JP2001083645A - ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents

ハロゲン化銀写真感光材料

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JP2001083645A
JP2001083645A JP21884999A JP21884999A JP2001083645A JP 2001083645 A JP2001083645 A JP 2001083645A JP 21884999 A JP21884999 A JP 21884999A JP 21884999 A JP21884999 A JP 21884999A JP 2001083645 A JP2001083645 A JP 2001083645A
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silver halide
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emulsion
halide photographic
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Tadanobu Sato
忠伸 佐藤
Tadashi Inaba
正 稲葉
Takahiro Matsuno
孝洋 松野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明では、シアン化物イオンを用いずにより
感度の高いハロゲン化銀写真感光材料を提供することを
課題とする。 【解決手段】有機化合物を架橋配位子とする下記一般式
Iで表される多核錯体を含有することを特徴とするハロ
ゲン化銀写真感光材料。 一般式I [L'nM(L(ML'm)j)k]l 式中、Mは任意の金属または金属イオンを表す。Lは架橋
配位子であり、2つ以上の金属または金属イオンを架橋
することが出来る有機化合物を表す。L'はH2O、NH3、C
O、N2、NO2、CO2、SO2、SO3、N2H4、O2、PH3等の無電荷
の小分子、任意の有機化合物、または任意の無機陰イオ
ンを表す。但し、L'のうちの幾つかが任意の無機陰イオ
ンである時には、無機陰イオンは1つの金属の配位部位
のうち半分未満の配位部位を占める。nは1から5まで
の整数、mは0から5までの整数、jは1から4までの整
数、kは1以上の整数、lは錯体全体の電荷を表す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はハロゲン化銀写真感
光材料に関するものである。特に、ドーパント技術を用
いた高感度なハロゲン化銀写真感光材料に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ハロゲン化銀粒子を改質し、ハロゲン化
銀写真感光材料全体の性能を期待するように改善する技
術の一つとして、銀イオンとハライドイオン以外の物質
(ドーパント)を組み込む技術(ドープ技術)がある。特
に遷移金属イオンのドープ技術については多くの研究が
なされてきた。遷移金属イオンはハロゲン化銀粒子中に
ドーパントして入り込んだ時はその添加量が極めて僅か
であっても写真性能を効果的に変えることが一般に認め
られている。
【0003】ハロゲン化銀乳剤の感度を高めるために
は、遷移金属イオンばかりではなく、シアン化物イオン
を配位子とする遷移金属錯体をハロゲン化銀粒子中にド
ープする技術が知られてきた。特にシアン化物イオン6
つを配位子とするVIII族金属錯体をドープすることによ
る高感度化乳剤の開示例が多い。特公昭48−3537
3号公報はシアン化物イオンを含むドーパントとしてヘ
キサシアノ鉄(II)錯体である黄血塩、及び、ヘキサシア
ノ鉄(III)錯体である赤血塩に関して開示している。し
かしながら、この発明では、高感化の効果は配位子の種
類には関係がなく、鉄イオンを含有する場合に限られる
としている。ヘキサシアノ鉄(II)錯体をドープすること
で高感度な乳剤を得た例は他にも数多くあり、例えば、
特開平5−66511号公報、米国特許第5,132,
203号明細書等に開示されている。鉄錯体以外にもシ
アノ錯体をドープすることで得られる高感度な乳剤が知
られており、特開平2−20853号公報にはレニウ
ム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムによる錯体が
沃塩化銀にドープされると高感度であるハロゲン化銀乳
剤が得られることが開示されている。この他の金属イオ
ンによる錯体も多くドーパントに用いられており、ドー
プによりもたらされる効果も高感化ばかりではなく、相
反則不軌の改良や硬調化等、多岐に及んでいる。米国特
許第2,448,060号にはハロゲンイオンを配位子
とした白金またはパラジウムIII価の錯体をドープした
乳剤が増感することが示されている。米国特許第3,7
90,390号には鉄(II)、鉄(III)の各シアノ錯体を
ドープした乳剤の他にもコバルト(III)のシアノ錯体を
ドープした乳剤について記載されており、分光増感色素
を含むハロゲン化銀乳剤を開示している。米国特許4,
847,191号明細書は3、4、5または6個のシア
ン化物イオンを配位子とするロジウム(III)錯体の存在
下で形成したハロゲン化銀粒子を開示している。これら
の特許ではドーパントにより高照度不軌が減少すること
を示している。欧州特許0336425号、同0336
426号各明細書および特開平2−20854号各公報
には、4個以上のシアノ配位子を有するレニウム、ルテ
ニウム、オスミウム、またはイリジウムをドープしたハ
ロゲン化銀乳剤が開示されている。これらでは感度及び
階調の経時安定性の向上、ならびに低照度不軌が改良さ
れることが記載されている。欧州特許0336427号
明細書および特開平2−20852号公報にはニトロシ
ルまたはチオニトロシル配位子を含む六配位のバナジウ
ム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、
レニウムおよびイリジウム錯体を用いたハロゲン化銀乳
剤が記載されており、中照度感度を低下させることのな
い低照度相反則不軌の改良がもたらされる。遷移金属イ
オン以外のドーパントとしては、ビスマス、鉛イオンを
ドープした乳剤が米国特許第3,690,888号に記
されており、周期律表第13族および14族に属する金属イ
オンを含む乳剤が特開平7−128778号公報に記載
されている。
【0004】ドーパントとして用いられる錯体の配位子
としては、シアン化物イオンを用いることが最も多いと
思われるが、ハロゲン化物イオンもまた多く用いられ
る。例えば、Mを任意の金属とし、[MCl6]n-の構造を有
する錯体がドープされる例として、特開昭63−184
740号、特開平1−285941号、同2−2085
2号、同2−20855号各公報等に記載されているヘ
キサクロロルテニウム、ヘキサクロロイリジウム、ヘキ
サクロロロジウム、ヘキサクロロレニウムが挙げられ
る。また、欧州特許0336689号明細書および特開
平2−20855号公報には六配位のレニウム錯体で、
その配位子にハロゲン、ニトロシル、チオニトロシル、
シアン、水、チオシアンが用いられている錯体がドーパ
ントとして開示されており、特開平3−118535号
公報には六配位金属錯体の一つの配位子がカルボニルで
ある遷移金属錯体が、さらに同3−118536号公報
には六配位金属錯体の2つの配位子が酸素である遷移金
属錯体を内部に含有する乳剤が、それぞれ有用な写真性
能を有する乳剤として開示されている。
【0005】近年では有機化合物を配位子とした錯体を
ハロゲン化銀粒子にドープすることで、その乳剤の性質
を変える技術も開示され始めている。米国特許5,36
0,712号、同5,457,021号、同5,46
2,849号各明細書、欧州特許0709724号明細
書、特開平7−72569、同8−179452各公報
には多くの有機化合物を配位子とする錯体が用いられた
例が示されている。特開平11−24194号公報では
[Fe(CO)4(P(Ph)3)]0、[Fe(CO)3(P(Ph)2)]0をドープする
ことで高感度で総反則不軌が改良された乳剤を得てい
る。また、特開平11−102042号公報では[M(CN)
5L]3-(M = Fe2+, Ru2+, Ir3+)、[Fe(CO)4L]0、[M'(CN)3
L]- (M' = Pd2+, Pt2+)、[IrCl5L]2-型の錯体におい
て、Lに2-mercaptobenzimidazole、5-methyl-s-triazol
o(1.5-A)pyrimidine-7-ol、2-mercapto-1,3,4-oxadiazo
leを用いた時に高感度な乳剤が得られている。さらに、
特開平10−293377号公報では[RuCl5L']2-(L' =
イミダゾール、ベンズイミダゾール及びその誘導体)を
ドープした乳剤では著しい硬調化が見られ、その時の感
度は従来の減感硬調化ドーパントを用いた乳剤より大幅
に高くなることが示されている。
【0006】6配位八面体構造を持った錯体がドーパン
トとしてハロゲン化銀粒子に組み込まれる際にはJ. Phy
s.: Condens.Matter 9(1997) 3227-3240をはじめとする
文献や特許に記載される様に、ハロゲン化銀粒子中の[A
gX6]5-ユニット(X =ハロゲンイオン)と錯体分子が置き
換わり、中心金属がAg+イオンの格子位置を占め、それ
ぞれの配位子がハロゲン化物イオンの格子位置を占める
とされている。このため、米国特許5,360,712
号では、ドーパントとして用いる錯体は中心金属の配位
サイトのうち半分以上がハロゲンもしくは擬ハロゲンイ
オンでなくてはならず、なおかつ、配位子として用いる
ことが出来る有機化合物はホストとなる結晶格子中の空
間の大きさに対して適切な分子サイズを持たなくてはな
らないと述べられている。
【0007】その一方で米国特許3,672,901号
明細書、特開平2−259749、同4−336537
各公報では、[Fe(ETDA)]2- (EDTA = ethylenediaminete
traacetic acid;エチレンジアミン四酢酸)、[Ir(C2O4)
3]3-の様に金属イオンの配位サイトにハロゲンまたは擬
ハロゲンイオンが結合していない錯体がドーパントとし
て用いられた例が示されている。先に挙げた米国特許
5,360,712号明細書ではこれらのドーパントの
効果は大きくないと記されており、これは、これらの錯
体では有機化合物が全ての配位サイトを占めることによ
りハロゲン化銀粒子に取り込まれるために必要であるハ
ロゲンもしくは擬ハロゲンイオンを持つことが出来ない
ため、ドーパントとしては適当ではないことによるもの
と記載されている。
【0008】以上の様に、有機化合物を配位子とした錯
体をドーパントとして用いる時には、配位子として用い
る有機化合物は中心金属の6つの配位サイトのうち1つ
ないしは2つを占めるのみであり、半分を超える配位サ
イトもしくは全ての配位サイトが有機化合物で占められ
た錯体、中でも特に、配位子が無電荷でありかつ錯体分
子の表面に周囲の金属イオンと相互作用するサイトを持
たないドーパントが用いられ、これにより写真特性を変
化させることが出来た例は知られていない。
【0009】一方、ドーパントとして用いる錯体とし
て、従来は単核錯体のみが用いられて来たが、近年では
複核錯体あるいはそれ以上の錯体も用いられる様になっ
てきた。米国特許5,024,931号にはイリジウム
オリゴマーをドープすることによる高感度化が記載され
ており、先にも述べた米国特許5,360,712号で
は鉄による複核錯体[(NC)5Fe(μ-4,4'-bipyridine)Fe
(CN)5]6-をドープした乳剤によってこの特許で使用した
ドーパント中で最も大きな高感化の効果が得られること
が記載されている。しかしながら、これらの特許におい
ても単核錯体の場合と同様に、主な配位子としてはシア
ン化物イオンもしくはハロゲンイオンが用いられてお
り、有機化合物を配位子として積極的に用いてはいな
い。
【0010】また、高い感度を持った乳剤を得るために
はドーパント以外にも、化学増感を施すことが必要とな
る。中でも金増感は代表的な化学増感であるが、シアノ
錯体をドープした乳剤では、例えば特開平8−6276
1号公報に記載される様に、錯体から遊離したシアン化
物イオンがハロゲン化銀粒子表面に吸着し、化学増感剤
として添加した金イオンと金シアノ錯体を形成し、金増
感剤による増感核の形成を阻害する。そのためシアノ錯
体をドーパントとした乳剤で金増感するためには、米国
特許5,132,203号や欧州特許0508910号
明細書記載されている様にシアノ錯体を亜表面にドープ
しシアノ基をハロゲン化銀粒子表面から遠ざけねばなら
ない。また、この金増感の阻害を防ぐためには特開平6
−308653号公報に示されている様に亜鉛等のイオ
ンを添加する方法も知られている。この様に現在までの
シアノ錯体に頼ったドーパントによる高感化と、金増感
を両立させるためには更なる他の手段を施さなければな
らない。
【0011】現在のところ、高感度化もたらすドーパン
トのほとんどがシアノ化物イオンを配位子とした錯体で
あり、上記の金増感の阻害が克服出来た場合にもシアン
化合物の強い毒性は残り、これらのことからシアン化物
イオンを含まずに高感度化した乳剤を与えるドーパント
が望まれている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、シアン化
物イオンを用いずにより感度の高いハロゲン化銀写真感
光材料を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は下記(1)
から(10)のハロゲン化銀写真感光材料により達成され
た。
【0014】(1)支持体上に少なくとも一層のハロゲ
ン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料におい
て、有機化合物を架橋配位子とする下記一般式Iで表さ
れる多核錯体を含有することを特徴とするハロゲン化銀
写真感光材料。 一般式I
【0015】
【化7】
【0016】式中、Mは任意の金属または金属イオンを
表す。Mは全て同一の金属種であっても異なる金属種で
あっても良い。Lは架橋配位子であり、2つ以上の金属
または金属イオンを架橋することが出来る有機化合物を
表す。L'はH2O、NH3、CO、N2、NO2、CO2、SO2、SO3、N2
H4、O2もしくはPH3である無電荷の小分子、任意の有機
化合物、または任意の無機陰イオンを表し、これらは全
て同一の化学種であっても異なる化学種であっても良
い。但し、L'のうちの幾つかが任意の無機陰イオンであ
る時には、無機陰イオンは1つの金属の配位部位のうち
半分未満の配位部位を占める。nは1から5までの整
数、mは0から5までの整数、jは1から4までの整数、
kは1以上の整数、lは錯体全体の電荷を表す。
【0017】(2)乳剤中に含まれるハロゲン化銀粒子
が、一般式Iで表される多核錯体を含有することを特徴
とする(1)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0018】(3)一般式I中のL'が複素環化合物、H2
O、NH3、またはPH3である多核錯体を含有することを特
徴とする(2)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0019】(4)一般式Iにおいて、架橋配位子Lが
シアノ基を含む飽和もしくは不飽和炭化水素、複素環化
合物、または下記一般式IIまたはIII で表される化合物
である多核錯体を含有することを特徴とする(3)に記
載のハロゲン化銀写真感光材料。 一般式II
【0020】
【化8】
【0021】式中のXは酸素原子、硫黄原子、水酸基、
カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、またはニトロ基
を示し、式中の各結合はオクテット則を乱さない範囲で
一重結合または二重結合をとることができ、配位できる
2つの置換基が結合するそれぞれの炭素と炭素の間の結
合はベンゼン環に置き換えることもできる。 一般式III
【0022】
【化9】
【0023】式中Yは酸素原子、または硫黄原子であ
り、Rは任意のアルキル基もしくは芳香族誘導体を表
す。
【0024】(5)一般式I中のLが2つまたは3つの
金属または金属イオンを橋架けする有機化合物であり、
jおよびkが1または2である多核錯体(複核または三核
錯体)を含有することを特徴とする(4)に記載のハロ
ゲン化銀写真感光材料。
【0025】(6)一般式I中のL'が含窒素複素環化合
物、含酸素複素環化合物、含硫黄複素環化合物、及びNH
3から選ばれる化合物である複核または三核錯体を含有
することを特徴とする(5)に記載のハロゲン化銀写真
感光材料。
【0026】(7)一般式I中のMがマグネシウム、カ
ルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、ルテニウ
ム、マンガン、コバルト、ロジウム、イリジウム、銅、
ニッケル、パラジウム、白金、金、亜鉛、チタン、クロ
ム、オスミウム、カドミウム、または、水銀である複核
錯体または三核錯体を含有することを特徴とする(6)
に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0027】(8)一般式I中のMが鉄、ルテニウム、
マンガン、コバルト、ロジウム、イリジウム、銅、ニッ
ケル、パラジウム、白金、金、クロム、または、オスミ
ウムから選ばれる金属イオンによる複核錯体または三核
錯体を含有することを特徴とする(6)に記載のハロゲ
ン化銀写真感光材料。
【0028】(9)一般式I中のL'が2,2'−ビピリジ
ン、1,10−フェナンスロリン、1,4,8,11−テトラアザシ
クロテトラデカンおよびそれらの誘導体である複核錯体
または三核錯体を含有することを特徴とする(8)に記
載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0029】(10)下記一般式IV、VまたはVIで表さ
れる複核錯体または三核錯体を含有することを特徴とす
る(8)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。 一般式IV
【0030】
【化10】
【0031】式中、Mは鉄、ルテニウム、またはコバル
トであり、2つのMは同一の金属イオンであっても異な
っていてもよい。Lは架橋配位子であり、ジシアノ化合
物、シアノピリジン、ピラジン、または4,4'−ビピリジ
ンを表す。nは4、5または6を表す。 一般式V
【0032】
【化11】
【0033】一般式VI
【0034】
【化12】
【0035】一般式V及びVIにおいて、Mは鉄、ルテニ
ウム、コバルト、マンガン、ロジウム、またはイリジウ
ムを表す。2つのMは同一の金属イオンであっても異な
っていてもよい。Lは架橋配位子を表し、ピラジン、4,
4'−ビピリジン、2,2'−ビピリミジン、2,2'−ビイミダ
ゾール、2,2'−ビベンズイミダゾール、2,5−ビス(2−
ピリジル)ピラジンまたは2分子のピラゾールを表す。bp
yは2,2'−ビピリジンを指し、cycは1,4,8,11−テトラア
ザシクロテトラデカンを指す。XはCl-、H2O、CH3OH、C2
H5OH、またはCH3CNを表し、mはLが金属イオンに単座で
配位している時には1であり、Lが2座で配位した時に
は0である。lは4、5または6を表す。
【0036】
【発明の実施の形態】Bulgarian Chem.Commun.,20(199
3) 350-368、Radiat.Eff.Defects Solids135(1995) 101
-104、J.Phys.: Condens Matter, 9(1997) 3227-3240等
に示されている様に、6シアノ錯体をドープすることは
ハロゲン化銀粒子内にクーロン場による浅い電子トラッ
プを導入することになる。特に、ICPS, 1998, Final pr
ogramand Proceedings, Vol.1, p.89、ICPS, 1998, Fin
al program and Proceedings,Vol.1, p.92、特開平8−
286306号公報に示される様に、Fe2+、Ru2+の様な
d6低スピンの2価金属イオンを中心金属として用いた時
には、Ag+とハロゲンアニオンとからなる粒子の環境に
+1の過剰電荷を導入することにより、クーロン場によ
る適切な深さを持った光電子トラップが導入され、これ
により露光によって生じた光電子が失活するまでの時間
が長くなり、写真感度を著しく上昇させることが出来
る。この時、配位子として用いたシアン化物イオンは強
い配位子場効果をもたらし、即ち、金属から配位子へ電
子を供与(逆供与)することによりπ結合を形成し、こ
のπ結合が t2g軌道のさらなる安定化、金属−配位子距
離の短縮、金属イオンの有効正電荷の増大をもたらし、
これらの結果として金属のd軌道の分裂が大きく増大す
る効果を与える。この効果によってドープした錯体のeg
軌道(錯体の最低空軌道となる)はハロゲン化銀の伝導
帯の底より高いエネルギーを持ち、電子捕獲とは無関係
な準位となる。これにより初めてドーパント近傍にクー
ロン場による浅い電子トラップを作り出すことができ
る。複素環化合物、特に、1,10-フェナンスロリンや2,
2'-ビピリジンは錯形成時、シアノ錯体に比較的近い強
い配位子場効果をもたらすことが一般に知られており、
