JP2001226408A - フコース硫酸含有多糖 - Google Patents

フコース硫酸含有多糖

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JP2001226408A JP2000400282A JP2000400282A JP2001226408A JP 2001226408 A JP2001226408 A JP 2001226408A JP 2000400282 A JP2000400282 A JP 2000400282A JP 2000400282 A JP2000400282 A JP 2000400282A JP 2001226408 A JP2001226408 A JP 2001226408A
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信司 中山
Kaoru Kojima
薫 児島
Hitomi Kimura
ひとみ 木村
Yoshikuni Nakanishi
芳邦 中西
Kaoru Katayama
薫 片山
Takao Tominaga
隆生 冨永
Kazuo Shimanaka
一夫 嶋中
Katsushige Igai
勝重 猪飼
Ikunoshin Kato
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】医薬品として利用可能なアポトーシス誘発剤、
制がん剤及び発がん予防剤に関する。又、アポトーシス
機構解明、アポトーシス誘発阻害剤スクリーニング等に
有用なアポトーシス誘発方法、更に本発明により純化さ
れたフコース硫酸含有多糖及びその分解物、フコース硫
酸含有多糖分解物の製造、構造究明に有用なフコース硫
酸含有多糖分解酵素の提供。 【解決手段】下記理化学的性質を有することを特徴とす
るフコース硫酸含有多糖。 (1)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。 (2)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.
SA−0082(FERM BP−5402)の生産す
るフコダイン分解酵素により実質上低分子化されない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬品として利用
可能なアポトーシス誘発剤、制がん剤及び発がん予防剤
に関する。また、本発明はアポトーシス機構解明、アポ
トーシス誘発阻害剤スクリーニング等に有用なアポトー
シス誘発方法を提供する。更に本発明により純化された
フコース硫酸含有多糖及びその分解物が提供され、フコ
ース硫酸含有多糖分解物の製造や、構造究明に有用なフ
コース硫酸含有多糖分解酵素が提供される。
【0002】
【従来の技術】近年、細胞組織の死に関し、アポトーシ
ス(apoptosis 、アポプトーシスともいう;自爆死ある
いは細胞自滅)と言う様式が注目されている。
【0003】このアポトーシスは、病理的細胞死である
壊死と異なり、細胞自身の遺伝子に最初から組込まれて
いる死であると考えられている。すなわち何らかの外部
的又は内部的要因が引き金となってアポトーシスをプロ
グラムする遺伝子が活性化され、この遺伝子を元にプロ
グラム死遺伝子タンパク質が生合成され、生成したプロ
グラム死タンパク質により細胞自体が分解され、死に至
ると考えられている。
【0004】このようなアポトーシスを所望の組織、細
胞で発現せしめることができれば、不要若しくは病原細
胞を自然の形で生体から排除することが可能となり、極
めて意義深いものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、アポ
トーシスを誘発する作用を有する安全性の高い化合物を
開発し、該化合物を含有するアポトーシス誘発剤、制が
ん剤、発がん予防剤、及び該化合物を有効成分として使
用するアポトーシス誘発方法を提供することにある。ま
た本発明の化合物の分解物の製造に有用な該化合物分解
酵素を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明の第1の発明はアポトーシス誘発剤に関し、フコー
ス硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有することを
特徴とする。
【0007】本発明の第2の発明はアポトーシス誘発方
法に関し、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物
を有効成分として使用することを特徴とする。
【0008】本発明の第3の発明は制がん剤に関し、本
発明の第5又は第6の発明のフコース硫酸含有多糖及び
/又はその分解物を含有することを特徴とする。
【0009】本発明の第4の発明は発がん予防剤に関
し、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を含有
することを特徴とする。
【0010】本発明の第5の発明は下記理化学的性質を
有するフコース硫酸含有多糖に関する。 (1)構成糖:ウロン酸を含有する。 (2)フラボバクテリウム(Flavobacterium) sp.
SA−0082(FERM BP−5402) の生産
するフコイダン分解酵素により低分子化し、少なく と
も下記式(I)、(II)、(III)で表される化合物よ
り選択される一種以上 の化合物が生成する。
【化1】
【化2】
【化3】
【0011】本発明の第6の発明は下記理化学的性質を
有するフコース硫酸含有多糖に関する。 (1)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。 (2)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.
SA−0082(FERM BP−5402)の生産す
るフコダイン分解酵素により実質上低分子化されない。
【0012】本発明の第7の発明は本発明の第5の発明
のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、フコース硫
酸含有多糖混合物を塩類の存在下、酸性多糖凝集能のあ
る薬剤で処理し、沈殿物を除去する工程を包含すること
を特徴とする。
【0013】本発明の第8の発明は本発明の第5の発明
のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、フコース硫
酸含有多糖混合物を、2価の陽イオンの混在下に陰イオ
ン交換樹脂で処理して目的の多糖を採取する工程を包含
することを特徴とする。
【0014】本発明の第9の発明は本発明の第5の発明
のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、本発明の第
5の発明のフコース硫酸含有多糖を製造する際に、共存
する着色性物質を多糖性の物質あるいは陰イオン交換基
を有する物質を用いて除去する工程を包含することを特
徴とする。
【0015】本発明の第10の発明は本発明の第6の発
明のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、フコース
硫酸含有多糖混合物を、ウロン酸を含むフコース硫酸含
有多糖を分解する能力を有する分解酵素、又は該分解酵
素をもつ微生物で処理して目的の多糖を採取する工程を
包含することを特徴とする。
【0016】本発明の第11の発明は本発明の第6の発
明のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、フコース
硫酸含有多糖混合物を、塩類の存在下、酸性多糖凝集能
のある薬剤で目的の多糖を沈殿させる工程を包含するこ
とを特徴とする。
【0017】本発明の第12の発明は本発明の第6の発
明のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、フコース
硫酸含有多糖混合物を、2価の陽イオンの混在下に陰イ
オン交換樹脂で処理して目的の多糖を採取する工程を包
含することを特徴とする。
【0018】本発明の第13の発明は本発明の第6の発
明のフコース硫酸含有多糖の製造方法に関し、本発明の
第6の発明のフコース硫酸含有多糖を製造する際に、共
存する着色性物質を多糖性の物質あるいは陰イオン交換
基を有する物質を用いて除去する工程を包含することを
特徴とする。
【0019】本発明の第14の発明はフコース硫酸含有
多糖混合物の製造方法に関し、海藻から本発明の第7、
8、10、11又は12の発明に使用するフコース硫酸
含有多糖混合物を抽出する際に、酢酸イオンとカルシウ
ムイオンを共存させることを特徴とする。
【0020】本発明の第15の発明は下記の理化学的性
質を有することを特徴とするエンド型フコース硫酸含有
多糖分解酵素に関する。 (i)作用:下記理化学的性質を有するフコース硫酸含
有多糖に作用して、該フコース硫酸含有多糖を低分子化
させる。 (a)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。 (b)フラボバクテリウム(Flavobacterium) sp.
SA−0082(FERM BP−5402)の生産す
るフコイダン分解酵素により実質上低分子化されない。
下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖に作用
しない。 (c)構成糖:ウロン酸を含有する。 (d)フラボバクテリウム(Flavobacterium) sp.
SA−0082(FERM BP−5402)の生産す
るフコイダン分解酵素により低分子化し、少なくとも下
記式(I)、(II)、(III)で表される化合物より選
択される一種以上の化合物が生成する。
【化4】
【化5】
【化6】 (ii)至適pH:本酵素の至適pHは7〜8付近にあ
る。 (iii)至適温度:本酵素の至適温度は30〜35℃付
近である。
【0021】本発明の第16の発明はカルシウム源と本
発明の第15の発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分
解酵素を含有する酵素組成物に関する。
【0022】本発明の第17の発明は本発明の第15の
発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の製造方
法に関し、本発明の第15の発明のエンド型フコース硫
酸含有多糖分解酵素生産能を有するアルテロモナス属細
菌を培養し、その培養物から該酵素を採取することを特
徴とする。
【0023】本発明の第18の発明はフコース硫酸含有
多糖の低分子化物に関し、本発明の第15の発明のエン
ド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を本発明の第6の発
明のフコース硫酸含有多糖に作用させて取得してなるも
のであることを特徴とする。
【0024】本発明者らは様々な純化されたフコース硫
酸含有多糖やその分解物を得ることに成功し、次いでそ
れらの生物活性を検討し、それらの物質ががん細胞に対
してアポトーシスを誘発させること及び強い制がん作用
を示すことを見出した。またフコース硫酸含有多糖及び
/又はその分解物が強い発がん抑制作用を示すことを見
い出した。更に本発明の分解物の調製に有用なフコース
硫酸含有多糖分解酵素の単離に成功し、本発明を完成さ
せた。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明に関して具体的に説
明する。本発明に使用されるフコース硫酸含有多糖は特
に限定されるものではなく例えばヒバマタ由来の物、ガ
ゴメ昆布由来の物、マ昆布由来の物、ワカメ由来の物そ
の他すべての褐藻植物由来の物を使用することができ
る。また、ナマコも体壁にフコース硫酸含有多糖を持っ
ていることが知られているが、本発明にはナマコ由来の
フコース硫酸含有多糖も使用することができる。また本
発明にはフコース硫酸含有多糖の分解物も使用すること
ができる。フコース硫酸含有多糖の分解方法としては酸
処理等の化学的に分解する方法、超音波処理など物理的
に分解する方法、あるいは酵素的に分解する方法等が挙
げられる。
【0026】本発明者らは、上記のような様々なフコー
ス硫酸含有多糖及び/又はその分解物をがん細胞の培養
液に添加したところ添加後1日から数日で癌細胞がアポ
トーシスを起こすことを見出した。また、正常細胞に対
しては毒性を示さないことも確認した。
【0027】本発明において、フコース硫酸含有多糖と
は、分子中にフコース硫酸を含有する多糖であり、特に
限定はないが、例えば褐藻植物、ナマコ等に含有されて
いる〔左右田徳郎監修、江上不二夫編集、共立出版株式
会社、昭和30年12月15日発刊、多糖類化学、第3
19頁、第321頁〕。なお褐藻植物由来のフコース硫
酸含有多糖はフコイダン、フコイジン、フカンと通称さ
れ、いくつかの分子種があることが知られているがこれ
らは総称的にフコイダンと呼ばれることが多い。例え
ば、市販シグマ社製のフコイダンを13種もの分子種に
分けたという報告があり〔カーボハイドレート リサー
チ(Carbohydrate Research)、第255巻、第213〜
224頁(1994)〕、その中にはフコースを主成分
とする一群と、ウロン酸を数%含み構成糖にフコースや
マンノースを多く含む一群の分子種がある。その生物活
性についてはマクロファージ活性増強、癌転移抑制、抗
凝血等様々なものが報告されているが、フコース硫酸含
有多糖には分子種があるため活性の本体がどの分子種に
あるかを調べるためにはフコース硫酸含有多糖を分離精
製して調べる必要があった。フコース硫酸含有多糖に
は、ウロン酸を実質的に含まず構成糖の主成分がフコー
スのものと、ウロン酸を数%含み構成糖にフコースやマ
ンノースを含むもの等がある。以下、本明細書において
はウロン酸を実質的に含まない方をフコース硫酸含有多
糖−Fとし、ウロン酸を含むフコース硫酸含有多糖をフ
コース硫酸含有多糖−Uとし、両者の混合物をフコース
硫酸含有多糖混合物と記載する。
【0028】これまでに知られているフコース硫酸含有
多糖−Fやフコース硫酸含有多糖−Uを分離する方法は
分子量分画や陰イオン交換樹脂による分離であり、その
分離は不充分なため薬品や機能性食品として大量調製が
困難なものであった。
【0029】また、フコース硫酸含有多糖から着色性物
質を完全に除去することは困難なことが知られており、
市販のフコイダン等にも着色性物質が含まれている。通
常この着色性物質はポリフェノールが重合したものであ
り極めて反応性が強く様々な酵素反応を阻害したり細胞
の生育を阻害したり、また、例えば接した樹脂や樹脂性
の容器等に不可逆的に吸着することがある。そのためフ
コース硫酸含有多糖の生物活性を正確に調べるため、ま
た、容器や樹脂等の汚染を防ぐためにはフコース硫酸含
有多糖から反応性の強い着色性物質を除去する必要があ
った。
【0030】また、褐藻類あるいは褐藻類のアルコール
洗浄残渣等からフコース硫酸含有多糖混合物を抽出する
際に可溶性の酢酸バリウムや塩化バリウムや塩化カルシ
ウムを使用するとアルギン酸の混入を抑えることができ
るため、後の精製が有利であることが知られているが、
可溶性のバリウム塩は廃液の処理などが容易ではなく、
また塩化カルシウムは海藻と混合するとpHが変動する
ため非分解性のフコース硫酸含有多糖を得るにはpH調
整が必要である。このpH調整の際に海藻粉末が粘性を
帯びて凝集することがあるため、その後の抽出効率が低
下したり固液分離とりわけろ過が困難となることがあ
る。
【0031】すなわち、現在フコース硫酸含有多糖の産
業上の有用性が期待されているにも関わらず、分子種的
に分別が充分なフコース硫酸含有多糖−Fやフコース硫
酸含有多糖−Uの市販品もなく、またその効率的な製造
方法に関する報告もない。更には市販のフコース硫酸含
有多糖には上記のように反応性の強い着色性物質が含ま
れている。
【0032】フコース硫酸含有多糖には様々な活性があ
るが、前述のごとくその分別調製が困難であるためいま
だに実質上純化されたフコース硫酸含有多糖−Fやフコ
ース硫酸含有多糖−Uは得られていなかった。
【0033】しかしながら本発明により、実質上純化さ
れたフコース硫酸含有多糖−U、その簡便な抽出方法及
びフコース硫酸含有多糖−Uの製造方法が提供された。
また本発明により、通常、フコース硫酸含有多糖から除
去困難で酵素反応阻害や樹脂の汚染等をもたらす反応性
の強い着色性物質を除去したフコース硫酸含有多糖−U
が提供された。
【0034】更に本発明により、実質上純化されたフコ
ース硫酸含有多糖−F、その簡便な抽出方法及びフコー
ス硫酸含有多糖−Fの製造方法が提供された。
【0035】また本発明により、通常、フコース硫酸含
有多糖から除去困難で酵素反応阻害や樹脂の汚染等をも
たらす反応性の強い着色性物質を除去したフコース硫酸
含有多糖−Fが提供された。
【0036】本発明に使用するフコース硫酸含有多糖と
しては、褐藻植物、ナマコ等のフコース硫酸含有多糖含
有物を、例えばそのまま乾燥、粉砕して用いても良く、
またフコース硫酸含有多糖含有物よりのフコース硫酸含
有多糖抽出液、該抽出液よりの精製物を使用しても良
い。フコース硫酸含有多糖抽出液の調製方法、抽出液か
らの精製方法は公知の方法で行えばよく、特に限定はな
い。
【0037】また、本発明に使用する、フコース硫酸含
有多糖分解物とは、フコース硫酸含有多糖を酵素化学的
方法、化学的方法、物理学的方法で分解して得られるも
のであり、公知の酵素化学的方法、化学的方法、物理学
的方法を使用することができる。
【0038】また、本発明に使用するフコース硫酸含有
多糖、フコース硫酸含有多糖分解物とはその薬学的に許
容される塩を包含する。
【0039】フコース硫酸含有多糖を含有する褐藻植物
としては、例えば、山田幸雄序、瀬川宗吉著、保育社、
昭和52年発刊の原色日本海藻図鑑、第22〜52頁に
記載の褐藻植物があり、例えば、ヒバマタ(Fucus evan
escens) 、ガゴメ昆布(Kjellmaniella crassifolia)、
マ昆布(Laminaria japonica) 、ワカメ(Undaria pinn
atifida)等を使用し、フコース硫酸含有多糖を調製する
ことができる。
【0040】フコース硫酸含有多糖を含有するナマコと
しては、例えば、特開平4−91027号公報記載のナ
マコがあり、例えばマナマコ(Stichopus japonicus)、
ニセクロナマコ(Holothuria leucospilota)等を使用す
ることができ、該公報記載の方法にて、フコース硫酸含
有多糖を調製することができる。
【0041】フコース硫酸含有多糖は硫酸基を分子中に
有しており、該基は種々の塩基と反応し塩を形成する。
これらのフコース硫酸含有多糖、それらの分解物は塩に
なった状態が安定であり、通常ナトリウム及び/又はカ
リウム等の塩の形態で単離される。これらの物質の塩は
ダウエックス50W等の陽イオン交換樹脂で処理するこ
とによって遊離のフコース硫酸含有多糖、遊離のそれら
の分解物に導くことが可能である。また、これらは、更
に必要に応じ公知慣用の塩交換を行い、所望の種々の塩
に交換することができる。フコース硫酸含有多糖、それ
らの分解物の塩としては、薬学的に許容される塩が用い
られ、例えばカリウム、ナトリウム等のアルカリ金属
塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ
土類金属塩、ピリジニウム等の有機塩基との塩、及びア
ンモニウム塩等が挙げられる。
【0042】フコース硫酸含有多糖を含有する褐藻植
物、ナマコ等は乾燥後、粉砕処理を行うことにより、フ
コース硫酸含有多糖含有粉体を調製することができる。
【0043】フコース硫酸含有多糖含有粉体から熱水抽
出、希酸抽出を行うことによってフコース硫酸含有多糖
抽出液を調製することができる。
【0044】フコ−ス硫酸含有多糖含有物からの抽出温
度、時間としては0〜200℃、1〜360分の範囲か
ら目的に応じ選択すれば良いが、通常10〜150℃、
5〜240分、好適には50〜130℃、10〜180
分の範囲より選択して行うのが良い。
【0045】フコース硫酸含有多糖含有率を高めるため
の抽出物精製手段としては、塩化カルシウム、酢酸バリ
ウム等を用いたフコース硫酸含有多糖の分画方法、塩化
セチルピリジニウム等の酸性多糖凝集剤を用いたフコー
ス硫酸含有多糖の分画方法、塩類の存在下で酸性多糖凝
集剤を用いるフコース硫酸含有多糖の分画方法、ゲルろ
過、イオン交換クロマトグラフィー等があり、必要に応
じこれらを組合せて、精製を行うことができる。
【0046】フコース硫酸含有多糖の分解方法として
は、フコース硫酸含有多糖分解酵素を使用する方法、酸
分解を行う方法、超音波処理を行う方法等フコース硫酸
含有多糖分解方法として公知の方法を使用することがで
き、分解物の精製は上記方法にて行えばよい。
【0047】通常、褐藻類には複数種のフコース硫酸含
有多糖が存在するが、本発明に使用される褐藻類の種類
は特に限定されるものではなく、例えばヒバマタ由来の
もの、ガゴメ昆布由来のもの、マ昆布由来のもの、ワカ
メ由来のもの、その他すべての褐藻類由来のものを使用
することができる。
【0048】フコース硫酸含有多糖の製造にはまず、褐
藻類の水系溶媒による抽出液を得る。
【0049】また、抽出に供する海藻は生海藻でも良い
が、抽出液を得る前に褐藻を乾燥したり、乾燥粉末にし
たり、60〜100%のアルコールやアセトン等で洗浄
したり、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グルタ
ルアルデヒド、アンモニア等を含む水溶液に浸しておけ
ばフコース硫酸含有多糖への着色性物質の混入が大幅に
減少するため有利である。
【0050】また、褐藻類あるいは褐藻類のアルコール
洗浄残渣等からフコース硫酸含有多糖を抽出する際に可
溶性の酢酸バリウム、塩化バリウム、又は塩化カルシウ
ムを使用するとアルギン酸の混入を抑えることができる
ため後の精製が有利であるが上述した理由により抽出の
際には、1mM〜1M程度の酢酸カルシウム溶液で50
〜130℃で抽出するのが好ましい。
【0051】海藻が厚手で粉末(粒子)が大きい場合、
最初から0.2M以上の酢酸カルシウムを用いると抽出
効率が悪くなることがあるので、まず水で抽出したもの
に、酢酸カルシウムを加えて、生じるアルギン酸の沈殿
を除去すれば良い。
【0052】しかしながらフコース硫酸含有多糖をアル
ギン酸と同時に抽出したい場合や、抽出時ある程度分解
したものを得たい場合等では溶媒及び抽出条件は特に限
定されるものではなく、水あるいは、食塩、塩化マグネ
シウム等の様々な濃度の中性塩類水溶液、クエン酸、リ
ン酸、塩酸等様々な濃度の酸性水溶液、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム等の様々な濃度のアルカリ性水溶液
が使用でき、緩衝剤や防腐剤を加えても良い。抽出液の
pHや抽出温度、抽出時間なども特に限定されないが、
一般にフコース硫酸含有多糖は酸やアルカリに対して弱
いため、酸性溶液やアルカリ性溶液を使用する場合低分
子化が進行し易い。加熱温度、時間、pH等を調整する
ことにより、任意の分解物を調製することができ、例え
ばゲルろ過処理、分子量分画膜処理等により、分解物の
平均分子量、分子量分布等を調整することができる。
【0053】すなわち本発明のフコース硫酸含有多糖−
U及びフコース硫酸含有多糖−Fの分子量及び糖組成は
フコース硫酸含有多糖の原料の収穫期、該原料の乾燥方
法、該原料の保存方法により異なり、またフコース硫酸
含有多糖の抽出時の加熱条件、pH条件等により異な
る。例えば酸によりフコース硫酸含有多糖は加水分解さ
れ、アルカリ条件下ではウロン酸のβ−脱離により、低
分子化が進行する。従って本明細書に記載したフコース
硫酸含有多糖−U、フコース硫酸含有多糖−Fの分子
量、分子量分布はその1例にすぎず、フコース硫酸含有
多糖の処理条件により、その分子量、分子量分布は容易
に変化させ得る。例えば、弱アルカリ性で100℃、1
時間加熱し、脱塩に際し、ポアサイズ300の分子ふる
い膜を使用すれば、分子量分布1000から1万程度の
フコース硫酸含有多糖−U、フコース硫酸含有多糖−F
が調製でき、使用する条件によって任意の分子量、分子
量分布の本発明のフコース硫酸含有多糖−U及びフコー
ス硫酸含有多糖−Fを調製できる。
【0054】前記の褐藻類の抽出液からアルギン酸や中
性糖等を除くためには、例えば0.2〜0.6Mの濃度
の食塩などの塩類の存在下、これ以上沈殿が生じなくな
るまで塩化セチルピリジニウム等の酸性多糖凝集剤を加
え、沈殿を集めれば良い。
【0055】必要に応じてこの沈殿を0.2〜0.6M
の濃度の食塩などの塩類溶液で洗浄後、沈殿中の塩化セ
チルピリジニウムを食塩飽和アルコールで洗い落とし、
フコース硫酸含有多糖混合物を得る。こうして得られた
フコース硫酸含有多糖混合物から色素を除くために、こ
の沈殿を溶解後陰イオン交換樹脂や多糖性の樹脂で処理
したり限外ろ過等を行ってもよい。また脱塩後凍結乾燥
すれば乾燥標品を得ることもできる。
【0056】本発明者らは0.6〜3Mの1種類又は2
種類以上の塩類の存在下で本発明のフコース硫酸含有多
糖−Fと本発明のフコース硫酸含有多糖−Uが酸性多糖
凝集剤に対して全く異なる挙動を示すことを見出した。
【0057】例えば本発明の方法を用いて、フコース硫
酸含有多糖混合物の水溶液から本発明のフコース硫酸含
有多糖−Uを分離することができる。
【0058】まずフコース硫酸含有多糖混合物の水溶液
に1種又は2種以上の塩類を添加しその総濃度を0.6
〜2Mとする。添加する塩類は例えば塩化ナトリウム、
塩化カルシウム等で特に限定されるものではない。
【0059】通常本発明のフコース硫酸含有多糖−Fと
本発明のフコース硫酸含有多糖−Uを分離する場合1.
