JP2001239766A - 平版印刷用原板及び平版印刷方法 - Google Patents

平版印刷用原板及び平版印刷方法

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JP2001239766A
JP2001239766A JP2000055758A JP2000055758A JP2001239766A JP 2001239766 A JP2001239766 A JP 2001239766A JP 2000055758 A JP2000055758 A JP 2000055758A JP 2000055758 A JP2000055758 A JP 2000055758A JP 2001239766 A JP2001239766 A JP 2001239766A
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acid
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Kiyotaka Fukino
清隆 吹野
Keiji Akiyama
慶侍 秋山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】短時間での走査露光ののちに現像処理を行うこ
となく製版することが可能であり、耐刷性にすぐれ、印
刷面上の印刷汚れも少ないヒートモード型の平版印刷版
用原板を提供する。 【解決手段】周期律表の6A,7A又は8族元素の少な
くとも一つを構成元素とする複合金属酸化物の着色超微
粒子を光熱変換剤として含有する平版印刷用原板。とく
に上記着色超微粒子と表面親水性の疎水性化前駆体とを
含有する親水性の画像記録層を支持体上に有する平版印
刷用原板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、現像不要で耐刷性
に優れたオフセット印刷用のダイレクト感熱平版印刷用
原板に関する。さらには、ディジタル信号に基づいた走
査露光による画像記録が可能であり、且つ画像記録のの
ち現像することなくそのまま印刷機に装着して、あるい
は印刷機に装着して画像記録を行ってそのまま印刷する
ことが可能な平版印刷版用原板に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、平版印刷版は、印刷過程でイン
キを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性
の非画像部とからなる。このような平版印刷版用原板と
しては、従来から親水性支持体上に親油性の感光性樹脂
層を設けたPS版が広く用いられている。その製版方法
として、通常は、現像済みリスフイルムなどの画像を通
して露光を行った後、非画像部を現像液によって溶解除
去する方法であり、この方法により所望の印刷版を得て
いる。
【0003】従来のPS版に於ける行程は、露光の後、
非画像部を溶解除去する湿式の操作を伴うので、この操
作を不要化又は簡易化することが望まれている。同時
に、近年のこの分野のもう一つの動向として画像情報を
コンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力するデ
ィジタル化技術が広く普及してきているのに伴って、レ
ーザ光のような高収斂性の輻射線にディジタル化された
画像情報を担持してこの光で原板を走査露光し、リスフ
ィルムを介することなく、直接印刷版を製造するコンピ
ュータ・トゥ・プレート技術が注目されており、この目
的に適応した印刷版用原板を得ることも望まれている。
すなわち、一つには製版作業の簡素化、乾式化、無処理
化、他の一つにはディジタル化への適合化という両面を
ともに満たす簡易平版印刷方法が市場の強いニーズとな
っている。
【0004】デジタル化技術に組み込みやすい走査露光
による印刷版の製造方法として、最近、半導体レーザ、
YAGレーザ等の固体レーザで高出力のものが安価に入
手できるようになってきたことから、特に、これらのレ
ーザを画像記録手段として用いる製版方法が有望視され
るようになっている。とりわけ、光エネルギーを熱エネ
ルギーに変化させる光熱変換作用を利用して、レーザ発
振した集中度の高い光エネルギーを効率的に熱に変換
し、その熱により化学変化、相変化、形態や構造の変化
・破壊などの熱変化を起こさせ、その変化を画像記録に
利用するヒートモードの記録方式が、上記の2つのニー
ズをともに満たす技術として有望とされている。
【0005】このようなヒートモード方式の一つの手段
としてマイクロカプセル技術の利用も考えられている。
特開平3−108588号公報、特開平5−8575号
公報には、マイクロカプセル化された熱溶融物質と結着
性樹脂とからなる感熱記録層を支持体上に設け、加熱部
を親油性に変化させる版材が開示されている。しかし、
マイクロカプセル化された熱溶融物質はいずれも媒質と
の反応性を有せず、したがって拡散性が大きく、識別性
において満足のいくものではなかった。一方、特開昭6
2−164596号公報、同62−164049号公報
には、親水性表面を有する支持体上に活性水素含有バイ
ンダーポリマーと共にブロックイソシアネートを含む記
録層を設けた平版印刷原版及びその方法が開示されてい
る。しかし、この版材は、印字後、非印字部分を除去す
る現像工程が必要である。
【0006】さらに、ダイレクト型平版印刷材料の一つ
に、親水層の表面に画像部をインクジェットやトナー転
写等の外的手段で形成する直描型平版印刷材料がある
が、これらの技術にマイクロカプセル技術を取り入れる
試みも行われている。特開昭62−1587号公報に
は、マイクロカプセル化した非反応性の熱溶融性物質を
塗布し、加熱印字によりトナー受理層を形成する版材が
開示されている。しかし、形成されたトナー受理層に親
油性のトナー等を固着して初めて印刷版となるものであ
り、印字後、画像部が形成されるのではない。
【0007】特開平7−1849号公報にはマイクロカ
プセルとバインダーの界面においてカプセル中の親油性
成分と親水性のバインダーポリマーが化学結合する仕組
みを導入して膨潤を抑制し、耐刷性の向上を図ってお
り、市場の要望に応えるものではあるが、この印刷用原
板は、サーマルヘッドによってカプセルの熱破壊が起こ
ってから、親油性物質がバインダーと反応してインキ受
容領域を形成する方式であるので、親油性物質の拡散に
伴う疎水性領域の拡大が予想され、高精細化には不利な
方式である。このように従来の感熱性平版印刷用の版材
は、マイクロカプセル化しても耐刷力、識別性、親油性
などに乏しいなど、各々の弱点が十分には解決に至って
なく、したがって軽印刷などの用途に限られていた。
【0008】ヒートモードの熱疎水性化の試みもなされ
た。たとえば、特開昭53−64747号公報、特開平
1−113290号公報等には、支持体上に設けられた
感熱層に分散させた熱溶融樹脂および熱可塑性樹脂を熱
印字により溶融し、加熱部を親水性から親油性に変化さ
せる版材が、また米国特許公報4,034,183号、
同4,063,949号公報などには、支持体上に設け
られた親水性ポリマーをレーザー照射し親水性基を無く
し親油性に転換させる版材が各々開示されている。しか
し、これらの版材は、版表面に存在する熱溶融物質がイ
ンキを受容することにより非画像部が汚れるなど画像部
と非画像部の識別性が低いという問題があった。
【0009】一方、EP94/18005号公報には、
親水性架橋層と親油性の光熱変換層を支持体上に担持し
た、同様に現像せずに製版することが可能な、平版印刷
原板が開示されている。しかしながら、製版には架橋さ
れた親水性層を像様に擦りとる操作が必要と記されてお
り、簡易性の点で問題があるように思われる。
【0010】また、WO98/40212号公報には、
金属酸化物コロイドを含む親水性層と光熱変換物質を含
む親油性画像記録層を基板上に設けた、現像することな
く製版することが可能な、平版印刷原板が開示されてい
る。しかし、この層構成と層内組成物では、画像部と非
画像部との識別性を確保するのに多くの解決するべき点
があると考えている。
【0011】WO99/04974号公報には、染料や
顔料などの光変換性でインキ受容性の光吸収物質と、金
属や金属酸化物のコロイド状分散物とを含む親水性画像
記録層を基板上に設けた、現像することなく製版するこ
とが可能な、平版印刷原板が開示されている。しかし、
具体的な光熱変換剤としては、光吸収性のカチオン染料
2種とカーボンブラックの例が開示されているだけであ
る。
【0012】特開平6−199064号及びWO98/
40212号公報には、光熱変換剤を含む層とその層と
は親水性・疎水性の程度の異なる層とを組み合わせて用
いる2層構成のレーザー光記録による平版印刷原板が提
示されており、これらは今後さらなる改良を進めるべき
方法を示唆するものであるが、熱による層構成物質の飛
散による画像形成には画像識別性などに例えば下記の問
題を含んでいる。
【0013】すなわち、従来のヒートモードポジ方式原
板には、記録層中の支持体近傍での露光による溶解性変
化が、記録層表面近傍に比較して小さいために支持体近
傍の膜物質が除去されないで残る残膜という欠陥が起こ
りがちであった。一般にヒートモードポジ型原板におい
ては、ヒートモード露光時の熱の発生は記録層中の光吸
収剤の光吸収に基くものであるため、熱の発生量は記録
層表面で大きく、支持体近傍では小さいことが多い。こ
のため、記録層の照射部の親水化の程度が深部すなわち
支持体近傍で乏しくなり、結果として、しばしば、本来
親水性表面を提供すべき露光部において、疎水性の膜が
除去されきれずに残膜となることがあった。このよう
な、非画像部の残膜は、印刷物に印刷汚れを引き起こ
す。従来からしばしば用いられている光熱変換層と画像
記録層を機能分離させた重層方式は、この点で不利な方
向である。
【0014】上記したヒートモードの画像記録による製
版・印刷技術の経緯に示されるように、この製版・印刷
方法の特徴的な利点は、版下からフィルムを介すること
なく直接に刷版を作ることができ、したがって機上で製
版することも可能であり、現像操作を省くこともできる
ことであるが、一方、ヒートモード感度の不足や、熱に
よる画像物質拡散、画像記録層の表面と底部での感度の
相違などの弱点を有している。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来技術の弱
点は、基本的には画像部と非画像部との識別性の不足を
もたらし、それらが印刷品質や耐刷性を低下などとなっ
て現れているといってとよい。したがってヒートモード
の画像記録を利用する製版・印刷方法の、印刷品質と耐
刷性の両面を向上させるための基本的な方策は、識別性
を向上させることに尽きるといえる。その解決によって
その他の色々な表現で上記した欠陥も自ずから解決する
と期待できる。したがって、本発明の目的は、レーザー
露光などを用いるヒートモードの製版方式の前記した欠
陥を解決することであって、具体的には、短時間での走
査露光ののちに現像処理を行うことなく製版することが
可能であり、耐刷性にすぐれ、印刷面上の印刷汚れも少
ないヒートモード型の平版印刷版用原板を提供すること
にある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者は、光熱変換剤
の探索を行った結果、特定のサイズと組成を有する金属
酸化物粒子が、上記した目的に応えうる優れた効果を有
することを見いだし、それに基づいてさらに発明目的の
特性を備えた粒子の条件を追求して発明を完成するに至
った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0017】1.周期律表の6A,7A又は8族元素の
少なくとも一つを構成元素とする複合金属酸化物の着色
超微粒子を光熱変換剤として含有することを特徴とする
平版印刷用原板。
【0018】2.周期律表の6A,7A又は8族元素の
少なくとも一つを構成元素とする複合金属酸化物の着色
超微粒子を光熱変換剤として含有し、かつ表面親水性の
疎水性化前駆体をも含有する親水性の画像記録層を支持
体上に有することを特徴とする上記1に記載の平版印刷
用原板。
【0019】3.表面親水性の疎水性化前駆体が、芯部
に疎水性物質を内包し、かつ表面親水性の表層部を有す
る複合構成の粒子分散物であることを特徴とする上記2
に記載の平版印刷用原板。
【0020】4.請求項1〜3に記載の平版印刷用原板
に光熱変換性の可視光又は赤外線光を像様に照射したの
ち、照射面にインキを接触させて画像面がインキを受け
入れた印刷版面を形成させて印刷を行うことを特徴とす
る平版印刷方法。
【0021】上記の本発明の印刷原板は、光熱変換剤と
して周期律表の6A,7A又は8族元素の少なくとも一
つを構成元素とする複合金属酸化物の着色超微粒子を用
いることが特徴であって、それによって光熱変換効率が
画期的に向上し、それが感度の上昇、識別性の改善、印
刷汚れの抑止、耐刷性の増加などを可能にしている。こ
の金属酸化物超微粒子は、後述するように種々の態様で
印刷原板の中に含ませることができる。
【0022】上記の本発明の特に好ましい態様は、本発
明者達が以前に提示した「疎水性化前駆体と光熱変換剤
のいずれをも親水性の画像記層中に含有させた印刷用原
板」において、光熱変換剤として上記の超微粒子を用い
る態様である。疎水性化前駆体と光熱変換剤のいずれを
も含有する親水性の画像記層においては、光熱変換剤が
吸収した光エネルギーが熱エネルギーに変換され、その
熱によって光照射領域の疎水性化前駆体が疎水性化する
ので、極性が変化して印刷インキ受容性に変わるのに対
して、照射光を受けない非画像部では、画像記録層の極
性変化はなく、親水性が保たれるので、インキを反発
し、したがってインキ受容領域とインキ反発領域の像状
分布の印刷面が形成される。本発明では、この印刷原板
用の光熱変換剤として上記の超微粒子を用いることによ
って、光熱変換効率の格段の向上をもたらし、識別性の
改善、印刷汚れの抑止及び耐刷性の増加を実現させたも
のである。また、上記超微粒子を用いることによって、
照射光の強度を高めても層形成物質の飛散が起こりにく
いので、照射光の強度のラチチュードが広がり、作業条
件の設定が容易になるほか、階調画像の描画品質も向上
する。
【0023】本発明に用いる疎水性化前駆体とは、熱の
作用で前駆体自体又は前駆体の近傍を疎水性化すること
により画像記録層の極性を疎水性に変える性質を有する
粒子組成物または化合物である。本発明にはこのような
特性をもつ粒子組成物や化合物であればいずれもこの複
合金属酸化物の着色微粒子と組み合わせて用いることが
できるが、とくに芯部に疎水性物質を内包し、かつ表面
親水性の表層部を有する複合構成の粒子分散物が発明の
目的とする効果を顕著に発揮する。このような表面親水
性の複合構成の粒子分散物には、疎水性化の発現に適し
た幾つかの形態があるが、それらの詳細は、本発明の実
施の形態及び実施例の中で説明する。
【0024】本発明の平版印刷用原板の画像記録層は、
光照射前は親水性度が高度であるほど印刷品質が優れる
ので、上記の光熱変換剤と疎水性化前駆体以外の各構成
成分についても親水性化が図られている。まず、媒質に
関しては、高親水性の具体的な媒質は、ゾルゲル変換性
の媒質であって、とくに後述するシラノール・シロキサ
ンのゾルゲル変換系で代表される金属水酸化物ゾルから
