JP2001241378A - 斜板式圧縮機の斜板における皮膜形成方法 - Google Patents

斜板式圧縮機の斜板における皮膜形成方法

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JP2001241378A
JP2001241378A JP2000054272A JP2000054272A JP2001241378A JP 2001241378 A JP2001241378 A JP 2001241378A JP 2000054272 A JP2000054272 A JP 2000054272A JP 2000054272 A JP2000054272 A JP 2000054272A JP 2001241378 A JP2001241378 A JP 2001241378A
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Manabu Sugiura
学 杉浦
Kazuaki Iwama
和明 岩間
Naohiko Isomura
直彦 磯村
Shigeki Kawachi
繁希 河内
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Original Assignee
Toyoda Automatic Loom Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】斜板のシューとの摺接面に対する金属材料皮膜
の形成技術としての汎用性に優れると共に、作業の手
間、時間及びコストの効果的な削減が可能となる斜板式
圧縮機の斜板における皮膜形成方法を提供すること。 【解決手段】斜板10のシューとの摺接面30Bよりも
軟質な金属材料からなる供給体40を準備する。供給体
40を回転させた状態で斜板摺接面30Bに圧接させ、
供給体40から斜板10に前記金属材料の一部を転移さ
せる。さらには斜板10を回転させることで、供給体4
0と斜板摺接面30Bとを同摺接面30Bの周方向に相
対移動させて、環状の摺接面30B全体に供給体40か
ら金属材料を順次転移してゆく。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば空調装置の
冷凍サイクルを構成する斜板式圧縮機に用いられ、シュ
ーを介してピストンを連結する構成の斜板に関し、特
に、斜板におけるシューとの摺接面に金属材料よりなる
皮膜を形成するための皮膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】斜板式圧縮機(以下単に圧縮機とする)
の内部機構を構成する斜板とシューとの間の摺動部位の
潤滑は、通常、その内部に保持された潤滑オイルを圧縮
機の運転に伴って流通するガス(例えばフロンガス等の
冷媒ガス)でミスト化し、そのミスト化したオイルを摺
動部位に搬送することでまかなわれている。しかし、圧
縮機を運転停止状態で長時間放置した後に再起動するよ
うな場合には、摺動部位に付着していた潤滑オイルが冷
媒ガスによって洗い流されていることが多い。
【0003】このため、圧縮機の起動後で冷媒ガスが圧
縮機に帰還してオイルのミスト化がすすむまでの期間
(1分程度)が、圧縮機の運転中にもかかわらず、潤滑
が必要な斜板とシューとの摺動部位がオイル不十分な状
態に陥る期間となる。よって、このようなオイル不十分
な期間においても摺動部位における最低限の潤滑を確保
するために、斜板のシューとの摺接面に皮膜を形成する
技術が従来より提案されている。そして、斜板のシュー
との摺接面に皮膜を施す技術に限ってみても種々の態様
がある。特許文献のみならず製品(斜板)に実用化され
ている皮膜形成技術としては、スズ等の電解又は無電解
メッキや、銅系又はアルミニウム系合金等の溶射技術が
ある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スズ等
の電解又は無電解メッキでは数μm程度の極薄の皮膜を
形成する分にはさほどの困難はないが、数十μm以上と
いった比較的厚膜な皮膜を形成するのは必ずしも容易で
はない。また、メッキを実現するためには母材金属と付
着金属との電気化学的関係が問題となり常に採用できる
手法ではない。
【0005】他方、粉末状の金属材料等を溶融状態とし
て火炎と共に被加工面に吹き付ける溶射技術によれば、
厚膜化とか電気化学的相性といった点での困難はあまり
ない。しかし、この溶射に際しては、溶射加工の不要な
部分へのマスキングを行う必要があり、そのことが作業
の手間、時間及びコストといった面で多くの問題を残し
ている。
【0006】本発明の目的は、斜板のシューとの摺接面
に対する金属材料皮膜の形成技術としての汎用性に優れ
ると共に、作業の手間、時間及びコストの効果的な削減
が可能となる斜板式圧縮機の斜板における皮膜形成方法
を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1、2及び4〜6の発明においては、斜板より
も軟質な金属材料よりなる供給体を斜板の摺接面の一部
に圧接させ、さらには供給体と斜板摺接面とを同摺接面
の周方向に相対移動させることで、供給体がその金属材
料の一部を摺接面上に順次転移させて皮膜を形成するこ
とを特徴としている。
【0008】従って、供給体と斜板との圧接条件や、供
給体と斜板摺接面との相対移動速度等を調節することに
より、斜板よりも軟質な金属材料の一部を供給体側から
摺接面上に適度に転移させ、この摺接面上に所望の膜厚
の金属材料皮膜を簡便かつ低コストで形成することがで
きる。
【0009】ところが、例えば、摺接面の外周縁部及び
内周縁部が直角をなす斜板において(図5(b)の比較
例参照)、上述した皮膜形成方法(請求項1、2及び4
〜6の共通部分の手法)を採用した場合、摺接面の外周
縁部及び内周縁部において皮膜の密着性が悪く、場合に
よっては後工程で皮膜の修正作業を必要とする問題を生
じていた。その原因を探るべく、皮膜形成工程における
各段階での斜板に対する供給体の圧接状態を調査した。
この調査の結果、単に供給体を斜板へ圧接させた状態で
は、斜板に接触する供給体端面の面圧に、その中心側と
外側とでバラつきが生じることはほとんどなかった。
【0010】しかし、供給体の金属材料が斜板へ転移し
始めると、供給体端面の面圧は中心側ほど高く、逆に斜
板摺接面の外周縁部及び内周縁部に対応することとなる
外側ほど面圧が低くなっていることが分かった。供給体
