JP3715802B2 - 迅速球状化可能で冷間鍛造性の優れた鋼線材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中炭素鋼や低合金鋼を球状化焼鈍後に冷間鍛造により部品に加工される様な鋼線材およびその製造方法に関し、殊に球状化焼鈍の際に迅速球状化が可能で冷間鍛造性にも優れた鋼線材、およびその様な鋼線材を製造する為の有用な方法に関するものである。尚本発明で対象とする鋼線材は、主に熱間圧延によって作られ、通常9.0mmφ以下の断面の丸い鋼材をコイル状にしたものを意味するが、直径9.5mmφ以上の棒鋼をコイル状に巻き取った「バーインコイル」をも含むものである。また熱間圧延した後に冷間伸線した鋼線材も含む趣旨である。
【0002】
【従来の技術】
鋼材を冷間で加工する冷間鍛造は、生産性が高いことから幅広い分野で利用されている。冷間鍛造に供される素材は、局部的に激しい変形を受けるために、材料割れによる不良の発生や、工具ダイスの破損などの事故が起こりやすい。こうしたことから、比較的高硬度で成形性の悪い中炭素鋼や低合金鋼を素材として冷間鍛造する場合には、冷間加工性を向上させるために鋼中の炭化物を球状化するための球状化焼鈍が行なわれるのが一般的である。
【0003】
上記の様に球状化焼鈍を施すことによって、鋼材の変形能の向上が図れると共に、ダイス寿命の延伸に効果がある変形抵抗低減が達成されるのであるが、球状化焼鈍は長時間を要する処理であることが知られており、迅速に球状化が可能な素材が求められているのが実状である。またこうした迅速球状化を行なう際には、球状化焼鈍処理における基本的な機能である優れた冷間鍛造性を得ること、特に変形能を劣化させないことが重要な要件である。
【0004】
鋼材の迅速球状化に関する技術はこれまでにも様々開発されており、例えば特公昭56−37288号や同59−35410号等には、球状化処理前の組織を硬質相のマルテンサイトやベイナイトにする方法が提案されている。これらの方法によれば、比較的短時間に球状化が達成されるのであるが、球状化焼鈍後も鋼材の硬度が低くならずに変形抵抗が高く、工具ダイスの寿命低下という問題は依然として解消されない。
【0005】
またフェライト・パーライト組織で微細化を図り迅速球状化を狙う手段がいくつか開示されているが、十分な効果が得られているとは言い難い。例えば特公昭63−45441号、特公平2−6809号、特開昭60−255922等には、熱間圧延時の塑性歪を残したまま変態させて、迅速球状化させる技術が開示されている。しかしながらこれらの技術では、迅速球状化は達成できても、変態後の組織は圧延方向に展伸されているので、変形能はむしろ劣化している。
【0006】
更に、特開昭62−139817号や同63−20419号では、フェライト粒径を5〜6μm以下とすることで迅速球状化を図っているが、このように前組織を超微細化すると、硬さを十分に低下させるのに却って長時間の球状化時間が必要となり、本発明が想定する迅速球状化条件(処理時間10〜15時間程度)では、むしろ変形抵抗が高く工具寿命が低下する問題がある。またこの技術では、線材断面内の平均粒径のみを規定したものであり、断面内における粒径のバラツキについては全く考慮されていないものである。即ち、球状化条件は、断面内で最も球状化に適していない組織を有する箇所で律速されるので、組織のバラツキを低減することが、線材全体の迅速球状化と冷間鍛造性確保に有効になると考えられる。
【0007】
一方、特開昭64−73021号においては、表層部および内部のいずれも均一微細なフェライト・パーライト組織とする細粒鋼の製造方法が開示されているが、この技術は圧延後の焼きならし処理の省略を目的としてなされたものであり、迅速球状化可能で優れた冷間鍛造性を有する鋼線材の実現を目指したものではない。またこの技術では、均一微細とは言っても、結晶粒度8番以上(平均粒径約20μmの以下)と粗いものであり、しかもどの程度の均一性が必要であるかは明確にされているとは言えず、微細な部分では6μm未満、粗い部分では20μmに近い粒が生じ、組織的なバラツキが大きくなる可能性がある。