JP2001240904A - 粒度分布の小さい銅粉の製造法 - Google Patents
粒度分布の小さい銅粉の製造法Info
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Abstract
のに自在に制御して製造する技術を確立する。 【解決手段】 銅塩水溶液とアルカリ剤を反応させて水
酸化銅を析出させた懸濁液に一次還元剤を添加して亜酸
化銅にまで中間還元し,この亜酸化銅の懸濁液に二次還
元剤を添加して金属銅にまで液中で最終還元する銅粉の
製造法において,前記の最終還元工程を二次還元剤の一
部を添加する前半の不飽和段階と,二次還元剤の他部を
添加する後半の粒成長段階に分割し,該不飽和段階と粒
成長段階の間で金属銅の核を生成させる核発生期を設け
たことを特徴とする粒度分布の小さい銅粉の製造法。
Description
製造法に係り,特に,粒径の揃った銅粉(すなわち粒度
分布の小さい銅粉)を,意図する粒径のものに自在に制
御して製造する銅粉製造法に関する。
電回路を接合または配属するのに導電ペーストが使用さ
れている。導電ペーストの導電材料としては,銅,ニッ
ケル,銀などの粉体が適用されているが,銅粉は廉価で
ありながらニッケル粉に比べて抵抗値が低く且つ銀のよ
うにマイグレーションが起き難いという特徴があるの
で,銅ペーストが多く使用されている。
近では積層した基板の各層間を多数の外部電極で連結す
る方式(スルーホール方式やビアホール方式)が提案さ
れ,各種パッケージの小型化および高密度化に貢献して
いるが,このようなスルーホールやビアホールに充填す
る導電ペーストとしても銅ペーストの使用が一般的であ
る。この場合,銅ペーストを該ホールに充填後,加熱加
圧成形される場合と,焼成される場合とがあるが,前者
では熱硬化型樹脂の使用により硬化成形され,後者では
有機バインダーや溶剤は蒸発除去されて銅粉が焼結され
ることになる。いずれにしても,それに対応できる銅粉
の特性が要求されることになる。
融銅を噴霧するアトマイズ法,陰極への電解析出法,蒸
発蒸着法,湿式還元法等が知られているが,湿式還元法
は他の方法に比べると小さい粒径の均一な粒子を比較的
容易に得ることができるので,導電ペースト用銅粉を製
造する場合の主流となっており,例えば,特開平4−1
16109号公報,特開平2−197012号公報,特
開平10−330801号公報,特開昭62−9940
6号公報,特公平5−57324号公報,特許第263
8271号公報などには湿式還元法による銅粉の製造法
が記載されている。
は,その還元条件の制御によって粒子の形状が球形で且
つ粒径も比較的揃ったものを得やすい点で,他の製法に
はない利点があり,例えば特許第2638271号公報
では,亜酸化銅から金属銅への還元のさいに,ヒドラジ
ン系還元剤の濃度調整によって粒径の揃ったものが得ら
れると教示している。また,特開平10−330801
号公報ではpH緩衝剤の存在下でヒドラジン系還元剤を
徐々に添加すると粒度分布が特定範囲にある銅粉が得ら
れると教示している。
その銅ペーストの用途や使用形態に応じた特性を有する
ことが必要とされる。基本的には,樹脂に対する充填性
能や流動性,粉体としての導電性に優れることが要求さ
れ,さらには,低温焼結性等も場合によっては必要とさ
れる。このような銅ペーストの用途や使用形態に応じた
特性を十分に発現するには,球状の粒子を,その特性が
得られるような粒径と粒度分布をもつようにすることが
肝要である。このためには,粒度分布が小さく且つ平均