端面において、面圧が低い部分(外側)から斜板に転移
された金属材料は、摺接面に対する密着性が悪いのは明
らかである。
【0011】このように、皮膜形成中において、供給体
端面の面圧に中心側と外側とでバラつきが生じるのは、
軟化された金属材料の流動が、周囲を金属材料で取り囲
まれた中心側よりも周囲を開放された外側のほうが激し
いことが一つの要因であると推測される。金属材料が流
動することは、供給体を斜板に対して押し付ける力が金
属材料を流動させるエネルギーに変換されていることを
意味し、よって金属材料の流動が激しい供給体端面の外
側ほど、斜板摺接面に対する押し付け力が弱められてい
るのである。
【0012】そこで、請求項1、2及び4〜6の発明に
おいては、斜板摺接面の外周縁部及び/又は内周縁部に
おける皮膜の密着性を向上させるために、次のような手
段を採用している。
【0013】請求項1の発明は、前記斜板は、摺接面の
外周縁部及び内周縁部の少なくとも一方が微量に盛り上
げられていることを特徴としている。この構成において
は、斜板摺接面に接触する供給体端面において、盛り上
げられた縁部に対応する部位の面圧が高められることと
なる。従って、この縁部においては、供給体の金属材料
が好適な圧力で押し付け転移され、よって皮膜の密着性
が向上される。
【0014】請求項2の発明は、前記斜板において摺接
面の外周側及び内周側の少なくとも一方にはテーパ部が
凹設され、このテーパ部が有するテーパ面は摺接面の縁
部に接続されていることを特徴としている。
【0015】この構成においては、テーパ部のテーパ面
によって、斜板摺接面が供給体端面から徐々に離間され
ることとなる。従って、供給体端面の面圧は、摺接面上
から縁部を越えた途端にゼロとなることはなく、テーパ
面が供給体端面から或る程度離間するまでは、ゼロを超
える面圧が確保されている。その結果、斜板摺接面の縁
部には、供給体の金属材料が好適な圧力で押し付け転移
され、この縁部における皮膜の密着性が向上される。
【0016】請求項4の発明は、前記斜板において摺接
面の外周縁部及び内周縁部の少なくとも一方には、供給
体から転移された金属材料を入り込ませることで、この
入り込んだ金属材料に皮膜のアンカ作用を奏させるアン
カ作用部が設けられていることを特徴としている。
【0017】この構成においては、アンカ作用部に入り
込んだ金属材料のアンカ作用によって、このアンカ作用
部が設けられた摺接面の外周縁部及び/又は内周縁部に
おける皮膜の密着性が向上される。
【0018】請求項5の発明は、前記皮膜の形成中にお
いて斜板と供給体とは、斜板の摺接面とこの摺接面に接
触する供給体の端面とが平行な状態を基準として、供給
体が摺接面の外周側又は内周側へ微量に傾いた位置関係
に設定されていることを特徴としている。
【0019】この構成においては、斜板摺接面がその外
周縁部又は内周縁部において供給体端面に最も接近する
こととなる。従って、供給体端面において、それに最も
接近する縁部に対応する部位の面圧が高められる。その
結果、この縁部においては、供給体の金属材料が好適な
圧力で押し付け転移され、皮膜の密着性が向上される。
【0020】請求項6の発明は、前記皮膜の形成中にお
いて供給体と反対側で斜板を当接支持する治具は、斜板
が供給体との圧接によって弾性変形するように、摺接面
の外周縁部付近又は内周縁部付近に対応する位置で斜板
を偏支持する構成であることを特徴としている。
【0021】この構成においては、斜板が供給体との圧
接によって弾性変形すると、治具による偏支持箇所付近
である摺接面の外周縁部又は内周縁部が供給体側へ移動
する。従って、供給体端面において、この外周縁部又は
内周縁部に対応する部位(外側)の面圧が高められ、斜
板摺接面において外周縁部又は内周縁部の皮膜の密着性
が向上される。
【0022】請求項3の発明は請求項2において、前記
テーパ部は少なくとも摺接面の外周側に設けられ、この
外周側に設けられたテーパ部は、摺接面に皮膜が形成さ
れた後には斜板から除去されることを特徴としている。
【0023】この構成においては、削除した外周側のテ
ーパ部の分だけ斜板を小型化することができ、ひいては
圧縮機の小型化を図ることができる。請求項7の発明は
請求項1〜6の発明において、前記供給体は回転しつつ
摺接面に圧接されることを特徴としている。
【0024】この構成においては、供給体端面の外側に
おいて、斜板摺接面の縁部に対応する部位が順次入れ替
わり、金属材料の斜板への転移に基づく供給体の消耗
が、供給体端面の外側において均一になされる。従っ
て、供給体が完全に消耗されるまでの間中、斜板摺接面
(特に外周縁部及び内周縁部)に対する皮膜形成を安定
して行い得る。
【0025】請求項8の発明は請求項1〜7の発明にお
いて、前記斜板の摺接面は一軸線を中心としたこの一軸
線に直交する環状の面であり、皮膜形成中において斜板
は一軸線を中心として回転されることを特徴としてい
る。
【0026】この構成においては、例えば供給体の回転
(自転)を必須とした場合(請求項7)、斜板を回転さ
せずに、供給体を自転させつつ斜板の一軸線周りで公転
させるような、構成や調整が複雑となりがちな多軸機構
を必要としない。
【0027】請求項9の発明は請求項1〜8の発明にお
いて、前記斜板の摺接面には、皮膜形成の前段階の処理
として粗面処理が施されていることを特徴としている。
この構成においては、粗面処理が施された斜板摺接面
は、皮膜に対する接触面積が増大されており、皮膜の斜
板摺接面に対する密着性が向上する。
【0028】請求項10の発明は、本発明の構成を出願
時点において判明している好ましい態様に限定するもの
である。すなわち、前記斜板は鉄系材料により構成さ
れ、供給体はアルミニウム系材料又は銅系材料により構
成されている。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、空調装置の冷凍
サイクルを構成する斜板式圧縮機の斜板における皮膜形
成方法に具体化した第1〜第5実施形態について説明す
る。なお、第2〜第5実施形態においては第1実施形態
との相違点についてのみ説明し、同一又は相当部材には
同じ番号を付して説明を省略する。
【0030】(第1実施形態)まず、斜板式圧縮機につ
いて説明する。図1に示すように容量可変型の斜板式圧
縮機(以下単に圧縮機とする)は、シリンダブロック1
と、その前端に接合されたフロントハウジング2と、シ
リンダブロック1の後端に弁形成体3を介して接合され