この場合には、本発明が想定している迅速球状化条件では、変形抵抗が高く工具寿命の低下の問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、冷間鍛造前の迅速球状化と、変形能を向上して優れた冷間鍛造性を併せて実現することができる鋼線材、およびその為の有用な方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の鋼線材とは、C:0.2〜1.2%、Si:0.3%以下(0%を含まない)、Mn:0.2〜1.5%およびAl:0.01〜0.06%を夫々含有すると共に、P:0.02%以下(0%を含む)、S:0.02%以下(0%を含む)およびN:0.01%以下(0%を含む)に夫々抑制し、残部Feおよび不可避不純物からなる熱間圧延鋼線材または冷間伸線された鋼線材において、初析フェライトとパーライトまたはパーライトが95体積%以上である組織を有すると共に、最表面から0.3mm深さまでの表層部を除く領域における平均結晶粒径が6〜15μmであり、且つ最表面より0.3mm内部からD/8(D:線材径)を超えない部分までを表層側、D×(3/8)より内側の領域を中心側としたときに、表層側と中心側の平均結晶粒径の差が5μm以下である点に要旨を有するものである。
【0010】
本発明の鋼線材においては、必要によって、Cr:2%以下(0%を含まない)、Mo:1%以下(0%を含まない)およびNi:3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含有させることも有効であり、これによって鋼線材の特性を更に向上させることができる。
【0011】
一方、本発明の鋼線材を製造するに当たっては、熱間仕上げ圧延時の圧延出側温度が、線材断面積内の全ての領域において750〜900℃の温度範囲内に入る様にすると共に、線材断面内における最高温度と最低温度の差が80℃以下である様にして操業する様にすれば良い。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、球状化時間を短縮させても変形抵抗の低減と変形能向上の両方を満足させることのできる最適な前組織を検討した。その結果、フェライトとパーライトを主体とする組織において、最表面から0.3mm深さまでの表層部を除く領域における平均結晶粒径を調整し、且つ当該領域における表層側と中心側の平均結晶粒径の差を5μm以下とすることが有効であることが判明した。即ち、上記領域における平均結晶粒径を6〜15μmに調整し、且つこの領域における表層側と中心側の平均結晶粒径の差が5μm以下である様な鋼線材においては、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明の鋼線材においては、その平均結晶粒径を6〜15μmに調整する必要がある。この平均結晶粒径が15μmを超えて粗い組織となると、球状化時間が長くかかると共に、線材の変形能も十分でなくなる。逆に、平均結晶粒径が6μm未満となって微細になると変形能は向上するが、硬さの低下に時間がかかり、迅速球状化に適しない。この平均結晶粒径の好ましい範囲は、7〜12μmである。尚通常の熱間圧延材のフェライト・パーライト組織の平均結晶粒径は15〜25μm程度である。また本発明の鋼線材においては、上記領域における表層側と中心側の平均結晶粒径の差を5μm以下とする必要があるが、この差が5μmを超えると、全ての領域で望ましい結晶粒径の確保が困難になってしまう。
【0014】
本発明の鋼線材は、前述の如く初析フェライトとパーライトまたはパーライトを主体とするものであるが、その他微量であればベイナイトやマルテンサイト等の組織が混在していても良い。但し、これらマルテンサイトやベイナイトの組織が多量に生成すると、球状化焼鈍後も硬さが低下せず、冷間鍛造時の工具寿命が低下するので、その量は5%以下にすべきである。
【0015】
ところで従来開示されている技術では、線材断面内の組織のバラツキが大きく、十分な迅速化が達成されていなかったのであるが、球状化処理後の冷間鍛造性を確保する為には、線材中における最も組織の悪いところでも良好な冷間鍛造性を確保する必要がある。従って、球状化条件は、線材コイル内の最も条件の悪い箇所に合わせる必要がある。条件の悪い箇所が1箇所でもあれば、そこだけ十分な球状化が達成されないので、そこが割れ発生の基点となる可能性がある。
【0016】
こうしたことから、本発明の鋼線材においては、最表面から0.3mm深さまでの表層部を除く全ての領域における平均結晶粒径が6〜15μmのフェライト・パーライト組織であり、且つ上記領域における表層側と中心側の平均結晶粒径の差が5μm以下であるという要件を満足する必要がある。尚本発明の鋼線材において、最表面から0.3mm深さまでの表層部を組織調整の対象外としたのは、この表層部では脱炭が起こることがあり、結晶粒径を規定出来ない可能性があるからである。
