JP2001115018A5 - - Google Patents

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Description

【書類名】 明細書
【発明の名称】 帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)環状アミドと、
(b)環状エステル、ならびに(b)ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の鎖状エステル、より選ばれる少なくとも1つのエステルを、
共重合して作られ、且つ、表面抵抗率が1013Ω未満とされていることを特徴とする帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項2】 表面抵抗率が10〜1012Ωであることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項3】 (a)環状アミドと(b)環状エステルを100:3〜44の重量比で開環共重合して作られたことを特徴とする請求項1または2記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項4】 (a)環状アミドと、(b)環状エステルを、100:3以上10未満の重量比で共重合し、該共重合の際に、更に導電性物質を添加して作られたことを特徴とする請求項3記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項5】 (a)環状アミドと(b)環状エステルを100:10〜34の重量比で開環共重合して作られたことを特徴とする請求項3記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項6】
(a)環状アミドと、
(b)鎖状エステル、又は(b)該鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物を、
100: 2〜50の重量比で共重合して作られたことを特徴とする請求項1または2記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項7】
(a)環状アミドと、
(b)鎖状エステル、又は(b)該鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物を、100:2以上5未満の重量比で共重合し、更に導電性物質を添加して作られたことを特徴とする請求項6に記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項8】
(a)環状アミドと、
(b)鎖状エステル、又は(b)該鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物を、
100: 5〜45の重量比で共重合して作られたことを特徴とする請求項6に記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項9】 ASTM D−638に準拠して測定された引張強度が40MPa以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の帯電防止ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項10】 (b)鎖状エステルがポリカプロラクトンジオールであることを特徴とする請求項1、2、6〜8および9のいずれか1項に記載の帯電防止ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項11】 (b)環状エステルがε−カプロラクトンであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の帯電防止ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項12】 (a)環状アミドがε−カプロラクタムであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の帯電防止ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項13】
下記を反応させて得られ、ポリスチレン換算の数平均分子量が4,000〜100,000である、ポリエステルアミド樹脂。
(a)環状アミド 100重量部、
(b)ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の鎖状エステル 5〜50重量部、又は、(b)5重量部以上の上記鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物 5〜50重量部、及び
(c)分子量が200以下であり、且つ、2個以上の水酸基を有する化合物
【請求項14】 表面抵抗率が10〜10Ωであることを特徴とする請求項13に記載のポリエステルアミド樹脂。
【請求項15】 体積抵抗率が10〜10Ω・mであることを特徴とする請求項13または14に記載のポリエステルアミド樹脂。
【請求項16】前記(c)化合物が、下記式で定義される水酸基モル比、
【式1】
水酸基モル比=(c)の水酸基モル量/(b)の水酸基モル量
が0.1〜1.0となる量で用いられることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載のポリエステルアミド樹脂。
【請求項17】水酸基モル比が、0.2〜0.5であることを特徴とする請求項16記載のポリエステルアミド樹脂。
【請求項18】前記(c)化合物が、3個以上の水酸基を有することを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載のポリエステルアミド樹脂。
【請求項19】前記(c)化合物が、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、またはトリメチロールエタンとトリメチロールプロパンの混合物であることを特徴とする請求項18記載のポリエステルアミド樹脂。
【請求項20】(a)環状アミドがε−カプロラクタムであることを特徴とする請求項13〜19のいずれか1項に記載のポリエステルアミド樹脂。
【請求項21】(b)環状エステルがε−カプロラクトンであることを特徴とする請求項13〜20のいずれか1項に記載のポリエステルアミド樹脂。
【請求項22】(b)鎖状エステルがポリカプロラクトンジオールであることを特徴とする請求項13〜21のいずれか1項に記載のポリエステルアミド樹脂。
