JP3631357B2 - 溶接用ワイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素鋼用又はステンレス鋼用の自動溶接又は半自動溶接に使用される溶接用ワイヤに関し、特に、ワイヤの送給性を向上させることができる溶接用ワイヤに関する。なお、本発明はメッキ処理したメッキワイヤ及びメッキ処理していない無メッキワイヤの双方に適用できる。
【0002】
【従来の技術】
溶接用ワイヤを使用して自動又は半自動で溶接する場合に、溶接用ワイヤを、スプール又はワイヤ収納用パックからアーク溶接箇所まで安定して送給する必要がある。この溶接用ワイヤは、コンジットケーブル等のスプリングライナー内部を通ってアーク溶接箇所に運ばれる。溶接用ワイヤがスプリングライナー内を通るときの通り易さを溶接用ワイヤの送給性と定義すれば、送給性が良好な溶接用ワイヤは長いコンジットケーブルを小さな力で通過することができるものである。造船工場のように長いコンジットケーブルを使用することが多い溶接現場では、溶接ワイヤの送給性が良好であることが必要不可欠である。
【0003】
溶接用ワイヤの送給系が過酷な溶接現場においては、長時間に亘って溶接すると、メッキ屑等が送給ローラ及びスプリングライナー内部に堆積して詰まりが発生し、ワイヤの送給不良を誘発する。このため、従来では、溶接用ワイヤの送給性を向上させるために、ワイヤ表面に滑り性を有する種々の潤滑油を塗布していた。このように、ワイヤ表面の滑り性を向上させた技術として、例えば、植物油(パーム油)及び動物油(ラード)等の潤滑油と、グラファイト及び二硫化モリブデン等の潤滑物質粒子を溶接用ワイヤの表面に塗布することによってワイヤの送給性を向上させた溶接用ワイヤが提案されている(特開平6−285678号公報)。これらの潤滑油及び潤滑物質粒子がワイヤ表面に適正量塗布されていると、ワイヤ表面とスプリングライナーの内壁部との間の摩擦係数を低減させることができ、優れた潤滑性を発揮してワイヤの送給性を向上させることができる。
【0004】
また、炭素数が多い直鎖又は側鎖構造を有するステアリン酸、オレイン酸、リノール酸又はリノレン酸等の高級脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩をワイヤ表面に付着させ、仕上げ伸線後、その上から潤滑油を塗布することによってワイヤの送給性を向上させる方法(特開平1−166898号公報)及びカルボン酸ナトリウム塩又はカルボン酸カリウム塩を含有した油性潤滑剤をワイヤ表面に保持付着させることによりワイヤの送給性を向上させる方法(特開平2−284792号公報)が公知である。これらの方法は、ワイヤ表面に適正量の高級脂肪酸のアルカリ金属塩及び潤滑油を付着させることによって、ワイヤの送給性を向上させるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来技術は以下に示す欠点を有する。先ず、潤滑油、二硫化モリブデン及びグラファイトからなる潤滑物質をワイヤ表面に塗布することによってワイヤの送給性を向上させた溶接用ワイヤ(特開平6−285678号公報)の場合においては、この溶接用ワイヤを使用して長時間に亘って溶接作業を行うと、スプリングライナーの内壁部に前記潤滑物質が堆積して詰まりが発生するため、ワイヤの送給性が阻害されてしまうという難点がある。これは、潤滑物質がワイヤ表面と何ら結合性を有しないために、潤滑物質がワイヤ表面から容易に剥離してしまうことに起因する。
【0006】
一方、高級脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩をワイヤ表面に付着させ、伸線後、その上から潤滑油を塗布する方法(特開平1−166898号公報)及びカルボン酸ナトリウム塩又はカルボン酸カリウム塩を含有した油性潤滑剤をワイヤ表面に付着させる方法(特開平2−284792号公報)においては、同様に長時間に亘って溶接作業を実施するとスプリングライナーの内部に高級脂肪酸のアルカリ金属塩及び潤滑油がワイヤ表面から剥離して堆積するため、スプリングライナーの内部に詰まりが発生し、その結果ワイヤの送給性が低下する。これは、カルボン酸塩の炭化水素の鎖の長さが長すぎるため、ワイヤ表面と潤滑油との結合力が弱いことに起因する。このため、潤滑物質がワイヤ表面から容易に剥離し、スプリングライナー内部にこの堆積物による詰まりが発生する。