JP2001099163A - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

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JP2001099163A
JP2001099163A JP27985499A JP27985499A JP2001099163A JP 2001099163 A JP2001099163 A JP 2001099163A JP 27985499 A JP27985499 A JP 27985499A JP 27985499 A JP27985499 A JP 27985499A JP 2001099163 A JP2001099163 A JP 2001099163A
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quenching
temperature
hardness
rolling bearing
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Osamu Shinoda
治 篠田
Kenji Yamamura
賢二 山村
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NSK Ltd
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NSK Ltd
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C33/00Parts of bearings; Special methods for making bearings or parts thereof
    • F16C33/30Parts of ball or roller bearings
    • F16C33/58Raceways; Race rings
    • F16C33/62Selection of substances
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C19/00Bearings with rolling contact, for exclusively rotary movement
    • F16C19/02Bearings with rolling contact, for exclusively rotary movement with bearing balls essentially of the same size in one or more circular rows
    • F16C19/04Bearings with rolling contact, for exclusively rotary movement with bearing balls essentially of the same size in one or more circular rows for radial load mainly
    • F16C19/06Bearings with rolling contact, for exclusively rotary movement with bearing balls essentially of the same size in one or more circular rows for radial load mainly with a single row or balls

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Abstract

(57)【要約】 【課題】表面硬化のような特殊な処理を採用することな
く鋼の耐圧痕性を向上させることにより、軌道面に有害
な永久変形が生じにくく、したがって音響特性に優れた
転がり軸受を安価にを提供する。 【解決手段】転がり軸受において、焼入れ後サブゼロ処
理及び高温焼戻処理を経た内輪1,外輪2の、少なくと
も軌道面5,6の表面硬度がHRC62以上で、かつ残
留オーステナイト量が実質的に0容量%である。これを
得るために、高炭素クロム軸受鋼SUJ2を使用した場
合、その成形品を焼入温度1153〜1193Kで焼入
