JP2001240892A - 香料粉末及びその製造方法 - Google Patents

香料粉末及びその製造方法

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JP2001240892A
JP2001240892A JP2000053173A JP2000053173A JP2001240892A JP 2001240892 A JP2001240892 A JP 2001240892A JP 2000053173 A JP2000053173 A JP 2000053173A JP 2000053173 A JP2000053173 A JP 2000053173A JP 2001240892 A JP2001240892 A JP 2001240892A
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cyclodextrin
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crystalline
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JP2000053173A
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English (en)
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Hideyuki Sumiyoshi
秀幸 住吉
Manami Oishi
真奈美 大石
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Japan Maize Products Co Ltd
Nihon Shokuhin Kako Co Ltd
Original Assignee
Japan Maize Products Co Ltd
Nihon Shokuhin Kako Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】香気組成のバランスが良好(原料香料の成分に
近い)であり、徐放される香気の量が多くかつ持続時間
が長い粉末香料であって、生産し易い粉末香料を提供す
ること。 【解決手段】(a)香料の少なくとも一部の成分とシク
ロデキストリン類とからなる結晶性包接複合体と(b)
香料の少なくとも一部の成分(前記結晶性包接複合体に
含まれる香料成分と同一または異なってもよい)とシク
ロデキストリン類とからなる非結晶性香料包接複合体と
(c)香料の少なくとも一部の成分である非包接香料成
分(前記結晶性包接複合体及び非結晶性香料包接複合体
に含まれる香料成分と同一または異なってもよい)から
なる粉末香料及びその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、香料とシクロデキ
ストリンからなる包接複合体を利用した粉末香料及びこ
の粉末香料の製造方法に関する。本発明の粉末香料は、
比較的製造が容易であり、かつ、原料香料の香り成分に
近いバランスの良い香りを提供でき、しかも、利用でき
る非水系あるいは水分の無いあるいは少ない環境におい
て粉末の構造を破壊すること無く香気特性(徐放性)を
発揮することができるものである。本発明は、香料の香
気を楽しむ香粧品を始め、衣料繊維、製紙、塗料、接着
剤、プラスチック製品などに利用することで、その製品
の付加価値を高めることができる粉末香料及びその製造
方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】シクロデキストリンは、6個以上のグル
コースが環状に結合した非還元性オリゴ糖で、デンプン
に細菌由来のシクロデキストリン生成酵素を作用させて
得られる。主にグルコース残基6、7、8個からなるも
のを順番にα−、β−及びγ−シクロデキストリンと呼
び、既に工業的に製造され、食品、医薬・化粧品等に広
く利用されている。近年では他に、これらの水溶性を改
善するために、更に酵素的にオリゴ糖側鎖を結合した分
岐シクロデキストリン、化学的にメチル化あるいはヒド
ロキシプロピル化したシクロデキストリンなども考案さ
れ、工業的に製造されている。
【0003】これらのシクロデキストリンは、その空洞
内部に種々の有機化合物を取り込み複合体を形成するこ
とが既に知られている。シクロデキストリンの空洞内部
は、比較的疎水環境にあるため、水を媒体とした環境下
では、親油性物質、あるいは親水性分子構造の中の比較
的親油性となる官能基を選択的に取り込む傾向がある。
【0004】包接される成分としては、テルペノイドや
エステル、アルコール、炭化水素などの香料の揮発性成
分をはじめ、フラボノイドやカロチノイド、ステロイ
ド、脂肪酸及び脂肪酸エステルなどの色素や油脂、更に
はポリオキシエチレンやポリオキシプロピレンなどのポ
リマー、蛋白質及びその分解物であるアミノ酸、ペプチ
ド、アミンなどの含窒素化合物などが報告されている。
【0005】シクロデキストリンの利用においては、物
質を包接することで酸化あるいは光分解から保護した
り、水溶性を改善したり、また呈味を改善するなど、様
々の効果が期待できる。特に香気に対するシクロデキス
トリンの作用は、包接により揮発量を制御することで、
加工の過程での香気の損失を抑制したり、得られた製品
の香気を持続させ付加価値を高めたり、異臭をマスキン
グする効果があり、既に食品や化粧品の分野で多くの発
明が考案されている。
【0006】シクロデキストリンの包接による香気の保
持や持続を目的とした発明の多くは、特開平6−287
127などに記載されているごとく、シクロデキストリ
ンを包接したい成分を含む他の原料と同時に攪拌混合
