JP2001090734A - 転がり軸受用保持器 - Google Patents

転がり軸受用保持器

Info

Publication number
JP2001090734A
JP2001090734A JP25953399A JP25953399A JP2001090734A JP 2001090734 A JP2001090734 A JP 2001090734A JP 25953399 A JP25953399 A JP 25953399A JP 25953399 A JP25953399 A JP 25953399A JP 2001090734 A JP2001090734 A JP 2001090734A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
cage
thickness
nitriding
resistance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP25953399A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4487340B2 (ja
Inventor
Keijiro Yamaguchi
啓二郎 山口
Koji Ueda
光司 植田
Manabu Ohori
學 大堀
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NSK Ltd filed Critical NSK Ltd
Priority to JP25953399A priority Critical patent/JP4487340B2/ja
Priority to GB0017646A priority patent/GB2352277B/en
Priority to US09/620,415 priority patent/US6431761B1/en
Priority to DE20023814U priority patent/DE20023814U1/de
Priority to DE10035603A priority patent/DE10035603A1/de
Publication of JP2001090734A publication Critical patent/JP2001090734A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4487340B2 publication Critical patent/JP4487340B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C33/00Parts of bearings; Special methods for making bearings or parts thereof
    • F16C33/30Parts of ball or roller bearings
    • F16C33/46Cages for rollers or needles
    • F16C33/56Selection of substances
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C8/00Solid state diffusion of only non-metal elements into metallic material surfaces; Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive gas, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals
    • C23C8/06Solid state diffusion of only non-metal elements into metallic material surfaces; Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive gas, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals using gases
    • C23C8/08Solid state diffusion of only non-metal elements into metallic material surfaces; Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive gas, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals using gases only one element being applied
    • C23C8/24Nitriding
    • C23C8/26Nitriding of ferrous surfaces
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C33/00Parts of bearings; Special methods for making bearings or parts thereof
    • F16C33/30Parts of ball or roller bearings
    • F16C33/46Cages for rollers or needles
    • F16C33/54Cages for rollers or needles made from wire, strips, or sheet metal
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C2240/00Specified values or numerical ranges of parameters; Relations between them
    • F16C2240/40Linear dimensions, e.g. length, radius, thickness, gap
    • F16C2240/60Thickness, e.g. thickness of coatings
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC
    • Y10STECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10S384/00Bearings
    • Y10S384/90Cooling or heating
    • Y10S384/913Metallic compounds