【請求項23】 請求項13〜22のいずれか1項に記載のポリエステルアミド樹脂からなる帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項24】 モノマーキャスト法により得られることを特徴とする請求項1〜12および23のいずれか1項に記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【請求項25】 (a)環状アミドと(b)環状エステルを100:3〜44の重量比で開環共重合することを特徴とする帯電防止性ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項26】 (a)環状アミドと(b)環状エステルを100:10〜34の重量比で開環共重合することを特徴とする請求項25記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項27】
(a)環状アミドと、
(b)ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の鎖状エステル、又は(b)上記鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物を、100: 2〜50の重量比で共重合することを特徴とする帯電防止性ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項28】
(a)環状アミドと、
(b)鎖状エステル、又は(b)該鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物を、100: 5〜45の重量比で共重合することを特徴とする請求項27記載の帯電
防止性ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項29】 (b)鎖状エステルがポリカプロラクトンジオールであることを特徴とする請求項27または28に記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項30】 (b)環状エステルがε−カプロラクトンであることを特徴とする請求項25〜29のいずれか1項に記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項31】 (a)環状アミドがε−カプロラクタムであることを特徴とする請求項25〜30のいずれか1項に記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項32】
(a)環状アミド 100重量部、
(b)ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の鎖状エステル 5〜50重量部、又は、
(b)5重量部以上の上記鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物 5〜50重量部、及び、
(c)分子量が200以下であり、且つ、2個以上の水酸基を有する化合物、を反応させることを特徴とするポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項33】前記(c)化合物が、下記式で定義される水酸基モル比
【式2】
水酸基モル比=(c)の水酸基モル量/(b)の水酸基モル量
が0.1〜1となる量で反応に付されることを特徴とする請求項32に記載のポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項34】前記水酸基モル比が、0.2〜0.5であることを特徴とする請求項33記載のポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項35】前記(c)化合物が、3個以上の水酸基を有することを特徴とする請求項32〜34のいずれか1項に記載のポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項36】前記(c)化合物が、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、またはトリメチロールエタンとトリメチロールプロパンの混合物であることを特徴とする請求項35記載のポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項37】 (b)鎖状エステルがポリカプロラクトンジオールであることを特徴とする請求項32〜36のいずれか1項に記載のポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項38】 (b)環状エステルがε−カプロラクトンであることを特徴とする請求項32〜37のいずれか1項に記載のポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項39】 (a)環状アミドがε−カプロラクタムであることを特徴とする請求項32〜38のいずれか1項に記載のポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項40】 共重合が、モノマーキャスト法により行われることを特徴とする請求項25〜31のいずれか1項に記載の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【請求項41】反応が、モノマーキャスト法により行われることを特徴とする請求項32〜39のいずれか1項に記載のポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体に関し、特に環状アミドと環状エステル及び/又は鎖状エステルとの共重合樹脂、さらには、これらのモノマーに加えて特定の、水酸基を有する化合物を反応させて得られるポリエステルアミド樹脂の成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
帯電防止性能が付与された樹脂成形体は、電機、電子機器の分野で広範に使用されている。特に半導体関連製品の生産ラインに用いられる各種部品、例えば搬送パレット、ハウジング、軸受、ガイド、ローラー等に用いられる。
【0003】
例えば熱可塑性樹脂からなる高分子マトリックスに帯電防止性能を付与するには、一般にグラファイト、カーボンブラック、カーボン繊維、金属酸化物、金属粉末、金属繊維等の導電性フィラーを添加する方法、界面活性剤等の帯電防止剤を添加するか、もしくは表面に塗布する方法、または導電性ポリマーを添加する方法が採られている。
【0004】
