JP2001206002A - 鉄道車両用車軸とその製造方法 - Google Patents
鉄道車両用車軸とその製造方法Info
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Abstract
車両用車軸よりフレッティング疲労強度の高い鉄道車両
用車軸とその製造方法を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.30〜0.48%、
Si:0.05〜1.0%、Mn:0.5〜2.0%、
Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.15〜0.30
%、Ni:0〜2.4%を含有し、0.2%耐力が70
0〜1200MPaで、下記式を満足する加工硬化指数
N(単位:無次元)を有する鋼からなり、はめ合い部と
フィレット部の双方の表層部に押圧加工で形成された硬
化層を有する車軸。この車軸は、上記化学組成の鋼を熱
間鍛造し、焼入れ焼戻し処理し、その後、はめ合い部と
フィレット部の双方の表面にローラによる押圧加工を行
うことにより得られる。 N<(σy−200)/2500 但し、σy:0.2%耐力(単位:MPa)
Description
鉄道車両用車軸とその製造方法に関する。
大な事故につながるため、高い信頼性が要求される。特
に、車輪やブレーキディスクあるいは歯車等が嵌合され
る部分(以後、はめ合い部という)では、高い負荷応力
の繰返しと車輪など相手部材との微小な相対すべりとを
原因とするフレッティング疲労が生じ、疲労強度が大幅
に低下することが知られている。
幹線車両用車軸と在来線車両用車軸に分類される。
する負荷荷重への対応と軽量化の追求といった厳しい条
件のもとで、より信頼性の高い車軸が要求され、炭素鋼
や低合金鋼に高周波焼入れを施したフレッティング疲労
強度の高い車軸が開発されている。
用車軸のように高いフレッティング疲労強度は要求され
ないため、炭素鋼を焼きならしまたは焼入れ焼戻しの熱
処理を施した車軸が使用されてきた。
線車両用車軸においても、従来に比べ、高いフレッティ
ング疲労強度を有する車軸が要求されている。例えば、
新幹線車両用車軸のように、高周波焼入れを施すことに
よって、車軸表面に圧縮の残留応力を形成してフレッテ
ィング疲労強度を向上させることができる。但し、高周
波焼入れ処理は処理コストが高いという欠点がある。
として、高周波焼入れ車軸より安価で、従来の在来線車
両用車軸よりフレッティング疲労強度の高い鉄道車両用
車軸を提供することにある。
入れより安価で比較的簡便に車軸表面に圧縮残留応力を
付与させる方法として、車軸表面への押圧加工に着目
し、この押圧加工による圧縮残留応力の効果的な形成の
観点から車軸材料ならびに押圧加工条件を詳細に検討
し、以下の知見を得た。
は、車軸に用いる鋼の機械的特性、すなわち、0.2%
耐力と加工硬化特性のバランスが影響する。
応力が大きくなるが、圧縮残留応力の絶対値が0.2%
耐力を超えると、圧縮残留応力は飽和する。圧縮残留応
力が飽和し始める加工硬化指数Nu(単位:無次元)
は、下記(1)式で表される。
硬化指数が上記(1)式で規定されるNu未満となる機
械的特性を有する鋼に、ローラによる押圧加工を施すこ
とにより、車軸表層部に硬化層が形成され適正な圧縮残
留応力が得られる。
ト部に適正深さの硬化層を形成することにより、フレッ
ティング疲労強度が高くなる。
もので、その要旨は以下の通りである。
%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.5〜2.0
%、Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.15〜0.3
0%、Ni:0〜2.4%を含有し、0.2%耐力が7
00〜1200MPaで、下記式を満足する加工硬化指
数N(単位:無次元)を有する鋼からなる車軸であっ
て、該車軸のはめ合い部とフィレット部の双方の表層部
に硬化層を有することを特徴とする鉄道車両用車軸。
但し、σy:0.2%耐力(単位:MPa) (2)前記硬化層が、押圧加工で形成されたものである
ことを特徴とする上記(1)項に記載の鉄道車両用車
軸。
さが、はめ合い部の直径の0.02倍以上、0.10倍
以下で、前記フィレット部における硬化層の深さが、フ
ィレット部の直径の0.05倍以上、0.10倍以下で
あることを特徴とする上記(1)項または(2)項に記
載の鉄道車両用車軸。
た後、焼入れ焼戻し処理を行い、その後、はめ合い部と
フィレット部の双方の表面にローラによる冷間押圧加工
を行い、硬化層を形成することを特徴とする上記(1)
項ないし(3)項のいずれかに記載の鉄道車両用車軸の
製造方法。
以上20mm以下であることを特徴とする上記(4)項
に記載の鉄道車両用車軸の製造方法。
は、その硬度が車軸中心部の硬度の1.1倍以上の部分
を指す。
