JP2001183345A - 液体クロマトグラフ質量分析装置 - Google Patents

液体クロマトグラフ質量分析装置

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JP2001183345A
JP2001183345A JP36619399A JP36619399A JP2001183345A JP 2001183345 A JP2001183345 A JP 2001183345A JP 36619399 A JP36619399 A JP 36619399A JP 36619399 A JP36619399 A JP 36619399A JP 2001183345 A JP2001183345 A JP 2001183345A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高感度で安定な測定を行うことができるイオン
モービリティを用いた液体クロマトグラフ質量分析装置
を提供する。 【解決手段】測定対象試料を略大気圧下で噴霧しイオン
化するイオン源と、当該イオン源で生成されたイオンを
略大気圧下で電界により加速するイオン加速部と、当該
イオン加速部で加速されたイオンを導入し高真空下で質
量分離して測定する質量分析部とを有する液体クロマト
グラフ質量分析装置であって、前記イオン加速部内に、
噴霧流を衝突させる構造体を備える。 【効果】液体クロマトグラムから導入される溶液の流量
や種類に拘わらず高感度で安定な測定が行える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は大気圧イオン源を用
いた液体クロマトグラフ質量分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、イオンを加速、または質量数毎の
分離を行うことを目的とした装置としてイオンモービリ
ティ(ドリフトチューブ)がある。このイオンモービリ
ティは、ガス状の試料を測定する装置として以前から使
用されてきた。イオンモービリティを試料ガスの分析に
用いた例は、例えば、特開平5−264505 号公報や米国特
許第5,053,343号などがある。
【0003】また、イオンモービリティはガス状の試料
だけでなく、液体試料の測定に使用されることも考案さ
れている。この様な例は、例えば、Y.H.Chen,H.H.Hill,
Jr.,D.P.Winttmer,International Journal of Mass Spe
ctrometry and Ion Processes,154巻,1−1
3ページ,1996年,“Thermal effects on electrosp
ray ionization ion mobility spectrometry”や、C.W
u,W.F.Siems,G.R.Asbury,H.H.Hill,Jr.,Anal.Chem.,7
0巻,4929−4938ページ,1998年,“Elec
trospray Ionization High-Resolution Ion MobilitySp
ectrometry-Mass Spectrometry”などに記述されてい
る。
【0004】これらの構成においては、試料を含んだ液
体を5μL/分程度の流速でエレクトロスプレーイオン
源(ESI)でイオン化し、その後生成したイオンを傾
斜電界を発生しているイオンモービリティに導入して加
速することが開示されている。
【0005】イオンモービリティ内は、大気圧であるた
め、イオン化された試料が導入されると、同一の電荷で
はイオンの分子量が小さくなる程、電気移動度が大きく
なり、小さい分子量のイオンほど早く移動するようにな
る。この様な動作により、イオンを質量数毎に分離する
ことが可能となる。更に、この分離能を向上させるため
に、イオンの流れとは逆の方向から窒素等のドリフトガ
ス(カウンタガス)を導入することも行われている。こ
のように、イオンモービリティは試料を質量数毎に分離
する機能を有しており、液体クロマトグラフの高分子量
の試料を測定する際の検出器として、また、四重極質量
分析装置と組合わせて、更なる分離能を向上させる装置
として使用されている。
【0006】また、液体試料をイオンモービリティ内に
導入した場合、帯電液滴は電界方向に分極し、分極した
同符号のイオンはクーロン力でお互いに反発し合うこと
により、イオンの蒸発が促進されるという効果も生ず
る。
【0007】また、イオンモービリティは使用していな
いが、液体クロマトグラフからの試料を大気圧イオン源
でイオン化したときの液滴の問題を解決するものとし
て、特開平5−203637号公報がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】液体試料を分析する場
