JP2001240950A - 高温部品の再生処理方法 - Google Patents
高温部品の再生処理方法Info
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Abstract
より劣化した析出相を完全に固溶させ、その後の熱処理
により新品と同等以上の材料特性を回復させることので
きる高温部品の再生処理方法を提供する。 【解決手段】析出強化型の合金からなり,高温下での使
用により析出物の析出形態あるいは相の変化を生じ、も
しくはクリープあるいは疲労による損傷を受けた高温部
品に高温高圧下で回復熱処理2を施して析出物を固溶さ
せた後に急冷し、その後部分溶体化熱処理と時効熱処理
を行うことにより前記析出物の析出形態あるいは相もし
くはクリープあるいは疲労による損傷を回復させること
を特徴とする。
Description
翼、静翼あるいはジェットエンジンやロケットエンジン
の高温部品等、使用中に高温に曝されることにより熱劣
化、クリープ損傷、疲労損傷等を受ける高温部品の再生
処理方法に関する。
ガスタービンと同軸に設けられた圧縮機の駆動によって
圧縮された圧縮空気を燃焼器に案内して燃料を燃焼させ
ている。高温の燃焼ガスはトランジッションピースおよ
び静翼を経て動翼に案内され、この動翼を回転させてガ
スタービンの仕事をさせ、同軸に結合された発電機にて
発電するようになっている。
焼器ライナ、トランジッションピース、静翼および動翼
には耐熱超合金が用いられている。高温強度が最も要求
される動翼にはNi基の超合金が使用されている。この
Ni基の超合金は析出強化型合金であり、一般にγ' 相
と呼ばれるNi3 (Al,Ti)の金属間化合物あるい
はγ”相と呼ばれる[Ni3 Nb]の金属間化合物(以
後γ' 相に代表させる。)をNiマトリックスに析出さ
せることによって高温強度を出している。
基の超合金には種々の損傷がみられる。まず、高温の燃
焼雰囲気に曝されるために腐食や酸化および材質劣化が
生じるとともに遠心応力でクリープ損傷が蓄積する。ま
た、ガスタービンの起動あるいは停止時にはその熱履歴
に遠心応力が重畳した熱疲労が生じる。そして、損傷が
蓄積し保守管理上の設計寿命に達すると廃却となってい
る。
ーティングを有している初段動翼の廃却となる時間は、
1100℃級ガスタービンのベースロード仕様の例で48000
時間である。リコーティングを施して使用する場合は、
コーティング層の耐久性にもよるが24000 時間でリコー
ティングし、その後48000 時間使用して廃却となってい
る。ここでのリコーティング時に施す熱処理において
は、母材の寿命回復は見込まれていない。
イナ、およびトランジッションピースに生じるき裂ある
いは摩耗部は溶接補修を施し、継続して使用している。
これらの補修の際、必要に応じて溶接時の熱影響および
残留応力除去のための熱処理を施している。
に、静翼、燃焼器ライナ、およびトランジッションピー
スも動翼と類似した高強度のNi基超合金を用いるよう
になり、補修および再生処理が困難になっている。
度を得るために高融点の元素を多量に添加しているが、
一方で結晶粒界を強化するための粒界強化元素等の低融
点の元素も添加しており、これらの低融点の元素が最終
凝固域であるデントライト境界部に偏析し融点を下げて
いる。このため、析出物を完全固溶させ再析出を図る熱
処理を行うことができず、析出物を完全固溶させる温度
より低い温度で、均質化と主強化相であるγ' 相のサイ
ズの最適化を兼ねた部分溶体化熱処理を施している。
合、結晶粒界あるいは結晶粒内に析出した主強化相であ
るγ' 相が凝集粗大化し、強度を低下させるとともに延
靭性の低下も来す。このため、設計寿命以上に、あるい
はより信頼性の高い運転を行うためには、適度に再生処
理を行い、組織及び強度の回復を図る必要がある。
図るためには、特開平8−271501号公報の実施例1に見
られるとおり、γ' 相の固溶温度以上に熱処理する必要
がある。しかるにこの実施例1に示された合金のよう
に、γ' 相のマトリックスへの固溶温度が局所溶融開始
温度よりも工業的意味においてほぼ同じか高い合金の場
合、あるいは粒界強化元素として低融点の偏析傾向の強
い元素を添加している場合には、この公報に示されてい
るようにγ' 相固溶温度以上で熱処理を施すことは逆に
局所的な溶解を生じ強度低下を来す。また、γ' 相固溶
温度より低い温度では逆にγ' 相等の析出物の凝集粗大
化を促進し強度低下を来す。
ビン等における高温部品の問題点は、特にガスタービン
動翼は運転時間の経過とともに材料劣化や損傷が蓄積
し、設計上の管理寿命に達すると廃却され、高価な新翼
との交換が必要となっていることである。また、材料上
の問題点として、部材の鋳造時に凝固する過程でデント
ライト境界部に融点を下げる元素が偏析しやすい傾向が
ある。この場合、主強化析出相であるγ' 相の固溶する
温度と近づくことから、これらの材料は工業的に通常こ
のような溶解の生じない範囲の温度で、最適な組織が得
られる部分溶体化熱処理を行っている。このため、一般
的な熱処理では主強化析出相であるγ' 相を完全に固溶
させ再析出させることによる組織の完全な回復を図るこ
とができず、強度あるいは寿命の低下を来す場合も生じ
ている。
なされたものであり、局所溶解による欠陥がなく、かつ
凝集粗大化により劣化した析出相を完全に固溶させ、そ
の後の熱処理を施すことにより新品と同等以上の材料特
性を回復させることのできる高温部品の再生処理方法を
提供することを目的とする。
強化型の合金からなり高温下での使用により析出物の析
出形態あるいは相の変化を生じ、もしくはクリープある
いは疲労による損傷を受けた高温部品に高温高圧下で回
復熱処理を施して析出物を固溶させた後に急冷し、その
後通常の熱処理である部分溶体化熱処理と時効熱処理を
行うことにより前記析出物の析出形態あるいは相もしく
はクリープあるいは疲労による損傷を回復させることを
特徴とする。
て回復熱処理における温度は、高温部品の析出物が固溶
する温度以上でかつ高温部品の溶融温度以下であること
を特徴とする。
て回復熱処理における圧力は、高温部品の回復熱処理温
度における耐力以上でかつ高温部品の設計上の形状を保
持し得る圧力以下であることを特徴とする。
て、高温高圧下での回復熱処理により低融点元素の均質
化を図り、これらの元素の偏析により生じる局部的な融
点の低下を防ぎ、その後の熱処理において温度を析出物
の固溶温度以上に上げ、回復熱処理後の冷却速度の影響
を完全になくすかもしくは最小限に留めた後急冷し、そ
の後、部分溶体化熱処理と時効熱処理を行うことを特徴
とする。この場合、回復熱処理後の冷却速度10℃/min
以下、つまり炉冷(徐冷)でもよい。
明において高温高圧下で回復熱処理を施した後の冷却速
度は、10℃/min 以上かつ100 ℃/min 以下であること
を特徴とする。
て、回復熱処理後に行う溶体化熱処理と部分溶体化熱処
理とを連続して行い、その後、時効熱処理を行うことを
特徴とする。
て、回復熱処理後に行う溶体化熱処理後の部分溶体化熱
処理と時効熱処理を連続して行うことを特徴とする。請
求項8の発明は、請求項4の発明において、回復熱処理
後に行う溶体化熱処理と部分溶体化熱処理および時効熱
処理を連続して行うことを特徴とする。
て、回復熱処理後連続して部分溶体化熱処理を行い溶体
化熱処理を兼ねさせた後強制冷却し、その後に時効熱処
理を行うことを特徴とする。
て、回復熱処理後連続して部分溶体化熱処理と時効熱処
理を行い、その間温度を下げる段階では急冷し、回復熱
処理後の熱処理を兼ねさせることを特徴とする。
て、析出物の固溶温度以上で均質化と析出物の固溶を図
る回復熱処理を行った後急冷し、その後に行う部分溶体
化熱処理は高圧をかけた状態で行って先の熱処理で生じ
た局部的な溶解部位の圧着を図り、その後、時効熱処理
を施すことを特徴とする。
傷を受けた高温部品の材料特性を回復させるためには、
γ' 相の固溶温度以上で熱処理を行う必要がある。しか
し、γ' 相のγ相マトリックス中への固溶温度が、局所
溶解開始温度より工業的意味においてほぼ同じか低い合
金は、γ' 相の固溶温度以上かつ局所溶解開始温度以下
で熱処理することにより回復が可能であるが十分ではな
い。また、γ' 相の固溶温度が局所溶解開始温度より高
い合金の熱処理(溶体化処理)においての回復処理は、
局所的な溶解を生じ強度の低下を招くとともに高温部品
の寸法形状に変形が生じる。
r,Hf,C等の粒界強化元素を添加したことにより凝
固時にデンドライト境界にこれらの元素が偏析し局所溶
解開始温度がγ' 相の固溶温度と工業的に同等かあるい
はそれより低い合金に対し、加圧しながらγ' 相の固溶
温度以上の温度で熱処理することによりγ' 相をγ相
(母材)中へ完全に固溶させるとともに、この熱処理後
の冷却速度を制御することにより、冷却時に析出する
γ' 相の凝集・粗大化を防ぎ、適正サイズのγ' 相に整
える。また、高圧下で加熱することにより、溶解温度の
低下を来す要因である偏析しやすい元素の拡散を加速さ
せる。こうして局所溶解温度を上昇させることにより、
局所溶解による強度低下と部品としての寸法形状の変化
を招くことなく、その後の通常の熱処理により組織の回
復を図り、新品時と同等以上の材料特性および寿命を得
ることを可能にする。
処理)を行うために用いる装置は、加熱装置を具備した
圧力容器と、不活性ガスを圧縮して圧力容器中に送り込
む圧縮装置と、使用した不活性ガスを回収する回収装置
と、圧力容器内ガスを循環・冷却させるファン・冷却装
置、および圧力容器内に本再生処理を行う部品を保持す
る容器で構成される。
力器内を排気した後に不活性ガスを封入し加圧しながら
昇温し、所定の温度および圧力による熱処理を行う。そ
の後、所定の冷却速度で冷却することによって、凝集粗
大化したγ' 相をγ相(母材)中へ完全に固溶させると
ともに、部品の使用時に不可避に生じたクリープあるい
は疲労による損傷を回復・再生させる。
させた状態に等しいので、その後に溶体化熱処理および
時効熱処理等、合金の通常の熱処理を施す。HIP処理
を施す装置が、ガス冷却装置を具備し、40℃/min 以上
での冷却制御が可能である場合には、HIP処理後に溶
体化処理を連続して施してもよい。
かつ、100 ℃/min 以下であることが望ましい。10℃/
min 以下においては、HIP処理後の冷却時にγ' 相の
析出・粗大化が生じ、部品強度の十分な回復が得られな
い。10℃/min 以上かつ、100 ℃/min 以下では後処理
の溶体化・時効処理において、立方体状をした最適な形
状のγ' 相の析出が得られ、部品強度の十分な回復が得
られる。しかし、100℃/min 以上では、γ' 相の析出
と成長が十分に図られず、強度の回復効果は得られない
ので100 ℃/min 以下である必要がある。
より劣化・粗大化したγ' 相が固溶する温度以上である
ことが望ましい。しかし、過度に温度を上げると、温度
の上昇にともない高温部品の強度が低下し自重による変
形が生じるので、問題となる変形が生じない強度を保持
する温度以下にする必要がある。
温部品の局所に偏析した元素の拡散を加速し、かつ不可
避的に生じた局所の溶解あるいは運転時に生じたクリー
プあるいは疲労による損傷や欠陥をその処理温度で回復
させるのに十分な圧力であり、かつ高温部品に問題とな
る変形を生じさせない圧力以下にする必要がある。
エロージョンなどによる損傷あるいは欠陥がある場合
は、HIP処理を実施する前にTIG溶接等による補修
あるいはプラズマもしくはガス溶射、ろう付け等のコー
ティングを施し、表面の損傷あるいは欠陥を補修するこ
とが必要である。また、高温部品と反応する可能性のあ
る表層の汚れは、HIP処理前にブラスト等を用いて除
去する必要がある。特に、コーティングを施している高
温部品の場合、母材に拡散することにより合金本来の特
性あるいは寿命の低下を招くおそれがある時は、コーテ
ィング層を除去した後にHIP処理を行うことが望まし
い。
等における高温部品は、高温下での使用時に析出物の析
出・成長ならびに凝集による粗大化が進み、強化析出相
の形態の変化とともに本来の材料特性、特にクリープ寿
命や延性・靭性の低下が生じる。また、遠心応力あるい
は熱応力等によるクリープ、起動・停止時の熱履歴によ
る熱疲労、あるいは高サイクル疲労や低サイクル疲労な
どによる損傷を受けている。このような高温部品にはN
i基の鋳造合金が多く用いられているが、高温強度を得
るために多くの元素が添加されており、特に結晶粒界あ
るいは小傾角粒界の粒界結合力を増すためにC,B,Z
r,Hf等の粒界強化元素を添加した合金においては、
これらの元素が凝固時に偏析の生じ易いデンドライト境
界部に偏析し、局所的に融点の低い領域を形成する。こ
のような合金では、局所溶解開始温度がγ' 相の固溶温
度と同等近くまで下がるかあるいは以下となることか
ら、従来の再生処理方法では強度の低下も生じることが
あった。このような高温部品における本発明の再生処理
方法を次に手順を追って説明する。
れている合金のγ' 相の固溶温度および局所溶解開始温
度の概略値を示差熱分析により求めるとともに、その温
度上下で加熱・保持した後、急冷した試料の組織観察結
果をもとに、その部材の鋳造方案による局所溶解開始温
度を求める。この分析によるγ' 相の固溶温度および局
所溶解開始温度から再生処理の温度条件を決定する。ま
た、高温にて引張試験を行い、引張耐力より加圧圧力を
決定する。
それ以前の高温部品について、目視検査、寸法検査等の
非破壊検査を行い、検査結果にもとづき部品状況の健全
性の確認を行う。この検査にて表面にき裂、腐食や酸化
あるいはエロージョン、異物衝突等による損傷が発見さ
れた高温部品については、そのまま再生処理を施しても
再利用できないために損傷部の補修を事前に行う。ま
た、外表面にコーティングが施されている高温部品につ
いては、コーティング層を除去することが望ましい。損
傷部を補修し、あるいはコーティング層を除去した高温
部品は、以下に述べる再生処理を施す前に再度、前記の
非破壊検査を実施し、修復できていることを確認する。
溶解温度の低下を来す要因となっているB,Zr,H
f,C等の元素の拡散が低い温度でも生じ易くなる。H
IP処理炉に高温部品を装填する際には、高温高圧下で
の処理であるために、高温部品が自重により変形しない
ように配置する。また、高温部品は処理炉の均熱帯に配
列することが望ましい。炉に高温部品を装填した時点で
は雰囲気が大気であり、Arガス雰囲気で処理するため
に、まず圧力容器の真空引きを行い、続いてArガスを
注入する。この真空引きとArガスを注入する置換操作
は、2〜3回行うことが望ましい。続いて、圧縮機にて
高圧のArガスを注入すると同時に、所定の温度まで昇
温する。所定の温度に達した後、最終的に圧縮機により
所定の圧力に調整・設定する。
た後、所定の冷却速度で冷却する。冷却速度の制御は、
炉内に設けたファンによる強制対流と炉の上部に設置し
た冷却装置や熱交換装置を用いて行い、γ' 相が再固溶
化された状態から不規則に析出・粗大化した状態に移行
することを防止するために、不安定領域の温度以下まで
所定のパターンで冷却する。冷却後は高温部品に用いら
れている材料の通常の熱処理を施す。この再生処理を施
した後、目視検査、寸法検査等の非破壊検査を行う。コ
ーティングを施す場合は通常の熱処理の間に行い、その
後に非破壊検査を行う。
の合金であり、γ' 相[Ni3 (Al,Ti)]を主強
化析出相とする高温部品を対象としている。この中で
も、特に鋳造でなる等軸晶、一方向凝固材あるいは単結
晶合金において粒界強化元素等の局所的な偏析によって
融点を下げる元素を添加し、鋳造後に行う熱処理の溶体
化温度が主強化析出相であるγ' 相あるいはγ”相の固
溶温度と工業レベルでほとんど同等となるために、γ'
相の固溶温度以上で局所溶解開始温度以下の温度で再生
処理ができないか、あるいは局所溶解開始温度の方が低
い材料に対して有効な再生処理方法である。
る機器はガスタービン等に設けられる高温部品であり、
特に前記の材料によって製造されている部品であるガス
タービン動翼、静翼あるいは燃焼器ライナ、トランジッ
ションピースに対して施すものである。
理方法のいくつかの実施の形態について説明する。 (実施の形態1)図1は本実施の形態による再生処理の
フローチャートを示している。この図1に示すように、
本実施の形態では、まず再生処理対象となるガスタービ
ン高温部品について目視等による再生前検査工程1を行
い、次に高温高圧下で金属組織の回復熱処理を施すHI
P処理工程2を行った。次いで、非加圧下で熱処理を施
す溶体化熱処理工程3および時効熱処理工程4を行い、
その後、再生後検査工程5を行った。なお、再生処理対
象の高温部品が亀裂を生じたりコーティングを有する場
合は、それに応じた前処理1aを行う必要がある。
に達し廃却となったIN738LC(米国INCO社の
商品名)合金のガスタービンの第2段動翼の廃却翼に対
して、各種条件で再生処理試験をおこなった結果につい
て述べる。
に、C,Cr,Co,W,Mo,Ti,Al,Nb,T
a,B,Zr,Niを含む化学組成を有するものであ
り、かつ鋳造後に、主強化析出相であるγ' 相をその母
材であるγ相に部分的に固溶させる熱処理を施したもの
である。
より小片の試料を切り出し、γ' 相固溶温度、局所溶解
開始温度および融点を示差熱分析により求めた。その結
果、図3に示すように、γ' 相固溶温度は1160〜1175℃
であり、局所溶解開始温度は1240〜1250℃であった。ま
た、溶融温度(融点)は1270〜1375℃であった。なお、
上記の試料を実際に加熱し、加熱後に断面の組織観察を
行ったところ、γ' 相の局所溶解は1220℃以上でみら
れ、示差熱分析の結果より低めであった。
各種再生処理例を図4の表に示す。試料1は廃却翼の状
態であり、試料2については、γ' 相固溶温度以上の温
度での溶体化熱処理および通常の温度の時効熱処理(以
下同様)を行い、試料3については、γ' 相固溶温度以
下の温度での溶体化熱処理および時効熱処理を行った。
また、試料4については、γ' 相固溶温度以上の温度で
のHIP処理のみを行い、この処理後は20℃/min の速
度で冷却した。試料5については、γ' 相固溶温度以下
の温度でのHIP処理のみを行い、この処理後は20℃/
min の速度で冷却した。
温度でのHIP処理を行い、この処理後に5℃/min の
冷却速度で冷却した後、γ' 相固溶温度以下の温度での
溶体化熱処理および時効熱処理を行った。試料7につい
ては、γ' 相固溶温度以上の温度でのHIP処理を行
い、この処理後に20℃/min の冷却速度で冷却した後、
γ' 相固溶温度以下の温度での溶体化熱処理および時効
熱処理を行った。試料8については、γ' 相固溶温度以
上の温度でのHIP処理を行い、この処理後に100 ℃/
min の速度で冷却した後、γ' 相固溶温度以下の温度で
の溶体化熱処理および時効熱処理を行った。その後、試
料1〜8について組織観察およびクリープ試験を行っ
た。
の表に併せて示す。また、新翼ならびに各試料の組織観
察結果の模式図を図5に、クリープ試験の破断時間を図
6に示す。図5中、6はγ相を示し、7はγ' 相を示し
ている。
ては立方体状の均一なγ' 相であるのに比べて、試料1
の廃却翼の状態の組織はγ' 相が凝集粗大化した丸い形
態を示している。試料2〜5においては、組織観察およ
びクリープ試験結果ともに試料1の廃却翼同様な組織な
らびにクリープ強度であり、組織・クリープ強度の回復
は認められない。試料6〜8については、HIP処理後
の冷却速度を制御することによって、凝集粗大化した組
織は新翼とほぼ同等の状態に回復するとともにクリープ
強度も新翼同等以上の回復が得られている。
れる速度で自然冷却であり、この冷却速度での組織なら
びにクリープ強度の回復は見られるが新翼に比べて十分
な回復ではない。また強制冷却による冷却速度20℃/mi
n ,100 ℃/min では、新翼と同等もしくはそれ以上の
組織ならびにクリープ強度の回復が得られたが、5℃/
min では、新翼に比べてクリープ強度および延・靭性に
低下が見られた。
の形態1で述べた動翼と同じ合金のIN738LC材を
用いた初段動翼(コーティングあり)について説明す
る。本実施の形態で供試した動翼は運転時間24000 時間
の時点でリコーティングしたものである。このリコーテ
ィング時には再生処理は実施せず、通常の熱処理のみ施
し、その後24000時間使用した。ここでの再生処理は表
面コーティングを除去せず、前記図1の再生処理工程に
したがって実施した。再生処理のHIP処理条件は実施
の形態1の試料7にて実施したものと同じであり、γ'
相固溶温度以上の温度でのHIP処理を行い、この処理
後に20℃/min の冷却速度で冷却した後、γ' 相固溶温
度以下の温度での溶体化処理および時効処理を行った。
その後は本合金の通常の熱処理を施した。
却翼と比較して示す。図7中、6はγ相を示し、7は
γ' 相を示している。図7(b)に示すように、廃却翼
のγ'相7は凝集粗大化していた。しかし、図7(c)
に示すように、再生処理した翼は、図7(a)に示す新
翼とほぼ同じ組織に回復している。
クリープ破断時間を示す。廃却翼では著しいクリープ強
度の低下が生じているのに対し、再生処理した翼では前
記組織の回復と同様にクリープ強度の完全な回復が図ら
れていることがわかる。
9に組成を示したガスタービンの動翼材であるNi基合
金のU500 材(米国Special Metals,Inc. 商品名)、R
ene80材およびGTD111 材(ともに米国GE社商品
名)とその一方向凝固合金およびこれらの材料からなる
第3動翼に対して、本発明の再生処理を施したところ、
クリープ強度および組織の完全な回復が図れることが確
認できた。さらに、Ni基合金を用いた燃焼器ライナ、
トランジッションピースおよび静翼に対しても本再生処
理方法によって材料劣化・損傷を回復できることが認め
られた。
処理後の冷却速度の影響を最終段階で受けないようにす
るための検討結果を示す。
見られる従来の再生処理法である。すなわち、γ' 相固
溶温度以上でのHIP処理2と、γ' 相固溶温度より低
い温度での部分溶体化熱処理8および、さらに低い温度
での時効熱処理4からなる。図11は、新翼、設計寿命ま
で実機運転に供した翼の試料9、HIP処理後3種類の
冷却速度で冷却した試料10,11,12、およびその後通常
の熱処理を施した試料13,14,15の組織を示す。試料10
は徐冷したもの、試料11はArガスで急冷したもの、試
料12は徐冷と急冷の中間の速さで冷却したものである。
γ' 相7をHIP処理により基材のγ相6中に固溶させ
ているが、その後の冷却時、徐冷したものについては
γ' 相7の粒径が、新翼時の本合金のγ' 相7の粒径よ
りも粗大化することがわかる。この場合、その後通常の
熱処理を施してもγ' 相の粒径は新翼並の最適な組織と
はならない。
ついてクリープラプチャー試験を行った結果を示す。徐
冷以外においては、新翼並の組織が得られたことから強
度的には新翼以上を強度が得られている。
型合金においてHIP処理後の冷却速度の影響を受ける
ことなくその粒径が最適なサイズになるようにするもの
である。図13に示す処理例は、HIP処理後の冷却速度
の影響をなくし最適な組織を得る方法として、最初に行
うHIP処理2により低融点元素の均質化を図り、これ
らの元素の偏析により生じる局部的な融点の低下を防
ぎ、その後の溶体化熱処理3において温度をγ' 相固溶
温度9以上に上げ、HIP処理2の冷却速度の影響を完
全になくすか最小限に留めた後急冷し、その後通常の熱
処理条件である部分溶体化熱処理8と時効熱処理4を行
うものである。
行う溶体化熱処理3と通常の熱処理である部分溶体化熱
処理8を連続して行い、その後、時効熱処理4を行う再
生処理方法である。図15に示す処理例3は、HIP処理
2後に行う溶体化熱処理3後の部分溶体化熱処理8と時
効熱処理4を連続して行う再生処理方法であり、図16に
示す処理例4はHIP処理2後に行う溶体化熱処理3と
部分溶体化熱処理8および時効熱処理4を連続して行う
再生処理方法である。
た冷却機能を有するHIP処理炉を用い、HIP処理2
後連続して部分溶体化熱処理8を行い通常の熱処理にお
ける溶体化熱処理を兼ねさせた後強制冷却し、その後に
冷却機能を有する通常の真空熱処理炉にて時効熱処理4
を行う方法である。
有するHIP処理炉を用い、HIP処理2後連続して部
分溶体化熱処理8と時効熱処理4を行い、その間温度を
下げる段階では急冷し、HIP処理後の通常の熱処理を
兼ねさせる再生処理方法である。
持するHIP処理後の冷却速度の影響をなくし適正な組
織を得る方法として、まずγ' 相の固溶温度9以上で均
質化と析出物の固溶を図る熱処理2を行った後急冷し、
その後に行う通常の熱処理の部分溶体化熱処理8は冷却
機能を有するHIP処理炉中で高圧をかけた状態で行
い、先の熱処理で生じた局部的な溶解部位の圧着を図
る。その後、通常の熱処理炉にて時効熱処理4を施す。
図20に示す処理例8は、HIP処理炉中で部分溶体化熱
処理8と時効熱処理4を連続して行うこととし、少なく
とも部分溶体化熱処理8時は高圧をかけた状態で行う再
生処理方法である。
し上記処理例1〜8の再生処理を施した試験片にて行っ
たクリープ破断試験結果を、新翼の結果とともに図22に
示すが、いずれの処理例においてもほぼ新翼並のクリー
プ破断強度が得られていることがわかる。
理例1〜8によれば、高融点の元素と低融点の元素を合
金化したγ' 相あるいはγ”相析出強化型Ni基合金に
おいて、HIP処理後の冷却速度の影響をなくし、新翼
並の組織の回復を図ることができ、新翼並かそれ以上の
強度を得ることができるので、これらの再生処理方法は
実用的に極めて有用であるといえる。
型合金、特にγ' 相あるいはγ”相析出強化型Ni基合
金で、高融点の元素に加えてC,B等の低融点の元素を
含有する合金を使用する高温部品に対して適用可能であ
る。
り運用により材料劣化や損傷が生じたガスタービン等の
高温部品を、局部溶解による欠陥がなく、かつ析出相が
完全に固溶した製造時の組織状態に回復させることがで
き、新品と同等またはそれ以上の材料特性を有する部品
とすることができ、寿命を延伸して再使用することがで
きる。
ーチャート。
ービン第2段動翼の化学組成を示す表。
果を示す表。
示す表。
察結果を示す模式図。
プ試験結果を示すグラフ。
観察結果を示す模式図。
ープ試験結果を示すグラフ。
翼材の各種Ni合金の化学組成を示す表。
す図。
IP処理後の冷却速度の異なる再生翼試料におけるγ'
相析出状態を示す組織図。
果を示すグラフ。
IP処理及びその後の熱処理を示す図。
す図。
す図。
す図。
す図。
す図。
す図。
す図。
成を示す表。
熱処理を行った再生翼から採取した試験片を用いて行っ
たクリープ試験結果を示すグラフ。
理工程、3…溶体化熱処理工程、4…時効熱処理工程、
5…再生後検査工程、6…γ相、7…γ' 相、8…部分
溶体化熱処理工程、9…γ' 相固溶温度。
Claims (11)
- 【請求項1】 析出強化型の合金からなり高温下での使
用により析出物の析出形態あるいは相の変化を生じ、も
しくはクリープあるいは疲労による損傷を受けた高温部
品に高温高圧下で回復熱処理を施して析出物を固溶させ
た後に急冷し、その後部分溶体化熱処理と時効熱処理を
行うことにより前記析出物の析出形態あるいは相もしく
はクリープあるいは疲労による損傷を回復させることを
特徴とする高温部品の再生処理方法。 - 【請求項2】 回復熱処理における温度は、高温部品の
析出物が固溶する温度以上でかつ高温部品の溶融温度以
下であることを特徴とする請求項1記載の高温部品の再
生処理方法。 - 【請求項3】 回復熱処理における圧力は、高温部品の
回復熱処理温度における耐力以上でかつ高温部品の設計
上の形状を保持し得る圧力以下であることを特徴とする
請求項1記載の高温部品の再生処理方法。 - 【請求項4】 高温高圧下での回復熱処理により低融点
元素の均質化を図り、これらの元素の偏析により生じる
局部的な融点の低下を防ぎ、その後の熱処理において温
度を析出物の固溶温度以上に上げ、回復熱処理後の冷却
速度の影響を完全になくすかもしくは最小限に留めた後
急冷し、その後、部分溶体化熱処理と時効熱処理を行う
ことを特徴とする請求項1記載の高温部品の再生処理方
法。 - 【請求項5】 高温高圧下で回復熱処理を施した後の冷
却速度は、10℃/min 以上かつ100 ℃/min 以下である
ことを特徴とする請求項1または請求項4に記載の高温
部品の再生処理方法。 - 【請求項6】 回復熱処理後に行う溶体化熱処理と部分
溶体化熱処理とを連続して行い、その後、時効熱処理を
行うことを特徴とする請求項4記載の高温部品の再生処
理方法。 - 【請求項7】 回復熱処理後に行う溶体化熱処理後の部
分溶体化熱処理と時効熱処理を連続して行うことを特徴
とする請求項4記載の高温部品の再生処理方法。 - 【請求項8】 回復熱処理後に行う溶体化熱処理と部分
溶体化熱処理および時効熱処理を連続して行うことを特
徴とする請求項4記載の高温部品の再生処理方法。 - 【請求項9】 回復熱処理後連続して部分溶体化熱処理
を行い溶体化熱処理を兼ねさせた後強制冷却し、その後
に時効熱処理を行うことを特徴とする請求項4記載の高
温部品の再生処理方法。 - 【請求項10】 回復熱処理後連続して部分溶体化熱処
理と時効熱処理を行い、その間温度を下げる段階では急
冷し、回復熱処理後の熱処理を兼ねさせることを特徴と
する請求項4記載の高温部品の再生処理方法。 - 【請求項11】 析出物の固溶温度以上で均質化と析出
物の固溶を図る回復熱処理を行った後急冷し、その後に
行う部分溶体化熱処理は高圧をかけた状態で行って先の
熱処理で生じた局部的な溶解部位の圧着を図り、その
後、時効熱処理を施すことを特徴とする請求項4記載の
高温部品の再生処理方法。
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