たリヤハウジング4とを備え、これらは複数の通しボル
ト(図示略)により相互に接合固定されて圧縮機のハウ
ジングを構成する。
【0031】前記ハウジング内には、クランク室5、吸
入室6及び吐出室7が区画されている。シリンダブロッ
ク1には複数のシリンダボア1a(一つのみ図示)が形
成され、各ボア1aには片頭型のピストン8が往復動可
能に収容されている。吸入室6及び吐出室7は、弁形成
体3に設けられた各種フラッパ弁を介して各ボア1aと
選択的に連通可能となっている。
【0032】前記クランク室5内には駆動軸9が回転可
能に支持され、又、カムプレートたる斜板10が収容さ
れている。斜板10の中央部には挿通孔10aが貫設さ
れ、この挿通孔10aに駆動軸9が挿通されている。こ
の斜板10は、ヒンジ機構13及びラグプレート11を
介して駆動軸9に作動連結され、駆動軸9と同期回転可
能でかつ駆動軸9の軸線方向への摺動を伴いながら駆動
軸9に対し傾動可能となっている。そして、斜板10の
外周部が前後一対のシュー20A,20Bを介して各ピ
ストン8の端部に摺動自在に係留されることで、全ての
ピストン8が斜板10に作動連結されている。
【0033】前記駆動軸9とともに所定角度に傾斜した
斜板10が回転すると、各ピストン8が斜板10の傾斜
角に対応したストロークで往復動され、各ボア1aで
は、吸入室6(吸入圧Ps領域)からの冷媒ガスの吸
入、吸入冷媒ガスの圧縮、及び吐出室7(吐出圧Pd領
域)への圧縮済み冷媒ガスの吐出が順次繰り返される。
【0034】前記斜板10は、傾斜角減少バネ14によ
ってシリンダブロック1に接近する方向(傾斜角減少方
向)に付勢されている。ただし、例えば駆動軸9上に固
定されたサークリップ15で斜板10の傾斜角減少方向
への傾動を規制することで斜板10の最小傾斜角θmi
n(例えば3〜5°)が制限される。他方、斜板10の
最大傾斜角θmaxは、例えば斜板10のカウンタウェ
イト部10bがラグプレート11の規制部11aに当接
することで制限される。
【0035】前記斜板10の傾斜角は、斜板10の回転
時に生じる遠心力に基づく回転運動のモーメント、傾斜
角減少バネ14の付勢作用に基づくバネ力によるモーメ
ント、ピストン8の往復慣性力によるモーメント、ガス
圧によるモーメント等の各種モーメントの相互バランス
に基づいて決定される。
【0036】前述したガス圧によるモーメントとは、シ
リンダボア1aの内圧とピストン8の背圧にあたるクラ
ンク室5の内圧(クランク圧Pc)との相互関係に基づ
いて発生するモーメントであり、クランク圧Pcに応じ
て傾斜角の減少方向にも増大方向にも作用する。図1の
斜板式圧縮機では、詳述しない制御弁16を用いてクラ
ンク圧Pcを調節することで前記ガス圧によるモーメン
トを適宜変更し、斜板10の傾斜角を最小傾斜角θmi
nと最大傾斜角θmaxとの間の任意の角度θに設定で
きるようになっている。
【0037】次に、上記構成の圧縮機の斜板10につい
て詳述する。図1〜図3に示すように、斜板10の外周
部のフロント側及びリヤ側にはそれぞれ環状の摺接面3
0A,30Bが形成されている。フロント側及びリヤ側
の環状摺接面30A,30Bは、前記一対のシュー20
A,20Bとそれぞれ摺接する。なお、20A−1,2
0B−1は、環状摺接面30A,30Bに対して摺接す
るシュー20A,20Bの摺接面を示す。
【0038】図4の拡大円中及び図5(a)に示すよう
に、斜板10においてフロント側及びリヤ側の環状摺接
面30A,30Bは、それぞれ外周縁部30A−1,3
0B−1が盛り上げられている。この外周縁部30A−
1,30B−1の盛り上がりは、図4の拡大円中及び図
5(a)においては誇張して描いてあるが、実際には数
〜数百μm程度の微量なものである。
【0039】また、斜板10において各環状摺接面30
A,30Bの内周側には、テーパ部32A,32Bが凹
設されている。テーパ部32A,32Bが有するテーパ
面32A−1,32B−1は、各環状摺接面30A,3
0Bに内周縁部30A−2,30B−2で接続されてい
る。従って、斜板10において各環状摺接面30A,3
0Bは、内周縁部30A−2,30B−2から斜板10
の内周側へ行くに連れて、シュー摺接面20A−1,2
0B−1を含む仮想平面Hから徐々に離間されることと
なる(図2参照)。
【0040】前記斜板10には、その回転時の遠心力に
基づく回転運動のモーメントを適正に発生させるため
に、比較的重い鉄系材料(例えばFCD700等の鋳
鉄)が用いられている。他方、シュー20A,20Bに
は、その機械的強度等を配慮して同じく鉄系材料(例え
ば軸受鋼)が用いられている。同種の金属材料からなる
斜板10とシュー20A,20Bを過酷な条件で摺接さ
せると、いわゆる「ともがね現象」による焼き付きを生
じてしまうので、この実施形態では、図2に示すように
斜板10の少なくとも前記摺接面30A,30B上に、
シュー20A,20Bとの接触摺動性を改善するための
摺動層としての皮膜31A,31Bが形成されている。
【0041】前記各皮膜31A,31Bは、斜板10の
母材やシュー20A,20Bを構成する鉄系材料とは種
類の異なる金属材料からなっている。皮膜31A,31
Bを構成する金属材料としては、例えば珪素含有のアル
ミニウム合金やアルミニウムと珪素との金属間化合物
(以下両者を含めて「Al−Si系金属材料」と呼ぶ)
が挙げられる。アルミニウム系材料としてのAl−Si
系金属材料では、珪素含有量に応じて材料としての硬度
や融点等の物性が種々変化するが、ここで使用するAl
−Si系金属材料は、珪素含有量が10〜20重量%
(好ましくは15〜18重量%)のものである。
【0042】このように、Al−Si系金属材料からな
る皮膜31A,31Bを形成することで、前記ともがね
現象による焼き付きが防止されるのみならず、斜板10
とシュー20A,20Bとの接触摺動性が改善される。
すなわち、皮膜31A,31Bの形成によって、斜板1
0とシュー20A,20Bとの間にはオイルレス環境下
においても一定の潤滑性が確保される。斜板10やシュ
ー20A,20Bに用いられている鉄系材料が非常に硬
くて融点も千数百度以上と比較的高いのに対し、皮膜3
1A,31Bを構成する前記Al−Si系金属材料は、
前記鉄系材料に比して相対的に柔らかくかつ融点も60
0〜700℃程度と前記鉄系材料に比して低い。Al−
Si系金属材料の前記鉄系材料との物性上の差異が接触
摺動性の改善に寄与していることは間違いないが、それ
に留まらず、以下に説明する皮膜形成方法を採用する上