導電性フィラーを配合することにより、表面抵抗率を下げることは比較的容易であるが、通常、成形体の約20重量%程度も配合する必要があるため均一分散が困難であり、またコスト高になる問題がある。特に、カーボン系導電材を用いた場合、成形体が黒色になるので着色が制限され、又、カーボン粒子による汚染によって製品用途が限定される場合がある。さらに、要求される表面抵抗率の範囲が10から1012オーダーΩである場合、この抵抗率を安定に達成することが困難であり、IC関連部品において、上記下限値よりも低い抵抗値となる場合には、IC内部回路の破壊を招く恐れがある。
【0005】
界面活性剤を重合系に添加する場合には、界面活性剤が重合系の中で反応を阻害したり、高成形温度で分解する場合がある。たとえ要求される表面抵抗率が得られる場合でも抵抗率の経時変化が起こったり、半導体製造工程において致命的なイオン性不純物の溶出という問題がある。界面活性剤を成形品表面に塗布する場合には、耐熱性が低下する、帯電防止性が時間経過と共に低下する、また、IC関連部品では界面活性剤イオンが回路に悪影響を及ぼすなどの問題がある。
【0006】
導電性ポリマーは、イオン性不純物の溶出が無い点で優れているが、非常に高価である。さらに、導電性フィラーと同様に成形時の均一分散が困難であったり、また、界面活性剤と同様に成形温度の制約を受ける場合がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の諸問題が無く、低い抵抗率を有する帯電防止性樹脂及びその成形体を、簡便に、且つ安価に提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を達成すべく、分子骨格自体で低抵抗率を有する樹脂を得ることを鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、(a)環状アミドと、(b)環状エステル、ならびに(b)ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の鎖状エステル、より選ばれる少なくとも1つのエステルを共重合して作られ、且つ、表面抵抗率が1013Ω未満とされていることを特徴とする帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体である。
【0009】
上記帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体に係る発明の好ましい実施形態として下記のものが挙げられる。
表面抵抗率が10〜1012Ωであることを特徴とする帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0010】
(a)環状アミドと(b)環状エステルを100:3〜44の重量比で開環重合して作られたことを特徴とする上記帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0011】
(a)環状アミドと、(b)環状エステルを、100:3以上10未満の重量比で共重合し、該共重合の際に、更に導電性物質を添加して作られたことを特徴とする上記帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0012】
(a)環状アミドと(b)環状エステルとを100:10〜34の重量比で開環重合して作られたことを特徴とする上記帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0013】
(a)環状アミドと、(b)鎖状エステル、又は(b)該鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物を、100: 2〜50の重量比で共重合して作られたことを特徴とする帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0014】
(a)環状アミドと、(b)鎖状エステル、又は(b)該鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物を、100:2以上5未満の重量比で共重合し、更に導電性物質を添加して作られたことを特徴とする上記の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0015】
(a)環状アミドと、(b)鎖状エステル、又は(b)該鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物を、100: 5〜45の重量比で共重合して作られたことを特徴とする上記帯電防止性ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0016】
ASTM D−638に準拠して測定された引張強度が40MPa以上であることを特徴とする上記帯電防止ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0017】
(b)鎖状エステルがポリカプロラクトンジオールであることを特徴とする上記帯電防止ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0018】
(b)環状エステルがε−カプロラクトンであることを特徴とする上記帯電防止ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0019】
(a)環状アミドがε−カプロラクタムであることを特徴とする上記帯電防止ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0020】
また、本発明は、
(a)環状アミド 100重量部、
(b)ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の鎖状エステル 5〜50重量部、又は、(b)5重量部以上の上記鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物 5〜50重量部、及び
(c)分子量が200以下であり、且つ、2個以上の水酸基を有する化合物、
を反応させて得られ、ポリスチレン換算の数平均分子量が4,000〜100,000である、ポリエステルアミド樹脂にも関する。
【0021】
上記ポリエステルアミド樹脂に係る発明の好ましい実施形態として下記のものが挙げられる。
表面抵抗率が10〜10Ωであることを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂。
【0022】
体積抵抗率が10〜10Ω・mであることを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂。
【0023】
前記(c)化合物が、下記式で定義される水酸基モル比、
【式3】
水酸基モル比=(c)の水酸基モル量/(b)の水酸基モル量