粒径がそれぞれ異なる銅粉を多数準備しておき,要求さ
れる特性に応じて,これら粒径が相互に異なる銅粉を適
切な割合で混ぜ合わせるという操作を行うのが最も適切
である。
銅粉であるのみならず,その平均粒径もサブミクロンか
ら数10ミクロンまで,数10段階に分けられたそれぞ
れ平均粒径が相違する銅粉を多数準備しておくことが必
要であり,このためには,粒度分布の小さい球形銅粉
を,その平均粒径を自在にコントロールしながら製造で
きる技術が要求される。これまでのところ,平均粒径の
大きさを自在にコントロールしながら且つその粒度分布
が小さい銅粉を製造する技術は,湿式還元法では確立さ
れていなかった。本発明は,その確立を課題としたもの
である。
本発明者らは鋭意研究を重ねたところ,従来の湿式還元
法における還元過程において,亜酸化銅から金属銅への
還元過程での金属銅の核発生条件を適正に制御すると,
粒度分布を小さくしながら且つその粒径制御を自在に行
えることがわかった。
塩水溶液とアルカリ剤を反応させて水酸化銅を析出させ
た懸濁液に一次還元剤を添加して亜酸化銅にまで中間還
元し,この亜酸化銅の懸濁液に二次還元剤を添加して金
属銅にまで液中で最終還元する銅粉の製造法において,
前記の最終還元工程を二次還元剤の一部を添加する前半
の不飽和段階と,二次還元剤の他部を添加する後半の粒
成長段階とに分割し,該不飽和段階と粒成長段階の間で
金属銅の核を生成させる核発生期を設けたことを特徴と
する粒度分布の小さい銅粉の製造法を提供する。
に還元剤を徐々に添加して亜酸化銅を金属銅に還元する
場合の挙動を電顕観察により詳細に調べた結果,亜酸化
銅の粒子が金属銅粒子に直接的に還元される訳ではな
く,すなわち,亜酸化銅粒子の個々の表面から金属銅が
生成し,やがて亜酸化銅粒子の形骸部分に金属銅粒子が
生成するというのではなく,亜酸化銅粒子はそのままの
形態(形や大きさが変化しないで)で存在していなが
ら,或る時点で,金属銅の核が別途に突然に発生し,い
ったんこの核が発生するとそれが金属銅の粒子に成長し
てゆくと同時に亜酸化銅粒子が徐々に消滅してゆくとい
う現象が起きることを見い出した。すなわち,金属銅の
核は,亜酸化銅粒子とは別途に共存し得るのであり,し
かも,その核の発生時点は一律に制御可能であり,ま
た,核の成長段階では新たな核を発生させないようにす
ることもできる。そして,この核の発生数が粒径を決め
る要因となり,また核の発生が或る時点で同時に起きる
ことが粒度分布の小さい銅粉を得るための要因となるこ
とがわかった。
よって,粒度分布の小さく且つ平均粒径が各種任意の球
状銅粉を製造する点に特徴がある。すなわち,銅塩水溶
液とアルカリ剤を反応させて水酸化銅を析出させた懸濁
液に一次還元剤例えばブドウ糖を添加して亜酸化銅にま
で中間還元して,亜酸化銅の懸濁液を得るまでは従来と
同様であるが,この亜酸化銅の懸濁液に二次還元剤例え
ばヒドラジンを添加して金属銅にまで最終還元するさい
に,この最終還元工程を二次還元剤の一部を添加する前
半の不飽和段階と,二次還元剤の他部を添加する後半の
粒成長段階とに分割し,該不飽和段階と粒成長段階の間
で金属銅の核を生成させる核発生期を設ける点に特徴が
ある。
の一部を添加するのではあるが,その添加量は,金属銅
が生成せず且つ亜酸化銅が未還元のまま存在し得る量と
する。この不飽和段階は二次還元剤は溶存しているが,
亜酸化銅は還元されないで,いわゆる不飽和の状態を維
持している段階であり,したがって,金属銅の析出が起
きないような低濃度の還元剤量の共存下のもとで亜酸化
