JP2001123699A - 制振壁 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 地震時に層間変形を生ずる上下階の構造体に
おける下階の構造体の上に、粘性壁ダンパーの壁型容器
を直立状態に固定して構成される制振壁の面外方向変形
追随機構を提供する。 【解決手段】 壁型容器の粘性体中に抵抗板を挿入して
成る粘性壁ダンパーの壁型容器が、地震時に層間変形を
生ずる上下階の構造体における下階の構造体の上に直立
状態に固定され、前記抵抗板の上端は水平な上部取り付
け梁と接合されており、前記上部取り付け梁の両端は、
壁面方向水平力を伝達するが、壁面外方向の水平変形に
は平行リンク動作で追随する構成で上階の構造体へ取り
付けた支持体により支持されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、壁型容器の粘性
体中に抵抗板を挿入して成る粘性壁ダンパーを使用した
制振壁、特に地震時に層間変形を生ずる上下階の構造体
における下階の構造体の上に、粘性壁ダンパーの壁型容
器を直立状態に固定して構成される制振壁の面外方向変
形追随機構の技術分野に属する。

【０００２】

【従来の技術】従来、粘性壁ダンパーを使用した制振壁
は、たとえば特公平５−２２０２６号（特許第１８１２
６１０号）公報に記載されたものが公知である。同公報
の第１図には、壁面外方向の水平変形には粘性壁ダン
パーが全体として傾動しつつ追随する構成の制振壁が開
示され、同第２図には下階の構造体の上に粘性壁ダン
パーの壁型容器を直立状態に固定し、抵抗板の支持構造
に、壁面外方向の水平変形に追随する機構を採用した制
振壁が開示されている。

【０００３】

【本発明が解決しようとする課題】上記の壁面外方向
の水平変形には粘性壁ダンパーが全体として傾動しつつ
追随する構成の制振壁は、一見合理的であるが、粘性壁
ダンパーが傾動するが故に、収容した粘性体がこぼれ出
す虞がある。また、前記「傾動」は必然的に抵抗板と壁
型容器との間に鉛直方向の相対変位を生じ、粘性壁ダン
パーは前記鉛直方向変位を許容する構造に製作しなけれ
ばならないが、このような構成の粘性壁ダンパーの十分
な検証は得られておらず、減衰機能に懸念がある。ま
た、製作が面倒になり、高価になる問題がある。

【０００４】上記のように下階の構造体の上に粘性壁
ダンパーの壁型容器を直立状態に固定した制振壁は、前
記「傾動」の問題点はない。しかし、当該公報の第２図
に開示されたように、上階の構造体に壁面外方向に平行
な複数のガイドビームを設置し、このガイドビームに沿
ってスライドするスリーブに抵抗板の上端を接合した構
成の追随機構の場合は、層間変形が最大５０cmにも達す
る大地震に備えてガイドビームの長さは１５０cm位が必
要である。そして、スリーブの円滑なスライドを確保す
るためにはガイドビームの外径をできるだけ小さくする
べきであるが、そうするとガイドビームの剛性が低下す
る。また、抵抗板の重量及び抵抗板に作用する大きな粘
性抵抗が、ガイドビームに対して曲げモーメントの作用
をするなどの要因が重なって、ガイドビームに曲げと撓
みを生じ易く、応力伝達に大きなロスが生ずることにな
る。ひいては衝撃的な加速度によりスリーブのスライド
が不調となり、ガイドビームに曲がりを生ずる心配があ
る。ガイドビームに一旦曲がりを生ずると、この制振壁
はその後全く用を成さない結果となる欠点がある。

【０００５】本発明の目的は、上記のように下階の構
造体の上に粘性壁ダンパーの壁型容器を直立状態に固定
した形式の制振壁において、抵抗板と上階の構造体との
取り合い部に、衝撃的に大きな加速度で、壁面外方向に
大きな層間変形を生ずる大地震を受けても円滑に追随動
作して、粘性壁ダンパーの機能を必要十分に発揮させ得
る、実用的な構成の面外方向変形追随機構を採用した制
振壁を提供することである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ための手段として、請求項１記載の発明に係る制振壁
は、壁型容器の粘性体中に抵抗板を挿入して成る粘性壁
ダンパーの壁型容器が、地震時に層間変形を生ずる上下
階の構造体における下階の構造体の上に直立状態に固定
され、前記抵抗板の上端は水平な上部取り付け梁と接合
されており、前記上部取り付け梁の両端は、壁面方向水
平力を伝達するが、壁面外方向の水平変形には平行リン
ク動作で追随する構成で上階の構造体へ取り付けた支持
体により支持されていることを特徴とする。