脱水縮合によって金属酸化物のゲル状構造に変換する形
のゾルゲル変換性の媒質が、好ましい実施態様の一つで
ある。
【0025】画像記録層の親水性度をさらに向上させる
には、このゾルゲル変換性の親水性の媒質の中に、高度
に親水性のシリカ、水酸化珪素、水酸化アルミニウム、
酸化アルミニウム、酸化チタン及び水酸化チタンから選
ばれたコロイド分散物を含有させることが効果的であ
る。
【0026】また、原板を取り扱う際の原板の汚れの防
止、経時的疎水性化の防止などのために、本発明の印刷
原板には表面に水溶性保護層を設けることが好ましい。
以上に概括した本発明について、さらに詳細を実施態様
の中で説明する。
【0027】
【発明の実施の形態】周期律表の6A,7A又は8族元
素の少なくとも一つを構成元素とする複合金属酸化物の
着色超微粒子を光熱変換剤として含有することを特徴と
する本発明の平版印刷用原板は、下記に挙げる例のよう
に種々の態様が挙げられる。
【0028】(1)画像記録層の中に複合金属酸化物超
微粒子を含有させた極性変換方式の印刷用原板。その光
熱変換作用によって画像記録層の光照射部を像様に疎水
性に変化させて親水性と疎水性の像様領域を形成させ、
印刷版とする。なかでも複合金属酸化物超微粒子ととも
に疎水性化前駆体も画像記録層に含む方式が優れてい
る。 (2)疎水性支持体又は疎水性層を有する支持体上に複
合金属酸化物超微粒子を含有させた画像記録層を設けた
熱飛散方式の印刷用原板。その光熱変換作用によって画
像記録層の光照射部を像様に熱飛散させて疎水性の下層
又は支持体を露出させ、印刷版とする。 (3)支持体上に複合金属酸化物超微粒子を含有させた
発熱層を設け、その上にヒートモードの画像記録層を設
けた発熱層付きの印刷用原板。発熱層の光熱変換作用に
よる熱が画像記録層の光照射部のヒートモード画像記録
の感度を増大させる。 (4)ヒートモードの画像記録層の上に複合金属酸化物
超微粒子を含有させた発熱性の保護層を設けた印刷用原
板。保護層が原板を機械的、化学的な衝撃から保護する
とともに、画像記録層の光照射部の熱飛散を防止し、し
かも光熱変換作用による熱がヒートモード画像記録の感
度を増大させる。 (5)ヒートモードの画像記録層に複合金属酸化物超微
粒子を含有させたヒートモード感度増幅型印刷用原板。
炭素粒子、赤外線吸収色素、金属酸化物粒子など公知の
光熱変換剤を用いたヒートモードの印刷原板の画像記録
層に複合金属酸化物超微粒子も含有させて光感度を向上
させる。 (6)上記(1)〜(5)の態様において、複合金属酸
化物超微粒子の光吸収波長域が可視域から赤外線領域に
わたって広いことを利用して、とくにレーザー光、高照
度キセノンフラッシュ、タングステンハロゲンなどの各
種ヒートモード光源への適用性を広げた印刷原板。
【0029】本発明の特徴である複合金属酸化物超微粒
子は、上記のように広い態様で平版印刷用原板に用いら
れるが、その中でも(1)に挙げた態様、とくに表面親
水性の疎水性化前駆体と、上記超微粒子のいずれをも含
有する親水性の画像記録層を支持体上に設けた印刷用原
板であるので、以下の説明はこの原板の態様を中心にし
て記述する。
【0030】(光熱変換剤)いうまでもなく、多くの物
質は多少とも光を吸収し、光を吸収すればそれによって
その物質のエネルギー準位は励起し、その順位が基底準
位に戻るときに蛍燐光を発しないかぎり熱を放出するの
で、厳密には殆どの物質がたとえ僅かではあっても光熱
変換作用を持っているといえる。したがって、光熱変換
性の物質という場合には、目的とする熱変化をもたらす
ことができる大きさの光吸収特性を有する物質を指すの
が適切であり、その観点からは、印刷用原板として実用
できる光熱変換剤は、吸光度が少なくとも0.3×10
3 cm-1、好ましくは1×103cm -1以上、より好ましく
は1×104cm -1以上であって、かつ吸収光は実質的に
蛍光や燐光に変換されない物質を指すものとすることが
実際的である。また、吸光度が高すぎると、光熱変換作
用が光熱変換剤含有層の上部に偏り、深部の小熱変換作
用が乏しくなって却って画像形成作用を損なうことにな
るので、適切な吸光度は、0.3×106 cm-1以下、好
ましくは1×105cm -1以下である。なお、吸光度は透
過濃度を厚みで除した値である。また、染料など媒質中
に実質的に分子分散している場合は、染料を含有した媒
質層の光吸収係数が上記の値である。
【0031】本発明に用いられる光熱変換剤は、周期律
表の6A,7A又は8族元素の少なくとも一つを構成元
素とする複合金属酸化物の着色超微粒子である。ここで
いう超微粒子は、一般的に用いられている意味の超微粒
子であって、すなわち粒子サイズを極度に小さくしてい
き、バルク状態とは異なる物性が発現する大きさ、すな
わち粒子の換算径がナノメーターレベルの粒子を指して
いる。本発明に用いられる超微粒子のサイズは換算径が
1〜500nmであり、好ましくは5〜100nmであ
る。このような極度に微小な粒子では、屈折率、光回折
効率、レーリー(Rayleigh) 散乱やミー (Mie)散乱の影
響による光散増加などによってバルク状態とは異なる吸
光度を呈するのが普通である。このような超微粒子形態
の光熱変換剤においては、上記したバルク状態の吸光特
性要件は、適切ではなく、超微粒子を光熱変換剤として
含んだ画像記録層が光熱変換作用が効果的に起すのに必
要な光吸収能で表すのがよい。すなわち超微粒子の光学
特性、密度及び画像記録層の厚みから決まり、その必要
な光吸収能は、光熱変換が可能な300〜1200nm
の分光波長領域中に吸光度が0.3以上の分光吸収域を
有することである。より具体的には画像形成用の照射光
の波長域(単波長光の場合は、その波長を中心とする1
00nm幅の波長域)に吸光度が0.3以上の吸収極大
を有するか、又はこの波長域に吸収極大を有しなくても
吸光度が0.3以上の連続した100nm以上の分光波
長域が存在していることを意味する。
【0032】また、画像形成層の吸光度は、ここでは透
過濃度と同じであり、国際規格 ISO5-3 及び ISO5-4 に
準拠して測定され、その値が0.3〜3.0であること
が好ましい。透過濃度すなわち吸光度が3.0を超える
と前記したように記録層表層部に発熱作用が偏り、画像
層の底部の輻射線強度の低下が著しくなって疎水性への
変化が起こりにくくなる。また、透過濃度が0.3以下
では、輻射線エネルギーの吸収が十分でなく、光・熱変
換によって得られる熱エネルギーの量が不十分となりや
すい。
【0033】本発明に用いる周期律表の6A,7A又は
8族元素の少なくとも一つを構成元素とする複合金属酸
化物の着色超微粒子は、バルク状態における特性に対し
て吸光度の増加及び光吸収スペクトル領域の拡大の少な
くともいずれかが顕著に発現して、上記した光熱変換剤
としての適性を満たしている。
【0034】本発明において、複合金属酸化物は少なく
とも2種類の金属酸化物が熱処理などによって均一組成
となった酸化物を指しており、おそらく固溶体となって
いるものと考えられる。この複合金属酸化物を構成する
金属元素の少なくとも一つは、周期律表の6A,7A又
は8族元素である。周期律表の6A,7A又は8族に属
する好ましい元素は、6A族元素ではクロム、モリブデ
ン、タングステン、7A族元素ではマンガンなど、8族
元素では鉄、コバルト、ニッケル、ルビジウム、ロジウ
ム、パラジウムである。なかでも好ましい6A,7A又
は8族に属する元素は、クロム、モリブデン、マンガ
ン、鉄、コバルト及びニッケルである。
【0035】また、複合金属酸化物において上記周期律
表の6A,7A又は8族元素から選ばれる金属の酸化物
と組み合わせられる金属酸化物としては、6A,7A又
は8族元素金属酸化物と均一組成の複合金属酸化物を形
成しうる金属酸化物であれば、いずれでもよい。好まし
い金属酸化物は、周期律表の1B,2A,2B,3A及
び3B族に属する金属元素の酸化物である。なかでも好
ましい金属酸化物は、銀、銅、金、マグネシウム、カル
シウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イ
ットリウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウ
ム及びインジウムの金属酸化物である。本発明に用いる
複合金属酸化物は、上記した6A,7A又は8族元素か
ら選ばれる金属の酸化物(A群酸化物とよぶ)の少なく
とも一つと1B,2A,2B,3A及び3B族に属する
金属元素の酸化物(B群酸化物とよぶ)の少なくとも一
つからなる複合酸化物である。複合酸化物が着色してい
るかぎり、複合酸化物中のA群酸化物とB群酸化物の分
子数の比率は問わないが、それぞれの群から一つずつの
酸化物分子で構成される2元酸化物又はA群酸化物分子
及びB群酸化物分子のいずれかが2種類含まれる3元酸
化物が好ましい。そのなかでも、スピネル又はルチル型
の結晶構造を有する複合金属化合物であることが好まし
い。
【0036】好ましい2元酸化物の例としては以下の複
合金属酸化物を挙げることができる。CoO・Al2
3 、ZnO・Fe2 3 、CuO・Cr2 3 。好まし
い3元酸化物の例としては以下の複合金属酸化物を挙げ
ることができる。CoO・Al2 3 ・Cr2 3 、Z
nO・Fe2 3 ・Cr2 3 、CuO・Fe2 3
Mn2 3 .上記の例示化合物のなかでもとくにCuO
・Fe2 3 ・Mn2 3 の黒色超微粒子が好ましい。
【0037】複合金属酸化物は、公知の方法で調製する
ことができるが、ナノメーターサイズでかつ均一組成の
粒子を容易に調製できる方法としては、湿式法と気
相凝固法が適切である。の湿式法は、複合金属酸化物
の構成元素の金属塩を構成原料とし、原料金属塩を適当
な比率に混合した水溶液に水酸化アルカリ又は炭酸アル
カリを加えて適当なpHにおいて熱処理して金属水酸化
物の沈殿を水中に生成させる。沈殿生成のさいには、必
要に応じて過酸化水素などの酸化剤を水溶液系に添加し
て各金属塩間の沈殿生成速度の調節を行うこともでき
る。pHや濃度などの沈殿生成条件の調節によって超微
粒子となりうる微細沈殿物が得られる。この酸化物沈殿
を焼結、融合が起こらない条件で焼成して超微粒子分散
物を得る。
【0038】別の方法としては、上記のアルカリを添加
する代わりに尿素を添加して尿素の加水分解によって生
じるアンモニアのアルカリ性によって超微細状態の水酸
化物を沈殿生成させる方法を用いてもよい。
【0039】さらに別の方法としては、構成金属の金属
アルコキシドを混合して適当な水・アルコール系溶媒を
選択してゾル状態の金属アルコキシド混合物を調製して
反るゲル変換を行って超微粒子複合酸化物とする方法を
もちいることもできる。いずれにしても、沈殿生成時に
目的の酸化物比率で沈殿生成させてつづく焼成工程で目
的の結晶化を起こさせることが必要であり、そのために
は、それぞれ目的の複合金属酸化物に応じて原料金属塩
の濃度、pH,温度の最適化を行う。湿式沈殿生成に続
く焼成工程は、金属酸化物が結晶化するが、焼結しない
温度を選んで行われる。好ましい温度は、目的の複合金
属酸化物に応じて選ばれるが、一般に500〜1200
°Cの範囲であり、多くは600〜1000°Cの範囲
である。焼成雰囲気は、酸化性雰囲気でよく、空気中で
行われ、トンネル炉、ロータリーキルン、空気加熱炉な
どを用いることができる。
【0040】の気相凝固法は、金属酸化物又は金属を
プラズマ状態化あるいはその他の高温蒸発手段を用いて
気相状態とし、その蒸気を気相雰囲気中の気体と熱交換
によって超微細な粒子の形に凝固させる方法である。金
属を材料として不活性ガス雰囲気で凝固を行えば金属超
微粒子が得られ、雰囲気中に酸素を存在させると金属酸
化物超微粒子が得られる。また2種以上の金属を用いて
かつ環境条件の最適化を行うことによって複合微粒子を
得ることもできる。一方、金属酸化物を原料とすれば気
相雰囲気中に酸素を存在させなくても金属酸化物超微粒
子を得ることができる。しかしながら、この場合でも複
合金属酸化物微粒子の組成を希望通りのものにするため
には、温度、全圧力、微粒子構成成分の蒸気圧、必要に
よって酸素の介在、温度降下速度条件などの条件を調節
する必要があることはいうまでもない。
【0041】蒸発手段としては、熱プラズマ法が好まし
く、例えばアーク放電、高周波磁場による誘導加熱など
を用いることができる。好ましいアーク放電法は、一対
の電極の一方に超微粒子用の材料を用いるか、または電
極近傍に超微粒子用の材料を配し、他方の電極を保護し
た状態又は不活性電極として気体流を保護電極側から前
者電極(対抗電極とよぶ)側に配向させながら放電を行
う。蒸発した金属は気相中で流動しながら雰囲気中のガ
スに熱エネルギーを放出してゆっくりと凝固して超微粒
子画形成される。ここで対抗電極あるいはその近傍に金
属酸化物を用いると金属酸化物蒸気が発生して、条件を
選択すると望みの組成の金属酸化物が得られる。複合金
属酸化物では、個々の構成金属酸化物の蒸気圧や平衡酸
素分圧の相違があるので、条件選定は複雑となるが、超
微粒子を得る操作としては実質的に変わりはない。
【0042】本発明においては、A群酸化物すなわち6
A,7A又は8族元素から選ばれる金属の酸化物の少な
くとも一つとB群酸化物すなわち1B,2A,2B,3
A及び3B族に属する金属元素の酸化物からなる複合金
属酸化物を対抗電極材料に用いて気相凝固法によって超
微粒子を得ることができる。気相はアルゴンなどの不活
性気体を主とし、目的とする酸化物組成や結晶構造の超
微粒子を得るために必要に応じて酸素を雰囲気中に導入
する。
【0043】気相凝固法の別の態様としては、超微粒子
原料を真空蒸発装置又はスパッタリング装置内で蒸発あ
るいはスパッタリングによって気相中において温度、圧
力、気相組成などを調節した状態で凝固させる方法を用
いることもできる。
【0044】これらの複合金属酸化物超微粒子は、画像
記録層の後述する媒質の中に通常行われる単純な添加、
攪拌機を用いた強制攪拌下の添加などによって容易に分
散させることができるが、必要により、界面活性剤など
の公知の分散助剤を用いることができる。界面活性剤を
分散のために使用する場合は、分散される粒子と画像記
録層の媒質の種類に応じて適当な界面活性剤が選択され
る。このような親水性媒質へ粒子を表面親水性の状態で
分散するには、ソルビタントリステアレート、ソルビタ
ンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステア
リン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェ
ニルエーテル等の非イオン界面活性剤、アルキルジ(ア
ミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリ
シン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N
−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テ
トラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモ
ーゲンK、第一工業(株)製)等の両性界面活性剤、ド
デシルベンゼンスルホン酸やそのほかの炭素数8〜22
のアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンス
ルホン酸(アルキル基の数は1又は2個で炭素数の和は
