JP2003089846A - 面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板およびその製造方法 - Google Patents
面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
とともに、焼入れ焼戻し等の熱処理が施される部品にも
適合可能な面内異方性の小さい高炭素鋼板およびその製
造方法を提供する。 【解決手段】 C:0.2%〜1.5%、Si:0.10%〜0.35%、Mn:0.
1%〜0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下、Cu:0.03%以
下、Ni:0.025%以下、Cr:0.3以下の成分系を有する高炭
素鋼板であって、炭化物平均粒径が0.5μm未満、さ
らにr値の面内異方性指数Δrが−0.15超〜0.1
5未満であり、平均r値が1.0以上である面内異方性
の小さい加工用高炭素鋼板。ただし、Δr=(r0−2
r45+r90)/4、 平均r値=(r0+2r45+
r90)/4、であり、r0、r45、r90は、圧延方向に
対し、0°、45°、90°のr値を示す。
Description
性に優れ、引張特性の面内異方性が小さい加工用高炭素
鋼板およびその製造方法に関する。
ェーン部品をはじめとした機械構造用部品などに使用さ
れている。このような高炭素鋼板には、高い焼入れ性が
要求され、最近では焼入れ後の硬さの向上のみならず、
焼入れ作業の低コスト化の観点から、低温短時間での焼
入れ性が望まれている。また、近年、部品の一体成形化
が進みつつあり、円筒形状の部品においては更なる深絞
り性への要求が高まっている。
て一般に硬質なため成形性に劣るだけでなく、熱間圧
延、焼鈍および冷間圧延に起因して、機械的性質の面内
異方性を生じるため、従来から鋳造、鍛造で製造されて
いる高い寸法精度が要求されるギア部品への適用は困難
であった。
させること、および成形性に対する機械的性質の面内異
方性を小さくすることが大きな課題であった。そこで、
これまでに、高炭素鋼板において焼入れ性や深絞り性を
向上させ、あるいは機械的性質の面内異方性を小さくす
るため、以下の技術が提案されている。
従来技術1という) この公報には、熱間圧延後の鋼帯を10℃/sec以上
の冷却速度で20〜500℃の温度範囲に冷却し、微細
パーライトとし、その後再加熱を行い巻取って炭化物の
球状化を促進し、高炭素鋼板の焼入れ性を高める技術が
記載されている。
88)、p.1729(以下、従来技術2という) 一般に0.65%もの高濃度の炭素を含有し、組織がフ
ェライト/セメンタイト組織を呈する鋼板(S65C)
では、低炭素鋼板に比べて成形性が低い。この文献に
は、熱間圧延後、冷間圧延(冷延率50%)および65
0℃で24hrのバッチ焼鈍を施し、さらに二次冷間圧
延(冷延率65%)および680℃で24hrのバッチ
焼鈍を行うことにより、引張強度が低下し、r値と伸び
が向上し、かつr値の面内異方性も低炭素鋼板と同等と
なる高炭素冷延鋼板の製造方法について開示されてい
る。
(以下、従来技術3という) この公報には、高炭素鋼板の機械的性質の異方性の原因
は圧延方向に細長く展伸した硫化物系非金属介在物の存
在であるとし、C、Si、Mn、P、Cr、Ni、M
o、V、Ti、Alを規制するとともに、S含有量を重
量で0.002%以下まで低減させ、介在物の圧延方向
の平均長さを6μm以下とし、圧延方向の長さが4μm
以下の介在物の個数を全介在物個数の80%以上とする
ことにより、衝撃値と全伸びについて圧延方向に直交す