し、揮発性のある香料成分などをシクロデキストリンで
保護する方法である。
【0007】しかし、この様な手法では、系の大きさに
対する香気成分などの包接したい成分の量的な比率が極
めて小さく希薄となる。そのため、系に分散している物
質を比較的少量のシクロデキストリンで効率よく包接さ
せて香気を保持すること(期待する包接効果を得るこ
と)は難しい場合が多い。
【0008】このような問題を解決するための手段とし
ては、香料を予めシクロデキストリンに包接させ、得ら
れ包接複合体を用いる方法がある。ところが、シクロデ
キストリンは、種々の化合物分子を等しく包接する訳で
はない。シクロデキストリンの種類及び包接させる物質
の種類によって、包接されやすい/されにくいという傾
向に基づいて起こる包接の選択やシクロデキストリンに
包接する物質間に競合が生じる。そのため、最終製品の
イメージに合わせ慎重に調合した香料をシクロデキスト
リンに包接させても、得られる複合体から揮発してくる
香気は、調合した香料と異なる香気と評価されてしまう
場合がある。
【0009】シクロデキストリン包接複合体の一般的な
調製法は、水の多い系でシクロデキストリンと香料を混
合する方法である。しかし、この方法で香気バランスの
良い包接複合体を得ることができても、水を用いること
ができない油脂やプラスチック、塗料、接着剤などの加
工商品には、そのまま利用することは難しい。そこで、
上記包接複合体をこれら非水系商品の加工製造に用いる
ことができる形態に適合させるために、包接複合体を含
む混合液を乾燥粉末化することが一般に行われる。しか
し、上記混合液中では既にシクロデキストリンの香料成
分に対する選択性が働いているため、乾燥時の加熱によ
り比較的包接力が弱い成分は揮散してしまい、乾燥によ
り得られた粉末香料は香気バランスが崩れたものとなっ
てしまうことがある。
【0010】特許第2874950号には、食品や飲料、医
薬、化粧品などに添加することができるシクロデキスト
リンと香料などとの包接複合体微粒子が開示されてい
る。この特許では、包接された物質の包接複合体からの
放出速度を向上させる目的で、包接複合体を特定の微細
な粒子径にすることを特徴とする。また、詳細な説明に
は、シクロデキストリンとして種々のシクロデキストリ
ンが例示されているが、実施例に使用さているのはβ−
シクロデキストリンのみである。
【0011】特許第2874950号では、シクロデキストリ
ンと香料などからなる包接複合体を水溶液から析出さ
せ、これを凍結乾燥し、さらに粉砕して、所定の粒子径
の包接複合体微粒子を製造している。しかし、β−シク
ロデキストリンは、複数の香気成分から成る複合香料が
シクロデキストリンと包接複合体を形成する際に選択的
な包接をするために、香気成分バランスが、原料香料と
異なるという問題を生じる。さらに、β−シクロデキス
トリンは、包接複合体を形成すると、水溶性が低下して
沈殿または結晶として析出し、粘度の高いスラリーとな
り、作業性が著しく悪化するという問題もあった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】シクロデキストリンと
香気成分が1:1で包接複合体を形成する場合、溶液内
では、式(1)で表されるような化学平衡状態をとる。
このときシクロデキストリンが香気成分を包接する強さ
は、式(2)に示す、シクロデキストリンと香気成分の
種類で決まる化学平衡定数によって表される。
【0013】
【数1】
【0014】シクロデキストリン類と複数の組成から成
る香料を水溶液中で包接する場合、香料成分の内、使用
したシクロデキストリン類と包接しやすい成分が複合体
を形成する。そして、シクロデキストリン類がα−、β
−、γ−シクロデキストリンのように結晶性の包接複合
体を生成するものの場合、生成した包接複合体の多く
は、順次、沈殿として溶液系から析出する。包接しやす
い成分は、それだけ包接複合体への包接力が強く、包接
されている香気成分の揮発は極端に抑制される傾向があ
る。そのため、溶液系から分離した包接複合体を含む溶
液系は、強い香気持続性を有するものの、系から立ち上
がる香気組成は包接し難い成分が相対的に多くなり、香
気バランスの崩れた、官能的には別の匂いとして認知さ
れてしまうことがある。
【0015】上記のように、α−、β−、γ−シクロデ
キストリンなどの結晶性の包接複合体を生成するシクロ
デキストリンを用いて香料を包接した場合、包接複合体
は沈殿(微粒子)を形成する。包接に用いた水の量が、
シクロデキストリンに対し等量〜2倍量程度である場
合、包接複合体は沈殿(微粒子)を形成した溶液は極め
て粘調なペースト状態となることが多い。そのため、ス
プレードライなどの乾燥方法により包接複合体粉末とす
るためには、固形分濃度で20〜25%(w/v)程度にまで
系に更に水を添加して希釈しないと、乾燥機に送液する
ことができない。また送液できる程度に希釈しても、比
重の重い包接複合体は容易に沈殿してしまうため、送液
や噴霧機配管を詰まらせてしまうことがある。さらに、
水分を多くすることにより、乾燥により多くの熱量を要
するため単位時間の生産性も低下する。このように、結
晶性の包接複合体を生成するシクロデキストリンを用い
て、香料の包接複合体粉末を製造する方法は、製造工程
における作業性及び経済性が悪いという欠点がある。
【0016】ところで、2-ヒドロキシプロピル化シクロ
デキストリンやシクロデキストリンポリマーなどの水溶
性の高いシクロデキストリン誘導体は、上記のβ−シク
ロデキストリンなどと異なり、水溶性の包接複合体を形
成する。即ち、これら水溶性の高いシクロデキストリン
誘導体を用いた場合、結晶性の包接複合体の場合と異な
り、包接複合体は沈殿を起こさず、非結晶性の包接複合
体が生成する。非結晶性の包接複合体、即ち水溶性の包