Abstract

(57)【要約】 【課題】保持器表面に窒化処理を施してなる化合物層中
の多孔質層と緻密層との厚さの許容範囲を設定すること
により、安定した耐摩耗性が確保できると共に耐焼付き
性の良好な転がり軸受用保持器をを提供する。 【解決手段】窒化処理して表面に化合物層を形成した鋼
製の転がり軸受用保持器において、当該化合物層1中の
緻密層2の厚さを3〜20μmとすることで、摩耗量が
抑制されて耐摩耗性が向上する。また、潤滑油の油だま
りとして機能する多孔質層3の厚さを2〜25μmとす
ることで、油切れが抑制されて耐焼付き性も向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般産業機械, 自
動車用エンジン, 工作機械, 鉄鋼機械等に使用される転
がり軸受用の保持器に係り、特に鋼製のプレス保持器の
機能改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、一部の転がり軸受用保持器には、
冷延鋼板SPCC,SPCE材に純窒化(NH3 ガス窒
化) やガス軟窒化, タフトライド, イオン窒化等の軟窒
化を施したプレス保持器が用いられている。保持器に窒
化処理を施すと、母材より硬化したHv350〜600
程度の表面硬さが得られて優れた耐摩耗特性を示すよう
になる。また、表面に生成される窒素化合物が耐高温軟
化特性を有することで、保持器と外輪や内輪の転動面も
しくは転動体との間に凝着や溶着が起こりにくくなり、
耐焼き付き性も良好となる。また、その窒化化合物の化
学的特性は非常に安定で不活性なため、腐食環境下にお
いて優れた耐食性を示す。その上、窒化はA1変態点
(723℃)以下の低い温度(400〜600℃)で処
理を行うため、熱処理ひずみが非常に小さく、とくに保
持器のように肉薄で変形の生じやすい部品の場合には十
分な効果を発揮するようになる。
【0003】しかしながら、近年、転がり軸受の使用条
件が厳しくなっており、殊に油膜切れが生じると、窒化
した場合でも保持器が摩耗しやすい。そして、軸受が回
転することにより、その摩耗粉が内輪や外輪の転動面も
しくは転動体に圧痕を付けたり、摩耗粉の増大と油切れ
が加速されて保持器が焼き付きを生じるという問題が起
きている。
【0004】そこで、かかる問題点を解消する手段とし
て、特開平10−147855号に、鉄系機構部品に窒
化処理を施してなる化合物層表面に、当該化合物層厚さ
の10〜50%とした厚さ1〜20μmの多孔質層を形
成し、この多孔質層に潤滑油を真空含浸法または加熱含
浸法により含浸させて潤滑性を向上させる技術が提案さ
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来技術においては、化合物層厚さが相対的にしか規定
されておらず、多孔質層厚さによってその上下限は決ま
る。そのために、化合物層が非常に厚くなることがあ
り、その際は化合物層全体の表面硬さは逆に低下してし
まい、耐摩耗特性を確保することが困難であるという問
題が生じたり、寸法精度が悪くなるという不具合があ
る。更には、窒化処理後に真空含浸法や加熱含浸法など
を用いて多孔質層に潤滑油を含浸させるなどの工程はコ
スト高を招くという問題がある。
【0006】そこで、本発明は、このような従来技術の
未解決の問題点に着目してなされたものであり、窒化処
理を施してなる化合物層中の多孔質層と緻密層との厚さ
の許容範囲を設定することにより、安定した耐摩耗性が
確保できる転がり軸受用保持器を低コストで提供するこ
とを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究を
重ねた結果、純窒化もしくは軟窒化の窒化処理を施した
転がり軸受用保持器において、耐摩耗性, 耐焼き付き性
はそれぞれ、化合物層中の緻密層厚さ及び多孔質層厚さ
に影響されることを見出して本発明を提案するに至っ
た。
【0008】すなわち冷延鋼板のプレス保持器に、緻密
層厚さが3〜20μm、多孔質層厚さが2〜25μmで
ある純窒化もしくは軟窒化の窒化処理を施すことで、上
記課題を解決する保持器の提供が可能となる。ここに、
本明細書で「化合物層」という用語は、鉄系基体と一体
化している窒素化合物からなる層を意味する。「緻密
層」という用語は、当該窒素化合物層の中の前記鉄系基
体側に位置する層を意味する。「多孔質層」という用語
は、当該窒素化合物層の中の前記鉄系基体の反対側に位
置し、10〜60%の空孔率を有する層を意味する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。窒化処理して表面に化合物層を形成した本発明の
鋼製の転がり軸受用保持器において、図1に示す拡散層
Aと母層Bの上部に形成された表面の化合物層1は、ε
相(Fe2 N,Fe3 N),ν’相(Fe4 N),鉄炭
窒化物,僅か少量のFe3 4 を主成分とする酸化鉄か
ら構成されており、鉄系基体である母材Bの表面に位置
する緻密層2と、その外側に位置する空孔率10〜60
%の多孔質層3とからなる二層構造である。
【0010】前記多孔質層3は初期なじみ性がよく、ま
た潤滑油の油だまりとして機能し、油膜の保護に効果的
な作用をもたらし焼き付きを防止する。しかしながら、
多孔質層3がある厚さ以上になると、表面の面荒れがひ
どくなりすぎるため、上に油を塗布した状態でも油膜が
均一に形成されずに粗さが残る。その結果、初期摩耗量
は増大し、それによってはく離した摩耗粉が原因となっ
て、軸受の内輪や外輪の転動面もしくは転動体に圧痕を
付けたり、ヒッカキや掘り起こし摩耗を生じる。これら
が油切れを加速して潤滑条件が悪化し、保持器が焼き付
きを起こしたりする。また、寸法精度も悪くなるという
不具合を生じる。あらかじめ表面付近の余分な多孔質層
を機械的な手段によって除去すれば、そうした問題を改
善することができるが、しかしその場合はコスト高を招
く。
【0011】逆に、多孔質層3の厚さが少ない場合は、
油膜保護の効果がないために、保持器と内輪や外輪の転
動面もしくは転動体とが真接触して発熱を起こし、容易
に摩耗や損傷焼き付きが起きる結果、保持器は短寿命と
なる。そこで、本願発明者らは以下の実験を行なって、
多孔質層3の適切な厚さを明らかにした。
【0012】すなわち、図2に示すようなファビリー
(Faville-Le Vally)式摩擦摩耗試験機を使用し、ガス
窒化を施した試験体のテストピン5を、シアーピン6を
介して回転装置7に取付け、同じくガス窒化を施して対
向させた一対のVブロック8,8で挟んで荷重Fをかけ
つつ回転数300rpmで回転させて、試験体5の耐摩
耗性を比較検討した。
【0013】ガス窒化は、雰囲気ガスをN2 +NH3
した純窒化を用い、処理温度は560℃とした。テスト
ピン5,Vブロック8に形成した化合物層については、
緻密層厚さを5μm一定とし、多孔質層厚さを次の5種
類に変化させて行った。0μm,2μm,15μm,2