【0017】
本発明の鋼線材において、その平均結晶粒径が6〜15μm(好ましくは7〜12μm)である(フェライト+パーライト)組織にする為には、熱間圧延条件とその後の冷却条件の制御、特に最終圧延温度の制御が重要な要件となる。こうした観点からして、熱間仕上げ圧延時の圧延出側温度を750〜900℃とする必要がある。この温度が750〜900℃の温度範囲となる様にすれば、最終組織に大きな変化がなく、線材断面内の全てで平均結晶粒径が6〜15μmとなる(フェライト+パーライト)組織を生成し得る。
【0018】
しかしながら、熱間仕上げ時の圧延出側温度が900℃を超えると、組織の粗大化が起こる。一方、この温度が750℃未満となると、平均結晶粒径が6μm未満となる可能性があり、また圧延時の塑性歪を有したまま変態し、圧延方向に展伸された結晶粒が生成する可能性も高くなる。従って、断面内の最低温度が750℃となる様にすれば、断面内の組織バラツキが低減される。また断面内の組織バラツキを低減させ、且つ表層層と中心側の平均結晶粒径の差を5μm以下とする為には、断面内の最高温度と最低温度の差を80℃以下にすることが必要である。
【0019】
熱間仕上げ圧延時の圧延出側温度において、上記の様に適正な温度範囲に調整する為には、最終圧延前の水冷程度のコントロールや復熱時間のコントロールが重要な要件になる。最終圧延温度を適正な範囲に収める為に、最終圧延前に設置されている水冷を強力に実施する場合には、十分な復熱を行なって断面内温度分布を小さくすることが必要である。
【0020】
また上記の様な平均結晶粒径を有するフェライト・パーライト組織を生成させる為には、最終圧延後の冷却速度も重要な要件となる。この冷却速度が速すぎれば、ベイナイトやマルテンサイト等の過冷組織が生成し、球状化後の硬さが高くなり、冷間鍛造後の変形能が低下する。こうしたことから、最終圧延後の冷却速度も最適な範囲があるが、この最適冷却速度は化学成分組成によって異なるので、夫々の成分に応じて決まる最適範囲に収める必要がある。
【0021】
本発明の鋼線材は、基本的にCを0.2〜1.2%含むものであり、また具体的な化学成分組成としては、Si:0.3%以下(0%を含まない)、Mn:0.2〜1.5%およびAl:0.01〜0.06%を夫々含有すると共に、P:0.02%以下(0%を含む)、S:0.02以下(0%を含む)およびN:0.01%以下(0%を含む)に夫々抑制したものが挙げられるが、これらの元素の範囲限定理由は下記の通りである。
【0022】
C:0.2〜1.2%
Cは、強度付与元素であり、0.2%未満では必要な強度が得られない。一方、1.2%を超えると冷間加工性の低下、靱性の低下があるので、これを上限とする。
【0023】
Si:0.3%以下
Siは、脱酸剤として添加されるが、多量に添加すると強度上昇が著しく、冷間加工性が低下するので、上限を0.3%にする。尚Si含有量の好ましい下限は、0.05%であり、好ましい上限は0.25%である。
【0024】
Mn:0.2〜1.5
Mnは、脱酸・脱硫剤および焼入れ性向上元素として添加されるが、その効果を発揮させるためには0.2%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が過剰になると、球状化焼鈍後も硬さの低下が困難になり、冷間鍛造性や靱性の低下を招くので、上限を1.5%とする必要がある。尚Mn含有量の好ましい下限は、0.3%であり、好ましい上限は1.0%である。
【0025】
Al:0.01〜0.06%
Alは脱酸剤であると同時に、窒素の固定による冷間鍛造中の動的歪時効を抑制して、変形抵抗の低減を図る働きがある。こうした効果を発揮させる為には、少なくとも0.01%含有させる必要があるが、過剰になると却って靱性を低下させるので、上限を0.06%とした。尚Al含有量の好ましい下限は0.015%であり、好ましい上限は0.04%である。
【0026】
P:0.02%以下(0%を含む)、S:0.02%以下(0%を含む)
PとSは、冷間加工性、特に変形能を低下させるので、いずれも0.02%以下に抑制する必要がある。尚これらの元素は、いずれも0.01%以下に抑制することが好ましい。
【0027】
N:0.01%以下(0%を含む)
Nは、冷間鍛造中の動的歪時効を起こし、変形抵抗上昇と変形能の低下を招くので、上限を0.01%とする。尚N含有量は、0.006%以下に抑制することが好ましい。
【0028】
本発明の鋼線材における基本的な化学成分組成は上記の通りであり、残部はFeおよび不可避不純物からなるものであるが、必要によって、Cr:2%以下(0%を含まない)、Mo:1%以下(0%を含まない)およびNi:3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含有させることも有効であり、これによって鋼線材の特性を更に向上させることができる。またこれら以外にも、V,Ti,B,Ca等を含有させることも有効である。これらの元素の範囲限定理由は、下記の通りである。尚これらの成分以外にも、本発明の鋼線材には、その特性を阻害しない程度の微量成分を含み得るものであり、こうした鋼線材も本発明の範囲に含まれるものである。
【0029】
Cr:2%以下(0%を含まない)、Mo:1%以下(0%を含まない)およびNi:3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素
Cr、MoおよびNiは、焼入れ性確保に有効であるが、過剰に含有させると冷間鍛造性や靱性を劣化させるので、上限をそれぞれ2%、1%、3%とする必要がある。尚これらの元素による上記効果は、上記範囲内ではその含有量を増加させるにつれておおきくなるが、上記効果を発揮させる為には、Crで0.1%以上、Moで0.05%以上、Niで0.1%以上含有させることが好ましい。
【0030】
V:0.5%以下(0%を含まない)
Vは析出強化を目的として添加しても良いが、多量に添加すると冷間鍛造性や靱性を劣化させるので、その上限を0.5%とする。
【0031】
Ti:0.1%以下(0%を含まない)
Tiは固溶Nの固定による動的歪時効抑制効果によって、冷間鍛造時の変形抵抗低減に有効な元素であるので添加して良い。特にBを添加した場合は、冷鍛後の調質時の焼入れ性を安定させるためにN添加が不可欠であり、Ti添加がN固定に効果を発揮する。但し、過剰に含有させると、粗大なTiNが析出して機械的性質を損なうので、上限を0.1%とする。
【0032】
B:0.01%以下(0%を含まない)
Bは少量でも焼入れ性を上昇させるのに有効な元素であるので、必要により添加しても良い。但し、過剰に含有させると靱性を劣化させるので、上限を0.01%とする。
【0033】
Ca:0.01%以下(0%を含まない)
Caは、MnSの形態を球状化して、横方向の靱性を向上させる効果があるので添加しても良いが、過剰に含有させると大型介在物を生成して、機械的性質を損なうので、上限を0.01%とする。
【0034】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0035】
【実施例】
実施例1
下記表1に示す化学成分組成の供試鋼を用い、これらを下記表2に示す条件で8〜16mの線材に熱間圧延した。このときの圧延温度は、最も温度が低い最表層と、最も温度が高い中心部(D/2の部分:Dは線材径)で評価した。最表層温度は、実測データであり、中心部の温度は加工発熱も考慮した温度解析シミュレーションによって推測した。そして最終圧延前に水冷帯を設け、その水量や復熱時間を制御して、線材断面内の温度分布を種々コントロールした。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
圧延材の組織および粒径を、表層、D/4、D/2で評価した。そして表層は最表面より0.3mm内部からD/8を超えない部分、D/4はD/8からD×(3/8)の部分、D2はD×(3/8)の部分、の夫々の範囲で測定した。また全ての箇所で、62500μm2 の被顕面積において、一般的な切片法で線材の長手方向と横方向の両方の平均として測定した。これらの結果を、表層側と中心側の平均結晶粒径の差(D/2部分の平均結晶粒径―表層の平均結晶粒径)と共に下記表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