銅をそのまま存在させておくことが肝要である。この不
飽和段階は金属銅の核を発生させる核発生期に引き継が
れる。核発生期では銅核を発生させるためのトリガーを
系に与えることが好ましく,核発生のトリガー手段とし
ては系に熱を付与する方法または二次還元剤を投入する
方法が簡便である。
不飽和の程度(核を発生させる直前の不飽和の程度)に
よって核の発生数を制御できることがわかった。不飽和
の程度が高いほど,すなわち亜酸化銅に対する二次還元
剤の溶存割合が少ないほど,核の発生数は少なくなり,
二次還元剤の溶存割合が高くなるにつれて,核の発生数
は多くなる。したがって,粒径の大きな金属銅粒子を得
るには,不飽和の程度を高くし(二次還元剤の相対溶存
量を少なくし),粒径の小さいなものを得るには不飽和
の程度を低くし(該相対溶存量を多くし)た状態で,核
発生のトリガー(熱または二次還元剤の投与)を系に付
与すればよい。この点が本発明法の一つの特徴である。
そして,いったんこのトリガーを系に与えて,亜酸化銅
懸濁液中で金属銅の核を発生させると,この発生した核
は成長を続けるが,新たな核の発生は特別のことがない
限り抑制できることがわかった。
半の粒成長段階は,核発生期で発生した銅核の全てが一
様に成長を続ける段階であり,この段階では亜酸化銅の
粒子が徐々に消滅してゆくが,金属銅の粒子数が増加し
たり減少したりすることは実質的に起きない。すなわ
ち,この粒成長工程で添加される二次還元剤は,銅核の
発生には寄与せず,銅粒子の成長(亜酸化銅の消滅)に
寄与させることが肝要であり,このため,核発生のトリ
ガーとなるようなことは出来るだけ避けること,すなわ
ち系に急に熱を付与するようなことは避け,また二次還
元剤の添加も緩やかに行うのが好ましい。銅核の発生は
核発生期の一時期で一挙に行い,それ以前でもそれ以後
でも銅核を実質的に発生させないことが,粒径の揃った
銅粒子(粒度分布の小さい銅粒子)を得るうえで肝要で
あり,この点も本発明法の特徴の一つである。
ち前記の不飽和段階を実施する前の(中間還元後の)亜
酸化銅の懸濁液に酸素含有ガスを吹き込む工程を設ける
と,不飽和段階をより安定させることができることがわ
かった。すなわち,亜酸化銅の懸濁液に酸素含有ガス例
えば空気を吹き込むことによって亜酸化銅の表面を酸化
処理しておくと,不飽和段階において二次還元剤が添加
されても亜酸化銅が未還元のままより安定に存在し続け
ることができ,核発生期では,その時点での二次還元剤
の溶存量に応じた数の銅核が一斉に発生しやすくなる結
果,粒度分布が一層小さい銅粒子からなる銅粉を,該二
次還元剤の溶存量に応じた各種の平均粒径のもとで,精
度よく製造できることがわかった。
銅塩水溶液とアルカリ剤を反応させて水酸化銅を析出さ
せた懸濁液に一次還元剤例えばブドウ糖を添加して亜酸
化銅にまで中間還元し,この亜酸化銅の懸濁液に酸素含
有ガスを吹き込んだうえ,この懸濁液に対して二次還元
剤例えばヒドラジンの一部を添加する前半の不飽和段
階,核発生期および二次還元剤の他部を添加する後半の
粒成長段階を実施するのが好ましい。他の条件が一定な
らば,一般に亜酸化銅の懸濁液に吹き込む酸素含有ガス
の量を多くすればするほど銅粉の粒径を大きくでき,ま
た,粒度分布を小さくすることができる。したがって,
酸素含有ガスの吹き込み流量と吹き込み時間の調節によ
っても,銅粉の粒径制御を行うことができ,粒径の揃っ
た各種粒径の粒子が得られやすくなる。
スの吹き込み量は,液中の銅1モルに対して酸素量が少