びその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
の限定理由を説明する。なお、以下に記す成分元素の%
表示は質量%を意味する。また、フレッティング疲労強
度を単に疲労強度とも言う。
高くなるほど車軸の疲労強度は増加する。C含有量が
0.30%未満では疲労強度が不十分であり、C含有量
が0.48%を超えると靭性が低下する。したがって、
C含有量は0.30%以上、0.48%以下とする。好
ましくは、0.35%以上、0.45%以下である。
向上に有効な元素である。十分な脱酸を行うためには、
脱酸後の鋼中のSi含有量は0.05%以上必要であ
る。しかし、1.0%を超えると靭性が著しく低下する
ため1.0%を上限とする。好ましくは、0.10%以
上0.6%以下である。
とも0.5%を含有する必要がある。しかし、過剰に含
有してもその効果は飽和するとともに靭性が低下するの
で2.0%を上限とする。好ましくは、0.6%以上
1.5%以下である。
内部まで一様な強度を得るためには、少なくとも0.5
%以上を含有する必要がある。但し、過剰に含有する
と、靭性が低下するため、1.5%を上限とする。好ま
しくは、0.7%以上1.2%以下である。
の強度を高める作用が強い元素である。車軸内部まで一
様な強度を得るためには、少なくとも0.15%以上必
要である。Moの含有量が多いほど強度が上昇するが、
0.30%を超えると靭性が低下するため、0.30%
を上限とする。好ましくは、0.20%以上0.30%
以下である。
添加しなくても疲労強度が確保できる場合は添加しなく
てもよい。2.4%を越えて添加しても、疲労強度はほ
ぼ飽和するとともに焼戻し脆化するので、添加する場合
は上限を2.4%とする。
織の微細化や介在物の形状制御を目的として、Al、Ca、
Ti、Nb、Vなどの合金元素を、例えば合計で0.1%以
下微量添加させてもよい。
成される圧縮残留応力を高めることができる。0.2%
耐力が700MPa未満では圧縮残留応力の形成が不十
分であり、1200PMaを超えると靭性が低下し切欠
感受性が高くなる。したがって、0.2%耐力は700
MPa以上、1200MPa以下とする。好ましくは、
800〜1100MPaである。
ど、車軸表面に形成される圧縮残留応力を高めることが
できる。加工硬化指数が下記(1)式で規定されるNu
以上では、圧縮残留応力の形成が不十分となる。したが
って、加工硬化指数は(1)式で規定されるNu未満と
する。
模式的に示す断面図である。符号1は車軸、2ははめ合
い部、3はフィレット部、4は非はめ合い部、5は硬化
層である。ここで、はめ合い部2とは、車輪やブレーキ
デスクあるいは歯車などが嵌合される部分を指し、フィ
レット部3とは、はめ合い部2と非はめ合い部4との境
界の段差部分を指す。
ット部3とは、それぞれの表層部に例えばローラの押圧
加工により形成された硬化層5を有している。この硬化
層には、ローラの押圧加工で圧縮残留応力が形成され、
この圧縮残留応力の形成によりき裂の発生と進展が抑制
され疲労強度が向上する。硬化層の深さが浅いと、き裂
の進展に対する疲労強度が充分でなく、深すぎると、車
軸表面の圧縮残留応力が低下するため、疲労強度が低下
する。したがって、硬化層の深さは、はめ合い部では、
はめ合い部の直径の0.02倍以上、0.10倍以下
で、フィレット部では、フィレット部の直径の0.05
倍以上、0.10倍以下とするのがよい。ここで、はめ
合い部またはフィレット部の直径とは、はめ合い部、フ
ィレット部のそれぞれの位置における直径を指す。
る。
熱間鍛造にて車軸形状に成形した後、焼入れ焼戻し処理
を行い、0.2%耐力が700〜1200MPaで、下
記式を満足する加工硬化指数Nを有する鋼を得る。
常、1000〜1200℃の温度域で鍛造が行われる。
をAc3変態点〜950℃とし、焼戻し温度を450〜
675℃の範囲とするのが望ましい。上記成分範囲の中
心値の鋼の場合、Ac3変態点は800℃程度である。
焼戻し温度を450℃以下とすると、十分な靭性と伸び
が得られず、675℃以上とすると、十分な引張強度が
得られないことがある。
押圧加工を冷間状態で行う。
とフィレット部3の双方の領域を対象に行う。少なくと
も、フレッティング疲労によって疲労強度が低下するは
め合い部と応力集中が生じるフィレット部とに押圧加工
を施すことにより車軸の疲労強度を高めることができ
る。なお、はめ合い部とフィレット部の他に非はめ合い
部にも押圧加工を施してもよい。
模式的に示す外観図である。符号11はローラ、12は
ローラ先端部を示す。
転させながらローラ先端部12を車軸表面に押圧して行
われるが、ローラ先端半径Rは1〜20mmとするのが
望ましい。Rが1mm未満では加工時間が長くなり生産
性が低下する。Rが20mmを超えると押圧荷重が過大
となり実用的でない。
圧は、1000〜5000MPaとするのが望ましい。
ヘルツ圧が1000MPa未満では、押圧加工により形