でも両者の物性上の差異が重要な意味を持つ。
【0043】次に、斜板10のリヤ側摺接面30Bへの
皮膜形成手順について具体的に説明する。なお、フロン
ト側摺接面30Aへの皮膜形成については、リヤ側摺接
面30Bと同様な手順で行われるため説明は省略する。
また、この皮膜形成に供される斜板10の摺接面30
A,30Bには、前処理としてショットブラスト等によ
る粗面処理が施されている。
【0044】まず、図3に示すような供給体40を一つ
準備する。この供給体40はその全体が前記Al−Si
系金属材料からなると共に、丸棒状をなしている。その
丸棒状の供給体40の一端面41は、斜板10の環状面
である摺接面30Bの幅(環状面を構成する外形線の半
径と内形線の半径との差)よりも大きな直径を有する円
となっている。
【0045】図4に示すように、斜板10を回転保持機
構51(二点鎖線で概念的に示す)にセットすると共
に、供給体40をスライド・回転保持機構52(二点鎖
線で概念的に示す)にセットする。
【0046】前記回転保持機構51は第1モータM1に
作動連結されており、この第1モータM1の駆動力に基
づいて、保持した斜板10を軸線Lを中心として回転さ
せる。斜板10を回転保持機構51にセットした状態で
は、環状の摺接面30B(厳密に言えば、盛り上げられ
た外周縁部30B−1付近は除く)は前記軸線Lを取り
囲むと共にその軸線Lに直交する面として存在する。さ
らに摺接面30Bの一部は、供給体端面41から離間し
た状態でそれに対向する。
【0047】前記スライド・回転保持機構52は、前後
スライド手段53及び第2モータM2に作動連結されて
おり、この前後スライド手段53の動作により、保持し
た供給体40を斜板10に対して接近、圧接および離間
させるとともに、第2モータM2の駆動力に基づいて供
給体40を軸線L’を中心として回転させる。
【0048】前記供給体40の端面41は、軸線L’に
直交する面として存在し、この供給体40をスライド・
回転保持機構52にセットした状態では、その端面41
と斜板摺接面30Bとは平行状態となっている。また、
供給体40をスライド・回転保持機構52にセットした
状態では、供給体40の軸線L’と前記軸線Lとは偏心
関係にあり、供給体40を斜板10に向けて前進させた
ときに、その端面41が斜板10の環状摺接面30Bの
一部に対して、その外周縁部30B−1及び内周縁部3
0B−2から若干はみ出す位置で接合可能となっている
(図3において二点鎖線(41)で示す状態)。
【0049】そして、前記斜板10及び供給体40をそ
れぞれの機構51,52にセットした後、第2モータM
2及びスライド・回転保持機構52により供給体40を
所定の回転数(例えば1500rpm)で回転させる。
つまり、供給体40を自転させる。供給体40の回転を
維持しながら、前後スライド手段53によってスライド
・回転保持機構52と共に供給体40を斜板10に向け
て前進(接近)させる。そして、端面41が摺接面30
Bに接合した後も供給体40を摺接面30Bに押し付け
ることにより、供給体端面41の斜板摺接面30Bに対
する押圧力を増して所定圧力(例えば18MPa)に到
達させる。つまり、供給体端面41を斜板摺接面30B
に対して所定圧力で圧接する。
【0050】この供給体端面41と斜板摺接面30Bと
の圧接状態で、第1モータM1及び回転保持機構51に
より斜板10を所定の回転数(例えば1rpm)で回転
させる。つまり、供給体40を、斜板10上の或る位置
から見て軸線L周りでゆっくりと(供給体40の自転と
比較して)公転させる。言い換えれば、供給体40と斜
板摺接面30Bとを、同摺接面30Bの延在方向(周方
向)に相対移動させる。
【0051】従って、主として供給体40の高速回転に
より、圧接状態にある供給体端面41と斜板摺接面30
Bとの間で摩擦発熱が生じ、この摩擦発熱により供給体
40の端面41付近が軟化して摺接面30Bに転移され
る。さらには斜板10の回転に応じて、摺接面30Bに
おける供給体端面41の圧接位置が、環状摺接面30B
の周方向に連続的に変化することで、軟化した供給体4
0の端面41付近が擦り切られるようにして、摺接面3
0Bにおける供給体端面41との圧接跡に順次取り残さ
れてゆく。
【0052】斜板10が少なくとも1回転すれば、環状
摺接面30B全体に対して供給体40からの金属材料転
移が一通り行われ、この摺接面30B全体には必要膜厚
(例えば50μm)に後加工での削り代(例えば20〜
50μm)を加味した膜厚(例えば70〜100μm)
のAl−Si系金属材料からなる皮膜31Bが形成され
る。摺接面30B全体に皮膜31Bが形成された後に
は、スライド・回転保持機構52と共に供給体40が斜
板10から後退(離間)される。
【0053】前記皮膜31Bの必要膜厚は、上述した方
法によって形成された皮膜を、後加工として切削加工あ
るいは研磨加工を施すことにより調節される。上記構成
の本実施形態においては次のような効果を奏する。
【0054】(1)本実施形態の皮膜形成方法によれ
ば、簡便な手順で短時間のうちに、斜板10の摺接面3
0A,30Bに対してAl−Si系金属材料からなる皮
膜31A,31Bを効率的に形成することができる。
【0055】(2)この方法では、斜板10に対する供
給体40の圧接時に特に大きな騒音を発することも無
い。このため、騒音等による作業環境悪化の心配がな
い。(3)この方法では、摺接面30A,30Bに対す
る皮膜31A,31Bの付与は、第一義的には圧接転移
による物理接着であり、厳格な化学的親和性が要求され
ないため、皮膜の形成技術としての汎用性に優れてい
る。
【0056】(4)この方法によれば、皮膜31A,3
1Bの摺接面30A,30Bに対する密着性が格段に向
上する。その理由は定かではないが、斜板10に供給体
40を圧接するときの押圧力とその時に発生する摩擦熱
の影響で、供給体40側の金属材料が原子レベルで斜板
10の内部に一部拡散し、斜板10の摺接面30A,3
0Bと皮膜31A,31Bとの接触域にミクロな拡散層
が結果的に形成されるためと考えられる。その他の理由
としては、皮膜形成の前処理として斜板摺接面30A,
30Bに粗面処理を施すことで、この斜板摺接面30
A,30Bの皮膜31A,31Bに対する接触面積が増
大されていることが挙げられる。
【0057】(5)この方法によれば、摺接面30A,
30Bの一部に圧接転移した供給体40の金属材料を、
擦り切るような形で供給体40から確実に断ち切って、
