JP2001089830A - 球状化後の冷間鍛造性に優れた鋼線材・棒鋼およびその製造方法 - Google Patents
球状化後の冷間鍛造性に優れた鋼線材・棒鋼およびその製造方法Info
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Abstract
抗の低減を達成し、優れた冷間鍛造性を実現できる鋼線
材・棒鋼、およびこうした鋼線材・棒鋼を製造する為の
有用な方法を提供する。 【解決手段】 C:0.2〜0.6%を含む鋼線材・棒
鋼において、初析フェライト分率が5〜30面積%であ
り、残部がベイナイトを主体とする組織からなり、且つ
前記ベイナイト中におけるセメンタイトのラス間隔の平
均値が0.3μm以上である。
Description
鋼を球状化焼鈍後に冷間鍛造により部品に加工される様
な鋼線材に関し、殊に球状化後の冷間鍛造性に優れた鋼
線材に関するものである。尚本発明で対象とする鋼線材
・棒鋼は、主に熱間圧延によって作られ、通常9.0m
mφ以下の断面の丸い鋼材をコイル状にした鋼線材の
他、直径9.5mmφ以上の棒鋼をコイル状に巻き取っ
た「バーインコイル」をも含むものである
性が高いことから幅広い分野で利用されている。冷間鍛
造に供される素材は、局部的に激しい変形を受けるため
に、材料割れによる不良の発生や、工具ダイスの破損な
どの事故が起こりやすい。こうしたことから、比較的高
硬度で成形性の悪い中炭素鋼や低合金鋼を素材として冷
間鍛造する場合には、冷間加工性を向上させるために鋼
中の炭化物を球状化するための球状化焼鈍が行なわれる
のが一般的である。
て、鋼材の変形能の向上が図れると共に、ダイス寿命の
延伸に効果がある変形抵抗低減が達成されるのである
が、球状化焼鈍は長時間を要する処理であることが知ら
れている。こうしたことから、迅速に球状化が可能な素
材が求められているのが実状である。またこうした迅速
球状化を行なう際には、球状化焼鈍処理における基本的
な機能である優れた冷間鍛造性を得ること、特に変形能
を劣化させないことが重要な要件である。
にも様々開発されており、例えば特開昭47−8503
号には、球状化処理前の組織を硬質相のマルテンサイト
やベイナイトにする方法が提案されている。この技術に
よれば、球状化処理前の組織を上記の様な組織とするこ
とによって、セメンタイトの球状化を促進して、迅速球
状化を図ろうとするものである。こうした技術によっ
て、比較的短時間に球状化が達成されるのであるが、ベ
イナイト単相では球状化焼鈍後も鋼材の硬度が低くなら
ずに変形抵抗が高く、工具ダイスの寿命低下という問題
は依然として解消されない。
出発組織として球状化した場合には、旧オーステナイト
粒径が小さい方が冷間鍛造性(限界据え込み率:変形
能)が良好になるという報告も行なわれているが(「日
本鉄鋼協会第22回伸線技術分科会資料」:星野、峰、
田畑等、昭和60年11月15日発行)、こうした技術
では硬さが依然として硬くなって変形抵抗の点で改善さ
れていない。
化を図り迅速球状化を狙う手段がいくつか開示されてい
るが、十分な効果が得られているとは言い難い。例え
ば、熱間圧延時の塑性歪を残したまま変態させて、迅速
球状化させる技術が開示されている(特公昭63−45
441号、特公平2−6809号、特開昭60−255
922号等)。しかしながらこれらの技術では、迅速球
状化が達成できても、変態後の組織は圧延方向に展伸さ
れているので、変形能はむしろ劣化している。また、特
開昭62−139817号や特開昭63−20419号
では、フェライト粒径を5〜6μm以下とすることで迅
速球状化を図っている。しかしながら、このように前組
織を超微細化するには、冷却速度を0.5℃/秒以下と
非常に小さくする必要があり、こうした条件で前組織の
微細化を図って硬さを十分に低下させる為には、特別の
設備が必要となり、また生産性も非常に悪いという問題
