JP2001214240A - 被削性に優れた快削鋼およびその製法 - Google Patents

被削性に優れた快削鋼およびその製法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 環境汚染の問題を起こす恐れがなく、しかも
切削条件や用途制限などを受けることなく幅広く適用す
ることができ、特に被削性と仕上げ面精度を得ることの
できる快削鋼を提供すること。 【解決手段】 質量%で、C:0.02〜0.15%、
Si:0.5%以下(0%を含まない)、Mn:0.5
〜1.75%、P:0.004〜0.2%、S:0.1
5〜0.5%、O:0.005〜0.028%を含む鋼
において、縦断面に現われる長径1μm以上の介在物が
断面積1mm2当たり100〜2000個で、該介在物
の全量中に占める酸化物の個数の割合が4%以上で、且
つ、該酸化物のうち、Na,Li,Bよりなる群から選
択される少なくとも1種の酸化物、もしくは、Li,N
a,B,Siから選ばれる2種以上の複合酸化物の個数
割合が5%以上である、被削性と仕上げ面精度に優れた
快削鋼とその製法を開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被削性に優れた快
削鋼とその製法に関し、より詳細には、鋼中に特定の酸
化物を積極的に特定量含有させることにより、安定して
優れた被削性を示す様に改善された快削鋼とその製法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、工業製品の大量生産に伴い鋼材の
被削性が大きな問題となっており、切削加工の低コスト
化および部品仕上げ面精度の向上などから被削性改善が
強く求められている。
【0003】こうした状況の下で、被削性改善手段につ
いても多くの研究が進められており、例えば鉛快削鋼、
硫黄快削鋼、Ca快削鋼、更にはこれらを組合わせた複
合快削鋼等が提案され、実用化されている。
【0004】このうち鉛快削鋼は、工具寿命および仕上
げ面精度等において優れたものであるが、近年環境問題
に関する認識が高まってくるにつれて、有害重金属であ
る鉛を含む鉛快削鋼は忌避される傾向が強い。
【0005】一方硫黄快削鋼は、鉛快削鋼にみられる環
境汚染の問題は生じないが、鋼中に存在する硫化物が圧
延方向に伸張する傾向があり、圧延方向に対して垂直方
向の機械的特性に悪影響を及ぼしたり、鍛造時に硫化物
を起点とする割れを起こすといった問題を起こすため硫
黄添加量には自ずと限度があり、必ずしも満足のいく被
削性を得ることができない。
【0006】また、硫黄快削鋼の被削性改善効果は鋼中
に含まれる硫化物の形態によって左右され、該硫化物の
形態は鋼中の酸素によって影響を受けるとされている。
即ち、鋼中の酸素量が多いと硫化物が球状化し、工具寿
命が向上すると考えられている。これは、鋼の凝固時に
鋼中で硫化物が析出する際に、鋼中の酸化物がその核と
なって硫化物の析出に関与するためと考えられており、
酸素量が多い程、被削性に有効な大径の硫化物が析出し
易くなるとされている。つまり、酸素の存在によって大
きな硫化物が生成し、これにより工具の摩耗が抑えられ
るのである。こうした意味において、鋼中の酸素は鋼材
の被削性に対し好影響を与えていると考えられる。
【0007】ところが反面で、鋼中の酸素量が多いと鋼
中に多くの酸化物が生成するが、該酸化物は硬質でそれ
自身が工具摩耗を促進する方向に作用する。即ち全体と
してみれば、鋼中の酸素は鋼材の被削性に対し好影響と
悪影響を及ぼしていると考えられる。
【0008】またCa快削鋼は、酸化物の形態(組成)
制御により切削工具表面にベラーグと呼ばれる保護層を
形成し、工具の拡散摩耗を抑制するタイプの快削鋼であ
る。この保護層の形成は、工具表面近傍における温度と
酸化物の融点に影響を受ける。現在一般に製造されてい
るCa酸化物系快削鋼は、Si,A1,Caの複合酸化
物において最も低融点となるアノルサイトやゲーレナイ
トと呼ばれる酸化物を生成させるものであり、超硬工具
による高速切削においては工具寿命を延長する効果が認
められている。しかし、低切削速度領域での工具寿命改
善効果は乏しい。また、結晶粒度を調整するためA1を
添加したCa快削鋼では、酸化物としてA123を多く
含む高融点のものが生成し易いため、切削条件によって
は工具摩耗を促進する恐れもある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前述の如く従来の快削
鋼は、切削条件の制限や環境汚染の問題を生じるなど、
必ずしも満足し得るものとは言い難い。すなわち鉛快削
鋼は、重金属である鉛を使用しているため環境保全の観
点から充分留意しなければなず、硫黄快削鋼は、鋼中の
酸素が鋼材の被削性に対して好影響と悪影響とを与え
る。Ca快削鋼は、超硬工具を用いた高切削速度領域で
の工具寿命の改善には有効であるが、低切削速度領域で
の被削性改善効果は乏しい。
【0010】本発明はかかる実状を鑑み、環境にも配慮
し、低切削速度領域から高切削速度領域の広い加工領域
において安定して優れた被削性を示し、工具寿命延長作
用や面粗度改善効果に優れた快削鋼とその製法を提供す
ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る快削鋼とは、質量%でC :0.