が0.1〜1.0となる量で用いられることを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂。
【0024】
前記水酸基モル比が、0.2〜0.5であることを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂。
【0025】
前記(c)化合物が、3個以上の水酸基を有することを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂。
【0026】
前記(c)化合物が、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、またはトリメチロールエタンとトリメチロールプロパンの混合物であることを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂。
【0027】
(a)環状アミドがε−カプロラクタムであることを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂。
【0028】
(b)環状エステルがε−カプロラクトンであることを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂。
【0029】
(b)鎖状エステルがポリカプロラクトンジオールであることを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂。
【0030】
上記ポリエステルアミド樹脂からなる帯電防止ポリエステルアミド樹脂成形体。
【0031】
上記いずれかの帯電防止ポリエステルアミド樹脂成形体が、モノマーキャスト法により製造されることが好ましい。
【0032】
加えて、本発明は、(a)環状アミドと(b)環状エステルを100:3〜44の重量比で開環重合することを特徴とする帯電防止性ポリエステルアミド樹脂の製造方法である。
【0033】
上記製造方法において、(a)環状アミドと(b)環状エステルとを100:10〜34の重量比で開環重合することが好ましい。
【0034】
また、本発明は(a)環状アミドと、(b)ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の鎖状エステル、又は(b)上記鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物とを100: 2〜50の重量比で共重合することを特徴とする帯電防止性ポリエステルアミド樹脂の製造方法である。
【0035】
上記製造方法において、(a)環状アミドと、(b)ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の鎖状エステル、又は(b)環状エステルと(b)上記鎖状エステルの混合物を100: 5〜45の重量比で共重合することが好ましい。
【0036】
さらに、本発明は、
( a)環状アミド 100重量部、
(b)ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の鎖状エステル 5〜50重量部、又は、
(b)5重量部以上の上記鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物 5〜50重量部、及び、
(c)分子量が200以下であり、且つ、2個以上の水酸基を有する化合物、を反応させることを特徴とするポリエステルアミド樹脂の製造方法に関する。
【0037】
上記製造方法に係る発明の好ましい実施形態として下記のものが挙げられる。
前記(c)化合物が、下記式で定義される水酸基モル比、
【式4】
水酸基モル比=(c)の水酸基モル量/(b)の水酸基モル量
が0.1〜1となる量で反応に付されることを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【0038】
前記水酸基モル比が、0.2〜0.5であることを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【0039】
前記(c)化合物が、3個以上の水酸基を有することを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【0040】
前記(c)化合物が、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、またはトリメチロールエタンとトリメチロールプロパンの混合物であることを特徴とする上記ポリエステルアミド樹脂の製造方法。
【0041】
また、上記いずれかの製造方法において、(a)環状アミドがε−カプロラクタムであることが好ましい。また、(b)環状エステルがε−カプロラクトンであることが好ましい。さらに、(b)鎖状エステルがポリカプロラクトンジオールであることが好ましい。
【0042】
また、上記いずれかの製造方法における共重合または反応が、モノマーキャスト法により行われることが好ましい。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明において、帯電防止性であるとは、樹脂成形体のJIS K6911に準拠して測定される表面抵抗率が1013Ω未満(即ち、1012オーダーΩ以下)であることをいう。特に、半導体関連製品の製造ライン向け用途では、樹脂成形品が10〜1012オーダーΩの表面抵抗率を持つことが好ましく、より好ましくは10〜1010Ωの範囲である。
【0044】
さらに、本発明の樹脂成形体は、JIS K6911に準拠して測定される体積抵抗率も1011Ω・m未満、好ましくは10〜10オーダーΩ・mであることを特徴とする。帯電防止性は、一般に成形体の表面において達成されればよく、成形体の表面のみに帯電防止性を付与する場合もある。ところが、本発明の樹脂成形体は体積抵抗率も低いため、該成形体のあらゆる部位において帯電防止性が発揮される。
【0045】
本発明において、表面もしくは体積抵抗率の測定は、上述したようにJIS K6911に準拠して行われる。ただし、本発明においては、JIS K6911で規定される導電性ゴム又は導電性ペイントを用いず、直接セル箱の電極に挟んで測定するため、接触抵抗が上記ゴムまたはペイントよりも高く、従って、JIS K6911の規定通りに測定された場合には、より低い値が得られるものと考えられる。また、該測定はJIS K6911に準拠して電圧500Vで行われるが、本発明の樹脂成形体の抵抗率は、印加電圧15Vにおいても測定することが可能であり、且つ、500Vまでの間で電圧を変更しても、ほぼ一定の値を示す特徴がある。
【0046】