る方向の機械的性質に対する圧延方向の機械的性質の比
で0.9〜1.0の範囲になるように面内異方性を小さ
くした高炭素鋼板を製造することが記載されている。
下、従来技術4という)この公報には、C、Si、M
n、Cr、Mo、Ni、B、Alを特定した高炭素鋼板
を熱間圧延する際に、熱間仕上げ温度をAr3変態点以
上とし、熱間圧延終了から巻取りまでを30℃/sec
以上で冷却し、550〜700℃の温度域で巻取るとと
もに、脱スケールし、その後、600〜680℃の温度
で焼鈍し、40%以上の圧下率で冷間圧延し、さらに6
00〜680℃の温度で焼鈍した後、調圧することによ
り、焼入れ、焼戻し等の熱処理時に寸法変化異方性の小
さい高炭素冷延鋼板を製造することが記載されている。
(以下、従来技術5という) この公報には、C、Si、Mn、sol.Al、Nを規
制し、また、2≦sol.Al/N≦20とし、鋼中炭
化物の平均粒径が0.5μm以上で球状化率≧90%と
し、また、集合組織を規制して、平均r値≧0.80、
面内異方性指数Δrが±0.20以内を満足する深絞り
面内異方性の小さい高炭素冷延鋼板の製造方法が記載さ
れている。
た従来技術は以下の問題点を有している。
まま巻取って冷却するため、再加熱を行っても、炭化物
の球状化のための保持時間が通常の球状化焼鈍時間に比
べて極めて短く、炭化物の球状化率はまだ低いレベルに
あるため、十分な焼入れ性が得られない場合がある。ま
た、急冷後の再加熱には通電加熱設備が必要であり、製
造コストが膨大となる。
ト組織を有するS65Cについては、r値の平均値は
1.3程度と高いものの、圧延方向に対し0°方向(L
方向)、45°方向(S方向)、90°方向(C方向)
のそれぞれの方向についてのr値であるr0、r45、r
90からΔr=(r0+r90−2×r45)/4で規定され
るr値の面内異方性指数Δrが−0.47であり、r値
の面内の異方性は非常に大きい。また、冷間圧延−焼鈍
プロセスを2回も行うため、製造コストが高くなるとい
う問題点を有している。
r値がさらに向上し、Δrは0.34と小さくなっては
いるが、依然としてr値の面内異方性は大きい。また、
黒鉛はオーステナイト中への溶解速度が遅いため、焼入
れ性は著しく低下する。
面内異方性について考慮しているだけであり、鋼板の成
形性の重要な指標となるr値の面内異方性については検
討されていない。
時に寸法変化が小さい高炭素鋼板の製造方法が記載され
ているが、成形性に対する面内異方性に関しては検討さ
れていない。
により平均r値を向上させるとともに、Δrを低減させ
ているが、加工性向上のため、炭化物の平均粒径を0.
5μm以上に粗大化させている。このため、高炭素鋼板
として重要な焼入れ性は十分に得られない。また、伸び
も33%程度であり、複雑な形状の部品の一体成形を行
う場合、延性不足による割れが発生するため、加工性も
十分とは言えない。
であり、例えば円盤加工や円筒成形され、高い寸法精度
が要求されるとともに、その後焼入れ焼戻し等の熱処理
が施される部品にも適合可能な高炭素鋼板、すなわち、
焼入れ性および深絞り性に優れ、かつ成形性に大きな影
響を及ぼす引張特性に対する面内異方性の小さい高炭素
鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
%、Si:0.10%〜0.35%、Mn:0.1%〜0.9%、P:0.03%以下、S:
0.035%以下、Cu:0.03%以下、Ni:0.025%以下、Cr:0.3以
下の成分系を有する高炭素鋼板であって、炭化物平均粒
径が0.5μm未満、さらにr値の面内異方性指数Δr
が−0.15超〜0.15未満であり、平均r値が1.
