JP2001105421A - プレキャストコンクリート部材の養生方法及び製造システム - Google Patents

プレキャストコンクリート部材の養生方法及び製造システム

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プレキャストコンクリート部材の製造システ
ムにおける養生室の最小化及び養生条件の均一化を図
り、安定して品質均一なプレキャストコンクリート部材
を量産できる養生方法を提供する。 【解決手段】 断熱施工された養生室1内に、コンクリ
ート投入後の複数の型枠9を所定の間隔を置いて上下多
段に収容し、各段毎に、放熱器7による温度調節と加湿
装置8による湿度調節とを行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プレキャストコン
クリート部材を大量生産するシステムに好適な養生方
法、及びプレキャストコンクリート部材の製造システム
に関する。
【0002】
【従来の技術】プレキャストコンクリート部材を量産す
る製造システムでは、コンクリートを型枠に打ち込んで
から部材として脱型するまでの所要時間は通常15〜2
0時間で、1日1サイクルの工程で製造しているものが
多い。
【0003】このような製造システムにおいては、型枠
を各工程に搬送する製造ラインが必要であり、極めて長
大な敷地、大掛かりな搬送設備を必要とし、更には広大
な養生そうを確保する必要もある。
【0004】また、近年、より生産性を高めるため、1
日2サイクルの生産方式をとる場合もあり、このような
場合には更なる広大な敷地を必要とすると共に、コンク
リートの打込みから脱型までの所要時間を5〜7時間程
度にする必要がある。
【0005】プレキャストコンクリート部材を量産する
システムおいて、敷地面積を最小限に抑えるための製造
システムが、例えば特開平5−208409号公報に開
示されている。この製造システムにおいては、配筋の敷
き込み工程やコンクリート投入工程等を行う作業場と養
生室とを同一敷地の上下階に重ねると共に、コンクリー
トが打ち込まれた型枠を多数積み上げた状態で養生室に
搬送することにより、全作業と養生を同時進行させてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記特開平5−208
409号公報に開示された製造装置で特筆される点とし
て、型枠を多数積み上げた状態で養生室に搬送すること
により、プレキャストコンクリート部材の量産システム
おける養生室の最小化を実現していることがある。
【0007】しかしながら、型枠自体を多数積み上げた
状態で養生する場合、養生室内の温度調節等を行ったと
しても上下型枠周囲の温度及び湿度に分布が生じ易く、
一定品質のプレキャストコンクリート部材が得ることが
難しくなる。
【0008】また、プレキャストコンクリート部材の製
造で最も多く行われている促進養生の方法として常圧蒸
気養生があるが、かかる常圧蒸気養生法は、単層に配置
した多数のプレキャストコンクリート部材を養生する場
合には比較的均一に保温できる点で優れているものの、
上記のように型枠自体を多数積み上げた状態で養生する
場合にはその優位性も失われることとなり、逆に気密性
が良くないと極めて熱効率が悪いという欠点のみが残っ
てしまうことになる。
【0009】本発明は、上記の事情に鑑み、プレキャス
トコンクリート部材の量産システムおける養生室の敷地
面積を最小化しつつ、一定品質のプレキャストコンクリ
ート部材を安定して製造できる養生方法及び製造システ
ムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく
成された本発明の構成は以下の通りである。
【0011】すなわち、本発明のプレキャストコンクリ
ート部材の養生方法は、断熱施工された養生室内に、コ
ンクリート投入後の複数の型枠を所定の間隔を置いて上
下多段に収容し、各段毎に、放熱器による温度調節と加
湿装置による湿度調節とを行うことを特徴としているも
のである。
【0012】本発明の養生方法によれば、養生室の各段
に収納された型枠周囲の温度及び湿度を適正な範囲内で
均一化することができ、安定して一定品質のプレキャス
トコンクリート部材を生産することができる。
【0013】本発明のプレキャストコンクリート部材の
養生方法においては、前記養生室の各段に温度センサー
及び湿度センサーを設け、これらのセンサーからの信号
に基づき、前記放熱器及び加湿装置を制御することが好
ましい。これにより、養生室の各段に収納された型枠周
囲の温度及び湿度を適正な範囲内に容易に制御すること
