JP2001157552A - 食品添加物用ラクチド - Google Patents

食品添加物用ラクチド

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JP2001157552A
JP2001157552A JP20565599A JP20565599A JP2001157552A JP 2001157552 A JP2001157552 A JP 2001157552A JP 20565599 A JP20565599 A JP 20565599A JP 20565599 A JP20565599 A JP 20565599A JP 2001157552 A JP2001157552 A JP 2001157552A
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ethanol
lactic acid
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JP20565599A
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Hitomi Obara
仁実 小原
Hisatsugu Okuyama
久嗣 奥山
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Shimadzu Corp
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Shimadzu Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 食品添加物用ラクチドを提供する。 【解決手段】 固体状態又は少なくとも一部が溶融状態
の粗ラクチドをエタノールと接触させスラリー状混合物
を得て、その後この混合物から固形分を分離して、高純
度の精製ラクチドを得る。粗ラクチドを未変性エタノー
ル又は変性エタノールから再結晶して食品添加物用ラク
チドを得る。光学活性を有するラクチドを主成分とする
動物性及び/又は植物性蛋白質凝固剤が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乳酸の二量体環状
エステルであるラクチドを用いた食品添加物に関する。
【0002】
【従来の技術】ラクチドは、従来より、生分解性ポリマ
ーであるポリ乳酸の製造原料として有用なものである。
すなわち、ラクチドの開環重合によりポリ乳酸が得られ
る。このようなポリ乳酸の製造原料用途の他に、ラクチ
ドは今後、食品の保存安定化剤、pH調整剤、凝固剤、
酸味料、膨張補助剤等の食品添加物としての使用が期待
されている。
【0003】ラクチドは乳酸の二量体環状エステルであ
り、3種類の光学異性体、すなわち、L−乳酸二分子か
らなるL−ラクチド、D−乳酸二分子からなるD−ラク
チド、及びL−乳酸とD−乳酸とからなるメソ−ラクチ
ドが存在する。
【0004】通常、ラクチドは、乳酸を脱水縮合して比
較的低分子量のポリ乳酸を中間体として得て、次いでポ
リ乳酸を解重合・環化することによってラクチドを生成
させ、これを蒸気として反応系外に取り出す、いわゆる
反応蒸留法によって製造されている。
【0005】このような製造方法において、ラクチド蒸
気には、L−ラクチド及び/又はDラクチド及びメソ−
ラクチド以外に不純物として、乳酸モノマー、直鎖状の
乳酸ダイマー、トリマー等の低分子量の乳酸縮重合物、
及び水等が含まれている。さらには、原料の乳酸に由来
する糖類、アミノ酸類、乳酸以外の脂肪酸等の不純物が
含まれることもある。従って、冷却捕集された粗ラクチ
ドを使用目的に応じて精製し、これらの不純物及びメソ
−ラクチドの含有率を低減する必要がある。
【0006】すなわち、ラクチドは加水分解により乳酸
及び直鎖の低分子量の乳酸縮重合物になるが、メソ−ラ
クチドはL−ラクチド及びD−ラクチドに比べ、著しく
吸水性及び加水分解性が大きい。このため、メソ−ラク
チドの含有率の高いラクチドは、全体としての加水分解
が速く、酸性成分である乳酸、直鎖の低分子量の乳酸縮
重合物の含有率が高くなる。
【0007】例えば、ラクチドを食品添加剤として使用
する場合、添加初期の酸性度が低く経時的に(食品の熟
成に応じて)酸性度を高くするラクチドがより有用であ
る。メソ−ラクチド、乳酸、直鎖の低分子量の乳酸縮重
合物がラクチド中に多く含有されていると、添加初期の
酸性度が高くなってしまう。従って、ラクチド中のメソ
−ラクチド、乳酸、直鎖の低分子量の乳酸縮重合物や水
の含有率はできるだけ小さいことが好ましい。
【0008】また、L−ラクチド及びD−ラクチドの融
点は約98℃であるのに対し、メソ−ラクチドの融点は
約40℃である。また、乳酸の融点は16〜25℃であ
り、直鎖の低分子量の乳酸縮重合物は常温で液体であ
る。このため、ラクチドを粉体状、粒子状の形態で用い
る場合には、融点が常温以下或いは常温に近いメソ−ラ
クチド、乳酸、直鎖の低分子量の乳酸縮重合物、水の含
有率が高いと、ラクチドの流動性が悪くなり作業性を損
なうという問題がある。従って、ラクチド中のこれらの
含有率はできるだけ小さいことが好ましい。
【0009】さらに、ラクチドを食品添加剤として使用
する場合、ラクチドに含有される糖類、アミノ酸類、乳
酸以外の脂肪酸等の不純物は、食品添加剤の食味を悪く
したり或いは変えたりし、また、食品添加剤を着色する
という問題がある。従って、ラクチド中のこれら不純物
の含有率はできるだけ小さいことが好ましい。
【0010】従来のラクチド精製方法としては、再結晶
による方法、溶融晶析による方法、精留による方法、水
による抽出による方法等、様々な方法が知られている。
例えば、特公昭51−6673号公報には、アミルアル
コール又はブチルアルコールを溶媒としてラクチドを再
結晶する方法が開示されてる。しかし、この場合には、
人体に対して有害な有機溶剤が精製後のラクチド中に残
留することとなり、食品添加物として使用する場合に問
題がある。
【0011】特開昭63−101378号公報には、炭
素数1〜6個のアルコール、好ましくはイソプロピルア
ルコールからラクチドを再結晶すること、あるいは溶解
しその後非溶媒を用いて沈殿させることが開示されてい
る。また、特開平7−118259号公報には、ラクチ
ドを低級アルコールから再結晶し、次いでベンゼン等で
再結晶する方法が開示されている。しかし、これらの場
合、粗ラクチドを溶剤に加熱し溶解させる工程或いは溶
解液からラクチドを冷却析出させる工程において、多大
な時間及び用役を必要とするため、また多量の溶剤が必
要とされるため、さらに収率が低いため、コスト的に不
利である。また、人体に対して有害な有機溶剤が精製後
のラクチド中に残留することとなり、食品添加物として
使用する場合に問題がある。
【0012】特開平6−256340号公報には、溶融
晶析法による粗ラクチドの精製方法が開示されている。
しかし、溶融晶析法には高価な大規模装置が必要であ
り、また、ラクチドを冷却析出させる工程或いは加熱し
精製/溶解させる工程において、多大な時間及び用役を
必要とするため、コスト的に不利である。また、ラクチ
ドの融点以上の高温で精製ラクチドを分離するため、精
製工程中に新たにラクチドが分解し、即ち乳酸、直鎖の
低分子量の乳酸縮重合物等が生成してしまうという問題
がある。安定した品質のラクチドを得るためには、厳格
な工程管理を必要とする。
【0013】特開平7−505150号公報には、精留
により高純度のラクチドを得る方法が開示されている。
しかし、精留に必要な装置は複雑であり高価であり、ま
た、ラクチドを加熱し気化させる工程或いは冷却して凝
縮させる工程において、多大の用役を必要とするため、
コスト的に不利である。また、ラクチドの融点以上の高
温で精製ラクチドを分離するため、精製工程中に新たに
ラクチドが分解し、乳酸、直鎖の低分子量の乳酸縮重合
物等が生成してしまうという問題がある。安定した品質
のラクチドを得るためには、やはり厳格な工程管理を必
要とする。
【0014】特開平7−165753号公報には、粗ラ
クチドと水とを接触させることにより精製する方法が開
示されている。この方法では、ラクチドを水と接触させ
て、メソ−ラクチドを除去しようとしているが、メソ−
ラクチドを十分に除去しようとすると、L−ラクチド及
び/又はD−ラクチドも一部加水分解されて除去されて
しまい、収率が低くなる。そして、除去されたL−ラク
チド及び/又はD−ラクチドは、水と反応し、乳酸或い
は直鎖の低分子量の乳酸縮重合物の形態でしか回収でき
ない。多大な用役を用い乳酸から得られたラクチドを、
乳酸或いは直鎖の低分子量の乳酸縮重合物の形態でしか