02〜0.15%、Si:0.5%以下、Mn:0.5
〜1.75%、P :0.004〜0.20%、S :
0.15〜0.50%、O :0.005〜0.028
%を含む鋼からなり、該鋼の縦断面に現われる長径1μ
m以上の介在物が断面1mm2当たり100〜2000
個であり、更に該介在物の全量中に占める酸化物の個数
割合が4%以上で、且つ、該酸化物のうち、Na,L
i,Bよりなる群から選択される少なくとも1種の元素
の酸化物の個数割合が5%以上であるか、あるいは該介
在物の全量中に占める酸化物の個数割合が4%以上であ
り、且つ、該酸化物のうちNa,Li,B,Siよりな
る群から選択される少なくとも2種の酸化物の個数割合
が5%以上である被削性に優れた快削鋼である。
【0012】また本発明に係る製法は、上記被削性に優
れた快削鋼を製造する方法を提供するもので、該快削鋼
を製造する際に、Na,Li,Bよりなる群から選択さ
れる少なくとも1種の元素の酸化物からなる融点が10
00℃以下の酸化物を、溶鋼中に100ppm以上添加
し、あるいはNa,Li,B,Siよりなる群から選択
される少なくとも2種の元素の酸化物からなる融点が1
000℃以下の複合酸化物を、溶鋼中に100ppm以
上添加するところに要旨を有している。尚、融点が10
00℃以下である前記酸化物は、レードル、タンディッ
シュおよび鋳型の少なくとも1個所で溶鋼に添加するこ
とにより、鋼中に均一に混入・分散させることができ
る。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明者らは前述した様な課題の
下で、従来の鉛や硫黄、Ca酸化物などに代わる快削成
分を模索し、切削性や仕上げ面精度の一層の改善を期し
て鋭意研究を進めてきた。その結果、Na,Li,Bよ
りなる群から選択される少なくとも1種の元素の酸化物
からなる融点が1000℃以下の酸化物、もしくは、N
a,Li,B,Siよりなる群から選択される少なくと
も2種の元素の複合酸化物を、溶鋼中に適量含有させた
ものは、安定して優れた被削性を示すと共に、良好な仕
上げ面精度を与えることを知り、上記本発明に想到した
ものである。
【0014】鋼材の被削性を低下させているのは硬質な
酸化系介在物であり、鋼中に介在するA1系やSi系の
硬質な酸化物は工具摩耗を促進して被削性を阻害し、工
具寿命を短縮すると共に仕上げ面粗度を悪化させてい
る。
【0015】そこで、本発明者らは低融点酸化物に着目
して鋭意検討の結果、1000℃以下の融点を持った低
融点酸化物を含有させれば、切削時における鋼中の該低
融点酸化物が溶融・軟化することによって、工具寿命お
よび仕上げ面精度が高められることを知った。ちなみ
に、融点が1000℃以下の酸化物を鋼中に分散させれ
ば、切削中の刃先温度上昇により鋼中の該酸化物が溶融
もしくは軟化し、工具の摩耗が抑制されると共に、該酸
化物が工具表面を保護して工具寿命の向上にも有効に作
用することが判明した。
【0016】前述した通り鋼中に含まれる金属酸化物は
一般的に硬質であり、これまでは被削性を劣化させるも
のと考えられており、金属酸化物を被削性向上成分とし
て積極的に利用するといったことはあまり考えられなか
った。ところが、鋼中にNa,Li,Bよりなる群から
選択される少なくとも1種の元素の酸化物からなる低融
点の酸化物、もしくは、Na,Li,B,Siよりなる
群から選択される少なくとも2種の元素の低融点の複合
酸化物[以下、これらをまとめて(複合)酸化物という
ことがある]を溶鋼中に適量含有させたものは、安定し
て優れた被削性を示すと共に、良好な仕上げ面精度を与
えることを見出したのである。
【0017】従って本発明では、上記の如く鋼中に被削
性改善成分として前記(複合)酸化物を適量含有させる
ところに特徴を有しているが、その前提として、鋼材の
縦断面に現われる長径1〜15μmの介在物が、断面積
1mm2当たり100〜2000個、より好ましくは1
50〜1000個分散していることが必要となる。ちな
みに、鋼中に存在し得る介在物としては、酸化物、硫化
物、窒化物などが挙げられるが、それら介在物の中でも
長径が1μm未満の微細なものは、被削性や仕上げ面精
度に殆ど影響を及ぼすことがない。一方、長径が15μ
mを超える介在物が鋼中に多数存在すると、鋼材として
の機械的特性、特に靭性や延性等に顕著な悪影響をを及
ぼす可能性があるが、現実にはその様な大きなサイズの
介在物は殆ど見られない。
【0018】そして本発明で意図する優れた被削性と仕
上げ面精度を確保するには、上記介在物のサイズと個数
を満たす条件の下で、長径が1μm以上である全介在物
中に占める酸化物の個数比率が4%以上であり、且つ、
該酸化物中の前記(複合)酸化物の占める個数の割合が5
%以上であることが必須の要件となる。
【0019】即ち本発明では、基本的に鋼材中に分散し
ている介在物のうち酸化物の個数を特定することに加え
て、該酸化物中の前記(複合)酸化物の占める個数割合
を特定することによって、卓越した被削性と仕上げ面精
度を与える快削鋼を得ることに成功したものである。
【0020】ちなみに、鋼断面に現われる全介在物の中
には、酸化物、硫化物、窒化物、炭化物およびそれらの
複合物などが含まれ、また酸化物の中にはアルミナ、シ
リカ、酸化マンガン、酸化クロムおよびそれらの複合物
などが含まれるが、本発明で意図するレベルの被削性と
仕上げ面精度を確保するには、全介在物中に占める長径
1μm以上の酸化物の個数割合が4%以上で、且つ該酸
化物のうち、前記(複合)酸化物の占める個数割合が5
%以上であることが必須となる。
【0021】そして、全介在物中に占める酸化物の個数
割合が4%未満で、しかも該酸化物中に占める前記(複
合)酸化物の占める個数割合が5%未満では、これら特
定の(複合)酸化物に期待される被削性および仕上げ面
精度改善効果が有効に発揮されない。即ちこれら特定の
(複合)酸化物は、融点が1000℃以下であり、好ま
しくは、後述する方法によって溶鋼中に添加されるそれ
ら(複合)酸化物の成分組成を融点が800℃以下とな
る様に調整し、長径が1μm以上である該特定(複合)
酸化物の個数が上記要件を満たす様にコントロールすれ
ば、切削加工時の摩擦熱による該特定(複合)酸化物の
軟化・溶融作用によって被削性が大幅に高められると共
に、仕上げ面精度を著しく改善することができるのであ
る。
【0022】しかも、上記(複合)酸化物の多くは球状
であるため、機械的特性を劣化させることはなく、酸化
物の存在形態によってはむしろ機械的特性の向上に寄与
する。
【0023】尚、こうした酸化物による改善作用は、N
a,LiおよびBの各酸化物については、それぞれ単独
で有効に発揮される他、2種もしくは3種の複合酸化物
としても有効に発揮されるが、Siの酸化物について
は、単独酸化物として所定量存在していても本発明の意
図する様な被削性を得ることはできず、前記Na,L
i,Bの少なくとも1種の酸化物との複合酸化物として
存在させることが必須となる。これは、Siの単独酸化
物はNa酸化物、Li酸化物、B酸化物に比べて融点が
高いため、切削加工時の昇温による軟化・溶融作用が有
効に発揮されないからと思われる。
【0024】尚、被削性や仕上げ面精度の向上に寄与す
る前記Na,Li,Bの酸化物源となるNa,Li,B
は、通常の溶鋼中には殆ど含まれていない。従って本発
明の上記目的を果たすには、溶鋼中にNa酸化物、Li
酸化物、B酸化物あるいはそれらの複合酸化物を添加す
ることが必要であり、具体的には、レードル、タンディ
ッシュおよび鋳型の少なくとも1個所で、溶鋼中にそれ
らの酸化物、もしくはSiとの複合酸化物を添加し、こ
れらを溶鋼中に含有させる方法が採用される。
【0025】この時、添加される上記酸化物や複合酸化
物は、添加前の状態で融点が1000℃以下、より好ま
しくは800℃以下となる様に成分調整しておくことが
望ましい。溶鋼内に添加された上記酸化物や複合酸化物
は、高温の溶鋼中で形態変化を起こすが、前述した位置
で添加する方法を採用すれば、最終的に得られる鋼材内
においても、溶融温度1200℃程度以下の(複合)酸
化物として存在させることができる。
【0026】尚上記酸化物または複合酸化物の添加量
は、溶鋼に対して100ppm以上、より好ましくは3
00ppm以上とすべきであり、100ppm未満で
は、最終的に得られる鋼中に、十分なサイズ(長径1μ
m以上)と量(個数)の(複合)酸化物を存在させるこ
とができず、本発明で意図する優れた被削性と仕上げ面
精度が得られ難くなる。上記酸化物や複合酸化物は過剰
量添加しても、その大部分は溶鋼中に歩留まることなく
スラグとなって湯面上に浮上分離されるので実害は生じ
ないが、その効果は2000ppm程度で飽和するの
で、それ以上の添加は経済的に無駄であり、好ましくは
1000ppm程度以下で十分である。尚これらの酸化
物は、単体酸化物として添加するよりも複合酸化物とし
て溶鋼に添加した方が、鋼中に歩留まり易いので有利で
ある。添加する酸化物の融点は、状態図の値を基準にし
て予め決めておけばよい。
【0027】本発明は、上記のように快削鋼中に含まれ
る(複合)酸化物のサイズと量を規定したところに特徴
を有するもので、鋼材の種類は特に制限されないが、本
発明の前記特徴が最も有効に発揮される快削鋼の標準的
な化学成分を例示すると下記の通りである。
【0028】C:0.02〜0.15% Cは鋼の強度向上元素として重要な元素であるが、反
面、延性を低下させる元素でもあり、その含有量が極め
て低い低炭素鋼領域では、鋼の延性を適度に低下させて
被削性を高める作用を発揮する。そのためにはC量を
0.02%以上とすべきであるが、C量が多くなり過ぎ
ると、鋼が高質化して工具寿命を低下させる原因になる
ので0.15%以下に抑えるのがよい。
【0029】Si:0.5%以下(0%を含まない) Siは通常、溶製時に使用する脱酸剤として混入してく
るが、Siは酸素との反応性が非常に速く、0.5%を
超えると、鋼中の必要酸素量を確保することが困難にな
るばかりでなく、Na,Li,B酸化物の酸素を奪って
被削性改質作用を発現し難くすることがあるので、0.
5%以下、より好ましくは0.15%以下に抑えること
が望ましい。
【0030】Mn:0.5〜1.75% Mnは、被削性の向上に有効なMnSを生成させる他、
熱間加工性を高める上でも有効に作用する元素であり、
これらの作用を有効に発揮させるには0.5%以上含有
させることが望ましい。しかし、Mn含有量が多過ぎる
と鋼材の加工硬化が顕著になり、工具寿命を短縮させる
原因になるので1.75%以下、より好ましくは1.5
%以下に抑えることが望ましい。
【0031】P:0.004〜0.2% Pは鋼の延性を低下させ、切削加工時の切屑処理性を向
上すると共に仕上げ面粗さを低減するのに有効な元素で
あり、それらの作用を有効に発揮させるには0.004
%以上のPを含有させることが望ましい。しかし、0.
2%を超えて過度に含有させると、熱間加工時に表面欠
陥を起こし易くなる。よって、Pの含有量は0.004
%以上、より好ましくは0.01%以上で、0.2%以
下、より好ましくは0.15%以下に抑えることが望ま
しい。
【0032】S:0.15〜0.5% Sは、切屑分断性を含めた被削性全般の向上に有効なM
nSを形成する元素であるが、0.15%未満ではその
効果が十分に発揮されず、一方0.5%を超えると熱間
加工性や延性を著しく劣化させる。よって、S含有量は
0.15%以上、より好ましくは0.2%以上で、0.
