加水分解性シリル基を有する化合物、ならびに、水酸基及び不飽和基を有する化合物の反応」、「イソシアネート基及び加水分解性シリル基を有する化合物、ならびに、アミノ基及び不飽和基を有する化合物の反応」、「水酸基及び加水分解性シリル基を有する化合物、ならびに、イソシアネート基及び不飽和基を有する化合物の反応」、「アミノ基及び加水分解性シリル基を有する化合物、ならびに、イソシアネート基及び不飽和基を有する化合物の反応」、「カルボキシル基及び加水分解性シリル基を有する化合物、ならびに、水酸基及び不飽和基を有する化合物の反応」、「水酸基及び加水分解性シリル基を有する化合物、ならびに、カルボキシル基及び不飽和基を有する化合物の反応」等を挙げることができる。
エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)
エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)(以下、「モノマー成分(a3)」と略記することがある)としては、1分子中にエポキシ基と不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物であれば特に制限なく使用できる。なかでも例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの脂環式エポキシ基含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)の使用量は、得られる塗膜の耐アルカリ性、耐候性、硬化性等の観点から、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)及びその他の重合性不飽和モノマー(a4)量の合計量を100質量部として、15〜55質量部、好ましくは20〜50質量部、さらに好ましくは25〜45質量部であることが好適である。
その他の重合性不飽和モノマー(a4)
その他の重合性不飽和モノマー(a4)(以下、「モノマー成分(a4)」と略記することがある)としては、モノマー成分(a2)及び(a3)と共重合可能な重合性不飽和モノマーであればいずれも使用することができる。
以下にその他の重合性不飽和モノマー(a4)として好ましいモノマーを列挙する。
(a4−1)水酸基含有重合性不飽和モノマー:水酸基含有重合性不飽和モノマー(a4−1)は、1分子中に水酸基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜10の2価アルコールとのモノエステル化物が好適であり、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。さらに、該水酸基含有重合性不飽和モノマーとして、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトン等のラクトン類との開環重合付加物等を挙げることもできる。具体的には、例えば、「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、「プラクセルFM−5」(以上、いずれもダイセル化学社製、商品名)等を挙げることができる。
(a4−2)酸基含有重合性不飽和モノマー:1分子中に1個以上の酸基と1個の不飽和結合とを有する化合物で、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸等の如きカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等の如きスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクロイルオキシエチルフェニルリン酸等の酸性リン酸エステル系重合性不飽和モノマー等。
(a4−3)(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化物:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート,tert−ブチル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(商品名、大阪有機化学工業社製)、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等
(a4−4)脂環式炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー:シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3−テトラシクロドデシルメタアクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−エチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等。なかでも、耐酸性および耐汚染性の観点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、脂環式炭化水素基および水酸基を両方有する重合性不飽和モノマーは、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a4−1)に含まれるものとする。
(a4−5)芳香族系重合性不飽和モノマー:例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(a4−6)窒素含有重合性不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等。
(a4−7)その他のビニル化合物:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、バーサティック酸ビニルエステルである「ベオバ9」、「ベオバ10」(商品名、ジャパンケムテック社製)等。
(a4−8)不飽和結合含有ニトリル系化合物:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
上記その他の共重合可能な重合性不飽和モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、耐アルカリ性及び耐候性等が向上する観点から、その他の重合性不飽和モノマー(a4)の少なくとも1種として水酸基含有重合性不飽和モノマー(a4−1)を使用することが好ましい。
かかる場合、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a4−1)の使用量は、その他の重合性不飽和モノマー(a4)総量を100質量部として、10〜50質量部、好ましくは15〜45質量部、さらに好ましくは20〜40質量部であることが好適である。
また、形成される塗膜の耐擦り傷性等の観点から、その他の重合性不飽和モノマー(a4)の少なくとも1種として芳香族系重合性不飽和モノマー(a4−5)を使用することが好ましい。
かかる場合、芳香族系重合性不飽和モノマー(a4−5)の使用量は、その他の重合性不飽和モノマー(a4)量を100質量部として、2〜30質量部、好ましくは3〜25質量部、さらに好ましくは4〜20質量部であることが好適である。
アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)のアクリル樹脂の水酸基価は、形成される塗膜の耐擦り傷性及び耐候性等の観点から、0〜200mgKOH/g、特に50〜180mgKOH/g、さらに特に90〜150mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
また、上記アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)を被覆している樹脂のガラス転移温度Tgは、形成される塗膜の耐擦り傷性の観点から、−40〜40℃の範囲内であることが好ましく、−30〜30℃の範囲内であることがさらに好ましい。
本発明において、ガラス転移温度Tgは、下記式により算出される値である。
1/Tg(K)=W/T+W/T+・・・W/T
Tg(℃)=Tg(K)−273
式中、W、W、・・・Wは各モノマーの質量分率であり、T、T・・・Tは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK Fourth Edition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が5万程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度をセイコー電子工業DSC220U(示差走査型熱量計)により測定した値である。測定は試料50mgを専用のサンプル皿に所定量秤取し、130℃で3時間乾燥させた後、不活性気体中で、−50℃から10℃/分のスピードで150℃まで昇温し、得られた熱量変化カーブの変曲点の温度を読み取ることにより行った。