れ処理した後、83〜203Kのサブゼロ処理及び48
3〜573Kの焼戻し処理を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、転がり軸受に係
り、特に、ハードディスクドライブ( HDD) 装置やビ
デオテープレコーダー(VTR),ディジタルオーディ
オテープレコーダー(DAT)等に組込まれて、高速で
回転するスピンドルを支承する転がり軸受のように、音
響特性が問題となる転がり軸受全般に好適に利用し得る
転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】例えばHDDのスピンドル支承用軸受の
ように、低トルクを要求される転がり軸受の場合、要求
される音響ならびに騒音性能が厳しい。従来、この種の
軸受の軌道輪(外輪,内輪の他に、内輪に代えて軸の外
周面を軌道面とする場合もあり、その場合には軸も軌道
輪に含まれる)を構成する部材は、材料として高炭素ク
ロム軸受鋼2種であるSUJ2(JIS G 480
5)を用い、1093〜1133K( 820〜860
℃) から油焼入れした後、433〜473K( 160〜
200℃) で焼戻しする、いわゆる標準熱処理を施して
製造されている。これらの熱処理の結果得られる軌道輪
の硬度( ロックウェル硬度) は、HRC62〜64、残
留オーステナイト量( γR )は8〜14容量%である。
【0003】また、この様な軸受を構成する軌道輪の軌
道面の永久変形( 塑性変形) については、基本静定格荷
重C0 で定義されており、これによれば軌道面と転動体
との最大接触面圧が約4000MPaを越えると、軌道
面に有害な永久変形が生じるとされている。一方、これ
らの軸受の寸法精度域については、回転精度がJISの
5級以上とされており、この様な高精度の軸受では上記
基本静定格荷重C0 により規定された荷重よりも遥かに
小さな荷重によって、軌道面に極めて小さな永久変形を
生じ、この永久変形によって音響劣化( 騒音上昇) が生
じるという現象がある。
【0004】これらの問題に対し、従来から種々の対応
策が提案されている。例えば、特開平7−103241
号公報(従来技術1)では、焼戻し温度を上げて転がり
軸受構成部材中の残留オーステナイト量を低減させるこ
とによって耐圧痕性を向上させる試みがなされている。
また、特開平6−195069号公報(従来技術2)で
は、転がり軸受構成部材の硬さを上昇させることは、一
般的には靭性を低下させることにつながるため、軸受と
して必要な靭性を確保する手段として、残留オーステナ
イトをある程度残すことが考えられ、ショットピーニン
グを用いて、軸受鋼表面のみを硬化させ、内部に残した
残留オーステナイトによって軸受に必要な靭性を確保す
る試みがなされている。
【0005】また、特開平8−312651号公報(従
来技術3)では、浸炭窒化処理の手法を用いて軸受鋼表
面のみを硬化させ、内部の残留オーステナイトによって
必要な靭性を確保する試みがなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来技術1の
場合は、残留オーステナイト量を低減させるために焼戻
しの温度を上げると、硬さが低下してしまうという未解
決の課題がある。一方、従来技術2や従来技術3の場合
のような表面硬化法を採用することは、1093〜11
33Kで油焼入れし、その後433〜473Kで焼戻し
するという標準熱処理に比べて製造コストの上昇を招く
という問題がある。
【0007】そこで、本発明は、このような従来技術の
未解決の課題に着目してなされたものであり、表面硬化
のような特殊な処理を採用することなく鋼の耐圧痕性を
向上させることにより、軌道面に有害な永久変形が生じ
にくく、したがって音響特性に優れた転がり軸受を安価
に提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明に係る転がり軸受は、鋼よりなり、外周に
内輪軌道面を有する部材と、これに対向して内周に外輪
軌道面を有する部材と、これら両軌道面の間に転動自在
に設けられた転動体とを備えた転がり軸受において、焼
入れ後サブゼロ処理及び高温焼戻処理を経た前記両部材
の少なくとも軌道面の表面硬度がHRC62以上で、か
つ残留オーステナイト量が実質的に0容量%であること
を特徴とする。