5%以下、より好ましくは0.4%以下に抑えることが
望ましい。
【0033】O:0.005〜0.028% Oは、前記(複合)酸化物の析出形態を左右する重要な
元素であり、トータル酸素量が0.005%未満では、
本発明で定める前記サイズと量の(複合)酸化物を存在
させることができず、本発明で意図するレベルの被削性
と仕上げ面精度を確保するには0.005%以上、より
好ましくは0.01%以上のOを含むものが望ましい。
しかしO量が多過ぎると、溶製時に酸化鉄の生成を促し
て溶製炉の内張り耐火物を損傷し炉寿命の短縮を招くば
かりでなく、溶損した耐火物が鋼中に混入すると切削工
具寿命を低下させる大きな原因になる。従って、Oの含
有量は0.028%以下、より好ましくは0.025%
以下に抑えることが望ましい。
【0034】本発明で使用される快削鋼の好ましい含有
元素は上記の通りであり、残部成分は実質的にFeであ
るが、該快削鋼中には微量の不可避不純物の含有が許容
されることは勿論のこと、前記本発明の作用に悪影響を
与えない範囲で更に他の元素を積極的に含有させた快削
鋼を使用することも可能である。積極添加が許容される
他の元素の例としては、工具寿命や面粗度改善効果を有
するPb,Bi,Te等が挙げられ、それらは単独で或
いは2種以上を複合添加できるが、それらは合計量で
0.5%程度以下に抑えることが望ましい。
【0035】次に、前記(複合)酸化物の分析法につい
て説明する。供試材は、155mm×155mmの鋳片
を1200℃で直径80mmの丸棒状に鍛造した後、8
50℃×1hr空冷で焼ならし処理し、該鍛造材の鍛造
方向に平行な断面のD/4位置を研磨する。次いで、供
試材の観察位置を特定するため荷重5kgで圧痕を打
つ。介在物の個数測定は、光学顕微鏡を用いて圧痕近傍
を倍率100倍で1視野当たり0.5mm×0.5mm
の面積を4視野づつ観察し、長径が1μm以上の介在物
について画像解析した。次いで、日本電子製「JXA−
8800RL」のEPMAにより加速電圧15kV、倍
率500倍で4視野を観察して介在物の組成を特定す
る。この観察では、Na、Li,B,Si,OおよびM
n,S,Crのマッピングを行なって各元素の存在を確
認した。ただしEPMAでは、LiやBなどの軽元素は
検出し難いので、EPMA観察と同じ領域をCAMEC
A−imsf5fのSIMSにより一次イオン条件O2 +
−8keV−1nA、倍率500倍で4視野を観察す
る。SIMSでは一次イオンとしてO2 +を用いており、
Oの存在がはっきりしないが、EPMAでOの観察され
ているものは酸化物と判断する。EPMAおよびSIM
S観察でNa,Li,B,Siから選択される1種以上
と酸素(O)の存在が確認できたものを(複合)酸化物
とした。この観察で、長径1μm以上の全介在物のう
ち、観察された全酸化物および(複合)酸化物の数を求
めて夫々の個数割合を算出した。酸化物とMnSとから
なる介在物は酸化物としてカウントした。
【0036】次に評価法について説明すると、評価項目
は工具寿命と仕上げ面粗度の2つとし、工具寿命は、1
55mm×155mm鋳片を直径22mm×3mの棒鋼
に熱間圧延し、超硬旋削試験により評価した。試験条件
は、表1に示す如く、P10チップを用い、切削速度:
200(m/min)、送り:0.25(mm/re
v)、切込み:1.5(mm)とした。工具寿命の判断
基準は、VB摩耗0.2mmとした。
【0037】
【表1】
【0038】部品の仕上げ面粗度は、上記焼きならし処
理材を用いて超硬旋削試験により評価した。試験条件
は、表2に示す如くP10チップを用い、切削速度:1
50(m/min)、送り:0.10(mm/re
v)、切込み:1.0(mm)、切削時間:1(mi
n)とした。仕上げ面粗度は切削終了間際の領域を評価
した。
【0039】
【表2】
【0040】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説
明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を
受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲
で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それ
らはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0041】実施例 本発明鋼は、500kg高周波溶解炉で溶解した低炭素
鋼に、組成調整した(複合)酸化物を添加し、155m
m角に鋳造した。表3に本発明鋼(No.1〜12)お
よび比較鋼(No.13〜18)の主成分、添加酸化物
の組成、添加量、融点を示す。なおNo.13は現用の
鉛快削鋼、No.14はべース鋼、No.15〜18は
本発明で定めるいずれかの規定要件を欠く比較例であ
る。
【0042】表4および図1〜4に供試材の評価結果を
示す。図1に見られる様に、(複合)酸化物の個数割合
が5%以上になると、工具寿命が大幅に向上し、No.