摺接面30A,30Bにおける供給体40との圧接跡に
確実に取り残しておくことができる。従って、供給体4
0から所定量の金属材料を確実に摺接面30A,30B
へ転移させることができ、環状摺接面30A,30B全
体に所望の厚みの皮膜31A,31Bを得ることができ
る。
【0058】(6)この方法によれば、供給体40とし
て単なる丸棒状のものを採用することができる。例え
ば、丸棒状の供給体40は、現在の市場において金属組
織が均一なものを安価に入手することができ、これは良
質な皮膜31A,31Bを安価に得ることにつながる。
【0059】(7)この方法によれば、皮膜31A,3
1Bの摺接面30A,30Bに対する密着性、特に摺接
面30A,30Bの外周縁部30A−1,30B−1及
び内周縁部30A−2,30B−2に対する密着性が格
段に向上する。その理由について、以下に図5(b)の
比較例を参照しつつ説明する。
【0060】図5(b)の比較例は、皮膜31A,31
Bの形成については本実施形態と同様な手順でなされる
が、皮膜31A,31Bの形成対象となる斜板10の形
状が本実施形態とは異なっている。すなわち、比較例の
斜板10において、摺接面30A,30Bの外周縁部3
0A−1,30B−1及び内周縁部30A−2,30B
−2は直角の角をなしている。つまり、この斜板10
は、各環状摺接面30A,30B上から外周縁部30A
−1,30B−1を越えて外周側へ行くと、また内周縁
部30A−2,30B−2を越えて内周側へ行くと、そ
れぞれ供給体端面41から急激に離間される形状をなし
ている。
【0061】この比較例の斜板10においては、本実施
形態と同一の皮膜形成手順を採用したにも関わらず、摺
接面30A,30Bの外周縁部30A−1,30B−1
及び内周縁部30A−2,30B−2において皮膜31
A,31Bの密着性が悪く、場合によっては後工程で皮
膜31A,31Bの修正作業を必要とする問題を生じて
いた。その原因を探るべく、皮膜形成工程における各段
階での斜板10に対する供給体40の圧接状態を調査し
た。この調査の結果、単に供給体40を斜板10へ圧接
させるのみでは、供給体端面41において斜板10に接
触する部分の面圧に、中心(軸線L’)側と外側とでバ
ラつきが生じることはほとんどなかった。
【0062】しかし、図5(b)において矢印で示すよ
うに、供給体40と斜板10との摺接が開始され、供給
体40の金属材料が軟化して斜板10へ転移し始める頃
には、供給体端面41の面圧は中心側ほど高く、逆に斜
板摺接面30A,30Bの外周縁部30A−1,30B
−1及び内周縁部30A−2,30B−2に対応するこ
ととなる外側ほど面圧が低くなっていることが分かった
(矢印の長さは面圧の高さを表す)。供給体端面41に
おいて、面圧が低い部分(外側)から斜板10に転移さ
れることとなる金属材料は、摺接面30A,30Bに対
する密着が悪いのは明らかである。
【0063】このように、皮膜31A,31Bの形成中
において、供給体端面41の面圧に中心側と外側とでバ
ラつきが生じるのは、軟化された金属材料の流動が、周
囲を金属材料で取り囲まれた中心側よりも周囲を開放さ
れた外側の方が激しいことが一つの要因であると推測さ
れる。金属材料が流動することは、供給体40を斜板1
0に対して押し付ける力が金属材料を流動させるエネル
ギーに変換されていることを意味し、よって金属材料の
流動が激しい供給体端面41の外側ほど斜板摺接面30
A,30Bに対する押し付け力が弱められているのであ
る。
【0064】そこで、図5(a)に示すように、本実施
形態において斜板10は、フロント側及びリヤ側の環状
摺接面30A,30Bの外周縁部30A−1,30B−
1がそれぞれ微量に盛り上げられている。従って、この
外周縁部30A−1,30B−1は、皮膜形成中におい
て、摺接面30A,30Bのその他の部位よりも供給体
端面41に近づけられることとなる。その結果、図面に
矢印で示すように、供給体端面41において、摺接面3
0A,30Bの外周縁部30A−1,30B−1に圧接
する部位の面圧が高められる。よって、摺接面30A,
30Bの外周縁部30A−1,30B−1には、供給体
40の金属材料が好適な圧力で押し付け転移され、この
外周縁部30A−1,30B−1における皮膜31A,
31Bの密着性が向上される。
【0065】また、斜板10においてフロント側及びリ
ヤ側の環状摺接面30A,30Bは、テーパ部32A,
32Bのテーパ面32A−1,32B−1によって、内
周縁部30A−2,30B−2から斜板10の内周側へ
行くに連れて、供給体端面41から徐々に離間されてい
る。従って、図面において矢印で示すように、供給体端
面41の面圧が、図5(b)の比較例のように、摺接面
30A,30B上から内周縁部30A−2,30B−2
を越えた途端にゼロとなることはなく、テーパ面32A
−1,32B−1が供給体端面41から或る程度離間す
るまでは、ゼロを超える面圧が確保されている。言い換
えれば、供給体端面41における面圧分布線(面圧の大
きさを表す矢印の先端を結んだ二点鎖線)の裾野が、斜
板摺接面30A,30Bの内周側においては比較例より
も広げられている。その結果、摺接面30A,30Bの
内周縁部30A−2,30B−2には、供給体40の金
属材料が好適な圧力で押し付け転移され、この内周縁部
30A−2,30B−2における皮膜31A,31Bの
密着性が向上される。
【0066】(8)皮膜31A,31Bの形成中におい
て供給体40は、回転(自転)しつつ斜板摺接面30
A,30Bに圧接される。従って、供給体端面41の外
側において、斜板摺接面30A,30Bの縁部30A−
1,30B−1,30A−2,30B−2に対応する部
位が順次入れ替わり、金属材料の斜板10への転移に基
づく供給体40の消耗が、供給体端面41の外側におい
て均一になされる。その結果、供給体40が完全に消耗
されるまでの間中、斜板摺接面30A,30B(特に外
周縁部30A−1,30B−1及び内周縁部30A−
2,30B−2)に対する皮膜形成を安定して行い得
る。
【0067】また、供給体40の回転は高速でなされて
おり、この供給体40の高速回転を主として金属材料が
昇温軟化される。従って、例えば、供給体40を低速で
回転させ、大重量の(言い換えれば軸振れが生じ易い)
斜板10を高速で回転させる場合と比較して、斜板10
の回転軸線Lの安定化、ひいては皮膜形成の安定化を図
り得る。
【0068】(9)皮膜31A,31Bの形成中におい
て斜板10は、軸線Lを中心として回転され、この斜板