また、上記アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)を被覆している樹脂の重量平均分子量は、耐候性、耐アルカリ性、耐擦り傷性、塗膜外観等の観点から、好ましくは5000〜100000の範囲内であり、さらに好ましくは8000〜80000の範囲内であることが好適である。
アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)を被覆している樹脂の重量平均分子量は、モノマー成分(a2)〜(a4)から作成したポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフによって測定した値をいう。
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)の製造方法
アクリル樹脂で被覆されたシリカ粒子を得る方法としては例えば、シリカ粒子(a1)、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)及びその他の重合性不飽和モノマー(a4)とを反応させる方法が挙げられる。
成分(a1)〜(a4)を反応させる方法としては、
方法I:成分(a1)〜(a4)を同時に反応させる方法、
方法II:成分(a1)及び成分(a2)とから、重合性不飽和基を有するシリカ粒子を作成し、該シリカ粒子、成分(a3)及び成分(a4)を反応させる方法、
方法III:成分(a2)、成分(a3)及び成分(a4)とからアルコキシルシリル基を有するポリマーを作成し、該ポリマーと成分(a1)とを反応させる方法等が挙げられる。
アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)を製造する際の各成分の配合割合は、成分(a2)、成分(a3)及び成分(a4)の合計量を100質量部として、
シリカ粒子(a1)が14〜700質量部、好ましくは30〜400質量部、さらに好ましくは、50〜300質量部、であることが好適である。
シリカ粒子(a1)の配合割合が14質量部未満であると、得られる塗膜の艶消し性に劣る場合があり、700質量部より多いと、得られるアクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)の粘度が高くなるため、取り扱いが困難になる場合がある。
また、シリカ粒子(a1)とアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)の配合割合は、得られる塗膜の外観及び耐アルカリ性等の観点から、シリカ粒子(a1)を100質量部として、 アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)が0.2〜95質量部、好ましくは0.5〜50質量部、さらに好ましくは、1.0〜10質量部、であることが好適である。
さらに、上記重合性不飽和基を有するシリカ粒子及びその他の重合性不飽和モノマー(a4)の配合割合は、形成される塗膜の外観の観点から、[シリカ粒子(a1)とアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)との合計量]:[エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)とその他の重合性不飽和モノマー(a4)との合計量]として、固形分質量比で、20:80〜90:10であり、好ましくは30:70〜70:30の範囲内であることが好適である。
方法I
アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)はシリカ粒子(a1)、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)及びその他の重合性不飽和モノマー(a4)を、溶媒の存在下で重合反応させることにより得ることができる。以下、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)及びその他の重合性不飽和モノマー(a4)を、まとめて「モノマー成分」と称することがある。
上記重合方法としては特に限定されるものではなく、それ自体既知の重合方法を用いることができるが、なかでも有機溶剤中にて、適宜、触媒、重合開始剤等の存在下で重合を行う溶液重合法を好適に使用することができる。
上記溶液重合法において使用される有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(商品名、丸善石油化学社製、高沸点石油系溶剤)等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒;トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチルプロピオネート、メチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール系溶媒;n−ブチルエーテル、ジオキサン、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、形成される塗膜外観の観点から芳香族系溶剤及びエステル系溶剤が好ましく、エステル系溶剤がさらに好ましい。
上記重合に際して使用できる重合開始剤としては特に限定されるものではなく、例えばベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2’−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルヒドロキシパーオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、過酸化水素等の過酸化物系重合開始剤;1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−ジ(2−ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)等のアゾ系重合開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸系開始剤、過酸化物と還元剤とからなるレドックス型開始剤等といったそれ自体既知のラジカル重合開始剤を挙げることができる。
また、アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)には、未反応のモノマー成分または、シリカ粒子(a1)とは反応せずにモノマー同士で反応してポリマーとなった成分を含んでいても構わない。
前記反応は、酸素による重合反応阻害を抑制し、反応率を向上させる観点から反応容器内の気相を不活性ガスにより置換して撹拌しながら行うことが好ましい。反応温度と反応時間は、モノマー成分の種類等により適宜選択することができるが、反応温度は約0℃〜約250℃の範囲内であるのが好ましく、反応時間は1〜72時間の範囲内であるのが好ましい。反応は、通常、常圧下で行うことができるが、加圧又は減圧下でも行うことができる。
上記反応における、モノマー成分の重合率は、耐アルカリ性、耐擦り傷性及び耐候性等の塗膜性能の観点から、約95%以上であることが好ましい。未反応のモノマー成分の量は、反応時間を延長して減少させることができる。また、ラジカル重合開始剤を添加して重合反応をさらに行うことによっても、未反応のモノマー成分の量を減少させることができる。また、得られたアクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)は、所望により、溶媒を水等の他の溶媒に置換してもよい。
方法II
アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)はシリカ粒子(a1)及びアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)とから重合性不飽和基を有するシリカ粒子を作成し、該シリカ粒子と、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)と、その他の重合性不飽和モノマー(a4)とを、溶媒の存在下で重合反応させることにより得ることができる。
シリカ粒子(a1)とアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)とを反応させる方法としては、特に限定されない。例えば、[i]水を含む有機溶剤の存在下にシリカ粒子(a1)とアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)とを混合し、加水分解縮合を行う方法、[ii]水を含む有機溶剤の存在下でアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)を加水分解した後に得られる加水分解物とシリカ粒子(a1)とを縮合させる方法が挙げられる。