【0009】ここに、本発明の転がり軸受に係る軸受部
材の製造方法は、特に高炭素クロム軸受鋼SUJ2を使
用して成形した場合、その成形品を焼入温度1153〜
1193K(880〜920℃)で焼入れ処理した後、
83〜203K(−190〜−70℃) のサブゼロ処理
及び483〜573K(210〜300℃)の焼戻し処
理を行なうことを特徴とする。
【0010】焼入れ温度が1153K(880℃)未満
では、後述のように基地中の固溶炭素濃度が0.75質
量%を下回り、製品に十分な硬さが得られない。一方、
1193K(920℃)を超えると、高温保持中に炭化
物が分解し、全ての炭素が固溶してしまう結果、鋼の極
端な脆化を招く。サブゼロ温度が83K(−190℃)
未満では、その温度に保持するために高価な冷却剤を用
いなければならず、コストの上昇を招く。サブゼロ温度
が203K(−70℃)より高いと、焼入れ時に生成し
た残留オーステナイトが大量にマルテンサイト変態する
にまでに至らないから所要の表面硬さが得られず、結局
軌道面に有害な永久変形が生じて、音響特性が劣化す
る。
【0011】サブゼロ処理後に行う焼戻し処理の温度
が、483K(210℃)未満では、温度不足のため残
留オーステナイト量が0容量%にならず、軌道面に有害
な永久変形が生じやすくなる。一方、573K(300
℃)を超えた場合は、残留オーステナイトは分解するが
マルテンサイトの回復が進行し、基地の極端な軟化を招
く。
【0012】なお、他鋼種においても、上記の条件を満
たす熱処理を選定することによって良好な耐衝撃性を得
ることができる。本発明では、サブゼロ処理と比較的高
温の焼戻し処理とを併用して残留オーステナイト量が実
質的に0容量%を実現する。焼戻し処理のみで残留オー
ステナイト量0容量%とすることもできるが、その場合
は得られる鋼組織が異なり製品の硬度上昇は期待できな
い。
【0013】本発明の転がり軸受にあっては、軌道面と
転動体との最大接触面圧が約4000MPaを越える荷
重や衝撃荷重によっても、軌道面に有害な永久変形が生
じにくい。すなわち、マルテンサイトに比べて降伏応力
が低いオーステナイトの残留量が比較的多い従来の転が
り軸受の場合には、小さな荷重によって有害な永久変形
を生じるのに対して、残留オーステナイトを0容量%に
抑え、かつ硬度をHRC62以上に上昇させた本発明の
場合は、軌道面の耐圧痕性が向上し(降伏応力が高くな
り)、小さな荷重では有害な永久変形が生じにくいので
ある。
【0014】また、本発明の転がり軸受にあっては、サ
ブゼロ処理及び高温焼戻しによって残留オーステナイト
量を低減させることで、マルテンサイト化を促進して硬
さを上げ、軌道面の耐圧痕性を向上させる効果の他に、
軌道面の表面精度が経時的に劣化することを防止するこ
ともできる。即ち、軌道面部分に残留オーステナイトが
存在すると、軸受の使用に伴ってこの軌道面に繰り返し
加わる転がり応力によりこの残留オーステナイトが分解
し、その分解に伴って軌道面の表面精度が劣化する。し
かるに、本発明の転がり軸受は、軌道輪の部分に残留オ
ーステナイトが存在しないためそのような軌道面の精度
劣化は生じない。したがって音響特性の劣化を防止する
ことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図を
参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態とし
て、深溝玉軸受の一部を切欠いて示した斜視図である。
周知のとおり、内輪1,外輪2からなる軌道輪の間に、
複数個の転動体(玉またはころ)3が保持器4で互いに
接触しないように配置されて、円滑な転がり運動を行う
構造である。内輪1は外周に軌道溝(軌道面)5を有す
る部材、外輪2は内周に軌道溝(軌道面)6を有する部
材で、いずれも高炭素クロム軸受鋼であるSUJ2製で
ある。両軌道面5,6は互いに対向しており、その間に
同じくSUJ2製の玉3が転動自在に配設されている。
【0016】本願発明者らは、高炭素クロム軸受鋼を使
用することを前提に、軌道輪1,2の少なくとも軌道面
5及び/又は軌道面6の硬さをHRC≧62とし、且つ
残留オーステナイトγR 量=0容量%として、しかも圧
砕荷重を低下させることなく、耐衝撃性に優れた転がり
軸受を提供する手段として熱処理、まず第一に焼入れ時
の温度に着目した。