回収できないことは、コスト的に非常に不利である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的
は、上記従来技術の問題点を解決し、簡単な設備を用
い、簡単な工程により、高収率で高純度の精製ラクチド
を得るラクチドの精製方法を提供することにある。ま
た、本発明の目的は、人体に対して有害な有機溶剤が残
留することがなく食品添加物用途に好適であり、流動性
の良い粒子を有する精製ラクチドを得るラクチドの精製
方法を提供することにある。そして、本発明の目的は、
安価な高純度の食品添加物用途に好適な精製ラクチドを
提供することにある。さらに、本発明の目的は、ラクチ
ドを主成分とする食品添加物を提供することにもある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討し
た結果、粗ラクチドをエタノールに接触させ、その後固
形分を分離することにより、L−ラクチド及び/又はD
−ラクチドの含有率の高い精製ラクチドが高収率で得ら
れることを見いだし、本発明を完成するに至った。すな
わち、本発明は、固体状態又は少なくとも一部が溶融状
態の粗ラクチドをエタノールと接触させスラリー状混合
物を得て、その後この混合物から固形分を分離すること
により、L−ラクチド及び/又はD−ラクチドの含有率
の高い精製ラクチドを得ることを含む、ラクチドの精製
方法である。
【0017】このエタノール接触法において、固形分を
分離した後、分離された固形分を減圧乾燥することが好
ましい。また、この方法において、固形分を分離した
後、エタノールを取り除くために、分離された固形分を
水で洗浄することもできる。この場合に、水での洗浄
後、固形分を減圧乾燥することが好ましい。このエタノ
ール接触法において、エタノールとしては、未変性エタ
ノール及び変性エタノールの両者を使用することができ
る。さらに、本発明は、上記エタノール接触法により得
られた精製ラクチドである。
【0018】また、本発明者らは鋭意検討した結果、粗
ラクチドを未変性エタノール又は変性エタノールを溶媒
として再結晶することにより、食品添加物用ラクチドが
得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、粗ラクチドを未変性エタノールか
ら再結晶して食品添加物用ラクチドを得ることを含む、
ラクチドの精製方法である。また、本発明は、粗ラクチ
ドを変性エタノールから再結晶して食品添加物用ラクチ
ドを得ることを含む、ラクチドの精製方法である。
【0019】変性エタノールに含まれる変性剤は、食品
添加物として使用可能な香料類から選ばれることが好ま
しい。また、変性エタノールに含まれる変性剤が合成化
学物質である場合には、酢酸エチル、パラオキシ安息香
酸ブチル、白ラック、精製セラック、白ラック溶解液、
精製セラック溶解液のうちの少なくとも1種であること
が好ましい。
【0020】さらに、本発明は、未変性エタノールから
再結晶された食品添加物用ラクチドである。また、本発
明は、変性エタノールから再結晶された食品添加物用ラ
クチドである。
【0021】また、本発明は、動物性及び/又は植物性
蛋白質凝固剤、食品用発泡剤、食品用保存剤、pH調整
剤、及び酸味料等の食品添加物としてのラクチドの新規
な用途にも関する。すなわち、本発明は、光学活性を有
するラクチドを主成分とする蛋白質凝固剤に関する。ま
た、本発明は、ラクチドを主成分とする食品発泡剤に関
する。また、本発明は、ラクチドを主成分とする食品保
存剤に関する。さらに、本発明は、ラクチドを主成分と
するpH調整剤に関する。これらの用途に用いるラクチ
ドは、上記本発明の精製法によるものでもよく、あるい
は他の方法によるものでもよい。
【0022】本発明によれば、L−ラクチド及び/又は
D−ラクチドの含有率の高い精製ラクチドを、簡単な装
置及び操作により、短時間で高収率で得ることができ
る。また、本発明によれば、人体に対して有害な有機溶
剤が残留することがなく、作業性の良い精製ラクチドを
得ることができる。本発明により得られた精製ラクチド
は、安価であり、かつ食品添加物用途に好適である。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の精製方法は、従来公知の
方法で得られた粗ラクチドに適用することができる。例
えば、特開平7−138253号公報記載のように、低
分子量のポリ乳酸を得て、このポリ乳酸を触媒の存在
下、解重合してラクチドを得る方法、特表平7−500
091号公報記載のような乳酸オリゴマーの薄膜解重合
法、あるいは、特表平6−504762号公報や米国特
許第 5,74,127 号明細書、 5,332,839号明細書、 5,31
9,107号明細書、 5,420,304号明細書に記載のような、
乳酸から乳酸オリゴマーを経由することなく直接的にラ
クチドを製造する方法等のいずれの方法によるものであ
っても良い。もちろん、これらの方法によるラクチドに
限定されるものではない。
【0024】ラクチド製造のための原料の乳酸として
は、例えば、合成法又は発酵法で得られる乳酸単量体換
算重量濃度が50〜95%のものが使用できる。合成法
で得られる乳酸は、L−乳酸成分とD−乳酸成分を等量
含む。発酵法で得られる乳酸は、L−乳酸成分とD−乳
酸成分の混合物であるが、主としてL−乳酸成分を含有
するもの及び主としてD−乳酸成分を含有するものがあ
る。食品添加剤用途の精製ラクチドを得る場合は、製造
工程で青酸或いはアセトアルデヒド等の有害物質を使用
する合成法で得られた乳酸より、発酵法で得られた乳酸
を用いることがより好ましい。
【0025】乳酸を縮重合し低分子量のポリ乳酸を得る
には、通常、触媒の非存在下或いは存在下で、加熱減圧
下、原料乳酸を脱水し、重量平均分子量500〜30,
000のポリ乳酸とする。この場合の加熱温度は、10
0〜250℃、好ましくは100〜200℃である。1
00℃より低いと縮重合に時間がかかり過ぎ、250℃
より高いと乳酸及び直鎖の低分子量の乳酸縮重合物等が
水と同時に留出し、収率が悪くなり好ましくない。ま
た、発酵法により得られた乳酸を用い光学純度の高い粗
ラクチドを得る場合は、反応温度が高いほど得られる粗
ラクチドの光学純度は低くなるので、ラセミ化反応を抑
制するため、100〜200℃、好ましくは100〜1
80℃の温度で行う。また圧力は、100Torr以
下、好ましくは50Torr以下である。
【0026】この場合に使用される触媒としては、特に
限定されないが、通常周期律表IA族、IIA族、IIB
族、 IIIB族、IVA族、IVB族、VB族の金属の単体、
酸化物、水酸化物、塩化物、その他の無機化合物、有機
化合物等や酸類が、単独で又は複数で用いられる。触媒
量は通常、原料乳酸に対し5重量%以下である。
【0027】IA族の触媒としては、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、酸化ナトリウ
ム、酸化カリウム、酸化リチウム、ナトリウムメトキシ
ド、カリウムエトキシド等が挙げられる。IIA族の触媒
としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水
酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸
化バリウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム等が挙げ
られる。IIB族の触媒としては、水酸化亜鉛、酸化亜
鉛、塩化亜鉛等が挙げられる。IIIB族の触媒として
は、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウ
ムトリエトキシド、オクチル酸アルミニウム等が挙げら
れる。IVA族の触媒としては、酸化チタン、テトラメチ
ルチタネート、テトラブチルチタネート、ジルコニウ
ム、酸化ジルコニウム、ジルコニウムテトラメトキシ
ド、ジルコニウムテトラブトキシド等が挙げられる。IV
B族の触媒としては、ゲルマニウム、酸化ゲルマニウ
ム、錫、酸化錫、塩化錫、シュウ酸錫、オクチル酸錫、
ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、ブチル
錫クロオオキシド、酸化鉛、酸化珪素等が挙げられる。
VB族の触媒としては、三酸化アンチモン、アンチモン
トリアセテート、トリフェニルアンチモン等が挙げられ
る。酸類の触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸、ト
ルエンスルホン酸、陽イオン交換樹脂等が挙げられる。
【0028】以上の触媒の使用により、縮重合反応の速
度を促進し反応に必要な時間を短縮することが可能とな
る。但し、これらの触媒を使用することにより、乳酸の
ラセミ化反応も促進されるため、発酵法により得られた
