JP2001133407A - 陰イオン濃度の測定方法 - Google Patents

陰イオン濃度の測定方法

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JP2001133407A
JP2001133407A JP31478699A JP31478699A JP2001133407A JP 2001133407 A JP2001133407 A JP 2001133407A JP 31478699 A JP31478699 A JP 31478699A JP 31478699 A JP31478699 A JP 31478699A JP 2001133407 A JP2001133407 A JP 2001133407A
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boronic acid
acid diester
organic boronic
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Hiromasa Yamamoto
博将 山本
Hiroaki Taira
浩昭 平
Seiji Shinkai
征治 新海
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Tokuyama Corp
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Tokuyama Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 被検体液中の陰イオン濃度を高感度、高選択
的かつ簡便に測定する方法を提供すること。 【解決手段】 炭酸水素イオン等の陰イオンを含む被検
体液と、ピレニル基のような発蛍光性を示す原子団を有
する有機ボロン酸ジエステル化合物とを接触させた後、
該有機ボロン酸ジエステル化合物に光を照射したときに
発生する蛍光の強度を測定し、測定された蛍光の強度を
指標として、例えば予め作製した検量線等を用いて陰イ
オン濃度に換算することにより、前記被検体液中の陰イ
オン濃度を決定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、陰イオン濃度の測
定方法に関する。詳しくは、発蛍光性を示す原子団を有
する有機ボロン酸ジエステル化合物を用いる陰イオン濃
度の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】陰イオンの濃度分析は、臨床検査、環境
分析および食品分析など幅広い分野において行われる検
査項目である。例えば炭酸水素イオンの濃度測定は臨床
検査において、生体の呼吸および代謝機能の状態を把握
するために重要な因子であり、腎疾患などの種々の診断
に役立つ。またリン酸イオン濃度は飲料水などの食品分
析、臨床検査、環境分析等において、酢酸イオン濃度は
食品分析や臨床検査において有用な検査項目である。
【0003】これら陰イオンの濃度測定に関しては、例
えば臨床検査においては、炭酸水素イオンについては一
般に酵素法、試料のpHと炭酸ガス分圧(PCO2)の測
定値を勘案し濃度算出をする方法が用いられている。ま
た、リン酸イオンについてはリンモリブデン酸法、酵素
法が用いられ、酢酸イオンについては酵素法、ガスクロ
マトグラフ法などが用いられている。さらに、臨床検査
で採用されているこれら測定法のほかに、一般的な陰イ
オン測定方法としてイオンクロマトグラフ法が知られて
いる。
【0004】しかしながら、一般に酵素を用いた分析法
においては、生体に由来する酵素を用いる必要があるた
め測定時の温度管理を厳密にする必要があること、酵素
自体の保存安定性が低い等の問題点がある。また、炭酸
水素イオン濃度測定に用いられる、試料のpH測定と炭
酸ガス分圧(PCO2)測定を組み合わせる場合には、高