5M程度の塩濃度で目的は達成できる(後記する図1の
説明参照)。 例えば上記塩類の塩濃度を1.5Mに調
整した後塩化セチルピリジニウム等の酸性多糖凝集剤を
これ以上沈殿が生じなくなるまで添加するとフコース硫
酸含有多糖−Fが沈殿を形成するので、沈殿を除去する
と本発明のフコース硫酸含有多糖−Uの溶液が得られ
る。必要に応じてこの溶液を濃縮後、4倍量のエタノー
ルなどで溶液中のフコース硫酸含有多糖−Uを沈殿さ
せ、沈殿中の塩化セチルピリジニウムを食塩飽和アルコ
ールで洗い落とし、本発明のフコース硫酸含有多糖−U
を得る。こうして得られたフコース硫酸含有多糖−Uか
ら色素を除くために、この沈殿を溶解後限外ろ過等を行
っても良い。また脱塩後凍結乾燥すれば乾燥標品を得る
こともできる。また、工程中防腐剤などを添加してもよ
い。
【0060】次に本発明のフコース硫酸含有多糖−Fの
みを効率的に製造したい場合は、塩化セチルピリジニウ
ム等で凝集させる際に、0.2〜0.6Mの塩濃度では
なく、例えば2Mの塩濃度にすれば沈殿は本発明のフコ
ース硫酸含有多糖−Fのみを含む。
【0061】本発明者らは、フコース硫酸含有多糖を陰
イオン交換樹脂で精製する際に2価の陽イオンが共存す
ると単位樹脂量当りに吸着するフコース硫酸含有多糖量
が増加し、フコース硫酸含有多糖の分離が良くなること
も見出した。すなわち、本発明の方法を用いて本発明の
フコース硫酸含有多糖−Uを製造する際には、まずフコ
ース硫酸含有多糖混合物に2価の陽イオン源となる薬品
を好ましくは1mM以上添加する。次に、陰イオン交換
樹脂を2価の陽イオンを好ましくは1mM以上含む液で
平衡化し、上記フコース硫酸含有多糖混合物を吸着させ
る。この陰イオン交換樹脂を平衡化した液で充分洗浄
後、例えば塩化ナトリウムのグラジエントによりフコー
ス硫酸含有多糖を溶出させる。本方法を用いる場合、添
加する2価陽イオンの濃度は1mM以上ならばよいが、
本発明のフコース硫酸含有多糖−Uをカラムに吸着させ
る目的の時は0.5M未満が望ましい。また本方法に用
いる2価の陽イオン源となる薬品はカルシウム塩やバリ
ウム塩が特にその効果が優れているが、特に限定される
ものではなく、硫酸マグネシウム、塩化マンガン等も使
用することができる。
【0062】また、褐藻類から通常の方法でフコース硫
酸含有多糖混合物を製造すると上述のように反応性の強
い着色性物質が混入し、それらが接する樹脂や樹脂性容
器を汚染したり、酵素反応や細胞生育を阻害したりす
る。この着色性物質は多糖性の物質あるいは陰イオン交
換基を有する物質に結合あるいは吸着させれば容易に除
去できることを見出した。すなわち、フコース硫酸含有
多糖を含む溶液に例えば、セルロファイン、GCL−2
000(生化学工業社製)や、セファクリルS−50
0、セファデッスクG−200、セファロースCL−2
B(共にファルマシア社製)等の多糖性の樹脂あるい
は、DEAE−セルロファインA−800(生化学工業
社製)、DEAE−セファロースFF、DEAE−セフ
ァデックスA−50、QAE−セファデックスA−5
0、DEAE−セファセル(共にファルマシア社製)、
TSK−ゲルDEAE−トヨパール650、TSK−ゲ
ルDEAEトヨパール550(トーソー社製)、アンバ
ーライト系の陰イオン交換樹脂(オルガノ社販売)キト
パール系の陰イオン交換樹脂(富士紡績社製)等の陰イ
オン交換基を有する物質を添加かくはん後除去したり、
あるいはこれらを充てんしたカラムにフコース硫酸含有
多糖を含む溶液を通過させればこの反応性の強い着色性
物質は容易に除去できる。但し、陰イオン交換樹脂の場
合フコース硫酸含有多糖も結合し得るので、着色性物質
を吸着させる時に塩濃度を2M程度にしておくことが好
ましい。
【0063】本発明のフコース硫酸含有多糖−Uは例え
ば実施例6に記載のように調製することができる。以
下、このフコース硫酸含有多糖−Uの理化学的性質を示
すが、本発明のフコース硫酸含有多糖−Uはこの例に限
定されるものではない。
【0064】本発明のフコース硫酸含有多糖−U、及び
実施例8で得た本発明のフコース硫酸含有多糖−Fの各
塩化ナトリウム濃度における、過剰量の塩化セチルピリ
ジニウム存在下における沈殿形成性を図1に示す。
【0065】図1の縦軸は沈殿形成率(%)を示し、横
軸は塩化ナトリウム濃度(M)を示す。図中、実線及び
白丸は本発明のフコース硫酸含有多糖−Uの各塩化ナト
リウム濃度での沈殿形成率を示し、図中、点線及び白三
角は本発明のフコース硫酸含有多糖−Fの各塩化ナトリ
ウム濃度(M)での沈殿形成率を示す。
【0066】沈殿形成率の測定は、溶液温度37℃に
て、以下のように行った。本発明のフコース硫酸含有多
糖−U及びフコース硫酸含有多糖−Fをそれぞれ2%の
濃度で水及び4Mの塩化ナトリウムに溶解し、これらを
様々な割合で混合することにより様々な濃度の塩化ナト
リウムに溶解したフコース硫酸含有多糖−U及びフコー
ス硫酸含有多糖−F溶液を各125μlずつ調製した。
次に、塩化セチルピリジニウムを2.5%の濃度で水及
び4Mの塩化ナトリウムに溶解し、それらを混合するこ
とにより様々な濃度の塩化ナトリウムに溶解した1.2
5%の塩化セチルピリジニウム溶液を調製した。
【0067】水に溶解している2%の本発明のフコース
硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−Fを1.
25%の塩化セチルピリジニウムで完全に沈殿させるに
は容量で3.2倍必要であった。そこで、各濃度の塩化
ナトリウムに溶解した2%のフコース硫酸含有多糖−U
及びフコース硫酸含有多糖−Fの各125μlに対して
各々の濃度の塩化ナトリウムに溶解した塩化セチルピリ
ジニウム溶液を400μl添加後、充分かくはんし、3
0分放置後、遠心分離し上清中の糖含量をフェノール−
硫酸法〔アナリティカル ケミストリー(Analytical C
hemistry) 、第28巻、第350頁(1956)〕によ
り測定し、各塩化ナトリウム濃度下での各フコース硫酸
含有多糖の沈殿形成率を算出した。
【0068】得られた本発明のフコース硫酸含有多糖−
Uの分子量をセファクリルS−500を用いたゲルろ過
法により求めたところ、約19万を中心とした分子量分
布を示した(図2参照)。なお、図2において、縦軸は
フェノール−硫酸法により測定した試料中の糖含量を4
80nmの吸光度で示し、横軸はフラクション ナンバ
ーを示す。
【0069】なお、ゲルろ過の条件を下記に示す。 カラムサイズ:3.08×162.5cm 溶媒:0.2Mの塩化ナトリウムと10%のエタノール
を含む10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.
0) 流速:1.5ml/分 サンプル濃度:0.25% サンプル液量:20ml 分子量標準物質:Shodex STANDARD P-82(昭和電工社
製)
【0070】次に、得られた本発明のフコース硫酸含有
多糖−Uの成分を分析した。まず、ジャーナル オブ
バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biologica
l Chemistry)、第175巻、第595頁(1948)の
記載に従いフコース量を定量した。
【0071】次に、得られたフコース硫酸含有多糖−U
の乾燥標品を1規定の塩酸に0.5%の濃度で溶解し、
110℃で2時間処理し、構成単糖に加水分解した。次
に、グライコタッグ(GlycoTAG) 及びグライコタッグ
リージェント キット(GlycoTAG Reagent Kit) (共に
宝酒造社製)を用いて加水分解して得られた単糖の還元
性末端をピリジル−(2)−アミノ化(PA化)し、H
PLCにより構成糖の比率を調べた。なお、HPLCの
条件は下記によった。 装置:L−6200型(日立製作所製) カラム:パルパックタイプA(4.6mm×150m
m:宝酒造社製) 溶離液:700mMホウ酸緩衝液(pH9.0):アセ
トニトリル=9:1 検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて
励起波長310nm、蛍光波長380nmで検出 流速:0.3ml/分 カラム温度:65℃
【0072】次に、アナリティカル バイオケミストリ
ー(Analytical Biochemistry)、第4巻、第330頁
(1962)の記載に従いウロン酸量を定量した。
【0073】次に、バイオケミカル ジャーナル(Bioc
hemical Journal)、第84巻、第106頁(1962)
の記載に従い硫酸含量を定量した。
【0074】以上の結果、得られたフコース硫酸含有多
糖−Uの構成糖はフコース、マンノース、ガラクトー
ス、グルコース、ラムノース、キシロース、ウロン酸で
あった。その他の中性糖は実質的に含有されていなかっ
た。また、主要成分のフコース:マンノース:ガラクト
ース:ウロン酸:硫酸基はモル比で約10:7:4:
5:20であった。
【0075】次に、フコース硫酸含有多糖−Uのカルシ
ウム塩のIRスペクトルをフーリェ変換赤外分光光度計
JIR−DIAMOND20(日本電子社製)により
測定したところ図3に示すスペクトルが得られた。な
お、図3において縦軸は透過率(%)、横軸は波数(c
−1)を示す。
【0076】次に、本発明のフコース硫酸含有多糖−U
のカルシウム塩のNMRスペクトルを500MHzの核
磁気共鳴装置JNM−α500型核磁気共鳴装置(日本
電子社製)により測定したところ図4に示すスペクトル
が得られた。
【0077】図4中、縦軸はシグナルの強度、横軸は化
学シフト値(ppm)を示す。なお、H−NMRで
の化学シフト値はHODの化学シフト値を4.65pp
mとして表した。 H−NMR(DO) δ5.27(マンノースの1位のH)、5.07(フコ
ースの1位のH)、4.49(フコースの3位のH)、
4.37(グルクロン酸の1位のH)、4.04(フコ
ースの4位のH)、3.82(フコースの2位のH)、
3.54(グルクロン酸の3位のH)、3.28(グル
クロン酸の2位のH)、1.09(フコースの5位のC
のH)
【0078】この本発明のフコース硫酸含有多糖−Uの
凍結乾燥物の比旋光度を高速・高感度旋光計SEPA−
300(堀場製作所製)により測定したところ、−5
3.6度であった。
【0079】本発明者らは、以下に述べるごとく得られ
た本発明のフコース硫酸含有多糖−Uの構造を決定し
た。
【0080】フコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力
を有する分解酵素によるフコース硫酸含有多糖−Uの分
解及び分解物の精製精製したフコース硫酸含有多糖−U
に下記のエンド型フコイダン分解酵素を作用させ分解物
の精製を行った。
【0081】すなわち、1%のフコース硫酸含有多糖−
U溶液16mlと、50mMのリン酸緩衝液(pH8.
0)12mlと4Mの塩化ナトリウム4mlと32mU
/mlのエンド型フコイダン分解酵素溶液8mlを混合
し、25℃で48時間反応させた。反応の進行と共に2
30nmの吸光度が増加することを確認し、本酵素によ
りフコース硫酸含有多糖−Uが分解されていることが判
明した。この反応液をマイクロアシライザーG3(旭化
成社製)により脱塩後、DEAE−セファロースFFに
より3つの画分(a)、(b)、及び(c)に分離精製
した。
【0082】なお、上記のエンド型フコイダン分解酵素
は以下の方法により調製される。
【0083】該エンド型フコイダン分解酵素の生産に用
いる菌株としては、該エンド型フコイダン分解酵素生産
能を有する菌株であればいかなる菌株でもよいが、具体
例としては例えば、フラボバクテリウム(Flavobacteri
um)sp. SA−0082株(FERM BP−54
02)が挙げられる。
【0084】本菌株は青森県の海水中より本発明者らが
新たに検索して得た菌株で、その菌学的性質は次の通り
である。 1.フラボバクテリウム sp. SA−0082株 a.形態的性質 (1)本菌は短かん菌である。 幅 0.8〜1.0μm 長さ 1.0〜1.2μm (2)胞子の有無 なし (3)グラム染色性 陰性 b.生理的性質 (1)生育の温度範囲 37℃以下で生育できる。好適な生育温度は15〜28
℃である。 (2)酸素に対する態度 好気性 (3)カタラーゼ 陽性 (4)オキシダーゼ 陽性 (5)ウレアーゼ 弱陽性 (6)酸の生成 D−グルコース 陽性 ラクトース 陽性 マルトース 陽性 D−マンニトール 陽性 スクロース 陰性 トレハロース 陰性 (7)加水分解 デンプン 陰性 ゼラチン 陽性 カゼイン 陰性 エスクリン 陽性 (8)硝酸塩の還元 陰性 (9)インドールの生成 陰性 (10)硫化水素の生成 陰性 (11)ミルクの凝固 陰性 (12)ナトリウムの要求性 陽性 (13)塩類要求性 0%食塩培地での生育 陰性 1%食塩培地での生育 陰性 海水培地での生育 陽性 (14)キノン系 メナキノン6 (15)菌体内DNAのGC含量 32% (16)OF−テスト O (17)集落の色調 黄色系 (18)運動性 なし (19)滑走性 なし
【0085】本菌株は、バージーズ マニュアル オブ
システィマティック バクテリオロジー(Bergey's M
anual of Systematic Bacteriology) 、第1巻(198
4)、及びバージーズ マニュアル オブ ディターミ
ネイティブ バクテリオロジー (Bergey's Manual of D
eterminative Bacteriology)、第9巻(1994)に記
載のフラボバクテリウム アクアタイル(Flavobacteri
um aquatile)、及びフラボバクテリウム メニンゴセプ
チカム(Flavobacterium meningosepticum) の類縁細菌
と考えられるが、前者とはスクロースを資化して酸を形
成しない点、カゼインを分解できない点、エスクリンを
分解できる点、ゼラチンを液化できる点、ウレアーゼが
陽性である点が異なり、後者とはカゼインが分解できな
い点、37℃での生育が遅い点が異なる。そこで本菌株
をフラボバクテリウムに属する細菌と同定し、フラボバ
クテリウム sp. SA−0082と命名した。
【0086】なお、上記菌株は Flavobacterium sp.
SA−0082と表示され、通商産業省工業技術院生
命工学工業技術研究所[日本国茨城県つくば市東1丁目
1番3号(郵便番号305)]に平成7年3月29日よ
りFERM P−14872として寄託され、前記通商
産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERMB
P−5402(国際寄託への移管請求日: 平成8年2
月15日)として寄託されている。
【0087】本菌株の培地に加える栄養源は使用する菌
株が利用し、エンド型フコイダン分解酵素を生産するも
のであればよく、炭素源としては例えばフコイダン、海
藻粉末、アルギン酸、フコース、グルコース、マンニト
ール、グリセロール、サッカロース、マルトース、ラク
トース、デンプン等が利用でき、窒素源としては、酵母
エキス、ペプトン、カザミノ酸、コーンスティープリカ
ー、肉エキス、脱脂大豆、硫安、塩化アンモニウム等が
適当である。その他にナトリウム塩、リン酸塩、カリウ
ム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩等の無機質、及び金属塩
類を加えてもよい。
【0088】本エンド型フコイダン分解酵素の生産菌を
培養するに当り、生産量は培養条件により変動するが、
一般に培養温度は、15℃〜30℃、培地のpHは5〜
9がよく、5〜72時間の通気かくはん培養で本エンド
型フコイダン分解酵素の生産量は最高に達する。培養条
件は使用する菌株、培地組成等に応じ、本エンド型フコ
イダン分解酵素の生産量が最大になるように設定するの
は当然のことである。
【0089】本エンド型フコイダン分解酵素は菌体中に
も培養物上清中にも存在する。
【0090】上記のフラボバクテリウム sp. SA
−0082株を適当な培地で培養し、その菌体を集め、
通常用いられる細胞破壊手段、例えば、超音波処理など
で菌体を破砕すると無細胞抽出液が得られる。
【0091】次いで、この抽出液から通常用いられる精
製手段により精製酵素標品を得ることができる。例え
ば、塩析、イオン交換カラムクロマト、疎水結合カラム
クロマト、ゲルろ過等により精製を行い、他のフコイダ
ン分解酵素を含まない純化された本エンド型フコイダン
分解酵素を得ることができる。
【0092】また、上述の培養液から菌体を除去した培
養液上清中にも本酵素(菌体外酵素)が大量に存在する
ので、菌体内酵素と同様の精製手段により精製すること
ができる。
【0093】エンド型フコイダン分解酵素の精製例を示
す。
【0094】フラボバクテリウム sp. SA−00
82(FERM BP−5402)をグルコース0.2
5%、ペプトン1.0%、酵母エキス0.05%を含む
人工海水(ジャマリンラボラトリー製)pH7.5から
なる培地600mlを分注して殺菌した(120℃、2
0分)2リットルの三角フラスコに接種し、24℃で2
4時間培養して種培養液とした。グルコース0.25
%、ペプトン1.0%、酵母エキス0.05%、及び消
泡剤(信越化学工業製KM70)0.01%を含む人工
海水(ジャマリンラボラトリー製)pH7.5からなる
培地20リットルを30リットル容のジャーファーメン
ターに入れ120℃で20分殺菌した。冷却後、上記の
種培養液600mlを接種し、24℃で24時間、毎分
10リットルの通気量と毎分125回転のかくはん速度
の条件で培養した。培養終了後、培養液を遠心分離して
菌体を得た。
【0095】この菌体を、200mMの食塩を含む20
mMの酢酸−リン酸緩衝液(pH7.5)に懸濁し、超
音波破砕後、遠心分離して菌体抽出液を得た。この菌体
抽出液中の本エンド型フコイダン分解酵素の活性を測定
したところ、培地1ml中に5mUの活性が検出され
た。
【0096】本抽出液に、終濃度が90%飽和となるよ
うに硫酸アンモニウムを加え、かくはん溶解後遠心分離
し、沈殿を上記菌体抽出液と同じ緩衝液に懸濁して、5
0mMの食塩を含む20mMの酢酸−リン酸緩衝液(p
H7.5)で充分透析した。透析により生じた沈殿を遠
心分離により除去後、あらかじめ50mMの食塩を含む
20mMの酢酸−リン酸緩衝液(pH7.5)で平衡化
したDEAE−セファロースFFのカラムに吸着させ、
吸着物を同緩衝液にて充分洗浄後、50mMから600
mMの食塩のグラジエントにより溶出させ、活性画分を
集めた。次にこの活性画分に終濃度が4Mとなるように
食塩を加え、あらかじめ4Mの食塩を含む20mMのリ
ン酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したフェニルセファ
ロースCL−4Bのカラムに吸着させ、吸着物を同緩衝
液で充分洗浄後、4Mから1Mの食塩のグラジエントに
より溶出させ、活性画分を集めた。次にこの活性画分を
限外ろ過器で濃縮後、あらかじめ50mM食塩を含む1
0mMリン酸緩衝液で平衡化したセファクリル S−3
00でゲルろ過を行い活性画分を集めた。この酵素の分
子量をセファクリル S−300の保持時間から求めた
ところ約46万であった。次にこの活性画分を250m
Mの食塩を含む10mMのリン酸緩衝液(pH7)で透
析した。この酵素液を、あらかじめ250mMの食塩を
含む10mMのリン酸緩衝液(pH7)で平衡化したモ
ノ(Mono)Q HR5/5のカラムに吸着させ、吸着物
を同緩衝液で充分洗浄後、250mMから450mMの
食塩のグラジエントにより溶出させ、活性画分を集め、
精製酵素を得た。以上の精製工程を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】本酵素の活性測定は下記の様に行う。
【0099】2.5%のガゴメ昆布由来のフコイダン溶
液50μlと、10μlの本酵素と、60μlの667
mM塩化ナトリウムを含む83mMリン酸緩衝液pH
7.5を混合し、37℃、3時間反応させた後、反応液
105μlと水2mlを混合かくはんし、その230n
mにおける吸光度(AT)を測定する。対照として、本
酵素の代りに、本酵素を溶解している上記緩衝液のみを
用いて同様の条件により反応させたもの及びフコイダン
溶液の代りに水のみを用いて反応を行ったものを用意
し、それぞれ同様に吸光度を測定する(AB1及びAB
2)。
【0100】1単位の酵素は、上記反応系において1分
間に1μmolのマンノースとウロン酸の間のグリコシ
ド結合を脱離的に切断する酵素量とする。切断された結
合の定量は、脱離反応の際に生じた不飽和ウロン酸のミ
リモル分子吸光係数を5.5として計算し行う。なお、
酵素の活性は下記式により求める。 (AT−AB1−AB2)×2.105×120/5.
5×105×0.01×180=U/ml 2.105:吸光度を測定するサンプルの液量(ml) 120:酵素反応液の液量(μl) 5.5:不飽和ウロン酸の230nmにおけるミリモル
分子吸光係数(/mM) 105:希釈に用いる反応液の液量(μl) 0.01:酵素液量(ml) 180:反応時間(分)
【0101】タンパク質の定量は、酵素液の280nm
の吸光度を測定することにより行う。その際1mg/m
lのタンパク質溶液の吸光度を1.0として計算する。
【0102】なお基質のガゴメ昆布由来のフコイダンは
次の様に調製した。
【0103】乾燥ガゴメ昆布を自由粉砕機M−2型(奈
良機械製作所製)により粉砕し、10倍量の85%メタ
ノール中で70℃、2時間処理後、ろ過し、残渣を10
倍量のメタノール中で70℃、2時間処理し、ろ過す
る。残渣に20倍量の水を加え、100℃、3時間処理
しろ過により抽出液を得る。抽出液の塩濃度を400m
Mの塩化ナトリウム溶液と同じにした後、セチルピリジ
ニウムクロリドをこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加
し、遠心分離する。その沈殿を、エタノールで充分洗浄
し、セチルピリジニウムクロリドが完全に除去できた
ら、限外ろ過器(ろ過膜の排除分子量10万)(アミコ
ン社製)により脱塩及び低分子除去を行い、この際生じ
た沈殿を遠心分離により除去する。この上清を凍結乾燥
して精製ガゴメ昆布フコイダンを得る。
【0104】酵素反応生成物の構造解析上記のエンド型
フコイダン分解酵素は、フコース硫酸含有多糖−U中に
存在するD−マンノースとD−グルクロン酸の間のα1
→4結合を脱離的に分解する酵素であり、得られたフコ
ース硫酸含有多糖−Uに作用させると下記式(I)、
(II)、及び(III)の構造を有するオリゴ糖が生成し
た。
【化7】
【化8】
【化9】
【0105】以下、詳細に説明する。
【0106】上記のDEAE−セファロースFFで分離
精製した3つの画分(a)、(b)、及び(c)をそれ
ぞれ一部だけグライコタッグ及びグライコタッグ リー
ジェント キットを用いて還元性末端を、ピリジル−
(2)−アミノ化(PA化)し、各PA化糖(PA−
a)、(PA−b)、及び(PA−c)を得た。(PA
−a)、(PA−b)、及び(PA−c)をHPLCに
より分析した。
【0107】なお、HPLCの条件は下記によった。
【0108】(ア)分子量分画カラムを用いたHPLC
分析 装置:L−6200型(日立製作所製) カラム:SHODEX SB−803(4.6×250
mm)(昭和電工社製) 溶離液:0.2M塩化ナトリウム:ジメチルスルホキシ
ド=9:1 検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて
励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出 流速:1ml/分 カラム温度:50℃
【0109】(イ)逆相カラムを用いたHPLC分析 装置:L−6200型(日立製作所製) カラム:L−カラム(4.6×250mm)〔(財)化
学薬品検査協会〕 溶離液:50mM酢酸−トリエチルアミン(pH5.
5) 検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて
励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出 流速:1ml/分 カラム温度:40℃
【0110】図5、6、及び7には各々ピリジル−
(2)−アミノ化糖化合物(PA−a)、(PA−
b)、及び(PA−c)のHPLCの各溶出パターンを
示し、図において縦軸は相対蛍光強度、横軸は保持時間
(分)を示す。
【0111】下記に式(I)、式(II)、及び式(II
I)で表される化合物、すなわち(a)、(b)、及び
(c)の物性を示す。
【0112】図8に(a)の、図9に(b)の、図10
に(c)のマスのスペクトルを示し、図11に(a)
の、図12に(b)の、図13に(c)のマスマスのス
ペクトルを示し、各図において縦軸は相対強度(%)、
横軸はm/z値を示す。
【0113】更に図14は(a)の、図15は(b)
の、図16は(c)のH−NHRスペクトルを示
し、各図において縦軸はシグナルの強度、横軸は化学シ
フト値(ppm)を示す。
【0114】なお、H−NHRでの化学シフト値は
HODの化学シフト値を4.65ppmとして表した。
【0115】(a)の物性 分子量 564 MS m/z 563〔M−H MS/MS m/z 97〔HSO、157
〔不飽和D−グルクロン酸−HO−H
175〔不飽和D−グルクロン酸−H、225
〔L−フコース硫酸−HO−H、243
〔L−フコース硫酸−H、319〔不飽和D
−グルクロン酸とD−マンノースが結合したもの−H
O−H、405〔M−不飽和D−グルク
ロン酸−H 、483〔M−SO
H−NMR(DO) δ5.78(1H,d,J=3.7Hz,4″−H)、
5.26(1H,d,J=1.2Hz,1−H)、5.