接複合体が生成する場合、溶液内では必ず化学平衡状態
を取る。そのため、たとえ理論的に包接に過不足が無い
ようにシクロデキストリン分子と包接させる香気成分と
を分子数を厳密に計算し混合しても、溶液の温度やpH
などの要因と平衡定数で決まった数だけが包接を形成
し、系の中には包接複合体と、包接されない香気成分と
未包接のシクロデキストリンが少なからず共存すること
になる。そのため、非結晶性の包接複合体を含む系から
立ち上る香気は、先に延べた包接複合体沈殿を生じる系
と比較すると、遊離している香料が多いため、元の香気
に近い揮発組成となる場合が多い。
【0017】さらに、上記のような非結晶性の包接複合
体から成る系を加熱乾燥させ粉末香料を製造する場合、
非結晶性の包接複合体を含む系は、水溶液であるため、
及び、系には上述のように遊離した香料成分が多く含ま
れるため、これらの成分は乾燥過程の減圧、加熱で揮発
してしまう。従って、得られた乾燥粉末中に残存する香
料は、過不足がないように計算された包接量(理想的な
包接量)よりも少なくなる。その結果、得られた粉末香
料から発現する香気量が少なくなり、見かけの香気持続
時間が期待されるものよりも短くなってしまう場合が多
い。それに対して、結晶性の包接複合体を形成するシク
ロデキストリンを用いた系の場合、上記のように、香気
組成バランスは崩れるものの、乾燥粉末中の香料収率は
高く(乾燥時の香料の揮散は少なく)、徐放される香気
の量や持続時間は、非結晶性の包接複合体に比べて勝る
場合が多い。
【0018】そこで本発明の目的は、香気組成のバラン
スが良好(原料香料の成分に近い)であり、徐放される
香気の量が多くかつ持続時間が長い粉末香料であって、
生産し易い粉末香料を提供することにある。尚、生産し
易いとは、包接複合体を含む溶液の粘度が比較的低く作
業性が良好であり、かつ乾燥後の香料収量も高いことを
意味する。
【0019】発明者らは、結晶性の包接複合体及び非結
晶性の包接複合体の欠点を補い、より多くの香料を粉末
中に残存せしめ、且つ発現する香気バランスが良く、期
待されるだけの香気持続性を実現させる粉末香料を得る
べく鋭意検討を重ねた。その結果、結晶性の包接複合体
と非結晶性の包接複合体とを共存させた粉末香料が、乾
燥歩留まりが良好で生産性に優れ、且つ原料香料に近い
組成バランスが良好な香気を揮発できることを見出し、
本発明を完成させた。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明は、(a)香料の
少なくとも一部の成分とシクロデキストリン類とからな
る結晶性包接複合体と(b)香料の少なくとも一部の成
分(前記結晶性包接複合体に含まれる香料成分と同一ま
たは異なってもよい)とシクロデキストリン類とからな
る非結晶性香料包接複合体と(c)香料の少なくとも一
部の成分である非包接香料成分(前記結晶性包接複合体
及び非結晶性香料包接複合体に含まれる香料成分と同一
または異なってもよい)からなる粉末香料に関する。
【0021】さらに本発明は、原料香料、結晶性包接複
合体を形成し得るシクロデキストリン類、及び非結晶性
香料包接複合体を形成し得るシクロデキストリン類を溶
媒の存在下に混合し、結晶性包接複合体及び非結晶性香
料包接複合体を形成させ、次いで得られた結晶性包接複
合体及び非結晶性香料包接複合体を含有する混合物から
溶媒を除去することを特徴とする上記本発明の粉末香料
の製造方法(製造方法(1))に関する。
【0022】加えて本発明は、原料香料及び結晶性包接
複合体を形成し得るシクロデキストリン類を溶媒の存在
下に混合して結晶性包接複合体を形成させ、原料香料及
び非結晶性香料包接複合体を形成し得るシクロデキスト
リン類を溶媒の存在下に混合して非結晶性香料包接複合
体を形成させ、次いで得られた結晶性包接複合体を含有
する混合物と非結晶性香料包接複合体を含有する混合物
とを混合し、得られた混合物から溶媒を除去することを
特徴とする上記本発明の粉末香料の製造方法(製造方法
(2))に関する。
【0023】本発明の粉末香料、結晶性包接複合体と非
結晶性香料包接複合体と非包接香料成分からなる。結晶
性包接複合体は、香料の少なくとも一部の成分とシクロ
デキストリン類とからなる。結晶性包接複合体を構成す
るシクロデキストリン類は、例えば、α−シクロデキス
トリン、β−シクロデキストリン、及びγ−シクロデキ
ストリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のシク
ロデキストリンであることができる。これらシクロデキ
ストリンは、包接される香気の選択性が強いため、結晶
性香料包接複合体中の香気組成に偏りを生じないよう
に、包接特性の異なる2種以上を混合したもの、あるい
は別途包接したものを乾燥前に混合して用いても良い。
【0024】また、非結晶性香料包接複合体は、香料の
少なくとも一部の成分とシクロデキストリン類とからな
る。尚、非結晶性香料包接複合体に包接される香料成分
は、結晶性包接複合体に含まれる香料成分と同一または
異なってもよい。非結晶性香料包接複合体を構成するシ
クロデキストリン類は、例えば、化学修飾したシクロデ
キストリン誘導体、シクロデキストリンポリマー、及び
分岐シクロデキストリンからなる群から選ばれる少なく
とも1種のシクロデキストリンであることができる。さ
らに、化学修飾したシクロデキストリン誘導体は、例え
ば、グルコース残基の全てあるいは部分的にヒドロキシ
エチル、2-ヒドロキシプロピル、2,3-ジヒドロキシプロ
ピル、2-ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシイソブチル、
ジエチルアミノエチル、トリメチルアンモニオプロピル
などの官能基にて化学修飾したシクロデキストリンであ
ることができる。シクロデキストリンポリマーは、例え
