JP2001084938A - 透過形電子顕微鏡及び透過電子顕微鏡像観察方法 - Google Patents

透過形電子顕微鏡及び透過電子顕微鏡像観察方法

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JP2001084938A
JP2001084938A JP25847699A JP25847699A JP2001084938A JP 2001084938 A JP2001084938 A JP 2001084938A JP 25847699 A JP25847699 A JP 25847699A JP 25847699 A JP25847699 A JP 25847699A JP 2001084938 A JP2001084938 A JP 2001084938A
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transmission electron
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defocus
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Yoshifumi Taniguchi
佳史 谷口
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Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 球面収差の影響の無い試料像を実時間観察で
きる透過形電子顕微鏡を提供する。 【解決手段】 能動型画像処理に用いる重み関数の負の
部分を持ち上げ、全てのデフォーカス領域で正になるよ
うに重み関数を変更する。重み関数を適用するに当たっ
ては、アンダーフォーカス側からデフォーカスを変化さ
せるようにする。 【効果】 画像の引き算が不用となり、TVカメラやS
SCCDだけでなく、写真フィルムなど、どんな画像検
出手段によっても無球面収差像を撮影できるようにな
る。試料の高周波成分をまず再現するように処理を行
い、時間経過に従って試料の低周波成分が再現されるよ
うな処理に移行するため、損傷を受けやすくロードース
観察が必要な試料であっても能動型画像処理による無球
面収差観察ができるようになる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透過形電子顕微鏡
及びそれを用いた像観察方法に係り、特に、焦点位置に
変調を加えながら電子線像を観察・撮像することのでき
る透過形電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡像観察方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】透過形電子顕微鏡は、試料の微細構造を
電子線を使って直接観察する装置である。光学顕微鏡を
はるかに凌ぐ分解能を有し、原子レベルの構造解析を行
うことができる。医学・生物学分野や金属・半導体材料
分野において、今や無くてはならない装置となってい
る。ところが、電子顕微鏡像の拡大に一般に用いられる
磁界型電子レンズは、その回転対称性などによる制約事
項のため球面収差が残存し、球面収差が電子顕微鏡の分
解能を決めるもっとも大きなファクターとなっていた。
【0003】これまでにも球面収差を補正する試みは多
数あったが、そのうち実用段階にまで達している方法の
一つに、能動型画像処理(Y. Takai et al.: Proc. 14t
h Int. Congr. Electron Microsc., Cancun, Mexico, v
ol.1, (1998) pp.115-118)がある。これは透過形電子
顕微鏡のデフォーカス量Δfに変調を加えつつ画像積分
と画像処理を行うことにより球面収差の影響を除去する
方法である。試料の振幅成分に対する重み関数Wr(Δ
f)と位相成分に対する重み関数Wi(Δf)は、以下の
〔数1〕〔数2〕を使って求めている。下式においてλ
は電子線の波長、gは試料の空間周波数、Δfはデフォ
ーカス量、F(g)は透過形電子顕微鏡の実効的伝達関
数、γ(g,Δf)は波面収差関数、cosγ(g,Δf)とs
inγ(g,Δf)は透過形電子顕微鏡の振幅コントラスト
と位相コントラストの伝達関数である。
【0004】
【数1】
【0005】
【数2】
【0006】加速電圧80kV、球面収差係数(Cs)
0.85mmの透過形電子顕微鏡における位相コントラ
スト伝達関数(Phase Contrast Transfer Function)と
実効的伝達関数(Effective Transfer Function)の例
を図2に示す。図2(a)は位相コントラスト伝達関数
sinγ(g,Δf)の例であり、図2(b)は実効的伝達
関数F(g)の例である。図2(a)のデフォーカス量は
シェルツァーフォーカスと呼ばれるデフォーカス量で、
この場合1.2(Cs・λ)1/2=70nmである。
【0007】図3に、位相成分に対する重み関数の例と
振幅成分に対する重み関数の例を示す。図3(a)は位
相成分に対する重み関数Wi(Δf)の例、図3(b)は
振幅成分に対する重み関数Wr(Δf)の例である。実際
の処理像J(g)は、電子顕微鏡像I(Δf)を重み関数W
i(Δf)又はWr(Δf)で画像積分することによって得
られる。すなわち、次の〔数3〕のようになる。
【0008】
【数3】
【0009】上記〔数3〕において、W(Δf)はWi
(Δf)又はWr(Δf)である。〔数3〕では空間周波数
で記述しているが、実際の画像積分処理は実空間で行わ
れる。従って、この方式は本質的に高速処理に適した方
法である。W(Δf)としてWi(Δf)を用いると処理像
J(g)は試料の位相像となり、W(Δf)としてWr(Δ
f)を用いると処理像J(g)は試料の振幅像となる。
【0010】前述したY. Takai et al.による能動型画