0以上であることを特徴とする面内異方性の小さい加工
用高炭素鋼板である。ただし、Δrと平均r値は次の式
で表される。
し、0°方向(L方向)、45°方向(S方向)、90
°方向(C方向)のr値を示す。
用炭素鋼)、JIS G 4401(炭素工具鋼鋼材)、
又はJIS G 4802(ばね用冷間圧延鋼帯)で規定
される成分系を基本とし、かつC量が0.2%以上の成
分系を有する高炭素冷延鋼板について、焼入れ性および
深絞り性、ならびに引張特性の面内異方性が良好になる
条件について検討を重ねた結果なされたものである。そ
の過程で、熱間圧延、その後の冷却および巻取、冷間圧
延および焼鈍等の製造条件を適正に制御すること、かつ
鋼板中における炭化物の存在状態を適切に調整すること
が有効であることが見出された。
超〜0.15未満、平均r値を1.0以上とすることに
より、円筒形状の部品の成形および高い寸法精度が要求
される部品に、高炭素鋼板を適用できることが確認され
た。以下、個々の限定理由について説明する。
P、S、Cu、Ni、Cr この発明の鋼の化学成分は、JIS G4051(機械
構造用炭素鋼)、JIS G 4401(炭素工具鋼鋼
材)、JIS G 4802(ばね用冷間圧延鋼帯)で規
定される成分系を基本とするもので、発明範囲外では、
これらのJIS規定を満足することができない。従っ
て、各元素の含有量を上記の範囲内、即ちC:0.2%〜1.5
%、Si:0.10%〜0.35%、Mn:0.1%〜0.9%、P:0.03%以下、S:
0.035%以下、Cu:0.03%以下、Ni:0.025%以下、Cr:0.3以
下とする。
化物においては平均粒径で決定される。炭化物平均粒径
が0.5μm以上に粗大化すると、高周波焼入れ等の短
時間焼入れにおいて十分な焼入れ性が得られない。従っ
て、炭化物平均粒径は0.5μm未満とする。
15未満 r値の面内異方性指数Δrの絶対値|Δr|を小さくす
ることにより、円筒形状の部品を均一に成形することが
できる。この|Δr|が0.15以上となると、ギア部
品等の高い寸法精度が要求される部品への適用は困難と
なる。従って、|Δr|を0.15未満、即ちΔrを−
0.15超〜0.15未満の範囲内とする。
において、成形高さを大きくとることができ、プレス成
形の回数を削減することができる。平均r値が1.0未
満では、十分な成形高さが得られず、円筒形状の部品へ
の適用は困難となる。従って、平均r値を1.0以上と
する。
板を得ることが可能な製造方法の発明は次のようにな
る。その発明は、上記の発明の成分系を有する高炭素鋼
を、熱間圧延により体積率20%以上のベイナイト相を
有する組織に組織制御し、この熱延鋼板を冷間圧延し、
球状化焼鈍により、上記発明の範囲の炭化物平均粒径、
Δr、および平均r値とすること、即ち、炭化物平均粒
径を0.5μm未満、さらにr値の面内異方性指数Δr
を−0.15超〜0.15未満、平均r値を1.0以上
とすることを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭
素鋼板の製造方法である。
イナイト相を有する組織とする代りに、体積率70%以
上のベイナイト相を有する組織とすることを特徴とする
面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法とする
こともできる。
の段階でベイナイト相を有する組織とすることにより、
球状化焼鈍後に好ましい特性が得られるという知見に基
づきなされた。
積率が20%を超えると、球状化焼鈍時に炭化物が微細に
球状化され、焼入性が高くなる。一方、ベイナイト相の
体積率が20%以下では、この効果が顕著ではない。従っ
て、ベイナイト相の体積率を20%を超える値に制御す
る。また、[111]結晶方位の集積を促進し、低い冷圧率
でΔr値が低減するとともに平均r値が向上する。
とすることにより、球状化焼鈍後の炭化物が、一層微細
化するのみならず、フェライト粒が均一に成長するの
で、極めて高い焼入性と延性を有する鋼板が得られ、同
時に平均r値もさらに向上する。従って、ベイナイト相
の体積率を好ましくは70%を超える値に制御する。
上温度(Ar3変態点−20℃)以上で熱間圧延を行っ