また、高級脂肪酸金属塩は、ステアリン酸ナトリウム塩に代表されるように、優れた伸線用潤滑剤であり、このような分子量が大きい高級脂肪酸金属塩はワイヤ表面に強固な厚い皮膜を形成しやすいため、ワイヤの滑り性は向上するが、送給ローラにおいてワイヤのスリップが発生する虞れがあり、これにより送給不良が誘発される。特にメッキが施されたワイヤの場合には、スリップによりメッキの剥離が発生する。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、ワイヤ表面と送給用潤滑油とを化学的に結合させ、長時間の溶接においても潤滑物質の剥離によりスプリングライナー等の内部に詰まり等の不具合が発生せずに、ワイヤの送給性を向上させることができ、ワイヤの送給性を安定化させることができる溶接用ワイヤを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る溶接用ワイヤは、ワイヤ表面に、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、セカノイック酸、カプリン酸及びデカン酸からなる群から選択された直鎖又は側鎖構造を有する炭素数が5乃至10個のカルボン酸、及び/又はLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Sn、Cs、Pb及びCeからなる群から選択された金属と前記カルボン酸との塩の1種又は2種以上からなるカルボン酸金属塩と、二硫化モリブデン、二硫化タングステン及び四弗化エチレンからなる群から選択された少なくとも1種以上の潤滑性粒子と、動植物油、鉱物油及び合成油からなる群から選択された少なくとも1種以上の潤滑油とが存在することを特徴とする。
【0009】
この溶接用ワイヤにおいて、前記カルボン酸が、ワイヤ表面に総量でワイヤ10kg当たり0.001乃至2g付着していることが好ましい。また、前記カルボン酸及び前記潤滑性粒子及び前記潤滑油が、ワイヤ表面に総量でワイヤ10kg当たり0.1乃至5g付着していることが好ましい。
【0011】
更に、本発明の溶接用ワイヤは、炭素鋼用又はステンレス鋼用のソリッドワイヤ、炭素鋼用又はステンレス鋼用のフラックス入りワイヤ、表面に銅メッキを有しないもの、又は表面に銅メッキを有するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
ワイヤ表面とスプリングライナー又はテフロンチューブ等のコンジットケーブル内のワイヤガイド内表面との動摩擦係数を低減させるためには、ワイヤの使用条件に適した融点(軟化点)及び粘度を有する潤滑油(動植物油、鉱物油、合成油及びこれらの混合油等)と滑り性を有する潤滑性粒子(二硫化モリブデン、二硫化タングステン及び四弗化エチレン等)とをワイヤ表面に存在させる必要がある(以下、潤滑油と潤滑性粒子とを総称して潤滑物質という)。これらの潤滑物質がワイヤ表面の見かけ上の単位面積当たり又はワイヤの単重量当たり適正量で均一に付着していれば、溶接開始直後のワイヤの送給性は向上する。しかしながら、潤滑物質が、単に、物理的に塗布されているだけであると、即ち、潤滑油の濡れ性のみに支配されて潤滑物質がワイヤ表面に付着している状態であると、長時間に亘って溶接することにより、潤滑物質がワイヤ表面から容易に剥離してしまい、コンジットケーブル内に詰まりが容易に発生する。ワイヤの送給性を向上させるためにワイヤ表面に添加した潤滑物質によって逆に送給性が損なわれてしまう。潤滑物質がワイヤ表面から剥離して堆積することを防止するためには、ワイヤ表面と潤滑油とを化学的に結合させればよい。
【0013】
そこで、本願発明者等が前記課題を解決するために鋭意実験研究を重ねた結果、ワイヤ表面に潤滑油と潤滑性粒子との間に炭素数が5乃至10個の鎖式化合物が存在していると、ワイヤの送給性が高められ、コンジットケーブル内の詰まりが抑制されることを見い出した。この炭素数が5乃至10個の鎖式化合物は金属表面で特定方向に配向しやすい。また、炭素数が5乃至10個の鎖式化合物がカルボン酸(以下、低級脂肪酸という)又はカルボン酸塩(以下、低級脂肪酸塩という)であると、ワイヤ表面と潤滑油とを化学的に結合させる作用を有する。種々の物質をワイヤ表面に塗布し、ワイヤの送給性を鋭意検討したところ、炭素数が5個であるペンタン酸及びペンタン酸金属塩等は、潤滑油をワイヤ表面に固定させる糊の作用を有する。これらの低級脂肪酸及び低級脂肪酸塩は潤滑油をワイヤ表面に固定することから、潤滑油に濡れてワイヤ表面に存在する滑り性を有する潤滑性粒子(二硫化モリブデン、二硫化タングステン及び四弗化エチレン等)もワイヤ表面に固定する効果がある。