【0017】本発明の転がり軸受の軌道輪を形成する鋼
に施す焼入の温度は、サブゼロ、焼戻し終了時の硬さが
最大となる付近の温度とする。具体的には、基地中に
0.75mass%以上の炭素が固溶する880℃以上
とする。但し、焼入温度を高くしすぎた場合、高温保持
中に炭化物が分解し、炭素が全て固溶してしまい、炭化
物によるピン止め効果(高温保持中の結晶粒界の移動を
析出物が妨げることによって結晶粒の成長が抑制される
効果) が作用しないため、オーステナイト粒径が粗大化
し、それに伴ってマルテンサイト組織も粗大となり、鋼
の極端な脆化を招く。従って、焼入温度保持中に炭化物
が完全に分解はしない温度をもって、鋼の焼入温度の上
限とする。具体的には、920℃が焼入温度の上限であ
る。
【0018】熱処理によって残留オーステナイトを消失
させる方法には二通りの方法( サブゼロ処理と焼戻し処
理) がある。焼戻し処理のみで残留オーステナイトを0
容量%とした場合と、「サブゼロ処理+焼戻し処理」の
組合せで残留オーステナイトを0容量%とした場合とで
は、得られる組織は異なる。当然、熱処理後の硬度は大
きく変わることになる。そこで、本発明は、硬さ上昇に
及ぼす焼入後の熱処理の影響を把握し利用することで、
耐衝撃性をさらに向上させたものである。
【0019】以下に、上記硬さ上昇に及ぼす焼入後の熱
処理の影響を把握するべく行った実験例について説明す
る。まず、内径5mm,外径13mm,幅4mmで、玉
の直径が2mmの玉軸受を、以下のようにして作製し
た。内輪及び外輪については、鋼種SUJ2を用いて所
定形状の成形体を形成した後、各成形体に下記の表1に
示す温度で焼入れを施した。転動体については、全て従
来から用いられているSUJ2製ボールを用いた。
【0020】実験は、SUJ2製の軌道輪の焼入温度を
種々変化させ、その後サブゼロ処理を行ない、焼戻しを
施して硬度を調整した10種類の供試体と、従来の熱処
理方法である焼入後433〜453K(160〜180
℃) で焼戻しを施した供試体との計11種類を用意して
行い、特性を比較した。試料の玉軸受No.1〜No.
11のうち、No.1〜No.10の各試料それぞれの
両軌道輪1,2については、所定形状に成形した後に種
々の温度で焼入れを行ない、次いで83〜203K( −
190〜−70℃) でサブゼロ処理を行ない、483〜
573K( 210〜300℃) で焼戻し処理を施して、
微視組織の異なる10種類の供試体を調整した。そのう
ちの4種類No.5〜No.8は実施例、他は比較例で
ある。残りの1種(No.11)については、従来の熱
処理を施して従来例とした。
【0021】表1に、各供試体に施した焼入の温度、そ
の焼入温度で得られたビッカース硬さ、X線回折法にて
測定した表面層の残留オーステナイト量、耐衝撃性試験
の結果( 後述) をそれぞれ記載している。
【0022】
【表1】
【0023】図2は、従来例(No.11)を除く全て
の供試体について、熱処理後の硬度と焼入温度との関係
を示したものである。図中、●はロックウエル硬さHR
C62以上(ビッカース硬さHv746以上)の供試体
を表し、■はそれ以下の硬さのものを表している。この
図から、鋼種SUJ2を用いた場合における硬さの最大
点は1163K( 890℃) 付近であることがわかる。
また、1223K( 950℃) 以上の温度で焼入れた供
試体( No.9,No.10) は高温保持中に炭化物が
全て分解してしまうため、熱処理後の組織が粗大になり
極端に脆化することが確認された。
【0024】次に、硬さに及ぼすサブゼロ処理の影響を
調査するため、供試体No.1〜9と、焼入後に483
〜573K( 210〜300℃) で高温焼戻しを行なっ
た試料( サブゼロ処理を行なわずに残留オーステナイト
を0容量%としたもの) との比較を行なった。図3に
は、サブゼロ処理の有無別に、ビッカース硬さと焼入温
度の関係を示す。サブゼロ処理の有無による硬さの変化
に着目すると、特に1153K( 880℃) 以上の焼入
温度で両者の硬さの差は大きくなっている。この焼入温
度は、焼入時に生成する残留オーステナイト量γR が大
きくなり始める温度と対応しており、焼入時に生成する
残留オーステナイトを消失させる過程において両者に大
きな差異が存在するため、このような現象が発現するも
のと考えられる。