合、イオンモービリティの存在の有無に関わらず、イオ
ン化の際に発生する帯電液滴をどのように除去するか
が、分析結果のSN比向上の一つの鍵となる。
【0009】大気圧イオン源で静電噴霧された微細液滴
の中には、粒子径が数nm程度の微細な試料成分のイオ
ンだけでなく、数10nmから数10μmの帯電した液
滴を含んでいる。これらの径の大きな帯電液滴が多く存
在すると、質量分析装置に導入されてノイズとなるだけ
でなく、イオン蒸発が不十分となり、得られる試料成分
のイオンの発生量を減らして信号の低下も生じさせるた
めである。
【0010】そのため高感度で試料成分を測定するため
には、極力これらの比較的径の大きな帯電液滴を効率良
く除去させることが重要である。このような問題を解決
するための手段として、イオンモービリティを用いてい
ないものの、例えば、質量分析装置のイオン導入細孔と
エレクトロスプレーイオン源の噴霧流の中心軸をずらし
て配置するというような構成が考えられる。これは例え
ば、上記の特開平5−203637号公報に開示される。
【0011】また、イオンモービリティを用いた引用文
献の場合は、大気圧イオン源から正対する方向から加熱
したドリフトガス(カウンタガス)を吹き出すことによ
り、粒子径が比較的大きく極性が中性に近い帯電液滴を
噴霧流と反対方向に吹飛ばしたり、蒸発を促進したりし
て、径の大きな液滴を極力除去している。
【0012】しかし、上記の特開平5−203637 号公報の
ような構成では、イオン源からの噴霧流の一部しか質量
分析装置側に取り込むことができない。特開平5−20363
7 号公報の場合は、質量分析装置のイオン導入細孔とイ
オン源との距離が短いため、それほど問題とはならない
が、イオンモービリティが間に介在する場合、イオンモ
ービリティに導入されるイオン源からの噴霧流が非常に
少なくなってしまうと(例えば数nL/分程度の微量流
量)、イオンモービリティの長さ分、イオン源が質量分
析装置のイオン導入細孔より遠くなるため、イオンモー
ビリティ内でイオンの拡散や吸着が生じ、イオンの損失
が増大し、結局のところ信号の低下を招いてしまうとい
う問題が発生する。
【0013】また、引用文献で開示されているドリフト
ガスを使用するイオンモービリティの場合は、5μL/
分程度であり、この程度の低流量であれば、イオンモー
ビリティ内でほとんど液滴を蒸発させることができるた
め、ある程度のSN比を得ることはできる。しかし、実
用的な液体クロマトグラフの流量、即ち約0.2mL/
分のセミミクロ領域の流量から約2.0mL/分 の汎用
の液体クロマトグラフの流量の場合、帯電液滴が多量に
発生してしまうため、ドリフトガスを当てただけでは充
分に蒸発させることができないため、結局ノイズが増大
し、更にはイオン化効率も低下してしまうことから、大
幅にSN比が低下してしまうという問題があった。
【0014】本発明の目的は、実用的な高感度で安定な
測定を行うことができるイオンモービリティを用いた液
体クロマトグラフ質量分析装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の特徴は、測定対象試料を略大気圧下で噴霧し
イオン化するイオン源と、当該イオン源で生成されたイ
オンを大気圧下で電界により加速するイオン加速部と、
当該イオン加速部で加速されたイオンを導入し高真空下
で質量分離して測定する質量分析部とを有する液体クロ
マトグラフ質量分析装置であって、前記イオン加速部内
に、噴霧流を衝突させる構造体を備えたことである。
【0016】また更には、前記イオン加速部は、前記イ
オン源で生成されたイオンを偏向して前記質量分析部へ
導くことである。
【0017】また更には、前記イオン源と前記イオン加
速部を噴霧流の中心軸と当該イオン加速部の中心軸を一
致させるように配置し、且つ前記質量分析部にイオンを
導入する細孔の中心軸が前記イオン源と前記イオン加速
部の中心軸からずらした位置に配置したことである。
【0018】また更には、前記イオン加速部の長さを可
変とすることである。
【0019】また更には、前記イオン源と前記イオン加
速部は、当該イオン源の噴霧流の中心軸と当該イオン加
速部の中心軸がずれるように配置し、前記イオン源と前
記イオン加速部間に、前記イオン源からの噴霧流を衝突
させる構造体を設けたことである。
【0020】また更には、前記イオン源を前記イオン加
速部内に配置し、且つ、前記イオン源は噴霧流の中心軸
方向に移動可能であることである。
【0021】また更には、前記イオン加速部に印加する
電圧の電位を切り替える切替手段を備えていることであ
る。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面を用
いて説明する。