ここで、これら製造方法において使用する水は、原材料に含まれる水、例えば、シリカ粒子の分散媒である水であってもよい。
これらの製造方法によりシリカ粒子(a1)表面のケイ素原子と、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)のケイ素原子が酸素原子を介して結合し、シロキサン結合が形成されることにより、シリカ粒子(a1)とアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)とが化学的に結合した重合性不飽和基を有するシリカ粒子を得ることができる。
アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)は上記で得られた重合性不飽和基を有するシリカ粒子と、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)と、その他の重合性不飽和モノマー(a4)とを、溶媒の存在下で重合反応させることにより得ることができる。該重合方法としては特に限定されるものではなく、それ自体既知の重合方法を用いることができるが、なかでも有機溶剤中にて、適宜、触媒、重合開始剤等の存在下で重合を行う溶液重合法を好適に使用することができる。該溶液重合法については前記方法Iに記載した方法と同様である。
また、アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)には、未反応のモノマー成分または、シリカ粒子(a1)とは反応せずにモノマー同士で反応してポリマーとなった成分を含んでいても構わない。
方法III
アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)はアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)及びその他の重合性不飽和モノマー(a4)とからアルコキシシリル基を有するポリマーを作成し、該ポリマーとシリカ粒子(a1)を、溶媒の存在下で反応させることにより得ることができる。
上記アルコキシシリル基を有するポリマーはアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)と、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)と、その他の重合性不飽和モノマー(a4)とを、溶媒の存在下で重合反応させることにより得ることができる。該重合方法としては特に限定されるものではなく、それ自体既知の重合方法を用いることができるが、なかでも有機溶剤中にて、適宜、触媒、重合開始剤等の存在下で重合を行う溶液重合法を好適に使用することができる。該溶液重合法については前記方法Iに記載した方法と同様である。
前記アルコキシシリル基を有するポリマーとシリカ粒子(a1)とを反応させる方法としては、特に限定されない。例えば、[i]水を含む有機溶剤の存在下に前記加水分解性であるアルコキシシリル基を有するポリマーとシリカ粒子(a1)とを混合し、加水分解縮合を行う方法、[ii]水を含む有機溶剤の存在下で前記アルコキシシリル基を有するポリマーを加水分解した後に得られる加水分解物とシリカ粒子(a1)とを縮合させる方法が挙げられる。
ここで、これら製造方法において使用する水は、原材料に含まれる水、例えば、シリカ粒子の分散媒である水であってもよい。
また、アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)には、未反応のモノマー成分または、シリカ粒子(a1)とは反応せずにモノマー同士で反応してポリマーとなった成分を含んでいても構わない。
なお、上記アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)は、通常、シリカ粒子(a1)がアクリル樹脂によって完全に被覆された構造であることが一般的であるが、シリカ粒子(a1)とアクリル樹脂の質量比率等によっては、アクリル樹脂がシリカ粒子(a1)を完全に被覆するのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)はシリカ粒子(a1)の一部をアクリル樹脂が被覆した構造であってもよい。
カルボキシル基含有化合物(B)
カルボキシル基含有化合物(B)は、分子中にカルボキシル基を有する化合物であり、通常50〜500mgKOH/g、好ましくは80〜300mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。
カルボキシル基含有化合物(B)としては、例えば、下記の重合体(1)〜(3)及び化合物(4)を挙げることができる。重合体(1)〜(3)及び化合物(4)は、単独で、又は組合せて使用することができる。
重合体(1):分子中に酸無水基をハーフエステル化してなる基を有する重合体
ここで、酸無水基をハーフエステル化してなる基とは、酸無水基に脂肪族モノアルコールを付加せしめて開環させる(即ち、ハーフエステル化する)ことにより得られるカルボキシル基とカルボン酸エステル基とからなる基を意味する。以下、この基を単にハーフエステル基ということがある。
重合体(1)は、例えば、ハーフエステル基を有する不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、常法により共重合させることによって容易に得ることができる。また、ハーフエステル基を有する不飽和モノマーに代えて、酸無水基を有する不飽和モノマーを用いて同様に共重合させた後、該酸無水基をハーフエステル化することによっても容易に得ることができる。
酸無水基を有する不飽和モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられ、また、ハーフエステル基を有する不飽和モノマーとしては、上記酸無水基を有する不飽和モノマーの酸無水基をハーフエステル化したものなどが挙げられる。なお、ハーフエステル化は、上記のとおり、共重合反応の前後のいずれに行ってもよい。
ハーフエステル化に使用される脂肪族モノアルコールとしては、低分子量のモノアルコール類、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。ハーフエステル化は、通常の方法に従い、例えば、室温ないし約80℃の温度で、必要に応じ3級アミンを触媒として用いて行うことができる。
その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、水酸基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルエーテル又はアリールエーテル、オレフィン系化合物及びジエン化合物、炭化水素環含有不飽和モノマー、含窒素不飽和モノマー、加水分解性アルコキシシリル基含有アクリル系モノマーなどを挙げることができる。
水酸基含有不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸とのモノエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとのモノエーテル;無水マレイン酸や無水イタコン酸のような酸無水基含有不飽和化合物と、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類とのモノエステル化物又はジエステル化物;ヒドロキシエチルビニルエーテルのようなヒドロキシアルキルビニルエーテル類;アリルアルコールなど;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;α,β−不飽和カルボン酸と、「カージュラE10P」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)やα−オレフィンエポキシドのようなモノエポキシ化合物との付加物;グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸、脂肪酸類のような一塩基酸との付加物;上記水酸基含有不飽和モノマーとラクトン類(例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン)との付加物などを挙げることができる。
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル;アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸エトキシブチルなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステルなどが挙げられる。