価な装置を用い、かつ測定系が複雑であるため装置のメ
ンテナンスが煩雑であるという問題点がある。また、リ
ン酸イオン濃度測定に用いられるリンモリブデン酸法
は、通常、手作業で行うため操作が煩雑であり測定時間
が長くかかることから多検体測定には向かないという問
題点がある。またガスクロマトグラフ法、イオンクロマ
トグラフ法は高精度という特徴はあるものの、装置が高
価で装置のメンテナンスが煩雑であるなどの問題があ
る。
【0005】これらの測定方法に対して、簡易な設備で
容易に測定可能な検出方法として、物質自体の、または
その誘導体の特有な蛍光を利用するか、あるいはある蛍
光性物質に対する消光を利用する分析方法である蛍光分
析法が知られている。しかしながら、蛍光分析法を用い
て炭酸水素イオン、リン酸イオン、又は酢酸イオン等の
陰イオン濃度を高感度、高精度に測定できる方法は今ま
で知られていない。
【0006】例えば、BEERらは蛍光性ビピリジル骨格及
びフェロセニル基を含むレセプタを用いた陰イオン分析
を報告している(ポリヘドロン、15巻、p2457、
1996年)が、測定感度に関する記述はなされていな
い。またNISHIZAWAらは蛍光性ピレニル骨格及びチオ尿
素基を含む中性レセプタを用いた陰イオン分析を報告し
ている(アナリティカル サイエンシーズ、13巻、SU
PPLEMENT、p485、1997年)。しかしながら感度
は充分に満足できるものではなく酢酸イオンが10-4
ol/l程度の感度で分析できることが示されている程
度である。また炭酸水素イオンについては蛍光を用いた
測定は、本発明者等の知る限り報告されていない。
【0007】また、蛍光性を示す遊離のボロン酸を用い
ることにより陰イオンが分析できることが報告されてお
り、例えば、湯地により1−ナフチルボロン酸を用いる
ことによりフッ素イオンを選択的に検出可能なことが示
されている(分析化学、47巻、p653、1998
年)。しかしながら、上記のような蛍光性を示す遊離の
ボロン酸を用いた陰イオン測定は、フッ素イオン分析に
限られているのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、炭酸水素イ
オン、リン酸イオン、酢酸イオン等の陰イオンの濃度を
簡便に、しかも高感度かつ高選択的に測定することがで
きる測定法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、かかる課
題を解決し得る測定法を開発すべく鋭意研究を重ねてき
た。その結果、発蛍光性を示す原子団を有する有機ボロ
ン酸ジエステル化合物を用いて蛍光検出を行うことによ
り、溶液中の陰イオン濃度を高選択的、かつ高感度でし
かも簡便に測定できることを見い出し、本発明を完成す
るに至った。
【0010】即ち、本発明は、陰イオンを含む被検体液
と発蛍光性を示す原子団を有する有機ボロン酸ジエステ
ル化合物とを接触させた後、該有機ボロン酸ジエステル
化合物に光を照射したときに発生する蛍光の強度を測定
し、測定された蛍光の強度を指標として前記被検体液中
の陰イオン濃度を決定することを特徴とする陰イオン濃
度の測定方法である。
【0011】上記本発明の測定方法において、有機ボロ
ン酸ジエステル化合物中の発蛍光性を示す原子団とは、
例えばピレニル基、ナフチル基、アンスリル基、または
フェナンスリル基である。また、有機ボロン酸ジエステ
ル化合物が下記式(1)
【0012】
【化2】
【0013】で示される有機ボロン酸ジエステル化合物
である場合には、該化合物の合成が容易であり、高感度
な測定ができるという特徴がある。
【0014】本発明の測定方法によれば、被検体液中に
存在する炭酸水素イオン、リン酸イオン、又は酢酸イオ
ン等の陰イオン濃度を高感度かつ高選択的に、しかも簡
便に測定することできる。このような効果が得られる作
用機構は必ずしも明らかではないが、発蛍光性を示す原
子団を有する有機ボロン酸ジエステル化合物のホウ素原
子と陰イオンとが錯体を形成することによって、発蛍光