がある。
の下でなされたものであって、その目的は、球状化処理
後における変形能の向上と変形抵抗の低減を達成し、優
れた冷間鍛造性を実現できる鋼線材・棒鋼、およびこう
した鋼線材・棒鋼を製造する為の有用な方法を提供する
ことにある。
発明の鋼線材・棒鋼とは、C:0.2〜0.6%を含む
鋼線材・棒鋼において、初析フェライト分率が5〜30
面積%であり、残部がベイナイトを主体とする組織から
なり、且つ前記ベイナイト中におけるセメンタイトのラ
ス間隔の平均値が0.3μm以上である点に要旨を有す
るものである。また上記組織における、旧オーステナイ
ト粒径の平均値が15μm以下であることが好ましい。
尚、本発明において、「ベイナイト中におけるセメンタ
イトのラス間隔の平均値」とは、ベイナイト中の、アス
ペクト比が3以上のセメンタイトで隣り合うセメンタイ
トの長軸方向の中心位置間の長さの平均値の意味であ
る。
体的な化学成分としては、Si:0.5%以下(0%を
含まない)、Mn:0.2〜1%およびAl:0.01
〜0.06%を夫々含有すると共に、P:0.02%以
下(0%を含む)、S:0.02%以下(0%を含む)
およびN:0.01%(0%を含む)に夫々抑制したも
のが挙げられる。
要によって、Cr:2%以下(0%を含まない)、M
o:1%以下(0%を含まない)およびNi:3%以下
(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の
元素を含有させることも有効であり、これによって鋼線
材・棒鋼の特性を更に向上させることができる。
当たっては、800〜1000℃の温度で熱間仕上げ圧
延した後、5℃/秒以上の冷却速度で700〜800℃
まで冷却し、その後0.5〜5℃/秒の冷却速度で50
0〜600℃まで冷却し、引き続き2℃/秒以下の冷却
速度で300℃まで徐冷する様にすれば良い。また、こ
の方法においては、上記熱間仕上げ温度は950℃以下
であることが好ましい。
変形抵抗の低減と変形能向上の両方を満足させるための
最適な前組織を検討した。その結果、ベイナイトを主体
とする組織に、所定量の初析フェライトを析出させ、且
つベイナイト中のセメンタイトのラス間隔を一定値以上
に広くすることが有効であることが判明した。即ち、初
析フェライト分率を5〜30面積%とすると共に、前記
ラス間隔の平均値を0.3μm以上とした鋼線材・棒鋼
においては、上記目的が見事に達成されることを見出
し、本発明を完成した。
主体とする組織中の初析フェライト分率を5〜30面積
%とする必要がある。この初析フェライト分率が少なく
なると、球状化後の球状化セメンタイトの分散率が高ま
って変形能が向上するが、硬さが硬くなってしまうこと
になる。この理由は、フェライトが少なくなると、球状
化時にオーステナイト化しないベイナイトが残り、この
部分のセメンタイトが十分に固溶できずに分散強化して
しまうからである。また、球状化に時間をかければセメ
ンタイトの固溶が促進されて硬さを低下させることがで
きるが、処理時間が非常に長くなってしまうことにな
る。こうしたことから、初析セメンタイト分率の下限を
5面積%と規定した。
さは低下するが、その量が過剰になると球状セメンタイ
トの分散性が悪化して変形能が低下するので、初析フェ
ライト分率は30面積%以下にする必要がある。即ち、
本発明では、ベイナイトを主体とする組織中の初析フェ
ライト分率を、球状化処理時の最高温度での平衡フェラ
イト量と同程度(5〜30面積%)に適正化すること、
換言すれば、昇温時してもベイナイトのまま残る量に相
当する量をフェライトにすることによって、変形能を阻
害することなく硬さ低下が可能となったのである。尚、
この初析フェライト分率の好ましい範囲は、10〜25
面積%であり、この範囲で本発明の効果が最も発揮され
る。
ライト以外の残余の部分は、ベイナイトを主体とする組