【0023】図1は本発明の第1の実施例の断面図を示
すものである。衝突板3を備えたイオンモービリティ1
の導入側には大気圧イオン源2が装着され、イオンモー
ビリティ1の出口側は質量分析装置4の導入部41に結
合されている。
【0024】イオンモービリティ1は、例えば円筒状の
形状でリング形状の電極131〜135とリング形状の
絶縁物141〜145で構成されている。電極131〜
135は、絶縁物141〜144によって絶縁されてい
る。この場合衝突板3は、例えば円板である。また、イ
オンモービリティ1内の圧力は、ほぼ大気圧である。
【0025】大気圧イオン源2には液体クロマトグラフ
もしくはシリンジポンプ等で試料成分を含んだ溶媒をチ
ューブ等を経て導入している。本実施例の大気圧イオン
源2ではエレクトロスプレー大気圧イオン源(ESI)
で説明しているが、大気圧イオン源2は大気圧化学イオ
ン化イオン源(APCI)やソニックスプレイイオン源
(SSI)などであっても良く、大気圧下でイオン化を
行えるイオン源であれば良い。
【0026】本実施例の大気圧イオン源2では、静電噴
霧を発生させるために噴霧部21に数KVの高電圧を印
加する電源22を備え、更に対向電極23と該対抗電極
23に電圧を印加する電源12を備えている。これによ
って対向電極23と大気圧イオン源2との間に数KVの
電位差を生じさせて静電噴霧を発生させる。
【0027】また、大気圧イオン源の噴霧部21は、図
1の拡大図で示すように、二重管の構造をしており、内
側の管には試料成分を含む溶液を流し、内側の管と外側
の管の間には噴霧の微細化を促進させるアシストガスを
同軸上に流す。通常アシストガスは乾燥窒素ガスを使用
するが、アルゴン等の不活性ガスを使用しても良い。こ
のアシストガスにより大気中に静電噴霧された液滴はさ
らに蒸発が促進され、より微細になってイオンを大気中
に放出させる。
【0028】本実施例では、イオンモービリティ1の電
極131と対向電極23に同一の電圧を印加している。
各電極131〜135は、抵抗151〜154によって
電圧が分割され傾斜電圧が印加されている。これによ
り、電極131〜135によってイオンモービリティ1
内部に傾斜電界を作り、噴霧により大気中に生成したイ
オンをイオンモービリティ1の出口方向に加速する。ま
た、電極135には、抵抗16によってオフセット電圧
を印加する。一方、電極板17には、電源18で電圧を
印加しイオンを質量分析装置に導入するような電界を作
っている。
【0029】一方、さらに帯電液滴を蒸発させて微細に
するためカウンタガス19を加熱し大気圧イオン源の噴
霧流と正対する方向から吹き出す構造としている。カウ
ンタガス19は通常乾燥窒素ガスを使用するがアルゴン
等の不活性ガスを使用しても良い。カウンタガス19は
カウンタガスを加熱するヒータ110によって室温から
800℃程度まで設定加熱可能である。また、流量は0
L/分から約20L/分まで設定可能である。本実施例
ではカウンタガス19は図1に示す様に質量分析装置の
導入部41とイオン導入電極板17との間から大気圧イ
オン源の噴霧流と正対する方向に流している。
【0030】大気圧イオン源2で静電噴霧された微細液
滴の中には、既述のように、粒子径が数nm程度の微細
な試料成分のイオンだけでなく、数10nmから数10
μmの帯電した液滴を含んでいる。これらの径の大きな
帯電液滴を除去するには、まず一つの手段として、大気
圧イオン源2から正対する方向から加熱したカウンタガ
ス19を吹き出すことにより、粒子径が比較的大きく極
性が中性に近い帯電液滴を噴霧流と反対方向に吹飛ばし
たり、蒸発を促進したりして、径の大きな液滴を極力除
去する。
【0031】また、イオンモービリティの電界により、
帯電液滴は傾斜電界の方向に分極して変形する。この分
極によって同符号のイオンが偏在し、クーロン力により
反発してイオン蒸発がさらに加速され、またイオンの生
成が促進される。
【0032】一方、粒子径が数nmと微細で電荷を持つ
試料成分のイオンは、カウンタガスによる抗力が小さい
ため、イオンモービリティの電界により加速されイオン
モービリティの出口側に押出される。
【0033】以上の手段により、ある程度の帯電液滴の
除去が可能となる。
【0034】しかし、実用的な液体クロマトグラフの流
量、すなわち約0.2 mL/分のセミミクロ領域の流量
から約2.0 mL/分の汎用の液体クロマトグラフの流
量では、粒子径の大きな帯電液滴が多すぎるため、上記
の手段だけでは充分に液滴を除去することができない。
この場合、噴霧をより微細にするために、アシストガス
の初速度を例えば70m/秒程度に増加させることが考
えられるが、イオンモービリティ内を帯電液滴が通過す
る速度及び運動エネルギーが増大し、帯電液滴をイオン