4μm,28μm。供試油はタービン油を用い、摩擦速
度は0.15m/sで行った。
【0014】この実験の結果を図3に示した。多孔質層
厚さがほぼ2μm未満である場合、多孔質層の油膜保護
の効果が期待できず短時間で摩擦係数μが急上昇して焼
き付きを起こす。多孔質層厚さが2μm以上になると耐
焼き付き性は大幅に向上する。従って、多孔質層厚さの
下限を2μmとする。
【0015】その後、多孔質層厚さを増大させるにした
がって、それは潤滑油の油だまりとして作用するため焼
き付き時間は伸び、耐焼き付き性は良好となるが、その
反面初期摩耗量が増大する。よって、図3中の多孔質層
厚さ15μm及び24μmの各グラフのように少量の初
期摩耗(経過時間15sec付近に摩擦係数μの上昇)
の発生は、多孔質層が軸との初期なじみ効果であるが、
多孔質層厚さが25μmを超えた場合のように大量の初
期摩耗が発生すると、もはや初期なじみとしての効果は
なく、その摩耗粉が潤滑条件を悪化させて短時間で焼き
付きを起こすようになる。よって、多孔質層厚さの上限
を25μmとする。
【0016】つまり、化合物層の耐焼き付き特性は多孔
質層厚さに依存し、多孔質層厚さを2〜25μmにする
ことで耐焼き付き特性が良好であり、使用条件の厳しい
転がり軸受用保持器として好適に使用できると言える。
以上の結果は、緻密層厚さを5μm一定に限った場合の
みでなく、次の如く緻密層厚さを変化させた場合にも同
様のことがいえる。
【0017】本願発明者らは、さらに次の実験を行な
い、緻密層3についてもその適切な厚さを明らかにし
た。すなわち、こんどは図4に示すような大越式摩耗試
験機を使用し、ガス窒化を施した板状のSPCC製固定
試験片10を、SUJ2製の円環状の回転試験片11に
当てて荷重Fをかけて押し付けつつ回転試験を行い、固
定試験片10の耐摩耗性を比較検討した。
【0018】固定試験片10のガス窒化は、雰囲気ガス
をN2 20%+NH3 80%とした純窒化を用い、処理
温度は560℃とした。こうして窒化形成した化合物層
については、多孔質層厚さを5μm一定とし、緻密層厚
さを種々に変化させたものを使用した。回転試験片11
は、SUJ2材を840℃で焼入れし、170℃で焼戻
しして用いた。
【0019】試験条件は、無潤滑(ドライ)で、面圧:
0.2〜4kg/mm2 ,摩擦速度:2.6m/s,摩
擦距離(滑り距離): 400mとした。この実験の結果
を図5に示した。緻密層厚さが3μm未満では摩耗量は
非常に多い。これに対して、緻密層厚さ3μm以上にな
ると摩耗量は抑制される。これは、緻密層が3μm未満
と薄い場合には均一とはならず、その結果、窒化ムラが
生じていることが原因である。このように、窒化ムラの
ため部分的に緻密層が形成されない個所があると、SP
CC素地が内輪や外輪の転動面もしくは転動体の軸受鋼
と真接触を生じ、すべり接触を行うことで保持器は早期
に使用不能となる。したがって、化合物層における緻密
層の厚さが3μm未満の窒化保持器の場合には、その耐
摩耗特性は十分に期待できない。
【0020】一方、緻密層厚さが20μmを超える場合
においても、摩耗量の増大が認められる。すなわち、緻
密層の表面硬さは厚さ5〜10μmで最高の硬さを示
し、それ以上厚くなると最高硬さ位置が内部へ移行する
ことで逆に表面硬さは低下し、緻密層厚さ20μmを超
えると表面硬さは著しい低下が認められる。つまり、単
に緻密層が厚ければそれだけ耐摩耗特性が向上するとは
いえず、厚さ過大による緻密層の硬さの低下は、かえっ
て保持器の破損や断裂などが起きる原因となる。したが
って、窒化保持器の緻密層厚さは20μm以下であるこ
とが必要といえる。
【0021】これらの結果は多孔質層の厚さを5μmに
限った場合のみではなく、多孔質層厚さを変化させた場
合も同様のことがいえる。つまり、化合物層の耐摩耗特
性は緻密層厚さに依存し、緻密層厚さを3〜20μm好
ましくは5〜10μmにすることで、耐摩耗特性の優れ
た窒化保持器の提供が可能である。以上の結果より、本
発明によれば、窒化処理して表面に化合物層を形成した
鋼製の転がり軸受用保持器にあっては、緻密層厚さが3
〜20μmで多孔質層厚さが2〜25μmの範囲であれ
ば、窒化処理に軟窒化を用いた場合においても耐摩耗
性, 耐焼き付き性の良好な保持器が得られる。
【0022】(実施例)本発明の効果を確認するために
行った実験について説明する。供試保持器として、冷延
鋼板SPCCを用いて自動調心ころ軸受22212相当
のプレス保持器を作製し、これに窒化処理として、表1
に示す純窒化( ガス窒化),軟窒化( ガス軟窒化, タフト
ライド, イオン窒化, NV超窒化)を施し、緻密層及び
多孔質層からなる窒化化合物層を表面に形成した。得ら
れた本発明品保持器A〜I及び比較例の保持器A〜H
を、以下に述べる各試験に供した。なお、NV超窒化は
大同ほくさん株式会社の開発した窒化処理の名称であ
る。
【0023】
【表1】
【0024】< 耐摩耗性>保持器の耐摩耗特性を評価す
るためにNSK社製ラジアル寿命摩耗試験機により、ラ
ジアル荷重を5200N,粘度がVG10の潤滑油を1
l/minの給油条件で、回転数を3000rpmとし
て3000時間運転したときの各保持器の重量変化を測
定した。 < 耐焼き付き性>保持器の耐焼き付き性を評価するため
に, NSK社製ラジアル寿命焼付き試験機により, ラジ
アル荷重を5200N,回転数を3000rpmとし
て、保持器が焼き付くまでの時間を測定した。なお、各
保持器ポケットには粘度がVG5の潤滑油を合計で0.
2ml注入し馴染ませた。
【0025】実験結果として得られた、各供試保持器の
摩耗量及び焼付き時間を表1に併記して示す。また、こ
の結果から、多孔質層の厚さと焼付き時間との関係をプ
ロットしたグラフを図6に示す。比較例Aは、純窒化を
施した保持器において緻密層厚さが3μm未満の場合で
あるが、緻密層にムラが生じることが原因で摩耗量が全
保持器中最大になるという問題が起きている。
【0026】比較例Bは、純窒化を施した保持器におい
て緻密層厚さが20μmを超える場合であるが、緻密層
の硬さの低下が影響してやはり摩耗量が非常に大きいと
いう問題が生じている。比較例Cは、純窒化を施した保
持器において多孔質層厚さが2μm未満の場合である
が、多孔質層の油膜保護がないために短時間で焼き付き
が生じている。
【0027】比較例Dは、純窒化を施した保持器におい
て多孔質層厚さが25μmを超える場合であるが、初期
摩耗量の増大に伴う潤滑条件の悪化により、短時間で焼
き付きが生じている。つまり、比較例A〜Dの純窒化を
施した保持器のように、緻密層厚さと多孔質層厚さのど
ちらか一方が本発明の範囲にないものでは、耐摩耗特
性, 耐焼き付き特性の効果が十分に期待できず、窒化保
持器として好適に使用できない。
【0028】比較例E〜Hは、種々の軟窒化を施した保
持器において、緻密層厚さと多孔質層厚さのどちらか一