10の回転によって、供給体40と斜板摺接面30A,
30Bとが同摺接面30A,30Bの周方向に相対移動
される。従って、例えば、後の別例において述べるよう
に、斜板10を回転させずに、供給体40を自転させつ
つ斜板10の軸線L周りで公転させるような、構成や調
整が複雑となりがちな多軸機構を必要としない。
【0069】(第2実施形態)図6(a)に示すよう
に、本実施形態において皮膜形成に供される斜板10
は、摺接面30A,30Bにおいて外周縁部30A−
1,30B−1の盛り上がりに代えて、摺接面30A,
30Bの外周側にも内周側と同様な構成のテーパ部33
A,33Bが設けられている。従って、上記第1実施形
態の(7)において、内周縁部30A−2,30B−2
について述べたことと同様な作用・効果が、斜板摺接面
30A,30Bの外周縁部30A−1,30B−1にお
いても、テーパ部33A,33Bによって奏されること
となる。
【0070】ここで、前記外周側のテーパ部33A,3
3Bを、内周側のテーパ部32A,32Bと同様に、皮
膜形成の後もそのまま斜板10に残しておくことも、つ
まり最外周にテーパ部33A,33Bを有した斜板10
をそのまま圧縮機へ組み込む構成とすることも、本発明
の趣旨を逸脱するものではない。しかし、最外周にテー
パ部33A,33Bを残しておくことは、斜板10の大
型化ひいては圧縮機の大型化を招く。
【0071】そこで、図6(b)に示すように本実施形
態においては、皮膜31A,31Bを形成した後には、
外周側のテーパ部33A,33Bを含む肉部を斜板10
から切除するようにしている。従って、この削除した肉
部の分だけ斜板10を小型・軽量化することができ、ひ
いては圧縮機の小型・軽量化を図ることができる。
【0072】(第3実施形態)図7に示すように、本実
施形態の斜板10は、摺接面30A,30Bにおいて外
周縁部30A−1,30B−1の盛り上がりに代えてア
ンカ作用部30A−3,30B−3が設けられている。
アンカ作用部30A−3,30B−3は、摺接面30
A,30Bの外周縁部30A−1,30B−1を段差状
に形成し、さらにはこの段差が有する角部を鋭角とする
ことで構成されている。
【0073】従って、供給体40から転移された金属材
料がアンカ作用部30A−3,30B−3に入り込み、
この入り込んだ金属材料がアンカ作用部30A−3,3
0B−3の鋭角をなす角部に引っ掛かることで、皮膜3
1A,31Bのアンカ(投錨)作用を奏することとな
る。その結果、斜板摺接面30A,30Bにおいて、外
周縁部30A−1,30B−1付近の皮膜31A,31
Bの密着性が向上される。
【0074】(第4実施形態)図9に示すように、本実
施形態の斜板10は、摺接面30A,30Bから外周縁
部30A−1,30B−1の盛り上がりが削除されてい
る(図5(b)の比較例の斜板摺接面30A,30Bに
おける外周縁部30A−1,30B−1と同じ形状)。
従って、この構成の斜板10に対して、上記第1〜第3
実施形態と同様な手法によって皮膜31A,31Bを形
成しようとすると、摺接面30A,30Bの外周縁部3
0A−1,30B−1における皮膜31A,31Bの密
着性が悪くなる。このことは上記第1実施形態の(7)
において、図5(b)の比較例を参照しつつ詳述した。
【0075】そこで本実施形態においては、皮膜31
A,31Bの形成中において斜板10と供給体40と
が、斜板摺接面30A,30Bと供給体端面41とが平
行な状態(図4に示す状態)を基準として、供給体40
が摺接面30A,30Bの外周側へ微量に傾いた位置関
係に設定されている。
【0076】すなわち、図8に示すように回転保持機構
51は、斜板摺接面30B(30A)がその外周縁部3
0B−1(30A−1)側ほど供給体端面41に近づく
ように、斜板10の回転軸線Lを供給体40の回転軸線
L’に対して微量(図面においては誇張して描いてあ
る)に傾斜させている。従って、図9に示すように、皮
膜形成中において供給体端面41は、斜板摺接面30
A,30Bの外周縁部30B−1(30A−1)に圧接
する部位(外側)の面圧が高められることとなる。その
結果、斜板摺接面30A,30Bの外周縁部30A−
1,30B−1における皮膜31A,31Bの密着性が
向上される。
【0077】(第5実施形態)図11に示すように、本
実施形態の斜板10も上記第4実施形態と同様な構成で
ある。従って、斜板摺接面30A,30Bの外周縁部3
0A−1,30B−1において皮膜31A,31Bの密
着性を向上させるために、図10に示すような手法が採
用されている。
【0078】すなわち、回転保持機構51において、斜
板10を供給体40と反対側で支持する治具54には、
有底円筒状のものが用いられている。この治具54が備
える円筒部54aは、斜板10の外径とほぼ同じ外径で
かつ肉薄に構成されている。従って、斜板10は、治具
円筒部54aの環状をなす先端面によって、摺接面30
A,30Bの外周縁部30A−1,30B−1付近に対
応する位置で偏支持される。
【0079】その結果、図11に誇張して示すように、
皮膜形成中において斜板10は、供給体40が圧接され
ることで、治具54により直接支持されていない内周側
が供給体40から離間するようにして弾性変形される。
この斜板10の弾性変形によって、摺接面30B(30
A)の外周縁部30B−1(30A−1)が供給体40
側に微量に上昇し、従って供給体端面41においてこの
外周縁部30B−1(30A−1)に圧接する部位の面
圧が高められる。よって、斜板摺接面30A,30Bに
おいて、外周縁部30A−1,30B−1の皮膜31
A,31Bの密着性が向上される。
【0080】また、本実施形態及び上記第4実施形態に
おいては、上記第1〜第3実施形態とは異なり、皮膜3
1A,31Bを形成するための装置51,52側の構成
によって、斜板摺接面30A,30Bの外周縁部30A
−1,30B−1における皮膜31A,31Bの密着性
向上を図っている(第1〜第3実施形態においては斜板
10側の構成によって皮膜31A,31Bの密着性向上
を図っている)。従って、皮膜31A,31Bの密着性
向上のための加工(第1実施形態においては盛り上が
り、第2実施形態においてはテーパ部32A,32B、
第3実施形態においてはアンカ作用部30A−3,30
B−3)を、斜板10毎に施す手間を省くことができ
る。これは斜板10の製造コストの低減につながる。
【0081】本発明の趣旨から逸脱しない範囲で以下の
態様でも実施できる。 ・上記第1実施形態においてテーパ部32A,32Bを