性原子団から発せられる蛍光強度が変化するためと推定
される。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の測定方法では、被検体液
中の陰イオン濃度を測定する。ここで、被検体液に含ま
れる陰イオンは、負に荷電した原子または原子団であれ
ば特に限定されないが、測定感度の点から、炭酸水素イ
オン、リン酸イオン、又は酢酸イオンであるのが好適で
ある。
【0016】さらに本発明で使用する被検体液は、陰イ
オンを含有する溶液であれば特に限定されず、血清、血
漿、リンパ液等の体液由来の溶液、工場廃水、水道水等
の各種溶液の他、これら溶液を緩衝液や水等で希釈した
り、妨害イオンのマスキング処理を施したりして調整し
た溶液を何ら制限なく使用できる。被検体液は水溶液に
限らずジメチルスルホキシド、メタノールなどの有機溶
媒、あるいは水と有機溶媒との混合物からなる溶液を何
ら制限なく使用できる。一般に被検体液に浮遊物が存在
すると分析精度が低下する傾向があるため、ろ過などの
方法により懸濁液から浮遊物を除去した溶液を用いるこ
とが、より好ましい。
【0017】なお、これら被検体液中に含まれる陰イオ
ンの種類は1種類であっても2種類以上であってもよ
い。また、該被検体液中には陰イオン以外の他の成分が
溶解する形で含まれていてもよい。当該他の成分の例と
しては、エステル類、炭化水素類などの有機物、アルカ
リ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオン等の金属イ
オンが挙げられる。
【0018】但し、被検体液中に含まれる陰イオンの種
類が2種類以上である場合には、陰イオンの種類によっ
て測定感度が大きく異なる場合があるため、後述する方
法により測定される蛍光強度から直ちに総陰イオン濃
度、或いは特定の陰イオンの濃度を求めることは出来な
い。
【0019】この様な場合には、被検体液中に含まれる
特定の1種類の陰イオンを目的陰イオンとし、被検体液
中に存在する他の陰イオン(妨害イオン)を適当なマス
キング剤で処理して、妨害イオンに基づく蛍光が起こら
なくしてから該目的陰イオンの濃度を測定するのが好適
である。この様な処理をすることにより、目的の陰イオ
ン濃度を高感度かつ容易に測定することが可能となる。
例えば、臨床検査において炭酸水素イオン濃度を測定す
る場合には、妨害となるリン酸イオンをカルシウムイオ
ンあるいはバリウムイオンを用いて沈殿化させ溶液系か
ら排除することにより炭酸水素イオン濃度を高感度かつ
高選択的に測定することが可能となる。
【0020】また、他の方法により妨害イオンの種類及
び各種類毎の濃度を明らかとしておくことにより、目的
とする陰イオン濃度を高感度かつ高選択的に測定するこ
とも可能である。
【0021】上記被検体液中に含まれる陰イオン濃度は
特に限定されないが、正確度の観点から目的陰イオンの
濃度として10-6〜10-1M(Mはmol/lを意味す
る)が好適である。
【0022】本発明の測定方法では、前記被検体液と、
発蛍光性を示す原子団を有する有機ボロン酸ジエステル
化合物(以下、蛍光性有機ボロン酸ジエステルともい
う。)とを接触させた後、該蛍光性有機ボロン酸ジエス
テルに光を照射したときに発生する蛍光の強度を測定
し、測定された蛍光の強度を指標として前記被検体液中
の陰イオン濃度を決定する。
【0023】本発明において、発蛍光性を示す原子団を
有する有機ボロン酸化合物としてジエステル化合物を用
いることが必須である。例えば、発蛍光性を示す原子団
を有する有機ボロン酸化合物として遊離の有機ボロン酸
を用いた場合には、フッ素イオン以外の陰イオン濃度を
高感度に測定することは困難であるのに対し、有機ボロ
ン酸ジエステル化合物を用いることによって、リン酸二
水素一イオンおよびリン酸一水素二イオン(以下総称し
てリン酸イオンと言う)、炭酸水素イオン、酢酸イオン
等の多くの陰イオンについてもその濃度を高選択的、か
