JP2001131780A - 錆安定化処理鋼材 - Google Patents

錆安定化処理鋼材

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JP2001131780A
JP2001131780A JP31327299A JP31327299A JP2001131780A JP 2001131780 A JP2001131780 A JP 2001131780A JP 31327299 A JP31327299 A JP 31327299A JP 31327299 A JP31327299 A JP 31327299A JP 2001131780 A JP2001131780 A JP 2001131780A
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rust
resin coating
steel material
iron
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Kenji Morita
健治 森田
Kaoru Sato
馨 佐藤
Shiro Miyata
志郎 宮田
Akihiro Takemura
誠洋 竹村
Tatsuya Shimoda
達也 下田
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 、耐候性鋼材本来の安定錆が効率良く生成さ
れると共に、安定錆形成過程での流れ錆等による外観不
良がなく、更に、処理剤皮膜下に安定錆を形成する際の
有機樹脂被覆層のフクレや剥離による外観悪化が極めて
起こりにくい。 【解決手段】 下層に50℃から300℃までの加熱に
よる質量減少量が10%以下の鉄化合物被膜を有し、上
層に有機樹脂被覆が施されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、錆安定化処理が
施された鋼材、更に詳しくは、錆安定化処理剤の硬化皮
膜が表面に形成された、Cu、Ni、Cr、Mo等の合
金元素が添加されている耐候性鋼材であって、耐候性鋼
材本来の安定錆が効率良く生成されると共に、安定錆形
成過程での流れ錆等による外観不良がなく、更に、処理
剤皮膜下に安定錆を形成する際の有機樹脂被覆層のフク
レや剥離による外観悪化が極めて起こりにくい、耐候性
に優れた錆安定化処理鋼材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】耐候性鋼は、Cu、Ni、Cr、Mo等
の元素を少量含有する低合金鋼であり、大気中に暴露す
ると腐食し、発錆する過程で保護性の強い錆層、即ち、
安定錆が自然に形成される。そして、安定錆が形成され
た後は、それ以降の腐食は減少し、最終的には腐食がほ
とんど進行しない特牲を持つ。
【0003】このような耐候性鋼は、形鋼、鋼板、鋼管
等各種鋼材に適用され、橋梁や鉄塔等の構造物として幅
広い用途がある。しかしながら、以下のような問題を有
していた。
【0004】耐候牲鋼材を裸使用する場合、鋼材表面に
安定錆が形成されるまでに5年以上の長期間を要し、そ
の間、浮き錆や流れ錆を生じ、流出した錆汁により周囲
環境を汚染すると共に外観を損なう。
【0005】そこで、耐候性鋼の表面に錆安定化処理と
称される表面処理を施して、上述の問題を解決した錆安
定化処理鋼材に関する技術が開示されている。
【0006】例えば、特公昭56−33991号公報に
は、2層被覆、即ち、下層に安定錆成分を含有する樹脂
被覆層、上層に耐候性、耐腐食性に優れた樹脂層が形成
された鋼材が開示され(従来技術1という)、特許番号第
2666673号公報には、安定錆形成促進作用を有す
る有機樹脂により被覆された鋼材が開示されている(従
来技術2という)。また、特開平6−322549に
は、耐候性鋼の下層にαFeOOH被膜を形成し、上層
に有機樹脂を被覆することによって、自由な色彩を可能
とすると共に、長期耐候性を有する鋼材が開示されてい
る(従来技術3という)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来技
術1は、安定錆形成過程における有機樹脂被覆層の劣化
過程での外観が悪く、有機樹脂被覆層のフクレや剥離が
発生し易い欠点がある。耐候性鋼は、錆が防食性を持つ
ことを特徴としており、塗り替えを前提としていない。
即ち、錆安定化処理を施した鋼材の表面では、いずれは
有機樹脂被覆層が劣化して錆が発生し防食する、即ち、
有機樹脂被覆層と錆とが置き換わることになる。しか
し、有機樹脂被覆層のフクレや剥離が発生すると、有機
樹脂被覆層と錆とが置き換わる期間中に外観むらを生
じ、構造物の外観が問題になる。
【0008】上記従来技術2は、安定錆を早期に形成す
るため、処理後の外観不良が避けられず、流れ錆等によ
る周辺環境の汚損も問題となる。また、早期に形成した
錆が真の安定錆として長期間機能するかどうか不明確で
ある。更に、初期に外観不良の問題があり、まして有機
樹脂被覆層が劣化したときの有機樹脂被覆層と錆との置
き換わりについては考慮されていない。
【0009】上記従来技術3は、例えば、地鉄と有機樹
脂被覆層との界面に生成する錆が平均的組成として主に
FeOOHとなっている場合、その結晶構造および結晶
質・非晶質等の構造に依存せず、高温に曝されると脱水
反応等を起こして質量を減じ、そのために体積が減少す
ると同時に水蒸気等が発生して、有機樹脂被覆層の剥離
の原因となる。このように、従来技術4の安定化処理鋼
材は、高温に曝されることによる錆の脱水等による体積
収縮によって有機樹脂被覆層の剥離を起こす危険性があ
った。
【0010】従って、この発明の目的は、耐候性鋼材本
来の安定錆が効率よく生成されると共に、安定錆形成過
程での流れ錆等による外観不良がなく、更に、処理剤皮
膜下に安定錆を形成する際の有機樹脂被覆層のフクレや
剥離による外観悪化が極めて起こりにくい、耐候性に優
れた錆安定化処理鋼材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明の基本構成につ
いて:熱分析等の結果によると、FeOOHは、その結
晶構造や結晶か非晶質かによらず、10℃/分程度の昇
温速度では、室温から約200℃程度まで徐々に脱水し
て質量が減少すると共に体積が収縮する。この範囲での
脱水反応は、主に、次の(1)式によって表される。
【0012】 FeOOH・nH2O → FeOOH+nH2O↑ ---(1) また、約200から300℃の間で急激に脱水すること
が知られている。その脱水反応は、下記(2)式のよう
なものである。
【0013】 2FeOOH(質量数178) → Fe23(質量数160)+H2O(質 量数18)↑ ---(2) 即ち、FeOOHの組成を持つ場合、約10%は脱水反
応によって質量を減ずると共に体積収縮をする。FeO
OH化合物は、有限の湿度を持っている限り、FeOO
Hだけでなく、若干の水分を含んでおり、通常は、室温
から200℃までの間に数%の質量を減じ、200℃か
ら300℃の間に10%の質量を減ずる。従って、室温
から300℃の間に十数%の質量を減ずる。
【0014】耐候性鋼等を構造物として用いる場合、日
当たり良好な南向きの鋼材は、50℃以上の高温に曝さ
れる場合がある。高温に曝された場合、上記(2)式の
反応が急激に起こることはないが、環境の乾燥状態によ
っては、上記(1)式の反応と共に非常にゆっくりでは
あるが(2)式の反応も起こり、脱水して体積を減じて
クラック等を発生し、そのために地鉄と錆との密着性を
確保できないことがある。また、腐食生成物に炭酸化鉄
等を含む場合にも加熱による質量減少および体積収縮現
象が起こる。この場合も同様にクラック等を発生して地
鉄と錆との密着性を確保できない。
【0015】本発明者等は、耐候性鋼の耐食性と鉄錆の
組成を詳しく調査した。この結果、表面の浮き錆を除去
して更に付着している錆の熱分析による50から300
℃までの加熱による質量減少量が10%以下である場
合、耐食性に優れることを新たに見出した。この原因
は、脱水反応等の熱によって質量および体積が減少する
反応がなく、そのために発生したクラックによって錆が
地鉄と密着して防食性を失うことがないためであること
を見出した。
【0016】更に、本発明者等は、加熱による質量減少
量が10%以下の酸化水酸化鉄および酸化鉄および炭酸
化鉄およびそれらの複合化合物等の鉄化合物皮膜を鋼材
に密着させて下層とし、その上に有機樹脂被覆を施した
鋼材の防食性を調査した。この結果、この鋼材は、単に
表面に有機樹脂被覆を施した鋼材、あるいは単にFeO
OHを主成分とする鉄錆が表面を覆った鋼材と比較し
て、長期耐食性が向上することを新たに見出した。
【0017】その原因は、有機樹脂被覆が地鉄と環境を
遮断すること、地鉄と鉄化合物との界面で形成された錆
(腐食生成物)は、50℃から300℃の温度範囲内で
の加熱質量減少量が少なく、そのために有機樹脂被覆の
剥離が起こりにくいこと、更に、鉄化合物と有機樹脂被
覆とを施した状態で形成された錆は、長期間、鉄化合物
と有機樹脂被覆とによって守られるため、有機樹脂被覆
が風化・消失したときに表面に現れる錆は、長期暴露さ
れた耐候性鋼の特徴となる防食性のある、いわゆる「安
定錆」的挙動を示すことにあると考えられる。
【0018】本発明者等は、地鉄が腐食した場合の有機
樹脂被覆と鋼材との界面で腐食が発生するほどの長期暴
露時の密着性を確保する方法を検討した。この結果、地
鉄−腐食生成物−有機樹脂被覆の構成より、地鉄−腐食
生成物−鉄化合物−有機樹脂被覆の構成の方が、長期大
気暴露時の鋼材と有機樹脂被覆との密着性が向上するこ
とを新たに見出した。
【0019】また、鉄化合物付着部と鉄化合物非付着部
とを比較すると、長期曝露時の鉄酸化物付着部の方が地
鉄と環境からの腐食促進因子を遮断する機能が強い。従
って、鉄化合物非付着部がより優先的に腐食することに
よって、腐食促進因子である塩素や硫素をアノードとし
て集中させ、その結果として鉄酸化物付着部では腐食が
進行しにくくなる。その結果、鋼材が腐食した場合、鉄
化合物非付着部では、優先的に腐食して一時的なアノー
ド状態となるため、腐食促進因子を集めることで鉄化合
物付着部を守り、鉄化合物付着部においては、鉄化合物
の加熱による体積膨張がないために初期の鉄化合物と塗
膜間の密着性を確保する。
【0020】即ち、鉄化合物被膜によって有機樹脂被覆
と鋼材の両方の密着性を確保することによって、全体と
して有機樹脂被覆の剥離を防止することができることを
新たに見出した。即ち、鋼材に鉄化合物付着部と鉄化合
物非付着部とを形成し、その上層に有機樹脂被覆層を形
成することによって、より強い防食性が得られることを
新たに見出した。つまり、この発明の鋼材は、鉄化合物
被膜を不連続に付着させた上で、有機樹脂被覆を施し
て、より強い防食性を得るものである。
【0021】例えば、鉄化合物被膜を連続的に形成した
場合における有機樹脂被覆の剥離の割合を50%とした
場合、鉄化合物被膜を不連続的に形成したときの鉄化合
物非付着部における有機樹脂被覆の剥離の割合が80
%、そして、鉄化合物付着部における有機樹脂被覆の剥
離の割合が20%になったとすると、結局、鉄化合物付
着部における有機樹脂被覆の密着性が強くなる。この結
果、鋼材全体の有機樹脂被覆密着性が向上するというも
のである。
【0022】50から300℃での質量減少量が少ない
鉄化合物を鋼材表面に生成させる方法としては、意図的
に素地調整を行なうことが挙げられる。ここで、素地調
整とは、次のことをいう。即ち、工場出荷後の鋼材表面
には、ミルスケールを含む錆層が形成されている。この
錆層は、下層が安定な鉄酸化物、表層が不安定な錆層か
らなるものである。従って、ショットブラストをかけて
鋼材表層の不安定な錆層を除去することをいう。別の方
法として、鋼材表面に水洗等によって鉄錆を生成させ、
この後、温風乾燥して表面の付着物を除去することが挙
げられる。
【0023】一般的には、素地調整により鉄錆を除去し
た方が有機樹脂被覆と鋼材との密着性は高い。しかし、
初期の有機樹脂被覆層の密着性は、鋼材表面に泥土や油
脂が付着していない限り、素地調整が軽度であっても実
用上の密着強度は確保されており、ほとんどの場合、問
題にならない。
【0024】この発明の顔料について:有機樹脂被覆中
に含有される顔料の含有量としては、有機樹脂被覆の添
加剤および顔料も含めた固形分100重量部に対して3
0から70重量部の顔料が含有されていることが望まし
い。以下、有機樹脂被覆層には必ず顔料を含んでおり、
顔料を含んだ有機樹脂被覆層を単に有機樹脂被覆層と呼
ぶ。このことにより、水蒸気透過性および酸素透過性を
確保することが可能となり、有機樹脂被覆層下の浸透圧
の発生が抑えられることによって有機樹脂被覆層のフク
レや初期の流れ錆がなく、有機樹脂被覆層に悪影響を与
えることなく有機樹脂被覆層下の安定錆形成を実現する
ことが可能となる。
【0025】このような有機樹脂被覆は、下地鋼材に5
0から300℃における加熱質量減少量10%以下の鉄
化合物被膜を有している場合、望ましくは鉄化合物被膜
が不連続な場合、有機樹脂被覆との密着性を確保される
ことにより一層の効果が得られる。
【0026】この発明の色調について:有機樹脂被覆に
欠陥が無ければ、鉄の腐食生成物は表面に流出すること
はないが、全く欠陥の生じない有機樹脂被覆は存在し得
ない。そのため、鉄錆の色調に似せない自由な色調を呈
した有機樹脂被覆に欠陥が生じた場合、あるいは、鉄腐
食生成物が表面へ流出して汚れて、外観を損なってしま
った場合には塗り替え等の作業を行う場合がある。
【0027】しかし、この発明の鋼材表面の有機樹脂被
覆層の色調は、発生する鉄腐食生成物と区別が付きにく
いようにコントロールし、有機樹脂被覆層に欠陥を生じ
て鉄腐食生成物が流出した場合においても、汚れと見な
されることが少なく、そのために塗り替え等のないミニ
マムメンテナンスが実現されるものである。この発明の
鋼材は、初期に主に有機樹脂被覆によって防食し、暴露
期間中に耐候性鋼の特徴である安定錆を有機樹脂被覆と
地鉄との界面に形成させ、その際の有機樹脂被覆との密
着性も確保し、更に、長期においては熟成された安定錆
によって優れた防食性を持つものである。
【0028】しかし、安定錆形成前に、僅かに存在する
有機樹脂被覆の欠陥部等を起点にした流れ錆を完全に防
止する事は不可能である。例えば、長期における安定錆
熟成前に有機樹脂被覆上の流れ錆によって外観が劣化し
てしまったような場合、安定錆の熟成は進んでいるにも
かかわらず、塗り替えが必要になる事態が考えられる。
このような場合には、この発明の優れた耐食性が実現で
きない。
【0029】そこで、鋼材表面の色調として、流れ錆が
発生しても外観劣化を極力抑える手段が特に重要とな
る。そのために、この発明の鋼材が錆色に近い色調を有
することは、密着した有機樹脂被覆と鋼材との界面に存
在する安定錆が形成されるまでに外観劣化のトラブルを
起こさないために重要となってくる。
【0030】鋼材の色調コントロール方法としては、有
機樹脂被覆中に鉄黒、ベンガラ、アンチモン黄、タルク
等の着色顔料、特に、耐光性が優れ、長期に色あせるこ
とがない顔料を配合することが好ましい。また、色調の
範囲としては、鉄錆色が黄色から褐色を帯びているため
に、鉄錆色と混合した場合の外観の印象により不快でな
いものが望ましい。即ち、錆色の補色系の色調である青
色、緑色、紫色の顔料と錆とが混合した場合、全体とし
て黒いまだら状の外観となるために、汚れと見なされや
すい。
【0031】このように、この発明の鋼材の色調は、汚
れと見なされにくいように調整した結果、マンセル表色
系で色相が45度から0度を通って60度であって、彩
度が30%以上、100%以下である必要がある。色相
範囲がこの発明範囲から外れると、青色、緑色、紫色の
いずれかの色調となり、外観に劣る。また、彩度が30
%未満であると外観が灰色状になり、錆色との区別が明
瞭となるために好ましくない。色相、彩度が上述の範囲
内であれば外観劣化は目立ちにくいが、錆をより目立た
なくするためには、明度と色相との関係が、以下の範囲
内であることが望ましい。
【0032】色相Hが345度以上、360度未満の場
合の明度Bの好ましい範囲: 0.7・(H−360)+45>B>0.7・(H−3
60)+15 色相Hが0度以上60度以下の場合の明度Bの好ましい
範囲: 0.7・H+45>B>0.7・H+15 この発明の有機樹脂被覆の風化性について:有機樹脂被
覆層は、長期の暴露期間中に紫外線等の光が照射される
ことによって、次第に風化していく。長期に大気暴露さ
れ、全く風化しない有機樹脂はほとんど存在しない。従
って、塗り替えを前提としない耐候性鋼としては、風化
挙動を考慮すべきである。
【0033】そのため、本発明者等は、風化時の挙動と
して、外観むらが生じない均一な風化特性を示すよう研
究を重ねた。この結果、有機樹脂被覆中に共役二重結合
および光崩壊性官能基の内の少なくとも1つを有し、且
つ、有機樹脂被覆層を1層にすることによって、風化時
の外観むらが生じ難くなることを明らかにした。このう
ち、共役二重結合および光崩壊性官能基は、良好な風化
特性を持つ有機樹脂被覆層であり長期暴露時に、外観上
は目立たないが除々に剥がれ落ちる。共役二重結合また
は光崩壊性官能基を持たない樹脂は、長期暴露時に有機
樹脂が鋼材に付着したまま劣化することによって剥離時
もフイルム状に剥離が生じて外観が劣る。
【0034】また、有機樹脂被覆層が1層であることに
よって、風化時の均一性が確保される。もし、有機樹脂
被覆層を2層以上とすると、有機樹脂被覆層に界面が生
じるので、上層まで風化した場所と下層まで風化した場
所とによって外観むらが際立つ。そのため、有機樹脂
は、共役二重結合および光崩壊性官能基の内の少なくと
も1つを有し、且つ、有機樹脂被覆層を1層にすること
が望ましい。
【0035】風化中においても、有機樹脂被覆と鋼材と
の密着性が確保されなければ、有機樹脂被覆の風化以前
にこれが剥離する場合がある。そのために、下地鋼材と
して、この発明の鉄化合物被覆が施されていることが必
要である。また、長期暴露において、有機樹脂被覆の欠
陥からの流れ錆を完全に防止することはできない。その
ため、有機樹脂被覆の色調が鉄錆の色調に酷似していな
い場合、風化不均一よりも流れ錆による外観の劣化を防
止することが必要である。
【0036】このように、長期耐食性を持った塗り替え
を前提としない、この発明の表面処理耐候性鋼材は、長
期暴露時の有機被膜密着性、外観、安定錆の形成を兼ね
備えるように、注意深く考慮して設計されたものであっ
て、以下の特徴を有するものである。
【0037】請求項1記載の発明は、下層に50から3
00℃までの加熱による質量減少量が10%以下の鉄化
合物被膜を有し、上層に有機樹脂被覆が施されたことに
特徴を有するものである。
【0038】請求項2記載の発明は、前記鉄化合物被膜
が不連続に形成されていることに特徴を有するものであ
る。
【0039】請求項3記載の発明は、前記有機樹脂被覆
が前記有機樹脂被覆の添加剤および顔料を含めた固形分
100重量部に対して、30から70重量部の顔料を含
有し、10から100μmの厚さを有するものであるこ
とに特徴を有するものである。
【0040】請求項4記載の発明は、前記有機樹脂被覆
の色調がマンセル表色系で色相が345度から0度を通
って60度、且つ、彩度が30%以上、100%以下で
あることに特徴を有するものである。
【0041】請求項5記載の発明は、前記有機樹脂被覆
が共役二重結合および光崩壊性官能基の内の少なくとも
1つを有し、且つ、前記有機樹脂被覆層を1層にするこ
とに特徴を有するものである。
【0042】
【発明の実施の形態】次に、この発明の錆安定化処理鋼
材を詳細に説明する。 (1)対象鋼材 この発明の錆安定化処理鋼材として、適用可能な鋼材
は、特に限定するものではない。普通鋼に対しても効果
は認められるが、耐候性鋼のようなCu、Ni、Cr、
Mo等の合金元素を少量含む低合金鋼に対して特に有効
である。 (2)鉄化合物被膜 この発明の鉄化合物被膜の成分としては、50から30
0℃までの質量減少量が10%以下である限り、酸化
鉄、水酸化鉄、炭酸鉄、硫酸鉄、リン酸鉄、あるいはそ
れらの複合化合物が用いられる。ミルスケールを一部残
存させることはコスト的に望ましい。また、鉄化合物被
膜に十分な制御を施す場合、鋼材表面を水洗して錆を発
生させ、温風にて乾燥して軽い素地調整を施しても良
い。
【0043】この発明の鉄化合物の付着量は、300m
g/m2以上が望ましい。300mg/m2未満では、鉄
化合物被膜の下に50から300℃までの質量減少量が
10%を超える鉄錆が発生しやすくなるため、この発明
の効果が得られなくなるからである。
【0044】また、処理表面は、油、グリース、泥土等
を除去しなければならない。油、泥土が付着していれ
ば、その後の有機樹脂被覆が油や泥土面から剥離して、
この発明の効果が失われる。
【0045】ミルスケールを一部残存させるためには、
IS0 8501−1による素地調整グレードSa1よ
り軽い素地調整の状態が好ましいが、必ずしもこの必要
はない。または、表面に錆が付着した鋼材について十分
な温風乾燥あるいは加熱処理によって脱水し、表面の浮
き錆等の付着物を除去したものでも良い。 (3)有機樹脂被覆 この発明における有機樹脂被覆は、エポキシ樹脂、アク
リル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレ
タン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ビニル
ブチラール樹脂、フタル酸樹脂等を用いることができる
が、鋼材との密着性の観点からエポキシ樹脂、アクリル
樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂が好ましい。ま
た、良好な風化性のためには共役二重結合および光崩壊
性官能基の内の少なくとも1つを有することが望まし
く、そのためには共役二重結合を有するものとして、ベ
ンゼン環を含むフェニル基、フェニレン基を含有し、光
崩壊性官能基を有するものとして、エステル基を含む樹
脂が好ましい。これらの共役二重結合と光崩壊性官能基
とを兼ね備えるものとして、脂肪酸変性芳香族系エポキ
シ樹脂と無水カルボン酸の反応生成物とが最も好ましく
用いられる。
【0046】また、有機樹脂被覆層の厚さは、顔料や添
加剤を含めた固形分で、10μm以上、100μm以下
であることが望ましい。10μm未満の場合、強風に混
じって飛来する珪砂等の衝撃によっても有機樹脂被膜の
防食性に大きく影響するほど傷つく可能性があり、ま
た、全般的に有機樹脂被覆層の効果が弱くなり好ましく
ない。一方、100μmを超えても効果の向上は認めら
れず、コスト高となるため好ましくない。 (4)顔料および染料 この発明における水蒸気透過性を確保するための顔料と
しては、コントロールする顔料として、タルク、シリ
カ、鉄黒、ベンガラ、鉛丹、黄鉛、カーボンブラック等
の有機顔料および無機顔料を用いることができる。ま
た、色調をコントロールする顔料としては、タルク、シ
リカ、鉄黒、ベンガラ、鉛丹、黄鉛、カーボンブラッ
ク、パーマネントレッド、レーキレッド等の有機顔料、
無機顔科あるいは耐光性が確保される限りにおいて染料
を用いることができる。このうち、鉄錆との色調の一致
性を得るためには鉄黒、ベンガラ、タルクを含む顔料が
好ましい。
【0047】また、有機樹脂被覆層中の顔料含有量は、
30%未満であると、有機樹脂被覆に欠陥が生じた場
合、有機樹脂被覆のフィルム状剥離、有機樹脂被覆のフ
クレを起こしやすくなる。また、顔料が70%を超える
と、有機樹脂被覆が強度的に保持できなくなることがあ
り、また、外観の点あるいは樹脂被覆を施す際の施工性
の問題が懸念されるので、好ましくない。 (5)その他の成分 この発明の有機樹脂被膜には、上記以外に、ナフテン酸
コバルト、ナフテン酸鉛等の硬化促進剤、増粘剤、その
他の無機塩、溶剤、処理剤添加物等を含有することがで
きる。
【0048】
【実施例】次に、この発明を実施例により更に説明す
る。
【0049】JlS G 3114に規定されたミルス
ケールが付着した耐候性鋼材(SMA400)の試験片
(150mm×70mm×6mm)に、表1に示すよう
な第一の表面処理を施し、次いで、表2に示すような第
二の表面処理、即ち、有機樹脂被覆層をスプレー塗装に
て被覆し、乾燥させることによって、本発明安定化処理
鋼材を調製した。表1に示す鋼材原板は、圧延工程によ
って表面に鉄酸化物、即ち、スケールが生成したもので
あり、この鋼材表面に生成したスケールは、300℃ま
での加熱脱水量はほとんど無く、加熱質量減少量は少な
い。
【0050】鋼材の表面酸化物付着状況の一つのコント
ロール法として、ショットブラストの程度を変える方法
を採用した。ショットブラストの程度は、ISO 85
01−1による規定を元にして、ISO 8501−1
規定のSa1処理の処理時間の三分の一の時間で処理し
たものをSa1/3(表1の処理A)、二分の一の時間
で処理したものをSa1/2(表1の処理B)とした。
これらは、意図的に全ての酸化スケールを落とさず部分
的に酸化スケールを落としたものであり、後に述べる光
学顕微鏡の方法で鉄化合物形態を観察すると、鉄化合物
は不連続に存在していた。
【0051】次に、圧延鋼材に種々のショットブラスト
処理を施したものを水洗した。この状態では、表面に生
成した錆は、含水のあるFeOOHの形態であり、50
から300℃の加熱による質量減少量は10%超であ
る。この鋼材について120℃の温風で乾燥した。この
状態で水の蒸発が発生し、一部脱水する。加熱脱水量
は、時間によって所望の加熱脱水量にコントロールする
ことが可能である。この場合、表面に付着する鉄化合物
は、連続的に生成する。(表1の処理D) 鋼材の表面酸化物付着状況の別のコントロール法とし
て、ショットブラスト、水洗、温風乾燥を施し、更に、
弱いショットブラストを施すことにより、鋼材表面に不
連続な鉄化合物を生成する方法を採用した。表1の処理
Cは、ショットブラスト、水洗、温風乾燥後、ショット
ブラストSa1/3処理したものである。この鋼材につ
いても、鉄化合物を完全に落とすには時間的に不十分で
あるために、鉄化合物は不連続に存在していた。
【0052】比較のために、圧延鋼材にSa3(Sa1
に比べて強いショットブラスト)の処理を施した後、更
に、#800の砥石研磨仕上げを施したもの(表1の処
理E)、圧延鋼材にSa3処理して水洗し、表面に錆を
発生させたもの(表1の処理F)を調製した。これらの
鋼材は、第一の表面処理後、表面の付着物、泥土等を必
要に応じてブラシ等を用いて除去し、油脂が付着してい
る場合には、必要に応じて有機溶剤にて脱脂して、それ
らが付着していないことを確認して、第二の有機樹脂被
覆処理を施した。表面に残った鉄化合物の存在の有無は
50倍光学顕微鏡によって定性的に評価した。
【0053】以上の鋼材表面に付着した鉄化合物の加熱
による質量減少特性を評価するために、試験片200m
m×200mmの面積から酸化鉄を機械的に丹念に地鉄
ごと100mg以上削り落し、採取した粉末に含まれる
金属鉄量をX線回析内部標準法により定量して、金属鉄
以外、即ち、酸化水酸化鉄または酸化鉄等の鉄化合物量
を定量した。金属鉄以外にX線回析で検出された結晶と
しては、マグネタイト等があったが、主に非晶質である
と考えられる。
【0054】更に、採取した粉末を熱天秤を用いて鉄化
合物の加熱による質量減少量を評価した。熱天秤の測定
雰囲気は大気、窒素、へリウム等が考えられるが、錆と
の反応を防止する上でへリウム雰囲気が好ましい。この
際、室温からの測定では錆粉末を採取してから熱天秤に
セットするまでの雰囲気、特に湿度に影響されやすい。
また、錆を乾燥させる為、高温から測定すると錆の変質
を招く場合がある。その点を考慮して、鉄錆の加熱脱水
量の安定した測定を実現するために、本発明における指
標は、50から300℃での加熱脱水量とした。
【0055】
【表1】
【0056】上述の方法によって調製された、酸化鉄が
連続的または不連続的に付着した鋼材に、表2に示す塗
料被覆をエアスプレーにより塗装した。また、本実施例
の有機樹脂被覆層の厚さは、鉄化合物被膜上の有機樹脂
被覆であるために、電磁膜厚計を用いることができず、
断面研磨‐光学顕微鏡によって測定した。
【0057】なお、有機樹脂被覆としては、ベース樹脂
の他にフェニル/フェニレン基の何れかを含有するもの
を○印、含有しないものを×印とし、光崩壊性官能基で
あるケトン基あるいはエステル基を含有するものを○
印、含有しないものを×印とした。特に、有機樹脂番号
1は、脂肪酸変性芳香族エポキシ樹脂と無水カルボン酸
の反応生成物である。
【0058】
【表2】
【0059】上記表1の下層鉄酸化水酸化物被覆および
上記表2の上層樹脂被覆層の組み合わせによって調製し
た安定化処理試験鋼材を用いて、下記の方法によって各
種の評価を行なった。
【0060】(実施例1)上記表1および表2に記載の
表面処理の組み合わせを表3のように実施して、以下の
評価を行った。
【0061】試験片中央部にカッターナイフによってク
ロスカットを入れ、海浜地帯で5年間曝露試験を行なっ
た。その試験片を用いて、セロテープ剥離による塗膜密
着性試験を行なった。有機樹脂被覆層密着性について、
以下の4段階で評価した。
【0062】◎:セロテープ試験によりほとんど剥離し
ない。
【0063】○:セロテープ試験によりクロスカット部
を起点とした剥離がわずかに見られるが、クロスカット
以外の部分では、ほとんど剥離が見られない。
【0064】△:セロテープ試験によりクロスカット部
を起点とした剥離が顕著に見られ、クロスカット以外の
部分からも剥離が認められる。
【0065】×:セロテープ試験をする前から有機樹脂
被覆層のフクレや部分的な剥離が見られ、セロテープ試
験により容易に剥離する。
【0066】なお、この際の有機樹脂被覆層の厚さは、
50μmであり、有機樹脂被覆中の顔料含有量は、有機
樹脂被覆の添加剤および顔料も含めた固形分100重量
部に対して約35重量部であった。この結果を表3に示
す。
【0067】
【表3】
【0068】表3から明らかなように、本発明例1から
11は、長期暴露時においても有機樹脂被覆層との密着
性を確保していることが分かった。また、第一の表面処
理における鉄化合物被膜が不連続であれば、更に優れた
塗膜(有機樹脂被膜)密着性が得られることが分かっ
た。
【0069】これに対して、比較例12および14は、
試験片に表1のE処理を行なったもので、鉄化合物被膜
が形成されていないので、塗膜密着性が悪いことが分か
った。また、比較例13および15は、試験片に表1の
F処理を行なったもので、50から300℃までの加熱
による質量減少率が11%と本発明範囲を外れて高いの
で、塗膜密着性が悪いことが分かった。 (実施例2)上記表1および表2の組み合わせに沿い且
つ有機樹脂被覆層の厚さおよび顔料含有量を変化させて
試験片を調製し、有機樹脂被覆層のフクレや流れ錆性を
調べるために、以下の試験を行った。
【0070】鋼材の下部に白ペンキを塗り、海地帯にて
2年間、南向き30度に保持して大気暴露した。流れ錆
性については、下部の白ペンキの汚染状態によって、以
下のような4段階で評価した。
【0071】◎:流れ錆による汚染が全く見られない。
【0072】○:流れ錆による汚染がほとんど見られな
い。
【0073】△:流れ錆による汚染が多少見られる。
【0074】×:流れ錆による汚染が顕著に見られる。
【0075】また、有機樹脂被覆層の外観として、有機
樹脂被覆層のフクレが見られるかどうかによって、以下
の4段階で評価した。
【0076】◎:有機樹脂被覆層のフクレが見られな
い。
【0077】○:有機樹脂被覆層のフクレが僅かに見ら
れる。
【0078】△:有機樹脂被覆層のフクレによる剥離が
見られ、やや外観が悪い。
【0079】×:有機樹脂被覆層のフクレおよび有機樹
脂被覆層のフクレの起因の剥離が顕著にみられ、外観が
極めて悪い。
【0080】これらの結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】表4から明らかなように、下層に50から
300℃における質量減少量が10%以下の鉄化合物皮
膜を有し、上層に有機樹脂被覆を施した表面処理鋼材で
あって、有機樹脂被覆層の厚さおよび顔料含有量が本発
明の範囲内にある本発明例1から9は、暴露時における
良好な耐流れ錆性が得られると共に有機樹脂被覆層のフ
クレの問題が見られず、優れた外観が得られることが分
かった。なお、本発明例5は、顔料含有量が他の本発明
例に比べて少ないので、有機樹脂被覆層のフクレは僅か
に見られた。
【0083】これに対して、比較例10および11は、
顔料含有量が本発明外の30%未満であるので、有機樹
脂被覆層のフクレが顕著に見られ、且つ、耐流れ錆性に
劣ることが分かった。なお、比較例10は、鉄化合物被
膜が不連続に形成されたものであるので、鉄化合物被膜
が連続的に形成された比較例11に比べて、有機樹脂被
覆の密着性が良いために耐流れ錆性が若干良い。また、
比較例12のように、有機樹脂被覆層の厚さが本発明範
囲を外れて薄い場合や、比較例13のように、顔料含有
量が本発明範囲を外れて多い場合には、何れも耐流れ錆
性に劣り、且つ、有機樹脂被覆層のフクレによる有機樹
脂被覆層の剥離が見られた。
【0084】なお、比較例12のように、有機樹脂被覆
層の厚さが10μm未満の場合には、強風に混じって飛
来する珪砂等の衝撃によっても傷つく可能性があり、ま
た、全般的に有機樹脂被覆層の効果が弱くなり好ましく
ない。更に、有機樹脂被覆層の厚さが100μmを超え
ると、効果の向上は望めずコスト高となるため好ましく
ないことを確認した。
【0085】また、比較例13のように、顔料含有量が
本発明範囲を外れて多い場合には、有機樹脂被覆層が強
度的に保持できなくなることがあり、また、外観の点あ
るいは樹脂被覆を施す際の施工性の問題が懸念され好ま
しくないことを確認した。 (実施例3)上記表1および表2に記載の表面処理の組
み合わせにより試験材を作成し、以下の評価を行った。
【0086】初期の有機樹脂被覆の色調は、JIS Z
8722の方法による測定およびJIS色票集との比較
により最も近い色調と思われるものを示した。測色した
試料の腐食時の外観を評価するために、JIS K54
00塩水噴霧試験を10週間行い、以下の4段階で評価
した。
【0087】◎:流れ錆は目立たない。
【0088】○:流れ錆が一見して認められるが、流れ
錆の軌跡を追うことは難しい。
【0089】△:流れ錆が目立ち、流れ錆の軌跡が明ら
かである。
【0090】×:流れ錆が顕著で見苦しい。
【0091】なお、この際の有機樹脂被覆層の厚さは5
0μmであり、有機樹脂被覆中の顔料含有量は、有機樹
脂被覆の添加剤および顔料も含めた固形分100重量部
に対して約35重量部であった。この結果を表5に示
す。
【0092】
【表5】
【0093】表5から明らかなように、本発明例1から
7は、本発明範囲内の赤から褐色、黄色の錆色に酷似し
た色調を有する有機樹脂被覆番号1、2および3の何れ
かであるので、錆が鋼材表面に露出しても、目立ちにく
いことが分かった。しかも、本発明例1から7は、上述
した実施例1に示す第一の表面処理による有機樹脂被覆
層の密着も確保されているため、従来の錆安定化処理剤
と比較してより優れた効果を示すことを確認した。
【0094】これに対して、比較例8および11は、有
機樹脂被覆番号4の硫酸クロムであるので水和の仕方に
よって色調が変化するが、紫色、青色、緑色の色調を呈
し、比較例9および12は、有機樹脂被覆番号5の硫酸
銅であるので青色の色調を呈し、そして、比較例10お
よび13は、有機樹脂被覆番号6の硫酸バリウムである
ので白色の色調を呈し、これらは本発明範囲外の色調で
あって、一見して明らかに錆色と異なるので、錆が鋼材
表面に露出した場合、目立ちやすいことが分かった。 (実施例4)上記表1と、上記表2の有機樹脂被覆層を
最大二層とした組み合わせによって試験片を調製した。
この際、有機樹脂被覆層の厚さは、50μm(二層の場
合は25μmを2層として合計50μm)とした。
【0095】有機樹脂被覆中の顔料含有量は、有機樹脂
被覆の添加剤および顔料も含めた固形分100重量部に
対して約35重量部とした。調製した試験片の風化特性
を観察するために、JIS K5400耐光性試験(紫
外線カーボンアーク灯を500時間および2000時間
照射)の方法で有機樹脂被覆層の風化を促進し、次い
で、海岸地帯にて南向き30度に保持して大気暴露し、
一月ごとに表面外観を調査しつつ、合計1年間暴露し
た。
【0096】評価方法は、試験材が、暴露中に外観上均
一な有機樹脂被覆層風化特性が得られなくなった時点ま
での月をしるし、一年後も両面外観上均一と認められた
ものについて◎印で示した。2000時間の耐光性試験
を施し、暴露中の風化均一性の結果を表6に示す。
【0097】また、1年間暴露した試料について、風化
特性が不均一となる原因を調べるために、断面を研磨し
て錆と有機樹脂被覆層とを観察した所、耐光性試険を2
000時間施した試料は、500時間の試料よりも多く
発錆していた。これは、有機樹脂被覆の風化による耐食
性の劣化が原因であると考えられる。但し、耐光性試験
2000時間は、非常に長期間日照に曝された場合を模
しているため、その間に発生した錆は、十分長い期間の
うちにいわゆる安定錆となり鋼材を防食するものと考え
られる。この点においても、本発明鋼材の問題点は、風
化の均一性であり、本実施例では、風化の均一性に着目
して試験を行った。
【0098】
【表6】
【0099】表6から明らかなように、本発明例1から
6は、有機樹脂被覆層が1層であるので、風化の均一性
に優れていることが分かった。これは、有機樹脂被覆層
が2層の場合には、風化中に有機樹脂被覆層の界面が現
われて、外観上目立つことが原因であった。また、この
効果は、鉄化合物被膜を不連続に形成したことによる有
機樹脂被覆層が剥離しないという効果によって、より一
層顕著となった。
【0100】
【発明の効果】以上述べたように、この発明の錆安定化
処理剤の硬化皮膜を形成した鋼材は、長期間にわたって
有機樹脂被覆層と鋼材の密着性が確保されており、十分
な流れ錆防止性能、有機樹脂被覆層のフクレおよびフィ
ルム状剥離防止効果を有し、効率的な安定錆形成性能を
兼ね備えており、しかも、腐食生成物による鋼材の汚染
がされにくいものである。しかも、この発明の錆安定化
処理剤を耐候性鋼材に適用することによって、良好な外
観を保持しつつ、鋼材のメンテナンスフリー化が図れ、
従来の塗装の塗り替え等の費用が不要となり、その経済
効果は計り知れないといった有用な効果がもたらされ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮田 志郎 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 竹村 誠洋 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 下田 達也 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K062 BA06 BA14 BC08 BC09 BC11 BC12 BC19 CA04 CA10 FA16 GA01 GA10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下層に50℃から300℃までの加熱に
    よる質量減少量が10%以下の鉄化合物被膜を有し、上
    層に有機樹脂被覆が施されたことを特徴とする錆安定化
    処理鋼材。
  2. 【請求項2】 前記鉄化合物被膜は、不連続に形成され
    ていることを特徴とする、請求項1記載の錆安定化処理
    鋼材。
  3. 【請求項3】 前記有機樹脂被覆は、前記有機樹脂被覆
    の添加剤および顔料を含めた固形分100重量部に対し
    て、30から70重量部の顔料を含有し、10から10
    0μmの厚さを有するものであることを特徴とする、請
    求項1または2記載の錆安定化処理鋼材。
  4. 【請求項4】 前記有機樹脂被覆の色調は、マンセル表
    色系で色相が345度から0度を通って60度、且つ、
    彩度が30%以上、100%以下であることを特徴とす
    る、請求項1から3の内の何れか1つに記載の錆安定化
    処理鋼材。
  5. 【請求項5】 前記有機樹脂被覆は、共役二重結合およ
    び光崩壊性官能基の内の少なくとも1つを有し、且つ、
    前記有機樹脂被覆は、1層であることを特徴とする、請
    求項1から4の内の何れか1つに記載の錆安定化処理鋼
    材。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003268578A (ja) * 2002-03-15 2003-09-25 Dainippon Toryo Co Ltd 耐候性鋼の防食法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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