ば、エピクロルヒドリンや多価のグリシジルエーテルな
どの架橋剤にて高分子化したシクロデキストリンである
ことができる。分岐シクロデキストリンは、例えば、グ
ルコース、マルトースなどの分岐側鎖を持つシクロデキ
ストリンであることができる。非結晶性香料包接複合体
は、適度な水分吸湿性を持つことが望ましく、シクロデ
キストリンとしては、2−ヒドロキシプロピル化シクロ
デキストリンをはじめとするヒドロキシアルキル化シク
ロデキストリンやメチル化シクロデキストリン、シクロ
デキストリンポリマーなどが特に好ましい。
【0025】本発明の粉末香料は、結晶性包接複合体の
粒子が非結晶性香料包接複合体からなる連続相に分散さ
れているものであることができる。さらに、非結晶性香
料包接複合体からなる連続相には非包接香料成分も含ま
れる。さらに本発明の粉末香料では、結晶性包接複合体
及び非結晶性香料包接複合体に包接されている香料成分
及び前記複合体に包接されていない香料成分の総和が、
原料となる香料の成分に近い組成を有することが好まし
い。原料となる香料の成分に近い組成とは、原料香料の
香り成分に近いバランスの香りを提供できる、という意
味である。
【0026】本発明の粉末香料において、結晶性香料包
接複合体を形成するシクロデキストリン類と非結晶性香
料包接複合体を形成する水溶性シクロデキストリン誘導
体の配合比率は、用いる香料組成や目的とする香気発現
の特性に応じて任意に選ぶことができる。しかし、結晶
性香料包接複合体が多くなりすぎると、香気バランスを
著しく損ない、且つ液粘度が急激に高まるため、配合す
る結晶性香料包接複合体を形成するシクロデキストリン
類の全シクロデキストリン重量に対する比率は、80%以
下、特に好ましくは10〜50%の範囲で選ぶことが適当で
ある。
【0027】また、結晶性包接複合体に含まれる香料成
分:非結晶性香料包接複合体に含まれる香料成分:非包
接香料成分の割合は、香気成分の種類や配合比、揮発温
度などの物性に応じて適宜決定できるが、例えば、1〜
10:2〜10:0.1〜5、好ましくは1〜3:7〜
10:0.1〜2とすることが、香気の立ち上がり強度
や成分バランス、及び香気持続性などの性能面向上など
の観点から適当である。さらに、上記範囲とすること
が、乾燥効率や乾燥粒子の形状安定化、及び収率などの
製造上の理由からも好ましい。
【0028】原料となる香料は、例えば、天然香料及び
合成香料のいずれでも良い。香料と香料成分の例を以下
の表に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】包接の傾向としては、テルペノイド類、セ
キステルペノイドや芳香族はシクロデキストリンと良く
包接し、α-、β-、γ-シクロデキストリンでは結晶性
沈殿として、ヒドロキシアルキル化或いはポリマー化し
た水溶性シクロデキストリン類とは水溶性包接複合体を
形成する。包接の強さは、ほぼ同程度である。
【0033】本発明の粉末香料は、前記製造方法(1)
又は(2)により製造することができる。製造方法
(1)においては、まず、原料香料、結晶性包接複合体
を形成し得るシクロデキストリン類、及び非結晶性香料
包接複合体を形成し得るシクロデキストリン類を溶媒の
存在下に混合する。溶媒としては好ましくは水が用いら
れる。また、この混合は室温で行うことができる。この
ように混合することで、結晶性包接複合体及び非結晶性
香料包接複合体を形成させる。次いで得られた結晶性包
接複合体及び非結晶性香料包接複合体を含有する混合物
から溶媒を除去する。溶媒の除去には、スプレー乾燥や
凍結乾燥を用いることができるが、粉末の製造が容易で
あるという観点から、スプレー乾燥が好ましい。上記結
晶性包接複合体及び非結晶性香料包接複合体を含有する
混合物は、比較的低粘度であり、包接複合体製造工程か
ら乾燥工程への移送も容易にできる。
【0034】製造方法(2)においては、結晶性包接複
合体の形成と非結晶性香料包接複合体の形成を個別に行
った後、両者を混合する。結晶性包接複合体の形成に
は、原料香料及び結晶性包接複合体を形成し得るシクロ
デキストリン類を溶媒の存在下に混合する。また、非結
晶性包接複合体の形成には、原料香料及び非結晶性香料
包接複合体を形成し得るシクロデキストリン類を溶媒の
存在下に混合する。得られた結晶性包接複合体を含有す
る混合物と非結晶性香料包接複合体を含有する混合物と
を混合し、得られた混合物から、製造方法(1)と同様
の方法で溶媒を除去する。
【0035】尚、疎水性の強い香料(水に全く溶けない
香料)の場合、水の多い系では包接し難い。このような
香料は、シクロデキストリンの高濃度溶液或いはスラリ
ーを高いせん断力を有する攪拌機を用いて攪拌すること
で包接させることができる。このとき、多くの場合はα
-、β-、γ-シクロデキストリンは粘度上昇に伴い、油
分を液中によく分散でるので、スムースに包接できる。
【0036】香料乳化粒子は、溶液中に分散した過剰の
香料粒子の表面に、既に包接している香料成分とシクロ
デキストリン複合体分子または難水溶性の結晶性微粒子
が配位あるいは凝集すること、またはシクロデキストリ
ンポリマーなどの高分子網目構造に粒子が取り囲まれる
ことで形成され、特に香料の組成や添加量、包接を行う
溶液の粘度や比重に大きく依存する。そのため本発明に
おいては、特に乳化安定化のためのシクロデキストリン
を選ぶ必要はない。
【0037】製造方法(1)についてさらに詳細に説明
する。結晶性香料包接複合体を形成するシクロデキスト
リン類と非結晶性香料包接複合体を形成する水溶性シク
ロデキストリン誘導体を、所定の比率で混合し、全シク
ロデキストリン量に100重量部に対し水を60〜200重量
部、好ましくは80〜120重量部加え、均一な分散液とす
る。その後、10〜30重量部の香料を添加し、ホモジナイ
