JP2001181738A - 磁気特性に優れる二方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents
磁気特性に優れる二方向性珪素鋼板の製造方法Info
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Abstract
く、かつ安定して得ることができる磁気特性の優れた二
方向性珪素鋼板の製造方法を提供する。 【解決手段】 C:0.020〜0.20%、SiとM
nが(Si+0.5Mn)≦5.0と(Si−0.5M
n)≧1.5の関係式を満たす鋼の熱間圧延工程、冷間
圧延工程、および、脱炭促進物質もしくは脱炭促進物質
と脱Mn促進物質を含有する焼鈍分離材を鋼板間に介在
させて焼鈍する工程を有する二方向性珪素鋼板の製造方
法において、熱間圧延工程における仕上圧延を鋼のA1
点以下で終了し、冷間圧延工程は少なくとも1回の中間
焼鈍を含むものとする。
Description
二方向性珪素鋼板の製造方法に関する。
磁心材料には珪素鋼板(電磁鋼板)が用いられている。
この珪素鋼板には、交流磁界中で磁気的なエネルギー損
失が少なく、実用的な磁界中での磁束密度が高いという
磁気特性が求められている。これらの特性を高めるに
は、鋼の電気抵抗を高め、磁化容易方向である立方晶の
<001>軸を磁化方向に集積させることが有効とされ
ている。
あり、図1(a)は{110}面が板面に平行で、<0
01>軸が圧延方向に集積した組織の模式図であり、図
(b)は{100}面が板面に平行で、圧延方向と幅方
向に<001>軸が集積した組織の模式図である。
織を有する鋼板は巻鉄心を用いる変圧器の鉄心のよう
に、圧延方向のみに磁束が流れる用途に適する。このよ
うな集合組織を持つ珪素鋼板は一方向性珪素鋼板と称さ
れる。
織を有する珪素鋼板は圧延方向と板幅方向の二方向に同
様に優れた磁気特性を示すため巻き鉄心を用いたトラン
スに加え、積み鉄心を用いたトランスのように圧延方向
と板幅方向に磁束が流れる用途や回転機の鉄心にも好適
である。このような{100}<001>集合組織を持
つ珪素鋼板は二方向性珪素鋼板と称される。
最近、脱炭、もしくは脱炭と脱Mnを生じさせる高温焼
鈍を利用した製造方法が開示されている。
0.2〜6.5%、Mn:0.03〜2.5%を含有
し、板面に平行な方向の{100}面方位が方向配向性
のないものの10倍以上の集合組織を有し、Mn濃度が
板厚の表面に向かって特定の割合で減少する脱Mn層を
有する無方向性または二方向性電磁鋼板が開示されてい
る。
有し、SiとMnを上記範囲で含有する熱間圧延鋼板を
冷間圧延した後、脱炭促進材または脱炭促進材と脱Mn
促進材を混合した焼鈍分離材を鋼板間に挟み、コイル状
または積層状態にして焼鈍するものである。上記公報で
は、二方向性電磁鋼板は、上記製造過程における冷間圧
延を、中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延とすることに
より得られることが開示されている。
0.02〜0.2%含有し、SiとMnの含有量が特定
の関係式を満足する鋼を熱間圧延および冷間圧延する工
程において、冷間圧延途中に750℃以上で、かつ急速
加熱で焼鈍をおこない、得られた鋼板を焼鈍分離材を用
いて減圧下で焼鈍をおこなう二方向性電磁鋼板の製造方
法が開示されている。
れば、上述のような従来方法では{100}<001>
集合組織の発達が必ずしも十分ではなく、磁気特性に優
れた二方向性珪素鋼板を得られない場合があることが判
明した。
{100}<001>集合組織の集積度が高く、かつ安
定して得ることができる磁気特性の優れた二方向性珪素
鋼板の製造方法を提供することにある。
020〜0.20質量%含有し、SiとMnの含有量が
質量%で(Si+0.5Mn)≦5.0、(Si−0.