ができ、極めて品質一定なプレキャストコンクリート部
材を安定して生産することができる。
【0014】また、本発明のプレキャストコンクリート
部材の製造システムは、下型枠を循環させて、少なくと
も配筋の敷き込み工程とコンクリート投入工程と脱型工
程とを行う製造ラインを有するプレキャストコンクリー
ト部材の製造システムであって、正面及び背面に昇降可
能な断熱(保温)シートを有し、コンクリート投入後の
複数の型枠を所定の間隔を置いて上下多段に収容した状
態で養生を行う養生室と、該養生室の正面側から該養生
室の各段に該型枠を搬入する搬入装置と、該養生室の背
面側から該養生室の各段の該型枠を搬出する搬出装置と
を備え、該養生室の周囲に前記製造ラインが配置されて
いることを特徴としているものである。
【0015】本発明の製造システムによれば、プレキャ
ストコンクリート部材の量産システムおける製造ライン
及び養生室を極めてコンパクトに配置できると共に、全
作業と養生を同時進行させることができる。
【0016】また、上記本発明のプレキャストコンクリ
ート部材の製造システムは、さらなる特徴として、「前
記養生室は、各段に温度調節用の放熱器と湿度調節用の
加湿装置とを備える」こと、「前記養生室は、各段に温
度センサー及び湿度センサーを有し、これらのセンサー
からの信号に基づき、前記放熱器及び加湿装置が制御さ
れる」こと、「前記養生室は、コンクリート投入後の型
枠を上下多段に収容する養生ブロックの複数が断熱壁を
介して左右に連続した構成を有する」こと、を含むもの
である。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態例を図
面を参照して説明するが、本発明はこれらの形態例に限
定されるものではない。
【0018】図1乃至図3は本発明の養生方法を説明す
るための養生室を示しており、図1は養生室の正面図、
図2は図1中のA−A断面図、図3は図1中のB−B断
面図である。
【0019】本例の養生室1は、5つの養生ブロック2
a〜2eが断熱壁3を介して左右に連続した構成を有し
ている。各養生ブロック2a〜2eには、所定の間隔を
置いて主梁4及び支持梁5が設けられており、この支持
梁5上にコンクリート投入後の型枠9を載置することが
できる。また、支持梁5には、養生室1の正面側から搬
入された型枠9を、背面側に移動させることができるロ
ーラ(不図示)が取り付けられており、各段に2枚の型
枠9を収容できるようになっている。
【0020】即ち、本例の養生室1の各養生ブロック2
a〜2eには、上下5段に型枠9を収容することがで
き、この各段には図示するように2枚の型枠9をそれぞ
れ収容することができ、全部で50枚の型枠9を同時に
養生することが可能である。
【0021】尚、本例では上下5段に型枠9を収容する
ものとしているが、この段数には特に制限はなく、例え
ば10段を超えて収容することも十分可能である。
【0022】また、養生室1の天井面及び床面には断熱
パネル6が敷き込まれており、更に養生室1の正面及び
背面には巻取装置によって昇降可能な断熱シート(不図
示)が設けられており、養生室全体は十分な断熱(保
温)が施されている。
【0023】さらに、各養生ブロック2a〜2eには、
各段毎に温度及び湿度を調節することができるように放
熱器7と加湿装置8が設けられている。
【0024】本発明の養生方法においては、上記のよう
に断熱施工された養生室1の各段にコンクリート投入後
の型枠9が収容される。尚、詳しくは後述するが、型枠
9は製造ライン中の搬送装置によって搬送することがで
きる台板9aを有している。
【0025】上記のように型枠を多段に配置した状態で
養生する場合、従来の一般的な常圧蒸気養生法では上下
段において特に温度に分布が生じ易く、プレキャストコ
ンクリート部材を均一に保温することができない。
【0026】そこで本発明においては、各養生ブロック
の各段毎に放熱器7による温度調節を行い、各段に収納
された各型枠周囲の温度を個別に調節することによっ
て、各プレキャストコンクリート部材の養生温度の均一
化を図っている。尚、本例の放熱器7は、これに接続す
る配管7aに蒸気を適宜供給し放熱するものであるが、
これに限定されるものではない。
【0027】本発明における温度調節手段である放熱器
7は、蒸気によって直接加熱する常圧蒸気養生法のよう
な加湿を伴うものではない。一方、セメントの水和反応
は長期にわたり、特に初期材齢中に乾燥が進み水分が不
足すると、強度の伸びがなくなり、十分な強度が得られ
ない。このため、本発明においては、上記温度調節手段
の他に加湿装置8を併用することにより、適正な湿潤状