た後、120℃/秒を超える冷却速度で冷却終了温度62
0℃以下まで急冷し、次いで巻取温度550℃未満で巻
取り、得られた熱延鋼板を酸洗後、圧下率30%以上の冷
間圧延を行い、焼鈍温度640℃以上720℃以下で焼
鈍することを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭
素鋼板の製造方法とすることもできる。
0℃以下、巻取温度を500℃以下とすることを特徴と
する面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法と
することもできる。
熱延鋼板を、焼鈍温度580℃以上680℃以下で焼鈍
することを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭素
鋼板の製造方法とすることもできる。
延鋼板の組織を得ることが可能な製造条件について検討
した結果なされたものであり、以下、その詳細を説明す
る。
でフェライト変態が進行するためベイナイト相が十分に
得られず、フェライト+パーライト+ベイナイトの混合
組織となる。そのため、球状化焼鈍の際、フェライト粒
が粒成長しにくくなり、高い延性が得られないととも
に、[111]結晶方位の集積も十分に得られず、平均r値
も向上しない。また、体積率20%を超えるベイナイト相
が得られなくなり、球状化焼鈍後も炭化物が均一分散せ
ず、焼入性が低下する。従って、仕上温度を(Ar3変態点
-20℃)以上とする。
ため、圧延後の急冷(冷却)が必要である。冷却方法が
徐冷であると、オーステナイトの過冷度が小さく初析フ
ェライトが生成する。冷却速度が120℃/秒以下の場合、
初析フェライトの生成が顕著となるため、体積率20%を
超えるベイナイト相が得られなくなり、焼入性が低下す
るとともに、上記と同様、高い延性が得られず、r値も
向上しない。従って、圧延後の冷却速度を120℃/秒を超
える速度とする。なお、仕上圧延後、0.1秒を超え
1.0秒未満の時間内で急冷を開始することもできる。
場合、巻取りまでの冷却(徐冷)中あるいは巻取り後に
フェライトが生成するとともに、パーライトのラメラ間
隔が粗大化し、ベイナイト相の体積率が20%以下に低下
する。そのため、球状化焼鈍後に均一分散した微細炭化
物が得られなくなり焼入性が低下するとともに、上記と
同様、高い延性が得られず、r値も向上しない。従っ
て、圧延後の急冷(冷却)の冷却終了温度を620℃以下
とする。
ことで、ベイナイト相の体積率を70%以上となる。その
結果、球状化焼鈍の際、炭化物が一層微細に球状化し
て、焼入性が向上するとともに、フェライト粒が均一に
成長して延性が向上する。また、それに伴い[111]結晶
方位の集積を促進し、低い冷圧率でΔr値が低減すると
ともに平均r値が向上する。
初析フェライトが生じるとともに、パーライトのラメラ
間隔が大きくなり、体積率20%を超えるベイナイト相が
得られなくなる。そのため、焼鈍後の炭化物が粗大化し
て焼入性が劣化するとともに、十分な延性が得られず加
工性が低下し、Δr値が大きくなり、平均r値が低下す
る。従って、巻取温度を550℃未満とする。
により、ベイナイト相の体積率が70%以上となり、パー
ライトのラメラ間隔が小さくなる。その結果、冷間圧延
+焼鈍後の炭化物の分散状態が一層均一微細化し、極め
て優れた焼入性および加工性が得られ、同時に、低い冷
圧率でΔr値が低減するとともに平均r値が向上する。
なお、巻取温度の下限は特に規定しないが、低温になる
ほど鋼板の形状が劣化するため、200℃以上とすること
が好ましい。
間圧延前に熱延鋼板の焼鈍(中間焼鈍)を行うことが好
ましい。これは、炭化物の極微細球状化を行うことによ
り、冷間圧延後の焼鈍(最終焼鈍)における炭化物の均
一微細化と同時にフェライト粒を均一かつ十分に粒成長
させることができる。その結果、高い焼入性と延性を確
保し、[111]結晶方位の集積を促進し、低い冷圧率でΔ
r値が低減するとともに平均r値が向上する。
合、焼入性、Δrおよび平均r値については上記の効果
が多少得られるものの、炭化物の極微細球状化は不十分
となり、最終焼鈍後に極めて高い延性は得られない。一
方、中間焼鈍温度が680℃を超える場合、最終焼鈍後に