1〜6)やナフタレンスルホン酸、及びそれらのホルマ
リン縮合物(縮合数は2〜5)、炭素数8〜22のアル
キル硫酸などのアニオン性界面活性剤を用いることがで
きる。
【0045】(疎水性化前駆体)以上で光熱変換性の微
粒子の説明を終わり、次に表面が親水性の疎水性化前駆
体について説明する。本発明では、公知のいろいろの熱
により極性が疎水性に変化する物質系を表面親水性にし
て疎水性化前駆体として用いることができる。以下の
(1)及び(2)項に、疎水性化前駆体の好ましい実施
形態を示すが、本発明はこれらの例に限定されるもので
はない。 (1)芯部に疎水性物質を内包し、かつ表面親水性の表
層部を有する複合構成の粒子分散物であって、光の照射
と光熱変換による熱の作用によって粒子形状がこわれて
内包されていた疎水性物質によって疎水性化が起こる前
駆体。 (2)表面親水性の熱架橋性の粒子分散物であって、熱
の作用で架橋反応が開始されることによって疎水性を発
現する前駆体。以下にこれらについてさらに説明する。
【0046】(1)芯部に疎水性物質を内包し、表面親
水性の表層部を有する複合構成の粒子分散物。前者
(1)の複合構成の粒子分散物の好ましい粒子の形態と
しては、 ヒートモードの画像露光がもたらす温度で軟化あるい
は溶融する熱可塑性樹脂を内包し、表面に親水性ゾル粒
子層を凝集付着させたいわゆるヘテロ凝集表面層の複合
粒子(以後へテロ凝集表面層粒子とも呼ぶ)、 同じく表面にゾルゲル変換物質を処理してゾルゲル変
換によって親水性ゲルの表層を形成させた表面ヘテロ相
の複合粒子(以後表面へテロ相粒子とも呼ぶ)、 分散重合で得た熱可塑性重合体の疎水性微粒子を芯部
としてその周囲に親水性ポリマーの重合層を形成させた
コアシェル型の複合粒子(以後コアシェル型粒子とも呼
ぶ)、 熱拡散性あるいは熱可塑性の疎水性有機化合物を親水
性媒質中に乳化分散させた乳化物粒子(以後疎水性有機
物内包粒子とも呼ぶ)、及び 疎水性の芯物質を表面親水性の壁材料で保護したマイ
クロカプセル粒子(以後単にマイクロカプセル粒子とも
呼ぶ)が挙げられる。後者(2)の熱架橋の開始によっ
て疎水性を発現する粒子分散物には、重合性モノマーと
架橋性化合物と熱重合開始剤の混合分散物が挙げられ
る。
【0047】<へテロ凝集表面層粒子>前者(1)の
のへテロ凝集表面層粒子は、モノマーを界面活性剤ミセ
ルで保護して乳化分散して重合させて得た熱軟化性又は
熱溶融性樹脂の乳化重合分散物粒子が内包されており、
光照射と光熱変換作用による熱の効果で、樹脂粒子が軟
化、溶融などを起こし、親水性の表面層をこわして粒子
として存在していた近傍を疎水性化する。親水性の表面
層は、シリカ微粒子、アルミナ微粒子のような親水性の
きわめて大きいゾル状の微粒子分散物を添加して樹脂の
乳化重合分散物粒子の周囲に吸着させて形成した保護層
である。ゾル状の微粒子分散物については、のちに親水
性の画像記録層の媒質への添加成分として説明するゾル
状微粒子と同じである。
【0048】<表面へテロ相粒子>前者(1)のとし
て挙げたへテロ表面相粒子は、上記と同じく熱軟化性
又は熱溶融性樹脂の乳化重合分散物粒子そコア粒子とし
て、その表面を親水性の画像記録層の媒質の項で述べる
ゾルゲル変換性物質で処理して粒子表面にゲル相を形成
させた親水性表面の粒子である。
【0049】<コアシェル型粒子>上記のコアシェル
型の複合粒子は、熱の作用で軟化、あるいは融解する樹
脂(以後熱可塑性樹脂とも呼ぶ)の粒子分散物をそのモ
ノマーの乳化重合によって調製し、これをコア粒子(シ
ード)として、その分散液に親水性モノマーを添加し
て、コア粒子の表面に親水性モノマーを重合させて表面
親水性層とするコアシェル型の異相構造粒子である。コ
ア粒子を構成するモノマーは、次のの項で述べる高分
子化合物用のモノマー成分として示したA〜Lの群の中
で疎水性で熱可塑性樹脂用のものから選ばれる。同様に
親水性のシェル相を形成するモノマーは、AからLの群
の親水性モノマーから選択することができる。
【0050】<疎水性有機物内包粒子>上記の疎水性
有機物内包粒子は、内包される疎水性物質が乳化分散さ
れて親水性表面をもつ粒子形態をとっている。ヒートモ
ードの光照射による熱の作用によって乳化された粒子が
粒子形状を維持できなくなり、媒質への浸出、拡散、溶
解などによって前駆体の近傍を疎水性にする。疎水性の
有機低分子化合物及び有機高分子化合物の中にこの目的
に適合する化合物がある。
【0051】・有機低分子化合物 疎水性化前駆体が有機低分子化合物を内包する場合、好
ましい有機低分子化合物は、常圧において融点が300
℃以下、沸点が100℃以上の固体又は液体の有機化合
物又は水に対する溶解度又は吸水率が100g当たり2
g以下である有機高分子化合物であり、その両方を用い
ることも好ましい態様である。有機低分子化合物は、拡
散浸透性が比較的高いので、熱によって移動性が与えら
れると、粒子が存在していた近傍に拡散して直接あるい
は間接的に疎水性化する。また、常温で固体であり、熱
によって融解して疎水性領域を形成する化合物も含まれ
る。移動性が大きすぎると疎水性領域が広がり過ぎ、ま
た熱エネルギーの局部集中度が低下して疎水性化の効果
が減少する。したがって、上記の沸点と融点の条件を満
たす化合物が好ましい。ここで、低分子化合物と呼んで
いるのは沸点又は融点を有する化合物という意味で用い
ており、そのような化合物を通常分子量は2000以
下、多くは1000以下である。
【0052】また、上記の溶解度又は吸水率の条件は、
有機高分子化合物が疎水性であることの指標として経験
的に判った条件である。この条件であると、熱の作用に
よって粒子が存在していた近傍の有機高分子の状態の変
化によって粒子近傍の疎水性化を発現させることができ
る。
【0053】疎水性化の目的に適う好適な有機低分子化
合物は、上記の化合物の移動性に関連する融点、沸点の
観点とは別に、前駆体の近傍をそれ自体で十分に疎水性
と成しうる必要性から、水への溶解性が極めて少ない
か、有機性の程度が高い必要がある。その条件を具体化
して示したのが、前記したように、有機低分子化合物
が、25℃における水100gへの溶解度が2g以下
であるか、有機概念図における有機性/無機性の比が
0.7以上であるかの少なくともいずれかに相当する場
合である。
【0054】有機概念図は、化合物の有機性及び無機性
の程度を示すのに実際的で簡便な実用尺度であり、その
詳細については、田中善生著「有機概念図」(三共出版
社、1983年初版刊行)の1〜31頁に詳記されてい
る。有機概念図上の上記の範囲の有機化合物が疎水性化
を促進する作用を持つ理由は不明であるが、この範囲の
化合物は、有機性が比較的大きい化合物であり、複合粒
子近傍を疎水性にする。有機概念図における有機性が1
00以上でその上限についての制約はとくにないが、通
常100〜1200、好ましくは100〜800であ
り、その有機性/無機性の比が0.7〜無限大(すなわ
ち無機性が0)、好ましくは0.9〜10の範囲に入る
有機化合物である。
【0055】この温度範囲の沸点をもつ有機低分子化合
物は、具体的には脂肪族及び芳香族炭化水素、脂肪族及
び芳香族カルボン酸、脂肪族及び芳香族アルコール、脂
肪族及び芳香族エステル、脂肪族及び芳香族エーテル、
有機アミン類、有機珪素化合物、また、効果は大きくは
ないが印刷用インキに添加できることが知られている各
種溶剤や可塑剤類の中に見られる。
【0056】好ましい脂肪族炭化水素は、炭素数8〜3
0の、より好ましくは炭素数8〜20の脂肪族炭化水素
であり、好ましい芳香族炭化水素は、炭素数6〜40
の、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素で
ある。好ましい脂肪族アルコールは、炭素数2〜30
の、より好ましくは炭素数2〜18の脂肪族アルコール
であり、好ましい芳香族アルコールは、炭素数6〜30
の、より好ましくは炭素数6〜18の芳香族アルコール
である。好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数2〜24
の脂肪族カルボン酸であり、より好ましくは炭素数2〜
20の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数4〜12の脂肪
族ポリカルボン酸であり、また、好ましい芳香族カルボ
ン酸は、炭素数6〜30の、より好ましくは炭素数6〜
18の芳香族カルボン酸である。好ましい脂肪族エステ
ルは、炭素数2〜30の、より好ましくは炭素数2〜1
8の脂肪酸エステルであり、好ましい芳香族エステル
は、炭素数8〜30の、より好ましくは炭素数8〜18
の芳香族カルボン酸エステルである。好ましい脂肪族エ
ーテルは、炭素数8〜36の、より好ましくは炭素数8
〜18の芳香族エーテルであり、好ましい芳香族エーテ
ルは、炭素数7〜30の、より好ましくは炭素数7〜1
8の芳香族エーテルである。そのほか、炭素数7〜30
の、より好ましくは炭素数7〜18の脂肪族あるいは芳
香族アミドも用いることができる。
【0057】具体例としては、2,2,4−トリメチル
ペンタン(イソオクタン)、n−ノナン、n−デカン、
n−ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、メチル
ヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2−メチルオク
タンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシ
レン、クメン、ナフタレン、アントラセン、スチレンな
どの芳香族炭化水素;ドデシルアルコール、オクチルア
ルコール、n−オクタデシルアルコール、2−オクタノ
ール、ラウリルアルコールなどの1価アルコール;プロ
ピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエ
チレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコー
ル、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール;ベ
ンジルアルコール、4−ヒドロキシトルエン、フェネチ
ルアルコール、1−ナフトール、2−ナフトール、カテ
コール、フェノールなどの芳香族アルコール;酢酸、プ
ロピオン酸、酪酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン
酸、カプリン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪
族1価カルボン酸;しゅう酸、琥珀酸、アジピン酸、マ
レイン酸、グルタール酸などの多価脂肪族カルボン酸;
安息香酸、2−メチル安息香酸、4−メチル安息香酸な
どの芳香族カルボン酸;酢酸エチル、酢酸イソブチル、
酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸
エチル、酪酸メチル、アクリル酸メチル、しゅう酸ジメ
チル、琥珀酸ジメチル、クロトン酸メチルなどの脂肪族
エステル;安息香酸メチル、2−メチル安息香酸メチル
などの芳香族カルボン酸エステル;イミダゾール、トリ
エタノールアミン、ジエタノールアミン、シクロヘキシ
ルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエチレンテ
トラミン、アニリン、オクチルアミン、アニリン、フェ
ネチルアミンなどの有機アミン;アセトン、メチルエチ
ルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゾフェノンな
どのケトン類、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、
メトキシトルエン、ラウリルメチルエーテル、ステアリ
ルメチルエーテルなどのエーテル及びステアリルアミ
ド、ベンゾイルアミド、アセトアミドなどのアミド類が
挙げられる。そのほか、沸点が前記の好ましい範囲にあ
るエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキ
サノン、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテートなど
の有機溶剤も使用することができる。
【0058】また、印刷用インキの成分であるアマニ
油、大豆油、けし油、サフラワー油などの油脂類、燐酸
トリブチル、燐酸トリクレシル、フタール酸ジブチル、
ラウリン酸ブチル、フタール酸ジオクチル、パラフィン
ワックスなどの可塑剤も挙げられる。
【0059】また、長鎖脂肪酸と長鎖一価アルコールの
エステル、すなわちワックスも、疎水性で適当に低融点
であって、光熱変換性の微粒子の近傍で光照射によって
生じた熱によって融解してその領域を疎水性化する好ま
しい低分子有機化合物である。ワックスは、50〜20
0°Cで溶融するものが好ましく、その例としては、原
料などによってカルナバワックス、カスターワックス、
マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、
セラックろう、パームろう、蜜ろう等と呼ばれているい
ずれをも用いることができる。ワックス類のほかに、低
分子量ポリエチレン;オレイン酸、ステアリン酸、パル
ミチン酸などの固体酸;ベヘン酸銀、ステアリン酸カル
シウム、パルミチン酸マグネシウムなどの長鎖脂肪酸の
金属塩などの微粒子分散物も用いることができる。
【0060】・有機高分子化合物 上記した溶解度又は吸水性の条件を満たす好ましい有機
高分子化合物は、共存する低分子有機化合物に溶解可能
又はそれ自体が熱可塑性の疎水性高分子化合物であり、
例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリ
ビニルフェノール、ポリビニルハロゲン化フェノール、
ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビ
ニルブチラール、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレ
ア、ポリイミド、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フ
ェノール、ボラック、又はレゾールフェノール類とアル
デヒド又はケトンとの縮合樹脂、ポリ塩化ビニリデン、
ポリスチレン、アクリル系共重合樹脂などが挙げられ
る。
【0061】好ましい化合物の一つは、必ずしも熱可塑
性ではないが、有機低分子化合物通うのフェノールノボ
ラック樹脂又はレゾール樹脂であり、フェノール、クレ
ゾール(m−クレゾール、p−クレゾール、m/p混合
クレゾール)、フェノール/クレゾール(m−クレゾー
ル、p−クレゾール、m/p混合クレゾール)、フェノ
ール変性キシレン、tert−ブチルフェノール、オク
チルフェノール、レゾルシノール、ピロガロール、カテ
コール、クロロフェノール(m−Cl、p−Cl)、ブ
ロモフェノール(m−Br、p−Br)、サリチル酸、
フロログルシノールなどのホルムアルデヒドとの縮合の
ノボラック樹脂及びレゾール樹脂、さらに上記フェノー
ル類化合物とアセトンとの縮合樹脂などが挙げられる。
【0062】その他の好適な高分子化合物として以下
(A)〜(L)に示すモノマーをその構成単位とする通
常1万〜20万の分子量を持つ共重合体を挙げることが
できる。 (A)芳香族水酸基を有するアクリルアミド類、メタク
リルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エ
ステル類およびヒドロキシスチレン類、例えばN−(4
−ヒドロキシフェニル)アクリルアミドまたはN−(4
−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−、m−
およびp−ヒドロキシスチレン、o−、m−およびp−
ヒドロキシフェニルアクリレートまたはメタクリレー
ト、(B)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類
およびメタクリル酸エステル類、例えば、2−ヒドロキ
シエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタ
クリレート、(C)アクリル酸メチル、アクリル酸エチ
ル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル
酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキ
シル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、アク
リル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、アク
リル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルアクリレー
ト、N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどの(置
換)アクリル酸エステル、(D)メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリ
ル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシ
ル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチ
ル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メ
タクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸4−ヒド
ロキシブチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチ
ルアミノエチルメタクリレートなどの(置換)メタクリ
ル酸エステル、
【0063】(E)アクリルアミド、メタクリルアミ
ド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメ
タクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチ
ルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N
−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアク
リルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N
−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエ
チルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N
−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルア
ミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ニトロフェ
ニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルメタクリルア
ミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミドおよび
N−エチル−N−フェニルメタクリルアミドなどのアク
リルアミドもしくはメタクリルアミド、
【0064】(F)エチルビニルエーテル、2−クロロ
エチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテ
ル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、
オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなど
のビニルエーテル類、(G)ビニルアセテート、ビニル
クロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル
などのビニルエステル類、(H)スチレン、メチルスチ
レン、クロロメチルスチレンなどのスチレン類、(I)
メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビ
ニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン
類、(J)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタ
ジエン、イソプレンなどのオレフィン類、
【0065】(K)N−ビニルピロリドン、N−ビニル
カルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリ
ル、メタクリロニトリルなど、(L)N−(o−アミノ
スルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(m−アミ
ノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(p−ア
ミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−〔1−
(3−アミノスルホニル)ナフチル〕アクリルアミド、
N−(2−アミノスルホニルエチル)アクリルアミドな
どのアクリルアミド類、N−(o−アミノスルホニルフ
ェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニ
ルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスル
ホニルフェニル)メタクリルアミド、N−〔1−(3−
アミノスルホニル)ナフチル〕メタクリルアミド、N−
(2−アミノスルホニルエチル)メタクリルアミドなど
のメタクリルアミド類、また、o−アミノスルホニルフ
ェニルアクリレート、m−アミノスルホニルフェニルア
クリレート、p−アミノスルホニルフェニルアクリレー
ト、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)ア
クリレートなどのアクリル酸エステル類などの不飽和ス
ルホンアミド、o−アミノスルホニルフェニルメタクリ
レート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレー
ト、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、1
−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)メタクリ
レートなどのメタクリル酸エステル類などの不飽和スル
ホンアミド。
【0066】これらの有機高分子化合物は、質量平均子
量が500〜20000、数平均分子量が200〜60
000であることが好ましい。
【0067】疎水性化前駆体は、有機低分子化合物の
み、あるいは高分子有機化合物のみで構成されていても
よいが、有機低分子化合物と高分子有機化合物の両方を
含んでいてもよく、さらに両者の親和性を高めるなどの
目的の第3成分を含んでいてもよい。
【0068】疎水性化前駆体の表面を親水性にするに
は、光熱変換剤について前記した表面親水性か方法を用
いることもできる。例えば、親水性でかつ疎水性化前駆
体への吸着性を有する界面活性剤を添加して粒子表面を
親水性基の界面吸着層を形成させて粒子分散させる方
法、そのさい、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリ
ビニルピロリドンなどの保護コロイド性の親水性かつ表
面吸着性の高分子皮膜を設ける方法、さらにそれに界面
活性剤も介在させて粒子表面をより親水性且つ安定化さ
せる分散方法、粒子の構成物質と反応する親水性基をも
つ物質で表面処理したり、などの方法をを用いることが
できる。疎水性化前駆体の表面親水性化に用いる界面活
性剤も、光熱変換剤の表面親水性化に関して述べた界面
活性剤を使用することができる。
【0069】以上の〜の各表面親水性の疎水性化前
駆体中の疎水性の構成成分(芯物質)の合計量は、疎水
性化前駆体の全量に対して、10〜95質量%が適当で
あり、20〜80質量%が好ましい。また、において
有機低分子化合物及び高分子有機化合物を共に使用する
場合、その比率は任意である。一方、親水性表面層を形
成する成分は、〜の形態によって界面活性剤、保護
コロイド、親水性重合樹脂、親水性ゾル、ゾルゲル変換
成分などと異なるが、また画像記録層の媒質中にも分布
している場合もあるが、疎水性前駆体の表面層を構成し
ている量は、疎水性化前駆体の全量に対して、5〜80
質量%であり、10〜50質量%であることが好まし
い。また、分散物粒子のサイズは、〜の形態によっ
て最適サイズの範囲は異なるが、ほぼ体積平均で5μm
以下、0.01μm以上が好ましく、更に好ましくは
0.05〜2μm、とくに好ましくは0.2〜0.5μ
mの範囲に調整することが好ましい。
【0070】<マイクロカプセル粒子>次に、芯部に疎
水性物質を内包し、かつ表面親水性の表層部を有する複
合構成の粒子分散物の項として上記したマイクロカプ
セルの構成材料でカプセルの熱破壊により近傍を疎水性
化する疎水性化前駆体について述べる。本発明で用いる
マイクロカプセルは各種公知の方法で作成することがで
き、その芯物質(カプセル内に内包する物質)は、上記
した有機低分子化合物及び高分子有機化合物、さらにそ
れらを混和する有機溶剤類を用いることができる。すな
わち芯物質を有機溶剤と混合してから又は直接に、水性
媒体中に乳化分散し、油性液滴のまわりに高分子物質か
らなる壁膜を形成することにより調製することができ
る。マイクロカプセルの壁膜となる高分子物質の具体例
としては、例えばポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、
ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート
樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチ
レン樹脂、スチレン−アクリレート共重合体樹脂、スチ
レン−メタクリレート共重合体樹脂、ゼラチン、ポリビ
ニルアルコール等が挙げられる。これらのうち特に好ま
しい壁膜としてはポリウレタン・ポリウレア樹脂からな
る壁膜を有するマイクロカプセルである。
【0071】ポリウレタン・ポリウレア樹脂からなる壁
膜を有するマイクロカプセルは、多価イソシアネート等
の壁材をカプセル化するべき芯物質中に混合し、ポリビ
ニルアルコール等の保護コロイド物質を溶解した水性媒
体中に乳化分散し、液温を上昇させて油滴界面で高分子
形成反応を起こすことによって製造される。
【0072】ここで多価イソシアネート化合物の具体例
を以下に示すと、例えばm−フェニレンジイソシアネー
ト、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレ
ンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネー
ト、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニ
ルメタン−4,4′−ジイソシアネート、、3,3′−
ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、キシ
レン−1,4−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニ
ルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシア
ネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン
−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイ
ソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシア
ネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート
等のジイソシアネート類、4,4′,4″−トリフェニ
ルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−
トリイソシアネート等のトリイソシアネート類、4,
4′−ジメチルジフェニルメタン−2,2′,5,5′
−テトライソシアネート等のテトライソシアネート類、
ヘキサメチレンジイソシアネートとメチメチロールプロ
パンとの付加物、2,4−トリレンジイソシアネートと
トレメチロールプロパンとの付加物、キシリレンジイソ
シアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、トリ
レンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物
等のイソシアネートプレポリマー等が挙げられるが、上
記化合物に限定されるものではない。また、必要に応じ
二種類以上の併用も可能である。これらのうち特に好ま
しいものは分子内にイソシアネート基を三個以上有する
ものである。
【0073】カプセルの壁材としては、前記したゼラチ
ン、ポリウレア、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエス
テル、ポリカーボネート、メラミン等を用いることがで
きるが熱応答性マイクロカプセルを得るにはポリウレ
ア、ポリウレタン壁が好ましい。またカプセル壁に熱応
答性を付与するには、カプセル壁としてガラス転移点が
室温以上、200℃以下とすればよく、特に70℃〜1
50℃の範囲が好ましい。
【0074】カプセル壁のガラス転移温度を制御するに
は、カプセル壁のポリマー種を選ぶか、適当な可塑剤を
添加することで可能である。このような助剤としては、
フェノール化合物、アルコール化合物、アミド化合物、
スルホンアミド化合物等があり、これらは、カプセルの
芯物質中に含有させてもよいし、分散物としてマイクロ
カプセル外に添加してもよい。
【0075】マイクロカプセル化の一般的な手法、用い
る素材などについては、米国特許第3726804号、
同第3796696号に記載されており、本発明にも適
用することができる。
【0076】マイクロカプセルのサイズは、特に画像の
解像度向上及び取り扱い性の点から体積平均で5μm以
下、0.02μm以上が好ましく、更に好ましくは0.