乳酸を用い光学純度の高いラクチドを得る場合は、触媒
を使用しないか、或いは触媒の使用量を少なくすること
が好ましい。
【0029】得られた低分子量のポリ乳酸を、通常触媒
の存在下で加熱減圧し解重合することによってラクチド
を生成させ、これを蒸気として反応系外に取り出し、粗
ラクチドを製造する。この場合の加熱温度は、130〜
300℃、好ましくは160〜250℃である。130
℃より低いと解重合に時間がかかり過ぎ、300℃より
高いとアクリル酸、アクリル酸重合物等の副生成物の生
成量が多くなり、好ましくない。また、発酵法により得
られた乳酸を用い光学純度の高い粗ラクチドを得る場合
は、ラセミ化反応を抑制するため、130〜260℃、
好ましくは130〜220℃、更に好ましくは130〜
180℃の温度で行うことが好ましい。また圧力は、1
00Torr以下、好ましくは50Torr以下、更に
好ましくは20Torr以下である。
【0030】解重合触媒としては、限定されないが、通
常、周期律表IA族、IIA族、IIB族、 IIIB族、IVA
族、IVB族、VB族の金属の単体、酸化物、水酸化物、
塩化物、その他の無機化合物、有機化合物等や酸類が、
単独で又は複数で用いられる。これら各触媒の具体例と
しては、前述と同じものが挙げられる。
【0031】触媒は通常、ポリ乳酸に対し20重量%以
下の存在量で用いるとよい。ただし、低分子量のポリ乳
酸の重縮合工程で触媒を使用した場合で、このポリ乳酸
中に残留する触媒により、十分な解重合反応の速度が得
られる場合は、触媒を新たに添加する必要はない。
【0032】このようにして得られた粗ラクチドには、
通常、乳酸モノマー、直鎖状乳酸ダイマー、トリマー等
の低分子量の乳酸縮重合物、及び水等の不純物や、原料
の乳酸に由来する糖類、アミノ酸類、乳酸以外の脂肪酸
等の不純物が含まれている。また、ラクチドにも、L−
ラクチド及び/又はD−ラクチド、並びにメソ−ラクチ
ドが含まれている。
【0033】(エタノール接触法によるラクチド精製)
本発明のエタノール接触法においては、精製すべき粗ラ
クチドをエタノールと接触させスラリー状混合物を得
て、その後この混合物から固形分を分離する。
【0034】精製すべき粗ラクチドは、固体状態であっ
てもよいし、溶融状態であってもよい。あるいは、一部
が溶融状態であってもよい。すなわち、一旦固化させた
粗ラクチドを精製することもできるし、低分子量ポリ乳
酸を解重合することによって得られた溶融状態の粗ラク
チドを固化させることなく溶融状態を保ったまま、精製
することもできる。
【0035】粗ラクチドがいずれの状態であっても、粗
ラクチドとエタノールを接触させるとスラリー状混合物
となる。この粗ラクチドとエタノールの接触は、回分式
でも連続式でも行うことができる。
【0036】得られたスラリー状混合物から、固形分を
分離回収する。この操作も、回分式でも連続式でも行う
ことができる。また、粗ラクチドのエタノールとの接触
操作及び固形分の分離回収操作を、複数回繰り返すこと
もできる。すなわち、粗ラクチドをエタノールに接触さ
せた後、固形分を分離し、得られた固形分を再度新たな
エタノールに接触させ、次に固形分を分離回収する、と
いう繰り返し操作を行うこともできる。
【0037】本発明のエタノール接触法で用いられるエ
タノールは、主としてエタノールを含有する液体であ
り、未変性エタノール及び変性エタノールの両者を含
む。エタノールの含有量は、50重量%以上、好ましく
は90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上で
ある。
【0038】変性エタノールとは、エタノールに変性剤
が混和されたものである。混和される変性剤としては、
合成化学物質及び天然物質が挙げられる。これら変性剤
は、通常、エタノール1L当たり1g〜200g使用す
ることができる。
【0039】合成化学物質としては、メタノール、ベン
ゾール、トルオール、メチルエチルケトン、安息香酸デ
ナトニウム、エチレングリコールモノエチルエーテル、
クロロホルム、炭酸ジエチル、酢酸エチル、プロピオン
酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン、工業用エチルエーテ
ル、ゲラニオール、八アセチル化蔗糖、フェニールエチ
ルアルコール、ジエチルフタレート、アルキルベンゼン
スルホン酸塩水溶液、酢酸ビニル単量体、ヘプタン、イ
ソプロピルアルコール、ブタノール、アクリル酸エチ
ル、ブルシン、リナロール、リナリールアセテート、ベ
ンジルアセテート、種酢、醸造酢、ホルマリン、ローダ
ミンB、白ラック、精製セラック、白ラック溶解液、精
製セラック溶解液、パラオキシ安息香酸ブチル等が使用
できる。これらのうち、酢酸エチル、パラオキシ安息香
酸ブチル、白ラック、精製セラック、白ラック溶解液、
精製セラック溶解液が変性剤として好ましい。
【0040】天然物質としては、ディスティルドビネガ
ー、オレンジ回収香、グレープ回収香、ワイン回収香、
天然バターフレーバー、発酵乳酸、穀物発酵エキス、オ
レンジオイル、レモンオイル、ライムオイル、ターメリ
ックオレンジ、バニラエキストラクト、コーヒー回収
香、味噌回収香、醤油オイルエッセンス、モルトエッセ
ンス、チコリエッセンス等の食品添加物として使用可能
なものが挙げられる。これらは、単独で用いてもよい
が、通常は混合物として用いられる。
【0041】食品添加剤用途の精製ラクチドを得る場合
は、これらの変性剤の内、食品添加剤として使用可能な
天然物質に由来する香料類が特に好ましい。より具体的
には、長谷川香料株式会社製のフレーバーH−1、H−
2、H−3、H−4、H−6、H−9、H−10、H−
11、H−12、H−13、H−14、高砂香料工業株
式会社製のフレーバーT−100、T−101、T−1
02、T−103、T−104、T−105、T−10
6、T−107、EDA−171、曽田香料株式会社製
フレーバーS−201、理研香料工業株式会社製フレー
バーDA−40等が使用できる。どのような変性剤を用
いるかは、食品添加剤用途に応じて種々選択される。
【0042】また、エタノールとしては変性剤以外に水
が混和されたものも使用できるが、水の混和量はエタノ
ール100重量部に対し、0〜10重量部、好ましくは
0〜5重量、さらに好ましくは0〜0.1重量部であ
る。10重量部を越えると、精製ラクチド収量が低下す
るため好ましくない。
【0043】また、食品添加剤用途の精製ラクチドを得
る場合は、未変性エタノールを使用することももちろん
好ましい。未変性エタノールとは、変性剤が混和されて
いないエタノールである。
【0044】粗ラクチドとの接触に際して、エタノール
は粗ラクチド100重量部に対し、通常10〜600重
量部、好ましくは20〜400重量部、さらに好ましく
は30〜200重量部使用することができる。エタノー
ル量が10重量部より少ないと、メソ−ラクチドや各種
不純物の分離が不十分となりやすい。一方、600重量
部を越えると、不純物の分離は十分であるが、精製ラク
チドの収率が小さくなり、またエタノール使用量が多い
ためコスト的に不利になる。
【0045】固体状態の粗ラクチドをエタノールと接触
させる場合は、粗ラクチド粒子は、4メッシュ通過、好
ましくは6メッシュ通過、更に好ましくは10メッシュ
通過の粒子であることが好ましい。4メッシュを通過し
ない粗ラクチド粒子の場合、粗ラクチドとエタノールの
十分な接触面積が得られないため、不純物の分離が不十
分となりやすい。
【0046】予め4メッシュ通過の粒子に粉砕された粗
ラクチドを用いてもよいし、粗ラクチドをエタノールに
接触させながら攪拌装置等により4メッシュ以下に粉砕
することもできる。
【0047】予め粗ラクチドを粉砕する方法としては、
特に限定されるものではないが、例えば、ジョークラッ
シャーミル、ハンマークラッシャーミル、ロールクラッ
シャーミル、ケージミル、ハンマーミル等の粗砕器、中
砕器等を用いて粉砕することができる。また、必要に応
じて、粉砕後に分級機等を行い4メッシュを通過しない
粒子を除くこともできる。
【0048】固体状態の粗ラクチドをエタノールに接触
させる方法としては、特に限定されるものではないが、
容器中に粗ラクチドとエタノールを投入し放置し接触さ
せる方法、攪拌装置の装着された容器中で接触させる方
法、固液抽出装置中で接触させる方法等が用いられる。
また、これらの装置を複数個用い、多段階で粗ラクチド
とエタノールを接触させることもできる。
【0049】一方、液体状態の粗ラクチドをエタノール
と接触させる方法としては、特に限定されるものではな
いが、エタノールとの接触により析出するラクチドの粒
子を均一にするため攪拌下で接触させる方法、ノズル等
を通してシャワー状或いはスプレー状に液体状態の粗ラ