モービリティ内に十分な時間停滞させることができなく
なるため、効率良く液滴を蒸発させ且つイオンの発生効
率を向上させることが困難となる。
【0035】そこで、本実施例では、イオンモービリテ
ィ内に衝突板3を備える。この衝突板3を備えることに
より、慣性インパクターの原理によって、比較的大きな
粒子径(数10nmから数10μm)の帯電した液滴
は、衝突板3に衝突し付着するため、衝突板3を迂回し
て通る事はできない。一方、数nm程度の微細な試料成
分のイオンは、衝突板3を流線311の様に迂回して通
り抜けることができるので、移動相溶媒の流量が多い場
合でもノイズを低減し高いSN比を得ることができる。
したがって、アシストガスの速度を上げること無く、帯
電液滴の蒸発を十分行うことができるようになる。
【0036】更に本実施例では、衝突板3の最適位置に
ついてイオンモービリティ1内の入り口付近,中心,出
口付近の位置で実験を行った。このとき、衝突板3には
イオンモービリティ1内の電界を乱さないように衝突板
3が位置する電極と同一の電圧を印加している。結果と
して、衝突板3が中心付近にあった場合が、入口付近,
出口付近のSN比よりも数倍から十倍良いSN比が得ら
れるという結果が得られた。
【0037】また、イオンモービリティ1内の中心付近
に衝突板3が存在する場合には存在しない場合に比べ
て、流量20μL/分の場合には約2.7 倍、流量20
0μL/分の場合には3.7 倍、SN比が向上した。
尚、この比較においては、溶媒は水/メタノール=1/
1、試料はレセルピンで行ったものである。
【0038】本実施例では、衝突板3を例に説明した
が、より比較的大きな帯電液滴を減少させるために、衝
突物として、大気圧イオン源側に凹形状(お椀状の形
状)の構造体を配置しても良い。
【0039】さらに、衝突板3を加熱ヒータ等で加熱す
る事で、熱により大きな帯電液滴をさらに蒸発させて減
少させることが可能である。また、加熱により、試料と
して蛋白を噴霧した場合や染料を噴霧した様な場合の試
料の付着を防止できる。これにより汚れを防止してコン
タミ等のノイズを減少させる事が可能である。また、加
熱して焼き出すことができるため衝突物のクリーニング
の頻度を大幅に低減可能である。
【0040】次に、洗浄手段について説明する。
【0041】図1の例では衝突板3を水もしくは有機溶
媒を噴霧して洗浄する噴霧部113を備えており、また
第一細孔42に水もしくは有機溶媒を噴霧して洗浄する
噴霧部112を備えている。
【0042】他の例としては、大気圧イオン源2の噴霧
流を衝突する構造体付近もしくはイオンモービリティ1
の内部もしくは質量分析装置4の導入部41を水もしく
は有機溶媒にて洗浄できるようにする。例えば各電極1
3に穴を開け非導電性のチューブを噴霧部112として
挿入した構造体としている。
【0043】また、洗浄の動作としては、例えば試料成
分測定後、自動的に一定時間洗浄する設定手段を備え
る。これにより、たとえ試料成分に高濃度の蛋白を噴霧
した場合や染料を噴霧した場合でも、また、燐酸バッフ
ァ等の不揮発性バッファを使用した場合でも容易に汚れ
の付着を除去でき、高感度で、長期間安定に測定するこ
とが可能である。
【0044】次に、第2の実施例を図2を使って説明す
る。
【0045】図2は、イオンモービリティ11の断面図
を示すものである。イオンモービリティ11は、電極1
31〜135がぞれぞれ絶縁物141〜144で絶縁さ
れた状態で構成されており、イオンを質量分析装置4に
導入する向きに電極131〜135により傾斜電界を発
生させている。イオンモービリティ11は、湾曲した構
造体としており、イオン源2の噴霧部21で噴霧した液
滴はイオンモービリティ11内に導入し、質量分析装置
4の導入部41に向かう。ここで、慣性インパクターの
原理により比較的大きな粒子径(数10nmから数10
μm)の帯電液滴の大部分は、イオンモービリティ11
の湾曲した外周側の内壁面に衝突し付着して質量分析装
置4の導入部41までは到達しない。
【0046】また、加熱ヒータ1101を、噴霧流線の
進行方向の外周側の湾曲部分付近に取り付ける。これに
より、湾曲した電極132,133付近の外周側の内壁
に接近した比較的大きな帯電液滴を加熱させて蒸発さ
せ、減少させることが可能である。また、汚れの付着を
防止できるので、コンタミノイズの発生を低下させるこ
とが可能である。
【0047】一方、数nm程度の微細な試料成分のイオ
ンは流線312の様に湾曲して通り抜け質量分析装置4
で高感度な測定が可能となる。当然、カウンタガスや衝
突板を併用することでさらに比較的大きな帯電液滴を減
少させて高感度に測定することも可能である。
【0048】次に、第3の実施例を図3を使って説明す
る。
【0049】図3は、イオンモービリティ12の断面図