方が本発明の範囲にないものである。比較例A〜Dと同
様に繊密層厚さが3〜20μmでない場合には摩耗量に
問題が生じ、また多孔質層厚さが2〜25μmでない場
合には耐焼き付き性に問題が生じており、いずれも窒化
保持器として好適に使用できない。
【0029】これに対して、本発明A〜Iは、純窒化,
種々軟窒化のいずれを施した保持器にあっても、緻密層
厚さが3〜20μmで且つ多孔質層厚さが2〜25μm
の範囲にある。このように、緻密層厚さと多孔質層厚さ
とが本発明範囲内であると、その窒化処理方法の如何に
かかわらず、耐摩耗性, 耐焼き付き性の良好な保持器が
得られており、その効果は明らかである。
【0030】すなわち、以上説明した本発明によれば、
冷延圧延鋼板プレス保持器を窒化処理し、その緻密層厚
さを3〜20μm,多孔質層厚さを2〜25μmに制御
することによって、従来の窒化保持器に比べて大幅に耐
摩耗性, 耐焼き付き性が向上し、近年に見られる転がり
軸受の厳しい条件下で使用しても、その特性を十分に発
揮できる転がり軸受用保持器が提供できるという実用上
の大きな効果が得られるのである。
【0031】続いて、以上説明した緻密層厚さ3〜20
μm,多孔質層厚さ2〜25μmの窒化層を有する耐摩
耗性に優れた転がり軸受用保持器を基礎(第1の発明)
とし、更にその耐焼付き性を一層向上させた転がり軸受
用保持器(第2の発明)について説明する。既に述べた
とおり、近年、転がり軸受の使用条件が厳しくなる傾向
にある。特に、高負荷低速運転や急速始動運転のような
過酷な運転条件で使用する場合、たとえ窒化した保持器
を用いても、保持器案内面と軌道輪とのすべり接触によ
り保持器が焼き付きを生じるという問題が発生してい
る。
【0032】かかる問題の発生に対処するべく、保持器
に窒化処理或いは軟窒化処理を施すのみならず、更に酸
化処理をも組み合わせた酸窒化処理を施すことが従来よ
り行われ、これによって上述した軌道輪とのすべり接触
による保持器の焼き付きの問題は解決可能となった。し
かしながら、その場合も処理条件によっては、逆に耐摩
耗性能が窒化或いは軟窒化処理に比べて劣ってしまうこ
とがあった。
【0033】そこで本発明者らは、この問題の解決に向
けても鋭意研究を重ねた結果、転がり軸受用保持器にお
ける酸窒化処理の耐摩耗特性は、平均表面酸素濃度に影
響されることを見出し、冷延鋼板のプレス保持器の酸窒
化処理における平均表面酸素濃度を一定範囲内に制御す
れば、耐焼き付き性の向上のみならず良好な耐摩耗性を
兼ね備えた保持器が得られることを突き止めることがで
きた。
【0034】本発明者らはここに、酸窒化処理を施した
鋼製転がり軸受用保持器において、平均表面酸素濃度を
1.0〜25.0重量%にした転がり軸受用の保持器を
提案する。以下に、その内容を詳説する。酸窒化処理に
は、「NH3 を主成分どするガス中で純窒化あるいは
軟窒化処理を行なった後、ガスを切り替えるかあるいは
別の炉において酸素, 空気あるいは過熱水蒸気等により
酸化処理を行なう方法( 塩浴軟窒化後に塩浴酸化処理を
施すものもある)」と、「NH3 に数%の酸素, 空気
あるいは過熱水蒸気等の酸化性ガスを添加した混合雰囲
気で処理する方法」とが知られている。
【0035】前者の方法の場合は、表面から酸化層,
窒化層が形成される。一方、後者の方法の場合は、表
面から酸化層, 酸窒化層, 窒化層が形成される。いずれ
も化合物層中に窒化物のみならず、非金属的性質を示す
酸窒化物もしくは酸化物が形成されることで、耐焼き付
き性は格段に向上する。そこで、本願発明者らは、酸窒
化処理が耐焼き付き性に及ぼす影響をみるために、純窒
化,軟窒化,酸窒化など各種の窒化処理を施して表面改
質した試験体のテストピンに対して、先に述べた(図
2)ファビリー(Faville-Le Vally)式摩擦摩耗試験機
による試験を行い、耐摩耗性と耐焼付き性を評価した。
【0036】表2に試験結果を示す。なお、潤滑油には
タービン油を用い、摩擦速度は0.15m/sで行っ
た。
【0037】
【表2】
【0038】この結果から、非処理,窒化処理のものと
比較して酸窒化処理のものの耐焼き付き性が向上するこ
とは明らかで、酸窒化保持器は近年に見られるような使
用条件の厳しい環境において十分にその効果を発揮する
ことができる。しかし、このような優れた耐焼き付き性
を確保するためには、形成された酸化層と酸窒化層にあ
る程度以上の厚さが必要である。一方、逆に厚すぎると
寸法精度不良や剥離や摩耗の問題が生じる。そこで、酸
化層または酸化層+酸窒化層の厚さを3.5〜30μm
とし、少なくとも上限は25μmとするのが好ましい。
【0039】この第2の発明が、酸化層または酸化層+
酸窒化層の厚さ(表面からの深さ)の上限を30μm
(少なくとも25μm)に設定した理由は、先に説明し
た第1の発明における多孔質層(最大厚さ25μm)が
全部酸化されることで最良の結果が得られるためであ
り、念のため緻密層の上部も若干酸化されればより確実
な成果が得られることによる。また、酸化層または酸化
層+酸窒化層の厚さの下限を3.5μmに設定した理由
は、通常の窒化処理においても処理雰囲気によっては1
〜2μm程度の酸化層が生じることあるが、酸窒化処理
に期待されるような耐焼付き性向上には至らない。軟窒
化処理と明確に区別ができ、酸窒化処理として十分な効
果を得るためには、少なくとも3.5μm以上の厚さが
必要であることによる。
【0040】酸窒化処理で鋼製保持器の表面に形成され
る化合物層中の鉄酸化物には、FeO,Fe3 4 ,F
2 3 がある。FeO,Fe3 4 は保持器と転動体
との凝着を抑え摩擦を低下させるため、上述したように
窒化処理のみの場合と比較して耐摩耗特性は良好とな
る。しかしながら、平均表面酸素濃度が高くなるとFe
2 3 の量が多くなる。このFe2 3 は硬く研摩性が
あり、大きな摩擦特性を示す。よって、Fe2 3 を多
く含む酸窒化保持器は、転動体との接触面での摩擦係数
が大きくなることで摩耗量が増大するから、長期間にわ
たり耐摩耗特性の信頼性を維持することは難しい。
【0041】そこで、本発明者らは、酸窒化処理の表面
酸素濃度が耐摩耗性に及ぼす影響をみるために、平均表
面酸素濃度を変化させた塩浴酸窒化処理SPCCに対し
て2円筒式のアムスラー摩耗試験を行なった。図7にそ
の試験結果をプロットしたグラフを示す。試験条件は、
荷重:20kg、すべり率:10%、回転数:1000
回転とし、潤滑油にはSAE30モーター油を用いた。
【0042】グラフ中の破線は酸化を行わず塩浴窒化処
理のみを施したSPCCの摩耗量である。塩浴酸窒化処
理における平均表面酸素濃度が増大すると、鉄酸化物を
多く含むようになり、それが凝着を抑え摩耗量は減少す
る。しかしながら平均表面酸素濃度が25重量%を超え
ると、化合物層中のFe2 3 の量が増えるために摩耗
量は急激に増大し、窒化処理のみのものよりもかえって
耐摩耗性は悪化し、酸窒化処理の効果が期待できない。