態に調節できるようにしているものである。
【0028】尚、本例の加湿装置8は、これに接続する
配管に温水(自由に温度設定可)を適宜供給しノズルよ
り噴霧するものであるが、これに限定されるものではな
い。
【0029】放熱器7による温度調節は、例えば各段の
放熱器7に接続する配管7aに設けた流量制御バルブ
(不図示)によって行うことができる。また、加湿装置
8による湿度調節も、同様なバルブによって行うことが
できる。
【0030】また、各型枠周囲の温度及び湿度を適正な
範囲内に精度よく制御するために、各養生ブロックの各
段に温度センサー及び湿度センサーを設け、これらのセ
ンサーからの信号に基づいて、例えば上記バルブの開度
を個別に自動制御して放熱器7及び加湿装置8を自動制
御することが望ましい。
【0031】以上説明した本発明の養生方法において
は、各段に収納された各型枠周囲の温度及び湿度を個別
に調節することができるため、養生ブロックの各段は必
ずしも仕切る必要はなく、空間的に連続していても良
い。
【0032】次に、本発明のプレキャストコンクリート
部材の製造システムについて説明する。
【0033】図4は、本発明のプレキャストコンクリー
ト部材の製造システムの要部を模式的に示した平面図で
あり、図1乃至図3に示したような養生室1が中央部に
配置されている。尚、本例では、養生室1は7つの養生
ブロックで構成されている。
【0034】図4中、11a〜11eは下型枠9(台板
9aに載せられている)を間欠的に移動させる搬送手
段、12a〜12bは方向転換手段、13は養生室1の
正面側に配置された搬入装置、14は養生室1の背面側
に配置された搬出装置である。
【0035】搬送手段11a〜11e及び方向転換手段
12a〜12bによって下型枠9を循環させる製造ライ
ン中には、配筋敷き込みエリア15、コンクリート投入
エリア16、表面仕上げ及び前養生エリア17、脱型,
型枠清掃及び脱型剤吹き付けエリア18が配置されてい
る。
【0036】先ず、清掃及び脱型剤の吹き付け等を完了
した型枠9には、エリア15において配筋の敷き込み及
びインサート等の付属品が取り付けられる。その後、型
枠9は搬送手段11a、方向転換手段12a、搬送手段
11b、方向転換手段12b及び搬送装置11cを介し
てエリア16に順次搬送される。
【0037】エリア16の上方には、主レール19及び
副レール20によって前後左右に移動できるコンクリー
ト投入器21が配置されており、ここで型枠9にコンク
リートが投入される。また、搬送手段11cには加振器
(不図示)が設置されており、コンクリート投入中及び
投入後に型枠9を適宜加振できるようになっている。
【0038】エリア17においては、必要に応じて型枠
9の加振、表面仕上げ及び前養生がなされる。そして、
型枠9は方向転換装置12c及び搬送手段11dを介し
て搬入装置13に搬送される。
【0039】搬入装置13は昇降装置を備え、型枠9を
養生室1の各段の所定の高さまで持ち上げることができ
ると共に、型枠9を養生室1内に搬入することができ
る。また、搬入装置13は、養生室1の正面に沿って図
中の矢印方向に移動することができ、各養生ブロックに
順次型枠9を搬入する。尚、型枠搬入時には、養生室1
の正面を覆う断熱シートは巻き上げられている。
【0040】養生室1に搬入された型枠9は、前述の支
持梁5に取り付けられているローラの駆動によって養生
室1の背面側に移され、各段には2枚の型枠9が収容さ
れる。
【0041】そして、各養生ブロックの各段毎に放熱器
7による温度調節と、加湿装置8による湿度調節を行っ
て、所定時間養生する。尚、この温度及び湿度調節は、
制御室において遠隔制御することができる。
【0042】養生を終えた型枠9は搬出装置14に搬出
される。この搬出装置14は、搬入装置13と同様の構
造を有し、養生室1の背面に沿って図中の矢印方向に移
動することができ、各養生ブロックから順次型枠9を搬
出する。尚、型枠搬出時には、養生室1の背面を覆う断
熱シートは巻き上げられている。
【0043】搬出装置14によって搬送手段11eに送
り出された型枠9は、方向転換装置12dを介して搬送
手段11aに搬送され、エリア18において脱型クレー
ン(不図示)によってプレキャストコンクリート部材の
脱型が行われる。
【0044】プレキャストコンクリート部材は、脱型ク
レーンによってそのまま所定の位置まで移され貯蔵・出
荷される。また、脱型を終えた型枠9は、エリア18に
おいて清掃及び脱型剤の吹き付け工程を経てエリア15
に戻され、製造システム内を循環する。
【0045】このように本発明のプレキャストコンクリ
