JP2001129562A - リンの除去方法 - Google Patents

リンの除去方法

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JP2001129562A
JP2001129562A JP31738499A JP31738499A JP2001129562A JP 2001129562 A JP2001129562 A JP 2001129562A JP 31738499 A JP31738499 A JP 31738499A JP 31738499 A JP31738499 A JP 31738499A JP 2001129562 A JP2001129562 A JP 2001129562A
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calcium
ions
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Katsutoshi Yamada
勝利 山田
Kensaku Haraguchi
謙策 原口
Gacho Kaameru
カーメル・ガチョ
Kozo Ishizaki
紘三 石崎
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National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 水中に含まれるリンを安価に除去することの
できるリンの除去方法を提供する。 【解決手段】 石炭火力発電所から発生するフライアッ
シュを種晶と利用するだけではなく、フライアッシュに
含有する溶出性カルシウムをカルシウムイオン源とし、
さらにアルカリ性を利用することでカルシウムイオンの
添加及びpH調整剤を必要としない晶析脱リン法が提供
される。該方法では、pH9〜12の条件でリンを含有
する被処理水をフライアッシュと接触させ、リンを除去
することができる。また、脱リン効率を低下させる炭酸
イオンは、予め晶析脱リン反応を行なう前に、フライア
ッシュから溶出するカルシウムイオンを反応させて炭酸
カルシウムとして沈殿分離される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石炭火力発電所か
ら大量に発生するフライアッシュを用いる被処理水中か
らのリンの除去方法及びリン除去剤に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、湖沼や内湾の水域における汚染が
著しく、富栄養化の主原因物質の一つであるリンの排出
規則も強化されつつある。現在でも都市生活排水や産業
排水中のリン除去技術について、盛んに開発研究が行わ
れている。従来よりリンの除去法としては凝集沈殿法が
一般的であるが、この方法では大量のスラッジの発生
や、リンの再資源化の困難性が伴う上、処理水のリン濃
度を0(ゼロ)ppm近くにまで下げることは出来な
い。また、この凝集沈殿法以外にも、生物処理法、活性
汚泥法、晶析法、酸性領域での石炭灰による吸着法等種
々の方法が提案されているが、いずれもリン除去の安定
性に関する処理条件の設定や処理コスト等で一長一短が
あり排出規制の強化に伴い解決すべき課題が多い。ま
た、晶析脱リン法(あるいは接触脱リン法)では、骨
炭、リン鉱石と製鉄製鋼工程より排出されるスラグが種
晶に用いられてきた。、骨炭とリン鉱石はいずれも輸入
品であり、すでにリン鉱石は肥料の重要な原料であると
共にリン化学工業の原料であり、骨炭は脱色等に使用さ
れているのでこの方法は資源的には有利な方法とは言え
ない。また、1980年から現在まで、主として我が国
において発展してきた晶析脱リン法は通水塔式であり、
適性な晶祈反応の定常状態を得るためには、処理工程管
理のための水質自動計測制御システムを必要とし、従来
の処理工程管理よりもカルシウムイオンの添加量、pH
調整条件等の制御範囲がかなり厳しいとされている。一
方、酸性条件下でのフライアッシュの吸着特性を利用し
た脱リン法が提案されているが、酸性領域に限定される
こととフライアッシュの特性によっては処理水のリン濃
度を0(ゼロ)ppm近くにまで下げることが出来ない
欠点を持っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、水中に含ま