を示すものである。イオンモービリティ12には、電極
131〜135がそれぞれ絶縁物141〜144で絶縁
された状態で構成されており、イオンを質量分析装置4
に導入する向きに電極131〜135により傾斜電界を
発生している。イオンモービリティ12は図3で示す様
にくびれた構造体としており、イオン源2の噴霧部21
で噴霧した液滴はイオンモービリティ12内に導入さ
れ、質量分析装置4の導入部41に向かう。ここで、慣
性インパクターの原理により比較的大きな粒子径(数1
0nmから数10μm)の帯電液滴の大部分はイオンモ
ービリティ11のくびれて細くなった内壁面に衝突し付
着するので質量分析装置の導入部41までは到達しな
い。また、加熱ヒータ1101は、噴霧流線の進行方向
のくびれた部分付近に取り付ける。これにより、加熱さ
れたくびれた部分の電極142,143に接近した比較
的大きな帯電液滴をさらに蒸発させて減少させることが
可能である。また、汚れの付着を防止できるので、コン
タミノイズが発生するのを低下させることが可能であ
る。
【0050】一方、数nm程度の微細な試料成分のイオ
ンは流線313の様に曲がりくねって通り抜りぬけるこ
とができ、質量分析装置4で高感度な測定が可能とな
る。
【0051】この場合当然、カウンタガスや衝突板を併
用することでさらに比較的大きな帯電液滴を減少させて
高感度に測定することも可能である。
【0052】次に図4で、第4の実施例を説明する。
【0053】この実施例は、イオンモービリティ1の中
心軸と大気圧イオン源2の中心軸は一致しているが、質
量分析装置4の導入部の細孔42の中心軸とはずらした
構造体としたものである。この例では噴霧流の中心軸が
質量分析装置4の導入部の細孔42の中心軸とずれてい
るため、噴霧流の周辺の比較的小さい帯電液滴がより多
く質量分析装置4に導入されるためノイズが低下する。
これは噴霧流の端部では同符号の帯電液滴によるクーロ
ン力の反発力によってより微細な液滴になるからであ
る。さらに、イオンモービリティ1の中心軸と大気圧イ
オン源2の中心軸とが一致しているため、均一な電界に
より生成したイオンは効率良く質量分析装置4側に加速
させ移動させることができる。
【0054】また、図1のようにイオンモービリティ1
内に衝突板3を追加することで、更に性能を向上する事
が可能である。
【0055】図5では、本発明の第5の実施例を示す。
【0056】この実施例では、大気圧イオン源2の噴霧
流の中心軸をイオンモービリティ1の中心軸に対して角
度を持たせた構造体としている。大気圧イオン源2の噴
霧流は湾曲した衝突板32に対して噴霧される。慣性イ
ンパクターの原理の通り、比較的大きな径(10nmか
ら数10μm)の帯電液滴は衝突板32に衝突し付着
し、数nm程度の微細な試料成分のイオンだけが衝突板
32に衝突せず流線33の様にイオンモービリティ1に
導入されるため、ノイズを低減し高いSN比が得られ
る。以降は図1の実施例の場合と同様である。
【0057】本実施例では、衝突版32を凹形状もしく
はお椀形状にすることで効率良く試料成分のイオンをイ
オンモービリティ1に導入し測定する事が可能である。
【0058】また、図1のようにイオンモービリティ1
内に衝突板3を追加することで、更に性能を向上する事
が可能である。
【0059】図6は、本発明の第6の実施例を示すもの
である。
【0060】本実施例では、該衝突板3や衝突構造体を
複数個、もしくは複数ヶ所設けることで、カスケードイ
ンパクターと同様の原理でさらに帯電液滴を減少させる
ものである。本実施例では、一段目の衝突板34で一度
慣性インパクターの原理により比較的大きな径(10n
mから数10μm)の帯電した液滴を除去し、さらに中
央に孔の空いた板35により、流線が311の様に絞ら
れ、液滴の速度を上げ、再度二段目の衝突板36に衝突
させることで、残りの比較的大きな液滴が除去される。
以上によりさらにノイズを低下させてSN比の向上を図
ることが可能である。
【0061】次に第7の実施例を図7を用いて説明す
る。
【0062】本実施例はイオンモービリティの電極を含
む筒部38内の衝突板37が着脱可能になっている例で
ある。衝突板37の突起部371が、イオンモービリテ
ィの電極を含む筒部38に図の様に嵌まり、且つ衝突板
37は取手部372を有し、取手部372を掴んで筒部
38に矢印の方向に動かして容易に着脱可能な構造とな
っている。
【0063】以上よりイオンモービリティ1が衝突板3
7を取り外した状態でも、取付けた状態でも使用可能と
なる。衝突板37が取付けた状態では溶液の流量が多い
場合に前述の通りの効果が得られる。取り外した状態で
は溶液流量が極端に少ない場合に、例えば質量分析装置
4で高感度測定が可能なnフローと呼ばれる数nL/分
程度の流量の場合には、アシストガスやカウンタガスの