クチドをエタノール中に吐出する方法等が有効である。
また、攪拌装置の装着された容器中で接触させてラクチ
ドを析出させ得られたスラリーを、さらに固液抽出装置
中で新たなエタノールと接触させることもできる。
【0050】上記攪拌装置としては、2重リボン翼攪拌
装置、フルゾーン翼攪拌装置、ディスクタービン翼攪拌
装置、ホモミクサー等の回転翼式攪拌装置、噴流、循環
流による攪拌装置、スタティックミキサーによる攪拌装
置等が用いられる。粗ラクチドとエタノールを混合した
後或いは混合と同時に攪拌装置により粗ラクチドを粉砕
する場合は、これらの攪拌装置の内、せん断効果の大き
いディスクタービン翼攪拌装置、ホモミクサー等が有効
である。
【0051】固液抽出装置としては、ロトセル抽出器、
ケネディー抽出機、ボノトー抽出器等が用いられる。こ
れらの固液抽出装置では、粗ラクチドにエタノールを接
触させると共に、固形分の分離も同一装置中で行うこと
ができる。但し、分離された固形分中のエタノール含有
率が大きいため、更に、別の装置で固形分を再分離する
操作を行うことが好ましい。
【0052】本発明において、粗ラクチドをエタノール
と接触させる温度については、L−ラクチド及び/又は
D−ラクチドのエタノール又は水との反応による分解を
抑制するために低い温度が好ましく、通常0〜70℃、
好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは20〜40
℃程度である。
【0053】溶融状態の粗ラクチドをエタノールと接触
させる場合、或いは攪拌等による液摩擦による温度上昇
が起こる場合等は、接触温度の上昇を防ぐため冷却しな
がら粗ラクチドとエタノールを接触させることが好まし
い。
【0054】粗ラクチドをエタノールと接触させる時間
については、装置の能力、得ようとする精製ラクチドの
純度により決められるべきものであるが、通常1分〜1
0時間である。
【0055】本発明においては、粗ラクチドとエタノー
ルとの接触により得られたスラリー状混合物から固形分
を分離する。また、固形分を分離した後のエタノール液
から、晶析、濃縮等の方法によりラクチドを回収するこ
ともできる。これは、特開平7−165753号公報記
載の水との接触による精製方法では実現できないことで
あり、本発明の大きな利点の一つである。
【0056】固形分の分離方法としては、特に限定され
るものではないが、遠心沈降機、遠心濾過機、圧濾装置
を用いて分離する方法等が用いられる。これらの装置の
内、固形分をリンスする機能を有する装置を使用する場
合は、同一装置で固形分をエタノールに接触させる操作
と固形分を分離する操作とを、並行して行うことができ
る点で有効である。
【0057】遠心沈降機としては、縦型バスケット型遠
心沈降機、スクリューデカンター型遠心沈降機等が用い
られる。遠心濾過機としては、縦型バスケット型遠心濾
過機、スクリューデカンター型遠心濾過機、円錐スクリ
ーン型遠心濾過機等が用いられる。圧濾装置としては、
重力濾過器、加圧濾過器、真空濾過器等が用いられる。
【0058】上記の操作により、メソ−ラクチドやその
他の不純物が除去された精製ラクチド固形分が得られ
る。
【0059】本発明においては、上記のようにして固形
分を分離した後、固形分からエタノールを取り除くため
に、分離された固形分を水で洗浄することが好ましい。
水洗浄によって、精製ラクチド中のエタノール含有率を
大幅に低減することができ、精製ラクチドの残留エタノ
ール臭等の問題が解消される。
【0060】この水洗浄は、固形分を水に接触させて行
うとよい。水洗浄操作は、回分式でも連続式でも行うこ
とができる。また、水洗浄操作を複数回繰り返すことも
できる。すなわち、固形分を水と接触させて分離し、得
られた固形分を再度新たな水に接触させ、次に固形分を
分離回収する、という繰り返し操作を行うこともでき
る。
【0061】この洗浄操作において水は、エタノールと
の接触後分離された固形分100重量部に対し、通常1
0〜200重量部、好ましくは20〜100重量部、さ
らに好ましくは30〜60重量部使用することができ
る。洗浄水の量が10重量部より少ないと、エタノール
の除去作用がやや弱い。200重量部を越えると、精製
ラクチドの収率が低くなってしまう。
【0062】この水接触洗浄の温度は、L−ラクチド及
び/又はD−ラクチドの分解反応を抑制するために低い
温度が好ましく、通常0〜40℃、好ましくは10〜3
0℃、さらに好ましくは10〜20℃である。
【0063】また、水接触洗浄の時間は、L−ラクチド
及び/又はD−ラクチドの分解反応を抑制するために短
い時間が好ましく、またエタノールが水に溶解するのに
必要な時間で十分であるので、通常10秒〜20分、好
ましくは10秒〜5分、さらに好ましくは10秒〜1分
である。
【0064】また、水接触洗浄には、前述の粗ラクチド
をエタノールと接触させる装置と同様の装置等を用いる
ことができる。そして、水接触後のスラリーから固形分
を分離は、前述の固形分の分離装置と同様の装置等を用
いて行うことができる。これらの装置の内、水との接触
時間を短くでき、且つ、水との均一な接触が可能である
という点から、固形分をリンスする機能を備えた遠心濾
過機、圧濾装置が特に好適である。
【0065】本発明においては、上記のようにしてエタ
ノールとの接触後分離された固形分、あるいは水との洗
浄後得られた固形分を減圧乾燥することが好ましい。固
形分として得られた精製ラクチドには、通常、使用され
たエタノール、水、及び場合によってはエタノール中に
含まれていた物質(例えば、水、メタノール、イソプロ
ピルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル等)
が付着している。これらの付着は、得られた精製ラクチ
ド粒子の流動性を悪くしたり、その臭いが問題となる場
合がある。従って、この付着した物質を低減するため
に、固形分を減圧乾燥するとよい。
【0066】この減圧乾燥は、加熱によるラクチドのエ
タノール或いは水等との反応による分解を抑制するため
に低い温度で行うことが好ましく、通常、10〜95
℃、好ましくは10〜60℃程度の温度、0.01〜1
00Torr程度の圧力で、行うことができる。また、
0.001〜10Torr程度の圧力で、0℃以下の温
度で凍結乾燥を行うこともできる。乾燥時間について
は、乾燥装置の能力、乾燥するラクチドの量或いは得よ
うとする精製ラクチドのエタノール、水の含有率により
決められるべきものであるが、通常5分〜10時間であ
る。
【0067】加熱減圧乾燥を行う場合、限定されるもの
ではないが、棚段乾燥機、円筒攪拌乾燥機、円錐回転型
乾燥機等を使用できる。また、凍結乾燥を行う場合、限
定されるものではないが、棚段乾燥機を使用できる。
【0068】(エタノール再結晶法によるラクチド精
製)本発明のエタノール再結晶法において、まず、粗ラ
クチドをエタノール中に溶解する。次にラクチド溶解液
から、ラクチド結晶を優先的に析出させスラリー状混合
物を得て、その後この混合物から固形分を分離する。通
常、さらに分離された固形分を乾燥し、精製ラクチドを
得る。
【0069】また、粗ラクチドのエタノールへの溶解か
ら、析出した固形分の分離までの一連の操作を、複数回
繰り返すこともできる。通常、さらに分離された固形分
を乾燥し精製ラクチドを得る。
【0070】本発明のエタノール再結晶法で用いられる
エタノールは、前記エタノール接触法の場合と同様に、
主としてエタノールを含有する液体であり、未変性エタ
ノール及び変性エタノールの両者を含む。エタノールの
含有量は、50重量%以上、好ましくは90重量%以
上、さらに好ましくは95重量%以上である。
【0071】変性エタノールとは、エタノールに変性剤
が混和されたものである。混和される変性剤としては、
合成化学物質及び天然物質が挙げられる。これら変性剤
は、通常、エタノール1L当たり1g〜200g使用す
ることができる。
【0072】合成化学物質としては、前述したものが使
用できる。それらのうち、酢酸エチル、パラオキシ安息
香酸ブチル、白ラック、精製セラック、白ラック溶解
液、精製セラック溶解液が変性剤として好ましい。
【0073】天然物質としては、前述したものが挙げら
れる。それらは、単独で用いてもよいが、通常は混合物
として用いられる。
【0074】食品添加剤用途の精製ラクチドを得る場合
は、これらの変性剤の内、食品添加剤として使用可能な
天然物質に由来する香料類が特に好ましい。より具体的
には、長谷川香料株式会社製のフレーバーH−1、H−
2、H−3、H−4、H−6、H−9、H−10、H−
11、H−12、H−13、H−14、高砂香料工業株
式会社製のフレーバーT−100、T−101、T−1
02、T−103、T−104、T−105、T−10