ザーなどのせん断力の高い高速攪拌機を用い、15〜120
分間攪拌する。攪拌速度は、5000〜16,000rpm付近の攪
拌機能力に応じた、粒径20μm以上の粒子が形成されな
い任意の回転数と時間を選ぶことができる。ここで、混
合溶液中に形成される包接複合体や乳化粒子の径が大き
くても、乾燥後に得られる粉末香料は機能的に大きく劣
化することは少ない。しかし、乾燥工程での送液中に分
離がおこるなど、混合液の均一性を維持できなかった
り、得られる粒子径が大きくなり、利用する際の使用感
が悪い印象を与えてしまう場合がある。香料の添加量
は、用いる香料の種類や組成によって異なるが、好まし
くは12〜16重量部であり、全シクロデキストリン重量に
対しこれ以下では乳化粒子が形成し難く、またこれ以上
では過剰香料による不安定な乳化粒子が形成され易くな
ると同時に乾燥後の粉末香料重量に対する香料歩留まり
が低下する場合がある。
【0038】製造方法(2)では、個別に包接複合体を
調製し混合した後、乾燥する。即ち、結晶性香料包接複
合体を形成するシクロデキストリン類の100重量部に対
し、等量〜2倍量となる水を加え、10〜30重量部の香料
を添加し、ニーダーあるいは自動混錬機を用い均一なペ
ースト状になるまで15〜120分間練り込む。この時、急
激な粘度上昇や、混合物表面が乾燥するなどの現象が観
察された場合は、攪拌するに適度な粘度に調節するため
に適宜水を追加することができる。また、別の容器に用
意した非結晶性香料包接複合体を形成する水溶性シクロ
デキストリン誘導体100重量部に対し、水30〜100重量部
を加え、均一な溶液を調製する。ここに10〜30重量部の
香料を添加し、ホモジナイザーなどのせん断力の高い高
速攪拌機を用い、15〜120分間攪拌する。攪拌速度は、5
000〜16,000rpm付近の攪拌機能力に応じた、粒径20μm
以上の粒子が形成されない任意の回転数と時間を選ぶこ
とができる。この後、先に用意した結晶性包接複合体ペ
ーストを、所定のシクロデキストリン配合比となるだけ
の量を加えた後、更にホモジナイザーなどのせん断力の
高い高速攪拌機を用い、15〜120分間攪拌する。
【0039】製造方法(1)は、一つの容器にて調製す
るために工程作業は簡便である。しかし、形成される結
晶性及び非結晶性香料包接複合体の形成終点が判別し難
く、且つ粒子径の大きく不安定な乳化粒子が形成されや
すい場合がある。製造方法(2)は、作業工程が増え煩
雑であるが、それぞれの香料包接複合体を形成させた後
に混合するため、均一で安定した混合液と、乾燥工程に
おける歩留まり向上、および意図した機能を得やすいと
いう利点がある。
【0040】得られたシクロデキストリン〜香料混合溶
液は、凍結乾燥や減圧加熱乾燥などの任意の乾燥方法を
選ぶことができるが、目的とする香気徐放特性の高い、
球形粉末が得られるスプレードライを用いるのが最も好
ましい。乾燥温度は、スプレードライの規模、用いる香
料の特性や、乳化状態、用いるシクロデキストリンの熱
安定性を考慮して、任意の適当な条件を選ぶことができ
る。好ましくは、温風入口温度で、85〜200℃、好まし
くは100〜180℃で、排気出口温度が60℃を下らず、160
℃を超えない温度条件が望ましい。
【0041】
【実施例】以下本発明を実施例によりさらに説明する。 実施例1 [試験区1]2-ヒドロキシプロピル化β-シクロデキス
トリン800gとβ-シクロデキストリン200gを、2000gの水
に加え均一とした。ここに図1のガスクロマトグラムに
示す成分組成を持つレモン香料140gを加え、TKホモミキ
サーMark II(特殊機化工業(株)社製)にて6,000rpm/
15分間攪拌した。得られた包接混合物は、微細な結晶性
粒子と乳化粒子を含む、比較的均一性を維持した粘性の
低い分散液であった。この分散液をL-12型スプレードラ
イ(大河原化工機(株)社製)を用い、温風入口温度10
0℃、出口温度80℃にて噴霧乾燥した。
【0042】[試験区2]2-ヒドロキシプロピル化β-
シクロデキストリン500gとβ-シクロデキストリン500g
を、2000gの水に加え均一とした。ここに図1のガスクロ
マトグラムに示す成分組成を持つレモン香料140gを加
え、TKホモミキサーMark II(特殊機化工業(株)社
製)にて6,000rpm/15分間攪拌した。得られた包接混合
物は、微細な結晶性粒子と乳化粒子を含む、比較的均一
性を維持した粘性の低い分散液であった。この分散液を
L-12型スプレードライ(大河原化工機(株)社製)を用
い、温風入口温度100℃、出口温度80℃にて噴霧乾燥し
た。
【0043】[対照区1]β-シクロデキストリン1000g
を、2000gの水に加え均一とした。ここに試験区1と同
じレモン香料140gを加え、TKホモミキサーMark II(特
殊機化工業(株)社製)にて6,000rpm/15分間攪拌し
た。得られた包接混合物は、微細な結晶性粒子からなる
ペースト状分散液であった。この分散液は極めて粘度が
高く、乾燥機にポンプ輸送ができなかったので、更に10
00gの水を加え均一化したのち、沈殿しないようにアジ
テーターで緩やかに攪拌しながら、L-12型スプレードラ
イ(大河原化工機(株)社製)を用い、温風入口温度10
0℃、出口温度80℃にて噴霧乾燥した。尚、試験で用い
る乾燥前の包接分散液は、水で希釈する前のものを用い
た。
【0044】[対照区2]2-ヒドロキシプロピル化β-
シクロデキストリン1000gを、2000gの水に加え完全に溶
解した。ここに試験区1と同じレモン香料140gを加え、
TKホモミキサーMark II(特殊機化工業(株)社製)に
て6,000rpm/15分間攪拌した。得られた包接混合物は、
静置すると直ちに油層と水層に分離してしまう、均一性
を長時間維持できない分散液であった。そのためこの分
散液を、先に用いたホモミキサーにて3,000rpmの攪拌を