一方、平均表面酸素濃度が1重量%未満では、窒化処理
のみのものより摩耗量が増大し、やはり酸窒化処理の効
果が期待できない。
【0043】以上の結果より、本発明は、酸窒化処理に
よる平均表面酸素濃度を1.0〜25.0重量%とし、
望ましくは5〜20重量%とする。 (実施例)本第2の発明の効果を確認するために行った
実験について説明する。冷延鋼板SPCCを用いて自動
調心ころ軸受22212相当のプレス保持器を作製し、
平均表面酸素濃度の異なる各種酸窒化処理を施したもの
を以下に述べる各試験に供した。なお、実施例,比較例
とも酸窒化処理は、NH3 ガス窒化(NH3 中の水分3
%),ガス軟窒化+大気酸化, 塩浴軟窒化+塩浴酸化の
いずれかとした。比較例には、塩浴軟窒化したのみの保
持器も加えた。 < 耐摩耗性>保持器の耐摩耗特性を評価するために、N
SK製ラジアル寿命摩耗試験機により、ラジアル荷重を
5200N,粘度がVG10の潤滑油を1l/minの
給油条件で、回転数を3000rpmとして3000時
間運転したときの各保持器の重量変化を測定した。 < 耐焼き付き性>保持器の耐焼き付き性を評価するため
に、NSK製ラジアル寿命焼付き試験機により, ラジア
ル荷重を5200N,回転数を3000rpmとして、
保持器が焼き付くまでの時間を測定した。なお、各保持
器ポケットには粘度がVG5の潤滑油を合計で0.2m
l注入し馴染ませた。
【0044】実験結果として得られた、各供試保持器の
平均表面酸素濃度、及び摩耗量と焼付き時間を表3に示
す。なお、平均表面酸素濃度は供試保持器の最表面をE
PAで走査し、その測定値平均量から求めた。
【0045】
【表3】
【0046】比較例A’〜C’はそれぞれ異なる方法で
酸窒化処理を施した保持器であるが、全て平均表面酸素
濃度が25重量%を超えており、非金属的性質を示す鉄
酸化物の形成により耐焼き付き性は良好であるが、大き
な摩擦特性を示すFe2 3が多いために摩耗量に問題
が生じ、酸窒化保持器として好適に使用できない。比較
例D’は塩浴軟窒化のみを行った保持器であるが、その
平均表面酸素濃度が0.3重量%と非常に低く、摩耗量
は少ないが短時間で焼付きを起こしている。
【0047】これらに対して、本発明品A’〜I’のも
のは、それぞれに酸窒化処理を施した保持器であり、平
均表面酸素濃度が25重量%を下回るものである。酸窒
化処理を施すことによって、鉄酸化物の形成により耐焼
き付き性は比較例D’の軟窒化処理と比較して格段に向
上している。また、平均表面酸素濃度を25重量%以下
にすることによってFe2 3 の量は抑制され、それゆ
え摩耗量に問題が生じるようなことはなく、かくて耐摩
耗性と耐焼き付き性を兼ね備えた酸窒化保持器の提供が
可能である。
【0048】以上説明したように本第2の発明によれ
ば、冷延圧延鋼板プレス保持器に酸窒化処理を施すこと
によって、窒化保持器に比べて大幅に耐焼付き性が向上
する。また、その平均表面酸素濃度を25重量%に制御
することによって、従来の問題であった酸窒化保持器の
摩耗特性の欠点を解消することができ、近年に見られる
転がり軸受の厳しい条件での使用において、その良好な
耐摩耗特性および耐焼き付き特性を十分に発揮できる酸
窒化保持器の提供が可能となる。
【0049】更に続いて、本発明の第3の発明について
説明する。これは、窒化化合物層(多孔質層+緻密層)
の上に更に浸硫層を形成することにより、耐摩耗性・耐
焼付き性に加えて耐かじり性も兼ね備えた転がり軸受用
保持器である。前記本発明の第1の発明,第2の発明に
おいて説明したように、冷延鋼板のSPCC材やSPC
E材製、或いはスレンレス鋼板製のプレス保持器に、純
窒化や軟窒化や酸窒化等の窒化処理を施して耐摩耗性・
耐焼き付き性・耐疲労性を向上させることにより、厳し
い使用条件に対処できる転がり軸受用保持器を提供でき
る。
【0050】しかし、これを組み込んだ転がり軸受を長
時間使用しているうちに、窒化処理された保持器から硬
質の窒化摩耗粉が放出され、これが異物となって、軌道
体や転動面にかじり(滑り面などに生じる部分的な微小
焼き付きの集成によって起こる表面の損傷)が生じ、そ
の結果転動体が不安定な挙動を起こして保持器に衝突す
ることで、保持器の機械的寿命が短くなったり、保持器
音やきしり音などの騒音が発生するという別の問題が生
じることがある。
【0051】かかる点を解消する手段として、特開平1
1−182556号では、ガス浸硫窒化を施して浸硫窒
化層を形成し、耐焼き付き性を向上させた保持器が提案
されている。しかしながら、その浸硫窒化層厚さが10
0〜400μmと過剰に大きいために、浸硫層と化合物
層との密着性が不十分で容易に剥離または脱離して浸硫
層の耐焼き付き性や耐かじり性の特性が失われしまい、
その結果、浸硫窒化保持器は転動体の急激な運動により
損傷し長期使用に耐えられなくなる。
【0052】本第3の発明は、このような問題点に鑑み
なされたものであって、窒化保持器の有する耐摩耗性・
耐焼き付き性・耐疲労性のみならず耐かじり性も兼ね備
え、長期間使用しても軌道体や転動面にかじりが発生す
ることがなく、したがって機械的寿命が短かくなったり
保持器音やきしり音が発生する事態も避けられる転がり
軸受用保持器を提供するものである。
【0053】本願発明者らは研究を重ねた結果、保持器
の耐かじり性は浸硫窒化層の浸硫層又は中間層の厚さに
影響されることを見出した。すなわち、鋼製のプレス保
持器に対して浸硫窒化を施し、その浸硫層厚さまたは
(浸硫層+中間層)厚さを0.1〜10μmとすること
で、十分な耐かじり性を獲得できることが判明した。以
下に、その詳細を説明する。
【0054】本発明に使用される浸硫窒化法には、次の
3種類の方法がある。 アルカリシアン酸塩の中に、硫黄塩を添加した窒化性
塩浴による塩浴浸硫窒化法(スルースルフ)。 浸炭性ガス十窒化性ガス+ 浸硫性ガス、例えばCO2
+(NH3 +N2 )+H2 Sのような混合ガスを用いる
ガス浸硫窒化法。
【0055】数TorrのN2 ガスとH2 ガス、ある
いはそれにCH4 ガスとArガスなどを加えたものにH
2 Sを添加した混合ガス中で、直流グロー放電を発生さ
せてガス状物質をイオン化し、電界によって被処理品表
面に捕獲するイオン浸硫窒化法。いずれも、窒化と浸硫
とを同時に行うものであり、低コストである。
【0056】鋼製のプレス保持器に、上記いずれかの方
法を用いて浸硫窒化を施すと、その表面には、図8に示
すような浸硫窒化層12が一工程で形成される。当該浸
硫窒化層12は、用いた浸硫窒化法の種類により構成が
異なり、塩浴浸硫窒化法およびガス浸硫窒化法を用
いた場合は浸硫層12aと化合物層1(多孔質層3と繊
密層2)とが形成され、イオン浸硫窒化法を用いた場
合には浸硫層12aと中間層12bと化合物層1とが形
成される。浸硫層12aは黒色、中間層は黒灰色、化合
物層は白色の組織からなり、主に浸硫層12aおよび中