5Mn)≧1.5なる関係を満足する鋼を用いて二方向
性電磁鋼板を製造する際の、集合組織の発達に対する製
造条件の影響を種々研究した。その結果、素材鋼を熱間
圧延し、冷間圧延し、その後脱炭促進物質を含有する焼
鈍分離材もしくは脱炭促進物質と脱Mn促進物質を含有
する焼鈍分離材を用いて最終焼鈍する製造工程におい
て、熱間圧延の仕上温度をA1点以下とすることで、最
終焼鈍時のα相の再結晶時に顕著に{100}<001
>方位成長核の密度を増加させることができることを見
出した。
推測される。上述の化学組成を有する鋼のA1変態点
(以下、「A1点」とも記す)は700〜750℃の温
度範囲にあり、その結晶組織はA1点以上の領域ではα
−フェライト(以下、「α相」とも記す)とオーステナ
イト(以下、「γ相」とも記す)が混在した2相混合組
織となり、より高温域ではγ単相組織となる。
1300℃の温度域でおこなわれるのが一般的である。
γ相の比率はこの温度域では数十%以上となり、120
0℃近傍で最も大きくなる。CやMnを多く含有する鋼
は熱平衡状態になれば上記温度域でもγ単相となるが、
スラブ加熱の一般的な条件である5時間程度以下の加熱
時間では熱平衡状態には達せず、1200℃近傍であっ
ても数十%以上のγ相を含む(α+γ)2相共存状態が
実現される。
た後に熱間圧延すると、熱間圧延によりα相とγ相は加
工された後に再結晶や回復現象を生じ、微細かつ伸展し
た結晶組織となる。熱間圧延中の温度低下に伴いγ相は
α相へと徐々に変態する。鋼板温度がA1点以下に達す
るとα相の粒界に残存するγ相は、冷却速度に応じて、
パーライト、炭素が過飽和に濃化したベイナイト、マル
テンサイト状の析出物などに変態する。ごく一部は室温
までγ相のまま残留する場合もある。
が残留したγ相からの変態やγ相からの変態生成物がさ
らに加工を受けることにより、微細なフェライト粒界に
微細な析出物が存在した組織となる。このため、例えば
熱間圧延後の冷却速度が比較的遅い場合には、フェライ
ト結晶粒と、結晶粒界に析出した炭素が濃化した微細析
出物を主体とした結晶組織を有する鋼板となる。
あり、結晶粒界の析出物はα相に比べて硬質である。軟
質なフェライト結晶粒と、その周囲の硬質な析出物から
なる混合組織を冷間圧延すると、フェライト結晶粒の塑
性変形挙動が周囲の析出物の硬さや形態に大きく影響さ
れる。
最終焼鈍の初期過程に再結晶して、{100}<001
>方位の成長核を生みだすが、この成長核が最終焼鈍の
中・後期に板の表面から内部へと成長して、最終的な二
方向性珪素鋼板の組織を形成する。
点を超える場合の熱間圧延後の結晶組織は粗いフェライ
ト粒と粒界上の大きいパーライトからなり、仕上温度が
A1点以下の場合に得られる上述したような微細化され
た結晶組織は得られない。
されたものであり、その要旨は下記の磁気特性に優れる
二方向性珪素鋼板の製造方法にある。
し、SiとMnの含有量が質量%で(Si+0.5M
n)≦5.0および(Si−0.5Mn)≧1.5なる
関係式を満たす鋼を熱間圧延する熱間圧延工程、冷間圧
延する冷間圧延工程、および、脱炭促進物質を含有する
焼鈍分離材もしくは脱炭促進物質と脱Mn促進物質とを
含有する焼鈍分離材を鋼板間に介在させて最終焼鈍する
最終焼鈍工程を有する二方向性珪素鋼板の製造方法にお
いて、熱間圧延工程における仕上圧延を鋼のA1点以下
で終了し、冷間圧延工程は少なくとも1回の中間焼鈍を
含むものであることを特徴とする磁気特性に優れた二方
向性珪素鋼板の製造方法。
る。なお、以下に記す%表示は質量%を意味する。
用して鋼板の集合組織制御をおこなう。これに必要な脱
炭反応をおこなわせるために、最終焼鈍に供する鋼板の
C含有量は0.020%以上とする。好ましくは0.0
30%以上、より好ましくは0.040%以上である。
相域温度の上限が低くなり、焼鈍温度の上限が低く制限
されるため、脱炭終了までの最終焼鈍時間が長くなり、
生産性を損なう。また、過度にC含有量が増すと鋼が脆
化し素材の圧延が困難になる。このような不都合を避け
るためにC含有量は0.20%以下とする。好ましくは
0.10%以下、より好ましくは0.08%以下であ
る。
終焼鈍後のC含有量は少ない程よい。好ましくは0.0
05%未満、より好ましくは0.003%以下、さらに
好ましくは0.002%以下である。
鋼の電気抵抗を高めて渦電流損失を低減する作用があ
る。また、SiとMnは鋼の加工性や高温での相状態に
影響する。Si含有量が増すと鋼の加工性を損ない、冷
間圧延が困難となる。MnもSi程ではないが鋼の加工
性を損なう作用がある。冷間圧延性を確保するためにS
iとMnは、式:Si(%)+0.5Mn(%)で計算
される値が5.0以下になる範囲で含有させる。好まし
くは前記式で計算される値が4.5以下となる範囲であ
る。
鈍工程初期の脱炭と脱Mn反応が生じる前段階は(α+
γ)2相混合域もしくはγ相単相域でおこない、脱炭と
脱Mn後はα単相となる温度域で焼鈍する必要がある。
従って効率よく焼鈍するには、高温域においても鋼のα
相が安定していることが望ましい。
ある。他方Mnはγ域を拡大しα相の安定性を低下させ
る作用がある。α相の安定性に対するこれらの元素の作
用は式:Si(%)−0.5Mn(%)で表すことがで
きる。本発明では、SiとMnの含有量は、式:Si
(%)−0.5Mn(%)で計算される値が1.5以上
となる範囲で含有させる。好ましくは1.8以上、より
好ましくは2.0以上となる範囲である。
いて脱Mnを生じさせることにより{100}集合組織
の形成が促進される効果が得られるため含有させるのが
好ましい。含有させる場合には好ましくはMnを上記2
つの式の範囲内で0.4%以上、より好ましくは0.6
%以上含有させる。
片の健全性を確保したり、NをAlNなどの析出物とし
て固定し無害化する作用があるのでAlを含有させても
構わない。しかしながらAl含有量が過度に増すと最終
焼鈍時に鋼板表面でAlが選択酸化され、これにより集
合組織の発達が阻害される。これを避けるためにAlを
含有させる場合でもその上限は0.1%以下とするのが
よい。より好ましくは0.01%以下である。
の元素はα−フェライト中に固溶し、鋼の電気抵抗を高
める作用があり、このような効果を得るために含有させ
ても構わない。しかしながらCoは高価であるうえ、過
度に含有させると磁歪が増すので含有させる場合でも
1.0%以下とするのがよい。Crは炭化物を生成する
強い傾向を持ち、最終焼鈍での脱炭を遅延させる作用が
あるので含有させる場合でも0.50%以下とするのが
好ましい。
いが、最終焼鈍時に鋼板表面の{100}面の表面エネ
ルギーを低下させ、{100}<001>方位粒の成長
を促進する作用があるので含有させても構わない。しか
しながらこれらの元素の含有量が過度に増すと磁気特性
の劣化や鋼が脆くなり加工性が損なわれるので、これら
の不都合を避けるために含有させる場合でもそれぞれ
0.03%以下とするのがよい。上記以外はFeおよび
不可避的不純物である。
間圧延する工程、冷間圧延する工程、および、脱炭促進
物質もしくは脱炭促進物質と脱Mn促進物質を含有する
焼鈍分離材をコイル状もしくは積層状にした鋼板間に介
在させて焼鈍する最終焼鈍工程を有する。
定しない。該鋼片は溶鋼を鋳造して得られる鋳塊、連続
鋳造して得られるスラブ、あるいはストリップキャステ
ィングによる薄鋳片など、公知のものを用いることがで
きる。生産性が優れる連続鋳造スラブやストリップキャ
スティングによる薄鋳片を用いることが好ましい。
の温度を有していればよい。従って鋼片の熱間圧延前の
加熱は必須ではない。鋼片の温度は、圧延抵抗を低くす
るために900℃以上の温度が好ましい。鋼片の加熱温
度は、酸化減量を抑制し、結晶組織の過度な粗大化を防
止するために1400℃以下とするのがよい。
α相の再結晶により生成される{100}<001>方
位成長核の密度を増加させ、十分に{100}<001
>集合組織を発達させるため、熱間圧延終了温度である
仕上温度はA1点以下とする。A1点はγ相がα相とセ
メンタイトとの2相に分解する温度であり、仕上温度を
A1点以下とすることにより、α相結晶組織が微細にな
るとともにα結晶粒界上の析出物も微細になるという効
果が得られる。
の熱間圧延条件が開示されておらず、W098/201
79号公報には、750〜1100℃の範囲でα相+γ
相の二相となる鋼を用い、通常の熱間圧延をおこなえば
熱間圧延の後段での圧延温度がこの二相域温度となるこ
とが記載されているが、これは本発明の規定する上記条
件とは全く異なるものであることは明らかである。
抗を過度に大きくしないために300℃以上とするのが
好ましい。なお、本発明の鋼種ではA1点は730℃近
傍である。上記以外の熱間圧延条件は特に限定する必要
はなく、公知の条件でおこなって構わない。熱間圧延鋼
板の厚さは特に限定するものではないが、5mm以下1
mm以上が好ましい。熱間圧延後、冷間圧延に供する前
に、熱間圧延鋼板に焼鈍を施しても構わない。
脱炭焼鈍時に{100}<001>集合組織を十分に発
達させるための組織の微細化と表面平坦度を確保するた
め、および鉄心材料として十分な板厚精度を確保するた
めに、熱間圧延鋼板には中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧
延を施す。
であり、最終製品の厚さが電磁鋼板の標準板厚である
0.2〜0.5mmのときは、1回の中間焼鈍を挟んだ
二回の冷間圧延で最終製品の厚さに圧延するのが、組織
形成と生産効率の点から好適である。熱間圧延板がより
厚い場合や最終製品がより薄い場合には、複数回の中間
焼鈍を挟んだ3回以上の冷間圧延で最終製品の厚さに圧
延するのが好適である。
あればよい。最終焼鈍での{100}<001>方位形
成を容易にするため、好ましくは800℃以上、より好
ましくは900℃以上である。焼鈍温度の上限は特に限
定しないが、焼鈍設備コストが高騰するため1250℃
以下が好ましい。炉コスト、生産効率、組織形成の点か
ら、900から1150℃が最も好適な温度域である。
中間焼鈍の保持時間は焼鈍温度が高くなるほど短時間で
良く、例えば1000℃では10秒から5分程度で十分
である。
終焼鈍に供する鋼板には1000℃以下での予備焼鈍を
最終焼鈍前に施しても構わない。
炭と脱Mnの両方を促進する物質を含有する焼鈍分離材
を鋼板間に介在させて焼鈍する。これは鋼板が鋼帯であ
る場合にはこれらをコイル状に巻き取り、鋼板が切り板
である場合はこれらを積層状態にして焼鈍するのがよ
い。
は脱炭と脱Mnの両方を生じさせ、その過程で発生する
γ→α変態によって板面と平行に{100}面を高密度
に持つ集合組織を発達させると共に、炭素含有量を低下
させる。
板表面から内部へと順次進行するが、本発明が規定する
焼鈍条件下では、{100}面を板面と平行する結晶粒
の表面エネルギーが他の方位の結晶粒の表面エネルギー
よりも格段に低くなるため、{100}面が板面と平行
な結晶粒が優先的に表面から内部へと成長し、板面と平
行に{100}面を高密度に持つ集合組織が発達すると
考えられる。
iO2 などのSi酸化物を用いることができる。Si酸
化物は室温で安定であるが、1000℃程度の高温領域
では不安定になり、鋼中の炭素によって還元され、次式
のような反応が生じて鋼中の炭素はCOガスとなって積
層された板の間隙から排出され脱炭が進行する。還元に
よって生成したSiは鋼中に溶解する。 SiO2 +2C[鋼中]→ Si[鋼中]+2CO 上記の脱炭作用を有する物質には、他にCr2 O3 、T
iO2 、FeO、MnO、V2 O3 、V2 O5 、VOな
ど、高温の適切な雰囲気下で比較的不安定にな酸化物、
すなわち、焼鈍温度で分解して酸素を発生する物質を用
いることができる。
アルカリ金属の炭酸塩、CaCO3、NaCO3 等の、
非常に不安定な酸化物の混入を避けるのが望ましい。こ
のような炭酸塩は、高温で多量の酸素を発生し、鋼板中
のSiやMnを酸化させることで、鋼板表面のエネルギ
ー状態を変化させ、ひいては{100}面密度を低下さ
せる。
混合して使用してもよい。また、脱炭反応速度の調整や
焼鈍後の鋼板からの剥離性を向上させるために、高温で
安定な無機物、例えばAl2O3などの酸化物、BNやS
iCなどの安定な窒化物や炭化物を上記酸化物に混合し
ても構わない。
物である。この酸化物を脱炭促進材に使用すると上記の
反応式からわかるように、酸化物が還元され生成する物
質が元々鋼板中に添加されているSiであり、容易に鋼
中に溶解すると共に、溶解しても鋼板の磁気特性を阻害
しないばかりか電気抵抗を高め鉄損を低下させる役割を
果たす。
るときには、鋼中の元素の内最も酸化されやすいSiの
酸化物が還元される条件下にあり、したがって鋼板表面
の酸化が生じないので、上述の{100}面を板面と平
行する結晶粒の表面エネルギーを低下させる意味からも
好適である。
Tiの酸化物(TiO2 )がある。鋼板中のMnは、適
切な雰囲気条件下において板の表面から昇華し、これ
が、前述したように、板の表面近傍にMnの欠乏した層
(脱Mn層)を形成する。TiO2 は鋼板から昇華する
Mnを吸収して複合酸化物(TiMnO3 )を形成す
る。これにより鋼板表面のMn蒸気圧が減少し、脱Mn
が促進されると考えられる。
鈍中に鋼板から昇華するMnを吸収する物質であり、脱
炭反応や、鋼板の表面エネルギー状態に悪影響を及ぼさ
ないものであれば良い。TiO2 以外にZrO2 やTi
2O3を用いても構わない。特にTiO2 は脱炭をも促進
する作用があり、TiO2 単独でも脱炭と脱Mnの双方
を促進することができるので好適である。
的に生じさせるとともに、{100}面の表面エネルギ
ーを低下させて{100}<001>集合組織の発達を
促進するために、SiO2 とTiO2 を共に含むものが
好ましい。より好ましくは、最終焼鈍後の焼鈍分離材の
鋼板表面からの剥離性を改善するために、SiO2 とT
iO2 に加えてAl2 O3 を含有させる。
分離材構成物質を、例えば板状、粉末状、繊維状、繊維
をシート状にしたもの、これらの繊維やシートにさらに
粉末を混入させたものなどがある。最も望ましい形態は
繊維状または繊維をさらにシート状に加工したものであ
る。このような形態にすれば取り扱いが容易であるう
え、繊維間に多量の空隙があるので脱炭反応によって生
じた一酸化炭素の系外への排出やMnの昇華が容易にな
るという利点がある。
雰囲気は水素ガス、不活性ガス、または両者の混合ガス
を主体とする雰囲気、さらには真空あるいは減圧雰囲気
が良い。好ましい減圧雰囲気の真空度は13.3×10
3 Pa以下、なお好ましくは133Pa以下である。真
空度が13.3×103 Paを超えると{100}面密
度が低下する。
300℃を超える焼鈍温度は工業的に実現するのが困難
である。好ましいのは、{100}面集積度を高めるた
めに、850℃以上の(α+γ)2相共存温度域であ
る。
100時間の範囲が良い。30分未満では脱炭、脱Mn
が不十分となり、一方、100時間を超えると生産性が
悪化する。
の板の間の電気的絶縁を確保するため、鋼板表面に絶縁
皮膜を塗布することが好ましい。絶縁皮膜の材質として
は公知のものが適用できる。例えば、リン酸塩系やクロ
ム酸塩系の溶液を鋼板に塗布し焼き付ける無機質系の絶
縁皮膜や、上記無機質系溶液にポリアクリルタイプエマ
ルジョン等の有機樹脂を混合したものを鋼板に塗布し焼
き付ける有機−無機混合皮膜が好適である。この表面コ
ーティングは最終焼鈍の後、焼鈍分離材を除去した後に
塗布し乾燥すればよい。
製品板厚に上限を設ける必要はない。しかし、製品板厚
が厚いと最終焼鈍における脱炭に長時間を要し、渦電流
損失が増大するので5mm以下とするのが好ましい。よ