続けながら、L-12型スプレードライ(大河原化工機
(株)社製)を用い、温風入口温度100℃、出口温度80
℃にて噴霧乾燥した。
【0045】[試験1および分析方法]乾燥前の分散液
は、液粘度、分散安定性、揮発する香気成分バランスと
総量を測定し、比較した。液粘度は、E型粘度計(東京
計器(株)社製、1mL、30℃)を用い測定した。分散安
定性は、径の均一な円筒ガラス容器に一定量を入れ、一
昼夜室温にて静置したのち、分離した油層、水層、乳化
層の高さを測定した後、それぞれを加えた試料液面の高
さで除算した百分率で表記し、比較した。
【0046】揮発香気成分バランスと揮発量は、次の様
に測定した。容量が50mLの同じガラス製バイアルビン
に、それぞれ314mgの分散液を正確に秤量した後、テフ
ロンゴムパッキンとアルミニウム製シールで完全に封印
した。このバイアルビンのヘッドスペース内に飽和した
揮発香気成分をSolid Phase Microextraction(SPME)法
を用いガスクロマトグラフィー法にて測定した。更に詳
しく説明すると、封印したガラスバイアルビンを40℃に
設定した恒温槽内で一昼夜静置した後、SPME fiber Ass
embly(吸着剤: Carbowax / Divinylbenzene partical
ly crosslinked(65μm)、Supelco社製)をバイアルビン
中に差込み、そのヘッドスペース内に飽和した揮発香気
成分を吸着させるため、更に5分間恒温槽内で静置し
た。ガスクロマトグラフィー条件は、20%OV-101 / un
iport HP 60/80メッシュを充填したガラスカラム(3mm
φ×3m)を用い、90℃→200℃(昇温10℃/min)、ヘリ
ウムガス50mL/min、FID検出器を用いた。香気標準とし
て、14mgを正確に精秤し、50mLガラスバイアルビンに同
様に封入し、恒温槽にて同様の処理したものを用いた。
【0047】[試験2および分析方法]乾燥後の粉末
は、用いたシクロデキストリンと香料を合わせた全重量
に対する乾燥香料の仕上がり重量の割合を乾燥歩留まり
として算出した。また乾燥前分散液における揮発香気の
分析と同様の方法で、乾燥粉末状態および粉末と等重量
の水を加えた後の30分後、200分後にヘッドスペース内
に揮発する香気成分量をガスクロマトグラフィー法で測
定した。詳しく説明すると、それぞれの粉末香料試料11
4mgを精秤し、50mL容ガラスバイアルビンに入れ、テフ
ロンゴムパッキンとアルミニウム製シールで完全に封印
した後、40℃に設定した恒温槽内で一昼夜静置した。
後、SPME fiber Assemblyをバイアルビン中に差込み、
そのヘッドスペース内に飽和した揮発香気成分を吸着さ
せるため、更に5分間恒温槽内で静置し、ガスクロマト
グラフィー法で測定した。続いて、同じ封入バイアルビ
ンに、マイクロシリンジを用い、バイアルを密封した状
態で114μLの水を各香料粉末に加えた後、30分間及び24
0分間、恒温槽内で静置し、同様の方法でヘッドスペー
ス中に揮発する香気成分量を測定した。
【0048】[試験3および分析方法]更に、乾燥後の
粉末香料を用い、官能試験評価を行った。粉末香料114m
gを精秤し、試薬特級エタノールを5mL加え、良く分散
させた後、直径15cmのろ紙(No.5C、東洋濾紙(株)社
製)に圧縮ガス式スプレーで均一に噴霧した。後、ドラ
イヤーにてエタノール臭が無くなるまで乾燥した。この
粉末香料を塗布したろ紙の乾燥しているときと、霧吹き
で水を噴霧した後の香気を嗅いで、香気の強さと質を評
価した。香気標準として、用いた同じレモン香料14mgに
試薬特級エタノール5mLを加え、同様ろ紙に噴霧乾燥し
たものを用いた。
【0049】
【表4】
【0050】表4に示すように、液の粘度はβ−シクロ
デキストリンを用いた対照区1が、そのままでは乾燥機
へ送液できないほど極端に高かった。送液できる粘度に
調整すると、今度は直ちにβ−シクロデキストリンとレ
モン香料成分によって形成された結晶性包接複合体が沈
殿してしまうため、乾燥時に液の均一性を維持させるた
め、アジテーターで攪拌を続けなければならなかった。
2−ヒドロキシプロピル化β−シクロデキストリンを用
いた対照区2では、極めて粘度は低いものの、未包接の
香料が直ちに分離してしまい、澄明な水溶液層と香料の
油層に分かれてしまった。このため、乾燥時には液を常
にホモミキサーで乳化させつつ送液することが必要であ
った。2種のシクロデキストリン類を混合した試験区1
及び2は、長い時間をかければ澄明な水層と沈殿乳化層
に分離してしまうが、比較的安定した分散性を示すた
め、攪拌せずにそのまま乾燥機内に送液することができ
た。
【0051】香気標準を示すガスクロマトグラムを図1
に、乾燥前の分散液からの揮発香気成分を示すガスクロ
マトグラムを図2−1、2−2、2−3、2−4に示
す。ガスクロマトグラムの各香気成分を示すピークの総
和は、何れの試料においても標準より低く、シクロデキ
ストリンの包接による徐放性が実現できていることが示
されている。その香気揮発性は、対照区1のβ−シクロ
デキストリンを用いたものが最も低く、対照区2の2-
ヒドロキシプロピル化β−シクロデキストリンが最も高
い。シクロデキストリン類を混合した試験区1及び2
は、ちょうど対照区1及び2の間にあり、β−シクロデ
キストリンの添加量が少ないほど香気揮発量は多くなる
傾向が観察された。注目すべき点は、香気成分のうちレ
モンを特徴付けるリモネン(図内表示ピークa)の揮発
組成比である。香気標準では最も大きく示されるこのピ
ークが、β−シクロデキストリンを用いた対照1では、
極端に小さくなっている。それに比較すると試験区2
は、β−シクロデキストリンを多く含むためか、若干落
ちるが、2−ヒドロキシプロピル化β−シクロデキスト