像処理では、それぞれのデフォーカス量における画像に
重みを乗算するのではなく、画像を撮影する時間を長く
したり短くしたりすることにより重み付けを行ってい
る。撮影時間が重みの大きさに比例するように、一枚の
画像を撮影するときに連続的にデフォーカス量を変化さ
せるとともにデフォーカス量の変化速度を調整すること
により、重み関数に従って画像積分された処理像が得ら
れる。このような制御方法を滞在時間方式の重み付けと
呼ぶ。但し、重み関数W(Δf)を正の部分と負の部分と
に分解し、重み関数W(Δf)の正の部分を用いた処理像
と負の部分を用いた処理像とをそれぞれ別のフレームに
記録し、それらを引き算回路を通すことにより最終像を
得ている。
【0011】さらに彼らは、高速にデフォーカス量を制
御するために透過形電子顕微鏡の加速電圧に変調を加え
る方式を採用した。これは、対物レンズの色収差によ
り、加速電圧の変化量とデフォーカスの変化量とが比例
するという現象を利用している。透過形電子顕微鏡で通
常用いられている高圧電源には安定化回路が入ってお
り、高速な応答には適さないので、高圧電源と電子銃を
透過形電子顕微鏡の鏡体から電気的に絶縁し、その間に
電圧を印加する方式が開発された(浮遊形高圧電源:木
村吉秀他、日本学術振興会マイクロビームアナリシス、
第141委員会、第97回研究会資料No.1136
(11.5.20〜21))。この浮遊形高圧電源によ
り、TVカメラのフレーム時間相当で処理が完結するよ
うになった。
【0012】図4と図5に、滞在時間方式の重み付けに
基づくデフォーカス量変調関数の例を示す。図4及び図
5の横軸は時間であり、縦軸はデフォーカス量Δfであ
る。横軸のフルスケールは30分の1秒である。図4は
位相成分に対する変調関数を表し、(a)は重み関数の
うち正の部分に相当する変調関数、(b)は重み関数の
うち負の部分に相当する変調関数である。図5は振幅成
分に対する変調関数を表し、(a)は重み関数のうち正
の部分に相当する変調関数、(b)は重み関数のうち負
の部分に相当する変調関数である。浮遊型の高圧電源を
用いて、図4(a)及び(b)あるいは図5(a)及び
(b)に示した変調関数に従ってデフォーカス量Δfに
高速に変調を加え、実時間観察を実現している。
【0013】透過形電子顕微鏡の応用分野の一つとし
て、蛋白質のように電子線照射に非常に弱い試料の構造
解析がある。これらの試料は、損傷を低減するために液
体窒素温度や液体ヘリウム温度の極低温に凍結する必要
がある。しかも、できるだけ電子線を照射しないような
観察シーケンス(ロードース観察)で撮影しなければな
らない。
【0014】また、透過形電子顕微鏡にエネルギーフィ
ルタといわれるエネルギー分析機能を付加し、コントラ
ストを上げたり元素の分布像を求めたりすることが盛ん
に行われるようになっている(Energy-Filtering Trans
mission Electron Microscopy, L. Reimer Ed. Springe
r-Verlag Berlin 1995)。上記したロードース観察で
は、非弾性散乱によるバックグラウンドが多くコントラ
ストが低いので、エネルギーフィルタを組み合わせた観
察方法が始まってきた(C. Toyoshima et al.: Hitachi
Instrument News, vol.33 (1998) pp.3-7)。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の能動型
画像処理による球面収差補正では、以下のような問題点
があった。 前記〔数1〕〔数2〕で表される重み関数
は正負の値を持つので、素子そのものに引き算機能の無
いTVカメラでは重み関数を正の部分と負の部分に分
け、重み関数の正の部分だけによる積分像と負の部分だ
けによる積分像を別々に求め、それらの引き算を行って
最終像を求める必要がある。また、2枚の積分像の画像
間演算を行うので、基本的に位置ずれがあってはいけな
い。高速に処理できる場合は試料のドリフトは無視でき
るが、SSCCD(slow scan CCD)で撮影する場合の
ように一枚の画像を撮影するのに数秒かかる場合には注
意が必要である。更に、画像引き算を行うことができる
ように、撮像手段はTVカメラやSSCCDのようなデ
ジタル化できる素子でなければならず、写真フィルムで
は処理が困難であった。
【0016】NTSC方式のような一般のTVカメラを
用いた場合、ある画素に対応する電荷蓄積時間は、読み
出し時刻までの1/30秒間である。従って、正負の変
調信号を1フレーム毎に交互にかけただけでは正負の重
みが混ざってしまう。前述したY. Takai et al.による
能動型画像処理では正負の変調信号を2フレームずつか
けることにより対策している。結局、実際の処理像を得
るのに4/30秒かかる上、2ビデオフレーム分の像が
無駄になってしまう。
【0017】高周波成分を再現するのはΔfの大きい領
域であり、Δfの大きい領域は正の部分と負の部分両方
にある。正の部分の積分像と負の部分の積分像の獲得に
時間差が生じ、ロードース観察するような試料では損傷
が発生し、それぞれの積分像に記録されている試料に変
化が生じている可能性がある。
【0018】また、加速電圧に変調を加える方法による
能動型画像処理法にエネルギーフィルタを組み合わせる
と、デフォーカス像はエネルギー選択スリットによって
カットされてしまいデフォーカス像を得ることができな
い。本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決
し、引き算の必要の無い無球面収差像を実時間観察でき
る透過形電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡像観察方法を
提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明では、能動型画像処理に用いる重み関数