織からなるものであるが、この組織には微量であればパ
ーライトが存在していても良い。しかしながら、多量の
パーライトが存在すると、球状化焼鈍後も硬さが低下せ
ず、冷間鍛造時の工具寿命が低下することになるので、
その量は25面積%以下とすべきである。
満足させると同時に、ベイナイトのラス間隔を広くする
ことで、球状化後のセメンタイト粒の平均自由工程が広
くなり、硬さをより低くすることができるのである。特
に、合金鋼の場合では、パーライトのラメラ間隔が非常
に狭いので、同一のフェライト量ではフェライト+パー
ライトの組織とするよりも、球状化後の硬さを低くする
ことができるのである。こうした観点から、本発明の鋼
線材・棒鋼におけるベイナイト中におけるセメンタイト
のラス間隔の平均値を0.3μm以上と規定した。但
し、ラス間隔の狭いベイナイトやパーライトにおいて
も、球状化時間を長くすれば硬さを低下させることがで
きるが、処理時間が非常に長くなる。
ステナイト粒の平均値が15μm以下であることが好ま
しい。これは、旧オーステナイト粒が大きいと、球状化
処理時に球状化が進行しにくくなり、長いセメンタイト
が生成して変形能が低下することになるからである。即
ち、旧オーステナイト粒径の平均値を15μm以下に小
さくすることによって、球状化時のオーステナイト粒を
微細化し、再生パーライトの生成を抑制して球状化度を
向上して冷間鍛造性(変形能)を向上させることができ
る。尚、オーステナイト粒の平均値が15μmよりも大
きくなっても、球状化時の冷却速度を小さくすれば硬さ
の低下を図ることができるが、熱処理時間が長時間とな
る。
ついて説明する。本発明方法では、熱間仕上げ圧延温度
(最終圧延温度)を800〜1000℃とする必要があ
る。この熱間仕上げ圧延温度が1000℃を超えると組
織の粗大化が起こって、その後の処理によっても希望す
る組織を得ることができない。尚、この熱間仕上げ圧延
温度の好ましい上限は950℃である。一方、熱間仕上
げ圧延温度が800℃未満となると、圧延材組織が過度
に微細化するため、球状化後の硬さが低くなる。尚、最
終圧延温度は、最終仕上圧延機出側での表面温度で規定
したものである。
上の冷却速度で700〜800℃まで冷却するものであ
るが、この冷却工程ではオーステナイトの成長を抑制し
つつ微細化に有利に作用する。即ち、冷却速度が5℃/
秒未満になると、オーステナイトが粗大になる為に最終
的に得られる圧延材組織も粗大になり、球状化し難くな
る。このときの冷却最終温度が800℃を超えると、そ
の後の0.5〜5℃/秒の冷却の段階で初析フェライト
の析出量が多くなり過ぎ、一方700℃未満では初析フ
ェライトの生成量が少なくなり過ぎてしまう。
00〜600℃まで冷却するものであるが、この工程は
初析フェライト分率を5〜30面積%に調製しつつ、パ
ーライトの析出を抑制する為のものである。このときの
冷却速度が、0.5℃/秒未満となると初析フェライト
分率が5面積%未満となり、5℃/秒を超えると初析フ
ェライト分率が30面積%を超えてしまう。また、冷却
最終温度が500℃未満では初析フェライト分率が30
面積%を超えてしまい、600℃を超えると初析フェラ
イト分率が5面積%未満となるか、またはパーライトの
分率が必要以上に多くなってしまう。
速度で300℃まで徐冷するものであるが、この工程で
は十分高い温度でベイナイト変態させると共に、ベイナ
イト中におけるセメンタイトのラス間隔を広くする。こ
のときの冷却速度が、2℃/秒を超えるとラス間隔が狭
くなる。また、冷却最終温度が300℃未満では、オー
ステナイトが完全に変態せず、その後の冷却でマルテン
サイトとなる可能性があり、マルテンサイトが生成する
と球状化後の硬さが低下しない。
0.2〜0.6%含むものであり、また具体的な化学成
分組成としては、Si:0.5%以下(0%を含まな
い)、Mn:0.2〜1%およびAl:0.01〜0.