流量が少なくても十分溶媒を蒸発して高感度測定するこ
とが可能である。逆に衝突板37があると試料成分イオ
ンが拡散し損失が大きくなってしまい高感度測定が困難
となってしまう。よって、本実施例の様に衝突板37を
着脱可能な構造体とすることで、溶液の流量が数nL/
分程度の極端に低い場合は衝突板37を取り外して使
い、流量の多い場合、例えば通常の液体クラマトグラフ
で使用する数mL/分の場合は衝突板37を取り付けて
使うことで、低流量から高流量まで高感度で測定するこ
とが可能となる。
【0064】さらに、衝突板37を取外して容易にクリ
ーニングする事も可能であり、衝突板37に付着した試
料成分や溶媒の汚れによるノイズを低減できる。
【0065】次に第8の実施例を図8を用いて説明す
る。
【0066】本実施例ではイオンモービリティを構成す
る円筒38に対してより径の小さなイオンモービリティ
を構成する円筒39が前述の円筒38の内側をスライド
する構造体となっている。円筒38には絶縁物であるリ
ング状の突起部381が、円筒39には絶縁物であるリ
ング状の突起部391がそれぞれ備えられ、突起部38
1は円筒39の外壁に接触し、突起部391は円筒38
の内壁に接触してスライドする。以上の構成よりイオン
モービリティによって形成する電界の長さとイオンの移
動距離を可変とする事ができる。
【0067】イオンモービリティは当然円筒以外の構造
体であっても良い。また、アコーデオンの様に蛇腹な構
造体になっていても良い。また、この場合スライド長に
対応してイオンモービリティ内に均一な電界の傾斜を発
生するようにイオンモービリティの電極に印加する電圧
を変えても良い。
【0068】以上の様にイオンモービリティの長さを可
変とすることで、液体クロマトグラフから溶出される溶
液の流量が極端に低い数nL/分程度の場合には、イオ
ンモービリティを短くして試料成分イオンの拡散による
損失を防ぎ、溶液の流量が通常の液体クロマトグラフで
使用する数mL/分程度の場合には、液滴を十分蒸発さ
せるためにイオンモービリティを長くする事で高感度に
測定することが可能となる。また、当然ながら、溶液の
流量が多いときには、第1の実施例で説明した衝突板を
イオンモービリティ内に備えることにより、より効率よ
く液滴を除去することが可能となる。
【0069】第9の実施例を図9を用いて説明する。
【0070】本実施例の場合には、前述の実施例の効果
と同様な効果を得るために、イオンモービリティ38の
内側に大気圧イオン源2を保持したケース26が矢印の
方向にスライドする構造となっている。この場合、当然
スライド長に対応してイオンモービリティ内に均一な電
界の傾斜を発生するようにイオンモービリティの電極に
印加する電極の範囲及び電圧を変えても良い。
【0071】以上の様に大気圧イオン源2をスライドす
ることで、イオンが通過する実質的なイオンモービリテ
ィの長さを可変とすることができ、図8の実施例と同様
に、溶液の流量が極端に低い数nL/分程度の流量の場
合には、イオンモービリティ内に大気圧イオン源をスラ
イドして試料成分のイオンの拡散や吸着による損失を防
ぎ、溶液が通常の液体クラマトグラフで使用するmL/
分程度の流量の場合には溶液を十分蒸発させるためにイ
オンモービリティから引き出す方向に大気圧イオン源2
をスライドして高感度で測定することが可能となる。
【0072】本発明の第10の実施例を図10を用いて
説明する。
【0073】従来のイオンモービリティ1内は、試料成
分イオンのみを移動させるために傾斜を持った電界を作
っている。図10の例では、イオンモービリティの電極
131に負電圧を印加する電源122を追加して備え、ス
イッチ123により正の電圧を印加する電源121と負
電圧を印加する電源122を切換えることができる構成
となっている。また、対向電極23は別の電源124で
給電し、対向電極23とイオンモービリティ1の電極1
31は絶縁物146で絶縁している。
【0074】図10の状態は、電極131に負電圧を電
源122より印加しているのでイオンモービリティ1内
には図の様に低い電界の等電位線116と高い電界の等
電位線117が発生する。そのため、正の試料成分イオ
ンを噴霧した場合、イオンモービリティ1の出口側とは
反対側の方向に力が図の矢印118の様に働く。そのた
め、正の試料成分イオンはイオンモービリティ1の入り
口側に加速され押出されて質量分析装置4には導入され
ない。負イオンの試料成分を噴霧した場合には同様に逆
の電圧,電界を印加することで同様に質量分析装置4に
導入しないようにすることができる。
【0075】以上の実施例の応用例を図11を用いて説
明する。本実施例では、試料成分を含んだ溶液を液体ク
ロマトグラムのカラムで分離し紫外吸収でクロマトグラ
ムを得ている。また、同時にカラムで分離した溶液を質