間層12bは硫化物(FeS,Fe1-X Sなど)、化合
物層1は窒化物(εFe2-3 N,γ’Fe4 Nなど)お
よび炭化物(Fe3 C)から形成される。
【0057】浸硫窒化層12中の浸硫層12aと中間層
12bは自己潤滑性があるので、摩擦係数が減少し、摩
耗抵抗を低下させることにより耐摩耗性を向上させる。
また、機械的破壊摩耗領域での使用条件でもあたりを軟
化し、摩擦熱による温度上昇を抑えて凝着現象を防止す
るから、潤滑不良時の耐焼き付き特性が良好となる。更
にまた、この浸硫層12aと中間層12bは耐かじり性
が良好であるので、転動体と軌道輪にかじりが生じるこ
とがなく、長期間使用時における保持器の機械寿命を長
くすると同時に、保持器音やきしり音が発生するのを回
避することができる。
【0058】つまりは、本第3の発明の浸硫窒化によれ
ば、下地になっている化合物層1(多孔質層3と緻密層
2)が耐摩耗性・耐焼き付き性・耐疲労性を維持し、そ
の表面に形成された潤滑性のある浸硫層12aおよび中
間層12bが耐かじり性を兼ね備えることで、長期間使
用において軌道体や転動面にかじりが発生することがな
く、それゆえに機械的寿命が短命になることや保持器
音,きしり音が発生する現象を回避することができる転
がり軸受用保持器の提供が可能となる。
【0059】浸硫窒化した保持器においても、その耐焼
き付き性・耐摩耗性は、窒化処理の場合と同様に、化合
物層1中の緻密層2の厚さと多孔質層3の厚さに大きく
影饗される。浸硫窒化でも、化合物層1中の緻密層2の
厚さが3〜20μmであり、かつ多孔質層3の厚さが2
〜25μmである場合に、優れた耐摩耗性と耐焼き付き
性が得られる。
【0060】特に、SUS304に代表されるステンレ
ス鋼のプレス保持器に対しての窒化処理は、表面の酸化
被膜(Cr2 3 )の厚さが不均一になることが原因で
窒化ムラになるという傾向があるが、ガス浸硫窒化とイ
オン浸硫窒化は、ガス雰囲気中にH2 Sを添加するの
で、このH2 Sの表面活性化作用でステンレス鋼保持器
も均一に窒化され、従来の窒化保持器と比較して耐摩耗
・耐焼き付き性・耐疲労性・耐かじり性は良好となる。 (実施例)本第3の発明の効果を確認するために行った
耐かじり性試験について説明する。
【0061】本試験では、試料保持器を組み込んだ呼び
番号7013相当のアンギュラタイプ軸受を、所定時間
回転させた後にJIS B1548に記載されている測
定法に準じて軸受全体の騒音レベルを測定し、保持器の
耐かじり性を評価した。試料保持器は、SPCC製及び
SUS304製のプレス保持器に、浸硫層厚さもしくは
(浸硫層十中間層)厚さを変化させた種々の浸硫窒化処
理を施したものを用いた。測定方法の概略を図9に示
す。回転軸Cに装着した試験体軸受Wの前面中心から回
転軸に対し上方45°方向にマイクロホンDの中心軸を
合わせ、軸受前面中心からマイクロホンの振動板Eまで
の距離Lは100mmに設定した。試験体軸受Wに40
Nのアキシアル荷重Fを負荷して回転速度1800rp
mで回転させ、200時間運転後の試験体軸受全体の騒
音レベルを精密騒音計で測定した。試験結果を図10に
示す。
【0062】浸硫層厚さまたは(浸硫層+中間層)厚さ
が0.1μm未満の場合は、音圧が高い。これは、長時
間の運転中に、転動体と保持器とのすべり摩耗により硬
質な窒化摩耗粉が生じ、これが保持器や転動体とともに
繰返し運動する際に、転動体と軌道輪に微小な損傷や焼
き付き、つまりかじり損傷が発生することによって転動
体が不規則な運動を起こし、保持器に衝突を繰り返すよ
うになり、その結果、保持器は短寿命になったり、保持
器音やきしり音等の騒音を発生するに至ったものであ
る。
【0063】浸硫窒化層に0.1 μm以上の浸硫層もしく
は(浸硫層+中間層)があると、成分の硫化鉄が自己潤
滑作用を示し、飛躍的に耐かじり性の改善がなされ、転
動体や軌道輪のかじり損傷は皆無となる。そのため、浸
硫室化保持器は長期使用においても音圧は低く好適に使
用できる。一方、浸硫層厚さもしくは(浸硫層十中間
層)厚さが10μmより大きい場合は、中間層と化合物
層との密着性が不十分となって剥離や脱離が容易とな
り、保持器表面は化合物層のみとなる。この場合、もは
や本来持つべき耐かじり性の特性は失われ、転動体の急
激な運動により音圧が著しく上昇し、浸硫窒化保持器は
長期使用に耐えられなくなる。
【0064】以上の結果はSPCC保持器のみならず、
ステンレス保持器についても同様であった。上記の結果
から、本第3の発明によれば、冷延圧延鋼板もしくはス
テンレス鋼製保持器に浸硫層厚さ又は(浸硫層+中間
層)厚さが0.1 〜10μmの浸硫窒化を施すことによっ
て、窒化保持器の耐摩耗性・耐焼き付き性・耐疲労性に
加えて耐かじり性も兼ね備え、長期間の使用においても
軌道体や転動面にかじりが発生することがなく、それゆ
えに機械寿命が短命になったり、保持器音やきしり音が
発生する現象を回避することができることは明らかであ
る。
【0065】
【発明の効果】以上、説明したように、請求項1に係る
本発明によれば、窒化処理した冷延鋼板プレス保持器の
化合物層を形成する緻密層厚さを3〜20μm,多孔質
層厚さを2〜25μmに制御したため、従来の窒化保持
器に比べて大幅に耐摩耗性, 耐焼き付き性が向上し、そ
の結果、転がり軸受を厳しい条件下で使用しても特性を
十分に発揮できる転がり軸受用保持器が提供できるとい
う効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】窒化化合物層の構成を説明する模式図である。
【図2】ファビリー式摩擦摩耗試験機の概要を説明する
斜視図である。
【図3】窒化化合物層の多孔質層厚さの変化と摩擦係数
との関係を示した実験結果のグラフである。
【図4】大越式摩耗試験機の概要説明図である。
【図5】窒化化合物層の緻密層厚さの変化と摩耗量との
関係を示した実験結果のグラフである。
【図6】表1の試験結果に基づき多孔質層厚さの変化と
焼付き時間との関係を示したグラフである。
【図7】酸窒化処理したものをアムスラー摩耗試験し
て、平均表面酸素濃度の変化と摩耗量との関係を表した
グラフである。
【図8】浸硫窒化層の構成を説明する模式図である。
【図9】転がり軸受の騒音レベル測定方法を説明する図
である。
【図10】転がり軸受の騒音レベル測定による耐かじり
性試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】 B 窒化処理した拡散層と母層 1 化合物層 2 緻密層 3 多孔質層 12 浸硫窒化層 12a 浸硫層 12b 中間層
フロントページの続き (72)発明者 大堀 學 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 Fターム(参考) 3J101 BA47 BA50 DA02 DA09 EA02 EA78 FA33 FA60 GA01 GA21 GA31 GA34