は炭化物平均粒径が0.5μm以上に粗大化するため焼
入れ性が低下し、さらに平均r値が上昇せず、Δrは大
きくなる。従って、冷間圧延前に熱延鋼板の焼鈍(中間
焼鈍)を行う場合は、焼鈍温度を580℃以上680℃以下の
範囲内とする。
残るとともに炭化物の球状化が不十分となり、延性と平
均r値が低下し、Δr値が増加する。従って、冷間圧延
時の圧下率は30%以上とする。上限は特に規定しない
が、圧延機への負荷を考慮して80%以下とすることが好
ましい。
平均r値、およびΔr値の観点から適性に制御すべき重
要な条件である。最終焼鈍温度が640℃未満の場合、炭
化物の球状化およびフェライト粒の粒成長が共に不十分
となるため延性が低い。また、中間焼鈍を行った場合で
も、フェライト粒が十分に粒成長しないため十分な延性
が得られない。さらに、[111]結晶方位の集積も不十分
となり、高い平均r値が得られず、Δr値が増大する。
化物平均粒径が0.5μm以上に粗大化するため焼入れ
性が低下し、さらにAc1変態点を超えた場合平均r値が
低下し、Δr値は大きくなる。従って、最終焼鈍温度
は、640℃以上720℃以下の範囲内とする。
は、例えば転炉、電気炉等により溶製される。鋼の成分
系としては、前述のJIS規格に基づき選定すればよい
が、それ以外の成分系でも、本発明の効果を損なわない
限り必要に応じて添加してもよい。例えばBの添加によ
り、本発明の面内異方性を損なうことなく、焼入れ性を
さらに向上させることができる。鋼片の製造は造塊-分
塊圧延法、連続鋳造法、薄スラブ鋳造法、ストリップ鋳
造法等のいずれの方法でもよい。
延する方法、連続鋳造後短時間の加熱処理を施す方法、
またはこの加熱工程を省略して直ちに圧延する方法のい
ずれでもよい。なお、優れた表面品質を付与するために
は、一次スケールのみならず熱間圧延中に生成する二次
スケールについても十分に除去することが好ましい。ま
た、熱間圧延中においては、バーヒーター等により加熱
を行ってもよい。
行われる焼鈍については、連続焼鈍、箱焼鈍のいずれで
もよく、その後必要に応じて調質圧延を行う。
C相当の成分系(質量%で、C:0.35%、Si:
0.21%、Mn:0.74%、P:0.015%、
S:0.005%、Al:0.031%)のスラブを連
続鋳造により製造し、このスラブを1100℃に加熱し
た後、表1に示す条件で熱間圧延および冷間圧延、焼鈍
を行い、板厚1.0mmの鋼板を作製した。
熱延板段階でのベイナイト相の体積率測定、炭化物粒径
測定および粒度分布測定、引張試験、焼入れ試験を行っ
た。
にてベイナイト相の体積率の測定を行った。
にてミクロ組織を撮影し、2500μm2の範囲から炭
化物の粒径および粒度分布の測定を行った。
向)、90°方向(C方向)に沿ってJIS5号試験片
を採取し、引張速度10mm/minで引張試験を行
い、各方向の引張特性を測定し、面内異方性を前述の式
(1)および(2)を用いて算出した。
で820℃に昇温し、10秒保持後に約20℃の油中へ
焼入れした。焼入れ後の試験片の表面における硬さをロ
ックウェルCスケール(HRC)で10点測定し、焼入
れ性を評価した。評価は平均硬さで行った。焼入れ性の
評価については、硬さ(HRC)50以上を合格とし
た。以上の試験の結果を表2に示す。
が34%以上、平均r値は1.20以上、Δr値は±0.15以
内、焼入れ後の硬さ(HRC)は50以上であり優れた特
性を示している。比較例では、鋼板No.6〜9は熱延鋼板
の組織のベイナイト相が体積率20%以下であり、鋼板N
o.10は中間焼鈍温度が高すぎたため、いずれも炭化物平
均粒径が0.5μm以上となっており、焼入れ後の硬さ
(HRC)が50に到達していない。鋼板No.8〜12は、
製造条件の一部が本発明範囲外であり、Δr値が±0.15
を超えており、平均r値も発明例に比べて低目である。
5C−CSP相当の成分系(質量%で、C:0.65
%、Si:0.20%、Mn:0.76%、P:0.0
13%、S:0.003%、Al:0.022%)のス
ラブを連続鋳造により製造し、このスラブを1100℃
に加熱した後、表3に示す条件で熱間圧延、冷間圧延、
焼鈍を行い、板厚1.0mmの鋼板を作製した。
して、熱延板段階でのベイナイト相の体積率測定、炭化