6、T−107、EDA−171、曽田香料株式会社製
フレーバーS−201、理研香料工業株式会社製フレー
バーDA−40等が使用できる。どのような変性剤を用
いるかは、食品添加剤用途に応じて種々選択される。
【0075】また、エタノールとしては変性剤以外に水
が混和されたものも使用できるが、水の混和量はエタノ
ール100重量部に対し、0〜10重量部、好ましくは
0〜5重量、さらに好ましくは0〜0.1重量部であ
る。10重量部を越えると、精製ラクチド収量が低下す
るため好ましくない。また、食品添加剤用途の精製ラク
チドを得る場合は、未変性エタノールを使用することも
もちろん好ましい。未変性エタノールとは、変性剤が混
和されていないエタノールである。
【0076】エタノール再結晶法において、粗ラクチド
溶解の際に使用される変性エタノール又は未変性エタノ
ールの量は、精製すべき粗ラクチドの純度、再結晶の操
作方法、得ようとする精製ラクチドの品質に応じて任意
に設定できるが、通常、粗ラクチド100重量部に対し
50〜500重量部、好ましくは100〜200重量部
程度である。エタノール量が50重量部より少ないと、
粗ラクチドの溶解に長い時間が必要となったり、溶解が
不完全になったり、精製ラクチドの純度が悪くなる場合
がある。一方、エタノール量が500重量部より多い
と、精製ラクチドの収率が悪くなるし、多量のエタノー
ルを使用すること自体不経済である。
【0077】エタノールへの粗ラクチド溶解は、通常、
加熱下で溶解度を向上させて行う。加熱温度は、一般に
40〜75℃、好ましくは50〜70℃、さらに好まし
くは55〜65℃である。加熱温度が75℃を超える
と、ラクチドがエタノール或いはエタノールに含まれる
水と反応し、ラクチド収率が低下しやすい。また、この
粗ラクチドのエタノール中への溶解操作は、回分式でも
連続式でも行うことができる。
【0078】粗ラクチド溶解は、特に限定されるもので
はないが、攪拌装置の装着された容器を用いて行うこと
ができる。攪拌装置としては、例えば、2重リボン翼攪
拌装置、フルゾーン翼攪拌装置、ディスクタービン翼攪
拌装置、ホモミクサー等の回転翼式攪拌装置、噴流、循
環流による攪拌装置、スタティックミキサーによる攪拌
装置等が用いられる。
【0079】粗ラクチドをエタノールに溶解させた後、
ラクチド結晶を析出させる。結晶の析出は、通常、冷却
及び/又は溶媒の留去により行われる。即ち、冷却によ
り飽和濃度を低下させる方法、加熱、減圧等により溶媒
の一部を留去し溶媒量を低減することにより溶解量を低
下させる方法、或いは、減圧等により溶媒の一部を留去
すると共に留去される溶媒の気化潜熱により溶解液の温
度を下げ、溶媒量を低減し且つ飽和濃度を低下させる方
法が用いられる。また、このラクチド結晶の析出操作
は、回分式でも連続式でも行うことができる。
【0080】ラクチド結晶の析出を冷却により行う場
合、通常30〜−10℃、好ましくは25〜0℃、さら
に好ましくは20〜5℃の温度に冷却を行う。
【0081】ラクチド結晶を優先的に析出させる装置と
しては、特に限定されないが、粗ラクチドのエタノール
への溶解操作に用いられた、攪拌装置の装着された容器
を用いることができる。また、D.T.B型晶析装置、
D.P.型晶析装置、クリスタル−オスロ型晶析装置、
円錐型晶析装置、タービュレンス型晶析装置等を用いる
ことができる。
【0082】結晶析出で得られたスラリー混合物から固
形分を分離する。また、固形分を分離したエタノールか
ら晶析、濃縮等の方法によりラクチドを回収することも
できる。
【0083】分離装置としては、特に限定されるもので
はないが、遠心沈降機、遠心濾過機、圧濾装置を用いる
ことができる。これらの装置の内、固形分をリンスする
機能を有する装置を使用する場合は、同一装置で析出し
た固形分を分離する操作と分離された固形分をエタノー
ルでリンスする操作との両方を行うことができるので、
有効である。
【0084】遠心沈降機としては、縦型バスケット型遠
心沈降機、スクリューデカンター型遠心沈降機等が用い
られる。遠心濾過機としては,縦型バスケット型遠心濾
過機、スクリューデカンター型遠心濾過機、円錐スクリ
ーン型遠心濾過機等が用いられる。圧濾装置としては、
重力濾過器、加圧濾過器、真空濾過器等が用いられる。
【0085】また、分離された固形分を必要に応じて新
たなエタノールで洗浄する。洗浄操作により、より高純
度のラクチドが得られる。通常、さらに得られた洗浄後
の固形分を乾燥し精製ラクチドを得る。
【0086】この洗浄操作で使用されるエタノール量は
任意に設定できるが、通常、固形分100重量部に対し
10〜300重量部、好ましくは20〜150重量部、
さらに好ましくは30〜70重量部程度である。このエ
タノール量が10重量部より少ないと、均一に洗浄する
ことができず、あるいは不純物の除去効果が少ない場合
がある。一方、エタノール量が300重量部より多い
と、精製ラクチド収率が悪くなるし、多量のエタノール
使用は不経済である。
【0087】本発明においては、分離された固形分を減
圧乾燥することが好ましい。固形分として得られたラク
チドには、通常、使用されたエタノール、水、及び場合
によっては変性エタノール中に含まれていた物質が付着
している。これらの付着は、得られた精製ラクチド粒子
の流動性を悪くしたり、その臭いが問題となる場合があ
る。従って、この付着した物質を低減するために、固形
分を減圧乾燥するとよい。
【0088】この減圧乾燥は、加熱によるラクチドのエ
タノール或いは水等との反応による分解を抑制するため
に低い温度で行うことが好ましく、通常、10〜95
℃、好ましくは10〜60℃程度の温度、0.01〜1
00Torr程度の圧力で、行うことができる。また、
0.001〜10Torr程度の圧力で、0℃以下の温
度で凍結乾燥を行うこともできる。乾燥時間について
は、乾燥装置の能力、乾燥するラクチドの量或いは得よ
うとする精製ラクチドのエタノール、水の含有率により
決められるべきものであるが、通常5分〜10時間であ
る。
【0089】加熱減圧乾燥を行う場合、限定されるもの
ではないが、棚段乾燥機、円筒攪拌乾燥機、円錐回転型
乾燥機等を使用できる。また、凍結乾燥を行う場合、限
定されるものではないが、棚段乾燥機を使用できる。
【0090】(ラクチドの食品添加物としての利用)食
品分野において、従来、凝固剤、膨張補助剤、食品保存
剤としては、グルコノ・デルタ・ラクトンが用いられて
きた。日本酒、焼酎、その他の乳酸を含有する酒類及び
清涼飲料の製造では、乳酸発酵を行うか、乳酸を添加し
ている。
【0091】また、ヨーグルト、チーズ等の製造では、
従来、乳酸発酵させ生成した乳酸により蛋白質を凝固さ
せている。ところが、生産性及び品質安定性の観点か
ら、乳酸やグルコノ・デルタ・ラクトンが使用されるよ
うになってきた。
【0092】しかしながら、 (1)乳酸発酵するのは、製
造時間がかかりすぎる、(2) 乳酸を添加すると、pHが
いきなり下がる、 (3)グルコノ・デルタ・ラクトンは、
分解がやや早い、等の問題点がある。
【0093】そこで、グルコノ・デルタ・ラクトンより
ももう少し分解の遅い添加剤が要望されている。ラクチ
ドはグルコノ・デルタ・ラクトンよりも分解が遅く、そ
の上、分解によって生成する酸も、グルコン酸よりも乳
酸の方が天然の乳酸発酵食品の酸味と同じであり好まし
い。
【0094】すなわち、本発明は、動物性及び/又は植
物性蛋白質凝固剤、食品用発泡剤、食品用保存剤、pH
調整剤、及び酸味料等の食品添加物としてのラクチドの
新規な用途にも関する。
【0095】食品添加物としてラクチドを使用する場
合、実際に摂取するときには、ラクチドは加水分解しほ
とんどが乳酸となっている。光学活性なL−ラクチド
(LL−ラクチド)を使用した場合、摂取されるのはL
−乳酸となるのであるが、L−乳酸はD−乳酸に比べ、
次のような利点がある。
【0096】(A) 人体中の乳酸はL体であることが知ら
れている。 (B) FAO & WHO は、乳幼児が摂取する食品やリンゲル液
には、L−乳酸を使用すべきことを勧告している。(To
xicological evaluation ofcertain food additives wi
th a review of general principles and of specific
ations. World Health Organization, Geneva, p23 197
4) (C) D−乳酸の蓄積により、D-2-hydroxy acid dehydro
genase が存在しない脳が損傷を受けた症例が報告され
ている。 (Oh, M.S., Pheips, K.R., Traube, M., Sald
iver, J.L.B., Boxhill, C., and Carroll, H.J. (19