【０００７】請求項２記載の発明は、請求項１に記載し
た制振壁において、壁型容器は、下階の構造体に固定し
て両側面に沿って立ち上げた複数の補強柱によって直立
状態を補強されており、更に前記両側の補強柱の上端に
設置したガイドローラユニットにより上部取り付け梁が
壁面方向水平変位のみ可能に支持されていることを特徴
とする。

【０００８】請求項３記載の発明は、請求項１又は２に
記載した制振壁において、上部取り付け梁の両端に垂直
部を設け、支持体と前記垂直部との間にガイドローラユ
ニットを介在させて鉛直方向変位を吸収する構造で支持
体により上部構造体の支持が行われていることを特徴と
する。

【０００９】

【発明の実施形態及び実施例】図１〜図３に請求項１〜
３記載の発明の実施形態を示した。

【００１０】地震時に層間変形を生ずる上下階の構造体
１、２における下階の構造体２（例えば梁又は床スラ
ブ）の上に、粘性壁ダンパー３の壁型容器３ａが直立状
態に固定されている。具体的には、壁型容器３ａの下縁
に沿って下部取り付け梁４がボルト止め等の手段で取り
付けられ、この下部取り付け梁４を直接下階の構造体２
の上に載置し、下階の構造体２に埋設したアンカーボル
ト５等により締め付け固定されている。

【００１１】粘性壁ダンパー３の構造は既に種々公知で
ある。図３が参照されるように、上向きに開口され偏平
な容器構造をなす壁型容器３ａの中に高粘性の粘性体３
ｂが所定レベルまで収容され、この粘性体３ｂの中に、
壁型容器３ａの内壁面との間に一定の粘性間隙を確保し
て抵抗板３ｃが水平方向への相対変位が自由に挿入され
た構成が一般的である。

【００１２】前記抵抗板３ｃの上端は、水平な上部取り
付け梁６と接合され、一体的に水平変位する構成とされ
ている。具体的には図３が参照できるように、抵抗板３
ｃの上縁に沿ってフランジ状プレート７を溶接等の手段
で一体的に取り付け、このフランジ状プレート７を上部
取り付け梁６の下フランジの下面と重ね合せ、複数のボ
ルトで縫うが如くに接合されている。

【００１３】前記上部取り付け梁６の両端に相当長さの
垂直部６ａが下向きに設けられている。一方、壁面方向
（図１の紙面と平行方向）水平力はそのまま伝達する
が、壁面外方向（図１の紙面と垂直方向）の水平変形に
は平行リンク動作で追随する構成で上階の構造体１（例
えば梁）へ取り付けた支持体８、８により、前記上部取
り付け梁６の両端の垂直部６ａが支持されている（以
上、請求項１記載の発明）。

【００１４】図示した支持体８は、一組をなす２本の支
柱８ａ，８ａをＶ字形状（トラス構造）に剛結して組み
（図１）、各々の上端は上階の構造体１に対して壁面外
方向にのみ回転可能なヒンジ要素９にて取り付けてい
る。前記Ｖ字形状をなす２本の支柱８ａ，８ａの組み
は、前記上部取り付け梁６を挟んでその両側に１対を対
称的に設置されている。前記支柱８ａのＶ字形状谷部の
位置が、やはり壁面外方向にのみ回転可能なヒンジ要素
９を用いて、壁面外方向の繋ぎ材８ｂにて連結されてい
る。

【００１５】したがって、この支持体８は、壁面方向の
水平変形ないし水平力に対してはトラス構造の如き剛体
として働き、その水平力を伝達する。しかし、壁面外方
向の水平変形ないし水平力に対しては、図２を参照でき
るように、支持体８を構成する両側一対の支柱８ａ，８
ａが繋ぎ材８ｂと共に平行リンク動作（点線図示を参
照）して追随し、水平力は伝達しない。