つ高感度で分析することが可能となる。
【0024】本発明で使用する蛍光性有機ボロン酸ジエ
ステルは、発蛍光性を示す原子団を有する必要があり、
該蛍光性有機ボロン酸ジエステルを一般式で表せば、下
記一般式(2)で示される。
【0025】
【化3】
【0026】(式中、FLは置換基を有しても良い発蛍
光性を示す原子団であり、X1およびX2は有機基であ
り、これらが互いに結合して環を形成してもよい。) 上記一般式(2)においてFLは発蛍光性、すなわち吸
収した光エネルギーを蛍光として放出する性質を示す原
子団(fluorophore)を意味する。該原子団としては、
一般にπ電子系を含む多くの原子団が適用可能である
が、原料の入手が容易であることから、ピレニル基、ナ
フチル基、アンスリル基またはフェナンスリル基等の芳
香族炭化水素基が好適である。これらのなかでも良好な
蛍光特性を与えることから、特にピレニル基が好適であ
る。
【0027】上述したような発蛍光性の原子団は、発蛍
光性に影響を与えない限り、適当な置換基を有していて
も良い。置換基の種類は発蛍光性を示す原子団の種類に
よって異なるが、一般にメチル基、プロピル基、sec
−ブチル基等の直鎖または分岐のアルキル基、フェニル
基、トルイル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチ
ル基等のアラルキル基、スルホン酸基(SO3H)、リ
ン酸基(PO3H)等の水溶性を付与する置換基、また
はこれら水溶性付与基の塩を挙げることが出来る。特に
水溶性付与基は、該化合物を被検体液が水溶液の場合
に、その中に含有している陰イオン濃度を測定する際に
特に好適である。
【0028】なお、発蛍光性を示す原子団とホウ素原子
との結合位置に関しては、発蛍光性が失われない限り特
に制限はなく、例えば発蛍光性を示す原子団がピレニル
基の場合においては、ピレニル基の1位、2位、4位、
5位のいずれの位置にホウ素原子が置換した化合物も好
適に用いることが出来る。
【0029】上記一般式(2)中、ホウ酸基と結合する
有機基であるX1およびX2は、特に制限はないが、一般
には、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭
化水素基等の炭化水素基;複素環基;及びこれらの炭化
水素基または複素環基の末端に−O−、−CO−、−C
OO−、−CONH−、−CON<、−N=CH−等の
極性基が結合した基等が挙げられる。X1およびX2は互
いに同一であっても異なっていてもよく、また、互いに
結合して環を形成してもよい。
【0030】両者が互いに結合して環を形成する場合の
例としては、上記した炭化水素基または複素環基同士が
−O−、−CO−、−COO−、−CONH−、−CO
N<、−N=CH−等の極性基を介して結合した例を挙
げることができる。X1とX2が結合して環を形成してい
る場合には、蛍光性有機ボロン酸ジエステルのエステル
部分の加水分解反応が起こりにくため、本発明に用いる
蛍光性有機ボロン酸ジエステルとして使用したときに、
化合物の安定性が高いことによる効果として測定の再現
性が良く、高選択性が得られるなどの利点があり、より
好適に用いられる。
【0031】このような、本発明で好適に用いられる蛍
光性有機ボロン酸ジエステルとしては、下記一般式
(3)で表わされる化合物が挙げられる。
【0032】
【化4】
【0033】(式中、FLは置換基を有しても良い発蛍
光性を示す原子団であり、Zは炭素数2以上の2価の有
機基である。) 上記一般式(3)中、Zで示される炭素数2以上の2価
の有機基には置換基が存在していてもよく、置換基とし
てはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、メル
カプト基、アミノ基、イミノ基等が合成の容易さゆえ好
適に用いられる。
【0034】上記一般式(3)中、Zとボロン酸ジエス
テル部分(−O−B−O−)とで形成される環は、5あ