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒化処理して表面に化合物層を形成した
    鋼製の転がり軸受用保持器において、当該化合物層中の
    緻密層厚さが3〜20μmであり、多孔質層厚さが2〜
    25μmであることを特徴とする転がり軸受用保持器。
JP25953399A 1999-07-21 1999-09-13 転がり軸受用保持器の製造方法 Expired - Fee Related JP4487340B2 (ja)

Priority Applications (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25953399A JP4487340B2 (ja) 1999-07-21 1999-09-13 転がり軸受用保持器の製造方法
GB0017646A GB2352277B (en) 1999-07-21 2000-07-18 Cage for rolling bearing
US09/620,415 US6431761B1 (en) 1999-07-21 2000-07-20 Cage for rolling bearing
DE20023814U DE20023814U1 (de) 1999-07-21 2000-07-21 Käfig für ein Wälzlager
DE10035603A DE10035603A1 (de) 1999-07-21 2000-07-21 Käfig für ein Wälzlager

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP20668999 1999-07-21
JP11-206689 1999-07-21
JP25953399A JP4487340B2 (ja) 1999-07-21 1999-09-13 転がり軸受用保持器の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001090734A true JP2001090734A (ja) 2001-04-03
JP4487340B2 JP4487340B2 (ja) 2010-06-23

Family

ID=26515796

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP25953399A Expired - Fee Related JP4487340B2 (ja) 1999-07-21 1999-09-13 転がり軸受用保持器の製造方法

Country Status (4)

Country Link
US (1) US6431761B1 (ja)
JP (1) JP4487340B2 (ja)
DE (1) DE10035603A1 (ja)
GB (1) GB2352277B (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002101253A1 (fr) * 2001-06-12 2002-12-19 Nsk Ltd. Dispositif de retenue
JP2005106204A (ja) * 2003-09-30 2005-04-21 Nsk Ltd 転がり軸受用保持器
JP2008032052A (ja) * 2006-07-26 2008-02-14 Nsk Ltd スラストころ軸受
JP2009162217A (ja) * 2008-01-03 2009-07-23 Kingtec Korea Co Ltd 圧縮機の斜板及びその製造方法
JP2009216240A (ja) * 2008-02-14 2009-09-24 Ntn Corp 転がり軸受