の負の部分を持ち上げ、全てのデフォーカス領域で正に
なるように重み関数を変更する。このような構成によれ
ば、画像の引き算が不用になり、TVカメラやSSCC
Dだけでなく、写真フィルムなど、どんな画像検出手段
によっても無球面収差像を撮影できるようになる。さら
に、TVカメラでは1/30秒で処理が完結し、より実
時間処理が可能になる。
【0020】重み関数を適用するに当たっては、Δfの
大きい側(アンダーフォーカス側)からデフォーカスを
変化させるようにする。このような構成によれば、試料
の高周波成分をまず再現するように処理が行われ、時間
経過に従って試料の低周波成分が再現されるような処理
に移行するので、損傷を受けやすくロードース観察が必
要な試料であっても能動型画像処理による無球面収差観
察ができるようになる。
【0021】デフォーカス変調は、例えば、対物レンズ
電流を変化させることにより実現する。このような構成
によれば、SSCCDや写真フィルムのように時間をか
けて記録できるような手段で撮影できるようになる。ま
た、対物レンズ近辺に設けたミニレンズを励起させるこ
とによりデフォーカス変調を実現する。このような構成
によれば、実時間で撮影できるようになる。
【0022】エネルギーフィルタを用いる場合には、エ
ネルギーフィルタを透過形電子顕微鏡の鏡体から絶縁
し、加速電圧に加える変調と同じ電圧を印加する。この
ような構成によれば、加速電圧の変調に伴って電子線の
エネルギーが変化してもエネルギーフィルタ内部では基
準加速電圧に戻り、エネルギー選択スリットでカットさ
れることがなくなる。
【0023】すなわち、本発明による透過形電子顕微鏡
は、電子銃と、電子銃から射出された電子線を加速する
加速電源と、加速された電子線を試料に照射する集束レ
ンズ系と、試料の拡大された電子線像を形成する結像光
学系と、結像光学系のデフォーカス量Δfを予め定めら
れた重み関数W(Δf)に従って変化させるデフォーカス
制御手段とを備え、デフォーカス量がΔfのときの試料
の透過電子顕微鏡像をI(g,Δf)とするとき、次式
〔数4〕
【0024】
【数4】
【0025】で表される画像積分を行った処理像J(g)
を得る透過形電子顕微鏡において、デフォーカス制御手
段は、透過形電子顕微鏡の電子線の波長をλ、実効的伝
達関数をF(g)、振幅コントラストの伝達関数をcosγ
(g,Δf)、位相コントラストの伝達関数をsinγ(g,
Δf)、任意の重み関数をE.F.(Δf)として、全ての
Δfの範囲で非負である下記〔数5〕の関数Wr′(Δ
f)又はWi′(Δf)を重み関数W(Δf)として用いる
ことを特徴とする。
【0026】
【数5】
【0027】画像積分を行った処理像は、TVカメラ等
の撮像手段、SSCCDあるいは写真フィルム等によっ
て得ることができる。本発明による透過形電子顕微鏡
は、更にデフォーカス制御手段において重み関数W(Δ
f)として関数E.F.(Δf)を用いて
【0028】
【数6】
【0029】で表される画像積分を行った処理像J′
(g)を取得し、J(g)−J′(g)なる演算を行って試料
像を得ることを特徴とする。関数E.F.(Δf)は
【0030】
【数7】
【0031】に基づいて決定するのが好ましい。すなわ
ち、上式をそのまま関数E.F.(Δf)として用いて
もよいが、Wr(Δf)とWi(Δf)の最小値(おそ
らく負の値になる)の絶対値で与えられる一定値や、正
規分布などのようにΔfに関して滑らかに単調増加した
後、滑らかに単調減少する関数を関数E.F.(Δf)
として用いてもよい。デフォーカス制御手段は、撮影時
間が重みの大きさに比例するように設定されたデフォー
カス変調信号を加速電源、結像光学系の励磁電流又は試
料に印加することで、結像光学系のデフォーカス量Δf
を予め定められた重み関数W(Δf)に従って変化させる
ことができる。
【0032】前述の透過形電子顕微鏡において、当該透
過形電子顕微鏡と電気的に絶縁されていて試料透過後の
電子線をエネルギー分光するためのエネルギーフィルタ
と、エネルギーフィルタによってエネルギー分光された
電子線のうち特定のエネルギーを有する電子線のみを選
択するエネルギー選択手段とを更に備え、デフォーカス
制御手段は、撮影時間が重みの大きさに比例するように
設定されたデフォーカス変調信号によって加速電圧を変
調するとともに当該デフォーカス変調信号をエネルギー
フィルタにも印加するようにすることができる。
【0033】デフォーカス変調信号をエネルギーフィル
タにも印加することにより、加速電圧の変調に伴って電
子線のエネルギーが変化しても、エネルギーフィルタ内
部では基準加速電圧に戻り、エネルギー選択スリットで
カットされなくなるため、加速電圧変調によるデフォー
カス変調方式とエネルギーフィルタとの組み合わせが可
能となる。エネルギーフィルターを用いることで、試料
像のコントラストを向上したり元素の分布像を求めたり
することが可能となる。
【0034】デフォーカス制御手段はデフォーカス変調
信号をアンダーフォーカス側から印加するのが好まし
い。このことで、試料の高周波成分をまず再現するよう
に処理が行われ、時間経過に従って試料の低周波成分が
再現されるような処理に移行するので、ロードース観察
の必要な試料であっても能動型画像処理による無球面収
差観察ができるようになる。
【0035】また、本発明による透過電子顕微鏡像観察
方法は、試料の空間周波数をg、透過形電子顕微鏡の結
像光学系のデフォーカス量をΔf、デフォーカス量がΔ
fのときの試料の透過電子顕微鏡像をI(g,Δf)とす
るとき、結像光学系のデフォーカス量Δfを予め設定さ
れた重み関数W(Δf)に従って変化させ、前記〔数4〕
で表される画像積分を行って処理像J(g)を得る透過電
子顕微鏡像観察方法において、透過形電子顕微鏡の電子
線の波長をλ、実効的伝達関数をF(g)、振幅コントラ
ストの伝達関数をcosγ(g,Δf)、位相コントラスト
の伝達関数をsinγ(g,Δf)、任意の重み関数をE.