り好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.5
0mm以下である。板厚の下限は特に限定されず、冷間
圧延で製造可能な厚さであれば良い。
有する鋼塊を真空溶解によって作製し、鍛造したのち、
その表面を研削して厚さが40mmの鋼片を作製した。
片を1200℃に加熱した後、仕上温度がA1点以下と
なるようにして熱間圧延し、厚さが2.6mmの熱間圧
延鋼板を得た。また比較例として、WO98/2017
9号公報で開示されている条件である仕上温度を(α+
γ)二相域とする熱間圧延を施した鋼板も作製した。こ
れらの鋼板を酸洗して表面の酸化物を除去した後、厚さ
が0.68mmになるまで冷間圧延し、洗浄液を用いて
脱脂した後中間焼鈍を施した。中間焼鈍条件は、窒素ガ
ス中で10℃/秒の加熱速度で1050℃まで加熱し、
30秒間均熱した後、10℃/秒の冷却速度で冷却する
ものとした。中間焼鈍後の鋼板に冷間圧延を施して厚さ
が0.30mmの冷間圧延鋼板とした。その後洗浄液を
用いて脱脂し、最終焼鈍に供する素材として150mm
角の鋼板を切りだし、これらに以下の条件で積層焼鈍を
施した。
を質量比で48:52の比率で含有する非晶質繊維:5
1質量%、TiO2 粉末:40質量%、有機物バインダ
ー:9質量%をシート状に成形したものを用意した。そ
の厚さは約200μmであった。上記最終焼鈍用素材と
シート状焼鈍分離材とを交互に積層し、真空度0.13
Paの雰囲気で焼鈍した。加熱速度は1℃/分、均熱温
度は1080℃、均熱時間は16時間とした。均熱終了
後は0.5℃/分の冷却速度で冷却し、焼鈍分離材を除
去した後、以下の方法でこれら鋼板の炭素含有量、鋼板
表面に平行な{100}面の面密度、および圧延方向と
板幅方向の磁化特性を測定した。
00}面密度は、Co−kα線を用いたX線{200}
積分強度測定をおこない、得られた積分強度値を集合組
織を持たない試料の{200}積分強度値で除して、ラ
ンダム比として求めた。
圧延直角方向を長さ方向とする、長さ100mm、幅3
0mmの短冊状試験片を切り出し、800℃で2時間均
熱する歪取り焼鈍を施した後、単板磁化測定装置を用い
て圧延方向または圧延直角方向の磁化特性を測定した。
磁化特性は50Hzの正弦波の交番磁界で1000A/
mの磁化力における磁束密度B10と1.70Tまで磁化
したときの鉄損W17/5 0 を求めた。熱間圧延時の仕上温
度、および得られた測定結果を表2に記す。
のものも焼鈍により炭素含有量が0.003%以下とな
っていた。いずれの試料についても{100}面密度は
ランダム試料の30倍を超えており、{100}面が板
面と並行な集合組織が最終焼鈍で発達していた。しかし
ながらその磁気特性は熱間圧延の仕上温度に大きく依存
しており、仕上温度がA1点以下であった試験番号1〜
4では、鋼板の圧延方向と幅方向のB10は1.80T以
上であり、鉄損W17/50 も1.4W/kg以下の優れた
鉄損値を示していた。
験番号5および6ではB10は1.72T以下であり、W
17/50 も1.66W/kg以上であり、いずれもよくな
かった。これらは、熱間圧延の仕上温度がA1点を超え
て高温になるとになると最終焼鈍において{100}<
001>組織が発達し難くなり、{100}<001>
だけではなく{100}{021}や{100}<01
1>組織も発達したためである。
の化学組成を有する鋼を真空溶解によって作製し、鍛造
したのち、その表面を研削して厚さが40mmの鋼片を
作製した。これらの鋼片を1100℃に加熱した後、各
鋼片のA1点以下である630℃で仕上圧延を終了する
熱間圧延を施し、厚さが2.3〜3.5mmの熱間圧延
鋼板を得た。得られた鋼板を酸洗して表面の酸化物を除
去した後、厚さが0.75mmまで冷間圧延し、洗浄液
を用いて脱脂した後実施例1に記載したのと同様の条件
で中間焼鈍を施した。中間焼鈍後の鋼板に冷間圧延を施
して厚さが0.35mmの冷間圧延鋼板とし、次いで脱
脂し、その後最終焼鈍に供する素材として150mm角
の鋼板を切りだした。実施例1に記載したのと同一内容
の焼鈍分離材と上記切り板鋼板とを交互に積層し、真空
度が0.13Paの真空中で焼鈍した。加熱速度は1℃
/min、均熱温度は1030〜1150℃、均熱時間
は8〜48時間とした。冷却後、焼鈍分離材を除去し、
実施例1に記載したのと同様の方法で、これら鋼板の炭
素含有量、{100}面密度のランダム比、および圧延
方向と板幅方向の磁化特性を測定した。最終焼鈍条件お
よび得られた測定結果を表3に記す。
〜26の鋼番B〜Gのものは{100}面密度はランダ
ム比で30を超えており、圧延方向と幅方向のB10は
1.8T以上であり、鉄損W17/50 も1.6W/kg以
下の優れた鉄損値を示していた。これに対し、鋼のC含
有量が本発明の規定する範囲を外れていた鋼H、(Si
−0.5Mn)が本発明の規定する範囲を外れていた鋼
Iを用いた試験番号27および28ではB10、W17/50
共によくなかった。1.66W/kg以上であり、いず
れもよくなかった。(Si+0.5Mn)が本発明の規
定する範囲を外れていた鋼Jを用いた試験番号29は冷
間圧延が困難であった。
面が板面と平行な集合組織が十分に発達し、優れた磁気
特性を備えた{100}集合組織珪素鋼板を安定して製
造することができる。従って本発明の製造方法は、回転
機や変圧器の高効率化に大きく寄与するものである。
(a)は{110}面が板面に平行で、<001>軸が
圧延方向に集積した組織の模式図であり、図(b)は
{100}面が板面に平行で、圧延方向と幅方向に<0
01>軸が集積した組織の模式図である。
Claims (1)
- 【請求項1】 質量%でCを0.020〜0.20%含
有し、SiとMnの含有量が質量%で(Si+0.5M
n)≦5.0および(Si−0.5Mn)≧1.5なる
関係式を満たす鋼を熱間圧延する熱間圧延工程、冷間圧
延する冷間圧延工程、および、脱炭促進物質を含有する
焼鈍分離材もしくは脱炭促進物質と脱Mn促進物質とを
含有する焼鈍分離材を鋼板間に介在させて最終焼鈍する
最終焼鈍工程を有する二方向性珪素鋼板の製造方法にお
いて、熱間圧延工程における仕上圧延を鋼のA1点以下
で終了し、冷間圧延工程は少なくとも1回の中間焼鈍を
含むものであることを特徴とする磁気特性に優れた二方
向性珪素鋼板の製造方法。
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JP35938299A JP4300661B2 (ja) | 1999-12-17 | 1999-12-17 | 磁気特性に優れる二方向性珪素鋼板の製造方法 |
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JP2023508295A (ja) * | 2019-12-20 | 2023-03-02 | ポスコホールディングス インコーポレーティッド | 二方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
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EP3733900A4 (en) * | 2017-12-26 | 2021-04-07 | Posco | DOUBLE ORIENTATION ELECTRIC STEEL SHEET AND ITS MANUFACTURING PROCESS |
US11802319B2 (en) | 2017-12-26 | 2023-10-31 | Posco Co., Ltd | Double oriented electrical steel sheet and method for manufacturing same |
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