05〜0.7μmの範囲に調整することが好ましい。
【0077】(2)重合性モノマー/架橋性化合物を含
み、熱破壊に伴って粒子の近傍に疎水性のポリマー/架
橋構造を形成する疎水性化前駆体。前記の(2)項とし
て記したこの疎水性化前駆体は、常温では反応せず、熱
の作用で重合反応が始まり、前駆体粒子近傍を疎水性化
する重合性モノマー/架橋性化合物系を含んだ分散物で
ある。この例としては、高温度で重合反応とくに架橋反
応が進行する重合性モノマー、架橋基を持つ熱架橋性ポ
リマーやオリゴマー及び熱重合開始剤を含む系が挙げら
れる。この分散物の表面親水性化には、上記、及び
の疎水性化前駆体の項で前記した表面親水性化手段を
用いて分散させることができる。
【0078】本発明の疎水性化前駆体に内包させる重合
性モノマー及び架橋性の化合物としては、例えばフェニ
ルイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネー
ト、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジ
フェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル
ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、1,5−ナ
フタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネー
ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホ
ロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、
リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソ
シアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ト
リデンジイソシアネート、ポリメチレン ポリフェニル
イソシアネート、ポリメリック ポリイソシアネート等
のイソシアネート;トリメチロールプロパンと1,6−
ヘキサンジイソシアネートあるいは2,4−トリレンジ
イソシアネートといった上記ジイソシアネートとの1対
3モル付加体等のポリイソシアネート、
【0079】2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレ
ートのオリゴマーまたはポリマーなどのイソシアネート
化合物;N,N′−メチレンビスアクリルアミド、(メ
タ)アクリロイルモルホリン、ビニルピリジン、N−メ
チル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチル(メ
タ)アクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノプロピ
ル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノ
エチル(メタ)アクリレート、N,N′−ジエチルアミ
ノエチル(メタ)アクリレート、N,N′−ジメチルア
ミノネオペンチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−
2−ピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N−メ
チロール(メタ)アミリルアミド、パラスチレンスルホ
ン酸もしくはその塩、
【0080】メトキシトリエチレングリコール(メタ)
アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メ
タ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール
(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量40
0)、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリ
レート(PEGの数平均分子量1000)、ブトキシエ
チル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)
アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メ
タ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メ
タ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール
(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メ
タ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ
(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)
アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、
【0081】ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリ
レート(PEGの数平均分子量400)、ポリエチレン
グリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分
子量600)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アク
リレート(PEGの数平均分子量1000)、ポリプロ
ピレングリコールジ(メタ)アクリレート(PPGの数
平均分子量400)、2,2−ビス[4−(メタクリロ
キシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4
−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパ
ン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキ
シ)フェニル]プロパンまたはそのアクリレート体、β
−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフ
タレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイ
ドロジェンサクシネート、ポリエチレンまたはポリプロ
ピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロ
ロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
【0082】1,3−ブチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アク
リレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレ
ート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレー
ト、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレー
ト、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレー
ト、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メ
タ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、
ステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)
アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、
テトラフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メ
タ)アクリレート、モノ(2−アクリロイルオキシエチ
ル)アシッドホスフェートまたはそのメタクリル体、グ
リセリンモノまたはジ(メタ)アクリレート、トリス
(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートまたはそ
のメタクリル体、2−イソシアナトエチル(メタ)アク
リレート等の多官能(メタ)アクリルモノマー類あるい
はこれらと単官能(メタ)アクリレートとの組合せなど
が挙げられる。
【0083】こららの重合性又は架橋性化合物を用いる
場合には、熱重合開始剤を添加して熱による効果を促進
することが好ましい。熱重合開始剤としては、メチルエ
チルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキ
サイド、n−ブチル4、4−ビス(t−ブチルパーオキ
シ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキ
シ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオ
キシ)ブタン、クメンハイドロパーオキサイイド、p−
メンタンハイドロパーオキサイイド、t−ヘキシルパー
オキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエー
ト、t−ブチルパーオキシアセテートなどの過酸化物が
挙げられえる。
【0084】これらの重合性及び架橋性有機化合物の添
加量は、疎水性前駆体の全量に対して、5〜95質量%
が適当であり、20〜90質量%が好ましく、実質的に
300〜80質量%が最も好ましい。また、熱重合触媒
の添加量は、重合性及び架橋性有機化合物の添加量の5
0%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは1〜
10%である。
【0085】(親水性媒質)以上に、本発明の親水性の
画像記録層に含まれる表面が親水性の疎水性化前駆体及
びそれ自体が親水性又は表面が親水性の光熱変換剤につ
いて述べた。つぎに画像記録層の親水性媒質の構成につ
いて述べる。
【0086】親水性の媒質は、親水性高分子、金属水酸
化物と金属酸化物の系からなるゾル・ゲル変換性材料、
親水性ゾル粒子、そのほか副次的な成分として染料、界
面活性剤など親水性の程度を制御する目的、記録層の物
理的強度の向上、層を構成する組成物相互の分散性の向
上、塗布性の向上、印刷適性の向上、製版作業性の便宜
上などの種々の目的の化合物から選択された構成となっ
ている。親水性の画像記録層は、ゾルゲル変換系である
ことがとくに本発明に望ましい。そのなかでもポリシロ
キサンのゲル組織を形成する性質を有するゾルゲル変換
系が好ましい。
【0087】<ゾルゲル変換系の媒質>本発明の画像記
録層のとくに好ましい媒質は、以下に述べるゾルゲル変
換系である。すなわち、塗布液の状態ではゾル状態であ
るが、塗布後乾燥し、経時する間にゲル状態となり、印
刷版に適用できる。本発明に好ましく適用できるゾルゲ
ル変換が可能な系は、多価元素から出ている結合基が酸
素原子を介して網目状構造を形成し、同時に多価金属は
未結合の水酸基やアルコキシ基も有していてこれらが混
在した樹脂状構造となっている高分子体であって、塗布
前のアルコキシ基や水酸基が多い段階ではゾル状態であ
り、塗布後、エステル結合化が進行するのに伴って網目
状の樹脂状構造が強固となり、ゲル状態になる。また、
樹脂組織の親水性度が変化する性質に加えて、水酸基の
一部が固体微粒子に結合することによって固体微粒子の
表面を修飾し、親水性度を変化させる働きをも併せ持っ
ている。ゾルゲル変換を行う水酸基やアルコキシ基を有
する化合物の多価結合元素は、アルミニウム、珪素、チ
タン及びジルコニウムなどであり、これらはいずれも本
発明に用いることができるが、以下はもっとも好ましく
用いることのできるシロキサン結合によるゾルゲル変換
系について説明する。アルミニウム、チタン及びジルコ
ニウムを用いるゾルゲル変換は、下記の説明の珪素をそ
れぞれの元素に置き換えて実施することができる。
【0088】以下に、ゾルゲル変換を利用する系につい
てさらに説明する。ゾルゲル変換によって形成される好
ましくはシロキサン結合およびシラノール基を有する樹
脂であり、本発明の平版印刷版用原版の画像記録層は、
少なくとも1個のシラノール基を有するシラン化合物を
含んだゾルの系であり、塗布後の経時の間に、シラノー
ル基の加水分解縮合が進んでシロキサン骨格の構造が形
成され、ゲル化が進行する。そのゾルゲル変換によって
形成される層は、親水性の程度が高く、したがって疎水
性化領域との識別性が大きくなるので、本発明の利点と
して挙げられる特長である。このゲル構造の媒質のなか
に後に述べる有機高分子など物理性向上、塗布性の改良
まどの目的の素材が添加されて構成された化合物記録層
が好ましく用いられる。ゲル構造を形成するシロキサン
樹脂は、下記一般式(I)で、また少なくとも1個のシ
ラノール基を有するシラン化合物は、下記一般式(II)
で示される。また、画像記録層に含まれる親水性から疎
水性に変化する物質系は、必ずしも一般式(II)のシラ
ン化合物単独である必要はなく、一般には、シラン化合
物が部分加水重合したオリゴマーからなっていてもよ
く、あるいは、シラン化合物とそのオリゴマーの混合組
成であってもよい。
【0089】
【化1】
【0090】上記一般式(I)のシロキサン系樹脂は、
下記一般式(II)で示されるシラン化合物の少なくとも
1種を含有する分散液からゾル−ゲル変換によって形成
され、一般式(I)中のR01〜R03の少なくとも一つは
水酸基を表し、他は下記一般式(II)中の記号のR0
びYから選ばれる有機残基を表わす。
【0091】一般式(II) (R0nSi(Y)4-n 一般式(II)中、R0は、水酸基、炭化水素基又はヘテ
ロ環基を表わす。Yは水素原子、ハロゲン原子、−OR
1、−OCOR2、又は、−N(R3)(R4)を表す(R
1、R2は、各々炭化水素基を表し、R3、R4は同じでも
異なってもよく、水素原子又は炭化水素基を表す)。n
は0、1、2又は3を表わす。
【0092】好ましくは、一般式(II)中のR0は、水
酸基以外では、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖
状もしくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エ
チル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル
基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ド
デシル基等;これらの基に置換される基としては、ハロ
ゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロ
キシ基、チオール基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ
基、エポキシ基、−OR′基(R′は、メチル基、エチ
ル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル
基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル
基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチ
ル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、
N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル
基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−
メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシプロピル
基、ベンジル基等を示す)、
【0093】−OCOR″基(R″は、前記R′と同一
の内容を表わす)、−COOR″基、−COR″基、−
N(R''')( R''' )(R''' は、水素原子又は前記
R′と同一の内容を表わし、各々同じでも異なってもよ
い)、−NHCONHR″基、−NHCOOR″基、−
Si(R″)3 基、−CONHR''' 基、−NHCO
R″基、等が挙げられる。これらの置換基はアルキル基
中に複数置換されてもよい)、炭素数2〜12の置換さ
れてもよい直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えば、
ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、
ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル
基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキ
ル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ
る)、炭素数7〜14の置換されてもよいアラルキル基
(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプ
ロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基
等;これらの基に置換される基としては、前記アルキル
基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複
数置換されてもよい)、
【0094】炭素数5〜10の置換されてもよい脂環式
基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2
−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル
基、ノルボニル基、アダマンチル基等、これらの基に置
換される基としては、前記アルキル基の置換基と同一の
内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、炭
素数6〜12の置換されてもよいアリール基(例えばフ
ェニル基、ナフチル基で、置換基としては前記アルキル
基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又、
複数置換されてもよい)、又は、窒素原子、酸素原子、
イオウ原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有す
る縮環してもよいヘテロ環基(例えば該ヘテロ環として
は、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モルホリン
環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリ
ジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾチアゾー
ル環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テトラヒド
ロフラン環等で、置換基を含有してもよい。置換基とし
ては、前記アルキル基中の置換基と同一の内容のものが
挙げられ、又複数置換されてもよい)を表わす。
【0095】好ましくはYは、ハロゲン原子(フッ素原
子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす)、−
OR1基、−OCOR2基又は−N(R3)(R4)基を表
わす。−OR1基において、R1は炭素数1〜10の置換
されてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、
プロピル基、ブトキシ基、ヘプチル基、ヘキシル基、ペ
ンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニ
ル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オク
テニル基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−
ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−
(メトキシエチルオキソ)エチル基、2−(N,N−ジ
エチルアミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2
−シアノエチル基、3−メチルオキサプロピル基、2−
クロロエチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル
基、シクロオクチル基、クロロシクロヘキシル基、メト
キシシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジ
メトキシベンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジ
ル基等が挙げられる)を表わす。
【0096】−OCOR2基において、R2は、R1と同
一の内容の脂肪族基又は炭素数6〜12の置換されても
よい芳香族基(芳香族基としては、前記R中のアリール
基で例示したと同様のものが挙げられる)を表わす。又
−N(R3)(R4)基において、R3、R4は、互いに同
じでも異なってもよく、各々、水素原子又は炭素数1〜
10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、前記の−O
1基のR1と同様の内容のものが挙げられる)を表わ
す。より好ましくは、R1とR2の炭素数の総和が16個
以内である。一般式(II)で示されるシラン化合物の具
体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定
されるものではない。
【0097】テトラクロルシラン、テトラブロムシラ
ン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テ
トライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メ
チルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチ
ルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メ
チルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキ
シシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリブロム
シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキ
シシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルト
リt−ブトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラ
ン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリ
メトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n
−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルト
リt−ブトキシシラン、n−ヘキシルトリクロルシラ
ン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−へキシルトリ
メトキシシラン、n−へキシルトリエトキシシラン、n
−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−へキシルト
リt−ブトキシシラン、n−デシルトリクロルシラン、
n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシ
シラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルト
リイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシ
シラン、n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オク
タデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメト
キシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n
−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタ
デシルトリt−ブトキシシラン、
【0098】フェニルトリクロルシラン、フェニルトリ
ブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニル
トリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラ
ン、フェニルトリt−ブトキシシラン、ジメトキシジエ
トキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブ
ロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエ
トキシシラン、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニル
ジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェ
ニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラ
ン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジ
メトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ト
リエトキシヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、ト
リメトキシヒドロシラン、イソプロポキシヒドロシラ
ン、トリt−ブトキシヒドロシラン、ビニルトリクロル
シラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシ
シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプ
ロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン、トリ
フルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロ
ピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメト
キシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラ
ン、
【0099】トリフルオロプロピルトリイソプロポキシ
シラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリ
シドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリ
シドキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メタア
クリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタ
アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メ
タアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタ
アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−
メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ
−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノ
プロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピル
トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシ
シラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラ
ン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−
メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メル
カプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプ
トプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピ
ルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイ
ソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−
ブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシ
ル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキ
シシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げ
られる。
【0100】本発明の画像記録層形成に用いる一般式
(II)で示されるシラン化合物とともに、Ti、Zn、
Sn、Zr、Al等のゾル−ゲル変換の際に樹脂に結合
して成膜可能な金属化合物を併用することができる。用
いられる金属化合物として、例えば、Ti(OR″)4
(R″はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、
ペンチル基、ヘキシル基等)、TiCl4、Zn(O
R″)2、Zn(CH3COCHCOCH32、Sn(O
R″)4、Sn(CH3COCHCOCH34、Sn(O
COR″)4、SnCl4、Zr(OR″)4、Zr(C
3COCHCOCH34、Al(OR″)3等が挙げら
れる。
【0101】更に、一般式(II)で示されるシラン化合
物、更には併用する前記の金属化合物の加水分解及び重
縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を
併用することが好ましい。触媒は、酸あるいは塩基性化
合物をそのままか、あるいは水またはアルコールなどの
溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触
媒、塩基性触媒という)を用いる。そのときの濃度につ
いては特に限定しないが、濃度が濃い場合は加水分解、
重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の濃い塩
基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場
合があるため、塩基性触媒の濃度は1N(水溶液での濃
度換算)以下が望ましい。
【0102】酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に
限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場
合には、焼結後に触媒結晶粒中にほとんど残留しないよ
うな元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性
触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫
酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、
蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表され
る構造式のRを他元素または置換基によって置換した置
換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸な
ど、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニ
ア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類など
が挙げられる。
【0103】以上述べたように、ゾル−ゲル法によって
作成される画像記録層は、本発明の平版印刷版用原版に
とくに好ましい。上記のゾル−ゲル法のさらに詳細は、
作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社
(刊)(1988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法によ
る機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(19
92年)等の成書等に詳細に記述されている。
【0104】<親水性高分子化合物>本発明の平版印刷
版用原版の画像記録層に含有される高分子化合物として
は、画像記録層としての適度な強度と表面の親水性を付
与する目的の、水酸基を有する有機高分子化合物を用い
ることができる。具体的には、ポリビニルアルコール
(PVA),カルボキシ変性PVA等の変性PVA,澱
粉およびその誘導体、カルボキシメチルセルローズ、ヒ
ドロキシエチルセルローズのようなセルロース誘導体、
カゼイン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニ
ル−クロトン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合
体、ポリアクリル酸及びその塩、ポリアクリアミド、及
びアクリル酸、アクリアミドなど水溶性のアクリル系モ
ノマーを主な構成成分として含む水溶性アクリル系共重
合体等の水溶性樹脂が挙げられる。
【0105】又、上記水酸基を有する有機高分子化合物
を架橋し、硬化させる耐水化剤としては、グリオキザー
ル、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデ
ヒド樹脂等のアミノプラストの初期縮合物、メチロール
化ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン・エピクロ
ルヒドリン付加物、ポリアミドエピクロルヒドリン樹
脂、変性ポリアミドポリイミド樹脂等が挙げられる。そ
の他、更には、塩化アンモニウム、シランカップリング
剤の架橋触媒等が併用できる。
【0106】<そのほかの画像記録層への添加成分> ・親水性ゾル状粒子 本発明の平版印刷版用原版の画像記録層は、前記光熱変
換剤系、疎水性化前駆体、親水性向上と皮膜性向上用の
水酸基を有する有機高分子化合物の他に、親水性のゾル
状粒子をさらに含有してもよい。
【0107】親水性ゾル状粒子としては、特に限定され
ないが、好ましくはシリカゾル、アルミナゾル、アルミ
ナ・シリカ複合ゾル、酸化チタン、酸化マグネシウム、
炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムであり、これ
らは光熱変換性ではなくても親水性を助長したり、ゾル
ゲル膜の強化などに用いることができる。より好ましく
は、シリカゾル、アルミナゾル、アルミナ・シリカ複合
ゾル又はこれらの混合物である。
【0108】シリカゾルは、表面に多くの水酸基を持
ち、内部はシロキサン結合(−Si−O−Si)を構成
している。粒子径1〜100nmのシリカ超微粒子が、
水もしくは、極性溶媒中に分散したであり、コロイダル
シリカとも称されているものである。具体的には、加賀
美敏郎、林瑛監修「高純度シリカの応用技術」第3巻、
(株)シーエムシー(1991年)に記載されている。
【0109】又アルミナゾルは、5〜200nmのコロ
イドの大きさをもつアルミナ水和物(ベーマイト系)
で、水中の陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオ
ン等のハロゲン原子イオン、酢酸イオン等のカルボン酸
アニオン等)を安定剤として分散されたものである。
【0110】上記親水性ゾル状粒子は、平均粒径が10
〜50nmのものが好ましいが、より好ましい平均粒径
は10〜40nmのものである。これら親水性ゾル状粒
子は、いずれも、市販品として容易に入手できる。
【0111】本発明で用いる、親水性ゾル状粒子(これ
らを総括して、単にシリカ粒子ということもある)の各
々の粒径が、前記範囲内において、画像記録層の膜強度
が充分に保持され、レーザー光等により露光して製版
し、印刷版として印刷すると、非画像部への印刷インク
の付着汚れを生じない極めて親水性に優れたものになる
という効果を発現する。また、親水性ゾル状粒子を画像
記録層に添加する場合、その添加量は、画像記録層の固
定物成分の5〜80質量%であり、好ましくは20〜6
0質量%である。
【0112】・界面活性剤 本発明の平版印刷版用原板の画像形成層中には、印刷条
件に対する安定性を拡げるため、特開昭62−2517
40号公報や特開平3−208514号公報に記載され
ているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121
044号公報、特開平4−13149号公報に記載され
ているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリ
ステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタ
ントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオ
キシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノ
エチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン
塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒ
ドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラ
デシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲ
ンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。上記非イオ
ン界面活性剤及び両性界面活性剤の画像形成層全固形物
中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、
より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0113】画像記録層には、場合によりさらに、上記
の界面活性剤の添加量の範囲内でフッ素系の界面活性剤
を用いることもできる。具体的にはパーフルオロアルキ
ル基を有する界面活性剤が好ましく、カルボン酸、スル
ホン酸、硫酸エステル及びリン酸エステルのいづれかを
有するアニオン型の界面活性剤、又は、脂肪族アミン、
第4級アンモニウム塩のようなカチオン型の界面活性
剤、又はベタイン型の両性界面活性剤、又は、ポリオキ
シ化合物の脂肪族エステル、ポリアルキレンオキシド縮
合型、ポリエチレンイミン縮合型のようなノニオン型界
面活性剤などが挙げられる。
【0114】・溶剤 画像記録層用の塗布液は、水溶媒で、更には塗液調整時
の沈殿抑制による均一液化のために水溶性溶媒を併用す
る。水溶性溶媒としては、アルコール類(メタノール、
エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコー
ル、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジ
プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチル
エーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、
エチレングリコールモノエチルエーテル等)、エーテル
類(テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチル
エーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テ
トラヒドロピラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエ
チルケトン、アセチルアセトン等)、エステル類(酢酸
メチル、エチレングリコールモノメチルモノアセテート
等)、アミド類(ホルムアミド、N−メチルホルムアミ
ド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等)等が挙げら
れ、1種あるいは2種以上を併用してもよい。これらの
溶媒は単独あるいは混合して使用される。塗布液を調製
する場合、溶媒中の上記画像形成層構成成分(添加剤を
含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%で
ある。
【0115】〔塗布〕上記した各構成成分から選択され
た成分を混合し、調整された塗布液を、支持体上に、従
来公知の塗布方法のいずれかを用いて、塗布・乾燥し、
成膜する。塗布する方法としては、公知の種々の方法を
用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回
転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、
エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げ
ることができる。本発明の平版印刷版用原板の画像形成
層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば
特開昭62−170950号公報に記載されているよう
なフッ素系界面活性剤を添加することができる。好まし
い添加量は、画像形成層全固形物分に対し、0.01〜
1質量%であり、更に好ましくは0.05〜0.5質量
%である。
【0116】塗布、乾燥後に得られる画像形成層塗布量
(固形分)は、用途によって異なるが、一般的な平版印
刷版用原板についていえば、0.5〜5.0g/m2
好ましく、0.5〜2.0g/m2がより好ましい。
【0117】本発明の平版印刷用原板の表面は、親水性
であるので、使用前の取り扱い中に環境の雰囲気の影響
によって疎水性化したり、温湿度の影響を受けたり、あ
るいは機械的な傷など又は汚れなどの影響を受けやす
い。通常、製版工程で版面に整面液(ガム液ともいう)
を塗布して保護作用を行うが、原板製作の際に、保護液
を塗布しておくと製造直後からこのような保護作用が得
られること、及び製版工程においてあらたに整面液を塗
布する手間が省けて作業性が向上することなどの利点が
あり、とくに親水性表面を有する本発明においては、こ
の効果が大きい。したがって、本発明の好ましい態様と
して、前記したように、画像記録層の上に、水溶性保護
層を設ける。表面保護層の内容は、整面液(ガム液)と
同じで、その詳細は、後に塗布の項に「整面液」として
説明する。
【0118】〔支持体〕つぎに画像記録層を塗設する基
板について述べる。基板には、寸度的に安定な板状物が
用いられる。本発明に用いることができる基板として
は、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金
属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、ニッケル、ス
テンレス鋼等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢
酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロ
ース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セル
ロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、
ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポ
リビニルアセタール等)、上記の金属がラミネート又は
蒸着された紙もしくはプラスチックフィルム等が含まれ
る。
【0119】好ましい基板は、ポリエステルフィルム、
アルミニウム、又は印刷版上で腐食しにくいSUS鋼板
であり、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であ
るアルミニウム板が好ましい。好適なアルミニウム板
は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分と
し、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウ
ムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィル
ムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、
ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜
鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の
異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明に
おいて特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであ
るが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困
難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その
組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素
材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本
発明で用いられる基板の厚みはおよそ0.05mm〜0.
6mm程度、好ましくは0.1mm〜0.4mm、特に好まし
くは0.15mm〜0.3mmである。
【0120】アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所
望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活
性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂
処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理
は、行っても行わなくてもよい。行う場合、種々の方法
があるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学
的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選
択溶解させる方法により行われる。機械的方法として
は、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バ
フ研磨法などの公知の方法を用いることができる。化学
的方法としては、特開昭54−31187号公報に記載
されているような鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に
浸漬する方法が適している。また、電気化学的な粗面化
法としては塩酸または硝酸などの酸を含む電解液中で交
流または直流により行う方法がある。また、特開昭54
−63902号に開示されているように混合酸を用いた
電解粗面化方法も利用することができる。このような粗
面化方法のうち、特に特開昭55−137993号公報
に記載されているような機械的粗面化と電気化学的粗面
化を組合せた粗面化方法が、感脂性画像の支持体への接
着力が強いので好ましい。
【0121】上記の如き方法による粗面化は、アルミニ
ウム板の表面の中心線表面粗さ(Ha)が0.3〜1.