量分析装置4にて測定する構成になっている。ここで、
クロマトグラム中の試料成分のピーク51,52が得ら
れている時のみ正の電圧53をイオンモービリティ1の
電極131に印加し、正のイオンを加速して移動させ質
量分析装置に導入し分析するようにしている。クロマト
グラム中の試料成分のピーク51,52が発生している
時以外は負電圧54を印加し、正イオンは質量分析装置
4に導入されないようにしている。
【0076】以上より、質量分析装置4で分析する必要
のある時間以外はイオンモービリティ1内の質量分析装
置4側には溶液のイオンが導入されないため、例えばリ
ン酸バッファ等の不揮発性バッファを溶液に添加して使
用する場合には、衝突板3や質量分析装置4の導入部4
1や第一細孔42の不揮発性バッファによる汚れや第一
細孔42の詰まりを大幅に低減することが可能となり、
安定に高感度で測定することができる。また、洗浄など
の手間を大幅に低減できる。
【0077】また、クロマトグラムのピークに対して
正,負両方のイオンを一回で時間切換えて測定する必要
がある場合には、電極131に逆電圧を印加せずに例え
ばゼロボルトを印加してイオンを質量分析装置4側に導
入しないようにすることでも大きな効果が得られる。
【0078】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
数nL/分の極低流量から数mL/分程度の通常液体ク
ロマトグラフで使用されるような流量に至るまで、導入
される溶媒の流量に拘わらず、高感度で安定な性能の液
体クロマトグラフ質量分析装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の構成を示す断面図であ
る。
【図2】本発明の第2の実施例の構成を示す断面図であ
る。
【図3】本発明の第3の実施例の構成を示す断面図であ
る。
【図4】本発明の第4の実施例の構成を示す断面図であ
る。
【図5】本発明の第5の実施例の構成を示す断面図であ
る。
【図6】本発明の第6の実施例の構成を示す断面図であ
る。
【図7】本発明の第7の実施例の衝突板の構成を示す図
である。
【図8】本発明の第8の実施例の構成を示す断面図であ
る。
【図9】本発明の第9の実施例の構成を示す断面図であ
る。
【図10】本発明の第10の実施例の構成を示す断面図
である。
【図11】本発明の第10の実施例の測定タイミング制
御を示す図である。
【符号の説明】
1…イオンモービリティ、2…大気圧イオン源、4…質
量分析装置、11…イオンモービリティの内表面、1
2,18,22,43,121,122…電源、16,
151,152,153,154…抵抗、17…イオン
導入電極板、19…カウンタガス、23…対抗電極、3
4,36…衝突板、35…流線を絞るための板、42…
質量分析装置の第一細孔、51…紫外吸収のクロマトグ
ラムのピーク、52…別の紫外吸収のクロマトグラムの
ピーク、53…イオンモービリティに印加する正の電
圧、54…イオンモービリティに印加する負の電圧、1
10,1101…ヒータ、112…衝突板洗浄用噴霧
部、114…第一細孔洗浄用噴霧部、131,132,
133,134,135…電極、141,142,14
3,144,145…絶縁物。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 義昭 茨城県ひたちなか市大字市毛882番地 株 式会社日立製作所計測器グループ内 (72)発明者 平林 集 東京都国分寺市東恋ケ窪一丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 平林 由紀子 東京都国分寺市東恋ケ窪一丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】測定対象試料を略大気圧下で噴霧しイオン
    化するイオン源と、当該イオン源で生成されたイオンを
    略大気圧下で電界により加速するイオン加速部と、当該
    イオン加速部で加速されたイオンを導入し高真空下で質
    量分離して測定する質量分析部とを有する液体クロマト
    グラフ質量分析装置であって、 前記イオン加速部内に、噴霧流を衝突させる構造体を備
    えたことを特徴とする液体クロマトグラフ質量分析装
    置。
  2. 【請求項2】請求項1において、 前記構造体及び/または前記質量分析部のイオン導入部
    の細孔を洗浄する手段を備えたことを特徴とする液体ク
    ロマトグラフ質量分析装置。
  3. 【請求項3】請求項1において、 前記構造体を板形状とし、着脱可能とすることを特徴と
    する液体クロマトグラフ質量分析装置。
  4. 【請求項4】請求項1において、 前記構造体を前記イオン加速部内に複数備えたことを特