【0014】
このような低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩による化学的結合の機構は以下のように考えられる。即ち、低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩は金属表面において特定方向に配向する特性を有する。一般に、極性を有するカルボキシル基が金属表面と結合する場合、炭化水素鎖は金属表面の法線方向に向かう。低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩のようにカルボキシル基の炭化水素鎖が短いと、金属表面に対して法線方向に配向する傾向が顕著となり、金属表面は低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩の短い分子によって均一に覆われる。
【0015】
図1は、炭素数が5乃至10個の鎖式化合物が潤滑油及び潤滑性粒子をワイヤ表面に固定する機構を示す模式図である。図1(a)は無メッキの溶接用ワイヤの場合であり、図1(b)はメッキが施されている溶接用ワイヤの場合である。図1(a)に示すように、無メッキ溶接ワイヤの表面1aに鎖式化合物2aがワイヤ表面に対して法線方向に外側に向かって配向しており、鎖式化合物2aの末端から炭化水素鎖3aもワイヤ表面に対して法線方向に外側に向かって配向している。この炭化水素鎖3aの上を潤滑油4aが均一に覆っている。そして、炭化水素鎖3aと潤滑油4aとが化学的に結合し、この炭化水素鎖3aと潤滑油4aとの間に二硫化モリブデン等の潤滑性粒子5aが取り込まれて安定化している。
【0016】
また、図1(b)に示すように、ワイヤにメッキが施されている場合には、メッキ層15の表面に鎖式化合物2bが配向している点のみが図1(a)と異なる。即ち、鎖式化合物2bと共にメッキされたワイヤ表面1bに対して法線方向に配向している炭化水素鎖3bと潤滑油4bとが化学的に結合し、その間に取り込まれるように潤滑性粒子5bが安定化している。
【0017】
以上のように、低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩の炭化水素鎖は親油性であるため、潤滑油と親和しやすい。このため、先ず、ワイヤ表面に低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩の薄くて均一な皮膜が形成され、その上を潤滑油が被覆する。更に、二硫化モリブデン等の潤滑性粒子は潤滑油の皮膜に取り込まれて安定化する。このようにして、潤滑油及び/又は潤滑性粒子からなる潤滑物質が低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩の分子を介してワイヤ表面と化学的に結合するため、ワイヤ表面とスプリングライナーの内壁部との動摩擦係数を低減することができ、ワイヤ表面の潤滑物質の剥離を防止することができる。
【0018】
以下、本発明に係る溶接用ワイヤの表面に塗布される鎖式化合物の炭素数の限定理由について説明する。
【0019】
鎖式化合物の炭素数:5乃至10個
炭素数が13個以上の鎖式化合物(高級脂肪酸及び高級脂肪酸塩)においては、例えば、ステアリン酸又はステアリン酸金属塩を使用して種々実験したが顕著な効果は得られなかった。これは、炭素鎖が必要以上に長いので、炭素数が13個以上の鎖式化合物はワイヤ表面に配向し難いためであると考えられる。また、ステアリン酸の金属塩等をワイヤ表面に塗布すると、ワイヤを駆動させる送給ローラで滑りが発生したが、これは、ステアリン酸金属塩のように分子量の大きな脂肪酸金属塩が伸線用潤滑剤として使用されることからも明らかであるように、分子量の大きな脂肪酸金属塩をワイヤ表面に塗布するとワイヤ表面に強固な厚い皮膜が形成されやすいからである。そして、このような高級脂肪酸金属塩の皮膜は自動溶接時又は半自動溶接時に送給ローラでワイヤのスリップを誘発させる。一方、炭素数が4以下の鎖式化合物においては、例えば、ブタン酸塩及び酢酸塩等で試作したが、炭素数の減少に伴って、親油基としての炭素鎖の働きが弱まり、送給用潤滑油をワイヤ表面に固定させる糊剤としての効果が期待できない。従って、炭素数が5乃至10個の鎖式化合物とした。こうすることにより、スプリングライナー内部で発生するような比較的低圧力の摩擦では潤滑性を有し、送給ローラによる高圧力の摩擦では潤滑膜が破れるような特性を持つ理想的な皮膜が得られる。
【0020】
以上のように、低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩は潤滑物質をワイヤ表面に固定する糊剤として極めて有効であり、ワイヤの送給性を向上させ、長時間に亘る溶接においてもスプリングライナー内部等に詰まりが発生せず、ワイヤの送給が安定して且つ低い送給抵抗で溶接することができる。このような、低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩は糊剤として使用するのであるから、理想的には、伸線後のワイヤ表面を洗浄し、低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩を塗布した後に、送給用潤滑油及び潤滑性粒子を塗布すべきであるが、伸線の最終部で伸線潤滑剤として低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩を使用することによりこれを塗布してもよい。また、表面処理工程を簡略化するために、低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩、潤滑油及び潤滑性粒子を混合して同時に塗布することもできる。更にまた、二硫化モリブデン等の粒子は、一般的に、優れた極圧潤滑剤となるので、二硫化モリブデン等を使用して伸線加工し、その上に低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩と潤滑物質との混合物を塗布しても良い。
【0021】
塗布方法はバフ等を使用して接触式でワイヤ表面に塗布してもよいし、ワイヤを液中に浸漬した後にスキンパスをかけて均一化してもよく、また、静電的に非接触で塗布してもよい。低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩、潤滑油及び潤滑性粒子が均一に溶解又は分散液となる場合には、一度に塗布してもよい。均一な溶解分散ができなければ、別々に塗布してもよい。また、低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩、潤滑油及び潤滑性粒子からなる液の安定性及び塗布作業の安定性を向上させるため、前記塗布液にグリコール類又はエステル類等の界面活性剤を添加してもよい。
【0022】
なお、ワイヤ表面にカルボン酸及び/又はカルボン酸金属塩がワイヤ10kg当たり0.001乃至2g存在し、ワイヤ表面のカルボン酸及び/又はカルボン酸金属塩と潤滑油及び潤滑性粒子との付着物の合計重量がワイヤ10kg当たり0.1乃至5gであれば、ワイヤの送給性が良好であり、コンジットチューブ等の内部の詰まり量は長時間の溶接を行っても問題ないレベルとなる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例に係る溶接用ワイヤを製造し、その特性を比較例と比較した結果について説明する。
【0024】
先ず、下記表1に示す組成を有する記号M1及びM2の金属外皮(フープ)に、下記表2に示す組成を有する記号F1及びF2の炭素鋼用フラックスを組み合わせて充填して原線とした。そして、これを伸線加工することにより、ワイヤ径が1.2、1.4及び1.6mmである炭素鋼用フラックス入りワイヤを作製した。但し、下記表2に示すように、フラックスは、Fe粉末の重量%を増減させており、ワイヤ全重量あたりのフラックス重量(フラックス率)が12及び14重量%となるように、フープ内部に充填した。
【0025】
【表1】
Figure 0003631357
【0026】
【表2】
Figure 0003631357
また、下記表3に示す組成を有する記号B1及びB2の原線を伸線することにより、ワイヤ径が0.8乃至1.6mmである炭素鋼用ソリッドワイヤを作製した。
【0027】
【表3】
Figure 0003631357
【0028】
更に、下記表4に示す組成を有する記号M3及びM4のフープに、下記表5に示す組成を有する記号F3及びF4のステンレス鋼用フラックスを、組み合わせて充填して原線とした。そして、これを伸線加工することにより、ワイヤ径が1.2乃至1.6mmであるステンレス鋼用フラックス入りワイヤを作製した。但し、フラックスは、ワイヤ全重量あたりのフラックス重量(フラックス率)が15乃至25重量%となるように、フープ内部に充填した。