リンを用いた対照区2及び試験区1においては、標準と
ほぼ等しく、3種ともにバランスの良い揮発成分組成を
示している。
【0052】
【表5】
【0053】乾燥後の歩留まりは表5に示すように、β
−シクロデキストリンを用いた対照区1が最も大きく2
−ヒドロキシプロピル化β−シクロデキストリンを用い
た対照区2が最も低かった。試験区1及び2は、およそ
対照区1にほぼ等しく良好な結果を得ることができた。
【0054】粉末香料の物性では何れも香料標準よりは
低く、特に乾燥状態のとき対照区1では殆ど揮発は観察
されなかった。また、このとき2−ヒドロキシプロピル
化β−シクロデキストリンが比較的多く香気の揮発が観
察され、試験区1および2はその中間を示した。
【0055】香気徐放性は、水分を与えることで実現す
ることができ、何れも粉末を加湿することで乾燥状態よ
りも強い香気の揮発が観察された。このときβ−シクロ
デキストリンを用いた対照区1は、最も揮発量が少ない
ものの時間経過で揮発量の変化は少ない。2−ヒドロキ
シプロピル化β−シクロデキストリンを用いた対照区2
では、揮発量は最も多いものの、時間経過とともに低下
する傾向が観察された。さらに試験区では対照2と同等
の高いレベルでの揮発性が観察され、特に試験区2で
は、β−シクロデキストリンを多く含むため、最初は揮
発量が低いものの、徐々に増加し対照区2と同じレベル
に近づいている傾向が観察された。
【0056】香気の質では、対照区2においてはリモネ
ン組成が全体的に低く、これは乾燥工程による損失があ
ったと予想された。対照区1では、初期におけるリモネ
ン揮発量は高いものの、徐々に低下し、マスキングの方
向に進むことが観察された。試験区1と2を比較する
と、試験区2では、香気揮発量が上昇する傾向がある
が、200分後にはリモネン揮発量が低下し、対照区1
と同様のマスキングの方向に進む傾向が見られた。試験
区1では、初期の香気バランスは崩れているものの、時
間経過とともに香料標準に近いリモネン組成となってい
る。
【0057】
【表6】
【0058】表6に結果を示す官能試験では、何れもシ
クロデキストリン包接複合体の特性である、加湿による
香気の徐放が観察された。各香気の質と量に関しては、
特にβ−シクロデキストリンを用いた対照区1では、パ
ネラー7名中5名が全く異なるとの指摘があった。試験
区1及び2に関しては匂いの立ち上がりは、対照区2に
若干劣るものの、質的には基準と良く似たものと評価さ
れた。
【0059】以上を纏めると、β−シクロデキストリン
単独で粉末香料を製造する場合、包接する香料の保持力
が極めて高いため、乾燥後の粉末及び香料収率は良い。
しかし特定成分の選択的包接が起こり、選られた粉末香
料が発現する香気は元の香気と比較して変質してしま
う。また、製造過程で強い粘性を示す混合液となるた
め、そのままでは作業性が低下するなどの不都合が生じ
る。2−ヒドロキシプロピル化β−シクロデキストリン
単独では、乾燥前の揮発する香気バランスは元の香料組
成に近く、乾燥後の粉末を加湿した際の香気立ち上がり
は最も良い。しかし、香気保持力はβ−シクロデキスト
リンと比較して小さいため、乾燥加熱中に香料の揮散を
保護しきれないことからの損失が起こり、乾燥収率が低
下すると同時に、加湿後の香気徐放性が短時間で低下す
る傾向もある。
【0060】本試験では、β−シクロデキストリンと2
−ヒドロキシプロピル化β−シクロデキストリンを混合
することで両者の欠点を相互に補足しあい、利点が強調
される結果となった。試験結果に用いた香料を粉末化す
るには、β−シクロデキストリンと2−ヒドロキシプロ
ピル化β−シクロデキストリンの配合比率は2:8が良
いという結論が得られた。
【0061】実施例2 β−シクロデキストリン0.3kgと2−ヒドロキシプロピ
ル化β−シクロデキストリン2.7kgを、3.0kgの水に加
え均一化したのち、ミント香料0.4kgを加え、ホモミキ
サーにて6,000rpm/15分間攪拌し、結晶性粒子と乳化粒
子が共存する白濁した分散液を得た。この液を、L-12型
スプレードライにて、温風入口温度120℃、温風出口温
度86℃にて乾燥し、粉末香料3.3kgを得た。この粉末香
料に金蒸着を施し、走査型電子顕微鏡にて観察したとこ
ろ、図3に示す写真1に示すごとく、空洞を有する半径
20μm前後の真球状粒子であり、また写真2及び3に示
すごとく、その空洞内部におよそ5μm程度の微細な不定
形粒子が取り込まれているものが多数観察された。更
に、試験試料として粉末香料1.0gを、比較試料として
製造に用いたミント香料0.12gをそれぞれシリコングリ
ス100gに均一に練り込み、油性香料ペーストを調整し
た。このペーストを乾燥したろ紙(No.5C、東洋濾紙
(株)社製)の表面に薄く塗りつけた直後の香気と、更
にろ紙面に水を噴霧した後の香気を、官能的に評価した
所、比較試料が水の噴霧に係らず強く香気を感じるのに
対し、試験試料は乾燥状態で無臭であるが、水の噴霧直
後から元の香料と同じ香気が立ち上がり始める現象が観
察された。
【0062】実施例3 β−シクロデキストリンに対し4倍モルのエピクロルヒ
ドリンを用いて架橋した、平均分子量10,000の水溶性β
−シクロデキストリンポリマー70重量部とβ−シクロ
デキストリン20重量部、及びα−シクロデキストリン1
0重量部に、100重量部の水に加え均一化したのち、
バラ香料16重量部を加え、ホモミキサーにて6,000rpm
/15分間攪拌した分散液を調製した。この液をスプレー
ドライにて、温風入口温度120℃、温風出口温度90℃に
て乾燥し、揮発特性の良い粉末香料を得た。
【0063】実施例4 β−シクロデキストリンに対し8倍モルのグリセロール
ポリグリシジルエーテルを用いて架橋した、平均分子量
12,000の水溶性β−シクロデキストリンポリマー80重