79) D-lactic acidosis in a man with the short-bo
wel syndrom. New Engl. J. Med., 301: 249-252 )
【0097】本発明は、光学活性を有するラクチドを主
成分とする蛋白質凝固剤である。この蛋白質凝固剤は、
動物性蛋白質、植物性蛋白質のいずれにも適用すること
ができる。
【0098】この蛋白質凝固剤において、光学活性を有
するラクチドがL体であることが好ましい。L−ラクチ
ドの光学純度は、例えば70%ee以上であり、80%ee
以上が好ましく、90%ee以上がより好ましい。ここ
で、L−ラクチドの光学純度(%ee)は、100 × (L-D)
/(L+D) で定義される。ラクチドの総量に対するL−ラ
クチドの含有量は、例えば85重量%以上、90重量%
以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
【0099】あるいは、この蛋白質凝固剤において、光
学活性を有するラクチドがD体であってもよい。D−ラ
クチドの光学純度は、例えば70%ee以上であり、80
%ee以上が好ましく、90%ee以上がより好ましい。こ
こで、D−ラクチドの光学純度(%ee)は、100 × (D-
L)/(L+D) で定義される。ラクチドの総量に対するD−
ラクチドの含有量は、例えば85重量%以上、90重量
%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
【0100】この蛋白質凝固剤において、ラクチド中に
含まれる乳酸単量体及び/又は直鎖乳酸重合体の量が
2.0重量%以下であることが好ましい。また、ラクチ
ドは、発酵乳酸を原料として合成されたものであること
が好ましい。さらに、ラクチドは、発酵による乳酸であ
って、L体又はD体の光学純度が90%ee以上である乳
酸を原料として合成されたものであることがより好まし
い。
【0101】この蛋白質凝固剤を使用して、ヨーグル
ト、チーズ、豆腐、ハム、ソーセージ、かまぼこ等の食
品を製造することができる。蛋白質凝固剤として用いる
ラクチドは、上記本発明の精製法によるものでもよく、
あるいは他の方法によるものでもよい。
【0102】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもので
はない。 [ラクチドの合成例1]温度計、攪拌機、コンデンサ
ー、留出物受器、減圧装置、加熱温調装置等の装着され
た容量2LのSUS製セパラブルフラスコに乳酸(Pu
rac社製HS−88:乳酸単量体換算濃度88.1重
量%:光学純度99.2%e.e.)1000gを投入し
た。まず、常圧、130℃で2時間、次に減圧下、13
0℃から徐々に4時間で160℃まで昇温し、GPC測
定による重量平均分子量2150のポリ乳酸約703g
を得た。
【0103】この低分子量のポリ乳酸に10.0gのオ
クチル酸錫を加え、減圧下、徐々に温度を160℃から
200℃に昇温し、約1時間45分で粗ラクチド690
gを留去し捕集した。
【0104】得られた粗ラクチドの組成を高速液体クロ
マトグラフィー(HPLC)で分析すると、L−ラクチ
ド及びD−ラクチド:92.54重量%、メソ−ラクチ
ド:3.29重量%、乳酸の直鎖二量体:0.77重量
%、乳酸:3.40重量%であった。
【0105】[実施例1(エタノール接触法)]合成例
1で得られた粗ラクチドを乳鉢で粉砕し、10メッシュ
のふるいを通過させた。このふるいを通過した粗ラクチ
ド50gと、25℃の99度1級の未変性エタノール
(発酵アルコール)15gとをビーカー中で混合しスラ
リー状の混合液を得て、攪拌機で15分攪拌した。濾過
瓶上に装着されたガラス濾過器(ブフナー型、最大細孔
経20〜30μm)にこのスラリーを移し、濾過瓶をア
スピレーターで約1分間減圧し、スラリー中の液体を吸
引濾過した。
【0106】吸引濾過後、ガラス濾過器に新たに25℃
の99度1級の未変性エタノール(発酵アルコール)1
5gを加え、濾過瓶をアスピレーターで約1分間減圧し
吸引濾過した。分離された固形分をロータリーエバポレ
ーターを用い、40℃、4Torrで1時間乾燥し、精
製ラクチド43.9gを得た(精製収率:87.8
%)。
【0107】得られた精製ラクチドの組成をHPLCで
分析すると、L−ラクチド及びD−ラクチド:98.2
1重量%、メソ−ラクチド:1.18重量%、乳酸の直
鎖二量体:0.24重量%、乳酸:0.37重量%であ
った。また、この精製ラクチドのエタノール含有率をガ
スクロマトグラフィー(GC)で測定すると540pp
mであり、若干のエタノール臭が感じられた。この精製
ラクチドの水分含有率をカールフィッシャー水分測定装
置で測定すると35ppmであった。また、この精製ラ
クチドは流動性の良好な粒子状であり、密封し、20℃
で1ヶ月管保存した後も、この流動性は失われなかっ
た。
【0108】(精製ラクチド中のL−ラクチド量の計
算)上記精製ラクチドのHPLC分析において、L−ラ
クチド及びD−ラクチドの合計量として測定した。これ
は本HPLC分析法ではメソ−ラクチドと、D−ラクチ
ド又はL−ラクチドとは識別できるが、D−ラクチドと
L−ラクチドの識別ができなかったからである。
【0109】そこで、得られた精製ラクチドを加水分解
し、それをHPLC分析したところ、L−乳酸の光学純
度は97.0%eeであった。従って、以下の計算によ
り、総ラクチド中のL−ラクチドの濃度は98.9重量
%以上となる。ここで、総ラクチドとは、精製ラクチド
の全体を意味し、すなわち、L−ラクチド、D−ラクチ
ド、メソ−ラクチド、L及びD−乳酸及び乳酸直鎖二量
体の総体を意味する。
【0110】 (計算式) ・L−ラクチド及びD−ラクチドの濃度 V 重量% ・加水分解したときのL−乳酸の光学純度 X %ee ・メソ−ラクチドの濃度 Y 重量% ・L及びD−乳酸の濃度 Z 重量% ・乳酸直鎖二量体の濃度 W 重量% の各値が測定により得られる。
【0111】また、L−ラクチドの濃度をA重量%、D
−ラクチドの濃度をB重量%する。ここで、L−ラクチ
ドの濃度が最低限どれだけかを算出するため、乳酸、及
び直鎖二量体が全てD体であると仮定する。
【0112】加水分解したときのD−乳酸の濃度は、下
記の合計となる。 D−ラクチド由来の物は分子量144のD−ラクチド1
分子から分子量90のD−乳酸が2分子生成するから;
(180/144)B 重量% メソ−ラクチド由来の物は分子量144のメソ−ラクチ
ド1分子から分子量90のD−乳酸が1分子生成するか
ら; (90/144)Y 重量% 乳酸; Z 重量% 直鎖二量体由来の物は分子量162の直鎖二量体1分子
から分子量90のD−乳酸2分子が生成するから;
(180/162)W 重量% よって、加水分解したときのD−乳酸の濃度(D重量
%)は、 D=(180/144) B+(90/144)Y+Z+(180/162) W ..... (1)
【0113】一方、加水分解したときのL−乳酸の濃度
(L重量%)は、 L−ラクチド由来の物; (180/144)A 重量
% メソ−ラクチド由来の物;(90/144)Y 重量% よって、加水分解したときのL−乳酸の濃度(L重量
%)は、 L=(180/144)A+(90/144)Y ..... (2)
【0114】ここで、L−乳酸の光学純度X%eeは、X
=100(L−D)/(L+D) である。これに
(1)(2)を代入し、またA+B=Vであるから、B
を消去し、Aについて解くと、 A=(1/2) V+(4/9) W+Y+(2/5) Z+(1/200) VX+(1/225) WX +(1/200) XY+(1/250) XZ ..... (3) (3)にV、X、Y、Z、Wの各測定値を代入すること
により、L−ラクチドの濃度:A重量%が求められる。
【0115】[実施例2(エタノール接触法)]合成例
1で得られた粗ラクチドを乳鉢で粉砕し、10メッシュ
のふるいを通過させた。このふるいを通過した粗ラクチ
ド50gと、25℃の99度1級の未変性エタノール
(発酵アルコール)15gとをビーカー中で混合しスラ
リー状の混合液を得て、攪拌機で15分攪拌した。濾過
瓶上に装着されたガラス濾過器(ブフナー型、最大細孔
経20〜30μm)にこのスラリーを移し、濾過瓶をア
スピレーターで1分間減圧しスラリー中の液体を吸引濾
過した。
【0116】吸引濾過後、ガラス濾過器に新たに25℃
の99度1級の未変性エタノール(発酵アルコール)1
5gを加え、濾過瓶をアスピレーターで1分間減圧し吸
引濾過した。吸引濾過後、ガラス濾過器に新たに25℃
の水25gを加え、直ぐに、濾過瓶をアスピレーターで
減圧し吸引濾過した。分離された固形分をロータリーエ
バポレーターを用い、40℃、4Torrで2時間乾燥
し、精製ラクチド43.5gを得た(精製収率:87.
