JP3734352B2 - 鋼用メッキ無し溶接ワイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、MlG及びMAG(CO2を含む)溶接等の半自動溶接用に使用される鋼用メッキ無し溶接ワイヤに関し、更に詳述すれば、コンジットライナー内の滑り性を促進し、長時間溶接時の送給性及び使用開始時のコンジットチューブの送給性が優れたソリッドワイヤ及びフラックス入りワイヤからなる鋼用メッキ無し溶接ワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、MIG及びMAG(CO2を含む)溶接等に使用される溶接用ワイヤは、通常、スプール若しくはボビンに巻装された状態で、又は、ぺイルパックといわれる円筒容器に装填された状態で溶接に供せられる。これらのワイヤが使用されるときは、それぞれの所定の溶接条件に合致するように送給モータによりコンジットチューブを通じて溶接部まで供給される。
【0003】
近時、溶接作業においても、高能率化及び省人化の要請により、被覆アーク溶接棒が使用されていた溶接部位も、半自動化又は自動化溶接に変わりつつある。また、特に、造船の分野においても、半自動溶接が行われる比率が増大し、溶接用ワイヤの使用量が増大している。造船工程において、溶接ワイヤを使用する際には、溶接部が広範囲に及ぶため、溶接用ワイヤが長いコンジットチューブの中を通過することとなり、長いものでは30mにも及ぶものもある。
【0004】
このような場合においても良好な溶接を行うためには、溶接用ワイヤを円滑に送給することが必須の条件である。ワイヤの円滑な送給が妨げられると、安定した溶接が困難になり、スパッタの増加、ビード外観不良及び溶け込み不良等の溶接不良が発生する。更に、未使用のコンジットチューブを使用したときには、相対的にワイヤとのなじみに時間がかかることから、円滑な送給が満足できない状況にあることが従来指摘されていた。
【0005】
このような問題点に対しては、従来からワイヤ表面に亀裂状の割れを設け、この割れ部に送給潤滑油を保持させて送給性を向上させる技術が提案されている(特開昭58−61592号、特公平5−21674号等)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の溶接ワイヤでは、長時間溶接した場合にワイヤ表面に不可避的に残留した付着物の他に、鉄粉及びCuメッキ粉等がコンジットチューブ内に堆積して、ワイヤ送給性を著しく劣化させるため、十分に満足のいくワイヤとはいい難かった。Cuメッキ粉を減少させるために、特開平6−218574においては、表層粒界酸化層と結晶粒径との関係を制御させる技術が開示されており、特公平242039にはCuメッキ自体を形成しないようにする技術が提案されている。しかし、これらの従来技術の場合も送給性が十分ではなかった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、コンジットライナー内の滑り性を向上させ、長時間溶接時の送給性及びコンジットチューブの送給性が優れた鋼用メッキ無し溶接ワイヤを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る鋼用メッキ無し溶接ワイヤは、ワイヤ10kgあたり通過したときのコンジットライナ内の詰まり量が0.005乃至0.050g/10kgであり、その詰まり物の40質量%以上がMoS2になるように、ワイヤ表面に、電荷を保持させたMoS2を液中に分散させた分散液を吹き付けて、MoS 2 をワイヤ10kg当たり0.01乃至0.5g付着させ、このMoS2は粒子塊の大きさが1乃至50μmであって、ワイヤ表面に斑点状に、且つ、連続するワイヤ表面視野1.5mm2範囲内に、少なくとも1個以上付着させたことを特徴とする。
【0009】
この鋼用メッキ無し溶接ワイヤにおいて、ワイヤ表面にKを1乃至10ppm付着させることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本願発明者等は上記の問題点を解決すべく、銅粉を減少させるために銅メッキを無くすだけでなく、比較的に脱落しやすいようにMoS2をワイヤ表面に付着させることにより、コンジットチューブ内で積極的にMoS2を脱落させ、コンジットチューブ内面をMoS2で被覆して、送給性を向上させるのみならず、長時間溶接時での溶接作業性を高めることができることを見いだした。従来、MoS2を残留させたワイヤは数多く提案されてきてはいるものの、乾式伸線潤滑剤にMoS2が用いられたり、伸線最終工程でスキンパス油内にMoS2を混合させたりしているので、ワイヤ表面に比較的強固に残留していた。従って、本発明が目指す効果は得られなかった。