F.(Δf)として、全てのΔfの範囲で非負である前記
〔数5〕の関数Wr′(Δf)又はWi′(Δf)を前記重
み関数W(Δf)とすることを特徴とする。
【0036】本発明による透過電子顕微鏡像観察方法
は、更に重み関数W(Δf)として関数E.F.(Δf)を用
いて前記〔数6〕で表される画像積分を行った処理像
J′(g)を取得し、J(g)−J′(g)なる演算を行って
試料像を得ることを特徴とする。関数E.F.(Δf)は前
記〔数7〕に基づいて決定するのが好ましい。すなわ
ち、上式をそのまま関数E.F.(Δf)として用いて
もよいが、Wr(Δf)とWi(Δf)の最小値(おそ
らく負の値になる)の絶対値で与えられる一定値や、正
規分布などのようにΔfに関して滑らかに単調増加した
後、滑らかに単調減少する関数を関数E.F.(Δf)
として用いてもよい。
【0037】前述の透過電子顕微鏡像観察方法におい
て、試料透過後の電子線を透過形電子顕微鏡から電気的
に絶縁され透過形電子顕微鏡に印加するデフォーカス変
調信号と同等の変調信号が印加されたエネルギーフィル
タを通してエネルギー分光し、エネルギー分光された電
子線を用いて試料の透過電子顕微鏡像をI(g,Δf)を
形成するようにしてもよい。デフォーカス量Δfは、ア
ンダーフォーカス側からオーバーフォーカス側に向けて
変化させるのが好ましい。
【0038】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を詳細に説明する。図1に、本発明による透過
形電子顕微鏡のブロック図を示す。1は本発明による透
過形電子顕微鏡である。電子銃2から出射された電子線
16は、集束レンズ系3により集束されて試料8に照射
される。試料8を透過した電子線16は、対物レンズ
4、中間レンズ系5、投影レンズ系6により拡大結像さ
れ、蛍光板13上に像を形成する。蛍光板13を持ち上
げることにより写真フィルム14で像を記録することも
できる。また、写真フィルム14も光軸から外しておく
ことで、TVカメラ15で観察することができる。電子
銃2と高圧電源22は透過形電子顕微鏡1と電気的に絶
縁されており、浮遊形高圧電源33となっている。
【0039】制御コンピュータ20が変調信号発生器2
1に指示することで、変調信号発生器21は、浮遊形高
圧電源33の変調電源や偏向コイル7のコイル電流、あ
るいは対物レンズ4やミニレンズ9の励磁電流に変調を
加える。ミニレンズ9は、対物レンズ4内に設けられた
デフォーカス変調のために用いられるレンズである。T
Vカメラ15で撮影した透過形電子顕微鏡像の画像信号
30は、画像処理装置23に送られ処理される。クロッ
ク発生回路24は同時に画像信号30を解析してクロッ
ク信号32を発生し、変調信号31を伝達するためのタ
イミングを与える。最終像はCRT25上に表示され
る。また、最終像はVTRなどの画像記録系26に保存
することもでき、制御コンピュータ20に戻して画像の
ファイリングを行うこともできる。
【0040】ここで、変調信号31は以下のような信号
とする。図3に示したような重み関数にある包絡関数を
加算し、負の部分が無いようにする。ここでは、重み関
数に含まれる正弦関数の直交性を利用して包絡関数E.