るいは6員環である場合に安定性が高いことから、Zに
よって形成される環部分の主鎖の炭素数は2〜3個であ
ることが好ましい。さらに原料の入手の容易さや合成時
における収率の高さ等の観点から、本発明で用いる蛍光
性有機ボロン酸ジエステルとしては、Zが置換基を有し
ていてもよいトリメチレン基である、下式(4)で表さ
れる有機ボロン酸ジエステル化合物が特に好ましい。
【0035】
【化5】
【0036】なお、上記式において、ホウ素原子とピレ
ニル基の結合位置は、ピレニル基の1位、2位、4位、
5位のいずれであってもよい。
【0037】このような蛍光性有機ボロン酸ジエステル
を用いた場合には、後述する図1に示されるように、炭
酸水素イオン、リン酸イオン、及び酢酸イオンに対する
感度が特に高く、これらいずれかの陰イオンの濃度を測
定する場合には、被検体液中に硝酸イオン、チオシアン
酸イオン、塩素イオン等の妨害イオンが共存しても、目
的の陰イオン濃度を選択的且つ高精度に測定することが
出来る。
【0038】このため、硝酸イオン、チオシアン酸イオ
ン、塩素イオン等の妨害イオンが共存する血液、尿等の
生体液に由来する被検体液中の炭酸水素イオンを測定す
るに際しては、上記(4)式で示されるような蛍光性有
機ボロン酸ジエステルを用いるのが特に好適であると言
える。
【0039】本発明で使用する蛍光性有機ボロン酸ジエ
ステルは一般に公知の方法を用いて合成することができ
るが、好適に採用される合成方法を例示すれば以下の通
りである。
【0040】即ち、まず臭素置換の発蛍光性を示す原子
団を有する化合物にトリアルコキシボランをn−ブチル
リチウム存在下で反応させて、有機ボロン酸化合物を合
成する。次に、有機ボロン酸化合物にエチレングリコー
ルもしくはプロパンジオールなどのジオール化合物を反
応させることにより、蛍光性有機ボロン酸ジエステルが
得られる。さらに、反応液からシリカゲル粒子を固定相
としたカラムクロマトグラフィー、あるいは蒸留、再結
晶などにより精製することで、目的とする蛍光性有機ボ
ロン酸ジエステルが高純度で得られる。ここで用いる精
製溶媒としてはクロロホルム、アセトン、メタノール等
の公知の溶媒が単独あるいは2種以上混合して用いられ
る。
【0041】精製された蛍光性有機ボロン酸ジエステル
は、薄層クロマトグラフィー分析で単一のピークを示す
ことより、純粋な化合物であることが確認される。TL
C分析に用いる担体としてはシリカゲルあるいはアルミ
ナが好適に用いられ、また展開溶媒としてはクロロホル
ム、アセトン、メタノール等の公知の溶媒を単独あるい
は2種以上混合して用いることができる。更にプロトン
NMR、元素分析等により化合物構造を確認することが
出来る。
【0042】本発明の測定方法においてはまず、陰イオ
ンを含む被検体液と蛍光性有機ボロン酸ジエステルとを
接触させる。両者を接触させる方法は特に限定されない
が、被検体液が蛍光性有機ボロン酸ジエステルを溶解す
る場合には被検体液に蛍光性有機ボロン酸ジエステルを
直接添加して接触させる方法、或いは蛍光性有機ボロン
酸ジエステルをあらかじめ溶解させた溶液を調製し、こ
れを被検体液と接触させる方法(これら方法を総称して
均一系接触法ともいう。)を好適に用いることができ
る。
【0043】後者の方法において使用する溶媒として
は、蛍光性有機ボロン酸ジエステルを溶解し得る溶媒で
あり、かつ被検体液と混和可能な溶媒であれば制限なく
用いることができる。この様な溶媒を例示すれば、ジメ
チルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、
アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒、
水、あるいはこれら有機溶媒と水の混合溶液等を挙げる
ことができる。
【0044】上記蛍光性有機ボロン酸ジエステル溶液を
中の蛍光性有機ボロン酸ジエステルの濃度は、濃度消光
が無視できる範囲内であれば特に制限はない。用いる蛍