【0011】
一方、本発明の溶接ワイヤを使用すると、新品のコンジットチューブの使用開始からのいわゆる“なじむ”までの時間が短く、安定した溶接が早期に実現できるというメリットもある。また、銅粉以外に詰まるものとして鉄粉も考えられ、この量が少ない方が送給性には良い。そこで、詰まり物内の鉄粉量を抑制することも送給性には効果がある。
【0012】
更に、発明者らは、鋭意研究することにより、ワイヤ表面に付着するMoS2の状態として、均一に分布した方がワイヤの送給性がより優れていることを見いだした。また、存在するMoS2塊の大きさ(面積)及びその分布状態にも適当な範囲が存在することがわかった。
【0013】
なお、MoS2ほどの効果はないものの、WS2、C(グラファイト)等にも同様の効果がある。
【0014】
また、ワイヤ表面にMoS2を均一に分布させる具体的な方法としては、電荷を保持させたMoS2分散液(水系、油系)をワイヤに吹き付ける方法がある。
【0015】
本願発明者らが鋭意研究を進めた結果、詰まり量を0.005乃至0.050g/10kg、且つ、その詰まり物の40%以上をMoS2とすると、コンジットチューブ内の滑り性を促進し、且つ長時間溶接時の送給性を格段に向上させることができることを見いだした。また、MoS2の均一塗布性を考慮し、ワイヤ表面MoS2の粒子塊の大きさが1乃至50μmで、且つ、連続するワイヤ表面視野1.5mm2範囲内に、このMoS2を少なくとも1個以上斑点状に付着させれば送給性を更に向上させることができることを見いだした。更に、ワイヤ表面に1乃至10ppmのKがMoS2と共存する場合、MoS2の分布状態を安定化及び均一化する効果があることもわかった。
【0016】
なお、ワイヤ重量当たりのMoS2量は、本発明に直接影響はなく、どの程度MoS2が脱落するかが重要であるが、送給性、通電性及び外観等を考慮すると、0.01乃至0.5g/10kg程度が適当である。
【0017】
また、詰まり物の中には、不可避的に、鉄粉、油類(送給潤滑剤・界面活性剤・有機K)、(石鹸類Ca石鹸・Na石鹸)・その他(CaCO3、TiO2、PTFE等、伸線潤滑剤組成物)などがMoS2以外に含有されることがある。
【0018】
上述のような状態でMoS2がメッキワイヤに残留している場合においても、上記のような効果は認められるものの、Cu粉自身が詰まってしまうことにより、効果が小さいことと、メッキ成分である銅とMoS2が反応してワイヤ外観を著しく悪化させることからメッキワイヤへの本技術の適用は現実的ではない。
【0019】
なお、従来のソリッドワイヤ及びフラックス入りワイヤの詰まり量は0.005g/10kg以下程度であり、詰まり量が多いと長時間溶接時の送給性が劣るため、従来、この詰まり量を抑制することが技術的常識であった。本発明はこのような従来の技術的常識に反する着想に基づいて完成されたものである。
【0020】
次に、本発明における詰まり量及び詰まり物のうちのMoS2の割合の数値限定理由について説明する。
【0021】
詰まり量
ワイヤ10kgあたり通過したときのコンジットライナ内の詰まり量が0.005g/10kgより少ない場合、詰まり物の40質量%以上がMoS2であっても、コンジットチューブ内の滑り性の効果が充分でなく、ワイヤ送給性に充分な効果を発揮しない。一方、詰まり量が0.05g/10kgより多い場合は、MoS2とはいえ、ライナー内の詰まり量が送給性を劣化させてしまい、溶接作業性を劣化させてしまう。
【0022】
また、詰まり量が適正な範囲(0.005乃至0.050g/10kg)であっても、詰まり物のMoS2量が40重量%より少ない場合、ワイヤ送給性には充分な効果を発揮せず、ワイヤ送給性には十分な効果を発揮しない。ワイヤ送給性を更に考慮すると、0.010乃至0.040g/10kgで、詰まり物のうち、MoS2量が40重量%以上であるのがより好ましい範囲である。
【0023】
表面のMoS 2 塊の分布状態及び大きさ
