JP2001123402A - 耐波状摩耗性に優れたレール - Google Patents

耐波状摩耗性に優れたレール

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JP2001123402A
JP2001123402A JP30695899A JP30695899A JP2001123402A JP 2001123402 A JP2001123402 A JP 2001123402A JP 30695899 A JP30695899 A JP 30695899A JP 30695899 A JP30695899 A JP 30695899A JP 2001123402 A JP2001123402 A JP 2001123402A
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sides
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JP30695899A
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Toshiya Kuroki
俊哉 黒木
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 レールに生じる波状摩耗を材質的に防止、又
は生じにくくした耐波状摩耗特性に優れたレールを提供
する。 【解決手段】 レール10の両側にある頭頂側部14の
耐摩耗度を、レール10の頭頂中央部13の耐摩耗度よ
り小さくする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道用レールに関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、電車の高速化に伴って、鉄道用レ
ール頭頂部に長手方向に波打つ現象(いわゆる波状摩耗
現象)が発生する頻度が増加している。この現象は、主
としてレールの曲線の内軌に現れ、これにより騒音、振
動等の問題が引き起こされ、更に電車の乗心地を悪くす
る結果を招いている。そこで、この波状摩耗現象を解決
するために、特開昭62−233306号公報のレール
頭部の修正方法及び修正装置や、特開平6−22890
2号公報の敷設レール踏面削正方法に開示されているよ
うに、レール頭頂面を研削してもとのレール形状に戻す
方法が検討されてきた。しかし、これらは波状摩耗が生
じたときの対応であるため、根本的に波状摩耗の発生を
抑制する解決手段とはならなかった。そのような中、波
状摩耗を抑制する解決手段として、特開平7−3170
01号公報に記載のラダー型マクラギ及び車両用軌道の
ように、レールの敷設方法によって対応する技術が確立
されつつある。一方、「新線路」H10−7月号記載の
「転動音を低減する新形式レールの開発」には、新しい
レール形状が提案されており、この方面からの波状摩耗
の抑制が期待されている。また、「SUBWAY」19
96年No.102号記載の「レール波状摩耗の発生メ
カニズムとその防止対策(その3)」においては、レー
ル頭部の削正方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、いずれ
もレール頭部の材質に関わるものではなく、耐波状摩耗
特性をレール頭部の材質の面から検討したものは今まで
にない。本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、
レールに生じる波状摩耗を材質的に防止、又は生じにく
くした耐波状摩耗特性に優れたレールを提供することを
目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】発明者らは、波状摩耗に
関して多くの実験、調査を試み、以下のような知見を得
た。 (1)波状摩耗は、主として曲線部の内軌レールの頭頂
部に生じる。 (2)波状摩耗は、主としてレールの幅方向へのレール
と車輪との相対的すべりに起因していることが多い。 (3)波状摩耗を生じさせているレールは、車輪との接