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6764307B2 (en) * 2001-03-28 2004-07-20 Minebea Company, Ltd. Polymer-metal composition retainer for self-lubricating bearing
JP2003129213A (ja) * 2001-10-16 2003-05-08 Honda Motor Co Ltd 窒化処理鋼の製造方法
US7114854B2 (en) * 2002-11-07 2006-10-03 Ntn Corporation Thrust roller bearing and cage
DE102004048172A1 (de) * 2004-10-02 2006-04-06 Ina-Schaeffler Kg Spanlos hergestelltes dünnwandiges rostfreies Lagerbauteil insbesondere Wälzlagerbauteil
DE102007014142B4 (de) 2007-03-23 2019-05-29 Pfeiffer Vacuum Gmbh Vakuumpumpe
JP2009092200A (ja) * 2007-10-11 2009-04-30 Nippon Thompson Co Ltd 4サイクルエンジン用の軸受
US8425691B2 (en) 2010-07-21 2013-04-23 Kenneth H. Moyer Stainless steel carburization process
US8182617B2 (en) 2010-10-04 2012-05-22 Moyer Kenneth A Nitrogen alloyed stainless steel and process
JP6535165B2 (ja) * 2014-12-18 2019-06-26 日本トムソン株式会社 ニードルケージにおける保持器用耐摩耗試験装置

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS60194061A (ja) * 1984-03-15 1985-10-02 Teikoku Piston Ring Co Ltd 摺動部材の製造方法
JPH09228972A (ja) * 1996-12-26 1997-09-02 Hitachi Ltd 圧縮機の鉄系摺動部品及びこれの表面処理方法と圧縮機
JPH102336A (ja) * 1996-04-16 1998-01-06 Koyo Seiko Co Ltd 軸受用保持器とその製造方法
JPH10147855A (ja) * 1996-11-15 1998-06-02 Hitachi Koki Co Ltd 高潤滑窒化処理鉄系機構部品の製造方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4938452A (en) * 1988-12-10 1990-07-03 Aisan Kogyo Kabushiki Kaisha Air control device for internal combustion engine
JP2607980B2 (ja) 1990-07-05 1997-05-07 日立建機株式会社 摺動部材及びそのガス浸硫・窒化方法
FR2708623B1 (fr) * 1993-08-06 1995-10-20 Stephanois Rech Mec Procédé de nitruration de pièces en métal ferreux, à résistance améliorée à la corrosion.
FR2708941B1 (fr) 1993-08-10 1995-10-27 Stephanois Rech Mec Procédé pour améliorer la résistance à l'usure et à la corrosion de pièces en métaux ferreux.
JPH07127646A (ja) * 1993-10-29 1995-05-16 Ntn Corp ころ軸受用保持器
DE19500576C2 (de) 1994-03-16 1996-07-11 Schaeffler Waelzlager Kg Verfahren zur thermochemischen Behandlung von dünnwandigen Bauteilen
JP3305972B2 (ja) 1997-02-03 2002-07-24 日立金属株式会社 温熱間用金型およびその製造方法
JP3682356B2 (ja) * 1997-02-28 2005-08-10 光洋精工株式会社 波形保持器を用いた玉軸受
JP3495590B2 (ja) * 1997-06-30 2004-02-09 アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 軟窒化処理を施した歯車並びにその製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS60194061A (ja) * 1984-03-15 1985-10-02 Teikoku Piston Ring Co Ltd 摺動部材の製造方法
JPH102336A (ja) * 1996-04-16 1998-01-06 Koyo Seiko Co Ltd 軸受用保持器とその製造方法
JPH10147855A (ja) * 1996-11-15 1998-06-02 Hitachi Koki Co Ltd 高潤滑窒化処理鉄系機構部品の製造方法
JPH09228972A (ja) * 1996-12-26 1997-09-02 Hitachi Ltd 圧縮機の鉄系摺動部品及びこれの表面処理方法と圧縮機

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002101253A1 (fr) * 2001-06-12 2002-12-19 Nsk Ltd. Dispositif de retenue
JPWO2002101253A1 (ja) * 2001-06-12 2004-09-30 日本精工株式会社 保持器
US6802651B2 (en) 2001-06-12 2004-10-12 Nsk Ltd. Retainer
JP2005106204A (ja) * 2003-09-30 2005-04-21 Nsk Ltd 転がり軸受用保持器
JP2008032052A (ja) * 2006-07-26 2008-02-14 Nsk Ltd スラストころ軸受
JP2009162217A (ja) * 2008-01-03 2009-07-23 Kingtec Korea Co Ltd 圧縮機の斜板及びその製造方法
JP2009216240A (ja) * 2008-02-14 2009-09-24 Ntn Corp 転がり軸受

Also Published As

Publication number Publication date
GB0017646D0 (en) 2000-09-06
GB2352277B (en) 2001-09-26
JP4487340B2 (ja) 2010-06-23
DE10035603A1 (de) 2001-07-26
US6431761B1 (en) 2002-08-13
GB2352277A (en) 2001-01-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6290398B1 (en) Rolling bearing
JP2001090734A (ja) 転がり軸受用保持器
US5630668A (en) Thrust needle-shaped roller bearing, rolling bearing, and cage of the thrust needle-shaped roller bearing
EP0802339B1 (en) Bearing retainer and method of fabricating the same
JP2001193743A (ja) 転がり軸受
JPH06241235A (ja) ころ軸受
JPH10131970A (ja) 転がり軸受とその製造方法
JP2003193200A (ja) 転がり軸受
JP2002364648A (ja) 転がり軸受
WO2002101253A1 (fr) Dispositif de retenue
JP2004360707A (ja) 保持器
JPH06313434A (ja) 耐食性転がり軸受
JP2000045049A (ja) 転がり軸受
JP2005106204A (ja) 転がり軸受用保持器
JPH0596486U (ja) 液化ガスポンプモータ用軸受
JP2007056940A (ja) スラスト針状ころ軸受
JP2005195150A (ja) 転動装置
WO2005024255A1 (ja) スラスト軸受
JP2002242942A (ja) 転がり軸受
JP2001187916A (ja) ころ軸受
JP2002227854A (ja) 転がり軸受
JP2002276680A (ja) 転がり支持装置
JP2004347131A (ja) 転がり軸受
JPS6212305B2 (ja)
JP2000199524A (ja) 転動装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060802

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20081024

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081111

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090108

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090623

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090820

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100309

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100322

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130409

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130409

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140409

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees