JP2001182494A - シールドトンネル内の床版構築方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 現場での鉄筋型枠組立作業やコンクリート打
設作業がないシールドトンネル内の床版構築方法を提供
する。 【解決手段】 摩擦抵抗の小さい床版滑動用支承面を備
える受台４の前方に押出しステージ１０及び反力台１１
を構築する。押出しステージ１０上に複数枚のプレキャ
ストＰＣ床版５を仮置きし、所定長さの床版ブロック１
５を形成し先行する床版ブロック１６と連結した後、床
版ブロック１５の後端にブラケット１７をセットし、反
力台１１との間にＰＣ鋼線１８を張り、押出しジャッキ
１９を使用して連続化したプレキャストＰＣ床版ブロッ
クを受台４上に押出す。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、受台で支持され
るコンクリート造の床版をシールドトンネルの下半部に
構築する方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】シールドトンネルはセグメントにより円
形のトンネル空間が形成されるが、鉄道や道路として供
用する場合には、所定幅の軌道敷や道路幅等を確保する
ためトンネル下半部に平坦部が必要となる。特に大断面
の道路トンネルでは、壁体や受台で支持されるコンクリ
ート造の床版が構築され、床版下面の空間は供用開始後
の保守・避難通路として、あるいは各種信号通信設備用
の配管配線スペース又は給気ダクトとして利用される。

【０００３】ところで上記床版の構築を工期短縮等の要
請からセグメント組立と平行して施工する場合がある。
このような条件下では、セグメントの運搬施設や排土設
備を支持する仮設床版が別に存在しているため、床版部
の施工をこの仮設床版下面の空間にて行わなければなら
ない。

【０００４】従来のシールドトンネルにおける床版構築
方法では、図１０に示すように、先ずトンネル内空下面
に底部コンクリート１０１を打設して平坦部を作り、次
にこの平坦部から中仕切りの壁体１０２と側壁部分１０
３を立ち上げ、最後にトンネル下方より支持される型枠
支保工１０４の上面に鉄筋を組み立て、コンクリートを
打設して床版部１０５を構築していた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、このような床
版構築における配筋及びコンクリート打設作業は、型枠
支保工１０４と仮設床版１０６下面の狭い空間で施工し
なければならず、その作業条件は劣悪なものであった。
又従来の床版は現場打ちの鉄筋コンクリート製であった
ため所要の養生期間が必要で、工期が長くなる欠点があ
った。又、床版の耐力が低いため、部材厚が厚くなった
り、施工時にひび割れが生じるなどの欠点もあった。

【０００６】この発明は、上記のような従来のシールド
トンネル内の床版構築方法が有する問題点を解消すべく
なされたものであり、床版構築のための現場での鉄筋型
枠組立作業やコンクリート打設作業がなく、品質管理も
十分にでき、養生期間が不要で工期短縮が可能な、又部
材耐力の高い床版をセットすることのできるシールドト
ンネル内の床版構築方法を提供することを目的としてい
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、この発明のシールドトンネル内の床版構築方法は、
シールドトンネル内の少なくとも両側部に連続する受台
を構築すると共にこの受台上に床版滑動用支承面を形成
し、トンネル入口部の受台前方には反力台とこれらの反
力台間前方に所要長さの押出しステージを設置する。

【０００８】この押出しステージ上には複数枚のプレキ
ャストプレストレストコンクリート床版（プレキャスト
ＰＣ床版）を載置し、これらをブロック緊張する。その
後、このプレキャストＰＣ床版ブロックの後端にセット
するブラケットと反力台とを緊張材で連結する。

【０００９】この緊張材を反力台に設置するジャッキで
緊張することにより前記プレキャストＰＣ床版ブロック
を前記床版滑動用支承面上に押出す。同様な作業で後続
するプレキャストＰＣ床版ブロックを形成し、先行する
ブロックに連結緊張する。このようにして順次連続一体
化したプレキャストＰＣ床版を前記ジャッキで押出しな
がら所要区間の床版を構築することを特徴とするもので
ある。

【００１０】受台は、プレキャストＰＣ床版の耐力に応
じてその間隔を設定する。両側部の距離が大きく、中間
に支点が必要な場合には壁体による受台を適宜設ける。
床版滑動用支承面は、受台上に摩擦抵抗の小さいテフロ
ン板やステンレス板を敷設したりあるいはグリース等の
潤滑剤を塗布する。

【００１１】ブロック緊張は複数枚のプレキャストＰＣ
床版に緊張材を挿通し、これをブロック緊張ジャッキに
より緊張定着することで行い、先行するブロックと連結
する場合にもブロック境界に緊張材を挿通して同様に緊
張定着する。最終的には所要区間全長のプレキャストＰ
Ｃ床版を形成し、これを押出すことで床版をセットす
る。全体の床版押出しが完了した後、床版滑動用支承面
を順次撤去し、必要な場合には床版のずれ止めを行う。