触面形状がレールの長手方向よりも幅方向に広くなると
いう解析結果が多い。ここで、3つめの知見は、レール
と車輪との接触状態が幅方向への相対的なすべりを助長
しやすくなっていることを意味している。例えば、スキ
ー板は長手方向にすべりやすく、幅方向にはブレーキと
なること等の例があり、これは想像に難くない。また、
自動車用のタイヤの溝は、接触面形状が長手方向に長く
なるように長手方向に入れられており、横方向のすべり
を抑える意味がある。本発明は、これらの知見を総合し
て考え出されたもので、その要旨は次の通りである。
【0005】即ち、前記目的に沿う本発明に係る耐波状
摩耗性に優れたレールは、レールの頭頂両側部の耐摩耗
度が、レールの頭頂中央部の耐摩耗度より小さい。これ
により、レールの頭頂両側部の摩耗の進行を、レールの
頭頂中央部よりも速く進行させることができる。ここ
で、本発明に係る耐波状摩耗性に優れたレールにおいて
は、レールの頭頂中央部の残留応力を圧縮に、レールの
頭頂両側部の残留応力を引張りにすることも可能であ
る。これにより、レールの頭頂中央部には摩耗が生じに
くく、レールの頭頂両側部は摩耗が生じやすくなる。更
に、本発明に係る耐波状摩耗性に優れたレールにおいて
は、レールの頭頂中央部とレールの頭頂両側部との残留
応力の差を200〜400MPaにすることも可能であ
る。これにより、レールの頭頂中央部には摩耗が生じに
くく、レールの頭頂両側部は摩耗が生じやすくなる、最
適な範囲を決定することができる。
【0006】そして、本発明に係る耐波状摩耗性に優れ
たレールにおいては、レールの頭頂中央部の表層部硬度
を、レールの頭頂両側部の表層部硬度より高くすること
も可能である。これにより、レールの頭頂中央部の摩耗
が抑えられ、レールの頭頂両側部の摩耗速度は速くな
る。ここで、本発明に係る耐波状摩耗性に優れたレール
においては、レールの頭頂中央部の表層部硬度と、レー
ルの頭頂両側部の表層部硬度との表層部硬度差を、ビッ
カース硬さで20〜100とすることも可能である。こ
れにより、レールの頭頂中央部の摩耗が抑えられ、レー
ルの頭頂両側部の摩耗速度は速くなる最適な範囲を決定
することができる。
【0007】また、本発明に係る耐波状摩耗性に優れた
レールにおいては、レールの頭頂中央部の表層部をパー
ライト組織にし、レールの頭頂両側部の表層部をパーラ
イト組織とベイナイト組織との混合組織にすることも可
能である。これにより、レールの頭頂両側部の摩耗速度
を速くし、レールの頭頂中央部の摩耗速度を遅くするこ
とができる。ここで、本発明に係る耐波状摩耗性に優れ
たレールにおいては、レールの頭頂両側部に存在する表
層部のベイナイト組織の体積分率を20〜80%にする
ことも可能である。これにより、レールの頭頂中央部の
摩耗速度が遅くなり、レールの頭頂両側部の摩耗速度を
速くする最適な範囲を決定することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】続いて、添付した図面を参照しつ
つ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発
明の理解に供する。図1は本発明の一実施の形態に係る
耐波状摩耗性に優れたレールの正断面図、図2は本発明
の実施例1に係る耐波状摩耗性に優れたレールのレール
頭部の残留応力分布図、図3は従来のインライン熱処理
したレール頭部の残留応力分布図、図4は本発明の実施
例2に係る耐波状摩耗性に優れたレールのレール頭部の
硬度分布図、図5は従来のインライン熱処理したレール
頭部の硬度分布図、図6は本発明の実施例3に係る耐波
状摩耗性に優れたレールのレール頭部の組織分布図であ
る。以下、これらについて詳しく説明する。
【0009】一般に、熱処理した硬頭レールは、レール
の頭頂中央部よりも、レールの頭頂両側部の方が耐摩耗
度が大きく(硬く)、曲線部の外軌の強く擦られる部分
についてはその効果を発揮している。また、波状摩耗
は、曲線部の内軌に生じることが多く、そこでは、頭頂
両側部よりも頭頂中央部が車輪と強く接することが多
い。ここで、頭頂中央部の摩耗速度が頭頂両側部より大
きければ、頭頂中央部は車輪との接触により頭頂両側部