12(1H,d,J=4.0Hz,1′−H)、5.0
3(1H,d,J=6.1Hz,1″−H)、4.47
(1H,d−d,J=3.4,10.4Hz,3′−
H)、4.21(1H,br−s,2−H)、4.12
(1H,m,5′−H)、4.10(1H,d−d,J
=3.7,5.8Hz,3″−H)、4.03(1H,
d,J=3.4Hz,4′−H)、3.86(1H,
m,3−H)、3.83(1H,d−d,J=4.0,
10.4Hz,2′−H)、3.72(1H,m,4−
H)、3.72(1H,m,5−H)、3.70(2
H,m,5−CHのH)、3.65(1H,d
−d,J=5.8,6.1Hz,2″−H)、1.08
(3H,d,J=6.7Hz,5′−CH
) 糖組成 L−フコース:不飽和D−グルクロン酸:D−
マンノース=1:1:1(各1分子) 硫酸塩 1分子(L−フコースの3位) なお、H−NMRにおけるピークの帰属の番号は下
記式(IV)の通りである。
【化10】
【0116】(b)の物性 分子量 724 MS m/z 723〔M−H、361〔M
−2H2− MS/MS m/z 97〔HSO、175
〔不飽和D−グルクロン酸−H、243〔L
−フコース硫酸−H、321〔M−SO
−2H2−、405〔M−不飽和D−グルクロン酸
−2SO−H、417(M−L−フコース
−2SO−H H−NMR(DO) δ5.66(1H,d,J=3.4Hz,4″−H)、
5.27(1H,d,J=7.3Hz,1″−H)、
5.22(1H,d,J=1.8Hz,′−H)、5.
21(1H,d,J=3.7Hz,1′−H)、4.5
0(1H,d,J=3.1Hz,4′−H)、4.32
(1H,q,J=6.7Hz,5′−H)、4.27
(1H,d−d,J=3.7,10.4Hz,2′−
H)、4.21(1H,d−d,J=3.4,6.7H
z,3″−H)、4.18(1H,d−d,J=1.
8,11.0Hz,5−CHのH)、4.15(1H,
br−s,2−H)、4.10(1H,d−d,J=
5.8,11.0Hz、5−CHのH)、3.99(1
H,d−d,J=3.1,10.4Hz,3′−H)、
3.90(1H,m,5−H)、3.82(1H,m,
3−H)、3.82(1H,m,4−H)3.54(1
H,br−t,J=7.3Hz,2″−H)、1.11
(3H,d,J=6.7Hz,5′−CH
) 糖組成 L−フコース:不飽和D−グルクロン酸:D−
マンノース=1:1:1(各1分子) 硫酸塩 3分子(L−フコースの2位と4位及びD−マ
ンノースの6位) なお、H−NMRにおけるピークの帰属の番号は下
記式(V)の通りである。
【化11】
【0117】(c)の物性 分子量 1128 MS m/z 1127〔M−H MS/MS m/z 97〔HSO、175
〔不飽和D−グルクロン酸−H、225〔L
−フコース硫酸−HO−H、243〔L
−フコース硫酸−H、371〔M−不飽和D
−グルクロン酸−L−フコース−SO−2H
2−、405〔硫酸化L−フコースとD−マンノースが
結合したもの−H、721〔M−D−マンノ
ース−L−フコース−SO−HO−H H−NMR(DO) δ5.69(1H,d,J=3.7Hz,(4)″−
H)、5.34(1H,s,(1)−H)、5.16
(1H,s,1−H)、5.10(1H,d,J=4.
0Hz,(1)′−H)、5.50(1H,d,J=
3.7Hz,1′−H)、4.93(1H,d,J=
6.4Hz,(1)″−H)、4.50(1H,d−
d,J=3.4,10.7Hz,3′−H)、4.47
(1H,d−d,J=3.4,10.4Hz,(3)′
−H)、4.39(1H,d,J=7.9Hz,1″−
H)、4.33(1H,br−s,(2)−H)、4.
14(1H,m,2−H)、4.12(1H,m,
(3)″−H)、4.12(1H,m,5′−H)、
4.12(1H,m,(5)′−H)、4.04(1
H,m,4′−H)、4.03(1H,m,(4)′−
H),3.85(1H,m,2′−H)、3.85(1
H,m,(2)′−H)、3.82(1H,m,3−
H)、3.82(1H,m,(3)−H)、3.73
(1H,m,4−H)、3.73(1H,m,5−
H)、3.73(1H,m,(4)−H)、3.70
(2H,m,5−CHのH)、3.70(2
H,m,(5)−CHのH)、3.67(1
H,m,5″−H)、3.62(1H,m,4″−
H)、3.62(1H,m,(2)″−H)、3.62
(1H,m,(5)−H)、3.51(1H,t,J=
8.9Hz,3″−H)、3.28(1H,t,J=
7.9Hz,2″−H)、1.09(3H,d,J=
6.7Hz,(5)′−CHのH)、1.07
(1H,d,J=6.7Hz,5′−CH
) 糖組成 L−フコース:不飽和D−グルクロン酸:D−
グルクロン酸:D−マンノース=2:1:1:2(L−
フコースとD−マンノース各2分子と不飽和D−グルク
ロン酸とD−グルクロン酸各1分子) 硫酸塩 2分子(各L−フコースの3位) なお、H−NMRにおけるピークの帰属の番号は下
記式(VI)の通りである。
【化12】
【0118】得られたフコース硫酸含有多糖−Uに上記
エンド型フコイダン分解酵素を作用させると反応の進行
と共に脱離反応が起こって230nmの吸光度が増加す
るが、脱離反応の生成物となる不飽和ヘキスロン酸基が
主要反応生成物のすべてにあることから得られたフコー
ス硫酸含有多糖−Uの分子内にヘキスロン酸とマンノー
スが交互に結合した糖鎖の存在が示唆された。得られた
フコース硫酸含有多糖−Uの構成糖の多くはフコースで
あるためフコース硫酸含有多糖−Uは一般の多糖より酸
に分解され易い。一方、ヘキスロン酸やマンノースの結
合は比較的酸に強いことが知られている。本発明者らは
ガゴメ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物の分子内に存
在するヘキスロン酸とマンノースが交互に結合している
糖鎖中のヘキスロン酸の種類を明らかにするためにカー
ボハイドレート リサーチ、第125巻、第283〜2
90頁(1984)の方法を参考にして、まずフコース
硫酸含有多糖混合物を0.3Mのシュウ酸に溶解し10
0℃、3時間処理したものを分子量分画し、分子量が3
000以上の画分を集め、更に陰イオン交換樹脂により
吸着分を集めた。この物質を凍結乾燥後4Nの塩酸で酸
加水分解し、pH8に調整後、PA化し、HPLCによ
りウロン酸の分析を行った。なおHPLCの条件は下記
によった。
【0119】装置:L−6200型(日立製作所製) カラム:パルパックタイプN(4.6mm×250m
m)(宝酒造社製) 溶離液:200mM酢酸−トリエチルアミン緩衝液(p
H7.3):アセトニトリル=25:75 検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて
励起波長320nm、蛍光波長400nmで検出 流速:0.8ml/分 カラム温度:40℃
【0120】なお、PA化ヘキスロン酸の標準物質はグ
ルクロン酸はシグマ社製、ガラクツロン酸は和光純薬社
製、イズロン酸はシグマ社製の4−メチルウンベリフェ
リルα−L−イズロニドを加水分解したもの、マンヌロ
ン酸及びグルロン酸はアクタ・ケミカ・スカンヂナヴィ
カ(Acta Chemica Scandinavica)、第15巻、第139
7〜1398頁(1961)記載の方法に従い、和光純
薬社製のアルギン酸を加水分解後陰イオン交換樹脂で分
離したものをPA化することにより得た。
【0121】この結果、上記フコース硫酸含有多糖混合
物の糖鎖中に含まれるヘキスロン酸はグルクロン酸のみ
であることが判明した。
【0122】更に上記糖鎖の加水分解物中のグルクロン
酸を陰イオン交換樹脂によりD−マンノースと分離し凍
結乾燥後その比旋光度を測定したところ右旋性でありグ
ルクロン酸はD−グルクロン酸であることが判明した。
【0123】また、ガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有
多糖混合物をあらかじめ上記のエンド型フコイダン分解
酵素で処理したものについても上記と同様にシュウ酸で
酸加水分解したが、D−グルクロン酸とD−マンノース
が交互に結合したポリマーは検出されなかった。このこ
とから、上記のエンド型フコイダン分解酵素が脱離反応
により切断するフコース硫酸含有多糖の骨格構造はD−
グルクロン酸とD−マンノースが交互に結合した構造を
持つことが判明した。
【0124】更に、D−グルクロン酸とD−マンノース
のそれぞれの結合位置とグリコシド結合のアノメリック
配置を調べるため、シュウ酸分解により得られたポリマ
ーをNMR分析した。
【0125】ポリマーのNMRの測定結果を以下に示
す。但し、H−NMRでの化学シフト値はトリエチ
ルアミンのメチル基の化学シフト値を1.13ppm
に、13C−NMRではトリエチルアミンのメチル基の
化学シフト値を9.32ppmとして表した。
【0126】H−NMR(DO) δ5.25(1H,br−s,1−H)、4.32(1
H,d,J=7.6Hz,1′−H)、4.00(1
H,br−s,2−H)、3.71(1H,m,5′−
H)、3.69(1H,m,5−CHのH)、3.68
(1H,m,3−H)、3.63(1H,m,5−CH
のH)、3.63(1H,m,4′−H)、3.57
(1H,m,4−H)、3.54(1H,m,3′−
H)、3.53(1H,m,5−H)、3.25(1
H,t,J=8.5Hz、2′−H)13C−NMR
(DO) δ175.3(5′−COOHのC)、102.5
(1′−C)、99.6(1−C)、78.5(2−
C)、77.9(4′−C)、77.0(3′−C)、
76.7(5′−C)、73.9(5−C)、73.7
(2′−C)、70.6(3−C)、67.4(4−
C)、61.0(5−CHOHのC) なお、ピークの帰属の番号は下記式(VII)の通りであ
る:
【化13】
【0127】D−グルクロン酸の1位の立体配置はその
ビシナル結合定数が7.6Hzであることからβ−D−
グルクロン酸であると決定した。
【0128】また、マンノースの1位の立体配置はその
化学シフト値から5.25ppmであることからα−D
−マンノースであると決定した。
【0129】構成糖の結合様式はH検出異種核検出
法であるHMBC法を用いて行った。
【0130】H−NMRの帰属にはDQF−COSY
法及びHOHAHA法を、13C−NMRの帰属にはH
SQC法を用いた。
【0131】HMBCスペクトルにより1−Hと4′−
Cの間及び4′−Hと1−Cの間、1′−Hと2−Cの
間及び2−Hと1′−Cの間にそれぞれクロスピークが
認められた。このことからD−グルクロン酸はβ結合で
D−マンノースの2位に、D−マンノースはα結合でD
−グルクロン酸の4位にそれぞれ結合していることが明
らかとなった。
【0132】上記の結果を考え併せると、(a)は、還
元末端残基であるD−マンノースに不飽和D−グルクロ
ン酸と、硫酸基が結合したL−フコースが結合した構造
を持つこと、(b)は硫酸基が結合した還元末端残基で
あるD−マンノースに不飽和D−グルクロン酸と、2個
の硫酸基が結合したL−フコースが結合した構造を持つ
こと、(c)は還元末端残基であるD−マンノースにD
−グルクロン酸と、硫酸基が結合したL−フコースが結
合し、そのD−グルクロン酸にD−マンノースが結合
し、更にそのD−マンノースに不飽和D−グルクロン酸
と、硫酸基が結合したL−フコースが結合した構造を持
つことが判明した。
【0133】以上、得られたフコース硫酸含有多糖−U
は、D−グルクロン酸とD−マンノースが交互に結合し
た構造を持ち、少なくとも1つ以上のD−マンノースに
L−フコースが結合している構造を有する。
【0134】また、下記一般式(VIII)で表される部分
構造を有する(但し、式中の少なくとも1つのアルコー
ル性水酸基は硫酸エステル化しており、またnは1以上
の整数を表す)。
【化14】
【0135】本発明により、本発明のフコース硫酸含有
多糖−Fと分離され、純化されたフコース硫酸含有多糖
−Uが提供される。本発明のフコース硫酸含有多糖−U
は構成糖としてウロン酸を含有し、フラボバクテリウム
sp. SA−0082(FERM BP−540
2)の生産するフコイダン分解酵素により低分子化し、
少なくとも上記式(I)、(II)、(III)で表される
化合物より選択される1種以上の化合物が生成する。そ
の分子量、分子量分布、糖組成は本発明のフコース硫酸
含有多糖−Uをなんら限定するものではなく、任意の分
子量、分子量分布のフコース硫酸含有多糖−Uを調製す
ることができ、糖組成等の理化学的性質が明確なフコー
ス硫酸含有多糖を提供することができる。
【0136】本発明のフコース硫酸含有多糖−Uはフコ
ース硫酸含有多糖−Fの有する強い抗凝血活性を有さ
ず、抗凝血活性を実質上示さないフコース硫酸含有多糖
が提供される。本発明のフコース硫酸含有多糖−Uは純
化されたフコース硫酸含有多糖として制がん剤、抗転移
剤、発がん予防剤等に使用でき、また抗フコース硫酸含
有多糖抗体の抗原としても有用である。更にこのフコー
ス硫酸含有多糖−Uより、上記式(I)、(II)、(II
I)等の構造を有するオリゴ糖が製造でき、これらの新
規化合物の製造にも有用である。
【0137】次に本発明のフコース硫酸含有多糖−F及
びその製造方法について記載する。本発明の方法を用い
て本発明のフコース硫酸含有多糖−Fを製造する際には
フコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力を有する分解
酵素をフコース硫酸含有多糖混合物に作用させればよ
く、酵素反応が終了後低分子化したフコース硫酸含有多
糖−Uを限外ろ過などで除去すればよい。上記分解酵素
はフコース硫酸含有多糖−Uを選択的に分解できる酵素
であればいかなる酵素でもよいが、具体例としては例え
ば、フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp. S
A−0082株(FERM BP−5402)が生産す
る上記のエンド型フコイダン分解酵素が挙げられる。
【0138】本酵素を作用させる場合は酵素反応が有利
に進むように基質濃度や温度、pH等を設定すればよい
が、基質濃度は通常0.1から10%程度、温度は20
から40℃付近、pHは6から9付近が望ましい。
【0139】また、フコース硫酸含有多糖混合物を培地
に添加し、フコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力を
有する分解酵素生産能を有する微生物をその培地で培養
し、培養後の培地から精製してもよい。使用する微生物
はフコース硫酸含有多糖−Uを分解する能力を有する分
解酵素を生産する微生物であればいかなる微生物でもよ
いが、具体的には上記記載のフラボバクテリウム s
p. SA−0082株(FERM BP−5402)
又はフコイダノバクター マリナス(Fucoidanobacter
marinus) SI−0098株(FERM BP−540
3)が挙げられる。
【0140】培地に加える栄養源は使用する菌株が利用
し、該分解酵素を生産するものであればよく、炭素源と
しては例えばフコイダン、海藻粉末、アルギン酸、フコ
ース、グルコース、マンニトール、グリセロール、サッ
カロース、マルトース、ラクトース、デンプン等が利用
でき、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、カザミ
ノ酸、コーンスティープリカー、肉エキス、脱脂大豆、
硫安、塩化アンモニウム等が適当である。その他にナト
リウム塩、リン酸塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜
鉛塩等の無機質、及び金属塩類を加えてもよい。
【0141】また、培養条件は使用する菌株、培地組成
等に応じ、フコース硫酸含有多糖−Uの分解活性が最大
になるように設定するのはもちろんのことであるが、一
般に培養温度は15〜30℃、培地のpHは5〜9で、
5〜72時間の通気かくはん培養を行えばよい。培養終
了後、低分子化したフコース硫酸含有多糖−Uや培地中
のフコース硫酸含有多糖−F以外の成分は限外ろ過など
で除去すればよい。
【0142】なお、上記のフコイダノバクター マリナ
スSI−0098株は、青森県の海水中より本発明者ら
が新たに検索して得た菌株で、その菌学的性質は次の通
りである。 1.フコイダノバクター マリナス SI−0098 a.形態的性質 (1)本菌は双球菌(短かん菌)である。 幅 0.5〜0.7μm 長さ 0.5〜0.7μm (2)胞子の有無 なし (3)グラム染色性 陰性 b.生理的性質 (1)生育の温度範囲 37℃で生育できる。好適な生育温度は15〜28℃である。 (2)酸素に対する態度 好気性 (3)カタラーゼ 陽性 (4)オキシダーゼ 陰性 (5)ウレアーゼ 陰性 (6)加水分解 デンプン 陽性 ゼラチン 陰性 カゼイン 陰性 エスクリン 陽性 (7)硝酸塩の還元 陰性 (8)インドールの生成 陰性 (9) 硫化水素の生成 陽性 (10) ミルクの凝固 陰性 (11)ナトリウムの要求性 陽性 (12)塩類要求性 0%食塩培地での生育 陰性 1%食塩培地での生育 陰性 海水培地での生育 陽性 (13)キノン系 メナキノン7 (14)菌体内DNAのGC含量 61% (15)細胞壁のジアミノピメリン酸 陰性 (16)グリコリル試験 陰性 (17)ヒドロキシ脂肪酸の存在 陽性 (18)OF−テスト O (19)集落の色調 特徴的な集落色素を生成せず (20)運動性 あり (21)滑走性 なし (22)鞭毛 極単毛
【0143】本菌株は、バージーズ マニュアル オブ
ディターミネイティブ バクテリオロジー、第9巻
(1994)に記載の基本分類によればグループ4(グ
ラム陰性好気性かん菌及び球菌)に分類される。しかし
ながら本菌株は、電子伝達鎖にメナキノン7を有し、G
C含量が61%の点でグループ4に属する菌と大いに異
なる。基本的にグラム陰性細菌は電子伝達鎖にユビキノ
ンを有し、グラム陽性細菌はメナキノンを有している。
【0144】グラム陰性細菌であるフラボバクテリウム
属及びシトファーガ(Cytophaga)属は例外的に電子伝達
鎖にメナキノンを有しているが、これらの属に属する細
菌のGC含量は、土壌細菌であるシトファーガ アーベ
ンシコラ(Cytophaga arvensicola)が43〜46%、海
洋細菌であるシトファーガ ジフルエンス(Cytophaga
diffluens)、シトファーガ ファーメンタンス(Cytoph
aga fermentans) 、シトファーガ マリーナ(Cytophag
a marina) 、及びシトファーガ ウリギノーサ(Cytoph
ags uliginosa)が42%であり、本菌株の性質とは全く
異なる。更に、本菌株と既同定株の16SrDNA配列
の相同性を比較したところ、最も相同性の高い既同定株
ベルコミクロビウム スピノサム(Verrucomicrobium s
pinosum)においてもその相同性は、76.6%であっ
た。16SrDNA配列の相同性が90%以下の場合、
両細菌の属が異なることは一般に広く知られていること
から、本発明者らは、本菌株は既存の属に属さない新属
の細菌であると断定し、よって本菌株をフコイダノバク
ター マリナス SI−0098と命名した。
【0145】なお上記菌株は Fucoidanobacter marinus
SI−0098と表示され、通商産業省工業技術院生
命工学工業技術研究所[日本国茨城県つくば市東1丁目
1番3号(郵便番号305)]に平成7年3月29日よ
りFERM P−14873として寄託され、前記通商
産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERMB
P−5403(国際寄託への移管請求日: 平成8年2
月15日)として寄託されている。
【0146】本発明者らは前述のように0.6〜3Mの
1種類又は2種類以上の塩類の存在下で本発明のフコー
ス硫酸含有多糖−Fとフコース硫酸含有多糖−Uが酸性
多糖凝集剤に対して全く異なる挙動を示すことも見出し
た。
【0147】例えば本発明の方法を用いて、フコース硫
酸含有多糖混合物の水溶液から本発明のフコース硫酸含
有多糖−Fを分離することができる。
【0148】まずフコース硫酸含有多糖混合物の水溶液
に1種又は2種以上の塩類を添加しその総濃度を0.6
〜3Mとする。添加する塩類は例えば塩化ナトリウム、
塩化カルシウム等で特に限定されるものではない。こう
して塩濃度を調整した後塩化セチルピリジニウム等の酸
性多糖凝集剤をこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加
し、沈殿を集めると本発明のフコース硫酸含有多糖−F
が得られる。
【0149】しかし上記塩濃度を2M超にすると本発明
のフコース硫酸含有多糖−Fが塩化セチルピリジニウム
により沈殿を形成しにくくなるので注意を要する。本発
明のフコース硫酸含有多糖−Fとフコース硫酸含有多糖
−Uを分離する目的では通常1.5M程度の塩濃度で目
的は達成できる(図1の説明参照)。
【0150】次に必要に応じてこの沈殿を洗浄後、沈殿
中の塩化セチルピリジニウムを食塩飽和アルコールで洗
い落とし、本発明のフコース硫酸含有多糖−Fを得る。
こうして得られた本発明のフコース硫酸含有多糖−Fか
ら色素を除くために、この沈殿を溶解後限外ろ過等を行
っても良い。また脱塩後凍結乾燥すれば乾燥標品を得る
こともできる。また、工程中防腐剤などを添加してもよ
い。
【0151】本発明者らは、前述の様にフコース硫酸含
有多糖を陰イオン交換樹脂で精製する際に2価の陽イオ
ンが共存すると単位樹脂量当りに吸着するフコース硫酸
含有多糖量が増加し、フコース硫酸含有多糖の分離が良
くなることも見出している。すなわち、本発明の方法を
用いて本発明のフコース硫酸含有多糖−Fを製造する際
には、まずフコース硫酸含有多糖混合物に2価の陽イオ
ン源となる薬品を好ましくは1mM以上添加する。次
に、陰イオン交換樹脂を2価の陽イオンを好ましくは1
mM以上含む液で平衡化し、上記フコース硫酸含有多糖
混合物を吸着させる。この陰イオン交換樹脂を平衡化し
た液で充分洗浄後、例えば塩化ナトリウムのグラジェン
トによりフコース硫酸含有多糖−Fを溶出させる。本方
法を用いる場合、添加する2価陽イオンの濃度は1mM
以上ならばよい。また本方法に用いる二価の陽イオン源
となる薬品はカルシウム塩やバリウム塩が特にその効果
が優れているが、特に限定されるものではなく、硫酸マ
グネシウム、塩化マンガン等も使用することができる。
【0152】本発明のフコース硫酸含有多糖−Fは例え
ば実施例8に記載のように得ることができる。以下、こ
のフコース硫酸含有多糖の理化学的性質を示すが、本発
明のフコース硫酸含有多糖−Fはこの例に限定されるも
のでは無い。
【0153】得られたフコース硫酸含有多糖−Fの分子
量をセファクリルS−500を用いたゲルろ過法により
求めたところ、約19万を中心とした分子量分布を示し
た(図17参照)。なお、図17において、縦軸はフェ
ノール−硫酸法により測定した試料中の糖含量を480
nmの吸光度で示し、横軸はフラクション ナンバーを
示す。
【0154】また、ゲルろ過の条件を下記に示す。 カラムサイズ: 3.08×162.5cm 溶媒:0.2Mの塩化ナトリウムと10%のエタノール
を含む10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.