なくとも0.1モル以上となるように流量と吹き込み時
間を調節するのがよい。吹き込み量の上限については特
に規制しないが,あまり吹き込み量が多くなっても効果
が飽和するので,吹き込みの仕方にもよるが,液中の銅
1モルに対して酸素量が20モル以下,場合によっては
10モル以下であってもよい。吹き込む酸素含有ガスと
しては空気の使用が最も便利であり,特別のことがない
限り,常温の空気を常温の懸濁液に吹き込めばよい。も
ちろん酸素富化空気や純酸素ガスも使用できる。
拘わらず,本発明の最終還元における前半の不飽和段階
では反応系の液温を30〜70℃の範囲内の或る温度に
調整しておくのが好ましく,後半の粒成長段階では反応
系の液温を60〜90℃の範囲に調整するのが好まし
い。すなわち,不飽和段階より粒成長段階の方が液温が
高くなるようにするのがよい。この場合,核発生期での
トリガーとして系に熱を付与する場合には,この熱の付
与は液温が0.01/min〜10℃/min,好まし
くは0.1/min〜5℃/minの昇温速度で昇温す
るように与熱するのが好ましい。核発生期程でのトリガ
ーとして系に二次還元剤を投与する場合には,この核発
生期において,二次還元剤の全添加量の2〜20%をこ
の核発生期で一挙に添加するのがよい。また,最終還元
に要する二次還元剤の全添加量(不飽和段階と粒成長段
階の両者で)は,ヒドラジン(抱水ヒドラジン)を二次
還元剤として使用する場合,亜酸化銅の全てを還元する
に必要な化学量論量の1.5〜2.5倍とし,そのうち,
0.1〜2.0倍を前半の不飽和工程で添加すればよい。
また,二次還元剤の添加にあたっては,いずれの段階で
も液をゆるやかに攪拌しながら添加するのがよい。
懸濁液が得られたら,常法にしたがって,液中の金属銅
を液から分離し(例えばフイルタープレスし),そのさ
い耐酸化性付与のための表面処理を施し,或いは施すこ
となく,窒素雰囲気中で乾燥し,乾燥粉をハンマーミル
等で解砕処理して,粒度分布の小さい金属銅粉を得るこ
とができる。例えば下記に定義するD10,D50およ
びD90の値の間で下式(1) に従うA値が1.0以下,
好ましくは0.7以下である粒度分布の小さい銅粉を得
ることができる。後記の実施例に示すように平均粒径が
比較的大きいものでは(実施例1では平均粒径が約6μ
m)該A値が0.4以下を示すような粒度分布の非常に
小さい銅粉を得ることができる。 A値=(D90−D10)/D50・・(1) ただし,D10,D50およびD90は,横軸に粒径D
(μm)をとり,縦軸に粒径Dμm以下の粒子が存在す
る容積(Q%)をとった累積粒度曲線において,Q%が
10%,50%および90%に対応するそれぞれの粒径
Dの値を言う。
水溶液Bを準備した。 硫酸銅水溶液A: 〔CuSO4・5H2O:0.6925Kg〕+〔純水:
2.20Kg〕 アルカリ水溶液B: 〔濃度48.3%のNaOH水溶液:0.578Kg〕+
〔純水:4.12Kg〕
に,温度29℃の該硫酸銅水溶液Aを全量添加し強攪拌
する。発熱によりA+Bの液の温度は34℃まで上昇
し,液中に水酸化銅が析出した懸濁液が得られる。この
液のpHは13.74である。A液とB液の混合量比
は,液中の銅に対して苛性ソーダの当量比が1.25で
ある。
水1.41Kgに0.9935Kgのブドウ糖を溶かした
ブドウ糖溶液を添加し,添加後30分間で液の温度を7
0℃まで昇温したあと,15分間保持する。ここまでの
処理操作は全て窒素雰囲気下で行う。
流量で200分間にわたって空気をバブリングさせる。
これにより,液のpHは6.2となる。