【0025】本発明におけるサブゼロ処理は、残留オー
ステナイト量が15容量%以下となるようにサブゼロ温
度を調整している。即ち、焼入時に生成した大量の残留
オーステナイト〔特に1153K( 880℃) 以上で焼
入れしたもの〕の大部分は、サブゼロ時にマルテンサイ
ト変態するため、これが高硬度化に大きく寄与する。一
方、焼入・高温焼戻し処理を行なった場合、すべての残
留オーステナイトは焼戻時にフェライトと炭化物に分解
するため、硬化にほとんど寄与しない。つまり、生成し
た残留オーステナイトの消失過程( 残留オーステナイト
を高硬度化に利用するか否か) によって、同じ残留オー
ステナイトが0容量%の鋼においても、硬度に非常に大
きな違いが生じることがわかった。
【0026】以上の結果から、残留オーステナイトを低
減し、かつ効果的に硬さを上昇させるためには、高温か
らの焼入の後、サブゼロ処理を行ない残留オーステナイ
トをマルテンサイト変態させた後、高温にて焼き戻すと
いう、本発明における処理が非常に有効であることがわ
かる。このときの変態挙動を知るために、焼入時に基地
に固溶した炭素濃度を調査した。炭化物の密度と炭化物
中の炭素濃度が既知の値である場合、基地中の炭素濃度
は、次に示す式を用いて推定できる。
【0027】 〔基地中の炭素濃度(質量%)〕 ={(基地中の炭素の質量)/(基地の質量)}×100 =(7 .67−0.519×θ)/(7.67−0.0774×θ) …(1) ここに、θ:炭化物の体積率(体積%) なお、SUJ2の場合、一次炭化物が全てセメンタイト
(Fe3C)であると考えられるので、炭化物の密度を
7.74×103 kg/m3 、炭化物中の炭素量を6.
7質量%として計算に用いた。
【0028】図4に、供試体No.1〜9について、焼
入直後の基地に固溶した炭素の濃度を、焼入温度で整理
した結果を示す。図中、固溶炭素濃度が焼入温度115
3K( 880℃) 以上の供試体を●、それ以下のものを
■で示している。図4より、サブゼロの有無によって硬
さの差が大きくなる焼入温度である1153K( 880
℃) 以上の供試体(No.5〜9)では、基地に0.7
5質量%以上の炭素が固溶していることがわかる。一般
に、基地中に固溶する炭素濃度が高いほど焼入マルテン
サイトは硬度が上昇し、残留オーステナイト量も増加す
る。前述の通り、残留オーステナイトはサブゼロ処理を
施すことによって高硬度化に活用できる。即ち、焼戻し
後の硬さは、焼入マルテンサイトによる硬化量と、残留
オーステナイトの量を決定する基地の固溶炭素濃度とに
依存すると考えられる。SUJ2においても、高温焼戻
し後にHRC62以上を得るためには、炭素が0.75
質量%以上基地に固溶している必要があり、そのために
は、1153K( 880℃) 以上の温度で焼人れを行な
う必要があることがわかった。
【0029】続いて、供試体の耐衝撃性の評価試験につ
いて説明する。この試験は、前述の玉軸受を用い、これ
を図5に示すHDDスピンドルモータユニットに与圧を
加えた状態で組み込んで行なった。図5のHDDスピン
ドルモータユニットは、磁気ディスクを搭載して回転す
るハブ11と、このハブ11に上端が固定された軸12
と、軸方向に配置された二つの玉軸受13,13と、こ
れらの玉軸受13を介して軸12を回転可能に支持する
ハウジング14とを備えている。この2つの玉軸受13
として、前述のようにして作製された各玉軸受を用い、
同じ物を二つ組合せてハウジング14と軸12との間に
組み込んだ。
【0030】このモータユニットを所定の落下距離で落
下させることにより、玉軸受13に294N( 30kg
f)の衝撃荷重を加えて、落下直後における音響特性の
劣化度合いを測定した。具体的には、落下前後にこのモ
ータユニットのアキシアル振動( 加速度G値) を測定
し、落下後のG値が落下前のG値より5以上高くなった
場合には音響特性に劣化が認められた( 耐衝撃性が悪
い; ×) と判断し、それ以外の場合には音響特性に劣化
が認められなかった( 耐衝撃性が良い;○)と判断し
た。
【0031】落下に伴う音響特性の劣化は、落下により
玉軸受の軌道面が変形するために生じるものであり、耐
衝撃性が良いということは、軌道面の変形抵抗が十分に
高く、回転精度の低下が生じ難いことを示す。これらの
結果は前掲表1に示している。さらに続けて、供試体の