0) 流速:1.5ml/分 サンプル濃度:0.25% サンプル液量:20ml 分子量標準物質:Shodex STANDARD P-82(昭和電工社
製)
【0155】次に、得られた本発明のフコース硫酸含有
多糖−Fの成分を分析した。まず、ジャーナル オブ
バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biologica
l Chemistry)、第175巻、第595頁(1948)の
記載に従いフコース量を定量した。
【0156】次に、得られたフコース硫酸含有多糖−F
の乾燥標品を1規定の塩酸に0.5%の濃度で溶解し、
110℃で2時間処理し、構成単糖に加水分解した。次
に、グライコタッグ及びグライコタッグ リージェント
キットを用いて加水分解して得られた単糖の還元性末
端をピリジル−(2)−アミノ化(PA化)し、HPL
Cにより構成糖の比率を調べた。なお、HPLCの条件
は下記によった。
【0157】装置:L−6200型(日立製作所製) カラム:パルパックタイプA(4.6mm×150m
m) 溶離液:700mMホウ酸緩衝液(pH9.0):アセ
トニトリル=9:1 検出:蛍光検出器F−1150(日立製作所製)にて励
起波長310nm、蛍光波長380nmで検出。 流速:0.3ml/分 カラム温度:65℃
【0158】次に、アナリティカル バイオケミストリ
ー(Analytical Biochemistry)、第4巻、第330頁
(1962)の記載に従いウロン酸量を定量した。
【0159】次に、バイオケミカル ジャーナル(Bioc
hemical Journal)、第84巻、第106頁(1962)
の記載に従い硫酸含量を定量した。
【0160】以上の結果、得られたフコース硫酸含有多
糖−Fの構成糖はフコース、ガラクトースで、そのモル
比は約10:1であった。ウロン酸及びその他の中性糖
は実質的に含有されていなかった。また、フコースと硫
酸基のモル比は約1:2であった。
【0161】1%のフコイダン−F溶液16mlと、5
0mMのリン酸緩衝液(pH8.0)12mlと4Mの
塩化ナトリウム4mlと32mU/mlの前出のフラボ
バクテリウムsp. SA−0082(FERM BP
−5402)由来のエンド型フコイダン分解酵素溶液8
mlを混合し、25℃で48時間反応させた。反応によ
る分解物の生成は認められず、その低分子化も認められ
なかった。
【0162】次に、得られたフコース硫酸含有多糖−F
のカルシウム塩のIRスペクトルをフーリェ変換赤外分
光光度計 JIR−DIAMOND20(日本電子社
製)により測定したところ図18に示すスペクトルが得
られた。なお、図18において縦軸は透過率(%)、横
軸は波数(cm−1)を示す。
【0163】次に、得られたフコース硫酸含有多糖−F
のナトリウム塩のNMRスペクトルを500MHzの核
磁気共鳴装置JNM−α500型核磁気共鳴装置(日本
電子社製)により測定したところ、図19に示すスペク
トルが得られた。
【0164】図19中、縦軸はシグナルの強度、横軸は
化学シフト値(ppm)を示す。なお、H−NMR
での化学シフト値はHODの化学シフト値を4.65p
pmとして表した。 H−NMR(DO) 5.30(フコースの1位のH)、1.19(フコース
の5位のCHのH)
【0165】次に、得られたフコース硫酸含有多糖−F
の凍結乾燥物の比旋光度を高速・高感度旋光計SEPA
−300(堀場製作所製)により測定したところ、−1
35度であった。
【0166】本発明により、本発明のフコース硫酸含有
多糖−Uと分離され、純化されたフコース硫酸含有多糖
−Fが提供される。本発明のフコース硫酸含有多糖−F
は構成糖としてウロン酸を実質的に含有せず、フラボバ
クテリウム sp. SA−0082(FERM BP
−5402)の生産するフコイダン分解酵素により低分
子化されない。その分子量、分子量分布、糖組成は本発
明のフコース硫酸含有多糖−Fをなんら限定するもので
はなく、任意の分子量、分子量分布のフコース硫酸含有
多糖−Fを調製することができ、糖組成、還元末端等の
理化学的性質が明確で、硫酸化度が極めて高いフコース
硫酸含有多糖−Fを提供することができる。
【0167】本発明のフコース硫酸含有多糖−Fは、実
質上抗凝血活性を有さないフコース硫酸含有多糖−Uと
分離しているため、強い抗凝血活性を有しており、該フ
コース硫酸含有多糖−F及び/又はその分解物は純化さ
れたフコース硫酸含有多糖として抗凝血剤に使用でき、
また抗フコース硫酸含有多糖抗体の抗原としても有用で
ある。
【0168】本発明のフコース硫酸含有多糖、その分解
物をがん細胞の培養液に1μg/ml以上の濃度で添加
すれば、添加後1日から数日で癌細胞はアポトーシスを
起こす。すなわち、本発明のフコース硫酸含有多糖、そ
の分解物は強いアポトーシス誘発作用を有する。なお、
これらの物質は正常細胞にはアポトーシスを誘発せず、
毒性も示さない。特に、食用褐藻植物、ナマコ由来のフ
コース硫酸含有多糖、その分解物は安全性が高い。
【0169】本発明のアポトーシス誘発剤を製剤化する
には、フコース硫酸含有多糖及び/又はその分解物を有
効成分とし、これを公知の医薬用担体と組合せればよ
い。一般的には、本発明のフコース硫酸含有多糖及び/
又はその分解物を薬学的に許容できる液状又は固体状の
担体と配合し、かつ必要に応じて溶剤、分散剤、乳化
剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤
等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤
等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤とするこ
とができる。またこれを使用前に適当な担体を添加する
ことにより液状となし得る乾燥品とすることができる。
【0170】本発明のアポトーシス誘発剤は、経口剤、
あるいは注射剤、点滴用剤等の非経口剤のいずれによっ
ても投与することができる。
【0171】医薬用担体は、上記投与形態及び剤型に応
じて選択することができ、経口剤の場合は、例えばデン
プン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセル
ロース、コーンスターチ、無機塩等が利用される。また
経口剤の調製に当っては、更に結合剤、崩壊剤、界面活
性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等
を配合することもできる。これらの具体例としては、以
下に示す物が挙げられる。 (結合剤)デンプン、デキストリン、アラビアゴム末、
ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロ
ース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロ
キシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセル
ロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール。 (崩壊剤)デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カ
ルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチ
ルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロー
ス、低置換ヒドロキシプロピルセルロース。 (界面活性剤)ラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチ
ン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80。 (潤沢剤)タルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂
肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン
酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレ
ングリコール。 (流動性促進剤)軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニ
ウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウ
ム。
【0172】また、経口用の液剤としては、懸濁液、エ
マルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤とすることが
でき、これらの各種剤型には矯味、矯臭剤、着色剤を配
合してもよい。
【0173】一方、非経口剤の場合は、常法に従い本発
明の有効成分であるフコース硫酸含有多糖及び/又はそ
の分解物を希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、
ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ
油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコー
ル、ポリエチレングリコール等に溶解ないし懸濁させ、
必要に応じ、殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等を
加えることにより調製される。
【0174】本発明のアポトーシス誘発剤は、製剤形態
に応じた適当な投与経路で投与される。投与方法も特に
限定はなく、内用、外用及び注射によることができる。
注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与
し得、外用剤には座剤等も包含される。
【0175】本発明のアポトーシス誘発剤の投与量は、
その製剤形態、投与方法、使用目的及びこれに適用され
る患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定
ではないが一般には製剤中に含有される有効成分の量が
成人1日当り1〜1000mg、好ましくは10〜20
0mgである。もちろん投与量は、種々の条件によって
変動するので、上記投与量より少ない量で充分な場合も
あるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。
【0176】制がん作用を有する、本発明のフコース硫
酸含有多糖−U、フコース硫酸含有多糖−F及び/又は
その分解物を有効成分とし、これを公知の医薬用担体と
組合せ製剤化すれば制がん剤を製造することができる。
制がん剤の製造は上記方法に準じ行うことができる。一
般的には、本発明のフコース硫酸含有多糖及び/又はそ
の分解物を薬学的に許容できる液状又は固体状の担体と
配合し、かつ必要に応じて溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝
剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加え
て、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形
剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤であることができ
る。またこれを使用前に適当な担体の添加によって液状
となし得る乾燥品とすることができる。
【0177】制がん剤としては、経口剤や、注射剤、点
滴用剤等の非経口剤のいずれによっても投与することが
できる。
【0178】医薬用担体は、上記投与形態及び剤型に応
じて選択することができ、上記アポトーシス誘発剤に準
じ使用すれば良い。
【0179】制がん剤としては、製剤形態に応じた適当
な投与経路で投与される。投与方法も特に限定はなく、
内用、外用及び注射によることができる。注射剤は、例
えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与し得、外用剤
には座剤等も包含される。
【0180】制がん剤としての投与量は、その製剤形
態、投与方法、使用目的及びこれに適用される患者の年
齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではないが
一般には製剤中に含有される有効成分の量が成人1日当
り1〜1000mg、好ましくは10〜200mgであ
る。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するの
で、上記投与量より少ない量で充分な場合もあるし、あ
るいは範囲を超えて必要な場合もある。本発明の薬剤は
そのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日
常的に摂取させることもできる。
【0181】発がん抑制作用を有する、フコース硫酸含
有多糖及び/又はその分解物を有効成分とし、これを公
知の医薬用担体と組合せ製剤化すれば発がん予防剤を製
造することができる。発がん予防剤の製造は上記方法に
準じ行うことができる。一般的には、フコース硫酸含有
多糖及び/又はその分解物を薬学的に許容できる液状又
は固体状の担体と配合し、かつ必要に応じて溶剤、分散
剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊
剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、
カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液
剤とすることができる。またこれを使用前に適当な担体
の添加によって液状となし得る乾燥品とすることができ
る。
【0182】発がん予防剤としては、経口剤や、注射
剤、点滴用剤等の非経口剤のいずれによっても投与する
ことができる。
【0183】医薬用担体は、上記投与形態及び剤型に応
じて選択することができ、上記アポトーシス誘発剤に準
じ使用すれば良い。
【0184】発がん予防剤としては、製剤形態に応じた
適当な投与経路で投与される。投与方法も特に限定はな
く、内用、外用及び注射によることができる。注射剤
は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与し得、
外用剤には座剤等も包含される。
【0185】発がん予防剤としての投与量は、その製剤
形態、投与方法、使用目的及びこれに適用される患者の
年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではない
が一般には製剤中に含有される有効成分の量が成人1日
当り1〜1000mg、好ましくは10〜200mgで
ある。もちろん投与量は、種々の条件によって変動する
ので、上記投与量より少ない量で充分な場合もあるし、
あるいは範囲を超えて必要な場合もある。本発明の薬剤
はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して
日常的に摂取させることもできる。
【0186】本発明のフコース硫酸含有多糖、その分解
物は天然由来物質であり、マウスに経口投与を行っても
毒性は認められない。
【0187】本発明の薬剤は感染症、免疫機能の低下又
は昂進あるいはがん疾患、ウイルス性疾患等の治療剤と
して用いることが期待される。発がん予防剤として健康
保持に使用することができる。また本発明のアポトーシ
ス誘発方法は生体防御機構、免疫機能あるいはがん、ウ
イルス性疾患等との関係の研究、アポトーシス誘発阻害
剤の開発等に有用である。特に、食用褐藻植物、食用ナ
マコから、本発明のフコース硫酸含有多糖、その分解物
を調製すれば、これらは食品として長い歴史を有するも
のであり、これらから調製したフコース硫酸含有多糖、
その分解物は、経口投与の場合において、極めて安全性
の高いものである。
【0188】次にフコース硫酸含有多糖は極めて分子量
が大きな硫酸化多糖であり、そのまま医薬品として用い
るより、抗原性、均一性、抗凝血活性などの改善のた
め、フコース硫酸含有多糖をある程度分解することが必
要とされているが、本発明により、フコース硫酸含有多
糖−Fのみを選択的に分解する酵素、該酵素を作用させ
て得られるフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物が提
供された。
【0189】本発明に使用される菌株としては、アルテ
ロモナス(Alteromonas)属細菌に属し、本発明のエン
ド型フコース硫酸含有多糖分解酵素生産能を有する菌株
であればいかなる菌株でもよい。また、該エンド型フコ
ース硫酸含有多糖分解酵素生産能を有する菌株の具体例
としては、例えば、アルテロモナス sp. SN−1
009株が挙げられる。該菌株由来のエンド型フコース
硫酸含有多糖分解酵素をフコース硫酸含有多糖に作用さ
せれば、本発明のフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化
物を得ることができる。
【0190】本菌株は青森県の海水中より本発明者らが
新たに検索して得た菌株で、その菌学的性質は次の通り
である。 a.形態的性質 (1)本菌はかん菌である。 幅 約1μm 長さ 約2μm (2)胞子の有無 なし (3)グラム染色性 陰性 b.生理的性質 (1)生育の温度範囲 好適な生育温度は15−30℃である。4℃あるいは4
0℃では生育できない。 (2)酸素に対する態度 好気性 (3)カタラーゼ 陽性 (4)オキシダーゼ 陽性 (5)リパーゼ 陽性 (6)資化性 グルコース 陽性 マンノース 陰性 スクロース 陽性 ラクトース 陰性 セロビオース 陽性 メリビオース 陰性 マンニトール 陽性 グリセリン 陽性 メタノール 陰性 DL−リンゴ酸 陰性 コハク酸 陰性 フマル酸 陰性 クエン酸 陰性 サリシン 陰性 (7)加水分解 デンプン 陰性 ゼラチン 陰性 (8)硝酸塩の還元 陰性 (9)脱窒反応 陰性 (10)アルギン酸の分解 陽性 (11)β−ヒドロキシ酪酸の利用 陰性 (12)ポリヒドロキシ酪酸の蓄積 陰性 (13)ナトリウムの要求性 陽性 (14)塩類要求性 0%食塩培地での生育 陰性 1%食塩培地での生育 陰性 海水培地での生育 陽性 (15)キノン系 ユビキノン8 (16)菌体内DNAのGC含量 36% (17)OF−テスト O (18)集落の色調 特徴的色素を生成せず (19)発光性 陰性 (20)運動性 陽性 (21)鞭毛 極単毛
【0191】本菌株は、バージーズ マニュアル オブ
システィマティック バクテリオロジー、第1巻、第
343〜352頁(1984)、及びバージーズ マニ
ュアル オブ ディターミネイティブ バクテリオロジ
ー、第9巻、第75頁、第132〜133頁(199
4)に記載されているアルテロモナス属細菌と同定し
た。しかしながら、本細菌の生理的性状は文献に記載さ
れているいずれの菌種とも一致せずGC含量も低い値で
あった。そこで、本菌株をアルテロモナス sp.SN
−1009と命名した。
【0192】なお上記菌株はAlteromonas sp. SN
−1009と表示され、通商産業省工業技術院生命工学
工業技術研究所[日本国茨城県つくば市東1丁目1番3
号(郵便番号305)]に平成8年2月13日よりFE
RM P−15436として寄託され、前記通商産業省
工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−
5747(国際寄託への移管請求日: 平成8年11月
15日)として寄託されている。
【0193】本発明に使用する菌株の培地に加える栄養
源は使用する菌株が利用し、本発明のエンド型フコース
硫酸含有多糖分解酵素を生産するものであればよく、炭
素源としては例えばフコース硫酸含有多糖、海藻粉末、
アルギン酸、フコース、ガラクトース、グルコース、マ
ンニトール、グリセロール、サッカロース、マルトース
等が利用でき、窒素源としては、酵母エキス、ペプト
ン、カザミノ酸、コーンスティープリカー、肉エキス、
脱脂大豆、硫安、塩化アンモニウム等が適当である。そ
の他にナトリウム塩、リン酸塩、カリウム塩、マグネシ
ウム塩、亜鉛塩等の無機質、及び金属塩類を加えてもよ
い。
【0194】また本菌株は上記栄養源を含んだ海水ある
いは人工海水中で非常に良く生育する。
【0195】本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分
解酵素の生産菌を培養するに当り、生産量は培養条件に
より変動するが、一般に培養温度は、15℃〜30℃、
培地のpHは6〜9がよく、5〜72時間の通気かくは
ん培養で本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵
素の生産量は最高に達する。
【0196】培養条件は使用する菌株、培地組成等に応
じ、本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の
生産量が最大になるように設定するのは当然のことであ
る。
【0197】本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分
解酵素は菌体中にも培養物上清中にも存在する。
【0198】上記のアルテロモナス sp. SN−1
009を適当な培地で培養し、その菌体を集め、通常用
いられる細胞破壊手段、例えば、超音波処理などで菌体
を破砕すると無細胞抽出液が得られる。
【0199】次いで、この抽出液から通常用いられる精
製手段により精製酵素標品を得ることができる。例え
ば、塩析、イオン交換カラムクロマト、疎水結合カラム
クロマト、ゲルろ過等により精製を行い、他のフコイダ
ン分解酵素を含まない純化された本発明のエンド型フコ
ース硫酸含有多糖分解酵素を得ることができる。
【0200】また、上述の培養液から菌体を除去した培
養液上清中にも本酵素が大量に存在するので、菌体内酵
素と同様の精製手段により精製することができる。
【0201】本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分
解酵素の化学的及び理化学的性質は次の通りである。 (i)作用:下記理化学的性質を有するフコース硫酸含
有多糖、すなわちフコース硫酸含有多糖−Fに作用し
て、該フコース硫酸含有多糖−Fを低分子化させる。 (a)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。 (b)フラボバクテリウム(Flavobacterium) sp.
SA−0082(FERM BP−5402)の生産す
るフコイダン分解酵素により実質上低分子化されない。
下記理化学的性質を有するフコース硫酸含有多糖、すな
わちフコース硫酸含有多糖−Uに作用しない。 (c)構成糖:ウロン酸を含有する。 (d)フラボバクテリウム(Flavobacterium) sp.
SA−0082(FERM BP−5402)の生産す
るフコイダン分解酵素により低分子化し、少なくとも下
記式(I)、(II)、(III)より選択される少なくと
も一種以上の化合物が生成する。
【化15】
【化16】
【化17】 (ii)至適pH:本酵素の至適pHは7〜8付近である
(図20)。すなわち図20は本酵素のpHと相対活性
の関係を表すグラフであり、縦軸は相対活性(%)、横
軸はpHを示す。実線は、還元性末端をPA化したフコ
ース硫酸含有多糖−F(PA−FF)を基質に用いた曲
線であり、点線は下記(v)−(2)記載のフコース硫
酸含有多糖−Fを基質に用いた場合の曲線である。 (iii)至適温度:本酵素の至適温度は30〜35℃付
近である(図21)。すなわち図21は、本酵素の温度
と相対活性の関係を表すグラフであり、縦軸は相対活性
(%)、横軸は温度(℃)を示す。実線は、還元性末端
をPA化したフコース硫酸含有多糖−F(PA−FF)
を基質に用いた場合の曲線であり、点線は下記(v)−
(2)記載のフコース硫酸含有多糖−Fを基質に用いた
場合の曲線である。 (iv)分子量:本酵素の分子量を、セファクリル(Seph
acryl)S−200(ファルマシア社製)を用いたゲル
ろ過法により求めたところ、約10万であった。
【0202】(v)酵素活性の測定方法:本発明のエン
ド型フコース硫酸含有多糖分解酵素活性の測定は次のよ
うにして行った。
【0203】まず、本発明のエンド型フコース硫酸含有
多糖分解酵素の基質となるフコース硫酸含有多糖−F、
及びPA−FFを下記(1)から(3)の工程により調
製した。
【0204】(1)ガゴメ昆布フコース硫酸含有多糖混
合物の調製 乾燥ガゴメ昆布2Kgを自由粉砕機M−2型(奈良機械
製作所製)により粉砕し、4.5倍量の80%エタノー
ル中で80℃、2時間処理後、ろ過した。残渣に対し、
上記80%エタノール抽出、ろ過という工程をさらに3
回繰り返し、エタノール洗浄残渣1870gを得た。残
渣に36リットルの水を加え、100℃、2時間処理
し、ろ過により抽出液を得た。 抽出液の塩濃度を40
0mMの塩化ナトリウム溶液と同じにした後、5%のセ
チルピリジニウムクロリドをこれ以上沈殿が生じなくな
るまで添加し、遠心分離した。 その沈殿を、80%の
エタノールで繰り返し洗浄し、セチルピリジニウムクロ
リドを完全に除去した後、3リットルの2M塩化ナトリ
ウムに溶解し、不溶物を遠心分離で除去し、2Mの塩化
ナトリウムで平衡化した100mlのDEAE−セルロ
ファインA−800を懸濁し、かくはん後ろ過し、樹脂
を除いた。このろ液を、2Mの塩化ナトリウムで平衡化
した100mlのDEAE−セルロファインA−800
のカラムにかけ、通過画分を限外ろ過器(ろ過膜の排除
分子量10万)により脱塩及び低分子除去を行い、この
際生じた沈殿を遠心分離により除去した。この上清を凍
結乾燥して精製ガゴメ昆布フコース硫酸含有多糖混合物
82.2gを得た。
【0205】(2)フコース硫酸含有多糖−Fの調製 上記のガゴメ昆布由来フコース硫酸含有多糖混合物6g
を600mlの0.2Mの塩化カルシウムを含む20m
Mの酢酸ナトリウム(pH6.0)に溶解後、あらかじ
め0.2Mの塩化カルシウムを含む20mMの酢酸ナト
リウム(pH6.0)で平衡化した3600mlのDE
AE−セファロースFFのカラムにかけ、0.2Mの塩
化カルシウムを含む20mMの酢酸ナトリウム(pH
6.0)で充分カラムを洗浄後、0〜2Mの塩化ナトリ
ウムのグラジエントで溶出した。塩化ナトリウム濃度が
0.75M以上で溶出してくるフコース硫酸含有多糖−
F画分を集め、排除分子量10万の限外ろ過膜を装着し
た限外ろ過器で濃縮脱塩後凍結乾燥し、フコース硫酸含
有多糖−Fの凍結乾燥標品を、3.3g得た。
【0206】(3)PA−FFの調製 上記のフコース硫酸含有多糖−Fの凍結乾燥標品12m
gを水480μlに溶解し、12μlずつ36本に分注
後、凍結乾燥しグライコタッグ及びグライコタッグ リ
ージェント キットを用いて還元性末端を、PA化し、
PA−FFを得た。 得られたPA−FFを、15ml
の10%のメタノールを含む10mMの酢酸アンモニウ
ム溶液に溶解し、セルロファインGCL−300のカラ
ム(40x900mm)によりゲルろ過し、高分子画分
を集めた。得られた高分子画分をポアサイズ3500の
透析膜を用いて充分透析して脱塩し、次にエバポレータ
ーにより5mlに濃縮して本発明のエンド型フコース硫
酸含有多糖−F分解酵素の基質用PA−FFとした。ま
た、こうして得られたPA−FFを、市販のピリジル−
(2)−アミノ化フコース(宝酒造社製)の蛍光強度
(励起波長320nm、蛍光波長400nm)と比較す
ることにより定量したところ約40nmolであった。
【0207】上記(1)及び(2)の工程により得られ
たフコース硫酸含有多糖−Fを用いて本発明のエンド型
フコース硫酸含有多糖分解酵素の活性を測定するときは
下記の要領で行った。
【0208】すなわち、2.5%のフコース硫酸含有多
糖−F溶液12μlと、6μlの1M塩化カルシウム溶
液と12μlの1M塩化ナトリウム溶液と、72μlの
50mMの酢酸とイミダゾールとトリス−塩酸を含む緩
衝液(pH7.5)と、18μlの本発明のエンド型フ
コース硫酸含有多糖−F分解酵素とを混合し、30℃、
3時間反応させた後、反応液を100℃、10分間処理
し、遠心分離後、100μlをHPLCにより分析し、
低分子化の程度を測定した。
【0209】対照として、本発明のエンド型フコース硫
酸含有多糖分解酵素の代りに、本発明のエンド型フコー
ス硫酸含有多糖分解酵素を溶解している緩衝液を用いて
同様の条件により反応させたもの及びフコース硫酸含有
多糖−F溶液の代りに水を用いて反応を行ったものを用
意し、それぞれ同様にHPLCにより分析した。
【0210】1単位の酵素は、上記反応系において1分
間に1μmolのフコース硫酸含有多糖−Fのフコシル
結合を切断する酵素量とする。切断されたフコシル結合
の定量は下記式により求めた。 {(12 ×2.5)/(100 ×MF) }×{(MF/M)-1}×{0.12/
(180 ×0.01) }=U/ml (12×2.5)/100:反応系中に添加したフコー
ス硫酸含有多糖−F(mg) MF:基質フコース硫酸含有多糖−Fの平均分子量 M:反応生成物の平均分子量 (MF/M)−1:1分子のフコース硫酸含有多糖−F
が酵素により切断された数 180:反応時間(分) 0.01:酵素液量(ml) 0.12:反応液総量(ml)
【0211】なお、HPLCの条件は下記によった。 装置:L−6200型(日立製作所製) カラム:OHpak KB−804(8mm×300m
m)(昭和電工社製) 溶離液:5mMのアジ化ナトリウム、25mMの塩化カ
ルシウム、及び50mMの塩化ナトリウムを含む25m
Mのイミダゾール緩衝液(pH8) 検出:視差屈折率検出器(Shodex RI−71、
昭和電工社製) 流速:1ml/分 カラム温度:25℃
【0212】反応生成物の平均分子量の測定のために、
市販の分子量既知のプルラン(STANDARD P−
82、昭和電工社製)を上記のHPLC分析と同条件で
分析し、プルランの分子量とOHpak KB−804
の保持時間との関係を曲線に表し、上記酵素反応生成物
の分子量測定のための標準曲線とした。
【0213】上記(1)〜(3)の工程により得られた
PA−FFを用いて本発明のエンド型フコース硫酸含有
多糖分解酵素の活性を測定するときは下記の要領で行っ
た。
【0214】すなわち、8pmol/μlのPA−FF
溶液2μlと、5μlの1M塩化カルシウム溶液と10
μlの1M塩化ナトリウム溶液と、23μlの水と、5
0μlの50mMの酢酸とイミダゾールとトリス−塩酸
を含む緩衝液(pH8.2)と、10μlの本発明のエ
ンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素とを混合し、30
℃、3時間反応させた後、反応液を100℃、10分間
処理し、遠心分離後、80μlをHPLCにより分析
し、低分子化の程度を測定した。
【0215】対照として、本発明のエンド型フコース硫
酸含有多糖分解酵素の代りに、本発明のエンド型フコー
ス硫酸含有多糖分解酵素を溶解している緩衝液を用いて
同様の条件により反応させたもの及びPA−FF溶液の
代りに水を用いて反応を行ったものを用意し、それぞれ
同様にHPLCにより分析した。
【0216】1単位の酵素は、上記反応系において1分
間に1μmolのフコース硫酸含有多糖のフコシル結合
を切断する酵素量とする。切断されたフコシル結合の定
量は下記式により求めた。 16×10−6×{(MF/M)-1 }×{1/(180×0.01) }=U
/ml 16x10−6:反応系中に添加したPA−FF(μm
ol) MF:基質PA−FFの平均分子量 M:反応生成物の平均分子量 (MF/M)−1:1分子のフコース硫酸含有多糖−F
が酵素により切断された数 180:反応時間(分) 0.01:酵素液量(ml)
【0217】なお、HPLCの条件は下記によった。 装置:L−6200型(日立製作所製) カラム:OHpak SB−803(8 mm ×300 mm)
(昭和電工社製) 溶離液:5mMのアジ化ナトリウム及び10%のジメチ
ルスルホキシドを含む200mMの塩化ナトリウム溶液 検出:蛍光検出器 F-1150(日立製作所製)にて励起波
長320nm、蛍光波長400nmで検出。 流速:1ml/分 カラム温度:50℃
【0218】反応生成物の平均分子量の測定のために、
市販の分子量既知のプルラン(STANDARD P−
82、昭和電工社製)をグライコタッグ及びグライコタ
ッグリージェント キットを用いて還元性末端を、PA
化し、様々な分子量のPA化プルランを得た。得られた
様々な分子量のPA化プルランを上記のHPLC分析と
同条件で分析し、プルランの分子量とOHpak SB
−803の保持時間との関係を曲線に表し、上記酵素反
応生成物の分子量測定のための標準曲線とした。
【0219】タンパク質の定量は、酵素液の280nm
の吸光度を測定することにより行った。その際1mg/
mlのタンパク質溶液の吸光度を1.0として計算し
た。
【0220】本発明者らは、以下に述べるように、本発
明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素の作用機作
を決定した。
【0221】(1)エンド型フコース硫酸含有多糖分解
酵素によるフコース硫酸含有多糖−Fの分解及び分解物
の調製 精製したガゴメ昆布由来のフコース硫酸含有多糖−Fに
本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素を作用
させ、分解物の調製を行った。
【0222】まず、フコース硫酸含有多糖分解酵素の生
産を行った。すなわち、アルテロモナスsp. SN−
1009 (FERM BP−5747)を、グルコー
ス0.25%、ペプトン1.0%、酵母エキス0.05
%を含む人工海水(ジャマリンラボラトリー社製)pH
8.2からなる培地600mlを分注して殺菌した(1
20℃、20分)2リットルの三角フラスコに接種し、
25℃で26時間培養して種培養液とした。ペプトン
1.0%、酵母エキス0.02%、前記のガゴメ昆布由
来のフコース硫酸含有多糖0.2%、及び消泡剤(信越
化学工業社製KM70)0.01%を含む人工海水pH
8.0からなる培地20リットルを30リットル容のジ
ャーファーメンターに入れて120℃で20分殺菌し
た。冷却後、上記の種培養液600mlを接種し、24
℃で24時間、毎分10リットルの通気量と毎分250
回転のかくはん速度の条件で培養した。培養終了後、培
養液を遠心分離して菌体及び培養上清を得た。得られた
培養上清を、分画分子量1万の限外ろ過器により濃縮後
85%飽和硫安塩析し、生じた沈殿を遠心分離により集
め、10分の1濃度の人工海水を含む20mMのトリス
ー塩酸緩衝液(pH8.2)に対して充分透析し、60
0mlの粗酵素を得た。
【0223】こうして得られた粗酵素のうち40ml
と、人工海水44mlと、前記のフコース硫酸含有多糖
−F510mgと水36mlを混合し、pHを8に調整
し、25℃で48時間反応後、セルロファインGCL−
300によりゲルろ過を行い、4画分に分け、分子量の
大きな方から順に、F−Fd−1(分子量25000
超)、F−Fd−2(分子量25000〜12000
超)、F−Fd−3(分子量12000〜6500
超)、及びF−Fd−4(分子量6500以下)とし
た。これらの4画分を脱塩後凍結乾燥し、乾燥品をそれ
ぞれ170mg、270mg、300mg、及び340
mg得た。
【0224】フコース硫酸含有多糖−Fの酵素分解物、
すなわち低分子化物のセルロファインGCL−300に
よるゲルろ過の結果を図22に示す。図22において縦
軸は480nmの吸光度(フェノール硫酸法による発色
量)、横軸はフラクションナンバーを示し、1フラクシ
ョン10mlである。カラムボリュームは1075ml
であり、溶出液は10%のエタノールを含む0.2Mの
酢酸アンモニウム溶液である。
【0225】図22中、白丸印はフコース硫酸含有多糖
−Fの酵素分解物を、黒三角印は酵素分解前のフコース
硫酸含有多糖−Fをそれぞれゲルろ過した結果を表す。
【0226】上記セルロファインGCL−300の結果
から、本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素の反応生
成物の分子量分布は約1000〜3万程度であることが
判明した。
【0227】(2)酵素反応生成物の還元末端糖及び中
性糖組成の分析 上記のF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及
びF−Fd−4の一部をグライコタッグ及びグライコタ
ッグ リージェント キットを用いて還元性末端をPA
化し、得られた各PA化糖(PA−F−Fd−1)、
(PA−F−Fd−2)、(PA−F−Fd−3)、及
び(PA−F−Fd−4)を4規定の塩酸、100℃、
3時間処理により加水分解し、HPLCにより還元末端
糖を調べた。
【0228】なお、HPLCの条件は下記によった。 装置:L−6200型(日立製作所製) カラム:パルパックタイプA(4.6 mm× 150 mm)(宝
酒造社製) 溶離液:700mMほう酸緩衝液(pH 9):アセト
ニトリル=9:1 検出:蛍光検出器 F−1150(日立製作所製)にて
励起波長310nm、蛍光波長380nmで検出。 流速:0.3ml/分 カラム温度:65℃
【0229】この結果、(PA−F−Fd−1)、(P
A−F−Fd−2)、(PA−F−Fd−3)、及び
(PA−F−Fd−4)の還元末端糖は総てフコースで
あった。
【0230】また、F−Fd−1、F−Fd−2、F−
Fd−3、及びF−Fd−4の中性糖組成を下記の方法
により測定した。なお、基質に用いたフコース硫酸含有
多糖−Fを硫酸加水分解後グライコタッグ及びグライコ
タッグ リージェント キットを用いて構成糖の還元性
末端をPA化し、上記の酵素反応生成物の還元性末端を
分析したときと同じHPLC条件で分析したところ、フ
コースとガラクトースのみしか検出されず、それらの立
体配位はそれぞれL及びDであったので生成物に関して
もL−フコースとD−ガラクトースのみを測定した。
【0231】すなわち、構成糖の一つであるD−ガラク
トースの含量を調べるためにF−キット 乳糖/ガラク
トース(ベーリンガーマンハイムヤマノウチ社製)を用
い、説明書に従ってD−ガラクトースのみを測定できる
反応系を構築し、別に4規定の塩酸で100℃、2時間
加水分解したF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−
3、及びF−Fd−4を中和後この反応系で測定した。
【0232】更にもう一方の構成糖であるL−フコース
を定量するために、クリニカル ケミストリー(Clinic
al Chemistry)、第36巻、第474〜476頁(19
90)記載の方法に従って、別に4規定の塩酸で100
℃、2時間加水分解したF−Fd−1、F−Fd−2、
F−Fd−3、及びF−Fd−4を中和後この反応系で
測定した。
【0233】以上の結果L−フコースとD−ガラクトー
スの比率はF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−
3、及びF−Fd−4それぞれおよそ100:44、1
00:27、100:5、及び100:1であった。
【0234】以上の結果をまとめると、本発明のエンド
型フコース硫酸含有多糖分解酵素は、フコース硫酸含有
多糖−Fに作用してフコシル結合を加水分解し、分子量
約1000〜3万程度の低分子化物を生成し、その低分
子化物は分子量が大きいほどガラクトース含量が高いこ
とが判明した。なお、低分子化物の還元性末端はすべて
L−フコースであった。
【0235】次に、本酵素の基質特異性を調べるために
フコース硫酸含有多糖−Uに本発明のフコース硫酸含有
多糖分解酵素を作用させた。
【0236】すなわち、2.5%のフコース硫酸含有多
糖−U溶液12μlと、6μlの1M塩化カルシウム溶
液と12μlの1M塩化ナトリウム溶液と、72μlの
50mMのイミダゾール緩衝液(pH7.5)と、18
μlの本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素
(1.6mU/ml)とを混合し、30℃、3時間反応
させた後、反応液を100℃、10分間処理し、遠心分
離後、100μlをHPLCにより分析し、低分子化の
程度を測定した。
【0237】対照として、本発明のエンド型フコース硫
酸含有多糖分解酵素の代わりに、本発明のエンド型フコ
ース硫酸含有多糖分解酵素を溶解している緩衝液を用い
て同様の条件により反応させたものを用意し、同様にH
PLCにより分析した。
【0238】なお、HPLCの条件は次の通りである。 装置:L−6200型(日立製作所製) カラム:OHpak KB−804(8 mm× 300 mm)
(昭和電工社製) 溶離液:5mMのアジ化ナトリウム、25mMの塩化カ
ルシウム、及び50mMの塩化ナトリウムを含む25m
Mのイミダゾール緩衝液(pH8) 検出:視差屈折率検出器(Shodex RI−71、
昭和電工社製) 流速:1ml/分 カラム温度:25℃
【0239】その結果、本発明のフコース硫酸含有多糖
分解酵素は、フコース硫酸含有多糖−Uを全く低分子化
しなかった。
【0240】既述のように、本発明は、上記した本発明
のフコース硫酸含有多糖分解酵素と、カルシウム源とを
含有する酵素組成物に関する。
【0241】使用可能なカルシウム源としては、固形組
成物においては、例えば塩化カルシウム、炭酸カルシウ
ム、酢酸カルシウムのようなカルシウム塩、酸化カルシ
ウム、水酸化カルシウム、あるいはそれらの水和物など
が挙げられる。他方、水、アルコール等の溶媒中に溶
解、懸濁、乳化させた液状組成物においては、カルシウ
ム源は、前記したような単体であっても、あるいは溶解
などによりイオン化した状態のものであってもよい。
【0242】これらカルシウム源は、当該酵素を賦活又
は安定化するので有効である。
【0243】したがって、上記酵素組成物は上記したカ
ルシウム源の作用効果を阻害しない範囲で、用途に応じ
て常用の添加剤を含有していてもよい。
【0244】本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素を
フコース硫酸含有多糖−F含有物に作用させることによ
って、フコース硫酸含有多糖−Fの低分子化物を調製す
ることができる。フコース硫酸含有多糖−F含有物とし
ては、例えばフコース硫酸含有多糖−F精製品でもよ
く、また前述フコース硫酸含有多糖混合物でもよく、更
に褐藻類海藻の水性溶媒抽出物でもよい。フコース硫酸
含有多糖−F含有物の溶解は通常の方法で行えばよく、
溶解液中のフコース硫酸含有多糖濃度はその最高溶解濃
度でもよいが、通常はその操作性、酵素力価を考慮して
選定すればよい。
【0245】フコース硫酸含有多糖−F溶解液としては
水、緩衝液等より目的に応じて選択すればよい。溶解液
のpHは通常中性で、酵素反応は通常30℃付近で行
う。酵素量、反応時間などを調整することによって、低
分子化物の分子量を調整することができる。
【0246】次に低分子化物を分子量分画することによ
って、更に均一な分子量分布のフコース硫酸含有多糖−
F低分子化物を調製することができる。分子量分画は通
常よく使用されている方法を適用することができ、例え
ばゲルろ過法や分子量分画膜を使用すればよい。低分子
化物は、必要に応じて更にイオン交換樹脂処理、活性炭
処理などの精製操作を行ってもよく、必要に応じて脱塩
処理、無菌処理を行い、凍結乾燥することによって、本
発明の低分子化物の乾燥品を調製することもできる。
【0247】
【実施例】以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的
に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定される
ものではない。なお、実施例における%は重量%を意味
する。
【0248】実施例1 ガゴメ昆布を充分乾燥後、乾燥物2kgを自由粉砕機
(奈良機械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末
を9リットルの80%エタノールに懸濁し80℃、2時
間処理した。処理後ろ紙によりろ過し残渣を得た。この
残渣に対して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3
回繰り返しエタノール洗浄残渣を得た。この残渣を40
リットルの水に懸濁後、95℃、2時間処理し、ろ過し
た。残渣を熱水で洗浄し、ガゴメ昆布のフコース硫酸含
有多糖を含む抽出液36リットルを得た。得られた抽出
液1.8リットルを凍結乾燥し、フコース硫酸含有多糖
標品15.4gを得た。次に残りの抽出液に0.4Mと
なるように食塩を加え、更に5%の塩化セチルピリジニ
ウムをそれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し遠心分離
により沈殿を集めた。この沈殿を3リットルの0.4M
食塩水に懸濁後遠心分離し、洗浄した。この洗浄操作を
3回繰り返した後沈殿に1リットルの4M食塩水を添加
し、よくかくはん後エタノールを80%となるように添
加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿
を80%エタノール中に懸濁し、遠心分離するという操
作を、上清中の260nmの吸光度が0になるまで繰り
返した。この沈殿を2Mの食塩水3リットルに溶解し、
不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化
した100mlのDEAE−セルロファインA−800
(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂
をろ過により除去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化し
たDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ、
非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備
えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び食塩を
完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除
去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖混
合物の重量は76gであった。
【0249】実施例2 マ昆布を充分乾燥後、乾燥物2kgを自由粉砕機(奈良
機械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リ
ットルの80%エタノールに懸濁し、80℃、2時間処
理した。処理後ろ紙によりろ過し、残渣を得た。この残
渣に対して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回
繰り返し、エタノール洗浄残渣を得た。この残渣を40
リットルの水に懸濁後、95℃、2時間処理し、ろ過し
た。残渣を熱水で洗浄し、マ昆布のフコース硫酸含有多
糖を含む抽出液36リットルを得た。得られた抽出液に
0.4Mとなるように食塩を加え、更に5%の塩化セチ
ルピリジニウムをそれ以上沈殿が生じなくなるまで添加
し、遠心分離により沈殿を集めた。この沈殿を3リット
ルの0.3M食塩水に懸濁後遠心分離し、洗浄した。こ
の洗浄操作を3回繰り返した後沈殿に1リットルの4M
食塩水を添加し、よくかくはん後エタノールを80%と
なるように添加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得
た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁し、遠心分離
するという操作を、上清中の260nmの吸光度が0に
なるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食塩水3リット
ルに溶解し、不溶物を遠心分離により除去後、2Mの食
塩水で平衡化した100mlのDEAE−セルロファイ
ンA−800(生化学工業社製)を添加し、かくはん
後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を2Mの食
塩水で平衡化したDEAE−セルロファインA−800
カラムにかけ、非吸着分を排除分子量10万以下のホロ
ファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性
物質及び食塩を完全に除去後、遠心分離及びろ過により
不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース
硫酸含有多糖混合物の重量は52gであった。
【0250】実施例3 マ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物の抽出 マ昆布を充分乾燥後、2kgを自由粉砕機(奈良機械製
作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リットル
の80%エタノールに懸濁し80℃、2時間処理した。
処理後ろ紙によりろ過し残渣を得た。この残渣に対して
上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返しエ
タノール洗浄残渣を得た。この残渣を36リットルの
0.2M酢酸カルシウム溶液に懸濁後、95℃、2時間
処理し、ろ過した。残渣を4リットルの0.2M酢酸カ
ルシウム溶液で洗浄し、マ昆布のフコース硫酸含有多糖
混合物の抽出液36リットルを得た。
【0251】実施例4 マ昆布のフコース硫酸含有多糖混合物の調製 実施例3で得られたろ液に、5%の塩化セチルピリジニ
ウムを、それ以上沈殿が生じなくなるまで添加し遠心分
離により沈殿を集めた。この沈殿を3リットルの0.3
M食塩水に懸濁後遠心分離し、洗浄した。この洗浄操作
を3回繰り返した後沈殿に1リットルの4M食塩水を添
加しよくかくはん後エタノールを80%となるように添
加し、かくはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿
を80%エタノール中に懸濁し遠心分離するという操作
を、上清中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返
した。この沈殿を2Mの食塩水3リットルに溶解し、不
溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化し
た100mlのDEAE−セルロファインA−800
(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂
をろ過により除去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化し
たDEAE−セルロファインA−800カラムにかけ非
吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバーを備え
た限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び食塩を完
全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を除去
し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖混合
物の重量は52gであった。また、このフコース硫酸含
有多糖混合物は多糖性の樹脂に吸着する着色性物質を含
まなかった。
【0252】実施例5 実施例4記載のフコース硫酸含有多糖混合物の凍結乾燥
物を1gずつ4つ秤量し、それぞれ水、0.2Mの塩化
ナトリウム、0.2Mの塩化カルシウム、0.2Mの塩
化マグネシウムに溶解した。次に、500mlのDEA
E−セファロースFFのカラムを4本用意し、内2本を
0.2Mの塩化ナトリウム、1本を0.2Mの塩化カル
シウム、1本を0.2Mの塩化マグネシウムでそれぞれ
平衡化した。0.2Mの塩化ナトリウムで平衡化したカ
ラムの一方をカラムの10倍量の水で洗浄した。水、塩
化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムにそ
れぞれ溶解したフコース硫酸含有多糖混合物をそれぞれ
水、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウ
ムでそれぞれ平衡化したDEAE−セファロースFFの
カラムにかけ、それぞれを平衡化に用いた溶液で充分に
洗浄し、次に、0から4Mの塩化ナトリウムのグラジエ
ントで溶出させた。この結果、塩化カルシウム及び塩化
マグネシウムを用いた系のみカラムにかけたフコース硫
酸含有多糖混合物の総量がカラムに吸着した。水及び食
塩で平衡化したカラムには0.4g相当のフコース硫酸
含有多糖しか吸着しなかった。また、いずれのカラムに
おいても、本発明のフコース硫酸含有多糖−Fとフコー
ス硫酸含有多糖−Uは実質的に分離された。
【0253】実施例6 ガゴメ昆布を充分乾燥後、2kgを自由粉砕機(奈良機
械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リッ
トルの80%エタノールに懸濁し80℃、2時間処理し
た。処理後ろ紙によりろ過し残渣を得た。この残渣に対
して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返
しエタノール洗浄残渣を得た。この残渣を36リットル
の0.2M酢酸カルシウム溶液に懸濁後、95℃、2時
間処理し、ろ過した。残渣を4リットルの0.2M酢酸
カルシウム溶液で洗浄し、ガゴメ昆布のフコース硫酸含
有多糖混合物抽出液36リットルを得た。このろ液を排
除分子量10万の限外ろ過膜を装着した限外ろ過器によ
り2リットルに濃縮し、次に、終濃度が1.5Mとなる
ように食塩を添加し5%の塩化セチルピリジニウムをこ
れ以上沈殿が生じなくなるまで添加した。生じた沈殿を
遠心分離により除去した。得られた上清を限外ろ過によ
り1リットルに濃縮し、4リットルのエタノールを添加
し、生じた沈殿を遠心分離により集めた。この沈殿に1
00mlの4M食塩水を添加しよくかくはん後エタノー
ルを80%となるように添加し、かくはん後遠心分離に
より沈殿を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸濁
し遠心分離するという操作を、上清中の260nmの吸
光度が0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食塩
水2リットルに溶解し、不溶物を遠心分離により除去
後、2Mの食塩水で平衡化した50mlのDEAE−セ
ルロファインA−800(生化学工業社製)を添加し、
かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ液を
2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セルロファインA
−800カラムにかけ非吸着分を排除分子量10万以下
のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、
着色性物質及び食塩を完全に除去後、遠心分離及びろ過
により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥し
たフコース硫酸含有多糖−Uの重量は15gであった。
また、この本発明のフコース硫酸含有多糖−Uは多糖性
の樹脂に吸着する着色性物質を含まなかった。またこの
フコース硫酸含有多糖−Uは、前記エンド型フコイダン
分解酵素を作用させると上記式(I)、(II)、及び
(III)で表されるオリゴ糖を生じた。
【0254】実施例7 ガゴメ昆布を充分乾燥後、2kgを自由粉砕機(奈良機
械製作所製)により粉砕し、得られた乾燥粉末を9リッ
トルの80%エタノールに懸濁し80℃、2時間処理し
た。処理後ろ紙によりろ過し残渣を得た。この残渣に対
して上記エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返
しエタノール洗浄残渣を得た。この残渣を36リットル
の0.2M酢酸カルシウム溶液に懸濁後、95℃、2時
間処理し、ろ過した。残渣を4リットルの0.2M酢酸
カルシウム溶液で洗浄し、ガゴメ昆布のフコース硫酸含
有多糖混合物抽出液36リットルを得た。得られたろ液
に5%の塩化セチルピリジニウムをそれ以上沈殿が生じ
なくなるまで添加し遠心分離により沈殿を集めた。この
沈殿を3リットルの0.4M食塩水に懸濁後遠心分離
し、洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後沈殿に
1リットルの4M食塩水を添加しよくかくはん後エタノ
ールを80%となるように添加し、かくはん後遠心分離
により沈澱を得た。この沈殿を80%エタノール中に懸
濁し遠心分離するという操作を、上清中の260nmの
吸光度を0になるまで繰り返した。この沈殿を2Mの食
塩水3リットルに溶解し、不溶物を遠心分離により除去
後、2Mの食塩水で平衡化した100mlのDEAE−
セルロファインA−800(生化学工業社製)を添加
し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除去した。ろ
液を2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セルロファイ
ンA−800カラムにかけ非吸着分を排除分子量10万
以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過
し、着色性物質及び食塩を完全に除去後、遠心分離及び
ろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾
燥フコース硫酸含有多糖混合物の重量は90gであっ
た。また、このフコース硫酸含有多糖混合物は多糖性の
樹脂に吸着する着色性物質を含まなかった。 このフコ
ース硫酸含有多糖混合物の凍結乾燥物を7g秤量し、
0.2Mの塩化カルシウムに溶解した。次に、4000
mlのDEAE−セファロースFFのカラムを0.2M
の塩化カルシウムで平衡化した。0.2Mの塩化カルシ
ウムに溶解したフコース硫酸含有多糖混合物をDEAE
−セファロースFFのカラムにかけ、0.2Mの塩化カ
ルシウムで充分洗浄し、次に、0〜4Mの塩化ナトリウ
ムのグラジエントで溶出させた。溶出画分の内塩化ナト
リウム濃度が0.05〜0.8Mの画分を集め透析によ
り脱塩後凍結乾燥し、実質的にフコース硫酸含有多糖−
Fと分離されたフコース硫酸含有多糖−Uを2.1g得
た。また、上記溶出画分の内塩化ナトリウム濃度が0.
9〜1.5Mの画分を集め透析により脱塩後凍結乾燥
し、実質的にフコース硫酸含有多糖−Uと分離されたフ
コース硫酸含有多糖−Fを4.7g得た。
【0255】実施例8 フコース硫酸含有多糖−Fの製造 実施例7で得られたフコース硫酸含有多糖混合物を1.
2g秤量し、1.5Mの塩化ナトリウム溶液に終濃度
0.2%となるように溶解し、1.25%の塩化セチル
ピリジニウムの1.5M塩化ナトリウム溶液をこれ以上
沈殿が生じなくなるまで添加した。生じた沈殿を遠心分
離により集め、この沈殿を500mlの1.5M食塩水
に懸濁後遠心分離し、洗浄した。この洗浄操作を3回繰
り返した後沈殿に1リットルの4M食塩水を添加しよく
かくはん後エタノールを80%となるように添加し、か
くはん後遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%
エタノール中に懸濁し遠心分離するという操作を、上清
中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。こ
の沈殿を2Mの食塩水500mlに溶解し、不溶物を遠
心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化した1ml
のDEAE−セルロファインA−800(生化学工業社
製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂をろ過により除
去した。ろ液を2Mの食塩水で平衡化したDEAE−セ
ルロファインA−800カラムにかけ非吸着分を排除分
子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置
で限外ろ過し、着色性物質及び食塩を完全に除去後、遠
心分離及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥し
た。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖−Fの重量は710
mgであった。また、このフコース硫酸含有多糖−Fは
多糖性の樹脂に吸着する着色性物質を含まなかった。ま
たこのフコース硫酸含有多糖−Fはウロン酸を含まずフ
コースを構成糖の主成分とする本発明のフコース硫酸含
有多糖−Fであった。
【0256】実施例9 フコース硫酸含有多糖−Fの酵素的精製方法 実施例7で得られたフコース硫酸含有多糖混合物を10
g秤量し、500mlの人工海水に溶解後、前記フラボ
バクテリウム sp. SA−0082(FERM B
P−5402)由来のエンド型フコイダン分解酵素を5
U添加し25℃、50時間反応させた。反応液を排除分
子量10万以下のホロファイバーを備えた限外ろ過装置
で限外ろ過し、低分子性物質を完全に除去後、遠心分離
及びろ過により不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍
結乾燥フコース硫酸含有多糖−Fの重量は6gであっ
た。また、このフコース硫酸含有多糖−Fは多糖性の樹
脂に吸着する着色性物質を含まなかった。またこのフコ
ース硫酸含有多糖−Fはウロン酸を含まず、フコースを
構成糖の主成分とする本発明のフコース硫酸含有多糖−
Fであることが判明した。
【0257】実施例10 フコース硫酸含有多糖−Fの培養的精製方法 実施例7で得られたフコース硫酸含有多糖混合物を60
g秤量し、20リットルの人工海水に溶解後ペプトン2
00gと酵母エキス4gを加え、30リットルのジャー
ファーメンターに入れ滅菌後、前記フラボバクテリウム
sp. SA−0082株(FERM BP−540
2)を植菌して25℃、24時間培養した。培養液を遠
心分離し菌体を除去後、排除分子量10万以下のホロフ
ァイバーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、低分子性
物質を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物
質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有
多糖−Fの重量は36gであった。また、このフコース
硫酸含有多糖−Fは多糖性の樹脂に吸着する着色性物質
を含まなかった。またこのフコース硫酸含有多糖−Fは
ウロン酸を含まずフコースを構成糖の主成分とする本発
明のフコース硫酸含有多糖−Fであることが判明した。
【0258】実施例11 実施例7記載のフコース硫酸含有多糖混合物の凍結乾燥
物を1gずつ4つ秤量し、それぞれ水、0.2Mの塩化
ナトリウム、0.2Mの塩化カルシウム、0.2Mの塩
化マグネシウムに溶解した。次に、500mlのDEA
E−セファロースFFのカラムを4本用意し、内2本を
0.2Mの塩化ナトリウム、1本を0.2Mの塩化カル
シウム、1本を0.2Mの塩化マグネシウムでそれぞれ
平衡化した。0.2Mの塩化ナトリウムで平衡化したカ
ラムの一方をカラムの10倍量の水で洗浄した。水、塩
化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムにそ
れぞれ溶解したフコース硫酸含有多糖混合物をそれぞれ
水、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウ
ムでそれぞれ平衡化したDEAE−セファロースFFの
カラムにかけ、それぞれを平衡化に用いた溶液で充分洗
浄し、次に、0から4Mの塩化ナトリウムのグラジェン
トで溶出させた。この結果、塩化カルシウム及び塩化マ
グネシウムを用いた系のみカラムにかけたフコース硫酸
含有多糖混合物の総量がカラムに吸着した。水及び食塩
で平衡化したカラムには0.4g相当のフコース硫酸含
有多糖しか吸着しなかった。また、いずれのカラムにお
いても、フコース硫酸含有多糖−Fとフコース硫酸含有
多糖−Uは実質的に分離された。
【0259】実施例12 実施例1記載のフコース硫酸含有多糖混合物を7g秤量
し、800mlの0.2Mの塩化カルシウムに溶解し
た。次に、4リットルのDEAE−セファロースFFの
カラムを0.2Mの塩化カルシウムで平衡化し、上記フ
コース硫酸含有多糖溶液を全量カラムにかけ、8リット
ルの0.2M塩化カルシウム溶液で洗浄後、0から4M
の塩化ナトリウムのグラジエントで溶出させた。溶出画
分の内ウロン酸が検出される画分(塩化ナトリウム濃度
約0.9M以下:フコース硫酸含有多糖−U)、ウロン
酸が検出されない画分(塩化ナトリウム濃度約1.2M
付近:フコース硫酸含有多糖−F)のそれぞれを脱塩後
凍結乾燥し、乾燥品をそれぞれ1.4g及び4.8g得
た。
【0260】実施例13 実施例1で得られるフコース硫酸含有多糖混合物に、フ
ラボバクテリウム sp. SA−0082(FERM
BP−5402)の生産するエンド型フコイダン分解
酵素を作用させると下記の構造を有するオリゴ糖を生成
する。
【化18】
【化19】
【化20】
【0261】本発明者らは、下記の酵素反応を行い、上
記オリゴ糖を得た。
【0262】すなわち、2.5%の実施例1のフコース
硫酸含有多糖混合物溶液80mlと、50mMのリン酸
緩衝液(pH7.5)60mlと4Mの塩化ナトリウム
20mlと32mU/mlのエンド型フコイダン分解酵
素溶液40mlを混合し、25℃で48時間反応させ
た。
【0263】反応液をセルロファインGCL−300
(生化学工業社製)のカラムにより分子量分画し、分子
量2000以下の画分を集めた。この画分をマイクロア
シライザーG3により脱塩後、DEAE−セファロース
FFにより3つの画分を分離し、再度脱塩後、凍結乾燥
した。こうして上記各式(I)、(II)、(III)のオ
リゴ糖をそれぞれ250mg、310mg、52mg得
た。
【0264】実施例14 実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物10g
を0.2Mのクエン酸500mlに溶解し、pHを2.
9に調整後、100℃で3時間処理した。この加水分解
物に1Mの酢酸カルシウム溶液を150ml添加し、生
じた沈殿を遠心分離により除去後セルロファインGCL
−25によるゲルろ過で分子量分画し(分子量5000
以上、5000〜3000超、3000〜2000超、
2000〜1000超、1000〜500超、500以
下)、分子量の大きい方から順に、GFd−Oli−
1、GFd−Oli−2、GFd−Oli−3、GFd
−Oli−4、GFd−Oli−5、及びGFd−Ol
i−6とした。これらの6画分を脱塩後凍結乾燥し、乾
燥品をそれぞれ2.3g、1.7g、0.88g、1.
8g、1.4g、及び0.72g得た。
【0265】実施例15 実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物を60
g秤量し、20リットルの人工海水に溶解後ペプトン2
00gと酵母エキス4gを加え30リットル容のジャー
ファーメンターに入れ滅菌後、フラボバクテリウム s
p. SA−0082(FERM BP−5402)を
植菌し25℃、24時間培養した。培養液を遠心分離
し、菌体を除去後、排除分子量10万以下のホロファイ
バーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、低分子性物質
を完全に除去後、遠心分離及びろ過により不溶性物質を
除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコース硫酸含有多糖
−Fの重量は36gであった。
【0266】実施例16 マナマコを5kg解体し、内臓を除去し、体壁を集め
た。体壁湿重量200g当り500mlのアセトンを加
え、ホモジナイザーで処理後ろ過し、残渣をこれ以上着
色物質がなくなるまでアセトンで洗浄した。この残渣を
吸引乾燥し140gの乾燥物を得た。この乾燥物に0.
4Mの食塩水2.8リットルを加え、100℃で1時間
処理後、ろ過し、残渣を0.4Mの食塩水で充分洗浄
し、抽出液3.7リットルを得た。この抽出液に5%の
セチルピリジニウムクロリドをこれ以上沈殿が生じなく
なるまで加え、生じた沈殿を遠心分離で集めた。この沈
殿を0.4Mの食塩水に懸濁後再度遠心分離し、得られ
た沈殿に1リットルの4M食塩水を添加し、ホモジナイ
ザーで処理後、かくはんしながら4リットルのエタノー
ルを添加し、1時間かくはん後、ろ過し、沈殿を得た。
この沈殿に対して、80%エタノールに懸濁後ろ過とい
う工程を上清の260nmの吸光度が0になるまで繰り
返した。得られた沈殿を2リットルの2M食塩水に懸濁
し、不溶物を遠心分離により除去した。上清を排除分子
量3万の膜を備えた限外ろ過装置により限外ろ過し、完
全に脱塩後、凍結乾燥し3.7gのフコース硫酸含有多
糖を得た。
【0267】実施例17 ヒバマタ(Fucus vesiculosus )を充分乾燥後、乾燥物
2kgを自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕
し、得られた乾燥粉末を9リットルの80%エタノール
に懸濁し、80℃、2時間処理した。処理後ろ紙により
ろ過し、残渣を得た。この残渣に対して上記エタノール
洗浄、ろ過という操作を3回繰り返しエタノール洗浄残
渣を得た。この残渣を40リットルの水に懸濁後、10
0℃、2時間処理し、ろ過した。ろ液に0.5Mとなる
ように塩化ナトリウムを加え、更に5%の塩化セチルピ
リジニウムをそれ以上沈殿が生じなくなるまで添加し、
遠心分離により沈殿を集めた。この沈殿を3リットルの
0.4M塩化ナトリウムに懸濁後遠心分離し、洗浄し
た。この洗浄操作を3回繰り返した後沈殿に250gの
塩化ナトリウムを加え、3リットルのエタノール中に懸
濁し、遠心分離により沈殿を得た。この沈殿を80%エ
タノール中に懸濁し、遠心分離するという操作を、上清
中の260nmの吸光度が0になるまで繰り返した。こ
の沈殿を2Mの塩化ナトリウム3リットルに溶解し、不
溶物を遠心分離により除去後、2Mの食塩水で平衡化し
た100mlのDEAE−セルロファインA−800
(生化学工業社製)を添加し、かくはん後、加えた樹脂
をろ過により除去した。ろ液を2Mの塩化ナトリウムで
平衡化したDEAEーセルロファインA−800カラム
にかけ非吸着分を排除分子量10万以下のホロファイバ
ーを備えた限外ろ過装置で限外ろ過し、着色性物質及び
塩化ナトリウムを完全に除去後、遠心分離及びろ過によ
り不溶性物質を除去し、凍結乾燥した。凍結乾燥フコー
ス硫酸含有多糖の重量は92gであった。
【0268】実施例18 わかめ(Undaria pinnatifida)を充分乾燥後、2kgを
自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕し、得られ
た乾燥粉末を9リットルのエタノールに懸濁し、75
℃、1時間処理した。処理後ろ紙によりろ過し、残渣を
得た。この残渣に対して80%のエタノールを9リット
ル添加、かくはんし、80℃、1時間処理後、ろ紙によ
りろ過し、残渣を得た。この残渣に対して、上記80%
エタノール洗浄、ろ過という操作を3回繰り返し、エタ
ノール洗浄残渣1908gを得た。この残渣のうち68
4gを9リットルの0.2M酢酸カルシウムに懸濁後、
95℃、1時間処理し、24時間静置後その上清を得
た。上清を除去した沈殿に9リットルの0.2M酢酸カ
ルシウムを添加かくはんし、1時間静置後上清を得、上
記上清と合せた。こうして得られた上清をろ紙でろ過
後、排除分子量10,000のホロファイバーを備えた
限外ろ過装置により限外ろ過し、350mlに濃縮し
た。濃縮液を遠心分離し、沈殿を除去後、2mMの塩化
ナトリウムを添加しながら限外ろ過し、完全に酢酸カル
シウムを除去後、凍結乾燥し、凍結乾燥物3.2gを得
た。凍結乾燥物中のフコース硫酸含有多糖の重量は3.
1gであった。
【0269】実施例19 (1)ガゴメ昆布フコース硫酸含有多糖混合物の調製 乾燥ガゴメ昆布2Kgを自由粉砕機M−2型(奈良機械
製作所製)により粉砕し、4.5倍量の80%エタノー
ル中で80℃、2時間処理後、ろ過した。残渣に対し、
上記80%エタノール抽出、ろ過という工程を更に3回
繰り返し、エタノール洗浄残渣1870gを得た。残渣
に36リットルの水を加え、100℃、2時間処理し、
ろ過により抽出液を得た。抽出液の塩濃度を400mM
の塩化ナトリウム溶液と同じにした後、5%のセチルピ
リジルクロリドをこれ以上沈殿が生じなくなるまで添加
し、遠心分離した。その沈殿を、80%のエタノールで
繰り返し洗浄し、セチルピリジニウムクロリドを完全に
除去した後、3リットルの2M塩化ナトリウムに溶解
し、不溶物を遠心分離で除去し、2Mの塩化ナトリウム
で平衡化した100mlのDEAE−セルロファインA
−800を懸濁し、かくはん後ろ過し、樹脂を除いた。
このろ液を、2Mの塩化ナトリウムで平衡化した100
mlのDEAE−セルロファインA−800のカラムに
かけ、通過画分を限外ろ過器(ろ過膜の排除分子量10
万)により脱塩及び低分子除去を行い、この際生じた沈
殿を遠心分離により除去した。この上清を凍結乾燥して
精製ガゴメ昆布フコース硫酸含有多糖混合物82.2g
を得た。
【0270】(2)フコース硫酸含有多糖−Fの調製 上記のガゴメ昆布由来フコース硫酸含有多糖混合物6g
を600mlの0.2Mの塩化カルシウムを含む20m
Mの酢酸ナトリウム(pH6.0)に溶解後、あらかじ
め0.2Mの塩化カルシウムを含む20mMの酢酸ナト
リウム(pH6.0)で平衡化した3600mlのDE
AE−セファロースFFのカラムにかけ、0.2Mの塩
化カルシウムを含む20mMの酢酸ナトリウム(pH
6.0)で充分カラムを洗浄後、0〜2Mの塩化ナトリ
ウムのグラジエントで溶出した。塩化ナトリウム濃度が
0.75M以上で溶出してくるフコース硫酸含有多糖−
F画分を集め、排除分子量10万の限外ろ過膜を装着し
た限外ろ過器で濃縮脱塩後凍結乾燥し、フコース硫酸含
有多糖−Fの凍結乾燥標品を3.3g得た。
【0271】(3)エンド型フコース硫酸含有多糖分解
酵素の調製 アルテロモナス sp. SN−1009(FERM
BP−5747)を、グルコース0.25%、ペプトン
1.0%、酵母エキス0.05%を含む人工海水(ジャ
マリンラボラトリー社製)pH8.2からなる培地60
0mlを分注して殺菌した(120℃、20分)2リッ
トルの三角フラスコに接種し、25℃で25時間培養し
て種培養液とした。 ペプトン200g、酵母エキス4
g、及び消泡剤(信越化学工業社製KM70)4mlを
含む人工海水pH8.0からなる培地18リットルを3
0リットル容のジャーファーメンターに入れて120℃
で20分殺菌した。冷却後、別に120℃、15分殺菌
した2リットルの人工海水に溶解した20gの実施例8
の方法を用いて調製したガゴメ昆布由来のフコース硫酸
含有多糖−F及び上記の種培養液600mlを接種し、
24℃で20時間、毎分10リットルの通気量と毎分2
50回転のかくはん速度の条件で培養した。培養終了
後、培養液を遠心分離して菌体及び培養上清を得た。培
養上清中の本発明のフコース硫酸含有多糖分解酵素の活
性をフコース硫酸含有多糖−Fを基質に用いて測定した
ところ、5mU/ml・培養液であった。得られた培養
上清を、分画分子量1万の限外ろ過器により濃縮後、生
じた沈殿を遠心分離により除去し、85%飽和硫安塩析
し、生じた沈殿を遠心分離により集め、10分の1濃度
の人工海水(ジャマリンS)を含む20mMのトリス−
塩酸緩衝液(pH8.2)に対して充分透析し、400
mlの粗酵素を得た。
【0272】得られた粗酵素液を、あらかじめ5mMの
アジ化ナトリウム及び10分の1濃度の人工海水(ジャ
マリンS)を含む20mMのトリスー塩酸緩衝液(pH
8.2)で平衡化したDEAE−セルロファインA−8
00(生化学工業社製)のカラムに吸着させ、吸着物を
同緩衝液にて充分洗浄後、同緩衝液中に100mM、2
00mM、300mM、400mM、及び600mMの
塩化ナトリウムを含む溶液で溶出し、活性画分を集め
た。得られた部分精製酵素の活性はフコース硫酸含有多
糖−Fを基質に用いて測定したところ、10200mU
(10.2U)であった。なお、他のフコース硫酸含有
多糖分解酵素の混入は認められなかった。得られた部分
精製酵素の一部をあらかじめ10分の1濃度の人工海水
(ジャマリンS)及び5mMのアジ化ナトリウムを含む
10mMのトリス−塩酸酸緩衝液(pH8.0)で平衡
化したセファクリル S−200でゲルろ過を行い、そ
の分子量を求めたところ約10万であった。
【0273】(4)上記実施例で得た部分精製酵素及び
PA−FFをそれぞれ酵素源及び基質として本酵素の活
性に及ぼすカルシウム濃度の検討を行った。酵素反応に
用いる緩衝液には50mMの酢酸、イミダゾール、及び
トリス−塩酸を含むpH7の緩衝液を用いた。また、反
応液には終濃度400mMの塩化ナトリウムを溶存させ
た。反応液中の塩化カルシウム濃度を0〜100mMま
で変化させ、酵素活性を測定したところ、図23に示す
ような結果が得られた。なお、図23において、縦軸は
相対活性(%)、横軸は反応液中カルシウム濃度(m
M) を示す。この結果、本酵素はカルシウム塩の存在下
著しく活性が高められることが判明した。
【0274】(5)本発明のエンド型フコース硫酸含有
多糖分解酵素を下記6種類の緩衝液で透析しながら5℃
で20時間保持した後、残存活性を測定した。 1.20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.2) 2.5mMアジ化ナトリウムを含む20mMトリス−塩
酸緩衝液(pH8.2) 3.5mMアジ化ナトリウム及び50mM塩化ナトリウ
ムを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.2) 4.5mMアジ化ナトリウム及び500mM塩化ナトリ
ウムを含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.2) 5.5mMアジ化ナトリウム、50mM塩化ナトリウ
ム、及び10mM塩化カルシウムを含む20mMトリス
−塩酸緩衝液(pH8.2) 6.5mMアジ化ナトリウム及び10分の1濃度の人工
海水(ジャマリンS)を含む20mMトリス−塩酸緩衝
液(pH8.2) 以上の結果、1、2、及び3の緩衝液で透析した本発明
のフコース硫酸含有多糖分解酵素は失活し、4、5、及
び6の緩衝液で透析した本発明のフコース硫酸含有多糖
分解酵素は活性が保持された。このことから本酵素は5
00mMの塩化ナトリウムの存在下あるいは10mMの
カルシウムイオンの存在下で安定化されることが判明し
た。
【0275】(6)上記実施例で調製したフコース硫酸
含有多糖−Fを5g秤量し、471mlの50mMイミ
ダゾール緩衝液(pH8)、12.5mlの4M塩化ナ
トリウム、6.25mlの4M塩化カルシウム、及び実
施例19−(3)で得られた本発明のフコース硫酸含有
多糖分解酵素の部分精製品10ml(6mU相当)を混
合し、25℃で120時間反応させたところフコース硫
酸含有多糖−Fの低分子化物が得られた。得られた低分
子化物のIR及びNMRの分析結果はそれぞれ図25及
び図26に示すとおりであった。また、セルロファイン
GCL−300でゲルろ過したところ、図24に示す結
果が得られた。すなわち、本物質は分子量1000〜3
0000にわたって分布するものである。また、本物質
の硫酸含量はSO(分子量96)として46%であ
り、中性糖組成はフコース:ガラクトース=100:4
であった。なお、図24〜図26における縦軸及び横軸
は、それぞれ図2〜図4と同義である。
【0276】実施例20 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブ
コ社製)にて37℃で培養したヒト前骨髄性白血病細胞
HL−60(ATCC CRL−1964)をASF1
04培地(味の素社製)にて5×10 個/9mlと
なるように懸濁した。この懸濁液9mlを4つ用意し、
それぞれの懸濁液に対し、実施例1、12、及び15で
得られたフコース硫酸含有多糖の生理食塩水溶液(5m
g/ml)のフィルター処理液〔ポアサイズ0.20μ
mのセルロースアセテート膜(コーニング社製)でろ過
したもの(以下フィルター処理はこの条件で行った)〕
を1ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で40
時間培養した。培養した細胞を遠心分離により上清と分
離した。得られた細胞を10mMのエチレンジアミンテ
トラアセテート及び0.5%のナトリウムラウロイルサ
ルコシネートを含む50mMのトリス塩酸緩衝液(pH
7.8)20μlにて懸濁し、10mg/mlのリボヌ
クレアーゼA(シグマ社製)を1μl添加して50℃、
30分間処理した後、10mg/mlのプロティネース
Kを1μl添加して50℃、1時間処理した。処理後の
細胞をサンプルとして、2%のアガロースゲルを用いて
100Vの定電圧の下で電気泳動を行った。このゲルを
エチジウムブロミド溶液に30分間浸した後、トランス
イルミネータを用いてゲル中のDNAの状態を確認した
ところ、アポトーシスに特有のDNAラダーが確認され
た。更に確認のためアポトーシスを誘発する試薬として
知られているアクチノマイシンDの10μg/ml溶液
を上記のフコース硫酸含有多糖の代りに用いて同様に操
作したところ、培養20時間で、フコース硫酸含有多糖
の場合と同じDNAラダーが確認できた。この結果よ
り、HL−60細胞は実施例1、12、及び15で得ら
れたフコース硫酸含有多糖によりアポトーシスを誘発さ
れることが明らかとなった。HL−60(ATCC C
CL−240)を用い、実施例1、12、及び15で得
られた各フコース硫酸含有多糖溶液〔5mg/mlとな
るように120mMの塩化ナトリウムを含む30mMの
ヘペス緩衝液(pH7.2)に溶解し、121℃、20
分間オートクレーブ処理したもの〕のアポトーシス誘発
作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
【0277】実施例21 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブ
コ社製)にて37℃で培養したヒト前骨髄性白血病細胞
HL−60(ATCC CCL−240)をASF10
4培地(味の素社製)にて5×10 個/9mlとな
るように懸濁した。この懸濁液9mlに対し、実施例1
5で得られたフコース硫酸含有多糖の生理食塩水溶液
(5mg/ml)のフィルター処理液を1ml添加し、
37℃、5%二酸化炭素存在下で20時間培養した。培
養した細胞を遠心分離により上清と分離した。得られた
細胞を「アポトーシス実験プロトコール」(秀潤社、田
沼靖一監修、第93〜95頁、1995年)に従ってギ
ムザ染色した。すなわち得られた細胞をカルノア固定液
(酢酸:メタノール=1:3)を用いてスライドグラス
上に固定し、ギムザ色素(メルク社製)を用いて染色
し、光学顕微鏡により観察したところアポトーシス特有
の核の断片化が観察された。この結果よりHL−60細
胞は実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖により
アポトーシスを起こすことが明らかとなった。実施例1
5で得られたフコース硫酸含有多糖溶液〔5mg/ml
となるように120mMの塩化ナトリウムを含む30m
Mのヘペス緩衝液(pH7.2)に溶解し、121℃、
20分間オートクレーブ処理したもの〕のアポトーシス
誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
【0278】実施例22 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブ
コ社製)にて37℃で培養したヒト前骨髄性白血病細胞
HL−60(ATCC CCL−240)をASF10
4培地(味の素社製)にて5×10コ/4.5ml
となるように懸濁した。この懸濁液4.5mlを4つ用
意し、それぞれの懸濁液に対し、実施例1、15、及び
18で得られた各フコース硫酸含有多糖溶液〔10mg
/mlとなるように120mMの塩化ナトリウムを含む
30mMのヘペス緩衝液(pH7.2)に溶解し、12
1℃、20分間オートクレーブ処理したもの〕及び12
0mMの塩化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液
を0.5ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で
培養し、培養開始後24時間及び40時間後に細胞数を
トリパンブルー染色法で計測した。
【0279】この結果を図27に示す。図27はHL−
60細胞の培養液に実施例1、15、及び18で得られ
たフコース硫酸含有多糖を1mg/mlとなるように添
加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を表
す図であり、横軸は培養時間(時間)、縦軸は培養液中
の生細胞数(×10コ/5ml)を示す。図27
中、培地に添加したフコース硫酸含有多糖の種類は、□
印が無添加(対照)、+印が実施例1、・印が実施例1
5、×印が実施例18で得られたフコース硫酸含有多糖
であることを示す。
【0280】また、この時死細胞は細胞の縮小及び断片
化等アポトーシスに特有の形態を示した。すなわちこれ
らの結果から、HL−60細胞は実施例1、15、及び
18で得られたフコース硫酸含有多糖によりアポトーシ
スを誘発され細胞増殖を著しく抑制されることが判明し
た。実施例1、15、及び18で得られた各フコース硫
酸含有多糖溶液〔10mg/mlとなるように120m
Mの塩化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液(p
H7.2)に溶解し、フィルター処理したもの〕のアポ
トーシス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得
た。
【0281】実施例23 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブ
コ社製)9mlにヒト急性リンパ芽球性白血病細胞MO
LT−3(ATCC CRL−1552)を5×10
個/9mlとなるように懸濁した。この懸濁液9ml
を5つ用意し、それぞれに実施例1、2、12、及び1
6で得られたフコース硫酸含有多糖の生理食塩水溶液
(5mg/ml)のフィルター処理液を1ml添加し、
37℃、5%二酸化炭素存在下で60時間培養した。培
養した細胞を遠心分離により上清と分離した。得られた
細胞を10mMのエチレンジアミンテトラアセテート及
び0.5%のナトリウムラウロイルサルコシネートを含
む50mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.8)20μl
にて懸濁し、10mg/mlのリボヌクレアーゼA(シ
グマ社製)を1μl添加して50℃、30分間処理した
後、10mg/mlのプロティネースKを1μl添加し
て50℃、1時間処理した。処理後の細胞をサンプルと
して、2%のアガロースゲルを用いて100Vの定電圧
の下で電気泳動を行った。このゲルをエチジウムブロミ
ド溶液に30分間浸した後、トランスイルミネータを用
いてゲル中のDNAの状態を確認したところ、アポトー
シスに特有のDNAラダーが確認された。更に確認のた
めアポトーシスを誘発する試薬として知られているアク
チノマイシンDの10μg/ml溶液を上記のフコース
硫酸含有多糖の代りに用いて同様に操作したところ、培
養20時間で、フコース硫酸含有多糖の場合と同じDN
Aラダーが確認できた。この結果より実施例1、2、1
2、及び16で得られたフコース硫酸含有多糖はMOL
T−3細胞に対してアポトーシスを誘発することが判明
した。実施例1、2、12及び16で得られた各フコー
ス硫酸含有多糖溶液〔5mg/mlとなるようにPBS
(8gの塩化ナトリウム、0.2gの塩化カリウム、
2.9gのリン酸水素二ナトリム12水和物、及び0.