たあと,上澄液(pH6.92)を除去し,沈殿をほぼ
全量採取し,この沈殿物に純水0.7Kgを追加して,
亜酸化銅の懸濁液を得る。
の供試液を反応槽内に入れて攪拌しながら,抱水ヒドラ
ジンを表1に示した条件で添加して金属銅にまで最終還
元した。表1において,ヒドラジン添加量(当量)は,
亜酸化銅を金属銅に全て還元するに要する化学量論量を
1当量としたときの,その化学量論量に対する割合であ
り,例えば経過時間90分でヒドラジン添加量が0.1
当量とは,90分経過時点で,亜酸化銅を金属銅に全て
還元するに要するヒドラジン化学量論量の1/10のヒ
ドラジンを添加したことを意味する。
次還元パターン(温度パターン) を図表化して示した。
懸濁液温度は,核発生期には外部から熱を付与して強制
的に昇温し,表示の温度パターンとなるように液温を制
御した。図中の(イ)〜(へ)の時点で,懸濁液中から
粉体をサンプリングし,その時点の粒子の形態を電子顕
微鏡(SEM)で観察したところ,それぞれ次のような
ものであった。
粒径がほぼ0.3μmの球形の亜酸化銅粒子であり(経
過時間0分のものと実質的に変わりはない),金属銅の
核発生は見られない。 (ロ)210分経過時(昇温開始60分後)の粒子:前
記(イ)の粒子群の中にところどころに平滑面をもつ金
属銅の核(大きさは約0.2〜0.5μm径)が発生して
いる。この銅核は亜酸化銅粒子100〜150個の中に
一つか二つ見える程度である。亜酸化銅粒子自身は前記
の(イ)のものと変わりはない。 (ハ)240分経過時(昇温開始90分後):金属銅の
核が0.5〜0.8μm径まで成長しているが,その核数
は増加しておらず,亜酸化銅粒子も前記の(ロ)の状態
と殆んど変わりはない。 (ニ)昇温終期の粒子:前記(ハ)のときよりも金属銅
の核が大きくなっている(0.8〜1.0μm径)が,そ
の核数には変化はない。亜酸化銅粒子は全体的にやや径
が小さくなっているように見えるが,ほとんどそのまま
残存している。 (ホ)粒成長段階前中期の粒子:金属銅の核は1.5μ
m径程度の粒子に粒成長しているが,金属銅の粒子数は
前記(ハ)の段階の核数から変化してないと観測され
た。亜酸化銅の粒子はさらに小振りになり,粒子の外形
もややふやけた状態となっているが,亜酸化銅が存在す
ることには変わりはない。 (ヘ)粒成長段階後中期の粒子:金属銅の粒子はほぼ
5.5μm径まで成長しているが,金属銅の粒子数は前
記(ホ)の段階から変化していないと観測された。亜酸
化銅の全粒子は径が0.2μm以下にまで小さくなり,
金属銅の粒成長に応じて亜酸化銅量が減少している。 (ト)粒成長段階終期( 還元終了後) の粒子:亜酸化銅
の粒子は全て消滅しており粒径が約6μmの金属銅の粒
子だけが観察される。
ーンによれば,金属銅の核発生は昇温開始後約60分後
の液温約64℃の時点で起きたことがわかる。すなわ
ち,不飽和段階では液温は49℃に維持しながらほぼ連
続して合計0.4当量のヒドラジンが添加されている
が,この段階では金属銅の核は発生せず,液に熱を付与
して液温が64℃になったときに,この与熱がトリガー
となって,その不飽和状態から一斉に金属銅の核が生成
する。そして,この核はさらに昇温およびヒドラジンの
添加によって成長するが,核発生期以後には,もはや新
たに核が発生することはない。核発生期前までにヒドラ
ジンはほぼ連続して合計で0.4当量,粒成長段階では
ほぼ連続して合計で1.3当量が添加されたので,総計
で1.7当量添加されたことになり,最終的には亜酸化
銅の全てが金属銅に還元されたことになる。