【００１２】請求項２記載のシールドトンネル内の床版
構築方法は、引出し工法によるもので、トンネル出口部
又はトンネル内に反力台を設置すると共にトンネル入口
部に所要長さのステージを設置する。上記と同様な手法
により形成したプレキャストＰＣ床版ブロックを床版滑
動用支承面上に引出し、後続するプレキャストＰＣ床版
ブロックを先行するブロックに連結緊張した後、連続一
体化したプレキャストＰＣ床版をジャッキで引出しなが
ら所要区間の床版を構築する。

【００１３】

【発明の実施の形態】次にこの発明の実施の形態を添付
図面に基づき詳細に説明する。図１はこの発明の床版構
築方法を採用するシールドトンネルの断面図、図２はプ
レキャストＰＣ床版の断面図である。セグメント１によ
り形成された円形のトンネル空間下面に底部コンクリー
ト２を打設し、次に両側壁部３，３を立ち上げると共に
所要の形状の受台４，４を築造する。

【００１４】この受台４，４間に横架するプレキャスト
ＰＣ床版５は、例えば幅１．０ｍ、高さ０．７ｍ、断面
略Ｉ型の梁材を連続して敷設する構成で、床版支間方向
にＰＣ鋼材６を配設してフルプレストレス状態とし、設
計荷重作用時にはコンクリート断面に引張応力を発生さ
せない構造にしている。又車両進行方向にはシース７を
埋設して、後述するブロック形成時にＰＣ鋼線８を挿通
してこれを緊張定着し、この方向でもフルプレストレス
状態とする。

【００１５】又受台４はプレキャストＰＣ床版５を滑動
させるため両側部に適度な余裕幅を持ちながらトンネル
両側部に連続しており、床版架設時には沓座モルタルを
施工した上面とプレキャストＰＣ床版５との間に摩擦抵
抗の小さいテフロン板やステンレス板を挿入して床版滑
動用支承面９を形成する。

【００１６】次にトンネル入口部に設ける押出しヤード
の構成を図３及び図４に基づき説明する。図３は押出し
ヤードの平面図、図４は同正面図を示す。受台４の前方
にはその高さに合わせて押出しステージ１０を設けると
共にその側部に反力台１１を構築する。又、押出しステ
ージ１０の外方にはレール１２を敷設し、門型クレーン
１３を設置する。

【００１７】押出しステージ１０上には図５（ａ）に示
すように門型クレーン１３を用いて複数枚のプレキャス
トＰＣ床版５を仮置きし、所要枚数並べたところでＰＣ
鋼線を挿通して目地モルタル注入後、ブロック緊張ジャ
ッキ１４をセットし、所定長さ、例えば３０ｍ程度の床
版ブロック１５を形成する（図５（ｂ））。次に先行す
る床版ブロック１６との間にもＰＣ鋼線を挿通してこれ
を緊張し連続化する（図５（ｃ））。その後、床版ブロ
ック１５の後端にブラケット１７をセットし、反力台１
１との間にＰＣ鋼線１８を張り、押出しジャッキ１９を
使用して連続化したプレキャストＰＣ床版ブロックを受
台４の床版滑動用支承面上に押出す（図５（ｄ））。

【００１８】床版ブロック１５の後端に設置するブラケ
ット１７は、図６及び図７に示すように最後尾のプレキ
ャストＰＣ床版５の桁端拡幅部に上下突出するように取
り付け、この上下突出部にＰＣ鋼線１８を張設する。な
おブラケット１７間はタイロッド２０で連結する。

【００１９】又、床版ブロック間の連結部は図８に示す
ように構成する。即ち、先行する床版ブロック１６の最
後部にブロック連結緊張用ＰＣ版５１を配設すると共
に、後続の床板ブロック１５についても先頭のプレキャ
ストＰＣ床版５３に続いてブロック連結緊張用ＰＣ版５
２を配設する。そして、これらブロック連結緊張用ＰＣ
版５１，５２及び両者間に介在するプレキャストＰＣ床
版５３は、ブロック緊張用のシース７を埋設すると共に
ブロック連結用ＰＣ鋼材５４挿入用のシース５５を設置
する。

【００２０】以上説明したプレキャストＰＣ床版はトン
ネル両側壁部の受台４，４にて支持し得る構造を採用
し、鉛直壁を無くすことにより、一層の工期短縮を図る
ものであるが、トンネルの構造上(給気、排気孔や避難
用通路)の制限や両側部の距離が大きかったり、床版厚
に制限がある場合には、図９のように中間に壁体２１に
よる受台２２を適宜設ける。なお、このような受台２２
上にも床版滑動用支承面を形成し、プレキャストＰＣ床
版２３を多径間連続梁構造で支持する。