F.(Δf)を〔数8〕のように決める。
【0041】
【数8】
【0042】図6に、図3に示した重み関数に対応する
包絡関数を示す。この関数を用いると、次の〔数9〕
〔数10〕のように、重み関数Wi(Δf),Wr(Δf)
を非負の関数Wi’(Δf),Wr’(Δf)を用いて表現
することができる。
【0043】
【数9】
【0044】
【数10】
【0045】図7に、負の部分がない前記関数Wi’
(Δf),Wr’(Δf)の例を示す。図7(a)が位相成
分に対する非負の関数Wi’(Δf)の例、図7(b)が
振幅成分に対する非負の関数Wr’(Δf)の例である。
能動型画像処理は実空間における画像積分で処理が完結
するので前記〔数1〕や〔数2〕に示す重み関数に基づ
いて処理を行っても、前記〔数9〕や〔数10〕に示す
非負の関数に基づいて処理を行って、E.F.(Δf)を後
で引き算しても本質的に等価な処理を行っていることに
なる。
【0046】さらに非負の関数Wi’(Δf),Wr’
(Δf)を滞在時間方式の重み付けに基づくデフォーカス
変調関数に変換すると、図8のようになる。図8(a)
は位相成分に対するデフォーカス変調関数、図8(b)
は振幅成分に対するデフォーカス変調関数である。変調
信号発生器21は、このデフォーカス変調関数に従って
浮遊形高圧電源33の変調電源や偏向コイル7のコイル
電流、あるいは対物レンズ4やミニレンズ9の励磁電流
に変調を加え、デフォーカス量を時間とともに変化させ
る。図9は、図6に示した包絡関数に対応するデフォー
カス変調関数である。
【0047】ここで、図6に示した包絡関数を詳細に検
討すると、この包絡関数は、0から始まり、ほぼ単調に
増加して最大値を迎え、若干振動しながらもほぼ単調に
減少して0となる形状をしている。若干の振動を無視す
れば、この包絡関数による画像積分は、焦点深度拡大処
理と同等であり、透過形電子顕微鏡のようなコヒーレン
ト照明下では高帯域の空間周波数成分を除去する効果が
あることがわかる。すなわち、この包絡関数で画像積分
して得られる画像は低帯域の空間周波数成分のみの画像
となり、試料像の大きな構造を表すに過ぎず、試料の細
かい構造の情報は含まれない。
【0048】逆の言い方をすれば、重要な微細構造の情
報、つまり有効な画像情報はすべて非負の関数Wi’
(Δf)又はWr’(Δf)による画像積分によって再生さ
れ、包絡関数E.F.(Δf)による処理像は最終像のバッ
クグラウンドを再生するために必要であるに過ぎない。
デフォーカス変調信号として非負の関数Wi’(Δf)又
はWr’(Δf)に基づく処理を周期的に繰り返すだけ
で、有効な画像情報が得られることになる。このため、
前述したY. Takai et al. による能動型画像処理のよう
に、2種類のデフォーカス変調信号を2フレームずつ繰
り返す必要と、1フレーム毎に画像を廃棄する無駄が無
くなる。
【0049】最終像のバックグラウンドの減算が必要で
あれば、非負の関数Wi’(Δf)又はWr’(Δf)で処
理を行った後、包絡関数E.F.(Δf)による処理を行
い、画像間演算をすれば良い。TVカメラを用いる場
合、Y. Takai et al. による能動型画像処理のように2
フレーム繰り返す必要があるが、包絡関数E.F.(Δf)
による処理には微細構造の情報が含まれず、基本的にバ
ックグラウンドを再生するだけなので位置ずれの影響は
少ない。
【0050】本発明によるとデフォーカス変調信号が1
種類で良いので、画像を獲得するデバイスは何であって
も構わない。TVカメラであれば、1フレーム内にデフ
ォーカス変調信号を印加すればよい。SSCCDや写真
フィルムなどであれば、露光時間内でデフォーカス変調
信号が完了するようにしてもよい。複数回変調させても
よい。
【0051】デフォーカス量を変化させる方法として
は、(a)対物レンズ電流に変調を加える方法、(b)
加速電圧に変調を加える方法、(c)試料に電圧を印加
する方法など、いくつかの方法が考えられる。対物レン
ズ電流に変調を加える方法は、透過形電子顕微鏡では最
も一般的なデフォーカス変調法なので、装置を改造する
作業は最も少なくてすむ。しかし、対物レンズコイルの
特性により、この方法では高速な変調は困難である。高
速な変調が可能な方法としては、加速電圧に変調を加え
る方法、ミニレンズ9を用いる方法、試料に電圧を印加
する方法が有利である。
【0052】加速電圧に変調を加えてデフォーカス量を
変化させる場合、図1に示される変調信号発生器21に
より浮遊形高圧電源33に、例えば図8(a)あるいは
図8(b)に示されるようなデフォーカス変調信号及び
図9に示されるようなデフォーカス変調信号を印加す
る。加速電圧に変調を加える方法は、対物レンズの色収
差により焦点距離が変化する特性を利用する。色収差係
数をCc、加速電圧の変化量をΔE、基準の加速電圧を
Eoとすると、デフォーカス変化量Δfは次式〔数1
1〕で与えられ、ΔfとΔEが比例している。加速電圧
を高める方向(ΔE>0)に変化させると、相対的に対
物レンズの強さが弱まる方向になるのでアンダーフォー
カスとなる。
【0053】
【数11】Δf=Cc・ΔE/Eo
【0054】ミニレンズ9を用いてデフォーカス量を変
化させる場合、図1に示される変調信号発生器21によ
りミニレンズ9に、例えば図8(a)あるいは図8
(b)に示されるようなデフォーカス変調信号及び図9
に示されるようなデフォーカス変調信号を印加する。ミ
ニレンズ9を用いる方式では、はじめにミニレンズ9に