2gのリン酸二水素カリウムを1リットルの水に溶解し
たもの)に溶解し、121℃、20分間オートクレーブ
処理したもの〕のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測
定し、同様の結果を得た。
【0282】実施例24 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブ
コ社製)にて37℃で培養したヒト急性リンパ芽球性白
血病細胞MOLT−3(ATCC CRL−1552)
をRPMI1640培地にて5×10コ/mlとな
るように懸濁し、FALCON社製24ウェルプレート
上の各ウェルに1.8mlずつ分注した。それぞれの懸
濁液に対し、0.5mg/mlとなるようにPBSに溶
解後ろ過滅菌した実施例1で得られたフコース硫酸含有
多糖混合物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多
糖−F、実施例15及び17で得られたフコース硫酸含
有多糖、及びデキストラン硫酸(分子量50万、和光純
薬社製)の溶液をそれぞれ0.2mlずつ添加し、37
℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照とし
てPBSのみを同量添加し、同様に培養した。培養開始
2日、4日、6日、8日後の生細胞数をトリパンブルー
染色法により計測した。この結果を図28に示す。すな
わち図28はMOLT−3細胞の培養液に実施例1で得
られたフコース硫酸含有多糖、実施例12で得られたフ
コース硫酸含有多糖−F、実施例15及び17で得られ
たフコース硫酸含有多糖、及びデキストラン硫酸を0.
5mg/mlとなるように添加したときの培養時間と培
養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横軸は培養時
間(日)、縦軸は培養液中の生細胞数(×10コ/
2ml)を示す。図28中、培地に添加した硫酸化多糖
の種類は、○印が無添加(対照)、●印が実施例12で
得られたフコース硫酸含有多糖−F、□印が実施例1で
得られたフコース硫酸含有多糖、△印が実施例17で得
られたフコース硫酸含有多糖、■印が実施例15で得ら
れたフコース硫酸含有多糖であることを示す。デキスト
ラン硫酸は実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖
の場合と実質的に同じ曲線を示した。また、この時死細
胞は細胞の縮小及び断片化等アポトーシスに特有の形態
を示した。すなわちこれらの結果から、MOLT−3細
胞は実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖、実施例
12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、実施例15
及び17で得られたフコース硫酸含有多糖、及びデキス
トラン硫酸によりアポトーシスを誘発され細胞増殖を著
しく抑制されることが判明した。実施例1で得られたフ
コース硫酸含有多糖、実施例12で得られたフコース硫
酸含有多糖−F、実施例15及び17で得られたフコー
ス硫酸含有多糖、及びデキストラン硫酸(分子量50
万、和光純薬社製)の各溶液(0.5mg/mlとなる
ようにPBSに溶解後、121℃、20分間オートクレ
ーブ処理したもの)のアポトーシス誘発作用を上記に準
じ測定し、同様の結果を得た。
【0283】実施例25 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブ
コ社製)にて37℃で培養したヒト前骨髄性白血病細胞
HL−60(ATCC CCL−240)をASF10
4培地(味の素社製)にて5×10個/900μl
となるように懸濁した。この懸濁液900μlを9つ用
意し、それぞれの懸濁液に対し、生理食塩水、及び実施
例1で得たフコース硫酸含有多糖標品、F−Fd−1〜
F−Fd−4、及び実施例13で得られた3種のフコー
ス硫酸含有オリゴ糖の各生理食塩水溶液(10mg/m
l)フィルター処理液を100μl添加し、37℃、5
%二酸化炭素存在下で40時間培養した。培養した細胞
を顕微鏡で観察し、増殖の程度及び細胞の形態を調べ
た。この結果、フコース硫酸含有多糖標品、F−Fd−
1〜F−Fd−4及び3種のフコース硫酸含有オリゴ糖
を添加したHL−60細胞はすべて細胞縮小及び細胞断
片化等のアポトーシスの特徴を呈した。また、生理食塩
水を添加したHL−60細胞は細胞数が約4倍に増加し
たが、フコース硫酸含有多糖標品、F−Fd−1〜F−
Fd−4及び3種のフコース硫酸含有オリゴ糖を添加し
たHL−60細胞は細胞数が全く増加しないものから1
0分の1以下になるものまでが見られ、これらフコース
硫酸含有多糖標品、F−Fd−1〜F−Fd−4及び3
種のフコース硫酸含有オリゴ糖のアポトーシス誘発作用
によりHL−60細胞の増殖が抑えられることが判明し
た。更に確認のためアポトーシスを誘発する試薬として
知られているアクチノマイシンDの10μg/ml溶液
を上記のフコース硫酸含有オリゴ糖の代りに用いて同様
に操作したところ、培養20時間で、フコース硫酸含有
オリゴ糖の場合と同じように、細胞の縮小及び細胞断片
化がみられた。この結果より、HL−60細胞は実施例
1で得られたフコース硫酸含有多糖標品、F−Fd−1
〜F−Fd−及び実施例13で得られたフコース硫酸含
有オリゴ糖によりアポトーシスを誘発されることが明ら
かとなった。実施例1で得たフコース硫酸含有多糖標
品、F−Fd−1〜F−Fd−4及び実施例13で得ら
れた3種のフコース硫酸含有オリゴ糖の各溶液〔10m
g/mlとなるように120mMの塩化ナトリウムを含
む30mMヘペス緩衝液(pH7)に溶解し、121
℃、20分間オートクレーブ処理したもの〕のアポトー
シス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
【0284】実施例26 肺癌細胞A−549(ATCC CCL−185)、S
V40形質転換した肺細胞WI−38VA13(ATC
C CCL−75.1)、及び肝癌細胞HepG2(A
TCC HB−8065)をそれぞれ10 個/1.
8mlとなるよう、56℃、30分間処理した牛胎児血
清(JRHバイオサイエンス社)を10%含むRPMI
1640培地に懸濁した。この懸濁液を1.8mlずつ
分注し、それぞれの懸濁液に対し、各癌細胞毎に生理食
塩水、及び実施例1及び15で得られたフコース硫酸含
有多糖、及び実施例14で得られた6種のフコース硫酸
含有オリゴ糖の各生理食塩水溶液(1mg/ml)のフ
ィルター処理液を200μl添加し、37℃、5%二酸
化炭素存在下で6日間培養した。培養した細胞を顕微鏡
で観察し、増殖の程度及び細胞の形態を調べた。この結
果実施例1及び15で得られたフコース硫酸含有多糖、
及び実施例14で得られた6種のフコース硫酸含有オリ
ゴ糖のうち分子量2000以上の3画分を添加した肺癌
細胞A−549、SV40形質転換した肺細胞WI−3
8VA13、及び肝癌細胞Hep G2はすべて細胞縮
小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。ま
た、生理食塩水を添加した各癌細胞は著しく細胞数が増
加したが、実施例1及び15で得られたフコース硫酸含
有多糖、及び実施例14で得られた6種のフコース硫酸
含有オリゴ糖のうち分子量2000以上の3画分を添加
した各種癌細胞は細胞数が減少し、これらのフコース硫
酸含有多糖及びオリゴ糖のアポトーシス誘発作用により
各種癌細胞の増殖が抑えられることが判明した。実施例
1及び15で得られたフコース硫酸含有多糖、及び実施
例14で得られた6種のフコース硫酸含有オリゴ糖の各
PBS溶液(1mg/ml)の121℃、20分間オー
トクレーブ処理物のアポトーシス誘発作用を上記に準じ
測定し、同様の結果を得た。
【0285】実施例27 結腸癌細胞HCT 116(ATCC CCL−24
7)、及び胃癌細胞AGS(ATCC CRL−173
9)をそれぞれ10 個/1.8mlとなるよう、5
6℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイ
エンス社)を10%含むMcCoy' s5a培地(ギブ
コ社製)、Ham' s F12培地(ギブコ社製)にそ
れぞれ懸濁した。この懸濁液を1.8mlずつ分注し、
それぞれの懸濁液に対し、各癌細胞毎に生理食塩水、及
び実施例1、12、及び15で得られたフコース硫酸含
有多糖及びF−Fd−1〜F−Fd−4の4種のフコー
ス硫酸含有オリゴ糖の各生理食塩水溶液(10mg/m
l)のフィルター処理液を200μl添加し、37℃、
5%二酸化炭素存在下で48時間培養した。培養した細
胞を顕微鏡で観察し、増殖の程度及び細胞の形態を調べ
た。この結果実施例1、12、及び15で得られたフコ
ース硫酸含有多糖及びF−Fd−1〜F−Fd−4の4
種のフコース硫酸含有オリゴ糖を添加した結腸癌細胞H
CT 116及び胃癌細胞AGSはすべて細胞縮小及び
細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。また、生
理食塩水を添加した各種癌細胞は著しく細胞数が増加し
たが、実施例1、12、及び15で得られたフコース硫
酸含有多糖及びF−Fd−1〜F−Fd−4の4種のフ
コース硫酸含有オリゴ糖を添加した各種癌細胞は細胞数
が減少し、これらのフコース硫酸含有多糖及びオリゴ糖
のアポトーシス誘発作用により各種癌細胞の増殖が抑え
られることが判明した。実施例1、12、及び15で得
られたフコース硫酸含有多糖及びF−Fd−1〜F−F
d−4の4種のフコース硫酸含有オリゴ糖の各PBS溶
液(10mg/ml)の121℃、20分間オートクレ
ーブ処理液のアポトーシス誘発作用を上記に準じ測定
し、同様の結果を得た。
【0286】実施例28 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%含むMcCoy’s5a培地(ギ
ブコ社製)にて37℃で培養したヒト結腸癌細胞HCT
116をMcCoy’s5a培地にて5×10
/mlとなるように懸濁し、FALCON社製24ウェ
ルプレート上の各ウェルに1.8mlずつ分注した。そ
れぞれの懸濁液に対し、PBSに溶解させた10mg/
mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品、
フコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフ
コース硫酸含有多糖−F、フコース硫酸含有多糖−U、
F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−
Fd−4、実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖
の各溶液、及びPBSに溶解させた5mg/mlのヘパ
リン(和光純薬社製)及びデキストラン硫酸(分子量5
0万、和光純薬社製)を121℃、20分間オートクレ
ーブ処理したものを0.2ml添加し、37℃、5%二
酸化炭素存在下で培養した。なお、対照としてPBSの
みを同量添加し、同様に培養した。培養開始1日、2
日、3日、4日後の生細胞数を「組織培養の技術」(第
2版)(朝倉出版、日本組織培養学会編、1990
年))記載の方法(第26〜28頁)に従って計測し
た。すなわち、血球計算板上のトリパンブルー染色によ
る方法で計測した。
【0287】得られた結果を図29に示す。すなわち図
29はHCT 116細胞の培養液に実施例1で得られ
たフコース硫酸含有多糖標品、実施例1で得られたフコ
ース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコー
ス硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−F、F
−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−F
d−4、実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖を
1mg/ml、及びヘパリン及びデキストラン硫酸を
0.5mg/mlとなるように添加したときの培養時間
と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横軸は培
養時間(日)、縦軸は培養液中の生細胞数(×10
コ/2ml)を示す。図29中、培地に添加したフコー
ス硫酸含有多糖あるいはオリゴ糖の種類は、○印が無添
加(対照)、●印が実施例1で得られたフコース硫酸含
有多糖標品、■印が実施例1で得られたフコース硫酸含
有多糖混合物である。実施例12で得られたフコース硫
酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有多糖−F、F−F
d−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−
4、及び実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖は
実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物の場合
と実質的に同じ曲線を示した。またヘパリン及びデキス
トラン硫酸は実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖
標品の場合と実質的に同じ曲線を示した。
【0288】この結果PBSを添加したHCT 116
細胞は著しく細胞数が増加したが、実施例1で得られた
フコース硫酸含有多糖標品、フコース硫酸含有多糖混合
物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、
フコース硫酸含有多糖−U、F−Fd−1、F−Fd−
2、F−Fd−3、及びF−Fd−4、実施例15で得
られたフコース硫酸含有多糖、ヘパリン、及びデキスト
ラン硫酸を添加したHCT 116細胞は細胞数がほと
んど増加しないか、あるいは減少した。
【0289】また、実施例1で得られたフコース硫酸含
有多糖標品、フコース硫酸含有多糖混合物、実施例12
で得られたフコース硫酸含有多糖−F、フコース硫酸含
有多糖−U、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−
3、及びF−Fd−4、実施例15で得られたフコース
硫酸含有多糖、ヘパリン、及びデキストラン硫酸を添加
したHCT 116細胞はすべて細胞縮小及び細胞断片
化等のアポトーシスの特徴を呈した。すなわち、これら
のフコース硫酸含有多糖及びオリゴ糖、ヘパリン、及び
デキストラン硫酸のアポトーシス誘発作用によりHCT
116細胞の増殖が抑制されることが判明した。PB
Sに溶解させた10mg/mlの実施例1で得られたフ
コース硫酸含有多糖標品、フコース硫酸含有多糖混合
物、実施例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、
フコース硫酸含有多糖−U、F−Fd−1、F−Fd−
2、F−Fd−3、及びF−Fd−4、実施例15で得
られたフコース硫酸含有多糖の各溶液のフィルター処理
液、及びPBSに溶解させた5mg/mlのヘパリン、
及びデキストラン硫酸の各フィルター処理液のアポトー
シス誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
【0290】実施例29 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%含むMcCoy’s5a培地(ギ
ブコ社製)にて37℃で培養したヒト結腸癌細胞HCT
116をMcCoy’s5a培地にて5×10
/mlとなるように懸濁し、FALCON社製24ウェ
ルプレート上の各ウェルに1.8mlずつ分注した。そ
れぞれの懸濁液に対し、PBSに溶解させた20mg/
ml、30mg/ml、及び50mg/mlの実施例1
で得られたフコース硫酸含有多糖標品の溶液を121
℃、20分間オートクレーブ処理したものを0.2ml
添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。な
お、対照としてPBSのみを同量添加し、同様に培養し
た。培養開始後経時的に生細胞数を「組織培養の技術」
(第2版)(朝倉出版、日本組織培養学会編、1990
年)記載の方法(第26〜28頁)に従って計測した。
すなわち、血球計算板上のトリパンブルー染色による方
法で計測した。
【0291】得られた結果を図30に示す。すなわち図
30はHCT 116細胞の培養液に実施例1で得られ
たフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したと
きの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であ
り、横軸は培養時間(時間)、縦軸は培養液中の生細胞
数(×10コ/2ml)を示す。図30中、培地へ
のフコース硫酸含有多糖標品の添加量は、○印が無添加
(対照)、●印が2mg/ml、■印が3mg/ml、
黒三角印が5mg/mlである。
【0292】この結果PBSを添加したHCT 116
細胞は著しく細胞数が増加したが、実施例1で得られた
フコース硫酸含有多糖標品を添加したHCT 116細
胞は細胞数が減少した。また、実施例1で得られたフコ
ース硫酸含有多糖標品を添加したHCT 116細胞は
すべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシスの特徴
を呈した。すなわち、実施例1で得られたフコース硫酸
含有多糖標品は少なくとも2mg/mlの濃度でHCT
116細胞に対してアポトーシス誘発作用を持ち、細
胞の増殖を抑制できることが判明した。PBSに溶解さ
せた20mg/ml、30mg/ml、及び50mg/
mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の
溶液のフィルター処理液のアポトーシス誘発作用を上記
に準じ測定し、同様の結果を得た。
【0293】実施例30 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%含むHam’s F12培地(ギ
ブコ社製)にて37℃で培養したヒト胃癌細胞AGSを
Ham’s F12培地にて5×10コ/mlとな
るように懸濁し、FALCON社製24ウェルプレート
上の各ウェルに1.8mlずつ分注した。それぞれの懸
濁液に対し、PBSに溶解させた20mg/ml、30
mg/ml、及び50mg/mlの実施例1で得られた
フコース硫酸含有多糖標品の溶液を121℃、20分間
オートクレーブ処理したものを0.2ml添加し、37
℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照とし
てPBSのみを同量添加し同様に培養した。培養開始後
経時的に生細胞数を「組織培養の技術」(第2版)(朝
倉出版、日本組織培養学会編、1990年)記載の方法
(第26〜28頁)に従って計測した。すなわち、血球
計算板上のトリパンブルー染色による方法で計測した。
【0294】得られた結果を図31に示す。すなわち図
31はAGS細胞の培養液に実施例1で得られたフコー
ス硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したときの培養
時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横軸
は培養時間(時間)、縦軸は培養液中の生細胞数(×1
コ/2ml)を示す。図31中、培地へのフコー
ス硫酸含有多糖標品の添加量は、○印が無添加(対
照)、●印が2mg/ml、■印が3mg/ml、黒三
角印が5mg/mlである。
【0295】この結果PBSを添加したAGS細胞は著
しく細胞数が増加したが、実施例1で得られたフコース
硫酸含有多糖標品を終濃度で3mg/ml以上添加した
AGS細胞は細胞数が減少し、2mg/mlを添加した
ものも著しく細胞の増殖が抑制された。また、実施例1
で得られたフコース硫酸含有多糖標品を添加したAGS
細胞はすべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポトーシス
の特徴を呈した。すなわち、実施例1で得られたフコー
ス硫酸含有多糖標品は少なくとも2mg/mlの濃度で
AGS細胞に対してアポトーシス誘発作用を持ち、細胞
の増殖を抑制できることが判明した。PBSに溶解させ
た20mg/ml、30mg/ml、及び50mg/m
lの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の溶
液のフィルター処理液のアポトーシス誘発作用を上記に
準じ測定し、同様の結果を得た。
【0296】実施例31 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%含むL−15培地(ギブコ社製)
にて37℃で培養したヒト結腸癌細胞SW480(AT
CC CCL−228)をL−15培地にて5×10
コ/mlとなるように懸濁し、FALCON社製2
4ウェルプレート上の各ウェルに1.8mlずつ分注し
た。それぞれの懸濁液に対し、PBSに溶解させた10
mg/ml、30mg/ml、及び50mg/mlの実
施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品の溶液を1
21℃、20分間オートクレーブ処理したものを0.2
ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で培養し
た。なお、対照としてPBSのみを同量添加し、同様に
培養した。培養開始後経時的に生細胞数を「組織培養の
技術」(第2版)(朝倉出版、日本組織培養学会編、1
990年)記載の方法(第26〜28頁)に従って計測
した。すなわち、血球計算板上のトリパンブルー染色に
よる方法で計測した。
【0297】得られた結果を図32に示す。すなわち図
32はSW480細胞の培養液に実施例1で得られたフ
コース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したときの
培養時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、
横軸は培養時間(時間)、縦軸は培養液中の生細胞数
(×10コ/2ml)を示す。図32中、培地への
フコース硫酸含有多糖標品の添加量は、○印が無添加
(対照)、●印が1mg/ml、■印が3mg/ml、
黒三角印が5mg/mlである。
【0298】この結果PBSを添加したSW480細胞
は著しく細胞数が増加したが、実施例1で得られたフコ
ース硫酸含有多糖標品を終濃度で3mg/ml以上添加
したSW480細胞は細胞数が減少し、1mg/mlを
添加したものも著しく細胞の増殖が抑制された。また、
実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を添加し
たSW480細胞はすべて細胞縮小及び細胞断片化等の
アポトーシスの特徴を呈した。すなわち、実施例1で得
られたフコース硫酸含有多糖標品は少なくとも1mg/
mlの濃度でSW480細胞に対してアポトーシス誘発
作用を持ち、細胞の増殖を抑制できることが判明した。
PBSに溶解させた10mg/ml、30mg/ml、
及び50mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸
含有多糖標品の溶液のフィルター処理液のアポトーシス
誘発作用を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
【0299】実施例32 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%及びNEAA(大日本製薬社製)
を1%含むDMEM培地(大日本製薬社製)にて37℃
で培養したヒト結腸癌細胞WiDr(ATCC CCL
−218)を上記培地にて5×10コ/mlとなる
ように懸濁し、FALCON社製24ウェルプレート上
の各ウェルに1.8mlずつ分注した。それぞれの懸濁
液に対し、PBSに溶解させた10mg/mlの実施例
1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12
で得られたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及
びF−Fd−4、及び実施例15で得られたフコース硫
酸含有多糖の各溶液を121℃、20分間オートクレー
ブ処理したものを0.2ml添加し、37℃、5%二酸
化炭素存在下で培養した。なお、対照としてPBSのみ
を同量添加し、同様に培養した。培養開始後経時的に生
細胞数を「組織培養の技術」(第2版)(朝倉出版、日
本組織培養学会編、1990年)記載の方法(第26〜
28頁)に従って計測した。すなわち、血球計算板上の
トリパンブルー染色による方法で計測した。
【0300】得られた結果を図33に示す。すなわち図
33はWiDr細胞の培養液に実施例1で得られたフコ
ース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコー
ス硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF−Fd−4及
び実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖を1mg
/mlとなるように添加したときの培養時間と培養液中
の生細胞数の関係を表す図であり、横軸は培養時間(時
間)、縦軸は培養液中の生細胞数(×10コ/2m
l)を示す。図33中、培地に添加したフコース硫酸含
有多糖の種類は、○印が無添加(対照)、■印が実施例
12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、●印が実施
例15で得られたフコース硫酸含有多糖である。F−F
d−3及びF−Fd−4は実施例15で得られたフコー
ス硫酸含有多糖の場合と実質的に同じ曲線を示した。
【0301】この結果PBSを添加したWiDr細胞は
著しく細胞数が増加したが、実施例1で得られたフコー
ス硫酸含有多糖混合物、実施例12で得られたフコース
硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF−Fd−4、及
び実施例15で得られたフコース硫酸含有多糖を添加し
たWiDr細胞は細胞数が減少した。また、実施例1で
得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得
られたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF
−Fd−4、及び実施例15で得られたフコース硫酸含
有多糖を添加したWiDr細胞はすべて細胞縮小及び細
胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈した。すなわち、
実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施
例12で得られたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd
−3及びF−Fd−4、及び実施例15で得られたフコ
ース硫酸含有多糖はWiDr細胞に対してアポトーシス
誘発作用を持ち、細胞の増殖を抑制できることが判明し
た。PBSに溶解させた10mg/mlの実施例1で得
られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得ら
れたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF−
Fd−4、及び実施例15で得られたフコース硫酸含有
多糖の溶液のフィルター処理液のアポトーシス誘発作用
を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