ビニルエーテル又はアリールエーテルとしては、例えば、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテルなどの鎖状アルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのシクロアルキルビニルエーテル類;フェニルビニルエーテル、トリビニルベンジルエーテルなどのアリールビニルエーテル類;ベンジルビニルエーテル、フェネチルビニルエーテルなどのアラルキルビニルエーテル類;アリルエチルエーテルなどのアリルエーテル類などが挙げられる。
オレフィン系化合物及びジエン化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。
炭化水素環含有不飽和モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニルプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、p−tert−ブチル−安息香酸と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとのエステル化物、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
含窒素不飽和モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの重合性アミド類;2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジンなどの芳香族含窒素モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの重合性ニトリル;アリルアミンなどが挙げられる。
加水分解性アルコキシシリル基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランなどを挙げることができる。
ハーフエステル基又は酸無水物基を有する不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーの共重合は、一般的な不飽和モノマーの重合法を用いて行うことができるが、汎用性やコストなどを考慮して、有機溶剤中における溶液型ラジカル重合法により行うことが最も適している。例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メトキシブチルアセテートなどのエステル系溶剤;n−ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤などの溶剤中で、アゾ系触媒、過酸化物系触媒などの重合開始剤の存在下に、約60〜約150℃の温度で共重合反応を行なうことによって、容易に目的とする重合体を得ることができる。
ハーフエステル基又は酸無水基を有する不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーの各モノマーの共重合割合は、通常、全モノマーの合計質量を基準にして、次のような割合とするのが適当である。即ち、ハーフエステル基又は酸無水基を有する不飽和モノマーは、硬化性や貯蔵安定性などの観点から、一般に10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%の範囲内とすることができ、また、その他の重合性不飽和モノマーは一般に50〜90質量%、好ましくは60〜80質量%の範囲内とするのが適当である。さらに、その他の重合性不飽和モノマーのうちスチレンの使用量は、硬化塗膜の耐候性の観点から、35質量%程度までとするのが適当である。
重合体(1)は1,000〜20,000、特に1,500〜15,000の範囲内の数平均分子量を有するアクリル系重合体であることが好ましい。該重合体の数平均分子量が1,000より小さいと、硬化塗膜の耐候性が低下する傾向にあり、反対に20,000を越えると、ポリエポキシドとの相溶性が低下する傾向が見られる。
重合体(2):分子中にカルボキシル基を有する重合体
重合体(2)は、カルボキシル基含有不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、重合体(1)の場合と同様の方法により共重合させることによって容易に得ることができる。
該カルボキシル基含有不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、3−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、また、その他の重合性不飽和モノマーとしては、重合体(1)で例示した(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルエーテル又はアリールエーテル、オレフィン系化合物及びジエン化合物、炭化水素環含有不飽和モノマー、含窒素不飽和モノマーなどを挙げることができる。
重合体(2)は、硬化塗膜の耐候性やポリエポキシド(C)との相溶性などの観点から、通常1,000〜20,000、特に1,500〜15,000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。
重合体(3):カルボキシル基含有ポリエステル系重合体
カルボキシル基含有ポリエステル系重合体は、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールと、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの多価カルボン酸との縮合反応によって容易に得ることができる。例えば、多価カルボン酸のカルボキシル基過剰配合の条件下で1段階の反応により、カルボキシル基含有ポリエステル系重合体を得ることができ、また、逆に多価アルコールの水酸基過剰配合の条件下でまず水酸基末端のポリエステル系重合体を合成した後、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸などの酸無水基含有化合物を後付加させることによっても、カルボキシル基含有ポリエステル系重合体を得ることができる。
該カルボキシル基含有ポリエステル系重合体(3)は、通常500〜20,000、特に800〜10,000の範囲内の数平均分子量を有するのが適当である。
化合物(4):ポリオールと1,2−酸無水物との反応により生成するハーフエステル
ハーフエステルは、ポリオールと1,2−酸無水物とを、酸無水物の開環反応が起こり且つ実質上ポリエステル化反応が起こらないような条件下で反応させることにより得ることができ、その反応生成物は一般に低分子量でありかつ狭い分子量分布を有している。また、該反応生成物は塗料組成物中において低い揮発性有機物含有量を示し、しかも、形成される塗膜に優れた耐酸性などを付与する。
該ハーフエステルは、例えば、ポリオールと1,2−酸無水物とを、不活性雰囲気、例えば窒素雰囲気中で溶媒の存在下に反応させることにより得ることができる。好適な溶媒としては、例えば、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;その他の有機溶媒、例えばジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
反応温度は150℃程度以下の低い温度が好ましく、具体的には、通常約70〜約150℃、特に約90〜約120℃の温度が好ましい。反応時間は基本的には反応温度に多少依存して変化するが、通常10分〜24時間程度とすることができる。
酸無水物/ポリオールの反応割合は、酸無水物を単官能として計算した当量比で、0.8/1〜1.2/1の範囲内とすることができ、これにより所望のハーフエステルを最大限に得ることができる。
所望のハーフエステルの調製に用いられる酸無水物は、酸部分の炭素原子を除いて炭素数が2〜30の範囲内にあるものを好適に使用することができる。そのような酸無水物の例としては、脂肪族酸無水物、環状脂肪族酸無水物、オレフィン系酸無水物、環状オレフィン系酸無水物及び芳香族酸無水物が挙げられる。これらの酸無水物は、当該酸無水物の反応性又は得られたハーフエステルの特性に悪影響を与えない限りにおいて、置換基を有していてもよい。かかる置換基の例としては、クロロ基、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。酸無水物の例としては、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキルヘキサヒドロフタル酸無水物(例えばメチルヘキサヒドロフタル酸無水物)、テトラフルオロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、クロレンド酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、マレイン酸無水物などが挙げられる。