06%を夫々含有すると共に、P:0.02%以下(0
%を含む)、S:0.02%以下(0%を含む)および
N:0.01%(0%を含む)に夫々抑制したものが挙
げられるが、これらの元素の範囲限定理由は下記の通り
である。
度が得られない。一方、0.6%を超えると冷間加工性
の低下、靭性の低下があるので、これを上限とする。
強度アップが著しく、冷間加工性が低下するので、その
上限を0.5%とする。尚、Si含有量の好ましい上限
は0.3%である。
加されるが、その効果を発揮させるためには0.2%以
上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が
過剰になると、球状化焼鈍後も硬さの低下が困難にな
り、冷間鍛造性や靭性の低下を招くので、上限を1%と
する。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.3%であ
る。
造中の動的歪時効を抑制して、変形抵抗の低減を図る働
きがある。こうした効果を発揮させる為には、少なくと
も0.01%含有させる必要があるが、過剰になると却
って靭性を低下させるので、上限を0.06%とした。
尚、Al含有量の好ましい下限は0.01%であり、好
ましい上限は0.03%である。
0.02%以下(0%を含む) PとSは、冷間加工性、特に変形能を低下させるので、
いずれも0.02%以下に抑制する必要がある。尚、こ
れらの元素は、いずれも0.015%以下に抑制するこ
とが好ましい。
と変形能の低下を招くので、上限を0.01%とする。
尚、N含有量は0.005%以下に抑制することが好ま
しい。
学成分組成は上記の通りであり、残部は不可避不純物か
らなるものであるが、必要によって、Cr:2%以下
(0%を含まない)、Mo:1%以下(0%を含まな
い)およびNi:3%以下(0%を含まない)よりなる
群から選ばれる1種以上の元素を含有させることも有効
であり、これによって鋼線材・棒鋼の特性を更に向上さ
せることができる。また、これら以外にもV,Ti,
B,Ca等を含有させることも有効である。これらの元
素の範囲限定理由は、下記の通りである。尚これらの成
分以外にも、本発明の鋼線材・棒鋼には、その特性を阻
害しない範囲の微量成分も含み得るものであり、こうし
た鋼線材・棒鋼も本発明の技術的範囲に含まれるもので
ある。
o:1%以下(0%を含まない)およびNi:3%以下
(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の
元素 Cr、MoおよびNiは、焼入れ性確保に有効である
が、過剰に含有させると冷間鍛造性や靭性を劣化させる
ので、上限をそれぞれ2%、1%、3%とする必要があ
る。尚これらの元素による上記効果は、上記範囲内でそ
の含有量を増加させるにつれて大きくなるが、上記効果
を発揮させる為には、Crで0.1%以上、Moで0.
05%以上、Niで0.1%以上含有させることが好ま
しい。
添加すると冷間鍛造性や靭性を劣化させるので、上限を
0.5%とする。
て、冷間鍛造時の変形抵抗低減に有効な元素であるので
添加して良い。特に、B添加の場合は、冷鍛後の調質時
の焼入れ性を安定させるためにN添加が不可欠であり、
Ti添加がN固定に効果を発揮する。但し、過剰に含有
させると、粗大なTiNが析出して機械的性質を損なう
ので、上限を0.1%とする。
あるので、必要により添加しても良い。但し、過剰に含
有させると靭性を劣化させるので、上限を0.01%と
する。
上させる効果があるので添加しても良いが、多量に添加
すると大型介在物を生成して、機械的性質を損なうの
で、上限を0.01%とする。
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に特徴して設計変更すること
はいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
った。このとき用いた供試鋼を下記表1に示す。
験の為に、線材ではなく板の熱間圧延によって試料を作
製した。即ち、50×60×150(mm)の鋼塊を板
