JP2001179326A - アーク溶接用フラックス入りワイヤの製造方法および装置 - Google Patents

アーク溶接用フラックス入りワイヤの製造方法および装置

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Mikio Makita
三宜男 槇田
Setsuo Takahashi
説郎 高橋
Masaki Abe
昌樹 阿部
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、ガスシールドアーク溶接用フラッ
クス入りワイヤの製造方法およびその装置に関し、送給
性および色調の良好な溶接用フラックス入りワイヤを提
供する。 【解決手段】 帯鋼の成形工程、フラックス充填工程、
成形縮径工程および伸線工程からなるアーク溶接用フラ
ックス入りワイヤ製造方法おいて、伸線工程の初期は乾
式潤滑剤25を用いて孔ダイス伸線28、次いでカセッ
ト型ローラーダイス伸線33し、引き続いて混合潤滑剤
41を用いて孔ダイス伸線42し、さらに湿式潤滑剤孔
ダイスを用いて仕上げ伸線することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】シールドガス雰囲気中でワイ
ヤを自動供給しながらアーク溶接を行うガスシールドア
ーク溶接用ワイヤの製造方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、溶接用フラックス入りワイヤを
製造する技術として,金属帯板を連続的に供給し、幅方
向に溝型(Uまたは上方に開口するコ状)に成形しなが
らその溝型内にスラグ形成剤、脱酸剤、合金剤などの各
種原料を配合したフラックスを、目的とするワイヤ成分
となるように供給し、溝型の対向する両縁部をロールに
よる加圧力で突き合わせて管状体とした後、所定のワイ
ヤ径まで圧延縮径または乾式潤滑剤伸線により減径する
方法が知られている。
【0003】ところで、溶接用フラックス入りワイヤに
おいて、要求される溶接性能の一つにワイヤ送給性があ
る。ワイヤ送給性とは、溶接時にワイヤを供給するワイ
ヤ送給性能を意味する。一例として、ワイヤ供給装置か
ら溶接トーチまでのコンジットケーブルが屈曲する狭隘
な場所を溶接するとき、送給されるワイヤには屈曲した
ケーブルによる摩擦抵抗が加わり溶接部へのワイヤ供給
が不充分となりアークが安定せず溶接欠陥が発生する問
題がある。従来技術の乾式潤滑剤伸線では、あるレベル
までのケーブル屈曲までは絶えられるが、それを超えた
過酷な条件のときのワイヤ送給性能に問題がある。乾式
潤滑剤を使用し伸線するとワイヤ表面に付着する潤滑剤
にムラが発生するため、送給性能を向上させる伸線方法
が必要となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明はアー
ク溶接用フラックス入りワイヤの送給性能を向上させる
ために、安定してワイヤ表面に潤滑剤を付着させる製造
方法および潤滑剤粘度調整装置を備えた伸線機を有する
製造装置提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、アーク溶接用
フラックス入りワイヤの製造方法に関し、主工程は、帯
鋼の成形工程、フラックス充填工程、成形縮径工程およ
び伸線工程からなる。特に、伸線工程の初期工程は乾式
潤滑剤を用いての孔ダイス伸線、カセット型ローラーダ
イス伸線、次いで、混合潤滑剤を用いて孔ダイス伸線
し、さらに湿式潤滑剤孔ダイス伸線を用いて仕上げ伸線
して巻き取るアーク溶接用フラックス入りワイヤの製造
方法である。また、混合潤滑剤伸線に用いる混合潤滑剤
の粘度は0.03〜15Pa・sが好ましい。
【0006】上記の製造方法において、混合潤滑剤を用
いる伸線後に複数の孔ダイス湿式伸線とするアーク溶接
用フラックス入りワイヤの製造方法である。
【0007】また、混合潤滑剤伸線において、そのダイ
スボックス内の混合潤滑剤をダイスボックスから吸引、
粘度調整および供給作用で循環させて所定の粘度を維持
するアーク溶接用フラックス入りワイヤの製造方法であ
る。
【0008】さらには、アーク溶接用フラックス入りワ
イヤ製造装置にあり、上工程から順次、帯鋼の成形装
置、フラックス充填装置、成形縮径装置および伸線装置
からなり、該伸線装置は乾式潤滑剤式孔ダイス伸線機、
カセット型ローラーダイス伸線機、次いで、混合潤滑剤
を用いる潤滑剤粘度調整装置を備えた孔ダイス伸線機、
さらに湿式潤滑剤を用いる孔ダイス伸線機を備えたアー
ク溶接用フラックス入りワイヤ製造装置にある。
【0009】
【発明の実施の形態】製造方法の工程の概略を図1に示
す。まず、工程1の帯鋼供給台から帯鋼を工程2の成形
機に連続して供給し、工程2で帯鋼を幅方向にU字型に
成形しながら、工程3,4でU字型の溝にフラックスを
供給、充填する。続いて、工程5でU字型となった帯鋼
の両縁部を突き合わせて管形状(O字型)に成形した
後、所定の線径まで縮径される。次に、本発明の伸線工
程6でワイヤを製品径まで仕上げ伸線して、工程7でボ
ビンに巻き取る。
【0010】本発明の伸線工程を図2に平面図、図3に
側面図に示す。成形工程5を経て素線Wは、図示しない
伸線時の引張り力で断線しないようにダンサーローラで
引張り力を調節し、ガイドロールを経て、成形用のカセ
ット型ローラダイス23で線径を整えられ、次いでD1
工程のダイスボックス24内の乾式潤滑剤25を圧着ロ
ーラー26でワイヤW表面に強制付着させて孔ダイス2
8で伸線する。このときダイスボックス24内の乾式潤
滑剤25が伸線熱により孔ダイス28入り口で固化する
のを防ぐため、回転ダイス用モータ27を回しウオーム
ギヤを経て回転が孔ダイスと孔ダイス支持部に伝わり、
この2つが回転して乾式潤滑剤25が固化するのを防ぐ
構造を有するダイスボックス24である。そして、素線
Wは孔ダイス28を通りキャプスタン29に巻き取られ
回転力により素線Wを引き抜き伸線する。ガイドローラ
30、水平式ダンサーローラ31を経て次の工程へと進
む。
【0011】次に、素線WはD2工程のカセット型ロー
ラダイス33で伸線される。ワイヤWを引き抜く力は、
D1工程と同様の構造である。ここで、ワイヤ70の製
品径に合わせてD2工程と同様の工程をn数もつ伸線工
程である。カセット型ローラダイス伸線の目的は、素線
Wの表面に粗さを保ち、付着した乾式潤滑剤を保持する
ことである。
【0012】次に、伸線にカセット型ローラダイスを使
用することで、ワイヤ形状が楕円となっているため素線
Wの形状を真円にするため仕上げ伸線を孔ダイスで伸線
する。カセット型ローラダイス伸線は、基本的に潤滑剤
なしによって伸線できるが仕上げ伸線で孔ダイスを使用
するためD1工程で乾式潤滑剤25を使用したのはこの
ためである。さらに、D1工程で使用した乾式潤滑剤に
より素線W表面の潤滑剤付着状態にムラがあるため、仕
上げ孔ダイス工程Dn−3とその前工程に孔ダイス工程
Dn−2、Dn−1…と潤滑剤付着状態を安定化させる
ために混合潤滑剤、湿式潤滑剤を使用した伸線機をいく
つか設ける。Dn−1工程は、D2工程と同様のカセッ
ト型ローラダイス伸線をいくつか経た素線Wをダイスボ
ックス40内の混合潤滑剤41または湿式潤滑剤41'
で素線W表面の潤滑剤付着量を安定化させ、孔ダイス4
2を用いて仕上げ伸線される。この時のワイヤ70を引
き抜く力はD1工程と同様の構造である。仕上げ伸線の
42の前に、本発明の潤滑剤の循環装置50をダイスボ
ックス40に取りつける。また、Dn−2、Dn−3…
はDn−1と同様の孔ダイス伸線工程である。そして、
製品径まで素線Wを伸線した後、ワイヤ70を巻き取り
機によりボビン80に巻き取る。
【0013】本発明に用いる乾式潤滑剤は高融点ワック
ス、金属石鹸、MoS2、WS2、ポリテトラフルオロエ
チレン、グラファイトの1種または2種以上をいう。ま
た、本発明に使用する湿式潤滑剤は油性潤滑剤に洗浄剤
を添加したものである。油性潤滑剤は常温で液状であり
伸線時の発熱により変質、固化せずに潤滑性能が損なわ
れない動植物油、鉱物油または合成油を基油として使用
できる。例えば植物油としてはパーム油、菜種油、椰子
油、オリーブ油、ひまし油等、動物油としてはラード、
羊油、肝油等、鉱物油としてはマシン油、タービン油、
スピンドル油等、合成油としてはオレフィン重合油、ジ
エステル油、ポリアルキレングリコール油、ハロゲン化
炭化水素油、シリコーン油等がある。洗浄剤は沸点が1
60〜260℃程度のガス油、軽油、灯油、クレオソー
ト油または炭化水素系油等を使用できるが、沸点は低め
で範囲の小さいものを選択した方が分離、再生に有利と
なる。
【0014】次に、本発明の使用する混合潤滑剤につい
て説明する。伸線工程における乾式潤滑剤の孔ダイス伸
線時に付着して潤滑剤の付着むらを均一にするには、ワ
イヤ表面を洗浄し、余分に付着した乾式潤滑剤を除去す
る必要性がある。混合潤滑剤は、湿式潤滑剤と乾式潤滑
剤を混合したものであり、湿式潤滑剤の洗浄効果と乾式
潤滑剤の伸線潤滑性を兼ね備えたもので、安定した伸線
性が得られ、孔ダイス伸線工程でワイヤ表面潤滑剤付着
量を目標値に安定させる等の目的に使用するものである
が、その粘度は0.03〜15Pa・sが好ましい。粘度
が0.03Pa・s未満では、湿式潤滑剤と同等の洗浄効
果なので好ましくない。また、15Pa・sを超えると、
混合潤滑剤の流動性が低下しワイヤ表面へ潤滑剤が安定
して届かず、ワイヤ表面潤滑剤付着量が不安定となり、
最終的には潤滑が途切れて線荒れ、断線など伸線トラブ
ルの発生の原因となる。
【0015】本発明における潤滑剤の粘度は、共軸2重
円筒形回転式粘度計(スパイラルポンプ式粘度センサ)
(株式会社マルコム製)を使用し混合潤滑剤粘度を測定
した。粘度の単位は国際単位系(SI):パスカル・秒
(Pa・s)通常はその補助単位ミリパスカル・秒(mPa・
s)を使用する。
【0016】本発明の、混合潤滑剤41用の循環装置5
0の説明を図4に示す。本発明の混合潤滑剤年度調整装
置の構造は、ダイスボックス40側面部の右下に排出パ
イプ51を取り付け、モーターポンプ52、攪拌タンク
54への供給パイプ53を経て、潤滑剤攪拌タンク54
に連結され、攪拌タンクには新しい混合潤滑剤を供給す
る潤滑剤の供給容器58を設ける。攪拌タンク54は、
タンク内に複数の攪拌羽根55を有する構造である。こ
の攪拌羽根55の駆動モータ56にはトルクセンサ57
を取り付け、混合潤滑剤41濃度を保つ機能を持つ。そ
して、ローラーポンプ60の回転による排出パイプ59
内の減圧により攪拌タンク54内の混合潤滑剤を吸引し
てダイスボックス40側面部の左下に供給パイプ61を
取り付けダイスボックス40内に混合潤滑剤41を供給
する循環装置である。
【0017】次に、混合潤滑剤粘度調整装置の機能につ
いて説明する。混合潤滑剤41は、ダイスボックス40
側面部の排出パイプ51を経て、モーターポンプ52に
吸引され、攪拌タンク供給パイプ53を経て、攪拌タン
ク54に混合潤滑剤41を供給される。新しい潤滑剤、
または添加剤は供給タンク58から攪拌タンク54に送
り込まれる。そこで混合潤滑剤41と新しい潤滑剤が攪
拌タンク54内の攪拌羽根55により攪拌する。この攪
拌羽根55のモーター56にトルクセンサー57を取り
付けて粘度によって変化するトルク負荷を測定する。混
合潤滑剤は使用時間の経過とともに粘度が高くなり、1
5Pa・s以上になると伸線性が悪くなる。よって、モー
タ56の負荷トルクが一定のレベルを超えたら供給タン
ク58から新しい潤滑剤、添加剤を攪拌タンク54に供
給して混合潤滑剤41の粘度を保つ。そして、ローラー
ポンプ60の回転による排出パイプ59内の減圧によっ
て混合潤滑剤41を攪拌タンク54から吸引して供給パ
イプ61をへてダイスボックス40内に0.03〜15
Pa・s の混合潤滑剤41を供給する。
【0018】本発明の製造方法及び装置によって製造さ
れたワイヤの送給性評価方法について図5を用いて説明
する。溶接は、図5に示す装置で6m 長さのコンジット
ケーブル104を用い、コンジットケーブル104は山
形屈曲部105、106の半径r=75mm を2山・2
カ所連続して付与できる装置を使用した。送給性試験は
表1に示す溶接条件でストレート、1山および2山の3
方式によって各3分間でそれぞれのワイヤをターンテー
ブル108を使用しビードオンプレートで溶接した。
【0019】ワイヤの送給性の測定は、ワイヤスプール
100をワイヤ送給装置101にセットし、平型加圧ロ
ーラ102とV溝付き送給ローラ103(以後、ワイヤ
送給部という。)で送り出されたワイヤ100に負荷が
加わるとワイヤ送給部の反力によってワイヤ100が後
退する。このときに生じる力をロードセル110によっ
て送給抵抗R(N)として測定する。また、ワイヤ送給
部でのスリップ率S(%)は、V溝付き送給ローラ10
3の周速(TG)とメジャリングローラ109のワイヤ
通過速度(PG)を測定して下記式で算出する。 スリップ率S(%)=(TG−PG)・100/TG
【0020】
【表1】
【0021】
【実施例】以下に本発明の製造方法および装置で製造し
たフラックス入りワイヤ(ワイヤ径:1.2mm、JIS
Z 3313 YFW−C50DR)を用いた。ワイヤ
品質を評価するうえで、送給性の問題があげられる。こ
れは、溶接の過酷な使用環境下での安定したワイヤ供給
を目的とし、評価方法は図5に示すようにコンジットケ
ーブルに任意の屈曲を与える。試験方法は屈曲1山で溶
接を行い、アーク切れの発生がなければ更に屈曲をもう
1山追加し合計2山で溶接する。送給抵抗R(N)・ス
リップ率(%)は屈曲を与えることで増加するが、良好
な範囲は送給抵抗R(N)=70未満、スリップ率
(%)=20未満でどちらか一方が良好範囲を超えると
ビード形状が悪くなるなど、溶接不良となる。また、屈
曲を与えた厳しい条件に耐えられないワイヤはアークが
途切れて溶接できなくなるため評価はなく適していない
ことになる。ワイヤ表面潤滑剤付着量は、エーテル・ト
ルエン抽出法により測定した。表2に本発明の測定結果
をまとめて示す。
【0022】
【表2】
【0023】本発明を実施例に基づいて説明する。試験
ワイヤの製造条件はすべて統一し、各潤滑剤の使用位置
を変えて伸線したものである。本発明の試験ワイヤの製
造条件は、成形工程で厚さ0.8mm、幅12.0mmのフ
ープを用いて、フラックス充填率14.5±0.5%と
し、外径3.2mmまで成形し、伸線工程で外径1.2mm
まで伸線する。
【0024】使用潤滑剤は、初頭孔ダイスボックスを乾
式潤滑剤、カセット型ローラダイスは潤滑剤なしで伸線
可能なので空引き伸線、孔ダイスボックスはそれぞれ、
空引き・乾式潤滑剤・混合潤滑剤・湿式潤滑剤を組み合
わせた仕様で伸線実験を行った。実施例は、混合潤滑を
伸線工程に取り入れたものである。また、伸線工程のカ
セット型ローラダイスは各ブロック5枚1組の仕様とな
っている。(例.実施例No.1よりカセット型ローラダ
イスは#2B〜#7Bの計6ブロック使用している。よ
って、6ブロック×5枚=30枚のカセット型ローラダ
イスを使用していることになる。
【0025】評価項目として、送給性(1山、2山)、
ワイヤ表面潤滑剤付着量(エーテル、トルエン抽出法で
分析した値)でワイヤ性能を比較したものである。ま
た、伸線時の問題点などを伸線評価に示す。
【0026】実施例1―(2孔ダイス洗浄) 実施例1では、請求範囲内の中間の粘度(0.4〜1Pa
・s)を持つ混合潤滑剤を使用することによりワイヤ表
面上の余分な潤滑剤を除去できるため、ワイヤ表面潤滑
剤付着量を適正範囲内することができ、送給性は良好な
結果となる。#8ブロックに混合潤滑剤、#9ブロック
に湿式潤滑剤を使用した例である。
【0027】比較例として、No.5(#8,9ブロック潤
滑剤なし)、No.6(#8,9ブロック乾式潤滑剤)No.
7(#8,9ブロック湿式潤滑剤)、No.8(#8ブロッ
ク乾式潤滑剤、#9湿式潤滑剤)を説明する。まず、N
o.5,6の湿式・混合潤滑剤を使用しなかった伸線方式
では、洗浄工程がないためワイヤ表面潤滑剤付着量が多
くなる傾向にあり、送給性屈曲1山レベルでスリップ率
が高くなり、2山レベルではワイヤ送給ができずアーク
切れが発生し溶接できず、No.5の潤滑剤なしの工程に
より線荒れが発生し、時に断線が生じた。また、No.7,
8においても湿式潤滑剤だけではワイヤ表面上の潤滑剤
を効率よく洗浄できなく、ワイヤ表面潤滑剤付着量がや
や多くなり、送給性評価はNo.5,6同様にスリップ率も
高くなり、屈曲2山レベルでは、アーク切れが発生す
る。
【0028】実施例2―(3孔ダイス洗浄) #7ブロックに混合潤滑剤、#8、9ブロックに湿式潤
滑剤を使用した例である。#7、8、9の3ブロックで
洗浄剤を使用することにより、ワイヤ表面の洗浄効果が
実施例1より更に安定するため、、ワイヤ送給性評価に
おいて2山レベルで実施例1よりスリップ率が低下し、
向上している。つまり、品質に応じた送給性のレベルを
特定して生産できる。また、3ブロック使用した比較例
としては、No.9(#7ブロック潤滑剤なし、#8、9
ブロック湿式潤滑剤)No.10(#7ブロック乾式潤滑
剤、#8,9ブロック湿式潤滑剤)を示す。No.9、1
0はNo.7、8と同様に湿式潤滑剤だけではワイヤ表面
上の潤滑剤を効率よく洗浄できないことがわかる。送給
性評価は1山レベルで送給抵抗が高くスリップ率も高い
結果となる。また、No.5と同様に潤滑剤なしの工程を
含むNo.9ではやはり線荒れが発生した。
【0029】粘度の比較 混合潤滑剤の粘度による比較を行った。実施例は、No.
2(粘度中間値)、No.3(粘度下限値)No.4(粘度上
限値)をあげる。比較例として、No.11(粘度下限値
以下)、No.12(粘度上限値以上)をあげる。No.11
の混合潤滑剤は、ほぼ湿式潤滑剤と同様な状態であり、
比較例No.9の湿式潤滑剤で伸線した時のワイヤ表面潤
滑剤付着量と同様レベルであったが、溶接結果は屈曲2
山レベルまではいくもののスリップ率が非常に高く安定
して溶接ができなかった。また、No.12の混合潤滑剤
粘度が高い場合は、粘性が高いため伸線時#7ボック内
ワイヤ周囲で空洞化現象が発生するため、ワイヤ表面に
潤滑剤が届かず潤滑剤なしと同様の状況になり線荒れが
発生したため伸線性が悪かった。
【0030】
【発明の効果】本発明は、伸線工程において順次乾式潤
滑剤孔ダイス伸線、カセット型ローラダイス、混合潤滑
剤孔ダイス及び湿式孔ダイス伸線によって、スリップ率
の低い、送給性の良好な安定した、しかも色調の良いガ
スシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の工程概要を示すブロック図である。
【図2】本発明の伸線工程の平面図である。
【図3】図2に示した伸線工程の側面図である。
【図4】本発明の混合潤滑剤の粘度調整装置である。
【図5】送給性試験に使用した試験器の概要図である。
【符号の説明】
1:帯鋼供給工程 2:成形工程 3:フラックス供給装置 4:フラックス充填
工程 5:縮径工程 6:伸線工程 7:巻き取り工程 21:ダンサーローラ 22:ガイドローラ 23:カセット型ローラダイス 24:ダイスボック
ス 25:乾式潤滑剤 26:圧着ローラ 27:回転ダイス用モータ 28:孔ダイス 29:キャプスタン 30:ガイドローラ 31:水平式ダンサーローラ 32:支点 33:カセット型ローラダイス 40ダイスボックス 41:混合潤滑剤 42:孔ダイス 43:キャプスタン 44:ガイドローラ 50:循環装置 51:排出パイプ 52:モータポンプ 53:供給パイプ 54:攪拌タンク 55:攪拌羽根 56:駆動モータ 57:トルクセンサ 58:供給容器 59:排出パイプ 60:ローラポンプ 61:供給パイプ 70:ワイヤ 80:巻き取り機 100:ワイヤスプール 101:ワイヤ供給
機 102:平型加圧ローラ 103:V溝付き供
給ローラ 104:コンジットケーブル 105:山形屈曲部 106:山形屈曲部 107:溶接トーチ 108:ターンテーブル 109:メジャリン
グローラ 110:ロードセル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阿部 昌樹 東京都中央区築地三丁目5番4号 日鐵溶 接工業株式会社内 Fターム(参考) 4E096 EA02 EA24 FA02 FA03 GA03 HA15 JA01 JA11 JA12 JA13 KA09

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 帯鋼の成形工程、フラックス充填工程、
    成形縮径工程および伸線工程からなるアーク溶接用フラ
    ックス入りワイヤ製造方法おいて、伸線工程の初期は乾
    式潤滑剤を用いて孔ダイス伸線、次いでカセット型ロー
    ラーダイス伸線し、引き続いて混合潤滑剤を用いて孔ダ
    イス伸線し、さらに湿式潤滑剤孔ダイスを用いて仕上げ
    伸線することを特徴とするアーク溶接用フラックス入り
    ワイヤの製造方法。
  2. 【請求項2】 混合潤滑剤の粘度が0.03〜15Pa・
    sであることを特徴とする請求項1記載のアーク溶接用
    フラックス入りワイヤの製造方法。
  3. 【請求項3】 混合潤滑剤を用いる伸線後に複数の孔ダ
    イス湿式伸線することを特徴とする請求項1または請求
    項2記載のアーク溶接用フラックス入りワイヤの製造方
    法。
  4. 【請求項4】 混合潤滑剤伸線のダイスボックス内の混
    合潤滑剤を吸引、粘度調整および供給で循環させて所定
    の粘度を維持することを特徴とする請求項1、2または
    3記載のアーク溶接用フラックス入りワイヤの製造方
    法。
  5. 【請求項5】 アーク溶接用フラックス入りワイヤ製造
    装置おいて、上工程から順次、帯鋼の成形装置、フラッ
    クス充填装置、成形縮径装置および伸線装置からなり、
    該伸線装置は乾式潤滑剤式孔ダイス伸線機、カセット型
    ローラーダイス伸線機、次いで、混合潤滑剤を用いる潤
    滑剤粘度調整装置を備えた孔ダイス伸線機、さらに湿式
    潤滑剤を用いる孔ダイス伸線機を備えたことを特徴とす
    るアーク溶接用フラックス入りワイヤ製造装置。
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