光性有機ボロン酸ジエステルの量子収率、用いる蛍光測
定器の検出感度、被検体液中に含まれる陰イオン濃度に
よっても若干異なるが、蛍光性有機ボロン酸ジエステル
の濃度は一般には10-8から10-4Mの濃度範囲であれ
ば特に問題はない。
【0045】また、被検体液と蛍光性有機ボロン酸ジエ
ステルとを接触させる方法として、膜状物などの固体相
に予め蛍光性有機ボロン酸ジエステルを固定化してから
被検体液と接触させてもよい(該方法を不均一系接触法
ともいう。)。例えば、膜状物に固定化する場合、バイ
ンダー樹脂等に蛍光性有機ボロン酸ジエステルを混合
し、得られた混合物を液膜又はスピンコート膜等の薄膜
にすればよい。バインダー樹脂等としては、蛍光性有機
ボロン酸ジエステルに悪影響を与えないものであれば、
一般的な液膜やスピンコート膜を調製するのに通常使用
されているものが制限なく用いられる。例えば、液膜を
調製する場合には、バインダー樹脂としてポリ塩化ビニ
ル樹脂、可塑剤としてジオクチルセバケートを用いるこ
とが出来る。またスピンコート膜を調製する場合には、
ポリビニルアルコール等をバインダー樹脂として用いる
ことが出来る。
【0046】上記のような膜状物中における蛍光性有機
ボロン酸ジエステルの濃度は、濃度消光が無視できる範
囲内であれば特に制限なく、用いる蛍光性有機ボロン酸
ジエステルの量子収率、用いる蛍光測定器の検出感度、
被検体液中に含まれる陰イオン濃度等によって適宜決定
すればよいが、通常は10-7〜10-3Mの濃度範囲であ
る。なお、被検体中の陰イオン濃度が低いほど、蛍光性
有機ボロン酸ジエステルの濃度が高い膜状物を用いるの
が好適である。
【0047】本発明においては、上記のようにして被検
体液と蛍光性有機ボロン酸ジエステルとを接触させた後
に、該蛍光性有機ボロン酸ジエステルに光を照射し、そ
のときに発生する蛍光の強度を測定する。
【0048】蛍光強度の測定は、一般的に用いられる蛍
光分析における測定と特に変わるところはなく、公知の
測定方法が制限なく採用できる。例えば、均一系接触法
により蛍光性有機ボロン酸ジエステルと被検体液とを接
触させる場合には、次のような方法により好適に行うこ
とが出来る。
【0049】すなわち、先ず、被検体液に蛍光性有機ボ
ロン酸ジエステルを直接或いは溶液化してから添加し、
攪拌する。次いで、得られた分析試料を蛍光セルに入
れ、分光光度計に取り付けて一定波長で励起し、発光波
長の蛍光強度を測定することにより好適に行うことが出
来る。
【0050】上記方法では、蛍光性有機ボロン酸ジエス
テルを励起するために照射する光としては一定波長の光
を照射するが、該波長としては、予め用いる蛍光性有機
ボロン酸ジエステルについて励起スペクトルを測定して
おき、最適な波長を選定すればよい。また、測定する発
光波長についても同様に予め用いる蛍光性有機ボロン酸
ジエステルについて発光スペクトルを測定し、最適な波
長を選定すればよい。
【0051】照射する光及び測定する蛍光の最適波長
は、用いる蛍光性有機ボロン酸ジエステルによって異な
るが、例えば、発蛍光性を示す原子団としてピレニル基
を有する蛍光性有機ボロン酸ジエステルにおいては、励
起波長は約350nm、発光波長は約380nmであ
る。
【0052】また、不均一系接触法により蛍光性有機ボ
ロン酸ジエステルと被検体液とを接触させる場合には、
蛍光性有機ボロン酸ジエステルと被検体液との接触が界
面のみで生じることから、透過光あるいは反射光を測定
することも可能ではあるが、発せられる蛍光強度が弱い
ため、測定感度を高めるために光導波路等の高感度化手
法を用いて測定することがより好ましい。高感度化は、
例えば、蛍光性有機ボロン酸ジエステルを含む膜状物を
光導波路に取付けて、被検体液と接触させた後に、光導
波路に励起波長の光を導入し、発光波長の蛍光強度を測
定することにより行うことが出来る。測定を行う際の励
起波長ならび発光波長は前記溶液系の場合と同様に用い