状に圧延し、13×75×500(mm)の試料とし
た。これは、実験の容易性という理由からである。
間圧を延終了した後、空冷、風冷、炉冷を様々組み合わ
せて処理し、各種組織(圧延組織、旧オーステナイト粒
径、フェライト分率およびベイナイトのラス間隔)の試
料を得た。このときの熱間仕上げ圧延温度、圧延後冷却
条件を下記表2に示す。
温した後、その温度で1時間保持し、その後680℃ま
で10℃/時で徐冷する条件で球状化処理し、球状化後
の特性(据え込み限界、硬さ、および球状化度)につい
ても調査した。圧延後の試料の組織および球状化後特性
を、一括して下記表3に示す。尚このときの測定や評価
は、夫々下記の方法によった。
研磨後、ピクリン酸水溶液でエッチングして旧ガンマ粒
界を現出し、光学顕微鏡の400倍での観察で180×
220(mm)の領域で撮影した写真から測定した。そ
して測定は、220μmに相当する長さの直線を1視野
当たり5本引き、この線で切断される旧オーステナイト
粒の切断長さを求め、10視野の平均値をとった。
100倍の走査型電子顕微鏡写真(SEM)で観察し、
面積率からフェライトが占める割合(分率)を求め、1
0視野の平均をとった。
野を2000倍のSEMで観察し、ラスに直角になるよ
うに引いた直線がラスによって切断される線分の長さを
求めた。そして、1視野当たり20線分を測定し、10
視野の平均を平均ラス間隔とした。
mmの円柱状試料を削り出し、深さ0.3mm、先端R
0.03mmのVノッチを、円柱状試料の側面に縦方向
に形成して、据込み試験片とした。そして、この試験片
を用いて据込み試験を行ない、割れが発生する限界の変
形量(%)で、冷間鍛造性のうちの変形能について評価
した。尚変形量値が大きいほど変形能は良好となること
を示す。
硬さを測定し、冷間鍛造性のうちの変形抵抗を評価し
た。
野を2000倍のSEMで観察し、アスペクト比が3以
下のセメンタイトを球状化したものとし、全セメンタイ
ト個数に占める割合を求めて、10視野の平均をとって
評価した。
実験No.1のものでは、フェライト分率が少な過ぎる
ので、硬さが硬く、変形能も悪くなっている。実験N
o.7のものでは、(フェライト+パーライト)組織で
あり、こうした組織下においてフェライト分率を26%
としても、硬さが十分に低くなっていない。実験No.
8のものでは、(フェライト+パーライト)組織であ
り、こうした組織下においてフェライト分率を多くすれ
ば硬さを低くすることができるが、球状化度が悪く、変
形能が十分ではない。実験No.9のものでは、(フェ
ライト+ベイナイト)を主体とする組織であるが、パー
ライトが11%程度混在していた為に、球状化度が悪く
なって変形能が十分ではない。実験No.10のもので
は、マルテンサイトが混在しており、硬さが硬くなって
いる。これらに対し、実験No.2〜6のものでは、程
度の差こそあれ、変形能(据込み限界)、変形抵抗(硬
さ)および球状化度のいずれにおいても良好であること
が分かる。
変化させて熱間圧延を終了した後、空冷、風冷、炉冷を
様々組み合わせて処理し、各種組織(圧延組織、旧オー
ステナイト粒径、フェライト分率およびベイナイトのラ
ス間隔)の試料を得た。このときの熱間仕上げ圧延温
度、圧延後冷却条件を下記表4に示す。
状化処理し、球状化後の特性(据込み限界、硬さ、およ
び球状化度)について、上記と同様にして調査した。圧
延後の試料の組織および球状化後特性を、一括して下記
表5に示す。
実験No.15のものでは、旧オーステナイト粒径が大
きくなっており、アスペクト比の高いセメンタイト粒が
多くなって、球状化度が悪いので、据込み限界が悪くな
っている。これらに対し、実験No.11〜14のもの
では、変形能(据込み限界)、変形抵抗(硬さ)および
球状化度のいずれにおいても良好であることが分かる。
を用い、ビレット加熱、粗圧延、中間圧延を経て仕上げ
圧延行なう線材圧延ラインにて各種線材(試料)を作製
した。このとき、線径は5〜15mmφの線径に仕上げ
た。各試料(線材)の線径、熱間仕上げ圧延温度、圧延