量部とカルボキシメチル化セルロース(セロゲンF-SR、
第一工業製薬(株)社製)1重量部を混合したものに等
量の水に加え均一化したのち、レモン香料10重量部と
を加え、ホモミキサーにて6,000rpm/15分間攪拌した分
散液を調製した。別途、β−シクロデキストリン20重量
部に2倍量の水を加え、等量のエタノールに希釈した、
同じレモン香料3重量部を加え、自動乳鉢にて30分間混
錬した。β−シクロデキストリンと香料を混錬すること
で得たペーストを、β−シクロデキストリンと香料分散
液に加え、更にホモミキサーにて6,000rpm/15分間攪拌
した分散液を調製したのち、この液をスプレードライに
て、温風入口温度140℃、温風出口温度85℃にて乾燥
し、揮発特性の良い粉末香料を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で用いたレモン香料のガスクロマト
グラム。
【図2】 実施例1の試験区1及び2並びに対照区1及
び2の乾燥前の分散液からの揮発香気成分を示すガスク
ロマトグラム(試験区1:2−1、試験区2:2−2、
対照区1:2−3、対照区2:2−4)。
【図3】 実施例2で得られた電子顕微鏡写真。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)香料の少なくとも一部の成分とシク
    ロデキストリン類とからなる結晶性包接複合体と(b)
    香料の少なくとも一部の成分(前記結晶性包接複合体に
    含まれる香料成分と同一または異なってもよい)とシク
    ロデキストリン類とからなる非結晶性香料包接複合体と
    (c)香料の少なくとも一部の成分である非包接香料成
    分(前記結晶性包接複合体及び非結晶性香料包接複合体
    に含まれる香料成分と同一または異なってもよい)から
    なる粉末香料。
  2. 【請求項2】結晶性包接複合体を構成するシクロデキス
    トリン類が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキ
    ストリン、及びγ−シクロデキストリンからなる群から
    選ばれる少なくとも1種のシクロデキストリンである請
    求項1に記載の粉末香料。
  3. 【請求項3】非結晶性香料包接複合体を構成するシクロ
    デキストリン類が、化学修飾したシクロデキストリン誘
    導体、シクロデキストリンポリマー、及び分岐シクロデ
    キストリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のシ
    クロデキストリンである請求項1または2に記載の粉末
    香料。
  4. 【請求項4】 化学修飾したシクロデキストリン誘導体
    がグルコース残基の全てあるいは部分的にヒドロキシエ
    チル、2-ヒドロキシプロピル、2,3-ジヒドロキシプロピ
    ル、2-ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシイソブチル、ジ
    エチルアミノエチル、トリメチルアンモニオプロピルな
    どの官能基にて化学修飾したシクロデキストリンであ
    り、シクロデキストリンポリマーが、エピクロルヒドリ
    ンや多価のグリシジルエーテルなどの架橋剤にて高分子
    化したシクロデキストリンであり、分岐シクロデキスト
    リンがグルコース、マルトースなどの分岐側鎖を持つシ
    クロデキストリンである請求項3に記載の粉末香料。
  5. 【請求項5】結晶性包接複合体の粒子が非結晶性香料包
    接複合体からなる連続相(但し、この連続相は非包接香
    料成分を含む)に分散されている請求項1〜4のいずれ
    か一項に記載の粉末香料。
  6. 【請求項6】結晶性包接複合体及び非結晶性香料包接複
    合体に包接されている香料成分及び前記非包接香料成分
    の総和が、原料となる香料に近い組成を有する請求項1
    〜5のいずれか一項に記載の粉末香料。
  7. 【請求項7】原料となる香料が天然香料または合成香料
    である請求項1〜6のいずれか一項に記載の粉末香料。
  8. 【請求項8】原料香料、結晶性包接複合体を形成し得る
    シクロデキストリン類、及び非結晶性香料包接複合体を
    形成し得るシクロデキストリン類を溶媒の存在下に混合
    し、結晶性包接複合体及び非結晶性香料包接複合体を形
    成させ、次いで得られた結晶性包接複合体及び非結晶性
    香料包接複合体を含有する混合物から溶媒を除去するこ
    とを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の粉
    末香料の製造方法。
  9. 【請求項9】原料香料及び結晶性包接複合体を形成し得
    るシクロデキストリン類を溶媒の存在下に混合して結晶
    性包接複合体を形成させ、原料香料及び非結晶性香料包
    接複合体を形成し得るシクロデキストリン類を溶媒の存
    在下に混合して非結晶性香料包接複合体を形成させ、次
    いで得られた結晶性包接複合体を含有する混合物と非結
    晶性香料包接複合体を含有する混合物とを混合し、得ら
    れた混合物から溶媒を除去することを特徴とする請求項
    1〜7のいずれか一項に記載の粉末香料の製造方法。
  10. 【請求項10】溶媒が水である請求項8または9に記載
    に製造方法。
  11. 【請求項11】溶媒の除去をスプレードライ法により行
    う請求項8〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
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