電流を少しだけ流しておき、通常の操作方法に従って対
物レンズ4で焦点合わせを行う。ミニレンズ9に流す電
流が0の時で、最もアンダーフォーカスの状態が得られ
るようにしておく必要がある。次に対物レンズ電流値は
一定にしておき、ミニレンズ9に変調信号発生器21か
ら変調の加わった電流を流す。こうすることで、ミニレ
ンズ9に流す電流値に比例したデフォーカスが得られる
ようになる。ミニレンズ9のコイル巻数は対物レンズ4
のコイル巻数よりも少ないので、対物レンズ電流に変調
を加える方式よりも高速な応答に耐えうる。
【0055】試料に電圧を印加してデフォーカス量を変
化させる方式では、試料8を透過形電子顕微鏡1の鏡体
から電気的に絶縁しておく。これは電子顕微鏡用のアク
セサリーとして既に一般的に市販されている試料加熱ホ
ルダーや試料冷却ホルダーなどの技術を利用することが
できる。そして、図1に示される変調信号発生器21に
より試料ホルダーに、例えば図8(a)あるいは図8
(b)に示されるようなデフォーカス変調信号及び図9
に示されるようなデフォーカス変調信号を印加する。デ
フォーカスの変化量は試料に印加する電圧に比例する。
【0056】電子線照射に弱い試料には、電子線照射が
始まった瞬間からダメージが発生する。このダメージは
主に細かい構造が破壊されることから始まり、照射が続
くに従って大きな構造にまで破壊が及ぶと考えられる。
すなわち、細かい構造に関する情報からを記録を開始す
ることができれば、ダメージの影響が少なく記録できる
ことになる。本発明による観察方法において、図7に示
した重み関数のアンダーフォーカス側(Δfがプラスの
側)から変調信号を印加すれば、ダメージの影響が少な
い像が得られる。この場合の滞在時間方式の重み付けに
基づくデフォーカス変調関数は、例えば図10のように
なる。図10(a)は位相成分に対するデフォーカス変
調関数、図10(b)は振幅成分に対するデフォーカス
変調関数であり、これらは図8に示したデフォーカス変
調関数を時間軸に対して反転した信号に相当する。こう
することにより、試料の細かい構造が時間的に優先して
再生され、順に大きな構造が再生されていく。バックグ
ラウンド補正のためのE.F.(Δf)による処理は、細か
い構造が含まれないので、試料ダメージによる影響は少
なく、Wi’(Δf)又はWr’(Δf)による処理像から
その後撮像したE.F.(Δf)による処理像を画像間減算
することで問題はない。
【0057】また、電子線照射に弱い試料に対しては図
11に示す手順に従ってロードース観察を行う。まず、
図11(a)に示すように、電子線16を弱くして低倍
率で試料8を観察し、観察対象物17を探す。次に図1
1(b)に示すように、倍率を上げ、観察対象物17以
外の場所ででフォーカスを合わせる。この時、フォーカ
スを合わせることができる程度に電子線16の強度を高
めても良い。また、電磁偏向コイル7を使ってフォーカ
スを合わせる場所を光軸上に移動させること(イメージ
シフト)が多い。次に図11(c)に示すように、撮影
倍率にしてイメージシフトを解除し、撮影を開始する。
この方法によれば、観察対象物17に電子線16が照射
されている時間は、撮影に関する露光時間と図11
(a)に示す視野探しの時だけである。視野探しの時は
電子線16を弱くしているので、試料8が損傷を受ける
ことはほとんどない。
【0058】次に、エネルギーフィルタの利用について
説明する。図12に、エネルギーフィルタを組み込んだ
本発明による透過形電子顕微鏡のブロック図を示す。図
12において、図1と同じ機能部分には図1と同じ符号
を付し、重複する説明を省略する。図12に示した透過
形電子顕微鏡40は、中間レンズ系5と投影レンズ系6
の間にエネルギーフィルタ10及びエネルギー選択スリ
ット12が挿入され、変調信号発生器21からエネルギ
ーフィルタ10に変調信号が印加されるようになってい
る点で図1に示した透過形電子顕微鏡と相違している。
【0059】試料8でエネルギーを失った電子線は、試
料8の元素の種類や原子間結合状態などの物性情報を担
っているが、通常の電子顕微鏡像ではコントラストを下
げる一因となっている。エネルギーフィルタ10と組み
合わせることにより、試料8でエネルギーを失った電子
線を除去することができ、コントラストを向上させるこ
とができる。コントラストを向上させるためにエネルギ
ーフィルタ10と組み合わせる場合、デフォーカス量を
変化させる方法としては対物レンズ4内のミニレンズ9
によるデフォーカス変調や試料に変調電圧を印加する方
式が有効である。ただし、エネルギーフィルタ10を透
過形電子顕微鏡40の鏡体から電気的に絶縁し、変調信
号発生器21から浮遊形高圧電源33にデフォーカス変
調信号を印加するとともに、浮遊形高圧電源33に印加
する変調信号と同じ信号をエネルギーフィルタ10に印
加しても同様の効果が得られる。エネルギーフィルタ1
0全体を電気的に絶縁してもよいし、電子線の軌道を含
むドリフトチューブのみを絶縁してもよい。
【0060】図13に、ドリフトチューブ11を用いた
エネルギーフィルタ10の例(T. Oikawa et al.: J. E
lectron Microsc., Vol.18, (1985) pp.159-164)を示
す。図13には、エネルギーフィルタ10の部分だけを
図示してある。エネルギーフィルタ10に用いられる扇
形磁極34は、電子線16を予め設定された半径で偏向
するように励磁される。エネルギーフィルタ10は複数