【００１６】前記支持体８の繋ぎ材８ｂが、前記上部取
り付け梁６の両端の垂直部６ａを上下方向にのみ低抵抗
で移動するローラユニット１０を介して垂直部６ａと連
結されている（請求項３記載の発明）。

【００１７】繋ぎ材８ｂもまた、ローラユニット１０に
対して水平方向変位が自在に組み合わされている。前記
垂直部６ａ及びローラユニット１０の役目は、支持体８
の平行リンク動作に際して必然的に発生する繋ぎ材８ｂ
の鉛直方向変位（平行移動）を吸収させることにある。

【００１８】下階の構造体２へ固定して鉛直状態に立て
た粘性壁ダンパー３の壁型容器３ａは、上記支持体８の
平行リンク動作時の反力に耐えられるように、下端部を
下階の構造体２へ強固に固定して、壁型容器３ａの両側
面に沿って立ち上げた両側に２本づつの補強柱１１によ
って、粘性壁ダンパー３の直立状態が強固に補強されて
いる。

【００１９】のみならず、前記両側の補強柱１１の上端
には、図３を参照できるように、上記した上部取り付け
梁６及び抵抗板３ｃの上縁に取り付けたフランジ状プレ
ート７の重なり部分の上下を挟んで転がるようにガイド
ローラユニット１２が設置され、このガイドローラユニ
ット１２により上部取り付け梁６は壁面外方向にはきっ
ちり拘束され、壁面方向水平変位のみ可能に支持されて
いる（請求項３記載の発明）。

【００２０】なお、支持体８及びローラユニット１０、
１２の構造は、上記の作用効果を奏すれば良く、上述の
構成には限らない。

【００２１】

【本発明が奏する効果】請求項１〜３に記載した発明に
係る制振壁は、下階の構造体の上に粘性壁ダンパーの壁
型容器を直立状態に固定た形式の制振壁であるが、抵抗
板と上階の構造体との取り合い部に、衝撃的に大きな加
速度で壁面外方向に大きな層間変形を生ずる大地震を受
けても、円滑に追随動作する壁面外方向変形追随機構を
設けたので、粘性壁ダンパーの機能を必要十分に発揮さ
せ所期の制振効果を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る制振壁の実施形態を示した立面図
である。

【図２】図１の側面図である。

【図３】図１のＡ−Ａ線矢視の断面図である。

【符号の説明】

１ 上階の構造物 ２ 下階の構造物 ３ 粘性壁ダンパー ３ａ 壁型容器 ３ｂ 粘性体 ３ｃ 抵抗板 ６ 上部取り付け梁 ８ 支持体 １１ 補強柱 １２ ガイドローラユニット ６ａ 垂直部 １０ ガイドローラユニット

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】壁型容器の粘性体中に抵抗板を挿入して成
   る粘性壁ダンパーの壁型容器が、地震時に層間変形を生
   ずる上下階の構造体における下階の構造体の上に直立状
   態に固定され、 前記抵抗板の上端は水平な上部取り付け梁と接合されて
   おり、 前記上部取り付け梁の両端は、壁面方向水平力を伝達す
   るが、壁面外方向の水平変形には平行リンク動作で追随
   する構成で上階の構造体へ取り付けた支持体により支持
   されていること、を特徴とする、制振壁。
2. 【請求項２】壁型容器は、下階の構造体に固定して両側
   面に沿って立ち上げた複数の補強柱によって直立状態を
   補強されており、更に前記両側の補強柱の上端に設置し
   たガイドローラユニットにより上部取り付け梁が壁面方
   向水平変位のみ可能に支持されていることを特徴とす
   る、請求項１に記載した制振壁。
3. 【請求項３】上部取り付け梁の両端に垂直部を設け、支
   持体と前記垂直部との間にガイドローラユニットを介在
   させて、鉛直方向変位を吸収する構造で支持体により上
   部取り付け梁の支持が行われていることを特徴とする、
   請求項１又は２に記載した制振壁。