0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。粗
面化されたアルミニウム板は必要に応じて水酸化カリウ
ムや水酸化ナトリウムなどの水溶液を用いてアルカリエ
ッチング処理がされ、さらに中和処理された後、所望に
より表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処
理が施される。
【0122】アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられ
る電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電
解質の使用が可能で、一般的には硫酸、塩酸、蓚酸、ク
ロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電
解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽
極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるの
で一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1
〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜6
0A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の
範囲であれば適当である。形成される酸化皮膜量は、
1.0〜5.0g/m2 、特に1.5〜4.0g/m2
であることが好ましい。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2
より少ないと耐刷性が不十分となる。
【0123】これらの陽極酸化処理の内でも、とくに英
国特許第1,412,768号公報に記載されている硫
酸中で高電流密度で陽極酸化する方法及び米国特許第
3,511,661号公報に記載されている燐酸を電解
浴として陽極酸化する方法が好ましい。
【0124】上記の好ましくは粗面化され、更に陽極酸
化されたアルミニウム板は、必要に応じて親水化処理し
ても良く、その好ましい例としては米国特許第2,71
4,066号及び同第3,181,461号公報に開示
されているようなアルカリ金属シリケート、例えば珪酸
ナトリウム水溶液又は特公昭36−22063号公報に
開示されている弗化ジルコニウム酸カリウム及び米国特
許第4,153,461号公報に開示されているような
ポリビニルホスホン酸で処理する方法がある。親水性化
処理によって地汚れを防止できることが多い。
【0125】アルミニウム板やSUS板は、感光層を塗
設する前に必要に応じて有機下塗層が設けられる。この
有機下塗層に用いられる有機化合物としては例えば、カ
ルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガ
ム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有す
るホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホ
ン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリ
セロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレン
ジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有しても
よいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸
およびグリセロリン酸などの有機リン酸エステル、置換
基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホス
フィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフ
ィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニ
ンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩
酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩など
から選ばれるが、二種以上混合して用いてもよい。
【0126】この有機下塗層は次のような方法で設ける
ことが出来る。即ち、水またはメタノール、エタノー
ル、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれら
の混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアル
ミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水または
メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有
機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を
溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記有機
化合物を吸着させ、しかる後、水などによって洗浄、乾
燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法で
は、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度
の溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコータ
ー塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などい
ずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶
液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05
〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましく
は25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、
好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、ア
ンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩
基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpHを
調節し、pH1〜12の範囲で使用することもできる。
また、感光性平版印刷版の調子再現性改良のために黄色
染料を添加することもできる。有機下塗層の乾燥後の被
覆量は、2〜200mg/m2 が適当であり、好ましく
は5〜100mg/m2 である。上記の被覆量が2mg
/m2 より少ないと十分な耐刷性能が得られない。ま
た、200mg/m2 より大きくても同様である。
【0127】[その他の層]支持体の裏面には、必要に
応じてバックコートが設けられる。かかるバックコート
としては特開平5−45885号公報に記載の有機高分
子化合物及び特開平6−35174号公報に記載の有機
又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られ
る金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。こ
れらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC25)
4、Si(OC37)4、Si(OC49)4等のケイ素のア
ルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる
金属酸化物の被覆層が親水性に優れており特に好まし
い。
【0128】[製版方法]次に、この平版印刷版用原板
の製版方法について説明する。この平版印刷版用原板
は、例えば、熱記録ヘッド等により直接画像様に感熱記
録を施したり、波長760〜1200nmの赤外線を放
射する固体レーザー又は半導体レーザー、キセノン放電
灯などの高照度フラッシュ光や赤外線ランプ露光などの
光熱変換型の露光も用いることができる。
【0129】画像の書き込みは、面露光方式、走査方式
のいずれでもよい。前者の場合は、赤外線照射方式や、
キセノン放電灯の高照度の短時間光を原板上に照射して
光・熱変換によって熱を発生させる方式である。赤外線
灯などの面露光光源を使用する場合には、その照度によ
っても好ましい露光量は変化するが、通常は、印刷用画
像で変調する前の面露光強度が0.1〜10J/cm2 の範
囲であることが好ましく、0.1〜1J/cm2 の範囲であ
ることがより好ましい。支持体が透明である場合は、支
持体の裏側から支持体を通して露光することもできる。
その露光時間は、0.01〜1msec、好ましくは
0.01〜0.1msecの照射で上記の露光強度が得
られるように露光照度を選択するのが好ましい。照射時
間が長い場合には、熱エネルギーの生成速度と生成した
熱エネルギーの拡散速度の競争関係から露光強度を増加
させる必要が生じる。
【0130】後者の場合には、赤外線成分を多く含むレ
ーザー光源を使用して、レーザービームを画像で変調し
て原板上を走査する方式が行われる。レーザー光源の例
として、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘ
リウムカドミウムレーザー、YAGレーザーを挙げるこ
とができる。レーザー出力が0.1〜300Wのレーザ
ーで照射をすることができる。また、パルスレーザーを
用いる場合には、ピーク出力が1000W、好ましくは
2000Wのレーザーを照射するのが好ましい。この場
合の露光量は、印刷用画像で変調する前の面露光強度が
0.1〜10J/cm2 の範囲であることが好ましく、0.
3〜1J/cm2 の範囲であることがより好ましい。支持体
が透明である場合は、支持体の裏側から支持体を通して
露光することもできる。
【0131】平版印刷版を製版する際、画像露光したの
ち、更に必要であれば非画像部を保護するために版面保
護剤(いわゆる、ガム液)を含んだ整面液を塗布する
「ガム引き」といわれる工程が行なわれる。ガム引き
は、平版印刷版の親水性表面が空気中の微量混入成分の
影響を受けて親水性が低下するのを防ぐため、非画像部
の親水性を高めるため、製版後印刷するまでの期間又は
印刷を中断してから再び開始するまでの間に平版印刷版
が劣化するのを防止するため、印刷機に取りつける場合
などのように平版印刷版を取り扱う時に指の油、インキ
などが付着して非画像がインキ受容性となって、汚れる
のを防止するため、更に、平版印刷版を取り扱う時に非
画像部及び画像部に傷が発生することを防止するため、
などの種々の目的をもって行われる。
【0132】本発明に使用される皮膜形成性を有する水
溶性樹脂の好ましい具体例としては、例えばアラビアガ
ム、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロー
ズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ
等)及びその変性体、ポリビニルアルコール及びその誘
導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及び
その共重合体、アクリル酸共重合体、ビニルメチルエー
テル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレ
イン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、
焙焼デキストリン、酸素分解デキストリン、酵素分解エ
ーテル化デキストリン等が挙げられる。
【0133】整面液中の保護剤中の上記水溶性樹脂の含
有量は、3〜25質量%が適当であり、好ましい範囲は
10〜25質量%である。なお、本発明においては上記
水溶性樹脂を2種以上混合使用しても良い。
【0134】平版印刷版用版面保護剤には、そのほかに
種々の界面活性剤を添加してもよい。使用できる界面活
性剤としてはアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性
剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては脂肪族ア
ルコール硫酸エステル塩類、脂酒石酸、リンゴ酸、乳
酸、レプリン酸、有機スルホン酸などがあり、鉱酸とし
ては硝酸、硫酸、燐酸等が有用である。鉱酸、有機酸又
は無機塩等の少なくとも1種もしくは2種以上併用して
もよい。
【0135】上記成分の他必要により湿潤剤としてグリ
セリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール
等の低級多価アルコールも使用することができる。これ
ら湿潤剤の使用量は保護剤中に0.1〜5.0質量%が
適当であり、好ましい範囲は0.5〜3.0質量%であ
る。以上の他に本発明の平版印刷版用版面保護剤には、
防腐剤などを添加することができる。例えば安息香酸及
びその誘導体、フェノール、ホルマリン、デヒドロ酢酸
ナトリウム等を0.005〜2.0質量%の範囲で添加
できる。版面保護剤には消泡剤を添加することもでき
る。好ましい消泡剤には有機シリコーン化合物が含ま
れ、その添加量は0.0001〜0.1質量%の範囲が
好ましい。
【0136】版面保護剤には画像部の感脂性低下を防ぐ
ため有機溶剤を含有させることができる。好ましい有機
溶剤には水難溶性のものであり、沸点が約120℃〜約
250℃の石油留分、例えばジブチルフタレート、ジオ
クチルアジペートなどの凝固点が15℃以下で沸点が3
00℃以上の可塑剤が挙げられる。このような有機溶剤
は0.05〜5質量%の範囲で添加される。
【0137】版面保護剤は均一溶液型、サスペンジョン
型、エマルジョン型のいずれの形態をもとることができ
るが、特に上記のような有機溶剤を含むエマルジョン型
において、すぐれた性能を発揮する。この場合、特開昭
55−105581号公報に記載されているように界面
活性剤を組合せて含有させることが好ましい。
【0138】
〔実施例1〜3及び比較例1〜6〕
(1)基板の作製 99.5質量%アルミニウムに、銅を0.01質量%、
チタンを0.03質量%、鉄を0.3質量%、ケイ素を
0.1質量%含有するJISA1050アルミニウム材
の厚み0.24mm圧延板を、400メッシュのパミスト
ン(共立窯業製)の20質量%水性懸濁液と、回転ナイ
ロンブラシ(6,10−ナイロン)とを用いてその表面
を砂目立てした後、よく水で洗浄した。これを15質量
%水酸化ナトリウム水溶液(アルミニウム4.5質量%
含有)に浸漬してアルミニウムの溶解量が5g/m2になる
ようにエッチングした後、流水で水洗した。更に、1質
量%硝酸で中和し、次に0.7質量%硝酸水溶液(アル
ミニウム0.5質量%含有)中で、陽極時電圧10.5
ボルト、陰極時電圧9.3ボルトの矩形波交番波形電圧
(電流比r=0.90、特公昭58−5796号公報実
施例に記載されている電流波形)を用いて160クロー
ン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。水
洗後、35℃の10質量%水酸化ナトリウム水溶液中に
浸漬して、アルミニウム溶解量が1g/m2になるようにエ
ッチングした後、水洗した。次に、50℃、30質量%
の硫酸水溶液中に浸漬し、デスマットした後、水洗し
た。
【0139】さらに、35℃の硫酸20質量%水溶液
(アルミニウム0.8質量%含有)中で直流電流を用い
て、多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。即ち電流密
度13A/dm2で電解を行い、電解時間の調節により陽極
酸化皮膜質量2.7g/m2とした。この支持体を水洗後、
70℃のケイ酸ナトリウムの3質量%水溶液に30秒間
浸漬処理し、水洗乾燥した。以上のようにして得られた
アルミニウム支持体は、マクベスRD920反射濃度計
で測定した反射濃度は0.30で、中心線平均粗さは
0.58μmであった。
【0140】(2)光熱変換剤の作製 <超微粒子I:湿式法によるCuO ・Fe2O3 ・Mn2O3 3成
分系超微粒子>硫酸第2鉄、硫酸第2銅及び硫酸マンガ
ンのそれぞれ0.05モル/リットル水溶液を調製し
た。硫酸マンガン水溶液にはさらに3%過酸化水素水
を、10cm3 /リットル添加して酸化性硫酸マンガン水溶
液とした。そのほかに0.05モル/リットル水酸化カ
リウム水溶液も調製した。沈殿生成装置は、500rp
mで回転する攪拌用プロペラを内蔵した筒型の中空内套
とその周りを同心円状に取り囲む筒型の外套からなって
おり、上記の水酸化カリウム水溶液、硫酸第2鉄、硫酸
第2銅及び酸化性硫酸マンガンのそれぞれ0.05モル
/リットル水溶液は、先端がノズルになっている送液管
付きのファンネルに入れられて、送液管に取り付けられ
た定量ポンプによって定速度で沈殿生成装置の内套に注
入添加される仕組みとなっている。沈殿生成装置には、
注入添加の前には0.005モル/リットル硫酸水溶液
1000cm3 が満たされており、各水溶液は、この希
薄硫酸水溶液に添加され、急速攪拌によって速やかに混
合される。攪拌用プロペラは内套内の水溶液を攪拌しな
がら、上部から下方へ、さらに内套下端から外套へと押
し出す方向に液流をつくり出すので、水溶液は内套内の
攪拌混合と内套下端から外套へさらに外套から内套上端
へと循環する混合によって効果的な均一化がなされる。
また、内套にはpH計が設けられており、その読み取り
pH値にしたがっており、内套内部pH値を制御するた
めの制御装置が附属している。また、外套の水溶液温度
の制御装置も設けられている。
【0141】まず、温度が40°C、内套内部のpHが
4.0に制御されるように設定されたのち、水酸化カリ
ウム水溶液が定速添加されて、内套内部のpHが4.0
に達すると、硫酸第2鉄、硫酸第2銅及び酸化性硫酸マ
ンガンのそれぞれ0.05モル/リットル水溶液が、そ
れぞれ15、3、0.3cm3 /分の速度でファンネル
から送液管付きを経てノズルから内套内部に注入されて
高速攪拌され、それぞれの水酸化物微粒子が生成する
が、高速攪拌を受けながら熟成が進行する間に粒子の会
合が行われる。硫酸第2鉄の注入が終了した時点で、注
入を終えてさらに10分間攪拌したのち、静置し、上澄
みをデカンテーションによって除去する。得られた沈殿
を乾燥して水分を除いたのち、800°Cで2時間焼成
して、CuO・Fe2 3 ・Mn2 3 の3成分系スピ
ネル構造の超微粒子を得た。電子顕微鏡によって求めた
質量平均粒子径は、40nmであり、分散定数は8%で
あった。
【0142】<超微粒子II:別の湿式法によるCuO ・Fe
2O3 ・Mn2O3 3成分系超微粒子>超微粒子Iの調製にお
いて、水酸化カリウムを注入する代わりに、外套中の硫
酸酸性水溶液中に尿素を濃度1モル/リットルとなるよ
うに添加し、pHを3.5に調節した以外は、超微粒子
Iと同じ方法でCuO・Fe2 3 ・Mn2 33成分
系超微粒子(超微粒子II)を調製した。得られたCuO
・Fe2 3 ・Mn2 3 の3成分系スピネル構造の超
微粒子質量平均粒子径は、52nmであり、分散係数は
9%であった。
【0143】<超微粒子III :気相凝固法によるCuO ・
Fe2O3 ・Mn2O3 3成分系超微粒子>アーク放電式プラズ
マ発生装置を用い、そのチャンバー内を0.025パス
カルの減圧に保持した。Cu・Fe・Mn合金(Cu:
Fe:Mn=2:1:2,原子比)からなる丸棒をアノ
ードとしてチャンバー外に配設したフィーダーから随時
補給できるように設置した。チャンバー内のアノードと
その斜め上方に配されたカソードとの間には250A、
50Vの電力を印加してアーク放電させ、プラズマフレ
ームを発生させた。アルゴンガスを0.7m3/Hrの流量
でカソードを囲む形でチャンバー内へ流入させ、このア
ルゴンガスのガス流をカソードからアノードへ配向させ
た。アーク放電によって生じたプラズマフレームによっ
てアノードの上端部表面からアノード材料を蒸発させ
た。アノード蒸気の蒸気流に酸素ガスを5.0m3/Hrの
流量で吹きつけて微粒子を凝縮生成させた。この蒸発に
見合うアノード材料の消費分は前記アノード材料フィー
ダーから連続的に補給される。生成した微粒子はブロア
ーによって反応室内に流れる空気流に乗って浮遊状態で
捕集室に運ばれ、捕集室の布製ろ過材に捕集される。捕
集された微粒子は、捕集して内から圧縮空気を吹きつけ
てろ過材から剥離させて、その下部に設けられたボトル
に回収した。この微粒子を1000°Cで6時間加熱処
理してCuO・Fe2 3 ・Mn2 3 3成分系スピネ
ル構造の超微粒子を得た。電子顕微鏡でこの超微粒子の
平均粒子径を求めたところ、30nmで、分散係数は
7.5%であった。
【0144】<比較例1〜5用光熱変換剤の作製及び比
較例6>比較例1には、酸化銅(CuO)粒子 (粒子径 40n
m)を用いた。比較例2には、酸化鉄(Mn2O3)粒子 (粒子
径 40nm)を使用した。 比較例3には、酸化鉄(Fe2O3)
粒子 (粒子径 40nm)を使用した。 比較例4には、カー
ボンブラック微粒子 (粒子径 30nm)を表面親水性化処理
することなく疎水性表面のものを用いた。比較例5用に
は、疎水性の赤外吸収染料である下記化学式のビスイン
ドレニン構造の色素を分散添加して使用した。比較例6
には、光熱変換剤を添加せずに塗布液を調製した。
【0145】
【化2】
【0146】(3)疎水性化前駆体の作製 下記疎水性化前駆体を作製した。 <前駆体A:ヘテロ凝集表面層の複合粒子>スチレン7
0g、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート30
g、水200g、界面活性剤XL−102F(ライオン
(株)製)(4.7%水溶液)10gを三ッ口フラスコ
に入れ、窒素を導入しながら、80℃に昇温した。その
後約30分攪拌後、K2 2 8 を1g添加し80℃で
6時間乳化重合を行い、粒径約0.1μmの樹脂粒子を
得た。さらに、この樹脂粒子分散液中にスノーテックス
C(日産化学(株)製)30g添加し、樹脂粒子表面に
シリカゾル微粒子をヘテロ凝集させた、コアが樹脂でシ
ェルがシリカ層の粒径0.15μmのヘテロ凝集親水性
表面層をもつ複合粒子1コアシェル粒子1を作成した。
【0147】(4)画像記録層の塗設 <テトラメトキシシラン分散液の調製>ゾルゲル変換性
の成分としてテトラメトキシシランを含んだ下記の処方
(A)の分散液(ゾルゲル液(A)と呼ぶ)を調製し
た。調製方法としては、シリコンテトラメトキシド、エ
タノール、純水、硝酸の順に混合してゆき、室温で1時
間攪拌してゾルゲル液(A)を作成した。 ゾルゲル液(A)処方 シリコンテトラメトキシド 18.37g エタノール(95%) 32.56g 純水 32.56g 硝酸 0.02g
【0148】<画像記録層用塗布液の調製> 実施例1〜3及び比較例1〜6用の塗布液 画像記録層用塗布液として上記のゾルゲル液(A)と表
1に記載のように光熱変換剤及び疎水性化前駆体の種類
を変えて含有させた実施例1〜3と比較例1〜6の合計
10種類の分散液を調製した。調製は、各成分を下記処
方のように含んだ混合物にガラスビーズ10gを添加し
てペイントシェーカーで10分間攪拌して分散液とし
た。 画像記録層用塗布液処方 光熱変換剤(表1参照) 2.17g 疎水性化前駆体(表1参照) 2.17g ゾルゲル液(A) 3.34g PVA117(10%水溶液) 3.50g コロイタ゛ルシリカ(スノーテックス C(日産化学(株)製) 6.0g 純水 7.49g
【0149】<塗布>画像記録層用塗布液をバー#14
用いてバーコートによって前記したアルミニウム基板上
に乾燥厚み2.0μmになるように塗布したのち、空気
オーブンに入れて100°Cで10分間乾燥して画像記
録層を形成させた。
【0150】(5)印刷版の作成 <印刷版の作成及び印刷>得られた10種の平版印刷用
原版を波長830nmの半導体レーザー光を照射した。
以下に具体的なレーザー照射条件を下記に示す。 レーザー出力:350mW ビーム半径:12.5μm 走査速度:1.7m/sec 出力:700mJ/cm2
【0151】レーザー露光した原板に何ら後処理するこ
となく印刷機にかけ印刷を行った。印刷枚数5000
枚、10000枚及び20000枚のときに印刷汚れの
程度を目視検査した。使用した印刷機は、ハイデルベル
グSOR−Mであり、湿し水には、水にEU−3(富士
写真フイルム(株)製)を1vol%、IPAを10v
ol%添加した水溶液を用い、インキには、GEOS
(N)墨を用いた。
【0152】(6)印刷原板の評価と評価方法 出来上がった印刷用原板の評価は、つぎのように行っ
た。 <印刷汚れの評価方法>印刷紙面の印刷汚れを目視によ
って検査し、1万枚の印刷を行ったときに印刷汚れを認
めない場合を○、印刷汚れが1万枚の印刷を行ったとき
には認められるが、5000枚印刷時点では認められな
い場合を△、5000枚印刷時点においてすでに印刷汚
れを認めた場合には×と表示した。1万枚の印刷を行っ
たときに印刷汚れのないものは、さらに1万枚の印刷を
行い、印刷紙面の印刷汚れが引き続き生じていない場合
を◎と表示した。結果は表1に併せて示した。
【0153】
【表1】
【0154】(注) 表1の注記事項:印刷品質は、印刷
汚れがなくても、印刷されない場合も×とした。
【0155】(7)結果 表1に示すように、実施例1〜3の本発明例の複合金属
酸化物超微粒子(光熱変換剤)とヘテロ凝集によって作
成した複合構造の疎水性化前駆体粒子とを添加した試料
は、いずれも印刷枚数が1万枚以上、多くは2万枚を越
えても印刷汚れがなく、優れた耐刷性を有することが示
された。複合金属酸化物超微粒子では、調製方法が湿式
酸化法(実施例1及び2)でも気相凝固法(実施例3)
でも耐刷性は実質的に殆ど同じであった。一方、同じ金
属酸化物超微粒子であっても複合金属酸化物ではない比
較例1〜3では、1万枚印刷時点では非画像部に軽微な
印刷汚れが認められた。また、カーボンブラック微粒子
を表面親水性化処理することなく用いた比較例4及び疎
水性赤外吸収色素を使用した比較例5は、いずれも非画
像部の印刷汚れが著しく発生した。また、光熱変換剤を
用いない比較例6では、画像部にインキが付着せず、印
刷されなかった(表1の評価欄の×は印刷されないため
の×である)。
【0156】〔実施例11〜13及び比較例11〜1
6〕実施例1〜3及び比較例1〜6における疎水性化前
駆体のヘテロ凝集表面層粒子Aの代わりにマイクロカプ
セル粒子分散物Bを使用した以外は、実施例1〜3及び
比較例1〜6と同じ材料と試験方法により印刷版の作製
と試験を行い、同じ評価基準によって印刷評価を行っ
た。疎水性化前駆体B(マイクロカプセル粒子)の作製
方法を以下に示し、試験結果を表2に示す。
【0157】<疎水性化前駆体B(マイクロカプセル粒
子)の調製>酢酸エチル19.0部(以下すべて質量
部)、イソプロピルビフェニルを5.9部、グリセロー
ルラウレート5部およびリン酸トリクレジル2.5部を
加熱して均一に混合した。カプセル壁材(同時の疎水性
化前駆体でもある)として、キシリレンジイソシアナー
ト/トリメチロールプロパン付加物(75%酢酸エチル
溶液 タケネートD110N:武田薬品社の商品名)
7.6部をこの溶液に更に添加し、均一に攪拌した。別
途、10質量%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液
2.0部を加えた6質量%ゼラチン(MGP−906
6:ニッピゼラチン工業社の商品名)水溶液64部を用
意し、ホモジナイザーにて乳化分散した。
【0158】得られた乳化液に水20部を加え均一化し
た後、攪拌しながら40℃に昇温し、3時間カプセル化
反応を行わせた。この後35℃に液温を下げ、イオン交
換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ社製)6.
5部、アンバーライトIRC50(オルガノ社製)13
部を加え更に一時間攪拌する。この後イオン交換樹脂を
ろ過して目的のカプセル液を得た。カプセルの平均粒径
は0.64μmであった。マイクロカプセル粒子1とし
た。
【0159】
【表2】
【0160】(注) 表2の注記事項:印刷品質は、印刷
汚れがなくても、印刷されない場合も×とした。
【0161】得られた結果は、表2が示すように、実施
例11〜13の本発明例の複合金属酸化物超微粒子(光
熱変換剤)とマイクロカプセル型の疎水性化前駆体粒子
とを添加した試料は、いずれも印刷枚数が1万枚以上、
多くは2万枚を越えても印刷汚れがなく、優れた耐刷性
を有することが示された。複合金属酸化物超微粒子で
は、調製方法が湿式酸化法(実施例11及び12)でも
気相凝固法(実施例13)でも耐刷性は実質的に殆ど同
じであった。一方、同じ金属酸化物超微粒子であっても
複合金属酸化物ではない比較例11〜13では、1万枚
印刷時点では非画像部に軽微な印刷汚れが認められた。
また、カーボンブラック微粒子を表面親水性化処理する
ことなく用いた比較例14及び疎水性赤外吸収色素(比
較例5に用いた色素と同じ)を使用した比較例15は、
いずれも非画像部の印刷汚れが著しく発生し、耐刷性の
評価は×であった。また、光熱変換剤を用いない比較例
16では、画像部にインキが付着せず、印刷されないの
で×と評価された。これらの結果は、複合金属酸化物超
微粒子は、疎水性前駆体がいずれであっても、カーボン
ブラックや光熱変換性色素などの従来の光熱変換剤より
も、さらには単一組成の金属酸化物超微粒子よりも、優
れた印刷品質としたがて優れた耐刷性を有することを示
している。
【0162】
【発明の効果】周期律表の6A、7A又は8族元素の少
なくとも一つを構成元素とする複合金属酸化物の着色超
微粒子を光熱変換剤として含有する本発明の平版印刷用
原板は、画像領域と非画像領域の識別能が高く、耐刷性
にすぐれていて印刷汚れも生じにくい優れた印刷性能を
有している。この効果は、光熱変換材の金属酸化物超微
粒子が本発明の上記複合組成であることにより、顕著に
増大する。また、本発明によれば、特に赤外線を放射す
る固体レーザー又は半導体レーザー等を用いて記録する
ことにより、ディジタルデータから直接製版可能な平版
印刷版用原版を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G03F 7/004 521 G03F 7/004 521 Fターム(参考) 2H025 AA01 AA04 AB03 AC01 AC08 AD01 BH03 BJ03 CB51 CB54 CC11 CC20 FA10 2H084 AA14 AA32 AE05 BB04 CC05 2H096 AA06 BA01 EA04 EA23 2H114 AA04 AA22 AA24 BA01 DA04 DA15 DA25 DA38 DA73 DA78 EA01 EA03 EA05 GA03 GA05 GA09 GA34 GA38

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 周期律表の6A,7A又は8族元素の少
    なくとも一つを構成元素とする複合金属酸化物の着色超
    微粒子を光熱変換剤として含有することを特徴とする平
    版印刷用原板。
  2. 【請求項2】 周期律表の6A,7A又は8族元素の少
    なくとも一つを構成元素とする複合金属酸化物の着色超
    微粒子を光熱変換剤として含有し、かつ表面親水性の疎
    水性化前駆体をも含有する親水性の画像記録層を支持体
    上に有することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷
    用原板。
  3. 【請求項3】 表面親水性の疎水性化前駆体が、芯部に
    疎水性物質を内包し、かつ表面親水性の表層部を有する
    複合構成の粒子分散物であることを特徴とする請求項2
    に記載の平版印刷用原板。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3に記載の平版印刷用原板に
    光熱変換性の可視光又は赤外線光を像様に照射したの
    ち、照射面にインキを接触させて画像面がインキを受け
    入れた印刷版面を形成させて印刷を行うことを特徴とす
    る平版印刷方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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