の扇形磁極34やシールド磁極35を組み合わせること
により構成される。ドリフトチューブ11は扇形磁極3
4が真空外に配置されるように配置され、電子線16は
ドリフトチューブ11の内部を通過する。
【0061】エネルギーフィルタ10全体もしくはドリ
フトチューブ11を電子顕微鏡40の鏡体から電気絶縁
した場合は、以下のようにして加速電圧変調とエネルギ
ーフィルタ10を両立させる。通常の状態では、エネル
ギーフィルタ10は基準の加速電圧Eoに対して軸調整
が行われている。すなわちエネルギー選択スリット12
を光軸上に挿入すると、試料8でエネルギーを失わなか
ったゼロロス電子だけが最終画像に寄与する。試料8で
特定のエネルギー(ΔE1)を失った電子線だけを選択
するには、基準の加速電圧EoにΔE1を重畳する。こ
の時、試料8で特定のエネルギー(ΔE1)を失った電
子線は試料8通過後にエネルギーがEoに戻るので、エ
ネルギー選択スリット12を通過することになるからで
ある。
【0062】ゼロロス電子だけの像を観察しているとき
に、加速電圧変調により加速電圧EoがΔEだけ変化す
ると、ゼロロス電子のエネルギーがEo+ΔEとなるの
で、エネルギー選択スリット12を通らなくなってしま
う。そこで、加速電圧に重畳した電圧ΔEと等しい電圧
をエネルギーフィルタ10全体、もしくはドリフトチュ
ーブ11に印加する。すると、エネルギーフィルタ10
内部、もしくはドリフトチューブ11内部では、ゼロロ
ス電子のエネルギーはEoと等価となり、エネルギー選
択スリット12を通過できるようになる。エネルギーフ
ィルタ10との組合せは、エネルギーフィルタ10の方
式に依存しない。インカラム型のエネルギーフィルタで
あっても、ポストカラム型のエネルギーフィルタであっ
ても、また、エネルギーフィルタ内の軌道の形状によら
ず同様の効果が得られる。
【0063】
【発明の効果】上記したように、本発明によれば、透過
形電子顕微鏡の球面収差の影響を除去した像がTVカメ
ラやSSCCDだけでなく、写真フィルムなど、どの様
な画像検出手段によってでも撮影できるようになる。さ
らに、TVカメラでは1/30秒で処理が完結し、より
実時間処理が可能になる。また、アンダーフォーカス側
からデフォーカスを変化させることにより、試料の高周
波成分をまず再現するように処理が行われ、時間経過に
従って試料の低周波成分が再現されるような処理に移行
するので、ロードース観察の必要な試料であっても能動
型画像処理による無球面収差観察ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による透過形電子顕微鏡のブロック図。
【図2】能動型画像処理における(a)位相コントラス
ト伝達関数と(b)実効的伝達関数の例を示す図。
【図3】能動型画像処理における(a)位相成分に対す
る重み関数と(b)振幅成分に対する重み関数の例を示
す図。
【図4】位相成分に対する滞在時間方式の重み付けに基
づくデフォーカス量変調関数の例を示す図であり、
(a)は重み関数のうち正の部分に相当する変調関数の
例、(b)は重み関数のうち負の部分に相当する変調関
数の例を示す図。
【図5】振幅成分に対する滞在時間方式の重み付けに基
づくデフォーカス量変調関数の例を示す図であり、
(a)は重み関数のうち正の部分に相当する変調関数の
例、(b)は重み関数のうち負の部分に相当する変調関
数の例を示す図。
【図6】重み関数の包絡関数の例を示す図。
【図7】本発明による(a)位相成分に対する重み関数
と(b)振幅成分に対する重み関数の例を示す図。
【図8】本発明による滞在時間方式の重み付けに基づく
デフォーカス量変調関数の例を示す図であり、(a)は
位相成分に対するデフォーカス変調関数の例、(b)は
振幅成分に対するデフォーカス変調関数の例を示す図。
【図9】包絡関数に対する滞在時間方式の重み付けに基
づくデフォーカス量変調関数の例を示す図。
【図10】アンダーフォーカス側から変調信号を印加す
る滞在時間方式の重み付けに基づくデフォーカス変調関
数の例を示す図であり、(a)は位相成分に対するデフ
ォーカス変調関数の例、(b)は振幅成分に対するデフ
ォーカス変調関数の例を示す図。
【図11】ロードース観察の撮影シーケンスを説明する
図。
【図12】エネルギーフィルタ電子顕微鏡に適用した場
合のブロック図。
【図13】エネルギーフィルタの例を示す図。
【符号の説明】 1…透過形電子顕微鏡、2…電子銃、3…集束レンズ
系、4…対物レンズ、5…中間レンズ系、6…投影レン
ズ系、7…偏向コイル、8…試料、9…ミニレンズ、1
0…エネルギーフィルタ、11…ドリフトチューブ、1
2…エネルギー選択スリット、13…蛍光板、14…写
真フィルム、15…TVカメラ、16…電子線、17…
観察対象物、20…制御コンピュータ、21…変調信号
発生器、22…高圧電源、23…画像処理装置、24…
クロック信号発生器、25…CRT、26…画像記録
系、30…画像信号、31…変調信号、32…クロック
信号、33…浮遊形高圧電源、34…扇形磁極、35…
シールド磁極、40…透過形電子顕微鏡

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子銃と、前記電子銃から射出された電
    子線を加速する加速電源と、加速された電子線を試料に
    照射する集束レンズ系と、試料の拡大された電子線像を
    形成する結像光学系と、前記結像光学系のデフォーカス
    量Δfを予め定められた重み関数W(Δf)に従って変化