後冷却条件を下記表6に示す。
状化処理し、球状化後の特性(据込み限界、硬さ、およ
び球状化度)について、上記と同様にして調査した。圧
延後の試料の組織および球状化後特性を、一括して下記
表7に示す。
実験No.29のものでは、最初の「段階1」における
冷却温度が低過ぎるので、殆ど(ベイナイト+マルテン
サイト)の組織になっており、硬さが硬くなっている。
実験No.30のものでは、最初の「段階1」における
冷却温度が高過ぎるので、圧延で一旦微細化したオース
テナイト粒が粗大化してしまい、球状化度が悪く、変形
能が悪くなっている。
おける冷却速度が遅いので、これもオーステナイト粒が
成長してしまい、実験No.7と同様の理由で変形能
(据込み限界)が低くなっている。また実験No.32
のものでは、「段階2」における冷却温度が低過ぎるの
で、ベイナイトのラス間隔が狭くなって硬さが硬くなっ
ている。
おける冷却温度が高過ぎるので、次の「段階3」での徐
冷の間にパーライトが生成してしまい、硬さが十分に下
がらず、変形能が悪くなっている。実験No.34のも
のでは、「段階2」の冷却速度が遅いので、フェライト
量の非常に多い(フェライト+パーライト)組織にな
り、硬さは低いが変形能力が悪くなっている。
おける冷却速度が速過ぎるので、フェライト生成量が少
なくなり、硬さは硬くなっている。実験No.36のも
のでは、「段階3」における冷却速度が速い過ぎるの
で、マルテンサイトが生成してしまい、硬さが硬くなっ
ている。
多くなっているので、硬さが硬くなっている。実験N
o.38のものでは、Mn含有量が多くなっているの
で、硬さが硬くなっている。実験No.39のもので
は、Al含有量が少ない為に、介在物によって変形能が
悪くなっている。実験No.40のものでは、N含有量
が多くなっているので、硬さが硬くなっている。
足する実験No.16〜28のものでは、変形能(据込
み限界)、変形抵抗(硬さ)および球状化度のいずれに
おいても良好であることが分かる。
状化処理後における変形能の向上と変形抵抗の低減を達
成し、優れた冷間鍛造性を発揮する鋼線材・棒鋼が実現
できた。
Claims (6)
- 【請求項1】 C:0.2〜0.6%(質量%の意味、
以下同じ)を含む鋼線材・棒鋼において、初析フェライ
ト分率が5〜30面積%であり、残部がベイナイトを主
体とする組織からなり、且つ前記ベイナイト中における
セメンタイトのラス間隔の平均値が0.3μm以上であ
ることを特徴とする球状化後の冷間鍛造性に優れた鋼線
材・棒鋼。 - 【請求項2】 旧オーステナイト粒径の平均値が15μ
m以下である請求項1に記載の鋼線材・棒鋼。 - 【請求項3】 Si:0.5%以下(0%を含まな
い)、Mn:0.2〜1%およびAl:0.01〜0.
06%を夫々含有すると共に、P:0.02%以下(0
%を含む)、S:0.02%以下(0%を含む)および
N:0.01%(0%を含む)に夫々抑制したものであ
る請求項1または2に記載の鋼線材・棒鋼。 - 【請求項4】 Cr:2%以下(0%を含まない)、M
o:1%以下(0%を含まない)およびNi:3%以下
(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の
元素を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の
鋼線材・棒鋼。 - 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の鋼線材
・棒鋼を製造するに当たり、800〜1000℃の温度
で熱間仕上げ圧延した後、5℃/秒以上の冷却速度で7
00〜800℃まで冷却し、その後0.5〜5℃/秒の
冷却速度で500〜600℃まで冷却し、引き続き2℃
/秒以下の冷却速度で300℃まで徐冷することを特徴
とする球状化後の冷間鍛造性に優れた鋼線材・棒鋼の製
造方法。 - 【請求項6】 熱間仕上げ温度が950℃以下である請
求項5に記載の製造方法。
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