【0029】
【表4】
Figure 0003631357
【0030】
【表5】
Figure 0003631357
【0031】
更にまた、下記表6に示す組成を有する記号B3乃至B5の原線を伸線することにより、ワイヤ径が0.8乃至1.6mmであるステンレス鋼用ソリッドワイヤを作製した。
【0032】
【表6】
Figure 0003631357
【0033】
次に、得られた炭素鋼用フラックス入りワイヤ、炭素鋼用ソリッドワイヤ、ステンレス鋼用フラックス入りワイヤ及びステンレス鋼用ソリッドワイヤのうち、複数本のワイヤを選択し、カルボン酸及び/又はカルボン酸金属塩としては下記表7に示すように、低価格であり、工業的に最も利用しやすいペンタン酸、オクチル酸、カプリン酸及びこれらの金属塩を選択し、前記カルボン酸及び/又はカルボン酸金属塩に送給用潤滑油と潤滑性粒子とを混合し、この混合液をワイヤ表面に塗布した。送給用潤滑油としては、動物油、植物油、鉱物油及び合成油からなる群から選択された潤滑油又は混合油を使用し、潤滑性粒子としては二硫化モリブデン、二硫化タングステン及び四弗化エチレンからなる群から選択された潤滑物質又はその混合物を使用した。比較例としては、高級脂肪酸塩であるステアリン酸K及びステアリン酸Na並びに酢酸Kを使用してワイヤ表面に塗布した。
【0034】
【表7】
Figure 0003631357
【0035】
なお、ワイヤ表面のカルボン酸及び/又はカルボン酸金属塩の存在の有無は、ワイヤを揮発性有機溶媒で洗浄し、この洗浄後の前記溶媒液を核磁気共鳴分析及び質量分析装置等で分析することにより、潤滑油及び潤滑性粒子とカルボン酸及び/又はカルボン酸金属塩とを分離することにより、確認した。
【0036】
本実施例としては、カプリン酸については、これらの鎖式化合物と潤滑物質(潤滑油及び潤滑性粒子)との混合液でワイヤ表面に塗布し、それ以外の鎖式化合物については、ワイヤ表面に鎖式化合物を塗布し、その後、潤滑物質を選択的に塗布した。
【0037】
その後、自動溶接機にて30分間の連続溶接を実施し、ワイヤ表面の付着物によるワイヤの送給性への影響について調査した。ワイヤの送給性は、送給抵抗、送給抵抗の安定性及びワイヤ表面の付着物等の剥離により生じるスプリングライナー内部の堆積物の詰まり量を調査することにより評価した。
【0038】
図2は本実施例に使用した自動溶接機を示す模式図である。図2に示すように、溶接用ワイヤが巻回されたスプール10がその軸を水平にして配置されており、ワイヤを送給する1対の送給ローラ8がスプール10に隣接して設置されている。この送給ローラ8はワイヤ供給モータ7により回転駆動される。送給ローラ8から繰り出された溶接用ワイヤの水平延長上にコンジットケーブル9が配置されており、このコンジットケーブル9の途中にはターン12が2つ設けられており、その先端にトーチ11が設置されている。
【0039】
この自動溶接機により、スプール10から供給された溶接用ワイヤは送給ローラ8によって水平に送出され、コンジットケーブル9を介し、2個のターン5を経て、トーチ11に到達して溶接に供される。
【0040】
送給抵抗及びコンジットチューブのスプリングライナー内の詰まり量は、コンジットケーブル9の長さを6mとし、2個のターン12の直径を400mmとして溶接することにより測定した。送給抵抗は溶接時の送給ローラ8がワイヤから受ける送給方向とは逆向きの力(矢印6)で評価し、連続溶接時における送給抵抗の経時的安定性を評価し、スプリングライナー内部の潤滑物質の詰まり量は、30分間の連続溶接を実施した後のスプリングライナーの重量増加で評価した。
【0041】
ワイヤの作製条件及びワイヤ表面の付着物等を下記表8に示し、ワイヤの送給性の評価結果を下記表9に示す。
【0042】
【表8】
Figure 0003631357
Figure 0003631357
Figure 0003631357
【0043】
【表9】
Figure 0003631357
【0044】
【表10】
Figure 0003631357
【0045】
