JP2007239366A - セグメントリングの補強構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】上下方向及び水平方向に作用する圧縮力に耐えることができる。
【解決手段】シールドトンネルに構築されたセグメントリング2を補強するセグメントリングの補強構造1は、セグメントリング2の内空側に固定され、略水平方向に延在させて水平方向に引張力を受けもつPC鋼材10と、水平方向の圧縮力を受けもつ床版30とが設けられている。そして、PC鋼材10と床版30とは接合されることなく分離された状態で配置されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、シールド工法によって構築されたセグメントリングの補強構造であって、とくに扁平セグメントリングを補強するためのセグメントリングの補強構造に関する。
従来、道路、鉄道などの用途で施工されるシールドトンネルは、プレキャスト床版を設置している。そして、一般的に、トンネルの断面は、円形断面で施工されている。しかし、円形断面のうち実際に利用されるスペースは、上下部分を除いた内空断面であることが多いことから略横長のトンネル空間を形成させた略楕円形状或いは馬蹄形状などの異形断面(以下、これらを「扁平トンネル」と記述する)のトンネルが施工される場合が増えている。このような扁平トンネルに構築される扁平セグメントリングには、断面円形のセグメントリングと比較して外方からの土圧やセグメントの自重によって上下方向の圧縮力が作用することになる。とくに、扁平セグメントリングに作用する曲げモーメントは、断面の斜め下方に位置するトンネル脚部近傍において応力が集中して最大曲げモーメントが発生する。
従来の扁平セグメントリングにおいては、このような曲げモーメントを減少させる方法として、扁平セグメントリングに大きな強度をもたせることが行なわれ、例えば鉄筋量を多くしてセグメントの厚さ寸法を大きくしてセグメントの強度を上げていた。ところが、セグメントの厚さ寸法を大きくすることは、セグメントが高価になるうえ、トンネルの掘削断面が大きくなるといった欠点があり、経済的ではなかった。そこで、扁平セグメントリング自体の強度を上げることなく、上述した扁平による曲げモーメントに対応した構造が、例えば特許文献1に提案されている。
特許文献1は、扁平トンネルの内空側において、水平方向に引張力を受けもち略水平方向に配置された弦材をなす補強部材(第1補強部材)を設けることで、セグメントに水平方向に圧縮力を与えるものである。さらに、縦方向(上下方向)に圧縮力を受けもち縦方向に配置された棒状の補強部材(第2補強部材)を設けることで、扁平セグメントリングに作用する集中応力を減少させるものである。
特許第2520034号公報
しかしながら、特許文献1は、上下方向の圧縮力には強い構造となる。しかし、施工状態や地盤条件によっては水平方向の圧縮力が発生することもある。この水平方向に設けられた弦材の補強部材は、引張力に対する耐力は大きいが、水平方向から受ける圧縮力には耐えられないといった欠点があった。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、上下方向及び水平方向に作用する圧縮力に耐えることができるセグメントリングの補強構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るセグメントリングの補強構造は、シールド工法によって構築されたセグメントリングを補強するためのセグメントリングの補強構造であって、セグメントリングの内空側で、断面視で略水平方向に延在させて水平方向に引張力を受けもつ水平補強部材と、水平補強部材に接合させずに分離した状態で配置され、水平方向の圧縮力を受けもつ床版とが設けられていることを特徴としている。
本発明によれば、セグメントリングの上下方向に作用する圧縮力は、トンネル断面が上下方向に潰れるように働き、水平方向に対しては外向きへの力として作用する。このトンネル内空外向きに作用する力を水平補強部材で引張力として受けもつことができる。
そして、セグメントリングの水平方向に作用する圧縮力は、トンネル断面が水平方向に潰れるように働き、水平方向に対しては内向きへの力として作用する。このトンネル内空内向きに作用する圧縮力を床版によって受け持たせることができる。
また、本発明に係るセグメントリングの補強構造では、床版の内部に、水平補強部材が挿通されていることが好ましい。
本発明によれば、水平補強部材が床版内に内蔵されることになり、トンネル内空を有効に使用することができる。