MoS2塊が連続するワイヤ表面視野1.5mm2 の範囲内に、1個未満の場合、MoS2の均一性に欠け、良好な送給性が保持されない。また、MoS2塊の大きさは1〜50μmが良好な送給性を示すが、50μmより大きくなると、逆に送給性及び通電性が劣化する。
【0024】
K量
KはMoS2の塗布液への均一な分散に有効である。Kが1ppmより少ない場合、MoS2の分散効果はなく、10ppmより多い場合は、逆に送給性及び通電性を劣化させてしまう。使用するK化合物としては、無機系のK化合物よりも有機系K化合物の方が有効である。
【0025】
次に、各パラメータの測定方法について説明する。
【0026】
ワイヤ10kgあたりの詰まり量
図1はワイヤ送給装置を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。スプール1から巻き解かれたワイヤ3はコンジットライナ2内を進行する。このコンジットライナ2は2カ所にて直径300mmの円を描いている。ワイヤ3はSUSチューブ5及びインレットガイド4を介してコンジットライナ2に入り、コンジットライナ2の経路▲1▼、経路▲2▼、経路▲3▼、経路▲4▼、経路▲5▼、経路▲6▼を通って進行する。
【0027】
そして、本発明においては、ワイヤを10kgインチング送給したときのコンジットライナ2、SUSチューブ5及びインレットガイド4の重量の増加分を求め、これを詰まり量とする。
【0028】
なお、送給速度・コンジットライナ・SUSチューブ・インレットガイドは各線径の標準的な溶接条件に合致したものとする。例えば、直径1.2mmの場合の送給量は10〜15m/分程度である。また、図1のワイヤ経路のループ系は約300mmとする。
【0029】
詰まり物の分析
詰まり試験後のコンジットライナ2を有機溶媒に浸漬し、超音波にて洗浄して詰まり物を抽出し、ポアサイズが0.2μmのメンブレンフィルタにて濾過し、潤滑油を除去した後、残留物を分析する。
【0030】
残留物の分析はHClに2〜3分間浸漬し、溶液を濾過した後、硝酸+硫酸+過塩素酸溶液中で加熱処理し、原子吸光又はICPにてMoを分析し、検出された全てのMoをMoS2量に換算した。
【0031】
表面のMoS 2 塊の分布状態及び大きさ
ワイヤ表面を写真、SEM又はマクロスコープ等で観察し、連続するワイヤ表面視野1.5mm2の範囲内に、MoS2塊が少なくとも1個以上存在するか否かを確認する。また、このMoS2塊の大きさを図2に示すようにして実測する。即ち、直交する2方向についてMoS2塊の寸法a及びbμmを測定し、その平均値(a+b)/2をMoS2の粒子径とする。この粒子塊がMoS2であるかどうかは、EPMAで分析することにより、判断することができる。
【0032】
K量
ワイヤ約50gをサンプリングし、HCl溶液中にに2〜3分間浸漬し、濾過した後、濾液中に含まれるKを原子吸光により分析した。K化合物の形態によっては、濾紙上に採取されたK化合物を灰化処理又は、硫酸若しくは過塩素酸白煙処理により、K化合物を水溶液化した後、原子吸光によりKを分析した。K量は濾液中のK量と濾紙に採取されたK量を合わせた量である。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例についてその比較例と比較して説明する。なお、ワイヤ送給性は図3に示す送給系により測定した。溶接ワイヤはスプール1に巻回されており、このスプール1から巻き解かれた溶接ワイヤは送給機12から長さ6mのコンジットライナ2内に進入し、コンジットライナ2に設けられている3個のローラにより構成される首締め部13及び1ターン部14を経由して溶接トーチ15に送給される。
【0034】
ワイヤがこのコンジットライナ2、首締め部13及び1ターン部14を通過したときの送給抵抗値(kgf)をロードセルを使用して求め、この送給抵抗値をもとに、3kgf以下の場合を◎、3kgfより大きく5kgf以下の場合を○、5kgfより大きい場合を△として送給性を評価し、これを下記表2に記載した。◎+は、平均として3kgf以下の抵抗値を示すが、その変動幅が少ないことを意味している。
【0035】