【0302】実施例33 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%及びNEAA(大日本製薬社製)
を1%含むDMEM培地(大日本製薬社製)にて37℃
で培養したヒト結腸癌細胞WiDr(ATCC CCL
−218)を上記培地にて5×10コ/mlとなる
ように懸濁し、FALCON社製24ウェルプレート上
の各ウェルに1.8mlずつ分注した。それぞれの懸濁
液に対し、PBSに溶解させた10mg/ml、30m
g/ml、及び50mg/mlの実施例1で得られたフ
コース硫酸含有多糖標品の溶液を121℃、20分間オ
ートクレーブ処理したものを0.2ml添加し、37
℃、5%二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照とし
てPBSのみを同量添加し、同様に培養した。培養開始
後経時的に生細胞数を「組織培養の技術」(第2版)
(朝倉出版、日本組織培養学会編、1990年)記載の
方法(第26〜28頁)に従って計測した。すなわち、
血球計算板上のトリパンブルー染色による方法で計測し
た。
【0303】得られた結果を図34に示す。すなわち図
34はWiDr細胞の培養液に実施例1で得られたフコ
ース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加したときの培
養時間と培養液中の生細胞数の関係を表す図であり、横
軸は培養時間(時間)、縦軸は培養液中の生細胞数(×
10コ/2ml)を示す。図34中、培地へのフコ
ース硫酸含有多糖標品の添加量は、○印が無添加(対
照)、●印が1mg/ml、■印が3mg/ml、黒三
角印が5mg/mlである。
【0304】この結果PBSを添加したWiDr細胞は
著しく細胞数が増加したが、実施例1で得られたフコー
ス硫酸含有多糖標品を終濃度で3mg/ml以上添加し
たWiDr細胞は細胞数が減少し、1mg/mlを添加
したものも著しく細胞の増殖が抑制された。また、実施
例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を添加したW
iDr細胞はすべて細胞縮小及び細胞断片化等のアポト
ーシスの特徴を呈した。すなわち、実施例1で得られた
フコース硫酸含有多糖標品は少なくとも1mg/mlの
濃度でWiDr細胞に対してアポトーシス誘発作用を持
ち、細胞の増殖を抑制できることが判明した。PBSに
溶解させた10mg/ml、30mg/ml、及び50
mg/mlの実施例1で得られたフコース硫酸含有多糖
標品の溶液のフィルター処理液のアポトーシス誘発作用
を上記に準じ測定し、同様の結果を得た。
【0305】実施例34 56℃、30分間処理した牛胎児血清(JRHバイオサ
イエンス社)を10%含むRPMI1640培地(ギブ
コ社製)にて37℃で培養したヒト前骨髄性白血病細胞
HL−60(ATCC CCL−240)をASF10
4培地(味の素社製)にて5×10 コ/900μl
となるように懸濁し、FALCON社製6ウェルプレー
ト上の各ウェルに4.5mlずつ分注した。それぞれの
懸濁液に対し、実施例19−(6)記載のフコース硫酸
含有多糖−Fの低分子化物を凍結乾燥したものを10m
g/mlとなるように120mMの塩化ナトリウムを含
む30mMヘペス緩衝液(pH7)に溶解し、フィルタ
ーろ過処理したものを0.5ml添加し、37℃、5%
二酸化炭素存在下で培養した。なお、対照として上記緩
衝液のみを同量添加し、同様に培養した。培養開始22
時間後と46時間後の生細胞数を組織培養の技術(第2
版)(朝倉出版、日本組織培養学会編)記載の方法(第
26〜28頁)に従って計測した。すなわち、血球計算
板上のトリパンブルー染色による方法で計測した。この
結果HL−60細胞は上記のフコース硫酸含有多糖−F
の低分子化物を凍結乾燥したものによりアポトーシスを
誘発され、細胞増殖速度が抑制されることが判明した。
【0306】実施例35 ヒト前骨髄性白血病細胞HL−60を、56℃、30分
間処理した牛胎児血清(JRHバイオサイエンス社製)
を10%含むRPMI1640培地(ギブコ社製)に5
×10 個/900μlとなるように懸濁した。この
懸濁液を6つ用意し、それぞれの懸濁液に対し、120
mMの塩化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液
(pH7)及び同緩衝液に10mg/mlで溶解させた
実施例19−(2)記載のフコース硫酸含有多糖−F、
F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−
Fd−4のフィルター処理液をそれぞれ100μl添加
し、37℃、5%二酸化炭素存在下で46時間培養し
た。培養開始後22時間及び46時間に培養液中の生細
胞数を測定した。また、ヒト前骨髄性白血病細胞HL−
60を、ASF104培地(味の素社製)に5×10
個/900μlとなるように懸濁した。この懸濁液を
6つ用意し、それぞれの懸濁液に対し、120mMの塩
化ナトリウムを含む30mMのヘペス緩衝液(pH7)
及び同緩衝液に10mg/mlで溶解させたフコース硫
酸含有多糖−F、F−Fd−1、F−Fd−2、F−F
d−3、及びF−Fd−4のフィルター処理液をそれぞ
れ100μl添加し、37℃、5%二酸化炭素存在下で
40時間培養した。培養開始後16時間及び40時間に
培養液中の生細胞数を測定した。また、上記2種類の培
養を行った細胞を顕微鏡で観察し、増殖の程度及び細胞
の形態を調べた。この結果、ASF104培地で培養し
た細胞においては、フコース硫酸含有多糖−F、F−F
d−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及びF−Fd−
4を添加した細胞が総て細胞縮小及び細胞断片化等のア
ポトーシスの特徴を呈し、生細胞数はほとんど増加がみ
られなかったかあるいはほぼ完全に死滅していた。緩衝
液のみ添加した培地において細胞数は約3倍に増加して
いた。一方、RPMI1640培地で培養した細胞にお
いてはF−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及
びF−Fd−4を添加した細胞のみが総て細胞縮小及び
細胞断片化等のアポトーシスの特徴を呈し、細胞はほと
んど死滅していた。緩衝液のみ添加した培地において細
胞数は約3倍に増加し、フコース硫酸含有多糖−Fを添
加した培地において細胞数は約2.5倍に増加してい
た。以上の結果から、フコース硫酸含有多糖−Fは無血
清培地で癌細胞に対して強いアポトーシス誘発作用を持
つが、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−3、及
びF−Fd−4は、無血清培地でも血清培地でも非常に
強いアポトーシス誘発作用を持つことが判明した。
【0307】更に確認のため、ヒト前骨髄性白血病細胞
HL−60を、56℃、30分間処理した牛胎児血清
(JRHバイオサイエンス社製)を10%含むRPMI
1640培地(ギブコ社製)に5×10 個/900
μlとなるように懸濁した。この懸濁液9mlを2本用
意し、それぞれに、120mMの塩化ナトリウムを含む
30mMのヘペス緩衝液(pH7)及び同緩衝液に10
mg/mlで溶解させたF−Fd−4のフィルター処理
液をそれぞれ1ml添加し、37℃、5%二酸化炭素存
在下で16時間培養した。 培養した細胞を遠心分離に
より上清と分離した。 得られた細胞を10mMのエチ
レンジアミンテトラアセテート及び0.5%のナトリウ
ムラウロイルサルコシネートを含む50mMのトリス塩
酸緩衝液(pH7.8)20μlにて懸濁し、10mg
/mlリボヌクレアーゼA(シグマ社製)を1μl添加
して50℃、30分間処理した後、10mg/mlのプ
ロテイネースKを1μl添加して50℃、30分間処理
した。 処理後の細胞をサンプルとして、2%のアガロ
ースゲルを用いて100Vの定電圧の下で電気泳動を行
った。このゲルをエチジウムブロミド溶液に30分間浸
した後、トランスイルミネーターを用いてゲル中のDN
Aの状態を確認したところ、アポトーシスに特有のDN
Aラダーが確認された。 さらに確認のためアポトーシ
スを誘発する試薬として知られているアクチノマイシン
Dを上記のF−Fd−4の代わりに用いて同様に操作し
たところ、F−Fd−4の場合と同じDNAラダーが確
認できた。すなわち、本発明のエンド型フコース硫酸含
有多糖−F分解酵素によりフコース硫酸含有多糖−Fを
分解するとがん細胞に対するアポトーシス誘発作用が強
くなることが判明した。
【0308】実施例36 21才女性及び32才男性の健常人静脈血を採血し、1
リットル当りグルコースを100mg、CaCl
2H Oを0.74mg、MgCl を19.92m
g、KClを40.26mg、NaClを7371m
g、トリス−塩酸を1756.5mgを含む液で2倍希
釈後、リンパ球分離溶液(大日本製薬販売)をあらかじ
め希釈血液の2倍容量を入れた遠心分離管の中に静かに
重層し、18〜20℃、400gで30分間遠心分離し
た。遠心後、リンパ球分離溶液の上層のリンパ球画分を
集めた。こうして得られた健常リンパ球を1.9×10
個ずつ24ウェルのプレートに添加し、1.8ml
の10%牛胎児血清(56℃、30分処理後のもの)を
含むRPMI−1640培地に0.2mlの5mg/m
lの上記各実施例で得られたフコース硫酸含有多糖、そ
の分解物を1種類ずつ加えた培地を加え37℃で培養し
た。コントロールとしてはフコース硫酸含有多糖溶液の
代りに生理食塩水を添加した。培養開始後、顕微鏡で各
ウェルの細胞の形態変化及び生細胞数を測定した。この
結果、各種フコース硫酸含有多糖、その分解物を加えた
ウェルもコントロールのウェルも細胞形態に差がなく、
また生細胞数の差もほとんど無く、13日目にはどちら
の細胞もほとんど死滅した。この結果より、フコース硫
酸含有多糖、その分解物は癌細胞に対して強くアポトー
シスを誘発させる濃度においても健常細胞に毒性を示さ
ないことが判明した。
【0309】実施例37 フコース硫酸含有多糖−Uの固形がんに対する制がん作
用マウス固形がんMethA(4×10cells/
マウス)を8週齢の雌性BALB/cマウス(体重約2
0g)の腹部に皮下注射した。その後、引き続いて同じ
箇所に10日間実施例6記載のフコース硫酸含有多糖−
U(100mg/kg/day)を皮下注射した。一方
コントロール群には生理的食塩水を同様に皮下注射し
た。2週間後にマウス腹部に形成されたがん組織を摘出
して、その重量を測定した。結果を表2に示す。すなわ
ち、コントロール群では平均癌重量は1.25gであっ
たのに対し、フコース硫酸含有多糖−U投与群では0.
28gであり、有意(コントロール群に対しp<0.0
1)な制がん作用を示した。抑制率は77.6%であっ
た。
【0310】
【表2】
【0311】実施例38 フコース硫酸含有多糖の発がん予防作用 (1)6週令のSpragure−Dawleyラット
(雄)19匹に、7.4mg/kgのアゾキシメタン
(ナカライテスク社製)を背部皮下投与し、以降1週間
に1回、10週目まで背部皮下投与した。なお投与時
は、アゾキシメタンを0.9%の塩化ナトリウムを含む
pH6.5の0.1Mリン酸緩衝液に溶解し、毎回10
0μlとなるように溶液の濃度を調整した。上記19匹
中5匹に対しては最初のアゾキシメタン投与と同時に連
日、実施例1の記載に準じ調製した、ガゴメ昆布熱水抽
出液70mlを30週目まで飲料水として経口投与し
た。この熱水抽出液は2mg/mlのフコース硫酸含有
多糖混合物を含有し、140mg/kgのフコース硫酸
含有多糖混合物が連日経口投与された。なお上記19匹
中14匹に対してはフコース硫酸含有多糖は投与せず、
水道水を飲料水として与え、対照群とした。30週目ま
でに対照群の外耳巣がん発生が14匹中14匹見られた
のに対し、フコース硫酸含有多糖混合物投与群は5匹中
1匹であり、顕著な発がん抑制作用が認められた。なお
30週目までに対照群は3匹死亡したが、フコース硫酸
含有多糖混合物投与群は全匹生存した。また30週目の
対照群の平均体重が716gであるのに対し、フコース
硫酸含有多糖混合物投与群の平均体重は817gであっ
た。一方アゾキシメタン非投与のラット群(5匹)の平
均体重は788gであり、フコース硫酸含有多糖混合物
投与群の体重増加はアゾキシメタン非投与のラット群と
同等であった。次に、対照群の4匹を選抜し、30週目
より連日、上記ガゴメ昆布熱水抽出液40ml(フコー
ス硫酸含有多糖混合物80mg)を飲料水として経口投
与した。36週目において、4匹中2匹の外耳巣がんが
顕著に退縮し、フコース硫酸含有多糖の制がん作用が認
めらた。以上フコース硫酸含有多糖の経口投与により、
化学発がん剤による発がん予防作用、化学発がん剤によ
る体重増加抑制の防止作用、更にはがん組織の退縮が認
められた。
【0312】実施例39 注射剤 実施例1で製造したフコース硫酸含有多糖混合物を注射
用蒸留水に溶解し5%溶液とした。この溶液を凍結乾燥
用バイアル瓶1バイアル中に、フコース硫酸含有多糖と
して50mg充てんし、凍結乾燥を行った。別に溶解液
として生理食塩水2mlを添加した。
【0313】実施例40 注射剤 下記処方に従い注射剤を調製した。 フコース硫酸含有多糖−U[実施例12] 40mg 生理食塩水 適量 1アンプル当り 2ml 同様に実施例12記載のフコース硫酸含有多糖−Fを使
用し注射剤を調製した。
【0314】実施例41 錠剤下記処方に従い錠剤を調
製した。 フコース硫酸含有多糖標品(実施例1) 10mg コーンスターチ 65mg カルボキシメチルセルロース 20mg ポリビニルピロリドン 3mg ステアリン酸マグネシウム 2mg 1錠当り 100mg
【0315】実施例42 注射剤 F−Fd−1を注射用蒸留水に溶解し5%溶液とした。
この溶液を凍結乾燥用バイアル瓶1バイアル中に、フコ
ース硫酸含有多糖として50mg充てんし、凍結乾燥を
行った。別に溶解液として生理食塩水2mlを添加し
た。
【0316】実施例43 注射剤 下記処方に従い注射剤を調製した。 実施例19−(6)で得られたフコース硫酸含有多糖−F の低分子化物の凍結乾燥物 40mg 生理食塩水 適量 1アンプル当り 2ml
【0317】実施例44 錠剤 下記処方に従い錠剤を調製した。 実施例19−(6)で得られたフコース硫酸含有多糖−F の低分子化物の凍結乾燥物 10mg コーンスターチ 65mg カルボキシメチルセルロース 20mg ポリビニルピロリドン 3mg ステアリン酸マグネシウム 2mg 1錠当り 100mg
【0318】
【発明の効果】本発明により不要若しくは病原細胞に対
してアポトーシス誘発作用を有し、がん等の異常増殖細
胞疾患や、ウイルス性疾患において、病変細胞にアポト
ーシスを誘発させ、該疾患の予防、治療に有効な薬剤が
提供される。とりわけ大腸がん、胃がん等消化器系のが
んの場合、本発明の薬剤を経口投与することによりがん
細胞にアポトーシスを起こさせることができるため、天
然食品由来のフコース硫酸含有多糖及び/又はその分解
物を有効成分とする本発明の薬剤は非常に消化器系がん
に適した制がん剤である。またその発がん予防効果によ
り、化学発がん剤等による発がんも予防できる。本発明
の薬剤は、食用の褐藻植物、食用のナマコ等、食用物質
を原料として安価に大量に供給可能であり、且つ安全性
が高い点においても優れている。また、フコース硫酸含
有多糖及び/又はその分解物を含有する食品又は飲料を
日常的に摂取することにより、健康を維持、増強するこ
とができる。また、本発明により簡便なアポトーシス誘
発方法が提供され、本発明の方法を使用することによ
り、アポトーシス機構解明の研究、アポトーシス誘発阻
害剤の開発等を行うことができる。
【0319】また本発明により、フコース硫酸含有多糖
−Fを実質的に含まず、反応性の強い着色性物質を除去
した糖鎖工学、医学等の分野で有用な本発明のフコース
硫酸含有多糖−U及びその分解物が提供され、その効率
的な製造方法も提供された。
【0320】更に本発明により、フコース硫酸含有多糖
−Uを実質的に含まず、反応性の強い着色性物質を除去
した糖鎖工学、医学等の分野で有用な、本発明のフコー
ス硫酸含有多糖−F及びその分解物が提供され、その効
率的な製造方法も提供された。
【0321】本発明により、フコース硫酸含有多糖−F
の構造解析や分解、フコース硫酸含有多糖−Fの生物活
性の検索に有用なフコース硫酸含有多糖−Fの低分子化
物の製造に用いることができるエンド型フコース硫酸含
有多糖分解酵素、その製造方法、及びがん細胞に対する
アポトーシス誘発作用が強いフコース硫酸含有多糖−F
の該酵素による低分子化物が提供された。
【0322】また、本発明によりこれまで安定的に製造
されなかった本発明のエンド型フコース硫酸含有多糖−
F分解酵素を、カルシウムイオンの存在下極めて安定的
に製造することができるようになった。さらに、本発明
により、カルシウムイオンの存在下本発明のエンド型フ
コース硫酸含有多糖分解酵素を極めて効率よく働かせる
ことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はフコース硫酸含有多糖の沈殿形成率を示
したものである。
【図2】図2はセファクリルS−500を用いたゲルろ
過法により測定したフコース硫酸含有多糖−Uの分子量
分布を示したものである。
【図3】図3はフコース硫酸含有多糖−UのIRスペク
トルを示したものである。
【図4】図4はフコース硫酸含有多糖−UのH−N
MRスペクトルを示したものである。
【図5】図5は糖化合物(a)のピリジル−(2)−ア
ミノ化糖化合物(PA−a)をL−カラムにより分離し
たときの溶出パターンを示したものである。
【図6】図6は糖化合物(b)のピリジル−(2)−ア
ミノ化糖化合物(PA−b)をL−カラムにより分離し
たときの溶出パターンを示したものである。
【図7】図7は糖化合物(c)のピリジル−(2)−ア
ミノ化糖化合物(PA−c)をL−カラムにより分離し
たときの溶出パターンを示したものある。
【図8】図8は糖化合物(a)のマス分析(ネガティブ
測定)により得られた結果を示したものである。
【図9】図9は糖化合物(b)のマス分析(ネガティブ
測定)により得られた結果を示したものである。
【図10】図10は糖化合物(c)のマス分析(ネガテ
ィブ測定)により得られた結果を示したものである。
【図11】図11は糖化合物(a)のマスマス分析(ネ
ガティブ測定)により得られた結果を示したものであ
る。
【図12】図12は糖化合物(b)のマスマス分析(ネ
ガティブ測定)により得られた結果を示したものであ
る。
【図13】図13は糖化合物(c)のマスマス分析(ネ
ガティブ測定)により得られた結果を示したものであ
る。
【図14】図14は糖化合物(a)のH−NMRス
ペクトルを示したものである。
【図15】図15は糖化合物(b)のH−NMRス
ペクトルを示したものである。
【図16】図16は糖化合物(c)のH−NMRス
ペクトルを示したものである。
【図17】図17はセファクリルS−500を用いたゲ
ルろ過法により測定したフコース硫酸含有多糖−Fの分
子量分布を示したものである。
【図18】図18はフコース硫酸含有多糖−FのIRス
ペクトルを示したものである。
【図19】図19はフコース硫酸含有多糖−Fの
−NMRスペクトルを示したものである。
【図20】図20は本発明により得られるエンド型フコ
ース硫酸含有多糖分解酵素のpHと相対活性の関係を示
すグラフである。
【図21】図21は本発明により得られるエンド型フコ
ース硫酸含有多糖分解酵素の温度と相対活性の関係を示
すグラフである。
【図22】図22はセルロファインGCL−300を用
いたゲルろ過法により測定した、フコース硫酸含有多糖
−Fを本発明により得られるエンド型フコース硫酸含有
多糖分解酵素により分解する前後の分子量分布を示した
ものである。
【図23】図23は本発明により得られるエンド型フコ
ース硫酸含有多糖分解酵素の反応液中のカルシウムイオ
ン濃度と相対活性の関係を示すグラフである。
【図24】図24は実施例19−(6)においてセルロ
ファインGCL−300を用いたゲルろ過法により測定
した、フコース硫酸含有多糖−Fを本発明により得られ
るエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素により分解し
たものの分子量分布を示したものである。
【図25】図25はフコース硫酸含有多糖−Fを本発明
により得られるエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素
により分解したもののIRスペクトルを示したものであ
る。
【図26】図26はフコース硫酸含有多糖−Fを本発明
により得られるエンド型フコース硫酸含有多糖分解酵素
により分解したもののH−NMRスペクトルを示した
ものである。
【図27】図27はHL−60細胞の培養液に実施例
1、15、及び18で得られたフコース硫酸含有多糖を
1mg/mlとなるように添加したときの培養時間と培
養液中の生細胞数の関係を示したものである。
【図28】図28はMOLT−3細胞の培養液に実施例
1で得られたフコース硫酸含有多糖、実施例12で得ら
れたフコース硫酸含有多糖−F、実施例15及び17で
得られたフコース硫酸含有多糖、及びデキストラン硫酸
を添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係
を示したものである。
【図29】図29はHCT 116細胞の培養液に実施
例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品、実施例1で
得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得
られたフコース硫酸含有多糖−U及びフコース硫酸含有
多糖−F、F−Fd−1、F−Fd−2、F−Fd−
3、及びF−Fd−4、実施例15で得られたフコース
硫酸含有多糖、及びヘパリン及びデキストラン硫酸を添
加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示
したものである。
【図30】図30はHCT 116細胞の培養液に実施
例1で得られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度
で添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係
を示したものである。
【図31】図31はAGS細胞の培養液に実施例1で得
られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加し
たときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示した
ものである。
【図32】図32はSW480細胞の培養液に実施例1
で得られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添
加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示
したものである。
【図33】図33はWiDr細胞の培養液に実施例1で
得られたフコース硫酸含有多糖混合物、実施例12で得
られたフコース硫酸含有多糖−F、F−Fd−3及びF
−Fd−4及び実施例15で得られたフコース硫酸含有
多糖を添加したときの培養時間と培養液中の生細胞数の
関係を示したものである。
【図34】図34はWiDr細胞の培養液に実施例1で
得られたフコース硫酸含有多糖標品を様々な濃度で添加
したときの培養時間と培養液中の生細胞数の関係を示し
たものである。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C12N 9/24 C12N 9/24 (31)優先権主張番号 特願平8−171658 (32)優先日 平成8年6月12日(1996.6.12) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平8−204187 (32)優先日 平成8年7月16日(1996.7.16) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 北野 秀夫 青森県弘前市大字在府町82番地4 株式会 社糖鎖工学研究所内 (72)発明者 于 福功 青森県弘前市大字在府町82番地4 株式会 社糖鎖工学研究所内 (72)発明者 中山 信司 青森県弘前市大字在府町82番地4 株式会 社糖鎖工学研究所内 (72)発明者 児島 薫 青森県弘前市大字在府町82番地4 株式会 社糖鎖工学研究所内 (72)発明者 木村 ひとみ 青森県弘前市大字在府町82番地4 株式会 社糖鎖工学研究所内 (72)発明者 中西 芳邦 青森県弘前市大字在府町82番地4 株式会 社糖鎖工学研究所内 (72)発明者 片山 薫 青森県弘前市大字在府町82番地4 株式会 社糖鎖工学研究所内 (72)発明者 冨永 隆生 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 嶋中 一夫 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 猪飼 勝重 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒造 株式会社中央研究所内 (72)発明者 加藤 郁之進 青森県弘前市大字在府町82番地4 株式会 社糖鎖工学研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記理化学的性質を有することを特徴と
    するフコース硫酸含有多糖。 (1)構成糖:ウロン酸を実質的に含有しない。 (2)フラボバクテリウム(Flavobacterium)sp.
    SA−0082(FERM BP−5402)の生産す
    るフコダイン分解酵素により実質上低分子化されない。
  2. 【請求項2】 フコース硫酸含有多糖混合物を、ウロン
    酸を含むフコース硫酸含有多糖を分解する能力を有する
    分解酵素、又は該分解酵素をもつ微生物で処理して目的
    の多糖を採取する工程を包含することを特徴とする請求
    項1記載のフコース硫酸含有多糖の製造方法。
  3. 【請求項3】 フコース硫酸含有多糖混合物を、塩類の
    存在下、酸性多糖凝集能のある薬剤で目的の多糖を沈殿
    させる工程を包含することを特徴とする請求項1記載の
    フコース硫酸含有多糖の製造方法。
  4. 【請求項4】 フコース硫酸含有多糖混合物を、2価の
    陽イオンの混在下に陰イオン交換樹脂で処理して目的の
    多糖を採取する工程を包含することを特徴とする請求項
    1記載のフコース硫酸含有多糖の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のフコース硫酸含有多糖を
    製造する際に、共存する着色性物質を多糖性の物質ある
    いは陰イオン交換基を有する物質を用いて除去する工程
    を包含することを特徴とする請求項1記載のフコース硫
    酸含有多糖の製造方法。
  6. 【請求項6】 海藻から請求項2、3、又は4記載のフ
    コース硫酸含有多糖混合物を抽出する際に、酢酸イオン
    とカルシウムイオンを共存させることを特徴とするフコ
    ース硫酸含有多糖混合物の製造方法。
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CN114573727A (zh) * 2022-03-24 2022-06-03 自然资源部第一海洋研究所 海参岩藻多糖及其制备方法和在制备防治由幽门螺杆菌引起的疾病的药物和保健品中的应用

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TAKASHI NISHINO ET AL., CARBOHYDRATE RESEARCH, vol. 255, JPNX007004150, 1994, pages 213 - 224, ISSN: 0000813297 *

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