また、本発明に係るセグメントリングの補強構造では、セグメントリングと床版の側面との間に、セグメントリングに作用する水平方向の圧縮力を水平方向に伝達する圧縮伝達部材が設けられていることが好ましい。
本発明によれば、セグメントリングに略水平方向の圧縮力が作用するとき、この圧縮力を圧縮伝達部材を介して床版に伝達させることができる。
本発明のセグメントリングの補強構造によれば、セグメントリングの上下方向に作用する圧縮力を水平補強部材が受けもつ引張力によって耐えることができ、水平方向に作用する圧縮力を床版で耐えることができる。これにより、トンネル断面の水平方向或いは斜め下方に発生する曲げモーメントを減少させることができ、これによりセグメントリングの厚さ寸法を小さくできる効果を奏する。
また、水平方向の引張力を受けもつ水平補強部材と、水平方向の圧縮力を受けもつ床版とが接合しない状態で分離されているため、セグメントリングに作用する力を水平補強部材と床版とが別々に受けもつことができ、効率的なセグメントリングの補強構造を実現できる。
以下、本発明の実施の形態によるセグメントリングの補強構造について、図1乃至図5に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による扁平セグメントリングの補強構造を示す断面図、図2はPC鋼材及び床版の構造を示す平面図、図3はPC鋼材及び床版の構造を示す断面図、図4は図2に示す接合部の拡大図、図5は扁平セグメントリングの曲げモーメントの分布図であって、(a)は実施例を示す図、(b)は比較例を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態による扁平セグメントリングの補強構造1は、道路、鉄道、共同溝などに採用されるトンネルであって、シールド工法によって地山内に延設された断面馬蹄形状(以下、この形状を「扁平」と記述する)をなす扁平セグメントリング2を補強するものである。扁平セグメントリング2は、湾曲した複数のセグメント20・・・が環状に組み合わされて構築されている。
ここで、扁平セグメントリング2の断面視斜め下方に位置する所定の円弧長を有する円弧領域を、「トンネル脚部K1、K2」として以下説明する。さらに、各トンネル脚部K1、K2に配置されるセグメントを脚部セグメント21、21とし、断面視で底部中央部に配置されていて両脚部セグメント21、21の間に挟まれてなるセグメントを底盤セグメント22(以下、必要に応じてトンネル底盤部K3と記す)とする。
そして、扁平セグメントリング2は、両脚部セグメント21、21から底盤セグメント22に向かうにしたがってセグメントの厚さ寸法が大きくなっている。
図1に示すように、扁平セグメントリング2の補強構造1は、脚部セグメント21、21の内空側の間を略水平方向に延在させて水平方向に引張力を受けもつPC鋼材10(水平補強部材)と、PC鋼材10に接合させずに分離した状態で配置されて水平方向の圧縮力を受けもつ床版30とからなる。
図2に示すように、床版30は、予め工場などで製造されるプレキャスト製であり、略長方形状をなし、その長手方向をトンネル軸方向に直交させる方向に配置させ、扁平セグメントリング2の底盤セグメント22に設けられた支柱3上に所定の高さとなるように載置させている。
そして、図3に示すように、床版30には、その長手方向に貫通した挿通孔31が形成され、その挿通孔31に円筒形状のシース管32が挿入され、そのシース管32内にPC鋼材10が挿通されている。このようにPC鋼材10を床版30に内蔵させた構成とすることで、トンネル空間を有効に使うことができる。
また、図1及び図3に示すように、脚部セグメント21の内周面21aと床版30の側面30a(すなわち、脚部セグメント21、21側の面)との間には、鋼材などからなる圧縮伝達部材40が設けられている。扁平セグメントリング2に略水平方向の圧縮力が作用するとき、この圧縮力が圧縮伝達部材40を介して床版30に伝達される作用をなしている。さらに、圧縮伝達部材40は、床版30の側方下端部30b、30bを下方より支持するように、横方向中心に向けて張り出して形成されている。
図3及び図4に示すように、PC鋼材10は、雄ネジを形成させた両端部10a、10aを床版30の側面30a、30aより突出させ、PC鋼材10の両端部10a、10aを脚部セグメント21、21に一体となるように固定させている。
つまり、脚部セグメント21、21には、床版30を所定の位置に設置した状態で、PC鋼材10と同軸となるように棒状の異形鋼棒51が埋設されている。この異形鋼棒51は、雄ネジが形成された端部51aを、脚部セグメント21の内周面21aを切り欠いて形成させた切欠部21b(図2参照)で露出させている。そして、異形鋼棒51とPC鋼材10とを連結させる手段として、円筒形状のカップラー52が設けられている。このカップラー52は、内面に雌ネジを形成させ、一方52aの内面に異形鋼棒51の端部51aを螺合させ、他方52bの内面にPC鋼材10の端部10aを螺合させている。このように、両トンネル脚部K1、K2において、PC鋼材10と異形鋼棒51とを螺合させた状態でカップラー52を締め付けると、異形鋼棒51とPC鋼材10とを均一に締め付けることができ、PC鋼材10に水平方向の引張力を受けもたせることができる。
次に、このように構成されるPC鋼材10及び床版30の作用について図面に基づいて説明する。
PC鋼材10の作用から説明する。先ず、図5(a)及び(b)に示す扁平セグメントリング2には、その断面外方から受ける土圧やセグメント自重により上下方向にトンネル断面が潰れるようにして圧縮力が作用し、略水平方向(或いは、トンネル脚部K1、K2付近)にトンネルの外側に向けた応力が集中して最大曲げモーメントが発生する。ここで、曲げモーメントについて、扁平セグメントリング2の外周側に張り出してたわむ場合(扁平セグメントリング2を外向きに作用させる曲げ)を「負の曲げモーメント」とし、その反対に内周面を内空側に押し出す場合(扁平セグメントリング2を内向きに作用させる曲げ)を「正の曲げモーメント」とする。
図5(b)はPC鋼材10や床版30(図1参照)を設けない扁平セグメントリングに作用する比較例の曲げモーメントを示し、各トンネル脚部K1、K2の略中間部で最大値をなすに負の曲げモーメントM1、M2が発生し、トンネル脚部K1、K2間に挟まれたトンネル底盤部K3の略中央部で最大値をなす正の曲げモーメントM3が発生していることがわかる。
次に、図5(a)に示すように、トンネル脚部K1、K2の所定位置において、PC鋼材10を設け、このPC鋼材10に、扁平セグメントリング2を内空側に引っ張る方向(水平方向に圧縮力を作用させる方向)に引張力を受けもたせる。これにより、トンネル脚部K1、K2付近に作用する負の曲げモーメントM4、M5およびトンネル底盤部K3に作用する正の曲げモーメントM6の最大値を小さくさせることができる。
さらに、扁平セグメントリング2に水平方向の圧縮力が発生した場合には、この圧縮力を床版30によって受けもたせることができる。このように床版30は、PC鋼材10を補強する効果を有し、PC鋼材10に与える圧縮力を抑制することができる。
次に、上述したPC鋼材10及び床版30を設置する箇所とタイミングについて説明する。
先ず、図1に示すように、扁平セグメントリング21は、図示しないシールド掘削機の後方のテール(薄板状の筒状体、すなわちスキンプレートの後端部をいう)内で組み立てられる。そして、シールド掘削機の進行と共に扁平セグメントリング2がテールの外側に出たときに、地山と扁平セグメント1との隙間(テールクリアランス)に裏込め材が注入される。これにより、地山中にある扁平セグメントリング2は、上述したように地山の土水圧のほか、裏込め材の注入時の圧力などの外力と、扁平セグメントリング2の自重とを受け、上下方向の圧縮力が作用してトンネル断面の変形をもたらすことになる。このことからも、床版30及びPC鋼材10は、シールド掘削機のテール内で設置しておくことが好ましいとされる。
そして、床版30及びPC鋼材10を掘進と同時にシールド掘削機の後方の位置で設置することによって、この床版30を利用して施工に伴う資材の運搬車両の通行等に使用できる。例えば、従来の軌道の枕木代わりとなり、床版30上に直接レール、軌条を敷設できる。さらにレールを敷設しないタイヤ走行などの運搬方式を採用することができる。このように、資材の運搬を簡易化できることから、急速施工および工期短縮が図れるといった利点がある。
上述したように実施の形態によるセグメントリングの補強構造では、扁平セグメントリング2の上下方向に作用する圧縮力をPC鋼材10が受けもつ引張力によって耐えることができ、水平方向に作用する圧縮力を床版30で耐えることができる。これにより、トンネル脚部K1、K2に発生する曲げモーメントを減少させることができ、これにより扁平セグメントリング2の厚さ寸法を小さくできる効果を奏する。
また、水平方向の引張力を受けもつPC鋼材10と、水平方向の圧縮力を受けもつ床版30とが接合しない状態で分離されているため、扁平セグメントリング2に作用する力をPC鋼材10と床版30とが別々に受けもつことができ、効率的な扁平セグメントリング2の補強構造1を実現できる。
次に、本実施の形態の変形例について、図6に基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図6は本実施の形態の変形例によるPC鋼材の固定構造を示す平面図である。
図6に示すように、変形例では、本実施の形態で示したカップラー52(図3参照)に代えて引張接続冶具60を用いてPC鋼材10を扁平セグメントリング2に固定する構造である。PC鋼材10は、実施の形態と同じく床版30(図3参照)の内側を挿通させて設けられている。引張接続冶具60は、床版10を設置させた状態でPC鋼材10に同軸となるように扁平セグメントリング2に一体に埋設されたボルト61と、ボルト61とPC鋼材10とを連結固定させる固定部材62とからなる。
固定部材62は、円孔62bが形成された二枚の板材62aが、夫々の円孔62b、62bが同軸となるように間隔をもって対向して配置されて一体に設けられている。一方の円孔62bに雄ネジが形成されたボルト61の端部61aを挿通させて第一ナット63を螺合させ、他方の円孔62bにPC鋼材10の端部10aを挿通させて第二ナット64を螺合させる。これにより、PC鋼材10は、実施の形態と同様に水平方向に引張力を受けもたせることができることから、本変形例によるセグメントリングの補強構造についても実施の形態と同様の効果を奏する。
以上、本発明によるセグメントリングの補強構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では床版30の内側にPC鋼材10を挿通させて内蔵した構成としているが、床版30とPC鋼材10とを別々に設けるようにしてもかまわない。
また、PC鋼材10の設置本数は地盤の条件に合わせて適宜設定することができる。例えば悪い地盤の場合にはPC鋼材10を適宜増加し、良好な地盤の場合にはPC鋼材10を適宜減らして設置すればよい。
また、本実施の形態ではトンネル断面に対して一枚の床版30が設置されているが、この数量に限定されることはなく、例えば床版の運搬のし易さなどを考慮して長さ寸法(トンネル軸方向に直交する方向)を短くした床版を使用し、トンネル断面に対して左右2枚或いは複数枚となるように配置させてもかまわない。
また、本実施の形態では扁平セグメントリング2が構築された扁平断面のトンネルに採用したものであるが、円形断面のトンネルに採用することも可能である。
さらに、本実施の形態ではPC鋼材10及び床版30を掘進と同時にシールド掘削機のテール内で設置しているが、この設置のタイミングに限定されることはなく、トンネルの掘進が完了した後にPC鋼材10及び床版30をまとめて設置し、PC鋼材10に引張力を導入するようにしてもかまわない。また、PC鋼材10及び床版30を設置した後に新たなPC鋼材を追加することもできる。
本発明の実施の形態による扁平セグメントリングの補強構造を示す断面図である。 PC鋼材及び床版の構造を示す平面図である。 PC鋼材及び床版の構造を示す断面図である。 図2に示す接合部の拡大図である。 扁平セグメントリングの曲げモーメントの分布図であって、(a)は実施例を示す図、(b)は比較例を示す図である。 本実施の形態の変形例によるPC鋼材の固定構造を示す平面図である。
符号の説明
1 補強構造
2 扁平セグメントリング
21 脚部セグメント
22 底盤セグメント
10 PC鋼材(水平補強部材)
30 床版
40 圧縮伝達部材
51 異形鋼棒
52 カップラー
60 引張接続冶具
K1、K2 トンネル脚部
K3 トンネル底盤部

Claims (3)

  1. シールド工法によって構築されたセグメントリングを補強するためのセグメントリングの補強構造であって、
    前記セグメントリングの内空側で、断面視で略水平方向に延在させて前記水平方向に引張力を受けもつ水平補強部材と、
    前記水平補強部材に接合させずに分離した状態で配置され、前記水平方向の圧縮力を受けもつ床版と、
    が設けられていることを特徴とするセグメントリングの補強構造。
  2. 前記床版の内部に、前記水平補強部材が挿通されていることを特徴とする請求項1に記載のセグメントリングの補強構造。
  3. 前記セグメントリングと前記床版の側面との間に、前記セグメントリングに作用する前記水平方向の圧縮力を前記水平方向に伝達する圧縮伝達部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセグメントリングの補強構造。
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