物粒径測定、粒度分布測定、引張試験、焼入れ試験を行
った。焼入れ性の評価については、硬さ(HRC)60
以上を合格とした。以上の結果を表4に示す。
件が本発明の範囲内であり、熱延板段階でのベイナイト
相の体積率が20%超、炭化物の粒径が0.5μm未満の
本発明例である。本発明例では、Elが32%以上、平均r
値は1.20以上、Δr値は±0.15以内、焼入れ後の硬さ
(HRC)は60以上であり優れた特性を示している。
〜21は熱延板段階でのベイナイト相の体積率が20%超、
炭化物の粒径が0.5μm以上で本発明の範囲外であ
る。そのため、焼入れ後の硬さ(HRC)が目標の60に到
達していない。鋼板No.18,20〜24は、製造条件の一部が
本発明範囲外であり、Δr値が±0.15を超えており、平
均r値も発明例に比べて低目である。
入れ性、延性、および深絞り性に優れ、かつ成形性に大
きな影響を及ぼす深絞り性の面内異方性が小さい高炭素
鋼板を得ることができる。したがって、本発明によって
得られた高炭素鋼板は、高い寸法精度が要求されるギア
部品等に供することができる。また、本発明を適用する
ことにより、ギア部品等を製造するに際して、鋼板の一
体成形および焼入れ焼戻し処理により製造することがで
き、従来の鋳造鍛造プロセスに比べて、安価に製造する
ことが可能となる。
Claims (6)
- 【請求項1】 C:0.2%〜1.5%、Si:0.10%〜0.35%、Mn:0.
1%〜0.9%、P:0.03%以下、S:0.035%以下、Cu:0.03%以
下、Ni:0.025%以下、Cr:0.3以下の成分系を有する高炭
素鋼板であって、炭化物平均粒径が0.5μm未満、さ
らにr値の面内異方性指数Δrが−0.15超〜0.1
5未満であり、平均r値が1.0以上であることを特徴
とする面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板。ただし、
Δrと平均r値は次の式で表される。 Δr=(r0−2r45+r90)/4 平均r値=(r0+2r45+r90)/4 ここで、r0、r45、r90は、それぞれ、圧延方向に対
し、0°方向(L方向)、45°方向(S方向)、90
°方向(C方向)のr値を示す。 - 【請求項2】 請求項1記載の成分系を有する高炭素鋼
を、熱間圧延により体積率20%以上のベイナイト相を
有する組織に組織制御し、この熱延鋼板を冷間圧延し、
球状化焼鈍により、請求項1記載の範囲内の炭化物平均
粒径、r値の面内異方性指数Δr、および平均r値とす
ることを特徴とする面内異方性の小さい加工用高炭素鋼
板の製造方法。 - 【請求項3】 仕上温度(Ar3変態点−20℃)以上
で熱間圧延を行った後、120℃/秒を超える冷却速度
で冷却終了温度620℃以下まで急冷し、次いで巻取温度
550℃未満で巻取り、得られた熱延鋼板を酸洗後、圧
下率30%以上の冷間圧延を行い、焼鈍温度640℃以上
720℃以下で焼鈍することを特徴とする請求項2記載
の面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 請求項2記載の面内異方性の小さい加工
用高炭素鋼板の製造方法において、体積率20%以上の
ベイナイト相を有する組織に代えて、体積率70%以上
のベイナイト相を有する組織とすることを特徴とする面
内異方性の小さい加工用高炭素鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 仕上温度(Ar3変態点−20℃)以上
で熱間圧延を行った後、120℃/秒を超える冷却速度
で冷却終了温度550℃以下まで急冷し、次いで巻取温度
500℃以下で巻取り、酸洗後、圧下率30%以上の冷間
圧延を行い、焼鈍温度640℃以上720℃以下で焼鈍
することを特徴とする請求項4記載の面内異方性の小さ
い加工用高炭素鋼板の製造方法。 - 【請求項6】 酸洗後の熱延鋼板を焼鈍温度580℃以
上680℃以下で焼鈍することを特徴とする請求項2な
いし請求項5記載の面内異方性の小さい加工用高炭素鋼
板の製造方法。
Priority Applications (1)
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