本発明において、帯電防止性は帯電圧減衰測定から求める半減期により評価される。該半減期は、帯電圧が減衰して初期の半分の値になるまでの時間であり、樹脂成形体の静電気拡散性の指標となる。帯電防止性であるというためには、通常、半減期が2秒以下であることが好ましい。
【0047】
本発明におけるポリエステルアミドは、(a)環状アミドと(b)環状及び/又は(b)鎖状エステルとの共重合により得られるものである。(a)環状アミドとしては、炭素数4〜12のω−ラクタム、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−カプリロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられ、特に好ましくはε−カプロラクタムである。これらの環状アミドを、1種で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0048】
(b)環状エステルとしては、炭素数3〜12のω−ラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ω−エナントラクトン、ω−カプリロラクトン、ω−ラウロラクトン等が挙げられ、特に好ましくはε−カプロラクトンである。これら環状エステルを単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0049】
(b)鎖状エステルは、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、およびポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0050】
ポリエステルポリオールとしては、脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、およびアゼライン酸等、芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸等、脂環族ジカルボン酸、例えばヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、およびヘキサヒドロイソフタル酸等、またはこれらの酸エステル、もしくは酸無水物と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等、もしくは、これらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。なかでも、ポリカプロラクトンジオールが好ましく用いられ、特に分子量約500〜2,000のものが好ましく用いられる。
【0051】
ポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの1種または2種以上とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等とを反応させて得られる物が挙げられる。
【0052】
ポリエステルエーテルポリオールとしては、脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、およびアゼライン酸等、芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸等、脂環族ジカルボン酸、例えばヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、およびヘキサヒドロイソフタル酸等、またはこれらの酸エステル、もしくは酸無水物と、ジエチレングリコール、もしくはプロピレンオキサイド付加物等のグリコール等、または、これらの混合物との脱水縮合反応で得られる物が挙げられる。これらの各鎖状エステルを単独でまたは2種以上の混合物として用いることができる。
【0053】
上記各エステルの量は、以下、特に断りのない限り、(a)環状アミドの総重量を100とした場合の重量比で表す。(b)環状エステルの量は、該重量比で3〜44、好ましくは10〜34である。環状エステルの該重量比が前記下限値未満では、導電性物質の量が多くなり、従来技術の欠点が現れてしまう。該重量比が3以上10未満では、表面抵抗率を所定の値にするべく導電性物質(グラファイト、カーボンブラックなど)を添加又は塗布する。その際、成形体に対して通常10重量%、好ましくは5重量%未満で導電性物質を添加すれば1013Ω未満の抵抗率を達成できる。該添加量は従来の必要量と比べて顕著に少ない。環状エステルの該重量比を10以上にすると、導電性物質を配合することなく、要求される抵抗率が直ちに得られる。環状エステルの該重量比が上記の上限値より大きい場合には、帯電防止性能の面では問題ないが、樹脂成形体の強度や耐熱性の低下が顕著になったり、成形体内に微細気泡を含んでしまい構造材料として適用できなくなる場合がある。従って、樹脂成形体の用途が広いという点で、環状エステルの該重量比が10〜34であることが好ましく、より好ましくは19〜34である。ε−カプロラクトンを環状エステルとして用いた場合、その重量比が19〜24の範囲では表面抵抗率が1010Ωであり、24より大きい範囲では、重量比によらずにほぼ一定の10Ωである。
【0054】
(b)鎖状エステルの量は、環状アミド100に対する重量比で2〜50、好ましくは5〜45、より好ましくは10〜40である。鎖状エステルの量が前記下限値未満では、所望の抵抗率を得るための導電性物質の量が多くなる。(b)鎖状エステルの該重量比が2以上5未満では、表面抵抗率を所定の値にすべく導電性物質(グラファイト、カーボンブラックなど)を添加又は塗布する必要があるが、その量は樹脂成形体に対して、通常10重量%未満で十分である。(b)鎖状エステルの該重量比が5以上の場合には、導電性物質を配合することなく、直ちに1013Ω未満の抵抗率が得られる。(b)鎖状エステルの量が前記上限値より大きくても帯電防止性能の面では問題ないが、(b)環状エステルについて述べたのと同様の問題が生じる。
【0055】
(b)環状エステルと(b)鎖状エステルの混合物を用いる場合には、その合計重量は、環状アミド総量100に対する重量比で2〜50、好ましくは5〜45、より好ましくは10〜40である。(b)環状エステルと(b)鎖状エステルとの割合には特に制限はなく、金型からの離型性、所望される成形体の引張強度等に応じて適宜決定することができる。
【0056】
本発明の上記帯電防止ポリエステルアミド樹脂成形体は、ASTM D−638に準拠して測定された引張強度が40MPa以上、好ましくは55MPa以上、より好ましくは70MPa以上であり、構造材料としても使用することができる。また、使用に際して成形品を約170℃で約3時間程度熱処理してもよい。
【0057】