上記酸無水物のハーフエステル化のために使用し得るポリオールとしては、例えば、炭素数2〜20、特に炭素数2〜10のポリオール、好ましくはジオール類、トリオール類及びそれらの混合物が挙げられる。具体的には、脂肪族ポリオール、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、グリセロール、1,2,3−ブタントリオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ブタンテトラオールなどが挙げられ、また、芳香族ポリオール、例えば、ビスフェノールA、ビス(ヒドロキシメチル)キシレンなどを用いることもできる。
該ハーフエステルは、通常400〜1,000、特に500〜900の範囲内の数平均分子量を有することができ、エポキシ基と高い反応性を有しているので高固形分塗料の調製に役立つ。
ポリエポキシド(C)
ポリエポキシド(C)は、分子中にエポキシ基を有する化合物であり、形成される塗膜の耐アルカリ性、耐擦り傷性及び耐候性等の観点から、エポキシ基含有量が通常0.8〜10ミリモル/g、特に1.2〜5.0ミリモル/gの範囲内にあるものが好適である。
ポリエポキシド(C)としては、例えば、エポキシ基含有アクリル系重合体;ジグリシジルエーテル、2−グリシジルフェニルグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル化合物;ビニルシクロヘキセンジオキサイド、レモネンジオキサイドなどのグリシジル基及び脂環式エポキシ基含有化合物;ジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エポキシシクロヘキセンカルボン酸エチレングリコールジエステル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂環式エポキシ基含有化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
上記のうち、エポキシ基含有アクリル系重合体を好適に使用することができる。
エポキシ基含有アクリル系重合体は、塗膜性能及び仕上がり外観の観点から、数平均分子量1,000〜20,000、特に1,500〜15,000の範囲内にあることが好ましい。
該エポキシ基含有アクリル系重合体は、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、前記重合体(1)の場合と同様の方法により、共重合させることによって容易に得ることができる。
エポキシ基含有不飽和モノマーとしては例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの脂環式エポキシ基含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
上記エポキシ基含有不飽和モノマーの使用量は、得られる塗膜の耐アルカリ性、耐擦り傷性、耐候性、仕上がり外観等の観点から、エポキシ基含有アクリル系重合体の製造に使用する重合性不飽和モノマー量を100質量部として、10〜55質量部、好ましくは15〜50質量部、さらに好ましくは20〜45質量部であることが好適である。
上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、成分(A)の欄で記載した、(a4−1)〜(a4−8)のモノマーを使用することができる。これらのモノマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのモノマーのうち、クリヤ塗膜の耐候性等の塗膜性能の観点から、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a4−1)を使用することが好ましい。
エポキシ基含有アクリル系重合体は、形成される塗膜の耐擦り傷性及び耐候性等の観点から、水酸基価が、0〜200mgKOH/g、特に50〜180mgKOH/g、さらに特に90〜150mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
また、これらのモノマーのうち、酸基含有重合性不飽和モノマー(a4−2)の使用量は、エポキシ基含有アクリル系重合体の製造に使用する重合性不飽和モノマー量を100質量部として、0〜5質量部、好ましくは0〜3質量部、さらに好ましくは0〜1質量部であることが好適である。
艶消し塗料組成物
本発明の艶消し塗料組成物は、前記アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)及び前記カルボキシル基含有化合物(B)、または、前記アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)、前記カルボキシル基含有化合物(B)及び前記ポリエポキシド(C)を含有することを特徴とする艶消し塗料組成物である。
本明細書で艶消し塗料組成物とは、形成塗膜をJIS K 5600−4−7:1999に基づいて測定した60°鏡面反射率の値が40未満であるものをいう。
また、本発明の艶消し塗料組成物において、各成分の配合割合(固形分質量)は、形成される艶消し塗膜の艶消し性、耐候性、耐アルカリ性、耐擦り傷性、塗膜外観等の観点から、下記の範囲内であることが好ましい。
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)、その他の重合性不飽和モノマー(a4)、カルボキシル基含有化合物(B)及びポリエポキシド(C)の合計量を100質量部として、
シリカ粒子(a1):4〜100質量部、好ましくは5〜50質量部、さらに好ましくは6〜15質量部、
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)及びその他の重合性不飽和モノマー(a4)の合計量:1〜80質量部、好ましくは2〜74質量部、さらに好ましくは5〜60質量部、
カルボキシル基含有化合物(B):20〜60質量部、好ましくは25〜50質量部、さらに好ましくは30〜45質量部、
ポリエポキシド(C):0〜79質量部、好ましくは1〜65質量部、さらに好ましくは10〜60質量部。
また、本発明の艶消し塗料組成物は、塗膜の硬化性等の観点から、[カルボキシル基含有化合物(B)のカルボキシル基]と[アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)のエポキシ基とポリエポキシド(C)のエポキシ基との合計量]との当量比で、一般に1/0.5〜0.5/1、特に1/0.7〜0.7/1、さらに特に1/0.8〜0.8/1の範囲内となるようにすることが好ましい。
また、本発明の艶消し塗料組成物は、さらに必要に応じて、アクリル被覆シリカ粒子分散体(A)以外の艶消し剤、有機溶剤、硬化触媒、顔料、顔料分散剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤等の、通常塗料の分野で用いられる塗料用添加剤を含有することができる。
上記アクリル被覆シリカ粒子分散体(A)以外の艶消し剤としては、得られる塗膜の耐アルカリ性、耐擦り傷性、耐候性及び塗膜外観を損なわない範囲で既知の艶消し剤を使用でき、例えば、ガラス、シリカ、樹脂ビーズ等を挙げることができる。該艶消し剤としてシリカを使用する場合は、未処理のものであってもよいし、処理したものであってもよいが、処理したシリカを使用する場合は、その処理は本発明のアクリル被覆処理とは異なるものである。
前記硬化触媒としては、本発明の艶消し塗料組成物中のカルボキシル基とエポキシ基との間の開環エステル化反応に有効な触媒として、例えば、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルフォスフォニウムブロマイド、トリフェニルベンジルフォスフォニウムクロライドなどの4級塩触媒;該4級塩に該4級塩とほぼ当量のジブチルリン酸などの酸性リン酸化合物を配合したもの;トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン化合物などを挙げることができる。これらのうち、4級塩触媒、該4級塩に該4級塩とほぼ当量のジブチルリン酸などの酸性リン酸化合物を配合したものを好適に使用することができる。特に、該4級塩に該4級塩とほぼ当量のジブチルリン酸などの酸性リン酸化合物を配合したものは、上記触媒作用を損なうことなく、塗料の貯蔵安定性を向上させ且つ塗料の電気抵抗値の低下によるスプレー塗装適正の低下を防ぐことができる点から好適である。