0%)。
【0117】得られた精製ラクチドの組成をHPLCで
分析すると、L−ラクチド及びD−ラクチド:98.2
3重量%、メソ−ラクチド:1.11重量%、乳酸の直
鎖二量体:0.27重量%、乳酸:0.39重量%であ
った。また、この精製ラクチドのエタノール含有率をG
Cで測定すると34ppmであり、ほとんとエタノール
臭は感じられなかった。この精製ラクチドの水分含有率
をカールフィッシャー水分測定装置で測定すると 89
ppmであった。また、この精製ラクチドは流動性の良
好な粒子状であり、密封し、20℃で1ヶ月管保存した
後も、この流動性はほとんど失われなかった。
【0118】[実施例3(エタノール接触法)] (ラクチドの合成)温度計、攪拌装置、コンデンサー、
留出物受器、減圧装置、温調装置等の装着された容量
1.3kLの反応槽に乳酸(Purac社製HS−8
8:乳酸単量体換算濃度88.1重量%:光学純度9
9.2%e.e.)1000kgを投入した。まず、常圧、
130℃で3時間、次に減圧下、130℃から徐々に6
時間で160℃まで昇温し、GPC測定による重量平均
分子量2490のポリ乳酸約702kgを得た。
【0119】この低分子量のポリ乳酸に10.0kgの
オクチル酸錫を加え、減圧下、徐々に温度を160℃か
ら200℃に昇温し、約3時間で粗ラクチド697kg
を留去し捕集した。得られた粗ラクチドの組成をHPL
Cで分析すると、L−ラクチド及びD−ラクチド:9
1.93重量%、メソ−ラクチド:4.18重量%、乳
酸の直鎖二量体:0.64重量%、乳酸:3.25重量
%であった。
【0120】(ラクチドの精製)ディスクタービン翼攪
拌装置、温度計、温調装置等の装着された容量1.8k
Lの混合槽に、530L(418.2kg)の99度1
級の未変性エタノール(発酵アルコール)を投入し、1
0℃に冷却した。混合槽をディスクタービン翼で60r
pmで攪拌しながら、上記合成で得られた粗ラクチドの
全量を溶融状態を保ったまま(103℃)で、シャワー
状に吐出することが可能な4穴のノズル(各穴径2m
m)より、毎分約10Lの吐出量で約60分で供給し
た。
【0121】溶融状態の粗ラクチドを供給している間、
混合槽内温の上昇を防ぐため温調装置により冷却を行っ
たが、冷却能力不足のため、供給終了時の内温は32℃
となった。供給終了後、攪拌及び温調(設定温度20
℃)を継続した。供給終了1時間後の内温は20℃であ
った。
【0122】供給終了1時間後、混合槽中のスラリーの
約1/5を、バスケット径1000mm、バスケット深
さ400mmの縦型バスケット型遠心濾過機に約90秒
で供給し、スラリー中の固形分を分離した。スラリー供
給中のバスケットの回転は300rpmとした。
【0123】スラリーの供給終了後、固形分の分離をさ
らに良くするため、バスケットの回転数を800rpm
に上げ10分間、脱液を行った。脱液終了後、バスケッ
トの回転数を500rpmに下げ、リンス液供給用のス
プレーノズルより、20℃の99度1級の未変性エタノ
ール(発酵アルコール)をスプレー状に吐出し、71L
(56.0kG)を約120秒で供給し、バスケット内
の固形分に新たなエタノールを接触させると同時に固形
分の分離を行った。
【0124】エタノールの供給終了後、固形分の分離を
さらに良くするため、バスケットの回転数を800rp
mに上げ10分間、脱液を行った。脱液終了後、バスケ
ット内の固形分を掻き取り、槽容積1.1kLの円錐回
転型乾燥機(ダブルコーンドライヤー)に投入した。
【0125】以降、遠心濾過機へのスラリーの供給から
円錐回転型乾燥機への固形分の投入に至る操作を4回繰
り返し、混合槽内のスラリーの全量を処理した。円錐回
転型乾燥機を10rpmで回転させ、投入した固形分を
50℃の温度、2Torrの圧力で6時間乾燥し、精製
ラクチド611kgを得た(精製収率:87.0%)。
【0126】得られた精製ラクチドの組成をHPLCで
分析すると、L−ラクチド及びD−ラクチド:98.7
6重量%、メソ−ラクチド:0.82重量%、乳酸の直
鎖二量体:0.19重量%、乳酸:0.23重量%であ
った。また、この精製ラクチドのエタノール含有率をG
Cで測定すると360ppmであり、若干のエタノール
臭が感じられた。この精製ラクチドの水分含有率をカー
ルフィッシャー水分測定装置で測定すると21ppmで
あった。また、この精製ラクチドは流動性の良好な粒子
状であり、密封し、20℃で1ヶ月管保存した後も、こ
の流動性は失われなかった。
【0127】[実施例4(未変性エタノール再結晶
法)]上記合成例1で得られた粗ラクチド200.0g
と未変性エタノール200.0gを混合し、得られた混
合液を攪拌しながら70℃に加熱し、粗ラクチドを完全
に溶解させた。得られた溶解液を攪拌しながら15℃に
冷却し、ラクチドを析出させスラリーを得た。
【0128】濾過瓶上に装着されたガラス濾過器(ブフ
ナー型、最大細孔経20〜30μm)にこのスラリーを
移し、濾過瓶をアスピレーターで約2分間減圧しスラリ
ー中の液体を吸引濾過した。分離された固形分をロータ
リーエバポレーターを用い、60℃、10Torrで2
時間乾燥し、精製ラクチド144.9gを得た。
【0129】得られた精製ラクチドの組成をHPLCで
分析すると、L−ラクチド及びD−ラクチド:99.6
5重量%、メソ−ラクチド:0.24重量%、乳酸の直
鎖二量体:0.03重量%、乳酸:0.00重量%であ
った。また、この精製ラクチドの水分含有率をカールフ
ィッシャー水分測定装置で測定すると27ppmであっ
た。また、この精製ラクチドは流動性の良好な粒子状で
あり、密封し、20℃で1ヶ月管保存した後も、この流
動性は失われなかった。
【0130】(精製ラクチド中のL−ラクチド量の計
算)得られた精製ラクチドを加水分解し、それをHPL
C分析したところ、L−乳酸の光学純度は99.3%ee
であった。従って、実施例1における計算と同様にし
て、総ラクチド中のL−ラクチドの濃度は99.6重量
%以上となる。
【0131】[実施例5(ラクチドの豆腐凝固剤として
の利用)]実施例4で得られた精製ラクチド30gを水
50ml中に分散させた。この分散液を、10重量%固
形分含量に調整された83℃の豆乳10kgの中に加
え、15分間放冷して凝固させた。常法に従って押し、
箱出し、および水さらしを行って、木綿豆腐を得た。得
られた豆腐は、均一できめが細かい切断面を有し、食
味、風味の良いものであった。
【0132】[実施例6(変性エタノール再結晶法)]
変性剤として長谷川香料株式会社製フレーバーH−11
が99度1級の発酵エタノール 1Lに対し5.0g混
和された変性エタノールを用いた。この変性エタノール
300.0gに、上記合成例1で得られた粗ラクチド2
00.0gを混合した。得られた混合液を攪拌しながら
60℃に加熱し、粗ラクチドを完全に溶解させた。
【0133】得られた溶解液を攪拌しながら15℃に冷
却し、ラクチドを析出させスラリーを得た。濾過瓶上に
装着されたガラス濾過器(ブフナー型、最大細孔経20
〜30μm)にこのスラリーを移し、濾過瓶をアスピレ
ーターで約2分間減圧しスラリー中の液体を吸引濾過し
た。
【0134】吸引濾過後、ガラス濾過器に新たに15℃
の99度1級の変性エタノール(発酵アルコール)10
0gを加え、濾過瓶をアスピレーターで約2分間減圧し
吸引濾過した。分離された固形分をロータリーエバポレ
ーターを用い、40℃、4Torrで2時間乾燥し、精
製ラクチド161.2gを得た。
【0135】得られた精製ラクチドの組成をHPLCで
分析すると、L−ラクチド及びD−ラクチド:99.7
2重量%、メソ−ラクチド:0.18重量%、乳酸の直
鎖二量体:0.02重量%、乳酸:0.00重量%であ
った。また、この精製ラクチドの水分含有率をカールフ
ィッシャー水分測定装置で測定すると22ppmであっ
た。また、この精製ラクチドは流動性の良好な粒子状で
あり、密封し、20℃で1ヶ月管保存した後も、この流
動性は失われなかった。
【0136】(精製ラクチド中のL−ラクチド量の計
算)得られた精製ラクチドを加水分解し、それをHPL
C分析したところ、L−乳酸の光学純度は99.4%e
eであった。従って、実施例1における計算と同様にし
て、総ラクチド中のL−ラクチドの濃度は99.7重量
%以上となる。
【0137】[実施例7(ラクチドの豆腐凝固剤として
の利用)]実施例6で得られた精製ラクチドを乳鉢で粉
砕し、その0.60gを25℃の豆乳(固形分濃度10
重量%)200gに加え攪拌した。得られた混合液を8
5℃で30分加熱し豆乳を凝固させた。次に、凝固した
豆乳を5℃の冷水中で冷却し、豆腐を得た。得られた豆
腐は、均一できめが細かい切断面を有し、食味、風味の
良いものであった。
【0138】以下の実施例8〜11では、実施例1で得
られた精製ラクチドを使用した。
【0139】[実施例8(ラクチドの動物性蛋白質凝固
剤としての利用)]加熱により熱変性を受けゲル化する
蛋白質のゲル強度変化を調べた。蛋白質として、ホエー
蛋白質単離物(Whey Prptein Isolate、以下「WPI」
という)を用いた。表1に示す種々の重量組成で、WP
Iとラクチド又はグルコノ・デルタ・ラクトン(以下
「GDL」という)とを混合し、さらに水を加え、攪拌
機で攪拌混合した。
【0140】この溶液を容器に充填し、その後70℃ま
で加熱した。70℃になった後放冷して、室温(20〜
25℃)で1時間放置した。その時のゲル強度(g/c
3)をカードメーター(イイオ電機製)を用いて測定
した。
【0141】表1より、GDLはWPIと反応して強固
なゲルを形成する前に、GDL分解によって生じたグル
コン酸の低pHのために、WPIを熱変性させて、ゲル
形成能を阻害してしまった。そのため、ゲル強度は、カ
ードメーターで測定できる下限の強度未満であった。一
方、ラクチドは、加熱前にはそれ程分解することはな
く、WPIを熱変性させてしまうことがないので、強固
なゲルが形成された。
【0142】
【表1】
【0143】[実施例9(ラクチドの動物性蛋白質凝固
剤としての利用)]クリームチーズ様食品の製造を行っ
た。水65.32kgにナトリウムカゼイン12.75
kg及び粉末水アメ1.49kgを水和溶解した液を水
相とし、植物油脂(なたね微水添油脂7部とヤシ油3部
を混合したもの)48.28kgを加熱融解したものに
ソルビタン脂肪酸エステル280g、βカロチン1g及
びフレーバーを溶かし込んだものを油相として、水相及
び油相の両者を70℃で混合した。
【0144】この混合液に、水酸化カルシウム粉末8
5.2g及び塩化カルシウム二水塩333.7gを水2
kgに予め溶解したものと、リン酸水素二ナトリウム十
二水塩53.4gとリン酸水素カリウム32gを水80
0gに予め溶解したものとをこの順で添加した。その後
に、殺菌均質化し、30℃に冷却して乳化液を得た。
【0145】この乳化液に、ラクチド600gとレンネ
ット液(粉末として140mg)を加えて、30℃で5
時間保持したところ、pH5.6の液状酸性乳化物約1
32kgを得た。
【0146】これに食塩1000g、ラクチド840
g、グアーガム490g、及び粉末水アメ2.1kgを
混合して、融解釜を用いて87℃で殺菌した。その後容
器に充填、冷却して、クリームチーズに非常に風味の似
た食品が得られた。この風味は、ラクチドの代わりにG
DLを用いて得られた食品よりも、天然のものに近いも
のであった。
【0147】[実施例10(ラクチドの動物性蛋白質凝
固剤としての利用)]タマゴ豆腐様食品の製造を行っ
た。粉末卵100kgに、食塩0.1g及び水1200
gを加えて溶解させ、攪拌しながらに加熱した。沸騰し
た後、ラクチド4gを加えて、軽く攪拌して混合し、直
ちに型容器に流し込み冷却した。ゼリー状のタマゴ豆腐
様食品が得られた。この食品は、ラクチドの代わりにG
DLを用いて得られた食品よりも、良好な風味であっ
た。
【0148】[実施例11(ラクチドの動物性蛋白質凝
固剤としての利用)]ヨーグルト様食品の製造を行っ
た。脱脂粉乳溶液(固形分重量12%)80重量%と、
分離大豆蛋白質20重量%とを水に溶解して、加熱、沸
騰後冷却し、固形分重量12%の混合溶液を得た。
【0149】この混合溶液1リットルに、ラクチド15
g及びプロメライン(半井化学社製試薬)600ユニッ
トを添加し、70℃で40分間加熱して、冷却した。ヨ
ーグルト様食品が得られた。この食品は、ラクチドの代
わりにGDLを用いて得られた食品よりも、良好な風味
であった。
【0150】本発明は、その精神または主要な特徴から
逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施すること
ができる。そのため、前述の実施例はあらゆる点で単な
る例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。さら
に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変更は、すべて
本発明の範囲内のものである。
【0151】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、L−ラ
クチド及び/又はD−ラクチドの含有率の高い精製ラク
チドを、簡単な装置及び操作により、短時間で高収率で
得ることができる。また、本発明によれば、人体に対し
て有害な有機溶剤が残留することがなく、作業性の良い
精製ラクチド得ることができる。
【0152】本発明により得られた精製ラクチドは、安
価であり、かつ食品添加物用途に好適である。本発明に
よれば、光学活性を有するラクチドを主成分とする動物
性及び/又は植物性蛋白質凝固剤が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07D 319/12 C07D 319/12 4C022 Fターム(参考) 4B001 AC45 BC01 EC99 4B020 LB02 LK03 LR02 4B021 LW03 LW04 LW05 MK20 MP01 4B034 LB04 LK07X 4B035 LC16 LE02 LE04 LG07 LK04 LK19 LP21 4C022 LA02

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光学活性を有するラクチドを主成分とす
    る蛋白質凝固剤。
  2. 【請求項2】 蛋白質が動物性蛋白質及び/又は植物性
    蛋白質である、請求項1に記載の蛋白質凝固剤。
  3. 【請求項3】 光学活性を有するラクチドがL体であ
    る、請求項1に記載の蛋白質凝固剤。
  4. 【請求項4】 ラクチドの総量に対して、L−ラクチド
    が85重量%以上である、請求項3に記載の蛋白質凝固
    剤。
  5. 【請求項5】 光学活性を有するラクチドがD体であ
    る、請求項1に記載の蛋白質凝固剤。
  6. 【請求項6】 ラクチドの総量に対して、D−ラクチド
    が85重量%以上である、請求項5に記載の蛋白質凝固
    剤。
  7. 【請求項7】 ラクチド中に含まれる乳酸単量体及び/
    又は直鎖乳酸重合体の量が2.0重量%以下である、請
    求項1〜6項のうちのいずれか1項に記載の蛋白質凝固
    剤。
  8. 【請求項8】 ラクチドは、発酵乳酸を原料として合成
    されたものである、請求項1に記載の蛋白質凝固剤。
  9. 【請求項9】 ラクチドは、発酵による乳酸であって、
    L体又はD体の光学純度が90%ee以上である乳酸を原
    料として合成されたものである、請求項1に記載の蛋白
    質凝固剤。
  10. 【請求項10】 請求項1に記載の蛋白質凝固剤を使用
    して製造されたヨーグルト、チーズ、豆腐、ハム、ソー
    セージ又はかまぼこ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN100343247C (zh) * 2005-10-17 2007-10-17 南京工业大学 用乙醇重结晶丙交酯的方法

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