【００２１】又このシールドトンネル内の床版構築方法
は、引出し工法によるものでもよい。その場合にはトン
ネル出口部又はトンネル内に反力台を設置すると共にト
ンネル入口部に所要長さのステージを設置する。引出し
の手法は前述した押出し工法に準ずる手法により行う。

【００２２】

【発明の効果】以上説明したように、この発明のシール
ドトンネル内の床版構築方法は、床版としてプレキャス
トＰＣ床版を使用するので、床版構築のための現場での
鉄筋型枠組立作業やコンクリート打設作業がなく、床版
としての養生期間が不要で工期短縮が可能となる。又床
版を工場で作製するため、施工精度も高く、又プレスト
レスを導入することで部材のひびわれ耐力が増加し、耐
久性の高い床版を得ることができる。

【００２３】又、押出しステージ上のプレキャストＰＣ
床版ブロックを順次連続一体化しながらジャッキで受台
上の床版滑動用支承面に押出し、よって所要区間の床版
を構築するので、仮設床版が存在しても、これに煩わさ
れることなく、かつ安全に施工することができ、又仮設
床版上は全面的にセグメント運搬作業用に使用できる。

【００２４】請求項２記載のシールドトンネル内の床版
構築方法は、引出し工法によるものであるが、押出し工
法と同様にプレキャストＰＣ床版の利点を享受できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】プレキャストＰＣ床版を載置するシールドトン
ネルの断面図である。

【図２】プレキャストＰＣ床版の断面図である。

【図３】押出しヤードの平面図である。

【図４】押出しヤードの正面図である。

【図５】プレキャストＰＣ床版押出しの説明図である。

【図６】押出しステージの平面図である。

【図７】押出しステージの正面図である。

【図８】床版ブロック連結部の拡大断面図である。

【図９】中間に壁体受台を設けてプレキャストＰＣ床版
を支持するシールドトンネルの断面図である。

【図１０】従来のシールドトンネルにおける床版構築方
法をしめすトンネル断面図である。

【符号の説明】

１ セグメント ４ 受台 ５ プレキャストＰＣ床版 ９ 床版滑動用支承面 １０ 押出しステージ １１ 反力台 １５ 床版ブロック １７ ブラケット １８ ＰＣ鋼線 １９ 押出しジャッキ

フロントページの続き (72)発明者 渡部 寛文 東京都北区滝野川６丁目３番１号 川田建 設株式会社内 Ｆターム(参考） 2D055 BA01 BB01 CA08 EB04

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シールドトンネル内の少なくとも両側部
   に連続する受台を構築すると共にこの受台上に床版滑動
   用支承面を形成し、トンネル入口部の受台前方には反力
   台とこれらの反力台間前方に所要長さの押出しステージ
   を設置して、この押出しステージ上に載置する複数枚の
   プレキャストＰＣ床版をブロック緊張した後、このプレ
   キャストＰＣ床版ブロックの後端にセットするブラケッ
   トと反力台とを緊張材で連結し、この緊張材を反力台に
   設置するジャッキで緊張することにより前記プレキャス
   トＰＣ床版ブロックを前記床版滑動用支承面上に押出
   し、後続するプレキャストＰＣ床版ブロックを先行する
   ブロックに連結緊張した後、連続一体化したプレキャス
   トＰＣ床版を前記ジャッキで押出しながら所要区間の床
   版を構築することを特徴とするシールドトンネル内の床
   版構築方法。
2. 【請求項２】 シールドトンネル内の少なくとも両側部
   に連続する受台を構築すると共にこの受台上に床版滑動
   用支承面を形成し、トンネル出口部又はトンネル内に反
   力台を設置すると共にトンネル入口部に所要長さのステ
   ージを設置して、このステージ上に載置する複数枚のプ
   レキャストＰＣ床版をブロック緊張した後、このプレキ
   ャストＰＣ床版ブロックの後端にセットするブラケット
   と反力台とを緊張材で連結し、この緊張材を反力台に設
   置するジャッキで緊張することにより前記プレキャスト
   ＰＣ床版ブロックを前記床版滑動用支承面上に引出し、
   後続するプレキャストＰＣ床版ブロックを先行するブロ
   ックに連結緊張した後、連続一体化したプレキャストＰ
   Ｃ床版を前記ジャッキで引出しながら所要区間の床版を
   構築することを特徴とするシールドトンネル内の床版構
   築方法。