上記硬化触媒を使用する場合のその使用割合は、通常、艶消し塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、0.01〜5質量%程度であるのが好ましい。
顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等の着色顔料;タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト等の体質顔料;アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末等のメタリック顔料等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の艶消し塗料組成物がクリヤ塗料として使用される場合であって、顔料を含有する場合、顔料の配合量は、得られる塗膜の透明性を阻害しない程度の量であることが好ましく、例えば艶消し塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常0.1〜20質量部の範囲内であることが好ましく、0.3〜10質量部の範囲内であることがより好ましく、0.5〜5質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
また、本発明の艶消し塗料組成物が着色塗料として使用される場合であって、顔料を含有する場合、顔料の配合量は、艶消し塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜200質量部の範囲内であることが好ましく、2〜100質量部の範囲内であることがより好ましく、5〜50質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の紫外線吸収剤を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の艶消し塗料組成物が、紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の配合量は、艶消し塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましく、0.2〜5質量部の範囲内であることがより好ましく、0.3〜2質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
光安定剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
本発明の艶消し塗料組成物が、光安定剤を含有する場合、光安定剤の配合量は、艶消し塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましく、0.2〜5質量部の範囲内であることがより好ましく、0.3〜2質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
塗装方法
本発明の艶消し塗料組成物(以下、「本塗料」と略記することがある)が適用される被塗物としては、特に限定されるものではないが、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材等を挙げることができる。またこれらにより形成された自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体であってもよい。
また、被塗物としては、上記金属基材や車体の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。更に、被塗物としては、上記金属基材や車体等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜が形成されたものであってもよく、該下塗り塗膜及び中塗り塗膜が形成されたものであってもよく、下塗り塗膜、中塗り塗膜及びベースコート塗膜が形成されたものであってもよく、下塗り塗膜、中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤコート塗膜が形成されたものであってもよい。
本塗料の塗装方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法が挙げられ、これらの方法によりウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法では、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうちでは、エアスプレー塗装又は回転霧化塗装が特に好ましい。本塗料の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10〜50μm程度となる量とするのが好ましい。
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装を行う場合には、本塗料の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップNo.4粘度計において、20℃で15〜60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
被塗物に本塗料を塗装してなるウエット塗膜の硬化は、加熱することにより行われ、加熱は公知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、特に制限されるものではなく例えば60〜180℃、好ましくは90〜150℃の範囲内にあるのが好適である。加熱時間は、特に制限されるものではなく例えば、10〜60分間、好ましくは15〜30分間の範囲内であるのが好適である。
本塗料は、耐擦り傷性、耐酸性、耐汚染性及び塗膜外観のいずれにも優れる硬化塗膜を得ることができることから、上塗りトップクリヤコート塗料として好適に用いることができる。本塗料は、自動車用塗料として特に好適に用いることができる。
複層塗膜形成方法
本塗料が上塗りトップクリヤコート塗料として塗装される複層塗膜形成方法としては、被塗物に順次、少なくとも1層の着色ベースコート塗料及び少なくとも1層のクリヤコート塗料を塗装することにより複層塗膜を形成する方法であって、最上層のクリヤコート塗料として本発明の艶消し塗料組成物を塗装することを含む複層塗膜形成方法を挙げることができる。
具体的には、例えば、電着塗装及び/又は中塗り塗装が施された被塗物上に、ベースコート塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなく、必要に応じてベースコート塗料中の溶媒の揮散を促進させるために、例えば、40〜90℃で3〜30分間程度のプレヒートを行い、この未硬化のベースコート塗膜上にクリヤコート塗料として本塗料の塗装を行った後、ベースコートとクリヤコートを一緒に硬化させる、2コート1ベーク方式の複層塗膜形成方法を挙げることができる。
また、本塗料を3コート2ベーク方式又は3コート1ベーク方式の上塗り塗装におけるトップクリヤコート塗料としても好適に使用することができる。
上記で用いられるベースコート塗料としては、従来から公知の通常の熱硬化型ベースコート塗料を使用することができ、具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂系等の基体樹脂にアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物等の架橋剤を基体樹脂が含有する反応性官能基と適宜組み合わせてなる塗料を使用することができる。
また、ベースコート塗料としては、例えば、水性塗料、有機溶剤系塗料、粉体塗料を用いることができる。なかでも、環境負荷低減の観点から、水性塗料が好ましい。
複層塗膜形成方法において、クリヤコートを2層以上塗装する場合、最上層以外のクリヤコート塗料としては、従来から公知の通常の熱硬化型クリヤコート塗料を使用することができる。
本発明の艶消し塗料組成物において、アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)のシリカ粒子によって耐擦り傷性及び艶消し性を確保し、アクリル樹脂被覆部分により、耐アルカリ性、耐擦り傷性、耐候性及び塗膜外観に優れた塗膜の形成に寄与していると考えられる。
本発明の艶消し塗料組成物がさらに、ポリエポキシド(C)を含有する場合には、カルボキシル基含有化合物(B)とポリエポキシド(C)とが架橋することから耐アルカリ性、耐擦り傷性、耐候性及び塗膜外観に優れるものと考えられる。なかでも特にポリエポキシド(C)としてエポキシ基含有アクリル系重合体を使用する場合には、アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)との相溶性に優れるため、上記各種塗膜性能が向上するものと考えられる。