上記表9に示すように、本実施例においては、ワイヤ表面に低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩が付着し、潤滑油又は潤滑油及び潤滑性粒子がワイヤ表面に保持付着されているので、ワイヤの送給性が向上すると共に、ワイヤの送給性が安定化し、スプリングライナー内部における潤滑物質の詰まり量を抑制することができた。特に、実施例No.1,3、4,6〜8,10,11,14,20〜26,29,30は、ワイヤ表面に低級脂肪酸又は低級脂肪酸塩が存在し、潤滑油及び潤滑性粒子からなる付着物の合計重量がワイヤ10kg当たり0.1乃至5gであるので、ワイヤの送給性が極めて安定した。
【0046】
これに対して、比較例No.31及び35はステアリン酸Kがワイヤ表面と潤滑油とを化学的に結合させることができず、ワイヤ送給の安定性が悪く、スプリングライナー内部に潤滑物質が堆積して詰まり量が増加した。比較例No.32、33、34、36及び38は潤滑性粒子が潤滑油の濡れ性のみに支配されてワイヤ表面に付着しているので、スプリングライナー内部に潤滑物質が堆積して詰まり量が増加した。また、比較例No.37はステアリン酸Naがワイヤ表面と潤滑油とを化学的に結合させることができず、潤滑性粒子が潤滑油の濡れ性のみに支配されてワイヤ表面に付着しているので、スプリングライナー内部に潤滑物質が堆積して詰まりが発生した。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、炭素数が5乃至10の鎖式化合物をワイヤ表面に存在させることにより、潤滑油及び/又は潤滑性粒子からなる潤滑物質をワイヤ表面に化学的に結合させることができ、ワイヤ表面の潤滑物質の剥離を抑制することができ、ワイヤの送給性を向上させ、長時間の溶接においても潤滑物質の詰まりによる不具合が発生せずにワイヤの送給性を安定化させることができる。このようにして、潤滑物質がワイヤ表面に存在することにより、ワイヤの送給安定性が極めて優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤ表面に配向した炭素数が5乃至12個の鎖式化合物の潤滑油及び潤滑性粒子を固定する機構を示す模式図であり、(a)は無メッキの溶接用ワイヤの場合、(b)はメッキが施されている溶接用ワイヤの場合である。
【図2】本発明の実施例に使用した自動溶接装置の模式図である。
【符号の説明】
1a、1b;ワイヤ表面
2a、2b;鎖式化合物
3a、3b;炭化水素鎖
4a、4b;潤滑油
5a、5b;潤滑性粒子
6;送給抵抗方向
7;ワイヤ送給モータ
8;ローラ
9;コンジットケーブル
10;スプール
11;トーチ
12;ターン
15;メッキ層

Claims (7)

  1. ワイヤ表面に、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、セカノイック酸、カプリン酸及びデカン酸からなる群から選択された直鎖又は側鎖構造を有する炭素数が5乃至10個のカルボン酸、及び/又はLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Sn、Cs、Pb及びCeからなる群から選択された金属と前記カルボン酸との塩の1種又は2種以上からなるカルボン酸金属塩と、二硫化モリブデン、二硫化タングステン及び四弗化エチレンからなる群から選択された少なくとも1種以上の潤滑性粒子と、動植物油、鉱物油及び合成油からなる群から選択された少なくとも1種以上の潤滑油とが存在することを特徴とする溶接用ワイヤ。
  2. 前記カルボン酸及び/又は前記カルボン酸金属塩が、ワイヤ表面に総量でワイヤ10kg当たり0.001乃至2g付着していることを特徴とする請求項1に記載の溶接用ワイヤ。
  3. 前記カルボン酸及び/又は前記カルボン酸金属塩並びに前記潤滑性粒子及び前記潤滑油が、ワイヤ表面に総量でワイヤ10kg当たり0.1乃至5g付着していることを特徴とする請求項2に記載の溶接用ワイヤ。
  4. 炭素鋼用又はステンレス鋼用のソリッドワイヤであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の溶接用ワイヤ。
  5. 炭素鋼用又はステンレス鋼用のフラックス入りワイヤであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の溶接用ワイヤ。
  6. 表面に銅メッキを有しないことを特徴とする請求項4又は5に記載の溶接用ワイヤ。
  7. 表面に銅メッキを有することを特徴とする請求項4又は5に記載の溶接用ワイヤ。
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