    させるデフォーカス制御手段とを備え、デフォーカス量
    がΔfのときの試料の透過電子顕微鏡像をI(g,Δf)
    とするとき、 で表される画像積分を行った処理像J(g)を得る透過形
    電子顕微鏡において、前記デフォーカス制御手段は、透
    過形電子顕微鏡の電子線の波長をλ、実効的伝達関数を
    F(g)、振幅コントラストの伝達関数をcosγ(g,Δ
    f)、位相コントラストの伝達関数をsinγ(g,Δf)、
    任意の重み関数をE.F.(Δf)として、全てのΔfの範
    囲で非負である下記の関数Wr′(Δf)又はWi′(Δ
    f)を前記重み関数W(Δf)として用いることを特徴と
    する透過形電子顕微鏡。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の透過形電子顕微鏡におい
    て、前記デフォーカス制御手段は前記重み関数W(Δf)
    として前記関数E.F.(Δf)を用いて で表される画像積分を行った処理像J′(g)を取得し、
    J(g)−J′(g)なる演算を行って試料像を得ることを
    特徴とする透過形電子顕微鏡。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の透過形電子顕微鏡
    において、前記関数E.F.(Δf)は に基づいて決定されることを特徴とする透過形電子顕微
    鏡。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項記載の透過
    形電子顕微鏡において、前記デフォーカス制御手段は、
    撮影時間が重みの大きさに比例するように設定されたデ
    フォーカス変調信号を前記加速電源、前記結像光学系の
    励磁電流又は試料に印加することを特徴とする透過形電
    子顕微鏡。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれか1項記載の透過
    形電子顕微鏡において、当該透過形電子顕微鏡と電気的
    に絶縁されていて試料透過後の電子線をエネルギー分光
    するためのエネルギーフィルタと、前記エネルギーフィ
    ルタによってエネルギー分光された電子線のうち特定の
    エネルギーを有する電子線のみを選択するエネルギー選
    択手段とを更に備え、前記デフォーカス制御手段は、撮
    影時間が重みの大きさに比例するように設定されたデフ
    ォーカス変調信号によって加速電圧を変調するとともに
    当該デフォーカス変調信号をエネルギーフィルタにも印
    加することを特徴とする透過形電子顕微鏡。
  6. 【請求項6】 請求項4又は5記載の透過形電子顕微鏡
    において、前記デフォーカス制御手段は前記デフォーカ
    ス変調信号をアンダーフォーカス側から印加することを
    特徴とする透過形電子顕微鏡。
  7. 【請求項7】 試料の空間周波数をg、透過形電子顕微
    鏡の結像光学系のデフォーカス量をΔf、デフォーカス
    量がΔfのときの試料の透過電子顕微鏡像をI(g,Δ
    f)とするとき、前記結像光学系のデフォーカス量Δf
    を予め設定された重み関数W(Δf)に従って変化させ、 で表される画像積分を行って処理像J(g)を得る透過電
    子顕微鏡像観察方法において、 透過形電子顕微鏡の電子線の波長をλ、実効的伝達関数
    をF(g)、振幅コントラストの伝達関数をcosγ(g,Δ
    f)、位相コントラストの伝達関数をsinγ(g,Δf)、
    任意の重み関数をE.F.(Δf)として、全てのΔfの範
    囲で非負である下記の関数Wr′(Δf)又はWi′(Δ
    f)を前記重み関数W(Δf)とすることを特徴とする透
    過電子顕微鏡像観察方法。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の透過電子顕微鏡像観察方
    法において、前記重み関数W(Δf)として前記関数E.
    F.(Δf)を用いて で表される画像積分を行った処理像J′(g)を取得し、
    J(g)−J′(g)なる演算を行って試料像を得ることを
    特徴とする透過電子顕微鏡像観察方法。
  9. 【請求項9】 請求項7又は8記載の透過電子顕微鏡像
    観察方法において、前記関数E.F.(Δf)は に基づいて決定されることを特徴とする透過電子顕微鏡
    像観察方法。
  10. 【請求項10】 請求項7,8又は9記載の透過電子顕
    微鏡像観察方法において、試料透過後の電子線を透過形
    電子顕微鏡から電気的に絶縁され透過形電子顕微鏡に印
    加するデフォーカス変調信号と同等の変調信号が印加さ
    れたエネルギーフィルタを通してエネルギー分光し、前
    記エネルギー分光された電子線を用いて試料の透過電子
    顕微鏡像をI(g,Δf)を形成することを特徴とする透
    過電子顕微鏡像観察方法。
  11. 【請求項11】 請求項7〜10のいずれか1項記載の
    透過電子顕微鏡像観察方法において、前記デフォーカス
    量Δfをアンダーフォーカス側からオーバーフォーカス
    側に向けて変化させることを特徴とする透過電子顕微鏡
    像観察方法。
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