MoS2の分布状態は、連続するワイヤ表面視野1.5mm2範囲内に少なくとも1個以上存在する場合をA、連続するワイヤ表面視野1.5mm2範囲内に1個未満存在する場合をBとした。また、MoS2塊の大きさが1〜50μmの場合を*、MoS2塊の大きさが50μmより大きい場合を#、MoS2塊の大きさが1μm未満の場合をbとした。なお、実施例及び比較例の試験に供したワイヤは、JISZ3312 YGW11、YGW12に示されるソリッドワイヤ(実施例1)及びJISZ3312 YFW−C50DRに示されるFCW(実施例2)について行った。ソリッドワイヤに関しては、本願発明は特にワイヤ成分に影響されるものではない。代表的な成分例としては、YGW11はC=0.05%、Si=0.68%、Mn=1.6%、Ti=0.2%、残部Feであり、YGW12はC=0.10%、Si=0.60%、Mn=1.4%、残部Feである。また、油量:0.8〜1.2g/10kg 、FCWに関しては、シーム部が存在していること及び拡散性水素量の点から、油量をソリッドワイヤに比較して少な目にした。油量としては、0.3〜0.5g/10kgとした。またフラックス充填率は約13%であり、Al=0.03%、Ti=0.05%、残部Feであり、フープ成分の代表例はC=0.05%、Si=0.15%、Mn=0.35%、フラックス成分の代表例はメタル=10〜50%、フッ化物=2〜3%、スラグ形成剤=20〜50%、その他=5〜10%である。ソリッドワイヤの実施例及び比較例の各パラメータを表1に、またその特性を下記表2に示す。また、FCWの実施例及び比較例を下記表3及び表4に示す。なお、詰まり物中のMoS2量及びMoS2の分布状態、K量はワイヤに塗布する油の化学組成及び静電塗布条件により制御した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
試験No.1は従来例(メッキワイヤ)であり、Cu粉の詰まりが発生し、送給性が不良(特に、長時間溶接)であった。試験No.2はメッキワイヤにMoS2を塗布した比較例であるが、詰まり物中のMoS2量は増加するものの、Cu粉の詰まりが発生し、送給性は不十分であった。試験No.3はノーメッキワイヤで詰まり量が0.005g/10kgより少なく、詰まり物中のMoS2量が40重量%より少ないものであり、送給性が不十分であった。試験No.4はノーメッキワイヤでMoS2を塗布した比較例であるが、詰まり量が0.005g/10kgより少ないので、詰まり物中のMoS2量が40重量%以上であっても、送給性は不十分である。
【0039】
試験No.5及び6はノーメッキワイヤにMoS2を塗布した参考例である。この参考例(試験No.5及び6)は詰まり量が0.005g/10kg以上であり、詰まり物中のMoS2量が40重量%以上であるため、送給性が優れていた。
【0040】
試験No.7〜9はノーメッキワイヤにMoS2を塗布し、この詰まり量が0.005g/10kg以上、詰まり物中のMoS2量が40重量%より少ない比較例であり、送給性が不十分である。試験No.10は詰まり物中のMoS2量が40重量%以上であるが、詰まり量が0.05g/10kg以上である比較例(ノーメッキワイヤMoS2塗布)であり、送給性が不十分である。
【0041】
試験No.11及び12は詰まり量が0.005g/10kg以上のより好ましい範囲にある参考例であり、詰まり物中のMoS2量も40重量%以上で送給性がより優れた例である。試験No.13.14は、試験No.5.6に対し、MoS2を離散的に付着させた実施例(ノーメッキワイヤ 離散的にMoS2塗布)であり、送給性が優れていた。試験No.15はNo.13に対しK化合物がKとして0.5ppm付着している実施例(ノーメッキワイヤ 離散的にMoS2塗布、有機K塗布0.5ppm)であるが、Kの効果は発揮されない。試験No.16は試験No.13に対し、K化合物がKとして2ppm付着している実施例(ノーメッキワイヤ、離散的にMoS2塗布、有機K塗布2ppm)であり、特に送給性が優れていた。試験No.17はNo.13に対しK化合物がKとして9ppm付着している実施例(ノーメッキワイヤ、離散的にMoS2塗布、有機K塗布2ppm)であり、特に送給性が優れていた。
【0042】