本発明は、(a)環状アミド100重量部、(b)ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の鎖状エステル 5〜50重量部、又は、(b)上記鎖状エステル5重量部以上を含む、(b)上記鎖状エステルと(b)環状エステルの混合物 5〜50重量部、及び(c)分子量が200以下であり、且つ、2個以上の水酸基を有する化合物を反応させることによって得られるポリエステルアミド樹脂にも関する。該樹脂は、GPC(センシュー科学製SSC−7100クロマトグラフ、カラム GPC−3506、検出器 示差屈折計、カラム温度150℃、溶離液m−クレゾール、流速0.5ml/分)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量が、好ましくは約4,000〜100,000、より好ましくは5,000〜50,000程度である。驚くことに、該ポリエステルアミド樹脂は既に述べた10〜1012Ωよりもさらに低い抵抗率、すなわち、10〜10Ωの表面抵抗率、および10〜10Ω・mの体積抵抗率を有する。加えて、弾性回復性、消音性、及び低温特性にも優れている。
【0058】
(c)分子量が200以下であり、且つ、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、 1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジエチレングリコールが挙げられる。これらの化合物を単独で、または混合物として使用することができる。好ましくは、3個以上の水酸基を有する化合物が使用され、特に好ましくはトリメチロールエタン及び/又はトリメチロールプロパンが使用される。
【0059】
化合物(c)は、下記式で定義される水酸基モル比が、
【式5】
水酸基モル比=(c)の水酸基モル量/(b)の水酸基モル量
0.1〜1となる量で反応に付されることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5となる量で添加される。該比が0.1未満であると、抵抗率を低下する効果が十分でなく、一方、1を超えると、共重合反応が進行しない場合がある。
【0060】
本発明の樹脂及び樹脂成形体は、例えば常法のアニオン重合により製造することができる。その際、モノマーキャスト法を用いれば、金型サイズに適合した成形体を一段階で得られるので好ましい。
【0061】
アニオン重合における重合触媒および重合助触媒は、通常用いられているものでよい。重合触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびこれら金属の水素化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、アルキル化物、アルコキシドやグリニャール化合物、及びこれらとωーラクタムとの反応生成物等が挙げられ、より具体的にはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、メチルナトリウム、エチルナトリウム、メチルカリウム、エチルカリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラート、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド等が挙げられる。これらの重合触媒は単独でまたは二種以上の混合物として用いることができる。その添加量は、通常、(a)環状アミドと(b)環状エステル及び/又は(b)鎖状エステルとの合計重量に対して約4×10−3〜3重量%である。
【0062】
重合助触媒、または反応開始剤としては、イソシアネート類、アシルラクタム類、カルバミドラクタム類、イソシアヌレート誘導体、酸ハライド類、尿素誘導体等を挙げることができ、より具体的にはn−ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、オクチルイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、N-アセチル-ε-カプロラクタム、1,6-ヘキサメチレンビスカルバミドカプロラクタム、トリアリルイソシアヌレート、テレフタロイルクロリド、1,3-ジフェニル尿素等が挙げられる。これら助触媒等は単独で、または二種以上の混合物として用いることができる。
【0063】
該助触媒または反応開始剤の添加量は、エステルとして(b)環状エステルを用いる場合には(a)環状アミドと(b)環状エステルとの合計重量に対して0.01〜4重量%である。また、(b)鎖状エステルを用いる場合には、該助触媒として、例えばトリレンジイソシアネート等のジイソシアネートを用いることが好ましい。該ジイソシアネートの量は、(b)鎖状エステルの種類に応じて適宜定めるが、典型的には、上記0.01〜4重量%に加えて、イソシアネート基/(b)鎖状エステル中の水酸基モル比で0.6/1.0〜1.2/1.0を加える。
【0064】
以上述べた本発明の帯電防止性ポリエステルアミド樹脂を製造する際には、環状アミド、環状及び/又は鎖状エステルの他に、任意的に他のモノマー、例えばジカルボン酸、ジアミン、ジオール、アミノ酸、またはこれらの誘導体を加えても良いが、その量は成型品の帯電防止性を妨げない範囲である。
【0065】
また、本発明の樹脂成形体には、必用に応じて顔料、染料、補強剤、抗菌剤等の添加剤を適宜配合してもよい。また、更に低い抵抗率を達成するために、導電性フィラーの添加、帯電防止材の塗布、導電性ポリマーの添加を行っても良い。
【0066】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
測定方法
(1)表面抵抗率(Ω)および体積抵抗率(Ω・m)
5mm厚さの、100mm×100mmの正方形の試験片を調製し、105℃で真空乾燥させて水分の影響を取り除いた。該試験片を、試料箱レジスティビティ・チェンバ R12704Aに入れ、デジタル超高抵抗微小電流計 R8340A(両者共に(株)アドバンテスト社製)を用い、JIS K 6911に準拠して表面抵抗率(Ω)および体積抵抗率(Ω・m)を測定した(電圧500V)。
(2)帯電圧減衰測定
40mm×40mmの正方形で10mm厚さの試験片を調製し、105℃で真空乾燥させ水分の影響を取り除いた。静電気減衰測定器(スタチックオネストメーター、シシド静電気(株)製)及び半減期自動演算器(オネストアナライザV1、シシド静電気(株)製)を用い、JIS L 1094に準拠して、印加電圧10KVを与えた後の電位が初期電位の1/2になる時間を半減期として測定した。
(3)引張強度
ASTM D−638に準拠して測定した。
【0067】
実施例1