る蛍光性有機ボロン酸ジエステルの種類に応じて予め最
適な波長を選定しておけばよい。
【0053】本発明の測定方法では、この様にして測定
された蛍光の強度に基づき、該強度を指標として被検体
液中の陰イオン濃度を決定する。該陰イオン濃度の決定
は、予め陰イオン濃度が既知の標準溶液を用いて、蛍光
の強度と陰イオン濃度との相関関係を調べておき(具体
的には、検量線を作製し)、該相関関係(検量線)に基
づいて被検体液について測定された蛍光強度の実測値か
ら陰イオン濃度を決定すればよい。
【0054】
【実施例】以下に本発明をさらに具体的に説明するため
に実施例を掲げるが、本発明はこれら実施例に限定され
るものではない。
【0055】実施例1 まず以下の要領で検量線を求めた。
【0056】すなわち、塩濃度が10-7M〜4×10-4
Mの所定の濃度となるように、各塩をDMSOに溶解さ
せ標準溶液を調製した。塩としては、炭酸水素ナトリウ
ム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸一水素二ナトリ
ウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、チオシアン酸
ナトリウム、フッ化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸
ナトリウム、及び臭化ナトリウムを用いた。次に、下記
式(5)
【0057】
【化6】
【0058】で示される蛍光性有機ボロン酸ジエステル
を10-5M含むDMSO溶液(以下、ジエステル溶液と
言う)を調製した。
【0059】その後、前記標準溶液と、上記ジエステル
溶液を1:99の割合で混合することにより、蛍光性有
機ボロン酸ジエステルを10-7M、各塩を10-7M〜4
×10-4M程度含む試料溶液を得た。試料溶液の蛍光ス
ペクトルを測定し、励起波長を350nmとし、380
nmにおける蛍光強度を読み取った。なお、測定は日本
分光製、分光蛍光光度計FP−770型を用いて行なっ
た。
【0060】その結果得られた検量線、すなわちそれぞ
れの塩において塩濃度10-7Mの標準溶液を用いた試料
溶液の蛍光強度を基準(=1)とした場合の、各塩濃度
の試料溶液における相対蛍光強度を図1に示す。
【0061】次に、イオンクロマトグラフ法によりあら
かじめ濃度を検定した3種類の被検体液、2.0×10
-4M炭酸水素ナトリウムのDMSO溶液、2.0×10
-5Mリン酸二水素一ナトリウムのDMSO溶液、2.0
×10-4M酢酸ナトリウムのDMSO溶液を、ジエステ
ル溶液と99:1の割合で混合し試料溶液とした。試料
溶液の蛍光スペクトルを測定した。励起波長を350n
mとし、380nmにおける蛍光強度を読み取った。得
られた各試料溶液の蛍光強度を検量線と照合することに
より、各被検体液の濃度を算出した。その結果得られた
濃度は、炭酸水素ナトリウム溶液、リン酸二水素一ナト
リウム溶液、酢酸ナトリウム溶液についてそれぞれ、
2.0×10-4M、2.1×10-5M、2.1×10-4
Mであり、高感度および高精度で分析できることが確認
された。
【0062】よって本発明に従えば、蛍光性有機ボロン
酸ジエステルを用いることにより、高感度および高精度
に炭酸水素イオン、リン酸イオン、酢酸イオン等を分析
できることがわかる。
【0063】実施例2および比較例1 下記式(6)
【0064】
【化7】
【0065】で示される蛍光性有機ボロン酸ジエステル
と炭酸水素ナトリウムを適宜ジメチルスルホキシド(D
MSO)に添加することにより、蛍光性有機ボロン酸ジ
エステルを10-7M含有し、炭酸水素イオン濃度がそれ
ぞれ10-4M、10-6Mである2種類の溶液を調製した
(実施例2)。
【0066】また、下記式(7)
【0067】
【化8】
【0068】で示される遊離の蛍光性有機ボロン酸と炭
酸水素ナトリウムを適宜DMSOに添加することによ
り、遊離の蛍光性有機ボロン酸を10-7M含有し、炭酸