IC社製のヘロス粒度分布測定装置(HELOS H0
780)で粒度分布を測定し,横軸に粒径D(μm)を
指数目盛でとり,縦軸に分布密度および粒径Dμm以下
の粒子が存在する容積(Q%)をとったときの累積粒度
曲線を求めたところ,Q%が10%,50%および90
%のときの粒径Dは,それぞれD10=4.92μm,
D50=5.99μm,D90=7.22μmであった。
すなわち,平均粒径は5.99μmであり,その粒度分
布を(D90−D10)/D50の比で評価すると,こ
の比は0.38であり,粒度分布が小さいことがわか
る。またBET法による比表面積は0.16m2/g,タ
ップ密度は4.7g/cm3であった。
濁液を供試材とし,抱水ヒドラジンを表2に示した条件
で添加して金属銅にまで最終還元した以外は,実施例1
と同じような操作を繰り返した。
二次還元パターンを図表化して示した。また,図1の場
合と同様に,図中の(イ)〜(へ)の時点で,懸濁液中
から粉体をサンプリングし,その時点の粒子の形態を電
子顕微鏡(SEM)で観察したところ,それぞれ次のよ
うなものであった。
粒径がほぼ0.3μmの球形の亜酸化銅粒子であり(経
過時間0分のものと実質的に変わりはない),金属銅の
核発生は見られない。 (ロ)200分経過時(昇温開始50分後)の粒子:前
記(イ)の粒子群の中にところどころに平滑面をもつ金
属銅の核(大きさは約0.1〜0.3μm径)が発生して
いる。この銅核は亜酸化銅粒子80〜120個の中に一
つか二つ見える程度である。亜酸化銅粒子自身は前記の
(イ)のものと変わりはない。 (ハ)240分経過時(昇温開始90分後):金属銅の
核が0.4〜0.6μm径まで成長しているが,その核数
は増加しておらず,亜酸化銅粒子も前記の(ロ)の状態
と殆んど変わりはない。 (ニ)昇温終期の粒子:前記(ハ)のときよりも金属銅
の核が大きくなっている(0.6〜0.8μm径)が,そ
の核数には変化はない。亜酸化銅粒子は全体的にやや径
が小さくなっているように見えるが,殆んどそのまま残
存している。 (ホ)粒成長段階前中期の粒子:金属銅の核は1.0μ
m径程度の粒子に粒成長しているが,金属銅の粒子数は
前記(ハ)の段階の核数から変化してないと観測され
た。亜酸化銅の粒子はさらに小振りになり,粒子の外形
もややふやけた状態となっているが,亜酸化銅が存在す
ることには変わりはない。 (ヘ)粒成長段階後中期の粒子:金属銅の粒子はほぼ
2.0μm径まで成長しているが,金属銅の粒子数は前
記(ホ)の段階から変化していないと観測された。亜酸
化銅の全粒子は径が0.2μm以下にまで小さくなり,
金属銅の粒成長に応じて亜酸化銅量が減少しているのが
わかる。 (ト)粒成長段階終期 (還元終了後) の粒子:亜酸化銅
の粒子は全て消滅しており粒径が約2.5μmの金属銅
の粒子だけが観察される。
ーンによれば,金属銅の核発生は昇温開始後約50分後
の液温約62℃の時点で起きたことがわかる。すなわ
ち,不飽和段階では液温は49℃に維持しながらほぼ連
続して合計0.8当量のヒドラジンが添加されている
が,この段階では金属銅の核は発生せず,液に熱を付与
して液温が62℃になったときに,この与熱がトリガー
となって,その不飽和状態から一斉に金属銅の核が生成
する。そして,この核数は,実施例1の場合より多い。
これは,実施例1よりも不飽和の程度が低い(ヒドラジ
ンの溶存量が相対的に多い)ことが関与しているものと
考えてよい。この核発生の後は,さらに昇温およびヒド
ラジンの添加によって核が成長するが,もはや新たに核