1リットルフラスコに無水のε-カプロラクタム600gとε-カプロラクトン154gを採り、140〜150℃の温度に加熱し、これに重合助触媒のトリレンジイソシアネート3.1gを添加混合した。一方、500ミリリットルフラスコに、無水のε-カプロラクタム200gを採り、これに重合触媒の水素化ナトリウム(油性63%)1.4gを加え140〜150℃に調整した。ε-カプロラクタムの総重量は800gであり、これを100とした場合のε-カプロラクトンの重量比は約19である。次に、これら2液を混合して、155℃に予熱された200mm×200mm×30mmの直方体の成形金型内に注入し、30分間重合させてから成形品を取り出した。この成形品から作った試料について、表面抵抗率等を測定した。表面抵抗率は1010Ω、半減期は0.6秒、および引張強度は50MPaであった。
【0068】
実施例2
フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を680g、ε-カプロラクトンの量を88g、トリレンジイソシアネートの量を2.7g、水素化ナトリウムの量を1.2gに変更した以外は実施例1と同様にして行った。ε-カプロラクタムの総重量は880gであり、これを100とした場合のε-カプロラクトンの重量比は10である。表面抵抗率は3×1012Ω、半減期は0.9秒、および引張強度は62MPaであった。
【0069】
実施例3
フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を660g、ε-カプロラクトンの量を107g、トリレンジイソシアネートの量を2.7g、水素化ナトリウムの量を1.2gに変更した以外は実施例1と同様にして行った。ε-カプロラクタムの総重量は860gであり、これを100とした場合のε-カプロラクトンの重量比は約12である。表面抵抗率は5×1011Ω、半減期は0.8秒であった。
【0070】
実施例4
フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を550g、ε-カプロラクトンの量を190g、トリレンジイソシアネートの量を3.4g、水素化ナトリウムの量を1.5gに変更した以外は実施例1と同様にして行った。ε-カプロラクタムの総重量は750gであり、これを100とした場合のε-カプロラクトンの重量比は約25である。表面抵抗率は8×10Ω、半減期は0.5秒であった。
【0071】
実施例5
フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を540g、ε-カプロラクトンの量を220g、トリレンジイソシアネートの代わりにヘキサメチレンジイソシアナートを1.8g、水素化ナトリウムの量を0.82gに変更した以外は実施例1と同様にして行った。ε-カプロラクタムの総重量は740gであり、これを100とした場合のε-カプロラクトンの重量比は約30である。表面抵抗率は5×10Ω、半減期は0.2秒であった。
【0072】
実施例6
フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を510g、ε-カプロラクトンの量を250g、トリレンジイソシアネートの代わりにヘキサメチレンジイソシアナートを1.6g、水素化ナトリウムの量を0.71gに変更した以外は実施例1と同様にして行った。ε-カプロラクタムの総重量は710gであり、これを100とした場合のε-カプロラクトンの重量比は約35である。表面抵抗率は7×10Ω、半減期は0.4秒であった。なお、成形品は、若干の微小気泡を含んでいた。
【0073】
実施例7
フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を680g、ε-カプロラクトンの量を37g、トリレンジイソシアネートの量を3.4g、水素化ナトリウムの量を1.5gに変更し、かつ32gのグラファイトをフラスコ内の混合物に添加混合した以外は実施例1と同様にして行った。ε-カプロラクタムの総重量は880gであり、これを100とした場合のε-カプロラクトンの重量比は約4である。表面抵抗率は2×1011Ω、半減期は0.8秒であった。
【0074】
実施例8
1リットルフラスコに無水のε-カプロラクタム500gとポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業(株)製プラクセル205、分子量530)210g(重量比30)を採り、140〜150℃の温度に加熱し、これに重合助触媒のヘキサメチレンジイソシアネート54gを添加混合した。一方、500ミリリットルフラスコに、無水のε-カプロラクタム200gを採り、これに重合触媒の水素化ナトリウム(油性63%)1.4gを加え140〜150℃に調整した。ε-カプロラクタムの総重量は700gであり、これを100とした場合のポリカプロラクトンジオールの重量比は30である。次いで、これら2液を混合して、155℃に予熱された200mm×200mm×30mmの成形金型内に注入し、30分間重合させてから成形品を取り出した。この成形品から調製した試料を用いて表面抵抗率と減衰測定を行った。表面抵抗率は7×1010Ω、半減期は0.6秒であった。
【0075】
実施例9
1リットルフラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を640g、ポリカプロラクトンジオールの量を42g、ヘキサメチレンジイソシアネートの量を10g、水素化ナトリウムの量を0.9gに変更した以外は実施例8と同様にして成形品を得た。ε-カプロラクタムの総重量は840gであり、これを100とした場合のポリカプロラクトンジオールの重量比は5である。表面抵抗率は2×1012Ω、半減期は1.7秒、および引張強度は77MPaであった。
【0076】
実施例10
フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を440g、ポリカプロラクトンジオールの量を288g、ヘキサメチレンジイソシアネートの量を71g、水素化ナトリウムの量を1.7gに変更した以外は実施例8と同様にして成形品を得た。ε-カプロラクタムの総重量は640gであり、これを100とした場合のポリカプロラクトンジオールの重量比は45である。表面抵抗率は9×10Ω、半減期は0.5秒であった。
【0077】
実施例11
フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を650g、ポリカプロラクトンジオールの量を17g、ヘキサメチレンジイソシアネートの量を5gに変更し、かつ35gのグラファイトをフラスコ内の混合物に添加混合した以外は実施例8と同様にして成形品を得た。ε-カプロラクタムの総重量は850gであり、これを100とした場合のポリカプロラクトンジオールの重量比は2である。表面抵抗率は3×1011Ω、半減期は1.2秒であった。