水素イオン濃度が10-4M、10-6Mである2種類の溶
液を調製した(比較例1)。
【0069】励起波長を348nmとした場合の、これ
ら4種類の溶液の蛍光強度を380nmにおいて測定し
た。測定は日本分光製、分光蛍光光度計FP−770型
を用いて行なった。2種類の塩濃度における蛍光強度を
それぞれI[10-4M]、I[10-6M]とした時の蛍
光強度比、すなわちI[10-4M]/I[10-6M]を
各蛍光性化合物について求めた。
【0070】その結果、蛍光強度比は実施例2の蛍光性
有機ボロン酸ジエステルを用いた場合では0.78であ
り、大きな蛍光変化が見られたの対して、比較例1の遊
離の蛍光性有機ボロン酸を用いた場合では0.97と蛍
光強度にほとんど変化がみられなかった。このことから
炭酸水素イオンの濃度測定については、遊離の蛍光性有
機ボロン酸を用いるよりも蛍光性有機ボロン酸ジエステ
ルを用いる方が高感度に行えることが分かる。
【0071】
【発明の効果】本発明の陰イオン濃度の測定方法では、
被検体液中に存在する陰イオンの濃度を、簡便に、しか
も高感度・高精度で測定することが出来る。特に、炭酸
水素イオン、リン酸イオン、酢酸イオン等の特定の陰イ
オンに対する測定感度は他の陰イオンに対する測定感度
より著しく高いため、夾雑物として他の陰イオン(妨害
イオン)を含む被検体中の上記何れかの特定陰イオン濃
度を測定する場合でも、妨害イオンの影響を受けること
が少なく、目的の陰イオン濃度を選択的に測定すること
が可能である。
【0072】この様に、本発明の陰イオン濃度測定方法
は、その操作の簡便性、測定感度の高さ等から、臨床検
査における血液、尿等の生体液に由来する被検体液中の
炭酸水素イオン濃度測定、その他被検体液中のリン酸イ
オン、又は酢酸イオンの濃度測定の他、飲料水、食酢な
どの食品分析における陰イオン濃度測定、並びに環境分
析における陰イオン濃度測定等に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本図は、実施例1において作製した、各種陰
イオンの濃度と蛍光強度との関係を示すグラフ(検量
線)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2G042 AA01 BB05 BB16 BD10 CA02 DA08 FA11 FB02 2G054 AA10 AB09 CA10 CE02 EA03 EB01 GA02 GA04 GB01 GB02 JA06 JA11

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陰イオンを含む被検体液と発蛍光性を示
    す原子団を有する有機ボロン酸ジエステル化合物とを接
    触させた後、該有機ボロン酸ジエステル化合物に光を照
    射したときに発生する蛍光の強度を測定し、測定された
    蛍光の強度を指標として前記被検体液中の陰イオン濃度
    を決定することを特徴とする陰イオン濃度の測定方法。
  2. 【請求項2】 有機ボロン酸ジエステル化合物が下記式 【化1】 で示される有機ボロン酸ジエステル化合物であることを
    特徴とする請求項1記載の陰イオン濃度の測定方法。
  3. 【請求項3】 測定される陰イオン濃度が、炭酸水素イ
    オン、リン酸イオン、又は酢酸イオンの濃度である請求
    項1又は請求項2の何れかに記載の陰イオン濃度の測定
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003071280A1 (en) 2002-02-22 2003-08-28 Japan Science And Technology Corporation Fluorescent sensor for phosphate ion and phosphorylated peptide

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