削除するとともに、斜板摺接面30A,30の内周縁部
30A−2,30B−2を盛り上げる。そして、この盛
り上がりによって、斜板摺接面30A,30Bの内周縁
部30A−2,30B−2における皮膜31A,31B
の密着性向上を達成すること。この場合、内周縁部30
A−2,30B−2のみを盛り上げる構成であってもよ
いし、外周縁部30A−1,30B−1も盛り上げる構
成であってもよい。
【0082】・上記第1実施形態においては、斜板摺接
面30A,30の外周縁部30A−1,30B−1が局
部的に盛り上げられていた。これを変更し、斜板摺接面
30A,30を、内周縁部30A−2,30B−2から
外周縁部30A−1,30B−1に向かって微量に上昇
傾斜する斜面に形成し、結果として斜板摺接面30A,
30全体が外周縁部30A−1,30B−1を頂点とし
て盛り上がるようにしてもよい。この構成も、本明細書
で言うところの「摺接面の縁部が微量に盛り上げられて
いる」ことに含まれる。なお、同一趣旨で、前記とは逆
に斜板摺接面30A,30を外周縁部30A−1,30
B−1から内周縁部30A−2,30B−2に向かって
微量に上昇傾斜する斜面に形成してもよい。
【0083】・上記第3実施形態においてテーパ部32
A,32Bを削除するとともに、斜板摺接面30A,3
0Bの内周縁部30A−2,30B−2にアンカ作用部
30A−3,30B−3を設ける。そして、このアンカ
作用部30A−3,30B−3によって、斜板摺接面3
0A,30Bの内周縁部30A−2,30B−2におけ
る皮膜31A,31Bの密着性向上を達成すること。こ
の場合、内周縁部30A−2,30B−2にのみアンカ
作用部30A−3,30B−3を設ける構成であっても
よいし、外周縁部30A−1,30B−1にもアンカ作
用部30A−3,30B−3を設ける構成であってもよ
い。
【0084】・上記第4実施形態を変更し、皮膜31
A,31Bの形成中において斜板10と供給体40と
を、斜板摺接面30A,30Bと供給体端面41とが平
行な状態(図4に示す状態)を基準として、供給体40
が摺接面30A,30Bの内周側へ微量に傾いた位置関
係に設定すること。このようにすれば、斜板摺接面30
A,30Bにおいて、内周縁部30A−2,30B−2
の皮膜31A,31Bの密着性が向上される。
【0085】・上記第5実施形態を変更し、治具54に
よる斜板10の支持構成を、摺接面30A,30Bの内
周縁部30A−2,30B−2付近に対応する位置で偏
支持する構成とすること。このようにすれば、皮膜形成
中において斜板10は、供給体40が圧接されること
で、その外周側が供給体40から離間するようにして弾
性変形される。この斜板10の弾性変形によって、摺接
面30A,30Bの内周縁部30A−2,30B−2が
供給体40側に微量に上昇し、従って供給体端面41に
おいてこの内周縁部30A−2,30B−2に圧接する
部位の面圧が高められる。その結果、斜板摺接面30
A,30Bにおいて、内周縁部30A−2,30B−2
の皮膜31A,31Bの密着性が向上される。
【0086】・供給体40として、アルミニウム系材料
に代えて、銅系材料を使用してもよい。 ・鉄系材料ではなく、アルミニウム系材料よりなる斜板
10においてその皮膜形成方法に具体化すること。
【0087】・供給体40を低速で回転させ、斜板10
を高速で回転させること。つまり、供給体40の昇温軟
化を、主として斜板10の高速回転に期待すること。 ・斜板10を回転させずに、自転する供給体40をさら
には軸線Lを中心として公転させること。
【0088】・供給体40を回転させずに、斜板10を
高速回転させること。 ・供給体40を予め加熱して昇温軟化させた状態で、皮
膜形成に供すること。 このようにすれば、供給体40の昇温軟化を斜板10と
の摩擦発熱にそれ程期待しなくともよく、供給体40か
ら摺接面30A,30Bへの金属材料転移を速やかに行
なうことができ、皮膜31A,31Bの短時間形成に貢
献される。また、このような手法を採用した時、皮膜3
1A,31Bの摺接面30A,30Bに対する密着性が
格段に向上するという効果が発見された。
【0089】上記実施形態から把握できる技術的思想に
ついて記載する。 (1)斜板のシューとの摺接面上に形成された金属材料
からなる皮膜は、その斜板とシューとの接触摺動性を改
善するためのものである請求項1〜10のいずれかに記
載の斜板式圧縮機の斜板における皮膜形成方法。
【0090】(2)供給体を構成する金属材料は、斜板
を構成する金属材料よりも低融点である請求項1〜10
又は前記(1)のいずれかに記載の斜板式圧縮機の斜板
における皮膜形成方法。
【0091】(3)斜板式圧縮機に用いられ、シューを
介してピストンを連結し、このシューとの環状摺接面に
金属材料よりなる皮膜を有する斜板において、前記摺接
面の外周縁部及び内周縁部の少なくとも一方が微量に盛
り上げられていることを特徴とする斜板。
【0092】(4)斜板式圧縮機に用いられ、シューを
介してピストンを連結し、このシューとの環状摺接面に
金属材料よりなる皮膜を有する斜板において、前記摺接
面の外周側及び内周側の少なくとも一方にはテーパ部が
凹設され、このテーパ部が有するテーパ面は摺接面の縁
部に接続されていることを特徴とする斜板。
【0093】(5)斜板式圧縮機に用いられ、シューを
介してピストンを連結し、このシューとの環状摺接面に
金属材料よりなる皮膜を有する斜板において、前記摺接
面の外周縁部及び内周縁部の少なくとも一方には、金属
材料を入り込ませることで、この入り込んだ金属材料に
皮膜のアンカ作用を奏させるアンカ作用部が設けられて
いることを特徴とする斜板。
【0094】
【発明の効果】以上詳述したように本発明の方法によれ
ば、斜板のシューとの摺接面に対する金属材料皮膜の形
成技術としての汎用性に優れると共に、作業の手間、時
間及びコストの効果的な削減が可能となるという優れた
効果を奏する。
【0095】また、本発明の方法によれば、皮膜の斜板
摺接面に対する密着性、特に斜板摺接面の外周縁部及び
/又は内周縁部に対する密着性が格段に向上するという
優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】容量可変型の斜板式圧縮機の縦断面図。
【図2】シューと接する斜板の外周部付近を拡大して示
す断面図。
【図3】斜板のリヤ面及び供給体の全体を示す正面図及
び斜視図。
【図4】皮膜形成装置を概念的に示す図。