【0078】
実施例12
1リットルフラスコに無水のε-カプロラクタム540gとポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業(株)製プラクセル205、分子量530)37g及びε-カプロラクトン111gを採り140〜150℃の温度に加熱し、これに重合助触媒のヘキサメチレンジイソシアネート10gを添加混合した。一方、500ミリリットルフラスコに、無水のε-カプロラクタム200gを採り、これに重合触媒の水素化ナトリウム(油性63%)1.1gを加え140〜150℃に調整した。ε-カプロラクタムの総重量は740gであり、これを100とした場合のポリカプロラクトンジオールの重量比は5であり、ε-カプロラクトンの重量比は15である。次いで、これら2液を混合して、155℃に予熱された200mm×200mm×30mmの成形金型内に注入し、30分間重合させてから成形品を取り出した。得られた成形品から調製した試料を用いて表面抵抗率等の測定を行った。表面抵抗率は1×1010Ω、半減期は0.5秒、および引張強度は48MPaであった。
【0079】
実施例13
フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を620g、ε-カプロラクトンを16.4g、ヘキサメチレンジイソシアネートの代わりにトリレンジイソシアネートを11gに変更した以外は実施例12と同様にして行った。ε-カプロラクタムの総重量は820gであり、これを100とした場合のポリカプロラクトンジオールの重量比は約5であり、ε-カプロラクトンの重量比は2である。表面抵抗率は8×1011Ω、半減期は1.6秒、および引張強度は76MPaであった。
【0080】
実施例14
フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を400g、ポリカプロラクトンジオールを120g、ε-カプロラクトンを150g、ヘキサメチレンジイソシアネートを35g、水素化ナトリウムを1.5gに変更した以外は実施例12と同様にして行った。ε-カプロラクタムの総重量は600gであり、これを100とした場合のポリカプロラクトンジオールの重量比は20であり、ε-カプロラクトンの重量比は25である。表面抵抗率は8×10Ωであり、半減期の測定においては帯電しなかった。
【0081】
実施例15
フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を650g、ポリカプロラクトンジオールを8.5g、ε-カプロラクトンを17g、ヘキサメチレンジイソシアネートを3g、水素化ナトリウムを1.4gに変更し、且つ32gのグラファイトをフラスコ内の混合物に添加混合した以外は実施例12と同様にして行った。ε-カプロラクタムの総重量は850gであり、これを100とした場合のポリカプロラクトンジオールの重量比は1であり、ε-カプロラクトンの重量比は2である。表面抵抗率は4×1011Ωであり、半減期は1.5秒であった。
【0082】
実施例16
1リットルフラスコに無水のε-カプロラクタム500gとポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業(株)製プラクセル205、分子量530)105g及びトリメチロールプロパン6gを採り140〜150℃の温度に加熱し、これにヘキサメチレンジイソシアネート44gを添加混合した。一方、500ミリリットルフラスコに、無水のε-カプロラクタム200gを採り、これに重合触媒の水素化ナトリウム(油性63%)1gを加え135〜145℃に加熱した。ε-カプロラクタムの総重量は700gであり、これを100重量部とした場合のポリカプロラクトンジオールの量は15重量部である。次いで、これら2液を混合して、150℃に予熱された200mm×200mm×30mmの成形金型内に注入し、30分間重合させてから成形品を取り出した。得られた成形品から調製した試料を用いて、表面抵抗率、体積低効率、および減衰測定を行った。表面抵抗率は2×10Ω、体積抵抗率は3×10Ω・mであった。半減期の測定においては、帯電しなかった。
【0083】
実施例17
1リットルフラスコに入れるポリカプロラクトンジオールの量を35g、トリメチロールプロパンの量を3g、ヘキサメチレンジイソシアネートの量を17gに変更し、ε-カプロラクトン70gをさらに加えた以外は、実施例16と同様にして反応させた。ε-カプロラクタムの総重量は700gであり、これを100重量部とした場合のポリカプロラクトンジオールの量は5重量部であり、ε-カプロラクトンの量は10重量部である。表面抵抗率は4×10Ω、体積抵抗率は5×10Ω・mであった。半減期の測定においては、帯電しなかった。
【0084】
比較例1
エステルを添加せず、フラスコに当初入れるε-カプロラクタムの量を780g、ヘキサメチレンジイソシアネートを2.1g、水素化ナトリウムを1.0gに変更した以外は実施例1と同様にして行った。表面抵抗率は9×1014Ωであり、半減期は56秒であった。
【0085】
参考例1
トリメチロールプロパンを添加しないことを除き、実施例16と同様に反応を行なった。表面抵抗率は1×1011Ω、体積抵抗率は2×10Ω・mであり、半減期は1.2秒であった。
【0086】
以上示したとおり、環状アミドに対して所定の重量比で環状及び/又は鎖状エステルを用いて作られた樹脂成形体は、いずれも1013Ω未満の表面抵抗率を示した。エステルの該重量比が4以下の樹脂成形体においても(実施例7、11及び15)、成形体重量の5重量%未満のグラファイトを添加することによって、1×1012Ω未満の表面抵抗率が達成された。さらに、本発明の樹脂成形体は、いずれも2秒未満の半減期を示した。一方、エステル成分を含まない比較例1の樹脂は、表面抵抗率、半減期共に大きかった。
また、環状アミド、鎖状エステル及び環状エステルに、さらにトリメチロールプロパンを加えて反応させた樹脂成形体(実施例16および17)は、表面抵抗率が10オーダーΩであり、且つ、体積抵抗率が10Ω・mオーダーの値を示した。
【0087】
【発明の効果】
本発明のポリエステルアミド樹脂成形体は、樹脂自体が低い抵抗率を有するので、安価であり、且つ、イオン性不純物の溶出等の問題が無くIC関連分野での使用に適する。また、本発明の樹脂成形体は、簡便な方法により製造することができる。
また、環状アミド、環状エステル及び鎖状エステルに加えて、水酸基を有する化合物を反応させて得られるポリエステルアミド樹脂は、10オーダーΩの低い表面抵抗率を有し、帯電防止がより厳しく要求される用途に有用である。
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