試験No.18は試験No.13に対しK化合物がKとして11ppm付着している実施例(ノーメッキワイヤ 離散的にMoS2塗布、有機K塗布11ppm)であり、送給性及び通電性が逆に劣化した。試験No.19は試験No.5に対し、MoS2塊の大きさが50μmより大きい場合の参考例(ノーメッキワイヤ、MoS2塗布、MoS2塊大きさ;50μmより大きい)であるが、送給性及び通電性への影響は見られなかった。試験No.20は試験No.13に対しMoS2塊の大きさが50μmより大きい例(ノーメッキワイヤ 離散的にMoS2塗布、MoS2塊大きさ 50μmより大きい)であり、送給性及び通電性は、試験No.13に比較し劣化した。試験No.21は、試験No.5及び6と同様の比較例である。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
試験No.1は従来例(FCW)であるが、Fe粉の詰まりが60重量%以上、MoS2が10重量%より少ないため、送給性が不良(特に、長時間溶接時)であった。
【0046】
試験No.2は比較例(FCW)であるが、Fe粉の詰まりが60重量%以上、MoS2が10重量%より少ないため、送給性が不良(特に、長時間溶接時)であった。
【0047】
試験No.3は比較例(MoS2付着)であるが、詰まり量が0.005g/10kgより多く、詰まり物中のMoS2量が40重量%より少ないため改善されるが、送給性は不十分であった。
【0048】
試験No.4は参考例(MoS2付着)であるが、詰まり量が0.005g/10kgより多く、詰まり物中のMoS2量が40重量%以上であるため、送給性が良好であった。
【0049】
試験例No.5は実施例(離散的にMoS2付着)であるが、詰まり量が0.005g/10kg以上、詰まり物中のMoS2量が40重量%以上であるため、MoS2の分布状態が好ましい状態であり、送給性はより良好である。
【0050】
試験例No.6は参考例(MoS2付着、MoS2塊大きさ 50μmより大きい)であるが、詰まり物中のMoS2量が40%以上あり、詰まり量もより好ましい範囲にあるので送給性はより良好であった。
【0051】
試験例No.7は実施例(離散的にMoS2付着、有機K使用5ppm)であるが、No.6で有機Kが5ppm付着しており、MoS2の分布状態も好ましい状態である。そのため表2の中では極めて良好な送給性が得られている。
【0052】
試験例No.8は比較例(詰まり物中のMoS2量少ない)であるが、詰まり物量は、0.0351と本発明範囲内であるが詰まり物中のMoS2量が10.2%と低く良好な送給性が得られなかった。
【0053】
試験例No.9は参考例(有機K使用5ppm)であるが、詰まり量、詰まり物中のMoS2量が本発明範囲内であり、且つ、有機K化合物が用いられているのでMoS2の分散が良好となり送給抵抗の変動が少なくなった例である。
【0054】
試験例No.10は比較例であるが、詰まり物中のMoS2量は本発明範囲内であるが、詰まり量が過多であるので長時間連続溶接困難となった例である。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、コンジットライナー内の滑り性を促進し、長時間溶接時の送給性及び未使用コンジットチューブの送給性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】詰まり量測定方法を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】MoS2塊の粒径測定方法を示す図である。
【図3】ワイヤ送給系を示す模式図である。
【符号の説明】
1:スプール
2:コンジットライナー
3:溶接ワイヤ
4:インレットガイド
5:SUSチューブ
12:送給機
13:首締め部
14:1ターン部
15:溶接トーチ
Claims (2)
- ワイヤ10kgあたり通過したときのコンジットライナ内の詰まり量が0.005乃至0.050g/10kgであり、その詰まり物の40質量%以上がMoS2になるように、ワイヤ表面に、電荷を保持させたMoS2を液中に分散させた分散液を吹き付けて、MoS 2 をワイヤ10kg当たり0.01乃至0.5g付着させ、このMoS2は粒子塊の大きさが1乃至50μmであって、ワイヤ表面に斑点状に、且つ、連続するワイヤ表面視野1.5mm2範囲内に、少なくとも1個以上付着させたことを特徴とする鋼用メッキ無し溶接ワイヤ。
- ワイヤ表面にKを1乃至10ppm付着させたことを特徴とする請求項1に記載の鋼用メッキ無し溶接ワイヤ。
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