上記各線材を用いて、下記の手順で球状化熱処理を行なった。まず圧延材を180℃/hの加熱速度で(Ac1 +20℃)まで昇温し、この温度で4時間保持した。次いで680℃まで10℃/hで徐冷し、その後放冷する方法で球状化処理を行ない、球状化の程度を評価した。このときの球状化程度は、各々の試料の表面とD×(1/4)の位置で球状化した炭化物の割合と、硬さで評価した。具体的には、25μm四方の領域を2000倍の走査型電子顕微鏡で観察し、個々の炭化物のアスペクト比と個数を測定した。そしてアスペクト比が3以下のものを球状化した炭化物と判断し、その全数に占める割合を求め、10視野での平均を測定した。また硬さは、荷重5kgでビッカース硬さを測定し、5点の平均として求めた。
【0041】
そして各鋼線材について、冷間鍛造性を切欠き付きの据え込み試験によって評価した。このとき表層スケールのみを除去した後、切欠きを付けたサンプルと、D/4の部分の変形能を評価する為に、そのところまで表層部を切削除去した後で、切欠きを付けたサンプルの両方で評価した。これらの結果を、下記表4に一括して示す。
【0042】
【表4】
【0043】
この結果から、次の様に考察できる。まずNo.2〜5,13〜15,21〜25のものは、本発明で規定する要件を外れるものである。No.2とNo.13は、表面圧延温度が下がり過ぎて、表層組織が微細になり過ぎてしまい、球状化後の硬さも高くなっている。No.3、4および14のものは、圧延仕上げ時の中心側温度が高く、中心の組織が粗くなり、中心部の球状化に長時間を要する。またこのうち、No.4のものは、表層温度も高くなっており、表層組織も粗く球状化時間が長くなっている。No.5のものは、表層と内部の温度差が大きく、組織のバラツキも大きくなり、安定した変形能が得られない。
【0044】
またNo.13のものは、圧延仕上げ時の表層側温度が低くなっており、表層側と中心側の平均結晶粒径の差が5μmよりも大きくなっており、また中心部の硬さが高くなっている。No.15と21のものは、素材の焼入れ性が良過ぎて、ベイナイトが生成し、球状化後も硬さが高くなっている。
【0045】
No.22のものは、Siが多過ぎてり、球状化後も硬さが高い。No.23のものは、Alが多いため酸化物のクラスターが生成し、変形能が低下している。No.24のものは、Alを無添加のため、また、No.25はN量が多いため、Nによる歪時効を抑制できず、すえ込み限界が低くなっている。
【0046】
これに対して、上記以外のNo.1,6〜12,16〜20のものでは、迅速球状化が達成され、球状化率と据え込み率の両方とも良好な値を示していることが分かる。
【0047】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、鋼線材における冷間鍛造前の迅速球状化と、変形抵抗を向上して優れた冷間鍛造性を併せて実現することができた。
Claims (3)
- C:0.2〜1.2%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.3%以下(0%を含まない)、Mn:0.2〜1.5%およびAl:0.01〜0.06%を夫々含有すると共に、P:0.02%以下(0%を含む)、S:0.02%以下(0%を含む)およびN:0.01%以下(0%を含む)に夫々抑制し、残部Feおよび不可避不純物からなる熱間圧延鋼線材または冷間伸線された鋼線材において、初析フェライトとパーライトまたはパーライトが95体積%以上である組織を有すると共に、最表面から0.3mm深さまでの表層部を除く領域における平均結晶粒径が6〜15μmであり、且つ最表面より0.3mm内部からD/8(D:線材径)を超えない部分までを表層側、D×(3/8)より内側の領域を中心側としたときに、表層側と中心側の平均結晶粒径の差が5μm以下であることを特徴とする迅速球状化可能で冷間鍛造性の優れた鋼線材。
- Cr:2%以下(0%を含まない)、Mo:1%以下(0%を含まない)およびNi:3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素を含むものである請求項1に記載の鋼線材。
- 請求項1または2に記載の鋼線材を製造するに当たり、熱間仕上げ圧延時の圧延出側温度が、線材断面内の全ての領域において750〜900℃の温度範囲内に入る様にすると共に、線材断面内における最高温度と最低温度の差が80℃以下である様にして操業することを特徴とする迅速球状化可能で冷間鍛造性の優れた鋼線材の製造方法。
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