が発生することはない。核発生の前までにヒドラジンは
ほぼ連続して合計で0.8当量,粒成長段階ではほぼ連
続して合計で1.0当量,総計で1.8当量添加されたこ
とになり,最終的には亜酸化銅の全てが金属銅に還元さ
れたことになる。
様に粒度分布を測定したところQ%が10%,50%お
よび90%のときの粒径Dは,それぞれD10=1.8
6μm,D50=2.60μm,D90=3.69μmで
あった。すなわち,平均粒径は2.60μmであり,そ
の粒度分布を(D90−D10)/D50の比で評価す
ると,この比は0.70であり,粒度分布が小さいこと
がわかる。またBET法による比表面積は0.39m2/
g,タップ密度は4.19/cm3であった。
濁液を供試材とし,抱水ヒドラジンを表3に示した条件
で添加して金属銅にまで最終還元した以外は,実施例1
と同じような操作を繰り返した。
二次還元パターンを図表化して示した。本例の場合に
は,150分までは液温を49℃に制御したが,それ以
降は液温制御は行わず,成り行きにまかせた状態で液温
を計測した。図示のように,液温制御を行わない場合に
は,反応の進行につれて液温が上昇してゆく状況がわか
る。そして,図1の場合と同様に,図中の(イ)〜
(へ)の時点で,懸濁液中から粉体をサンプリングし,
その時点の粒子の形態を電子顕微鏡(SEM)で観察し
たところ,それぞれ次のようなものであった。
粒径がほぼ0.3μmの球形の亜酸化銅粒子であり(経
過時間0分のものと実質的に変わりはない),金属銅の
核発生は見られない。 (ロ)不飽和段階終期の粒子:前記(イ)の状態と実質
的に変わりはない。 (ハ)210分から240分までにほぼ連続してヒドラ
ジンを0.4当量添加したさいの230分時点の粒子:
前記(イ)の粒子群の中にところどころに平滑面をもつ
金属銅の核(大きさは約0.1〜0.3μm径)が発生し
ている。この銅核は亜酸化銅粒子80〜120個の中に
一つか二つ見える程度である。亜酸化銅粒子自身は前記
の(イ)のものと変わりはない。 (ニ)315分経過時(粒成長段階初期)の粒子:金属
銅の核が1.2〜1.5μm径まで成長しているが,その
核数は増加しておらず,亜酸化銅粒子は全体的にやや径
が小さくなっているように見えるが,ほとんどそのまま
残存している。 (ホ)390分経過時(粒成長段階中期)の粒子:金属
銅の核は2.5μm径程度の粒子に粒成長しているが,
金属銅の粒子数は前記(ニ)の段階の核数から変化して
ないと観測された。亜酸化銅の全粒子は径が0.2μm
以下にまで小さくなり,金属銅の粒成長に応じて亜酸化
銅量が減少しているのがわかる。 (ト)粒成長段階終期 (還元終了後) の粒子:亜酸化銅
の粒子は全て消滅しており粒径が約2.7μmの金属銅
の粒子だけが観察される。
ーンによれば,金属銅の核発生は不飽和段階を経たあ
と,不飽和が解消または不飽和の程度が低下するような
ヒドラジンを投与したことがトリガーとなって金属銅の
核が発生したことがわかる。そして,この時点から還元
反応が進行するにつれて液温も上昇している。すなわち
不飽和段階では液温は49℃に維持しながらほぼ連続し
て合計0.8当量のヒドラジンが添加されているが,こ
の段階では金属銅の核は発生せず,液にさらにヒドラジ
ンを投与したときに,これがトリガーとなって,その状
態から一斉に金属銅の核が生成する。そして,この核数
は,実施例2の場合とほぼ同等であり,その結果,実施
例2のものとほぼ同等の平均粒径をもつ銅粒子が得られ
たものと考えてよい。この核発生期後は,さらに昇温お
よびヒドラジンの添加によって核が成長するが,もはや
新たに核が発生することはない。核発生期前までにヒド
ラジンは合計で0.8当量,核発生後は合計で1.0当
量,総計で1.8当量添加されたことになり,最終的に
は亜酸化銅の全てが金属銅に還元されたことになる。
様に粒度分布を測定したところQ%が10%,50%お
よび90%のときの粒径Dは,それぞれD10=1.9
3μm,D50=2.70μm,D90=3.70μmで
あった。すなわち,平均粒径は2.70μmであり,そ
の粒度分布を(D90−D10)/D50の比で評価す
ると,この比は0.66であり,粒度分布が小さいこと
がわかる。またBET法による比表面積は0.37m2/
g,タップ密度は4.02g/cm3 であった。
粒度分布の小さい球形銅粉を,意図とする平均粒径で自
在に製造できるようになった。このため,平均粒径が異
なる粒度分布の小さい球形銅粉を多数準備しておくこと
ができ,それらを適切に組み合わせて配合すれば,直ち
に用途に適した特性の銅粉が得られる。したがって,用
途に応じた特性の銅粉を自在に調整することができるよ
うになり,特に導電ペースト分野において優れた特性の
銅ペーストが簡単に得られるようになった。
す図である。
す図である。
す図である。
Claims (8)
- 【請求項1】 銅塩水溶液とアルカリ剤を反応させて水
酸化銅を析出させた懸濁液に一次還元剤を添加して亜酸
化銅にまで中間還元し,この亜酸化銅の懸濁液に二次還
元剤を添加して金属銅にまで液中で最終還元する銅粉の
製造法において,前記の最終還元工程を二次還元剤の一
部を添加する前半の不飽和段階と,二次還元剤の他部を
添加する後半の粒成長段階に分割し,該不飽和段階と粒
成長段階の間で金属銅の核を生成させる核発生期を設け
たことを特徴とする粒度分布の小さい銅粉の製造法。 - 【請求項2】 核発生期では,与熱を核発生のトリガー
とする請求項1に記載の粒度分布の小さい銅粉の製造
法。 - 【請求項3】 核発生期では,二次還元剤の添加を核発
生のトリガーとする請求項1に記載の粒度分布の小さい
銅粉の製造法。 - 【請求項4】 不飽和段階では金属銅が生成せず且つ亜
酸化銅が未還元のまま存在し得る量の二次還元剤を添加
し,粒成長段階では新たな金属銅の核を発生させないよ
うに二次還元剤を添加する請求項1,2または3に記載
の粒度分布の小さい銅粉の製造法。 - 【請求項5】 不飽和段階の二次還元剤の添加量を相対
的に少なくすることによって平均粒径の大きい銅粉を製
造し,不飽和段階の二次還元剤の添加量を相対的に多く
することよって平均粒径の小さい銅粉を製造する請求項
1,2,3または4に記載の粒度分布の小さい銅粉の製
造法。 - 【請求項6】 中間還元後,最終還元前の亜酸化銅の懸
濁液に酸素含有ガスを吹き込む工程を有する請求項1に
記載の粒度分布の小さい銅粉の製造法。 - 【請求項7】 二次還元剤はヒドラジンである請求項1
に記載の粒度分布の小さい銅粉の製造法。 - 【請求項8】 下記に定義するD10,D50およびD
90の値の間で下式(1) に従うA値が1.0以下である
粒度分布の小さい銅粉。 A値=(D90−D10)/D50・・(1) ただし,D10,D50およびD90は,横軸に粒径D
(μm)をとり,縦軸に粒径Dμm以下の粒子が存在す
る容積(Q%)をとった累積粒度曲線において,Q%が
10%,50%および90%に対応するそれぞれの粒径
Dの値を言う。
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