13の鉛快削鋼と同レベルの被削性が得られている。ま
た図2に見られる様に、(複合)酸化物の個数割合が5
%が以上になると、仕上げ面粗度も鉛快削鋼レベル以上
に向上している。
【0043】更に、図3,4からも明らかな様に、工具
寿命の向上効果を有効に発揮させるには、成分調整され
た(複合)酸化物を100ppm以上添加しなければな
らないことが分かる。
【0044】これらの実験結果からも明らかな様に、本
発明によれば、従来の鉛快削鋼に較べて全く遜色のない
工具寿命と仕上げ面精度を示す快削鋼を得ることができ
ることが分かる。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、縦
断面の長径1μm以上の全介在物に占める酸化物の個数
割合が4%以上であり、かつ、その酸化物のうちNa、
Li,Bから選ばれる1種以上の酸化物、もしくは、L
i,Na,B,Siから選ばれる2種以上の複合酸化物
の個数割合が5%以上である本発明鋼の快削鋼は、公害
原因を生じることなく優れた工具寿命と仕上げ面粗度を
得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験で用いた供試快削鋼中の(複合)酸化物の
個数割合と工具寿命の関係を示すグラフである。
【図2】実験で用いた供試快削鋼中の(複合)酸化物の
割合と仕上げ面粗度の関係を示すグラフである。
【図3】鋼への(複合)酸化物の添加量と工具寿命の関
係を示すグラフである。
【図4】鋼への(複合)酸化物の添加量と仕上げ面粗度
の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 家口 浩 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 土田 武広 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 尾崎 勝彦 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 染川 雅実 神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会社神戸 製鋼所神戸製鉄所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%でC :0.02〜0.15%、
    Si:0.5%以下、Mn:0.5〜1.75%、P
    :0.004〜0.20%、S :0.15〜0.5
    0%、O :0.005〜0.028%を含む鋼からな
    り、該鋼の縦断面に現われる長径1μm以上の介在物が
    断面1mm2当たり100〜2000個で、該介在物の
    全量中に占める酸化物の個数割合が4%以上であり、且
    つ、該酸化物のうち、Na,Li,Bよりなる群から選
    択される少なくとも1種の元素の酸化物の個数割合が5
    %以上であることを特徴とする被削性に優れた快削鋼。
  2. 【請求項2】 質量%でC :0.02〜0.15%、
    Si :0.5%以下、Mn:0.5〜1.75%、P
    :0.004〜0.20%、S :0.15〜0.5
    0%、O :0.005〜0.028%を含む鋼からな
    り、該鋼の縦断面に現われる長径1μm以上の介在物が
    断面1mm2当たり100〜2000個で、該介在物の
    全量中に占める酸化物の個数割合が4%以上であり、且
    つ、該酸化物のうちNa,Li,B,Siよりなる群か
    ら選択される少なくとも2種の酸化物の個数割合が5%
    以上であることを特徴とする被削性に優れた快削鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の快削鋼を製造する方法
    であって、Na,Li,Bよりなる群から選択される少
    なくとも1種の元素の酸化物からなる融点が1000℃
    以下の酸化物を、溶鋼中に100ppm以上添加するこ
    とを特徴とする被削性に優れた快削鋼の製法。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載の快削鋼を製造する方法
    であって、Na,Li,B,Siよりなる群から選択さ
    れる少なくとも2種の元素の酸化物からなる融点が10
    00℃以下の複合酸化物を、溶鋼中に100ppm以上
    添加することを特徴とする被削性に優れた快削鋼の製
    法。
  5. 【請求項5】 融点が1000℃以下である前記酸化物
    を、レードル、タンディッシュおよび鋳型の少なくとも
    1個所で溶鋼に添加する請求項3または4に記載の製
    法。
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