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されるものではない。各例において、「部」および「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。さらにまた、表中の配合量は固形分質量である。
アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)の製造
製造例1
還流冷却器、温度計、撹拌機および窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコに、エトキシエチルプロピオネート30部を仕込み、攪拌し、窒素を導入しながら95℃に昇温し、そこへスチレン10部、n−ブチルアクリレート40部、ヒドロキシエチルアクリレート20部、グリシジルメタクリレート30部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5部、V−59(商品名、アゾ系ラジカル重合開始剤、和光純薬工業製)6部、エトキシエチルプロピオネート5部を攪拌混合した溶液を4時間かけて滴下した。次いで、0.5時間熟成させた後、V−59 1部およびエトキシエチルプロピオネート4部の混合溶液を添加し、更に0.5時間熟成させて重量平均分子量70,000のアクリル樹脂溶液を得た。
続いて、還流冷却器、温度計、撹拌機および窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコに、「ACEMATT TS100」(商品名、エボニックデグサジャパン社製、シリカ粉体、平均一次粒子径10μm)105部、上記アクリル樹脂溶液を固形分として105部、脱イオン水0.2部、プロピレングリコールモノメチルエーテル70部、エトキシエチルプロピオネート1820部を仕込み、攪拌し、窒素を導入しながら110℃に昇温して1時間反応させた。次いで、減圧状態で共沸留出することで濃縮し、アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A−1)を得た(不揮発分20%)。
製造例2〜6、8〜24
各成分、配合量を、表1に記載した各成分、配合量に代えた以外は、製造例1と同様にして、アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A−2)〜(A−6)、(A−8)〜(A−24)を得た。
なお、製造例1〜5、8〜24のアクリル樹脂被覆シリカ粒子を得る方法は、本明細書の方法IIIによるものである。製造例6は方法IIによるものである。
また、表1中の各シリカ粒子商品名の詳細は下記の通りである。
「サイリシア350」:商品名、富士シリシア社製、シリカ粉体、平均一次粒子径3.7μm
「サイリシア450」:商品名、富士シリシア社製、シリカ粉体、平均一次粒子径8.0μm
「ラヂオライト500RS」:商品名、昭和化学社製、シリカ粉体、平均一次粒子径47μm
「AEROSIL R972」:商品名、日本エアロジル社製、シリカ粉体、平均一次粒子径63μm
「ACEMATT 3600」:商品名、エボニックデグサジャパン社製、変性されて不飽和基が導入されたシリカ粉体、平均一次粒子径5μm
製造例7(方法I)
還流冷却器、温度計、撹拌機および窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコに、「ACEMATT TS100」105部、脱イオン水を0.2部、プロピレングリコールモノメチルエーテル70部、エトキシエチルプロピオネート1820部を仕込み、攪拌し、窒素を導入しながら95℃に昇温し、そこへスチレン10部、n−ブチルアクリレート40部、ヒドロキシエチルアクリレート20部、グリシジルメタクリレート30部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5部、V−59 6部、エトキシエチルプロピオネート5部を攪拌した溶液を4時間かけて滴下した。次いで、0.5時間熟成させた後、V−59 1部および、エトキシエチルプロピオネート4部の混合溶液を添加し、更に0.5時間熟成させた。次いで、減圧状態で共沸留出することで濃縮し、アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A−7)を得た(不揮発分20%)。
Figure 2014189687
Figure 2014189687
カルボキシル基含有化合物(B)の製造
製造例25
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、炭化水素系有機溶剤)680部を仕込み、窒素ガス通気下で125℃に昇温した。125℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、下記モノマー混合物1を一定の速度で4時間かけて滴下した。なお、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートは重合開始剤である。
モノマー混合物1: スチレン500部(25%)、n−ブチルメタクリレート500部(25%)、イソブチルメタクリレート500部(25%)、無水マレイン酸500部(25%)、プロピオン酸2−エトキシエチル 1000部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート100部を混合攪拌して、モノマー混合物を得た。
次いで、125℃で窒素ガスを通気しながら30分間熟成させた後、更に、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部及び「スワゾール1000」80部の混合物を1時間かけて滴下した。その後、60℃に冷却し、メタノール490部及びトリエチルアミン4部を加え、4時間加熱還流下にハーフエステル化反応を行なった。その後、余分なメタノール326部を減圧下で除去し、固形分55%のカルボキシル基含有化合物(B−1)溶液を得た。カルボキシル基含有化合物(B−1)は、数平均分子量が3500、酸価が130mgKOH/gであった。
製造例26
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン553部及び3−メトキシブチルアセテート276部を仕込み、窒素ガス通気下で125℃に昇温した。125℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、下記モノマー混合物2を一定の速度で4時間かけて滴下した。
モノマー混合物2:無水マレイン酸のメタノールハーフエステル化物 288部(20%)、n−ブチルアクリレート 864部(60%)、スチレン 288部(20%)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 72部を混合攪拌して、モノマー混合物を得た。
次いで、125℃で窒素ガスを通気しながら30分間熟成させた後、更に3−メトキシブチルアセテート277部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート14.4部の混合物を2時間かけて滴下して、その後2時間熟成して、固形分55%のカルボキシル基含有化合物(B−2)溶液を得た。カルボキシル基含有化合物(B−2)は、数平均分子量は3500、酸価は86mgKOH/gであった。
製造例27
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオール566部、トリメチロールプロパン437部、アジピン酸467部、ヘキサヒドロ無水フタル酸308部を仕込み、窒素雰囲気下で180℃に昇温し、その後、3時間かけて230℃まで昇温し、230℃で1時間反応させた後、キシレンを加えて還流下で反応させた。樹脂酸価が3mgKOH/g以下となったことを確認後、100℃に冷却してヘキサヒドロ無水フタル酸1294部を加え、再び140℃に昇温して2時間反応させた。冷却後、キシレンで希釈して固形分65質量%のカルボキシル基含有高酸価ポリエステル溶液(B−3)を得た。このポリエステルの数平均分子量は1040であり、樹脂酸価は160mgKOH/gであった。
ポリエポキシド(C)の製造
製造例28
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン410部及びn−ブタノール77部を仕込み、窒素ガス通気下で125℃に昇温した。125℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、下記モノマー混合物3を一定の速度で4時間かけて滴下した。なお、アゾビスイソブチロニトリルは重合開始剤である。