靭性を評価するために、本発明における実施例(供試体
No.5〜8)及び従来例(供試体No.11)の内輪
について、圧砕試験を行なった。この試験は、供試体の
軌道輪に対して直径方向に荷重をかけて、圧砕したとき
の荷重を圧砕荷重として評価したものである。表2に、
圧砕荷重とビッカース硬さを示す。
【0032】
【表2】
【0033】従来例と実施例を比較すると、圧砕荷重に
大きな差はなく、同等の靭性を有しているといえる。ま
た、1163K(890℃)焼入品(供試体No.6)
に着目すると、硬さがHRCに換算して62以上である
にもかかわらず、従来例に遜色のない靭性を有している
ことが分かる。なお、1163K(890℃)焼入品の
供試体No.6よりも、従来例(供試体11)の方が高
硬度であるにもかかわらず圧砕荷重が若干高くなるの
は、残留オーステナイトの影響によるものと考えられ
る。
【0034】以上の各種試験の結果から、本発明の転が
り軸受を構成する部材を製造するには、当該部材を高炭
素クロム軸受鋼SUJ2を使用して成形した場合、その
成形品を焼入温度1153〜1193K(880〜92
0℃)で焼入れ処理した後、83〜203K(−190
〜−70℃) のサブゼロ処理及び483〜573K(2
10〜300℃)の焼戻し処理を行なうことが必要であ
る。
【0035】なお、上述の各実施例においては、軌道輪
としてSUJ2を用いる転がり軸受について説明した
が、特にSUJ2に限るものではなく、他の合金鋼を用
いて作成した転がり軸受についても、微細なマルテンサ
イト組織を保ちつつHRC62以上とし、残留オーステ
ナイトを0容量%とすれば優れた耐衝撃性が得られる。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る転が
り軸受によれば、耐圧痕性に優れるのみでなく、硬度と
靭性とのバランスにも優れた軸受を安価に供給すること
ができ、ひいては当該転がり軸受を組み込んだHDD、
VTR等の音響性能を向上させて、これらの性能向上を
図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転がり軸受の一実施の形態の斜視図で
ある。
【図2】溶体化温度の上昇に伴う熱処理後の供試体の硬
さ変化を示す図である。
【図3】サブゼロ処理の有無による硬度変化挙動の差を
示す図である。
【図4】基地に固溶した炭素の濃度と溶体化温度との関
係を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の転がり軸受を組み込んで
耐衝撃試験を行なった、HDDスピンドルモータユニッ
トの断面図である。
【符号の説明】
1 内輪 2 外輪 3 玉 5 内輪の軌道面 6 外輪の軌道面

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼よりなり、外周に内輪軌道面を有する
    部材と、これに対向して内周に外輪軌道面を有する部材
    と、これら両軌道面の間に転動自在に設けられた転動体
    とを備えた転がり軸受において、 焼入れ後サブゼロ処理及び高温焼戻処理を経た前記両部
    材の少なくとも軌道面の表面硬度がHRC62以上で、
    かつ残留オーステナイト量が実質的に0容量%であるこ
    とを特徴とする転がり軸受。
JP27985499A 1999-09-30 1999-09-30 転がり軸受 Withdrawn JP2001099163A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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DE102012202902A1 (de) * 2012-02-27 2013-08-29 Aktiebolaget Skf Verfahren zur Herstellung einer Elektromotoranordnung und Elektromotoranordnung eines Elektrofahrzeugs
WO2023048169A1 (ja) 2021-09-27 2023-03-30 Ntn株式会社 機械部品及び転がり軸受

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