より摩耗速度が速くなり、頭頂部の幅方向の曲率半径が
徐々に大きく(平たくなる方向)なっていく。この曲率
半径が車輪の曲率半径に近づくと接触面形状が幅広にな
っていく。接触面形状が幅広になると、車輪とレールと
が長手方向よりも幅方向に相対的にすべりやすくなり、
その結果、波状摩耗が生じ易くなっていく。
【0010】そこで、図1に示すように、本発明の一実
施の形態に係る耐波状摩耗性に優れたレール10(以
下、レール10という)においては、両側にある頭頂側
部14の耐摩耗度が、頭頂中央部13の耐摩耗度より小
さくなるようにした。このように耐摩耗度を変えるため
に、以下に示す3つの方法について検討、調査した。 (1)頭頂中央部13の残留応力を圧縮に、両側にある
頭頂側部14の残留応力を引張りにする。 (2)頭頂中央部13の表層部硬度を、両側にある頭頂
側部14の表層部硬度より高くする。 (3)頭頂中央部13の表層部をパーライト組織とし、
両側にある頭頂側部14の表層部をパーライト組織とベ
イナイト組織との混合組織とする。
【0011】まず、残留応力について説明する。頭頂中
央部13の残留応力を圧縮とし、両側にある頭頂側部1
4の残留応力を引張りにすることにより、頭頂部12の
表層部にマイクロクラックが生じたとき、頭頂中央部1
3ではマイクロクラックは閉じ、両側にある頭頂側部1
4ではマイクロクラックは開く。その結果、両側にある
頭頂側部14で開いたマイクロクラックからは摩耗粉が
取れ、摩耗がアブレイシブに生じるが、頭頂中央部13
では、このメカニズムでの摩耗は生じない。従って、頭
頂中央部13に比べて両側にある頭頂側部14の摩耗速
度は速くなり、耐波状摩耗性に優れたレール10を製造
することが可能となる。なお、頭頂中央部13の残留応
力を圧縮にする方法としては、頭頂中央部13を、両側
にある頭頂側部14より高くしたレールを製造し、頭頂
中央部13の高くした部分を冷間圧延することで頭頂中
央部13に圧縮の残留応力をかける方法や、レール頭部
11全体に圧縮の圧力をかけ、その後、両側にある頭頂
側部14を熱処理することで圧縮の残留応力を開放する
方法等がある。
【0012】更に、本実施の形態においては、敷設直後
の頭頂中央部13と、両側にある頭頂側部14との残留
応力の差を200〜400MPaに限定した。レール1
0上を列車等が走行することで、頭頂中央部13、及び
両側にある頭頂側部14の残留応力は、時々刻々と少し
ずつ変化する。つまり、当初の頭頂中央部13と、両側
にある頭頂側部14との残留応力の差がなくなってく
る。よって、波状摩耗を防止、又は生じにくくできる範
囲と、製造コスト等を考慮することで、頭頂中央部13
と、両側にある頭頂側部14との残留応力の差の下限値
を200MPa、上限値を400MPaとした。
【0013】続いて、表層部硬度について説明する。頭
頂部12の極表層部は、列車等がレール10を走行する
度に加工硬化を起こす。この加工硬化は頭頂部12の極
表層部に限られているが、この加工硬化した極表層部
は、これより僅かにレール10の頭頂部12の極表層部
から内部に入ったところの表層部の硬度の影響を受けて
いる。すなわち、このレール10の頭頂部12の極表層
部から内部に入ったところの表層部の硬度が高い場合
は、加工硬化の程度はその分大きくなり、その部分の摩
耗速度は遅くなる。従って、頭頂中央部13の表層部硬
度を、両側にある頭頂側部14の表層部硬度より高くす
ることにより、頭頂中央部13の摩耗が抑えられ、両側
にある頭頂側部14の摩耗速度を速くでき、その結果、
耐波状摩耗性に優れたレール10を製造することが可能
となる。なお、頭頂中央部13の表層部硬度を、両側に
ある頭頂側部14の表層部硬度より高くするには、以下
の方法が考えられる。 (1)頭頂中央部13の金属組織を、両側にある頭頂側
部14の金属組織よりも硬い金属組織にする。 (2)頭頂中央部13の熱間加工直後のオーステナイト
の結晶粒(γ粒)を、両側にある頭頂側部14より粗く
し、変態開始温度を下げることによって頭頂中央部13
の硬度を高める。
【0014】1つめの方法において、レール10の材質
は高C鋼なので、オーステナイトの金属組織は、冷却速
度を変えることで、パーライト又はベイナイトの組織に
することが可能である。ここで、パーライトの変態領域
内においては、低温でパーライト組織に変態させると硬
い組織が得られる。よって、頭頂中央部13をパーライ
トの変態領域内において急冷し、両側にある頭頂側部1
4をゆっくりと冷却することで、頭頂中央部13の表層
部硬度を、両側にある頭頂側部14の表層部硬度より高
くすることができる。この製造方法としては、熱処理し
た頭頂中央部13のみを急冷する方法、例えば、常温の
強い気液(空気と水等)混合のジェットを、頭頂中央部
13のみにノズル等を用いて当てる方法等を利用するこ
とができる。2つめの方法において、パーライトへの変
態である限りは、硬度は変態開始温度に依存するため、
頭頂中央部13の結晶粒径を粗くすることで、両側にあ
る頭頂側部14より変態開始温度を低くする方法であ
る。この方法としては、熱間圧延の最終で両側にある頭
頂側部14のみに軽い圧延を行い、表面のみに歪みを与
え、表面のみの再結晶で結晶粒径を細かくする方法があ
る。
【0015】更に、頭頂中央部13の表層部硬度と、両
側にある頭頂側部14の表層部硬度との差をビッカース
硬さHv で20〜100に限定した。極表層部の加工硬
化は、上記したように僅かにレール10の頭頂部12の
極表層部から内部に入ったところの表層部の硬度の影響
を受けている。よって、初期時に、頭頂中央部13の表
層部硬度と、両側にある頭頂側部14の表層部硬度との
差が、ビッカース硬さで20以上なければ、摩耗速度の
差を生じない可能性がある。つまり、頭頂中央部13の
摩耗が抑えられ、両側にある頭頂側部14の摩耗速度を
頭頂中央部13の摩耗速度より速くできる範囲と、製造
コスト等を考慮することで、頭頂中央部13の表層部硬
度と、頭頂側部14の表層部硬度との使用前の製品状態
でのビッカース硬度の差の下限値を20、上限値を10
0とした。
【0016】そして、表層部の組織について説明する。
これは、頭頂中央部13の金属組織をパーライト組織と
し、両側にある頭頂側部14をパーライト組織より摩耗
しやすいパーライト組織とベイナイト組織との混合組織
にするというものである。ベイナイトは、パーライトと
同程度の硬度を有するものの、摩耗が速い組織である。
よって、レール10の両側にある頭頂側部14の摩耗速
度を速くし、レール10の頭頂中央部13の摩耗速度を
遅くすることができる。ここで使用しているレール10
の材質は高C鋼なので、オーステナイトの金属組織は、
冷却速度を変えることで、パーライト又はベイナイトの
組織にすることが可能である。そのため、両側にある頭
頂側部14の金属組織を、ベイナイトへの変態領域内に
入り、かつマルテンサイト変態させない程度の急冷を行
うことで、パーライトとベイナイトとの混合組織にす
る。一方、頭頂中央部13の金属組織は、両側にある頭
頂側部14の急冷により、低温でパーライト組織に変態
するため硬い組織が得られる。この製造方法としては、
レール10を熱処理する際に、両側にある頭頂側部14
に空気を集中させて急冷し、途中で冷却を止めることで
組織調整する方法等を利用することができる。
【0017】ここで、両側にある頭頂側部14に存在す
る表層部のベイナイト組織の体積分率を20〜80%に
限定した。パーライト組織にベイナイト組織が混じると
摩耗速度が速くなり、ベイナイト組織の体積分率が20
%以上あると、パーライト組織に比べて摩耗速度の差が
顕著に現われてくる。また、ベイナイト組織への変態方
法は、パーライト組織にするよりも速く、マルテンサイ
ト組織にするよりも遅く冷却しなければならない。その
ため製造コストや、作業性等を考慮して、表層部のベイ
ナイト組織の体積分率の下限値を20%、上限値を80
%とした。
【0018】なお、このとき、レール10の摩耗が進ん
でくるとレール10の両側にある頭頂側部14から内部
へ入ったところの組織が表面に現われてくる。一般に、
レール10は、頭頂部12で摩耗が5mm生じる頃に交
換される。そこで、好ましくは20%以上のベイナイト
体積分率のある組織が両側にある頭頂側部14からレー
ル頭部11の中央に向かって5mmの深さまであること
が望ましい。このようにしてレール10を製造すること
で、摩耗速度は頭頂中央部13の方が、両側にある頭頂
側部14より遅くなるので、接触域がレール10の幅方
向より長手方向に長い状態が維持でき、これにより波状
摩耗の原因となる横方向のすべりを抑制することが可能
となる。
【0019】なお、以上の実施の形態においては、レー
ル製造後の加工や、熱処理による方法について説明した
が、頭頂中央部13に上記の調整を施した鋼材を組込む
ことも可能である。また、波状摩耗は、主として曲線部
の内軌レールの頭頂部に発生しているが、直線部におい
ても、地盤の傾斜等により、列車等が僅かに蛇行するこ
とで発生するため、曲線部の内軌レールの頭頂部、直線
部、更には、緩曲線部の内軌、外軌レールについても本
発明は適用される。
【0020】
【実施例】本発明者は、本発明において波状摩耗に関す
る実験を行い、これを検証した。実験は、レールと車輪
との接触を再現する試験機、及び本発明に係るレールを
用いて、波状摩耗を発生しやすい条件で、0.5mm深
さの波状摩耗が発生するまでの累積通過トン数を比較し
た。このときの実験条件を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】(実施例1)まず、残留応力を調整した耐
波状摩耗性に優れたレールについて説明する。図2に示
すように、レールの頭頂中央部を、頭頂両側部より高く
したレールを製造し、高くした頭頂中央部を冷間圧延す
ることで、頭頂中央部に圧縮の残留応力をかける。これ
により、実験前の段階で、頭頂中央部では100MPa
の圧縮の残留応力を、頭頂両側部では200MPaの引
張りの残留応力を発生させ、頭頂中央部と頭頂両側部と
の間で300MPa程度の差を付けることができた。な
お、これは40トンf程度の荷重の軽圧下で圧延を施す
ことによって得ることができた。一方、図3に示すよう
に、従来のインライン熱処理したレールの頭部は、層状
の残留応力分布を呈しており、頭頂部の頭頂中央部は頭
頂両側部より引張り側になっている。
【0023】この2つのレールを表1の条件で実験を実
施したところ、本発明の耐波状摩耗性に優れたレール
は、従来のインライン熱処理レールに比べて波状摩耗が
生じるまでの累積通過トン数が約1.5倍程度に多いこ
とが分かった。上記の実験では、波状摩耗の発生まで
に、1.5倍程度の時間の差が生じたが、このとき、頭
頂中央部と頭頂両側部との間で残留応力に200MPa
以上の差が生じていない可能性がある。これは、レール
上を車輪が走行することで、残留応力が時々刻々と少し
ずつ変化するからである。ただし、本発明の耐波状摩耗
性に優れたレールを普通(実験条件でない使用方法)に
使用した場合、その変化量は約200MPa以下に納ま
る。
【0024】(実施例2)続いて、表層部硬度を調整し
た耐波状摩耗性に優れたレールについて説明する。図4
に示すように、レールの頭頂中央部のみに常温の強い気
水混合のジェットを当てることにより、実験前の段階
で、頭頂中央部の表層部硬度を370に、頭頂両側部の
表層部硬度を340とし、ビッカース硬さで30程度の
差を付けている。一方、図5に示す従来のインライン熱
処理したレールの頭部は、レールの首部を中心とした同
心円状硬度分布を呈しており、レールの頭頂中央部は頭
頂両側部と同程度の硬度を示している。この2つのレー
ルを表1の条件で実験を実施したところ、本発明の耐波
状摩耗性に優れたレールは、従来のインライン熱処理レ
ールに比べて波状摩耗が生じるまでの累積通過トン数が
約2倍程度に多いことが分かった。この場合、ビッカー
ス硬さで30の差を付けているので累積通過トン数に2
倍程度の差が生じたが、実験前の段階で、20以上の硬
度差を与えないと波状摩耗発生までの時間に差を生じな
い可能性がある。また、ここで、レールの頭頂部の極表
層部は、レール上の車輪の走行回数が200回を超える
ことによって加工効果が生じている。
【0025】(実施例3)更に、頭頂部の組織を調整し
た耐波状摩耗性に優れたレールについて説明する。図6
に示すように、レールを熱処理する際に、レールの両側
にある頭頂側部22に空気を集中させて冷却し、途中で
冷却を止め、組織を調整する。これにより、実験前の段
階で、頭頂中央部21では表層部までパーライト単層組
織を存在させ、レールの両側にある頭頂側部22にはパ
ーライトとベイナイトとの混合組織を存在させることが
できた。なお、ここで、レールの両側にある頭頂側部2
2の表層部でのベイナイトの体積分率は50%程度であ
り、内部に向かうに従ってパーライト分率が高くなって
いた。一方、従来のインライン熱処理したレールの組織
は全表層部でパーライト単層組織となっている。この2
つのレールを表1の条件で実験を実施したところ、本発
明の耐波状摩耗性に優れたレールは、従来のインライン
熱処理レールに比べて波状摩耗が生じるまでの累積通過
トン数が1200万トンであったのに対し、約2倍以上
の2500万トンになっても波状摩耗が発生しないこと
が分かった。
【0026】
【発明の効果】請求項1〜7記載の耐波状摩耗性に優れ
たレールは、レールの頭頂両側部の耐摩耗度が、レール
の頭頂中央部の耐摩耗度より小さいので、レールの頭頂
両側部の摩耗を、レールの頭頂中央部よりも速く進行さ
せることができる。これにより、波状摩耗の発生を抑制
できるため、騒音、振動等の問題を解決し、電車の乗心
地もよく、更にレールの寿命も永くできる耐波状摩耗性
に優れたレールを製造することが可能となる。
【0027】特に、請求項2及び3記載の耐波状摩耗性
に優れたレールにおいては、レールの頭頂中央部の残留
応力を圧縮に、レールの頭頂両側部の残留応力を引張り
にするので、レールの頭頂中央部には摩耗が生じにく
く、レールの頭頂両側部は摩耗が生じやすい。これによ
り、レールと車輪との接触域がレールの幅方向より長手
方向に長い状態が維持できるので、波状摩耗の原因とな
る横方向のすべりを抑制することが可能となり、耐波状
摩耗性も向上できるため、レールの寿命を向上させるこ
とが可能となる。請求項3記載の耐波状摩耗性に優れた
レールにおいては、レールの頭頂中央部とレールの頭頂
両側部との残留応力の差が200〜400MPaなの
で、レールの頭頂中央部には摩耗が生じにくく、レール
の頭頂両側部は摩耗が生じやすい最適な範囲を決定する
ことができる。これにより、レールと車輪との接触域が
レールの幅方向より長手方向に長い状態が維持できる最
適な残留応力値を定義することが可能となる。
【0028】請求項4及び5記載の耐波状摩耗性に優れ
たレールにおいては、レールの頭頂中央部の表層部硬度
を、レールの頭頂両側部の表層部硬度より高くするの
で、レールの頭頂中央部の摩耗が抑えられ、レールの頭
頂両側部の摩耗速度は速くなる。これにより、レールと
車輪との接触域がレールの幅方向より長手方向に長い状
態が維持できるので、波状摩耗の原因となる横方向のす
べりを抑制することが可能となり、耐波状摩耗性も向上
できるため、レールの寿命を向上させることが可能とな
る。請求項5記載の耐波状摩耗性に優れたレールにおい
ては、レールの頭頂中央部の表層部硬度と、レールの頭
頂両側部の表層部硬度との表面硬度差を、ビッカース硬
さで20〜100とするので、レールの頭頂中央部の摩
耗が抑えられ、レールの頭頂両側部の摩耗速度は速くな
る最適な範囲を決定することができる。これにより、レ
ールと車輪との接触域がレールの幅方向より長手方向に
長い状態が維持できる最適な表層部硬度を定義すること
が可能となる。
【0029】請求項6及び7記載の耐波状摩耗性に優れ
たレールにおいては、レールの頭頂中央部の表層部をパ
ーライト組織に、レールの頭頂両側部の表層部をパーラ
イト組織とベイナイト組織との混合組織にするので、レ
ールの頭頂両側部の摩耗速度を速くし、レールの頭頂中
央部の摩耗速度を遅くすることができる。これにより、
レールと車輪との接触域がレールの幅方向より長手方向
に長い状態が維持できるので、波状摩耗の原因となる横
方向のすべりを抑制することが可能となり、耐波状摩耗
性も向上できるため、レールの寿命を向上させることが
可能となる。請求項7記載の耐波状摩耗性に優れたレー
ルにおいては、レールの頭頂両側部に存在する表層部の
ベイナイト組織の体積分率を20〜80%にするので、
レールの頭頂中央部の摩耗速度が遅くなり、レールの頭
頂両側部の摩耗速度を速くする最適な範囲を決定するこ
とができる。これにより、レールと車輪との接触域がレ
ールの幅方向より長手方向に長い状態が維持できる最適
な金属組織の量を定義することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る耐波状摩耗性に優
れたレールの正断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る耐波状摩耗性に優れた
レールのレール頭部の残留応力分布図である。
【図3】従来のインライン熱処理したレール頭部の残留
応力分布図である。
【図4】本発明の実施例2に係る耐波状摩耗性に優れた
レールのレール頭部の硬度分布図である。
【図5】従来のインライン熱処理したレール頭部の硬度
分布図である。
【図6】本発明の実施例3に係る耐波状摩耗性に優れた
レールのレール頭部の組織分布図である。
【符号の説明】
10:耐波状摩耗性に優れたレール、11:レール頭
部、12:頭頂部、13:頭頂中央部、14:頭頂側
部、21:頭頂中央部、22:頭頂側部

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レールの頭頂両側部の耐摩耗度が、前記
    レールの頭頂中央部の耐摩耗度より小さいことを特徴と
    する耐波状摩耗性に優れたレール。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の耐波状摩耗性に優れたレ
    ールにおいて、前記レールの頭頂中央部の残留応力を圧
    縮に、前記レールの頭頂両側部の残留応力を引張りにす
    ることを特徴とする耐波状摩耗性に優れたレール。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の耐波状摩耗性に優れたレ
    ールにおいて、前記レールの頭頂中央部と前記レールの
    頭頂両側部との残留応力の差が200〜400MPaで
    あることを特徴とする耐波状摩耗性に優れたレール。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の耐波状摩耗性に優れたレ
    ールにおいて、前記レールの頭頂中央部の表層部硬度
    が、前記レールの頭頂両側部の表層部硬度より高いこと
    を特徴とする耐波状摩耗性に優れたレール。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の耐波状摩耗性に優れたレ
    ールにおいて、前記レールの頭頂中央部の表層部硬度
    と、前記レールの頭頂両側部の表層部硬度との表層部硬
    度差が、ビッカース硬さで20〜100であることを特
    徴とする耐波状摩耗性に優れたレール。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の耐波状摩耗性に優れたレ
    ールにおいて、前記レールの頭頂中央部の表層部がパー
    ライト組織であり、前記レールの頭頂両側部の表層部が
    パーライト組織とベイナイト組織との混合組織であるこ
    とを特徴とする耐波状摩耗性に優れたレール。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の耐波状摩耗性に優れたレ
    ールにおいて、前記レールの頭頂両側部に存在する表層
    部のベイナイト組織の体積分率が20〜80%であるこ
    とを特徴とする耐波状摩耗性に優れたレール。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102454138A (zh) * 2010-10-20 2012-05-16 赵文杰 一种新型铁路钢轨

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102454138A (zh) * 2010-10-20 2012-05-16 赵文杰 一种新型铁路钢轨

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