【図5】供給体が圧接した斜板の外周部付近を示す断面
図。
【図6】第2実施形態の斜板の外周部付近を示す断面
図。
【図7】第3実施形態の斜板の外周部付近を示す断面
図。
【図8】第4実施形態の皮膜形成装置を概念的に示す
図。
【図9】供給体が圧接した斜板の外周部付近を示す断面
図。
【図10】第5実施形態の皮膜形成装置を概念的に示す
部分図。
【図11】供給体が圧接した斜板の外周部付近を示す断
面図。
【符号の説明】
8…ピストン、10…斜板、20A,B…シュー、30
A,B…摺接面、30A−1,B−1…摺接面の外周縁
部、30A−2,B−2…摺接面の内周縁部、31A,
B…皮膜、40…供給体。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 磯村 直彦 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 河内 繁希 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 Fターム(参考) 3H003 AA03 AB07 AC03 AD01 3H076 AA06 BB00 BB19 CC00 CC20

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 斜板式圧縮機に用いられ、シューを介し
    てピストンを連結する構成の斜板において、 前記シューとの環状摺接面に金属材料よりなる皮膜を形
    成するための皮膜形成方法であって、 前記斜板よりも軟質な金属材料よりなる供給体を斜板の
    摺接面の一部に圧接させ、さらには供給体と斜板摺接面
    とを同摺接面の周方向に相対移動させることで、供給体
    がその金属材料の一部を摺接面上に順次転移させて皮膜
    を形成し、 前記斜板は、摺接面の外周縁部及び内周縁部の少なくと
    も一方が微量に盛り上げられていることを特徴とする斜
    板における皮膜形成方法。
  2. 【請求項2】 斜板式圧縮機に用いられ、シューを介し
    てピストンを連結する構成の斜板において、 前記シューとの環状摺接面に金属材料よりなる皮膜を形
    成するための皮膜形成方法であって、 前記斜板よりも軟質な金属材料よりなる供給体を斜板の
    摺接面の一部に圧接させ、さらには供給体と斜板摺接面
    とを同摺接面の周方向に相対移動させることで、供給体
    がその金属材料の一部を摺接面上に順次転移させて皮膜
    を形成し、 前記斜板において摺接面の外周側及び内周側の少なくと
    も一方にはテーパ部が凹設され、このテーパ部が有する
    テーパ面は摺接面の縁部に接続されていることを特徴と
    する斜板における皮膜形成方法。
  3. 【請求項3】 前記テーパ部は少なくとも摺接面の外周
    側に設けられ、この外周側に設けられたテーパ部は、摺
    接面に皮膜が形成された後には斜板から除去される請求
    項2に記載の斜板における皮膜形成方法。
  4. 【請求項4】 斜板式圧縮機に用いられ、シューを介し
    てピストンを連結する構成の斜板において、 前記シューとの環状摺接面に金属材料よりなる皮膜を形
    成するための皮膜形成方法であって、 前記斜板よりも軟質な金属材料よりなる供給体を斜板の
    摺接面の一部に圧接させ、さらには供給体と斜板摺接面
    とを同摺接面の周方向に相対移動させることで、供給体
    がその金属材料の一部を摺接面上に順次転移させて皮膜
    を形成し、 前記斜板において摺接面の外周縁部及び内周縁部の少な
    くとも一方には、供給体から転移された金属材料を入り
    込ませることで、この入り込んだ金属材料に皮膜のアン
    カ作用を奏させるアンカ作用部が設けられていることを
    特徴とする斜板における皮膜形成方法。
  5. 【請求項5】 斜板式圧縮機に用いられ、シューを介し
    てピストンを連結する構成の斜板において、 前記シューとの環状摺接面に金属材料よりなる皮膜を形
    成するための皮膜形成方法であって、 前記斜板よりも軟質な金属材料よりなる供給体を斜板の
    摺接面の一部に圧接させ、さらには供給体と斜板摺接面
    とを同摺接面の周方向に相対移動させることで、供給体
    がその金属材料の一部を摺接面上に順次転移させて皮膜
    を形成し、 前記皮膜の形成中において斜板と供給体とは、斜板の摺
    接面とこの摺接面に接触する供給体の端面とが平行な状
    態を基準として、供給体が摺接面の外周側又は内周側へ
    微量に傾いた位置関係に設定されていることを特徴とす
    る斜板における皮膜形成方法。
  6. 【請求項6】 斜板式圧縮機に用いられ、シューを介し
    てピストンを連結する構成の斜板において、 前記シューとの環状摺接面に金属材料よりなる皮膜を形
    成するための皮膜形成方法であって、 前記斜板よりも軟質な金属材料よりなる供給体を斜板の
    摺接面の一部に圧接させ、さらには供給体と斜板摺接面
    とを同摺接面の周方向に相対移動させることで、供給体
    がその金属材料の一部を摺接面上に順次転移させて皮膜
    を形成し、 前記皮膜の形成中において供給体と反対側で斜板を当接
    支持する治具は、斜板が供給体との圧接によって弾性変
    形するように、摺接面の外周縁部付近又は内周縁部付近
    に対応する位置で斜板を偏支持する構成であることを特
    徴とする斜板における皮膜形成方法。
  7. 【請求項7】 前記供給体は回転しつつ摺接面に圧接さ
    れる請求項1〜6のいずれかに記載の斜板における皮膜
    形成方法。
  8. 【請求項8】 前記斜板の摺接面は一軸線を中心とした
    この一軸線に直交する環状の面であり、皮膜形成中にお
    いて斜板は一軸線を中心として回転される請求項1〜7
    のいずれかに記載の斜板における皮膜形成方法。
  9. 【請求項9】 前記斜板の摺接面には、皮膜形成の前段
    階の処理として粗面処理が施されている請求項1〜8の
    いずれかに記載の斜板における皮膜形成方法。
  10. 【請求項10】 前記斜板は鉄系材料により構成され、
    供給体はアルミニウム系材料又は銅系材料により構成さ
    れている請求項1〜9のいずれかに記載の斜板における
    皮膜形成方法。
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