    徴とする液体クロマトグラフ質量分析装置。
  5. 【請求項5】請求項4において、 前記構造体は三枚設けられ、噴霧流に対して最上流側及
    び最下流側に配置される構造体は周囲を噴霧流が流れる
    形状、中間に配置される構造体は構造体の中央を噴霧流
    が通過する形状であることを特徴とする液体クロマトグ
    ラフ質量分析装置。
  6. 【請求項6】測定対象試料を略大気圧下で噴霧しイオン
    化するイオン源と、当該イオン源で生成されたイオンを
    略大気圧下で電界により加速するイオン加速部と、当該
    イオン加速部で加速されたイオンを導入し高真空下で質
    量分離して測定する質量分析部とを有する液体クロマト
    グラフ質量分析装置であって、 前記イオン加速部は、前記イオン源で生成されたイオン
    を偏向して前記質量分析部へ導くことを特徴とする液体
    クロマトグラフ質量分析装置。
  7. 【請求項7】請求項6において、 前記イオン加速部は湾曲構造であり、当該イオン加速部
    を加熱する加熱部を有することを特徴とする液体クロマ
    トグラフ質量分析装置。
  8. 【請求項8】請求項6において、 前記イオン加速部は中間部がくびれた構造であり、当該
    イオン加速部を加熱する加熱部を有することを特徴とす
    る液体クロマトグラフ質量分析装置。
  9. 【請求項9】測定対象試料を略大気圧下で噴霧しイオン
    化するイオン源と、当該イオン源で生成されたイオンを
    略大気圧下で電界により加速するイオン加速部と、当該
    イオン加速部で加速されたイオンを導入し高真空下で質
    量分離して測定する質量分析部とを有する液体クロマト
    グラフ質量分析装置であって、 前記イオン源と前記イオン加速部を噴霧流の中心軸と当
    該イオン加速部の中心軸を一致させるように配置し、且
    つ前記質量分析部にイオンを導入する細孔の中心軸が前
    記イオン源と前記イオン加速部の中心軸からずらした位
    置に配置されることを特徴とする液体クロマトグラフ質
    量分析装置。
  10. 【請求項10】測定対象試料を略大気圧下で噴霧しイオ
    ン化するイオン源と、当該イオン源で生成されたイオン
    を略大気圧下で電界により加速するイオン加速部と、当
    該イオン加速部で加速されたイオンを導入し高真空下で
    質量分離して測定する質量分析部とを有する液体クロマ
    トグラフ質量分析装置であって、 前記イオン加速部の長さを可変とすることを特徴とする
    液体クロマトグラム質量分析装置。
  11. 【請求項11】測定対象試料を略大気圧下で噴霧しイオ
    ン化するイオン源と、当該イオン源で生成されたイオン
    を略大気圧下で電界により加速するイオン加速部と、当
    該イオン加速部で加速されたイオンを導入し高真空下で
    質量分離して測定する質量分析部とを有する液体クロマ
    トグラフ質量分析装置であって、 前記イオン源と前記イオン加速部は、当該イオン源の噴
    霧流の中心軸と当該イオン加速部の中心軸がずれるよう
    に配置し、 前記イオン源と前記イオン加速部間に、前記イオン源か
    らの噴霧流を衝突させる構造体を設けたことを特徴とす
    る液体クロマトグラフ質量分析装置。
  12. 【請求項12】測定対象試料を略大気圧下で噴霧しイオ
    ン化するイオン源と、当該イオン源で生成されたイオン
    を略大気圧下で電界により加速するイオン加速部と、当
    該イオン加速部で加速されたイオンを導入し高真空下で
    質量分離して測定する質量分析部とを有する液体クロマ
    トグラフ質量分析装置であって、 前記イオン源を前記イオン加速部内に配置し、且つ、前
    記イオン源は噴霧流の中心軸方向に移動可能であること
    を特徴とした液体クロマトグラム質量分析装置。
  13. 【請求項13】測定対象試料を略大気圧下で噴霧しイオ
    ン化するイオン源と、当該イオン源で生成されたイオン
    を略大気圧下で電界により加速するイオン加速部と、当
    該イオン加速部で加速されたイオンを導入し高真空下で
    質量分離して測定する質量分析部とを有する液体クロマ
    トグラフ質量分析装置であって、 前記イオン加速部に印加する電圧の電位を切り替える切
    替手段を備えていることを特徴とする液体クロマトグラ
    フ質量分析装置。
  14. 【請求項14】請求項13において、 前記切替手段は、データ収集時に切り替えられることを
    特徴とする液体クロマトグラフ質量分析装置。
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