れるリンを安価に除去することのできるリンの除去方法
を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意検討の結果、本発明を完成するに至っ
た。即ち、本発明によれば、被処理水中に含まれるリン
を除去する方法において、該被処理水を、pH9〜12
の条件でフライアッシュと接触させることを特徴とする
リンの除去方法が提供される。また、本発明によれば、
被処理水中に含まれるリンを除去する方法において、該
被処理水中に含まれる炭酸イオンをpH9〜12の条件
でフライアッシュと接触させて除去した後、pH9〜1
2の条件でフライアッシュと接触させることを特徴とす
るリンの除去方法が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】フライアッシュ(FA)は、石炭
火力発雷所から発生する石炭灰総量の70〜80%を占
める。その化学物理的特性は、後記表1及び表2に示す
ように、石炭種及び燃焼温度等の条件によって、その化
学組成、アルカリ性(pH)、カルシウム溶出量及びそ
の溶出速度に大きな違いが認められ、pHが平衡に達す
る時間は約1〜40時間である。フライアッシュのアル
カリ性は溶出性のカルシウム、カリウム及びマグネシウ
ムによるが、主にカルシウム溶出量に起因する。カルシ
ウム溶出量は約10〜35mg/Lであり、カルシウム
の溶出速度は、ほぼpHが平衡に達する時間に等しい。
従って、アルカリ性が高いフライアッシュほどカルシウ
ム溶出量が多い。本発明によれば、上記のフライアッシ
ュの化学的特性を利用するすることで、フライアッシュ
を種晶と利用するだけではなく、フライアッシュに含有
する溶出性カルシウムをカルシウムイオン源とし、さら
にアルカリ性を利用することでカルシウムイオンの添加
及びpH調整剤を必要としない晶析脱リン法が提供され
る。本発明の晶析脱リン法は、pHが約6〜12の範囲
で脱リン反応が成立し、このpH範囲では高pHほど脱
リン効率が高い。しかし、約12を超えるpH範囲では
脱リン反応が成立しない。すなわち、フライアッシュの
アルカリ性がpH約9〜10の場合は、約10〜16m
gリン酸イオン(PO4 3-)/gFAを除去することが
できる。また、フライアッシュのアルカリ性がpH約1
0〜12の場合は、約100〜140mgPO4 3-/g
FAを除去することができる。
【0006】晶析脱リン法は、凝集沈殿法等に比べて処
理源水に溶存する遊離炭駿、炭酸水素イオンおよび炭酸
イオンの存在が脱リン効率に負の影響を与える。この炭
酸イオンを除去する方法は、ばっ気法、脱気法あるいは
カルサイトによる濾過法等が一般的であるが、処理工程
の簡便化とコストの低減の点からは問題が生じる。本発
明では、フライアッシュから溶出するカルシウムイオン
を炭酸イオンと反応させ、炭酸カルシウムとして沈殿さ
せて分離除去する方法を採用する。すなわち、晶析脱リ
ン処理工程にフライアッシュの化学的特性を最大限に活
用し、処理工程の簡便化とコストの低減を図った。
【0007】次に、表1にフライアッシュの組成を示
し、表2にフライアッシュの性状を示す。
【表1】
【0008】
【表2】
【0009】一方、フライアッシュのアルカリ性がpH
12以上のフライアッシュの場合は、被処理水のリン酸
イオン濃度及び被処理水の量に対してフライアッシュの
使用量を調整し、適性なpH条件下で脱リンを行うこと
で、約15〜140mgPO 4 3-/gFAを除去するこ
とが可能である。
【0010】また、アルカリ性がpHが12を超えるフ
ライアッシュの場合は、pHを高めるアルカリ成分のカ
ルシウム、カリウム及びマグネシウムを水洗によって溶
出させ、アルカリ性のpHを約11〜11.5に調製し
た物を使用することで、約100〜140mgPO4 3-
/gFAが可能である。
【0011】なお、フライアッシュに関して言う前記p
H値は、フライアッシュ1gを温度25℃の精製水50
mlに添加し、120分間保持したときに得られるその
水のpH値を意味するものである。
【0012】本発明の方法は、被処理水を、pH9〜1
2の条件でフライアッシュと接触させることによって実
施することができる。この場合、被処理水とフライアッ
シュとを接触させる際の被処理水のpH条件を、9〜1
2、好ましくは10〜11.5の範囲にすることが重要
である。このpH条件は、フライアッシュとして、その
アルカリ度が、pH9〜12、好ましくは10〜11.
5のものを用いることによって調節することができる。
フライアッシュのアルカリ度がpH12を超える場合に
は、そのフライアッシュをあらかじめ水や酸性水と接触
させてそのアルカリ度をpH9〜12の範囲に低下させ
て使用すればよい。また、被処理水にpH調節剤を添加
してそのpH条件を調節することができる。pH調節剤
としては、塩酸、硫酸、酢酸等の酸性物質や、水酸化ナ
トリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の
アルカリ性物質が用いられる。被処理水とフライアッシ
ュとの接触は、フライアッシュを充填した充填塔に被処
理水を流通させることによって実施し得る他、フライア
ッシュを被処理水に投入し、攪拌すること等によって実
施することができる。その接触温度は、通常、10〜3
0℃、好ましくは25〜30℃である。
【0013】被処理水が炭酸イオンを含む場合、その炭
酸イオンはあらかじめ除去するのが好ましい。これによ
って、フライアッシュによるリンの除去を円滑に進行さ
せることができる。被処理水中の炭酸イオンの除去は、
水中に含まれる炭酸イオン(CO3)濃度が20ミリモ
ル/L以下、好ましくは5.0ミリモル/L以下になる
ように行うのがよい。炭酸イオンの除去方法としては、
被処理水をアルカリ性物質と接触させてその炭酸塩(例
えば、CaCO3、MgCO3等)として沈殿除去する方
法や、フライアッシュと接触させて、その炭酸イオンを
アルカリ性のフライアッシュと反応させて除去する方法
等がある。
【0014】本発明の晶祈脱リン法は、リン酸イオンを
含有する処理源水あるいは2次処理水をフライアッシュ
を充填したメリーゴランド方式撹拌接触層あるいは接触
塔(例えば2撹拌接触層あるいは2通水接触塔)で接触
させ、脱リン処理水は放流する。従って、本晶析脱リン
法は、カルシウムイオンの添加および処理源水のpH調
整および脱リン後処理水の中和工程が不要の簡便なプロ
セスである。すなわち、カルシウムイオン源及び処理源
水の適性pH調整は、フライアッシュのアルカリ性およ
び溶出するカルシウムイオンを用いる。処理源水(2次
処理水)に溶存するリン酸イオンは、フライアッシュか
ら溶出したカルシウムイオンと反応してヒドロキシアパ
タイト[Ca5(PO45・(OH)]を生成し沈殿が
生ずることになるが、実際には過飽和状態となってお
り、沈殿が生じない。この過飽和状態に微細粒子(種
晶)(フライアッシュ)が存在すると結晶化されて固定
される。また、処理水の中和は、溶出カルシウムイオン
とリン酸イオンの反応によりカルシウムイオンが消費さ
れて濃度が低下されることにより、フライアッシュの脱
リン能が破過点に達した時点では処理水のpHは7〜8
の範囲となる。
【0015】
【発明の効果】本発明の方法の特徴は、以下のとおりで
ある。 (1)処理源水あるいは2次処理水中のリン酸イオン濃
度の変動に影響を受けず、安定した極低リン濃度(0.
1ppm以下)の処理水が得られる。 (2)高アルカリ性フライアッシュでは、脱リン効率に
対して温度依存性がほとんど無い。 (3)汚泥の発生がない。 (4)フライアッシュの入手が容易である。 (5)大量に発生する産業廃棄物の有効利用の点から有
意義である。 (6)リンの回収保存、再利用が可能である。
【0016】
【実施例】次の本発明を実施例によりさらに詳細に説明
する。
【0017】実施例1 晶析脱リン法にフライアッシュを用いることが可能かど
うかに関して、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウ
ムの理論的溶解度曲線、すなわち、リン酸イオン濃度、
pHと脱リン効率の関係について確認試験を行った。p
H約10以下の範囲の調整はホウ酸/塩化カリウム/水
酸化ナトリウム(H 3BO3/KCI/NaOH)緩衝液
で任意のpHに調整し、10mgPO4 3-/L濃度の溶
液を用いた。この溶液に対して、1gのフライアッシュ
No.1、No.2、No.3、No.4、No.5お
よびNo.6を撹拌接触反応させて脱リン率を求めた。
脱リン効率は、撹拌接触反応2時間後の溶液に残存する
リン酸イオン濃度を酒石酸アンチモニルカリウムでフラ
イアッシュから溶出するケイ酸の妨害をマスキングして
バナドモリブデン酸アンモニウム法で測定し、リン酸イ
オン初濃度の関係から計算で求めた。その結果を表3に
示す。脱リン量は、pH約6〜12の範囲では各フライ
アッシュNo.1、No.2、No.3、No.5およ
びNo.6は共に高pHほど高くなる。すなわち、リン
酸カルシウムの理論的溶解度曲線(リン酸イオン濃度と
pHの関係)に非常に良く一致し、アルカリ性がpH1
2以下のフライアッシュが晶析脱リン法に適用できる。
しかし、アルカリ性がpH12を越えるフライアッシュ
No.4は晶析脱リン反応を示さないことが判明した。
【0018】
【表3】
【0019】実施例2 No.1(フィリピン)、No.2、3、4(日本)及
びNo.5、6(タイ)の各フライアッシュ1gに対し
て、10mg/Lのリン酸イオン(PO4 3-−P)溶液
を撹拌接触反応させて脱リン量を求めた。その結果を表
4に示す。脱リン量は、撹拌接触反応2時閻後の溶液に
残存するリン酸イオン濃度を測定し、リン酸イオン初濃
度の関係から計算で求めた。脱リン量は、7.5〜9.
7mgPO4 3-/gFAである。この脱リン量の差は、
フライアッシュからのカルシウムイオンの溶出遠度の違
いによることを示している。従つて、処理源水のリン酸
イオンが10mg/L程度である場合は、脱リン反応が
充分に平衡に達する接触時間を保持するか、あるいはフ
ライアッシュの添加量を処理源水のpHが12以上にな
らない範囲に調整することで、リン酸イオン濃度を0.
1mg/L以下に除去すろことができる。しかし、好ま
しくは、脱リン反応の適性pHを考慮すると、脱リン反
応が充分に平衡に達する接触時間を保持する方法が実際
的である(実施例3で記述する)。一方、アルカリ性が
pH12以上のフライアッシュNo.4は、ほとんど脱
リンを行わない。すなわち、リン酸カルシウムの理論的
溶解度曲線(リン酸イオン濃度とpHの関係)から、p
H約12以上では晶析脱リン反応が成立せず、凝集沈殿
法の領域であることに一致する。この様な高アルカリ性
のフライアッシュの適応法に関しては、後記実施例4で
具体的に示す。
【0020】
【表4】
【0021】実施例3 10mg/Lのリン酸イオン(PO4 3-−P)溶液とN
o.1(フィリピン)、No.2、3(日本)及びN
o.5、6の各フライアッシュ1gを、脱リン反応が充
分に平衡に達するまで撹拌接触反応させて脱リン量を求
めた。その結果を表5に示す。No.1(フィリピ
ン)、No.2(日本)の脱リン反応が平衡に達する接
触時間は約48時間、No.3(日本)は約30時間で
ある。また、No.5、6(タイ)は約3時間である。
この脱リン反応が平衡に達する接触時間差は、フライア
ッシュから溶出するカルシウムイオンの溶出量および溶
出速度に起因する。すなわち、フライアッシュに存在す
るカルシウム化合物の形態(CaO,CaSO4,Ca
SiO3等)の違いと存在量およびそれら化合物の溶解
度の大小が溶出量および溶出速度に関係している。すな
わち、これらカルシウム化合物の内、CaOが最も溶解
性が高く、CaSiO3、ではケイ酸分は小さなSiO3
3-イオンで、これとCa2-との結合であるからアルカリ
溶液に比較的溶解する。しかし、CaSO4、はCa2+
とSO4 2-の結合カが強く、水分子が割り込みにくいの
でほとんど溶解できない。脱リン率は、いずれのフライ
アッシュでも99.5〜99.9%であり、処理源水の
リン酸イオン濃度と処理量に対する適性な撹拌接触時間
を保持するかあるいは適正なフライアッシュ量を調整す
ることで処理水のリン酸イオン濃度を0.1mg/L以
下にすることが可能である。しかし、好ましくは脱リン
工程管理の点からは、充分な撹拌接触時問を保持する方
法が容易である。
【0022】
【表5】
【0023】実施例4 No.1(フィリピン)、No.2、3(日本)及びN
o.5、6(タイ)の各フライアッシュ1gに対して、
リン酸イオン濃度を10mg/L〜500mg/Lの範
囲で変化させ、脱リン容量を求め、その結果を表6に示
す。表6の結果から、処理源水のリン酸イオン濃度が1
0mg/L〜500mg/Lの範囲ではリン酸イオン濃
度に関係なく、各フライアッシュの破過点では、処理水
のリン酸イオン濃度を0.05mg/L以下に除去でき
ることを示している。また、各フライアッシュの破過点
すなわち最大脱リン容量は、約15〜145mgPO4
3-/1gFAである。すなわち、最大脱リン容量はアル
カリ性がpH約10〜12の範囲のフライアッシュでは
高アルカリ性でカルシウム溶出最が多く、その溶出速度
が速いほど大きい。また、破過点での処理水のpHは7
〜8の範囲であり、中和工程が不要である。
【0024】
【表6】
【0025】実施例5 高アルカリ性(PH:12.35)のフライアッシュN
o.4は、晶祈脱リン反応のpH領域から外れるため
に、そのままでは適用できないので前処理等が必要であ
る。すなわち、その一方法は、事前にアルカリ性成分の
カルシウム、カリウム及びマグネシウムを水洗により除
去して、pHを約10〜12の範囲に調整することで使
用が可能となる(表7)。しかし、フライアッシュの脱
リン能をできるだけ下げないためには、水洗後のフライ
アッシュのpHは11.5〜12が好ましい。また、こ
の様な高アルカリ性フライアッシュの前処理法として、
pH約10以下の低アルカリ性フライアッシュを安定的
で容易に入手可能の場合には、両者を適性なpHおよび
カルシウム溶出量に混合調製して使用することが可能で
ある。
【0026】
【表7】
【0027】実施例6 脱リンに及ぼす共存イオンの影響を把握するために、陽
イオンとして5mg/Lのナトリウムイオン、陰イオン
として、各5mg/Lの硫酸イオン、フッ素イオン、塩
素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン及びその混合イオ
ンを共存する10mgリン酸イオン溶液に対して、1g
フライアッシュを2時問撹拌接触反応させて脱リン量を
求めた(表8)。脱リン効率は、いずれの各イオンに対
して多少の負の影響が認められるが、脱リン反応に大き
な阻害因子となるほどの影響はなく安定な脱リン効率が
認められる。
【0028】
【表8】
【0029】実施例7 一般に水溶液中に存在する炭酸系化合物は、遊離炭酸
(CO2+H2O=H2CO3)、炭酸水素イオン(HCO
3 +H=H2CO3)および炭酸イオン(CO 3 2-+H
=HCO3 -)と考えられ、CO2、HCO3 2-、CO3
2-の存在率は水素イオン濃度によって決まる。通常の2
次処理水申の炭酸系化合物は、約80〜120mg/L
位存在しているといわれ、種晶表面に炭酸カルシウムや
炭酸水素カルシウムの析出が生じ、リン除去率を低下さ
せると言われている。従って、120mg/L CO3
2-/HCO3 -とリン酸イオン初濃度:10mg/Lの混
合溶液を用いて、1gの各フライアッシュを2時間撹拌
接触反応させて脱リン容量を求めた(表10)。但し、
フライアッシュNo.4は水洗によりカルシウム溶出量
を約20mg/gFAに調整した物を用いた。溶液のp
H調整は、pH10以下はホウ酸/塩化カリウム/水酸
化ナトリウム緩衝溶液で任意のpHに調整し、10以上
の高pH領域はフライアッシュのアルカリ性(pH)を
そのまま用いた。いずれのフライアッシュもpH10以
下では、約20〜45%の脱リン効率を低下させるが、
約pH11以上ではその影響がなく安定な脱リン能が認
められる。すなわち、低アルカリ性pH約11以下のフ
ライアッシュは、炭酸系化合物による負の影響が非常に
大きい。
【0030】
【表9】
【0031】実施例8 フライアッシュを利用して炭酸イオンの負の影響を除く
ことが可能である。すなわち、撹拌接触脱リン反応させ
る前に、処理源水に溶存する炭酸イオンをフライアッシ
ュから溶出するカルシウムイオンと反応させて炭酸カル
シウム(CaCO3)を生成させて沈殿分離し、炭酸イ
オンの影響を除くことができる。低アルカリ性pH約1
1以下のフライアッシュは、炭酸系化合物による負の影
響が非常に大きい。すなわち、フライアッシュから溶出
するカルシウムイオンが炭酸イオンと反応して炭酸カル
シウム(CaCO3)として消費されてフライアッシュ
の脱リン効率を失活させ、脱リン反応に対するカルシウ
ムイオン不足およびpHの低下がおこるためである。し
かし、フライアッシュを充填した第1層で事前に処理源
水の脱炭酸を行うことで負の影響を除き、第2層で高効
率脱リンを行うことができる(表10)。一般的な脱炭
酸は物理的方法としては、ばっ気あるいは脱気、化学的
方法としては石灰による除去法が一般的である。しか
し、ばっ気法と脱気法は大量のエネルキーが必要であ
り、処理コストが非常に高くなる。一方、石灰による除
去法は処理水の硬度とpHを著しく高めることになり、
フライアッシュによる適正な脱リン条件を設定すために
は軟化およびpH調整の後処理工程が必要となり非常に
好ましくない。排水処理工程において処理コストを上げ
る原因となる単位操作は一つでも少ない方法が良いこと
は当然であるが、晶析脱リン法では長期的に安定な使用
を考慮すると、やはり脱炭酸工程は必要である。従っ
て、入手が容易で脱炭酸コストを低く押さえられるフラ
イアッシュを使用できることは大きな利点がある。
【0032】
【表10】
【0033】実施例9 排水の水温変化による脱リン効果は当然考えられる物理
的因子であり、晶祈脱リン法は一般的には温度依存性が
高く、水温の低い条件ほど脱リン効率が低下すると言わ
れている。脱リン装置が建屋内に設置されると、水温は
10〜30℃位を、建屋外に設置されるとさらに温度範
囲は多くなる。従って、アルカリ性(pH)およびカル
シウム溶出量に差があるフライアッシュNo.1、(フ
イリピン)、No.3(日本)およびNo.6(タイ)
で水温の依存性を試験した。また、高アルカリ性フライ
アッシュNo.4(日本)を水洗前処理して、pH約1
1.3、カルシウム溶出量を約18〜22mg/gFA
に調製したものを同様に水温の依存性を試験した。10
mg/L濃度のリン酸溶液と1gの各フライアッシュ
を、0〜40℃の範囲で2時間撹拌接触反応させ、脱リ
ン量を求めた。その結果を表11に示す。水温の影響は
表11に示したように、pH約10〜12の範囲ではフ
ライアッシュのアルカリ性が高いほど少ない。また、晶
析脱リンに使用できないフライアッシュNo.4のよう
な高アルカリ性フライアッシュは、水洗前処理により適
性なpHに調製することで、フライアッシュNo.6と
同様に温度依存性を極めて低くし、同時に高効率脱リン
を可能にする。この結果は、フライアッシュから溶出す
るカルシウムイオンの溶出速度と溶出量の関係と一致し
ている。すなわち、脱リン反応の進行は、フライアッシ
ュからのカルシウムイオンの溶出速度と溶出量およびp
Hで支配されていることを示している。
【0034】
【表11】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 カーメル・ガチョ 北海道札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番 1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 (72)発明者 石崎 紘三 北海道札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番 1号 工業技術院北海道工業技術研究所内 Fターム(参考) 4D038 AA08 AB24 AB45 AB49 BB13 BB18

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被処理水中に含まれるリンを除去する方
    法において、該被処理水を、pH9〜12の条件でフラ
    イアッシュと接触させることを特徴とするリンの除去方
    法。
  2. 【請求項2】 被処理水中に含まれるリンを除去する方
    法において、該被処理水中に含まれる炭酸イオンをpH
    9〜12の条件でフライアッシュと接触させて除去した
    後、pH9〜12の条件でフライアッシュと接触させる
    ことを特徴とするリンの除去方法。
JP31738499A 1999-11-08 1999-11-08 リンの除去方法 Pending JP2001129562A (ja)

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