ート部材の製造システムでは、型枠9を多段に収納する
養生室1の正面及び背面にそれぞれ搬入手段13及び搬
出手段14を配置すると共に、養生室1を囲むように製
造ラインを配置して型枠9を循環させることにより、プ
レキャストコンクリート部材の量産システムおける製造
ライン及び養生室をコンパクトに配置できると共に、全
作業と養生を同時進行させることができる。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば以
下の効果を奏する。 (1)本発明の養生方法によれば、養生室の最小化を実
現できると共に、養生室の各段に収納された型枠周囲の
温度及び湿度を適正な範囲内で均一化することができ、
安定して品質均一なプレキャストコンクリート部材を生
産することができる。 (2)本発明の製造システムによれば、製造ライン及び
養生室を極めてコンパクトに配置できると共に、全作業
と養生を同時進行させることができ、特に、本発明の養
生方法を製造システムに組み込むことにより、一定品質
のプレキャストコンクリート部材を安定して量産するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の養生方法に係る養生室の正面図であ
る。
【図2】本発明の養生方法に係る養生室の立断面図であ
る。
【図3】本発明の養生方法に係る養生室の一部を示す平
断面図である。
【図4】本発明のプレキャストコンクリート部材の製造
システムの要部を模式的に示した平面図である。
【符号の説明】
1 養生室 2a〜2e 養生ブロック 3断熱壁 4 主梁 5 支持梁 6 断熱パネル 7 放熱器 7a 配管 8 加湿装置 9 型枠 9a 台板 11a〜11e 下型枠を間欠的に移動させる搬送手段 12a〜12b 方向転換手段 13 養生室の正面側に配置された搬入装置 14 養生室の背面側に配置された搬出装置 15 配筋敷き込みエリア 16 コンクリート投入エリア 17 表面仕上げ及び前養生エリア 18 脱型,型枠清掃及び脱型剤吹き付けエリア 19 主レール 20 副レール 21 コンクリート投入器

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 断熱施工された養生室内に、コンクリー
    ト投入後の複数の型枠を所定の間隔を置いて上下多段に
    収容し、各段毎に、放熱器による温度調節と加湿装置に
    よる湿度調節とを行うことを特徴とするプレキャストコ
    ンクリート部材の養生方法。
  2. 【請求項2】 前記養生室の各段に温度センサー及び湿
    度センサーを設け、これらのセンサーからの信号に基づ
    き、前記放熱器及び加湿装置を制御することを特徴とす
    る請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材の養
    生方法。
  3. 【請求項3】 下型枠を循環させて、少なくとも配筋の
    敷き込み工程とコンクリート投入工程と脱型工程とを行
    う製造ラインを有するプレキャストコンクリート部材の
    製造システムにおいて、 正面及び背面に昇降可能な断熱シートを有し、コンクリ
    ート投入後の複数の型枠を所定の間隔を置いて上下多段
    に収容した状態で養生を行う養生室と、該養生室の正面
    側から該養生室の各段に該型枠を搬入する搬入装置と、
    該養生室の背面側から該養生室の各段の該型枠を搬出す
    る搬出装置とを備え、該養生室の周囲に前記製造ライン
    が配置されていることを特徴とするプレキャストコンク
    リート部材の製造システム。
  4. 【請求項4】 前記養生室は、各段に温度調節用の放熱
    器と湿度調節用の加湿装置とを備えることを特徴とする
    請求項3に記載のプレキャストコンクリート部材の製造
    システム。
  5. 【請求項5】 前記養生室は、各段に温度センサー及び
    湿度センサーを有し、これらのセンサーからの信号に基
    づき、前記放熱器及び加湿装置が制御されることを特徴
    とする請求項4に記載のプレキャストコンクリート部材
    の製造システム。
  6. 【請求項6】 前記養生室は、コンクリート投入後の型
    枠を上下多段に収容する養生ブロックの複数が断熱壁を
    介して左右に連続した構成を有することを特徴とする請
    求項3乃至5のいずれか一項に記載のプレキャストコン
    クリート部材の製造システム。
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