モノマー混合物3: グリシジルメタクリレート 432部(30%)、n−ブチルアクリレート 576部(40%)、スチレン 144部(10%)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 288部(20%)、アゾビスイソブチロニトリル 72部を混合攪拌して、モノマー混合物を得た。
次いで、125℃で窒素ガスを通気しながら30分間熟成させた後、更にキシレン90部、n−ブタノール40部及びアゾビスイソブチロニトリル14.4部の混合物を2時間かけて滴下し、その後2時間熟成して、固形分70%のポリエポキシド(C−1)溶液を得た。得られたポリエポキシド(C−1)は、数平均分子量が2000、エポキシ基含有量が2.12mmol/g、水酸基価が86mgKOH/gであった。
製造例29
製造例28において、モノマー混合物3を下記モノマー混合物4に変更する以外は同様にして、製造を行い、固形分70%のポリエポキシド(C−2)溶液を得た。得られたポリエポキシド(B−2)は、数平均分子量が2000、エポキシ基含有量が2.12mmol/g、水酸基価が130mgKOH/gであった。
モノマー混合物4: グリシジルメタクリレート 432部(30%)、n−ブチルアクリレート 432部(30%)、スチレン 144部(10%)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート 432部(30%)、アゾビスイソブチロニトリル 72部を混合攪拌して、モノマー混合物を得た。
艶消し塗料組成物の製造
実施例1
製造例1で得たアクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A−1)を固形分量で15部、製造例25で得たカルボキシル基含有化合物(B−1)を固形分量で49部、製造例28で得たポリエポキシド(C−1)を固形分量で49部を均一に混合した。
次いで、得られた混合物に、酢酸ブチルを添加し、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度25秒の艶消し塗料組成物(X−1)を得た。
実施例2〜43及び比較例1
各成分、配合量を、表2に記載した各成分、配合量に代えた以外は、実施例1と同様にして、艶消し塗料組成物(X−2)〜(X−32)を得た。
Figure 2014189687
Figure 2014189687
Figure 2014189687
試験板の作成
リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、「エレクロンGT−10」(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を硬化膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させ、その上に「TP−65−2」(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗り塗料)を硬化膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させた。該塗膜上に「WBC−713T No.202」(関西ペイント社製、アクリル・メラミン樹脂系自動車用水性上塗ベースコート塗料、黒塗色)を膜厚15μmとなるように塗装し、室温で5分間放置してから、80℃で10分間プレヒートを行った後、未硬化の該塗膜上に表2の艶消し塗料組成物(X−1)〜(X−32)を硬化膜厚35μmとなるように塗装し、室温で10分間放置してから、140℃で20分間加熱してこの両塗膜を一緒に硬化させることにより試験板を得た。得られた塗膜の性能試験結果を併せて表2に示す。
性能試験方法
艶消し性:
JIS K 5600−4−7:1999に基づいて測定した60°鏡面反射率の値により評価した。下記の基準で評価した。○及び△が合格である。
○:60°鏡面反射率の値が20未満
△:60°鏡面反射率の値が20〜40
×:60°鏡面反射率の値が40以上
耐アルカリ性:
試験板の塗膜表面に1%水酸化ナトリウム水溶液を0.5mL滴下して、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下に24時間放置した後に、塗面をガーゼで拭き取り、外観を目視により、下記の基準で評価した。○及び△が合格である。
○:塗膜表面の異常が全くない
△:塗膜表面の変色(白化)が認められる
×:塗膜表面の変色(白化)が著しい
塗膜外観:
塗面の外観を目視により、下記の基準で評価した。○及び△が合格である。
○:塗膜表面にムラが全くない
△:塗膜表面にムラが認められる
×:塗膜表面のムラが著しい
耐擦り傷性:
ルーフにニチバン社製耐水テープにて試験板を貼りつけた自動車を、20℃の条件下に、洗車機で15回洗車を行った後の塗面の外観を目視により、下記の基準で評価した。○及び△が合格である。
○:塗膜表面に擦り傷が全くない
△:塗膜表面に擦り傷が認められる
×:塗膜表面の擦り傷が著しい
耐候性:
各試験塗板を、JIS K 5600−7−7(キセノンランプ法)の促進耐候性試験に準じて、1000時間照射した後、各塗板面をJIS K 5600−8−6による白亜化の程度によって評価した。○及び△が合格である。
○:塗膜表面の異常が全くない
△:塗膜表面の変色(白亜化)が認められる
×:塗膜表面の変色(白亜化)が著しい

Claims (8)

  1. (A)アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体、及び(B)カルボキシル基含有化合物、
    または、
    (A)アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体、(B)カルボキシル基含有化合物、及び(C)ポリエポキシド
    を含有することを特徴とする艶消し塗料組成物であって、
    アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)が、(a1)シリカ粒子、(a2)アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー、(a3)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、ならびに(a4)その他の重合性不飽和モノマーを反応させて得られるアクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体である、艶消し塗料組成物。
  2. シリカ粒子(a1)の平均一次粒子径が1.0〜50μmである請求項1に記載の艶消し塗料組成物。
  3. アクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体(A)が、
    アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)及びその他の重合性不飽和モノマー(a4)の合計量を100質量部として、
    シリカ粒子(a1)を14〜700質量部反応させて得られるアクリル樹脂被覆シリカ粒子分散体である、請求項1または2に記載の艶消し塗料組成物。
  4. シリカ粒子(a1)の含有量が、
    アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(a2)、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a3)、その他の重合性不飽和モノマー(a4)、カルボキシル基含有化合物(B)、及びポリエポキシド(C)の合計固形分量を100質量部として4〜100質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の艶消し塗料組成物。
  5. カルボキシル基含有化合物(B)が、酸価が50〜500mgKOH/g、重量平均分子量が800〜5000である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の艶消し塗料組成物。
  6. ポリエポキシド(C)がエポキシ基含有アクリル系重合体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の艶消し塗料組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の艶消し塗料組成物を塗装して得られる塗膜を含む物品。
  8. 被塗物に順次、少なくとも1層の着色ベースコート塗料及び少なくとも1層のクリヤコート塗料を塗装することにより複層塗膜を形成する方法であって、最上層のクリヤコート塗料として請求項1〜6のいずれか1項に記載の艶消し塗料組成物を塗装することを含む複層塗膜形成方法。
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