JP2001160386A - 円筒型蓄電池 - Google Patents

円筒型蓄電池

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、極板群を巻回した円筒型密閉鉛蓄
電池において、極板とセパレータとの間に隙間を生じさ
せることなく、大電流放電性能や大電流での充放電サイ
クル寿命性能の優れた電池を提供することであることを
課題とする。 【解決手段】 上記課題を解決するために、本発明によ
る円筒型密閉鉛蓄電池は、帯状の極板の集電耳部分に、
少なくとも1箇所以上の、望ましくは耳幅の1/10〜
1/3倍の間隔に、巻きの中心軸にほぼ平行なスリット
または溝を設けることにより、集電耳部分に集電体本体
とほぼ同じ曲率をつけることが可能となり、巻き取り時
に発生していた極板とセパレータとの間の隙間の生成を
解消することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、円筒型蓄電池に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から蓄電池は、エレメントの形状か
ら大きく二つに区分できる。一つは、UPS用や電気自
動車用等として普及している角型のものであり、もう一
つは、円筒型のものである。前者は、平板状の集電体に
活物質を充填した正極板と負極板とを極板間にセパレー
タを介在させて交互に所定枚数を積層したものであり、
後者は、帯状の集電体に活物質を充填した正極板と負極
板とを極板間に帯状のセパレータを介在させて螺旋状に
巻回したものである。円筒型蓄電池は、エレメントを渦
巻き状に巻回して形成するため、角型蓄電池に比べて薄
い極板を強く圧迫して極板群を形成することが可能とな
り、大電流放電特性や大電流での充放電サイクル寿命性
能に優れた蓄電池を製造することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の円筒型蓄電池
は、電池の軽量化や小型化の目的で集電体部品の重量を
できる限り小さく抑えるために、一般的には、メーカ固
有の耳幅の集電耳を帯状の集電体(以下極板と呼ぶ)に
形成し(図1)、巻き取り後に溶接等により一体化して
いる。
【0004】ところが、この集電耳の一体化を行うため
には、集電耳部分を、極板群を渦巻き状に巻き取る際
に、極板から突出させておく必要がある。しかし、集電
耳部分を極板から突出させることにより、渦巻き状に巻
き取る際に、集電耳部分に圧迫を加わえることができな
くなるため、集電耳部分に極板と同じ曲率をつけること
が困難となる。
【0005】従って、巻き取り前の極板の平板形状が集
電耳部分と極板との付け根部分に残り、極板とセパレー
タとの間に隙間を生じさせており、その結果、その隙間
による抵抗が大電流放電性能や大電流での充放電サイク
ル寿命性能に悪影響を及ぼすため、期待していた円筒型
蓄電池の性能を十分に発揮できないといった問題があっ
た。
【0006】本発明が解決しようとする課題は、上述の
ように、極板とセパレータとの間に隙間を生じさせるこ
となく、大電流放電性能や大電流での充放電サイクル寿
命性能の優れた円筒型蓄電池を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1記載の発明の円筒型蓄電池では、帯状の正
・負極両極板間にセパレータを介在させ、渦巻き状に巻
回して形成したエレメントを電槽に収容した円筒型密閉
鉛蓄電池において、帯状の極板の集電耳部分に、巻回の
中心軸にほぼ平行なスリットまたは溝を少なくとも1箇
所以上設けたことを特徴する。
【0008】また、請求項2に記載の発明では、請求項
1に記載の発明において、前記集電耳部分に設ける溝
を、渦巻き状に巻回した時の巻回の中心軸に対向する面
に設けたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明による円筒型蓄電池は、帯
状の極板の集電耳部分に、少なくとも1箇所以上の、望
ましくは耳幅の1/10〜1/3倍の間隔に、巻きの中心
軸にほぼ平行なスリットまたは溝を設けることにより、
集電耳部分に集電体本体とほぼ同じ曲率をつけることが
可能となり、巻き取り時に発生していた極板とセパレー
タとの間の隙間の生成を解消することが可能となるた
め、大電流放電性能や大電流での充放電サイクル寿命性
能を向上させることが可能となる。
【0010】
【実施例】以下に本発明の一実施例を鉛蓄電池について
説明する。円筒型密閉鉛蓄電池は、二酸化鉛を主材とす
る帯状の正極板、金属鉛を主材とする帯状の負極板およ
び帯状の保液性ガラスセパレータからなる発電要素を、
電槽内に装填したものである。正・負極板には巻回しや
すくするためエキスパンド格子に活物質ペーストを充填
したものを使用し、セパレータには角型密閉鉛蓄電池で
一般的に用いられているガラスセパレータを使用し、極
板間にガラスセパレータを介在させた状態にて、通常の
方法で螺旋状に全体を巻回し、直径45mmのエレメン
トを作製し、電槽に収容後ふたを封止した。
【0011】図2は、従来の円筒型密閉鉛蓄電池の一例
を示す断面図であり、これを電池Aとする。集電耳を形
成している箇所の極板とセパレータとの境界には、巻き
取り前の極板の平板形状が集電耳部分と極板との付け根
部分に残っており、隙間が生じていることがわかる。
【0012】図4および図5は、本発明の円筒型密閉鉛
蓄電池で用いた集電体の耳部分を拡大したものである。
図4は、集電体の耳部分に巻きの中心軸にほぼ平行とな
る、耳幅の1/4倍の間隔にスリットを設けたものであ
り、図5は、同様の間隔で、スリットのかわりに溝を巻
きの中心側の面に設けたものである。図3は、図4で示
した集電体を用いて作製した本発明による円筒型密閉鉛
蓄電池の断面図であり、断面の様子は、図5で示した集
電体を用いた場合においても同様であった。
【0013】図4の集電体を用いて作製したものを電池
B、図5の集電体を用いて作製したものを電池Cとす
る。集電耳部分にスリットや溝を設けることにより集電
耳を形成している部分の極板とセパレータとの境界には
ほとんど隙間が生じていないことがわかる。図中の1は
帯状の集電体の本体部分、2は集電耳部分、3および4
は帯状の集電体の本体部分に活物質を充填して作製した
正負極板、5は帯状のガラスセパレータである。
【0014】上記3種の電池(A、B、C)を通常の製
法に従って電解液の注液および化成を行い、3hR容量
が約10Ahの円筒型密閉鉛蓄電池を製作した。これら
の電池を3時間率容量値の6倍の大きさの電流で充放電
を5秒間ずつ繰り返す寿命試験に供した。なお、寿命試
験は周囲温度を25℃に制御して行った。寿命試験中5
000サイクル毎に電池容量を測定し、初期のそれの8
0%以下となった時点を寿命と判定した。寿命試験中の
電池容量の推移を図6に、寿命試験中の内部抵抗の推移
を図7に示す。
【0015】本発明により製作した電池Bおよび電池C
は、従来電池Aの約1.5倍である9〜10万サイクル
の寿命性能を示した。また、電池BおよびCの内部抵抗
はサイクルが進むにつれて、緩やかに増加しているのに
比べ、電池Aのそれは比較的サイクル初期から急速に増
大していた。
【0016】一般に、ガラスセパレータに電解液を保持
させる方式(いわゆるリテーナ式)の密閉鉛蓄電池で
は、電池使用による電解液量の減少によりガラスセパレ
ータの収縮が起こり、極板への圧迫力が徐々に低下し、
内部抵抗増大の一因となることが知られている。これは
電池内の全電解液の内、ガラスセパレータが保持してい
る電解液が優先的に枯れやすいために起こると考えら
れ、その中でも圧迫力が小さい部分(電解液とガラス繊
維との表面張力が小さい部分)が特に減液しやすいと考
えられる。
【0017】電池Aは、集電耳を形成している部分の極
板とセパレータとの境界に元々隙間が生成されており、
その箇所の圧迫力は事実上無いに等しいため、結果的に
電解液が減少しやすい構造となっており、サイクルが進
むにつれて内部抵抗がの増大を助長していたが、本発明
による電池Bおよび電池Cは、上述したような極板とセ
パレータとの界面における隙間の生成を上手く解消でき
たため、性能を向上させることが可能となったと考えら
れる。
【0018】本実施例では、巻きの中心軸にほぼ平行と
なるスリットまたは溝を耳幅の1/4倍の間隔に設け
た。さらに細かな間隔のスリットまたは溝を設けること
も考えられるが、スリットまたは溝を設けることによる
性能低下を考慮すれば、集電耳幅の1/10〜1/3倍の
間隔が望ましいと考えられる。
【0019】以上、鉛蓄電池での実施例を述べたが、本
発明は鉛蓄電池だけでなく、他の円筒型蓄電池において
も適用できるものである。
【0020】
【発明の効果】以上述べてきたように、本発明による円
筒型蓄電池は、帯状の極板の集電耳部分に、少なくとも
1箇所以上の、望ましくは耳幅の1/10〜1/3倍の間
隔に、巻きの中心軸にほぼ平行となるスリットまたは溝
を設けることにより、集電耳部分に集電体本体とほぼ同
じ曲率をつけることが可能となり、巻き取り時に発生し
ていた極板とセパレータとの間の隙間の生成を解消する
ことが可能となり、大電流放電性能や大電流での充放電
サイクル寿命性能を向上させることが可能となるもので
あり、その工業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の円筒型蓄電池の集電体の一例を示す外観
【図2】従来の円筒型密閉鉛蓄電池の断面図
【図3】本発明による円筒型密閉鉛蓄電池の一例を示す
断面図
【図4】従来の円筒型密閉鉛蓄電池の集電体の一例を示
す外観図
【図5】従来の円筒型密閉鉛蓄電池の集電体の一例を示
す外観図
【図6】充放電サイクル特性の比較を示す特性図
【図7】電池の内部抵抗の比較を示す特性図
【符号の説明】
1 帯状の集電体の本体部分 2 集電耳部分 3 帯状の正極板 4 帯状の負極板 5 帯状のガラスセパレータ 6 隙間

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】帯状の正・負極両極板間にセパレータを介
    在させ、渦巻き状に巻回して形成したエレメントを電槽
    に収容した円筒型密閉鉛蓄電池において、帯状の極板の
    集電耳部分に、巻回の中心軸にほぼ平行なスリットまた
    は溝を少なくとも1箇所以上設けたことを特徴する円筒
    型蓄電池。
  2. 【請求項2】前記集電耳部分に設ける溝を、渦巻き状に
    巻回した時の巻回の中心軸に対向する面に設けたことを
    特徴とする請求項1記載の円筒型蓄電池。
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