成される硬化層が浅くなり、圧縮残留応力が小さくな
る。ヘルツ圧を5000MPaより大きくしても、圧縮
残留応力は飽和する。
m、ローラの車軸長手方向へのローラ1回転当たりの送
り量は、0.1〜0.5mmとするのが望ましい。ロー
ラ回転速度や送り量が過小だと生産性が悪化し、過大で
は車軸表面が発熱して軟化する。
する手段として、ローラによる押圧加工の例を示した
が、その他の手段としてショットピーニングを挙げるこ
とができる。
め、非はめ合い部の両端にはめ合い部を有する模擬車軸
(以下、車軸という)を製作した。
示す。
丸棒状に粗成形した後、850℃で焼入れ、550℃に
て焼戻しを順次行った。次に機械加工を行い、はめ合い
部直径が160mm、非はめ合い部直径が130mmの
車軸とした。なお、フィレット部の直径は、最大径部で
160mm、最小径部で130mmであった。
2%耐力が1050MPa、加工硬化指数Nが0.20
であった。なお、(1)式で規定されるNuは0.34
となった。
工を行った。押圧加工は、ローラ先端半径Rが12mm
のローラを用い、ローラ回転数が450rpm、送り量
が0.3mm/revの条件で、ヘルツ圧を3000M
Paとなるように押付け荷重を設定し、はめ合い部、フ
ィレット部および非はめ合い部の全領域を対象に行っ
た。押圧加工により、はめ合い部、フィレット部および
非はめ合い部では、いずれも深さ12mmの硬化層が形
成された。また、これらの硬化層には、いずれも最大で
600MPaの圧縮残留応力が生じていた。なお、残留
応力は、X線法にて測定した。 (比較例)比較例として、以下の4種類の車軸を製作し
た。比較例1は、表3に示す成分の鋼に焼均し処理を施
した車軸で、ローラによる押圧加工は未実施である。比
較例2は、ローラによる押圧加工を実施しない以外は本
発明例1と同様の条件で製作した車軸である。比較例3
は、表3に示す成分の鋼に焼均し処理を施し、更にロー
ラによる押圧加工を実施して、はめ合い部、フィレット
部および非はめ合い部に深さ14mmの硬化層を形成し
た車軸である。比較例4は、機械的性質が本発明の範囲
外となるように焼入れ焼戻し条件を変更した以外は本発
明例1と同じ条件で製作した車軸である。
機械的性質を示す。
2%耐力が本発明で規定された範囲外で、比較例4は、
加工硬化指数が本発明で規定された範囲外となった。な
お、比較例2の機械的性質は表2と同じである。
対象に、回転曲げ疲労試験を行った。この回転曲げ疲労
試験は、片側に車輪を圧入した状態の片持ち回転曲げに
て、曲げ公称応力(曲げモーメント/はめ合い部の断面
係数)を種々変更する方法で行い、繰り返し曲げ回数が
2×107 以上となる最大の曲げ公称応力を疲労限度
とした。
度を示す。
〜4に比べ、優れた疲労強度が得られることが判った。
波焼入れ処理を行うことなく、従来の在来線車両用車軸
よりフレッティング疲労強度に優れた鉄道車両用車軸を
提供することができる。
断面図である。
外観図である。
はめ合い部、5:硬化層、11:ローラ、12:ローラ
先端部。
Claims (5)
- 【請求項1】 質量%で、C:0.30〜0.48%、
Si:0.05〜1.0%、Mn:0.5〜2.0%、
Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.15〜0.30
%、Ni:0〜2.4%を含有し、0.2%耐力が70
0〜1200MPaで、下記式を満足する加工硬化指数
N(単位:無次元)を有する鋼からなる車軸であって、
該車軸のはめ合い部とフィレット部の双方の表層部に硬
化層を有することを特徴とする鉄道車両用車軸。 N<(σy−200)/2500 但し、σy:0.2%耐力(単位:MPa) - 【請求項2】 前記硬化層が、押圧加工で形成されたも
のであることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用
車軸。 - 【請求項3】 前記はめ合い部における硬化層の深さ
が、はめ合い部の直径の0.02倍以上、0.10倍以
下で、前記フィレット部における硬化層の深さが、フィ
レット部の直径の0.05倍以上、0.10倍以下であ
ることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両
用車軸。 - 【請求項4】 熱間鍛造により所定の形状に成形した
後、焼入れ焼戻し処理を行い、その後、はめ合い部とフ
ィレット部の双方の表面にローラによる冷間押圧加工を
行い、硬化層を形成することを特徴とする請求項1ない
し3のいずれかに記載の鉄道車両用車軸の製造方法。 - 【請求項5】 ローラは、ローラ先端半径が1mm以上
20mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の
鉄道車両用車軸の製造方法。
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