これらの錯体をドープすることで6シアノ錯体と同様
に、金属イオンの軌道からなる eg軌道をハロゲン化銀
の伝導帯の底より高いエネルギーレベルに置くことが出
来ると考えられる。また、これらの複素環化合物では配
位子のπ*軌道が金属の eg軌道より低いエネルギーレベ
ルとなり、最低空軌道となる場合があるが、この準位も
ハロゲン化銀の伝導帯の底より高いエネルギーレベルに
あるものと考える。
【0037】ハロゲン化銀粒子中での銀核形成に関して
は、半導体における不純物バンドの様に、光励起された
電子の広範囲でのより自由な動きが効率の良い銀核形成
につながると考えられる。実際に、J. Phys.: Condens
Matter, 9(1997) 3227-3240に記載されるENDORの実験で
は、黄血塩をドープした乳剤において、不純物バンドに
捕獲されたと考えられる電子によるシグナルが観測され
る始める黄血塩ドープ濃度領域は、はっきりと感度が増
大してくる濃度領域と一致している。このような浅く捕
獲された電子の状態は有効質量近似によって記述され、
水素原子をモデルとして考えることが出来る。従って、
この電子が束縛されている場の半径(有効質量近似によ
って記述される水素原子モデルの半径)を、大きくすれ
ばより大きな感度増加につながることが予測される。こ
のためにはドーパントとして用いる錯体をより大きなサ
イズとすることが好ましく、この点で単核錯体より複核
錯体、あるいはそれより大きな多核錯体を用いることが
好ましいと考えられる。
【0038】ハロゲン化銀粒子に錯体分子が組み込まれ
る時には、J.Phys.: Condens.Matter 9(1997) 3227-324
0 をはじめとする文献や特許に記載される様に、ハロゲ
ン化銀粒子中の一部のユニットである[AgX6]5- (X = ハ
ロゲンイオン)と錯体分子が置き換わることで、中心金
属がAg+イオンの格子位置を占め、それぞれの配位子が
ハロゲン化物イオンの格子位置を占めるとされている。
この考え方を広げていくと、複核以上の錯体は[Ag2X11]
9-、[Ag3X16]13-、・・・ であるようなハロゲン化銀ユニ
ットと置き換わることが期待され、また、分子モデルに
よる考察からは米国特許5,360,712号に記載さ
れる鉄の複核錯体[(NC)5Fe(μ-4,4'-bipyridine)Fe(C
N)5]6-はハロゲン化銀粒子中の[X5Ag-X-Ag-X-AgX5]9-
ニットと置き換わることが推測される。この様に、錯体
分子がハロゲン化銀中に組み込まれる時にはある程度の
フレキシビリティを持った置き換えが起こる事が期待さ
れるが、あまりに大きな錯体分子をドーパントとして用
いることは、やはり置き換えに対しては有利にはならな
いと考えられ、好ましいことではないと予測される。こ
れらのことから、多核錯体のうちでもドープに用いるた
めに好ましいのは複核錯体、三核錯体であると考えられ
る。
【0039】本発明において有機化合物とは、鎖式また
は環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体
構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子
団によって置き換えられた化合物を指す。金属−金属間
を架橋する配位子としては有機化合物、特に、金属に対
して2座で配位する化合物、もしくは、二重結合あるい
は三重結合を形成しているN原子、芳香環中にあるN原
子、P原子、S原子等を配位原子としたp*軌道に金属から
のd電子を受容できる(逆供与結合を形成できる)化合物
であることが好ましい。即ち、架橋配位子としては金属
イオンに強く結合するものが好ましく、その際に強い配
位子場効果を与える化合物がさらに好ましい。
【0040】また、その他の配位子も架橋配位子と同様
な有機化合物であることが好ましく、特に、金属に対し
て2座で配位する化合物、金属との間で逆供与結合を形
成できる化合物であることが好ましい。また、これらの
配位子が負電荷を持つこともまた好ましい。これは、ハ
ロゲン化銀粒子へ錯体が取り込まれることを考えた時に
は配位子である有機化合物は本来負電荷を持つハロゲン
イオンに置き換わるため、電荷的にハロゲン化銀の置き
換えユニットに近くなるために好ましいと考える。しか
しながら、先に述べたようなより広い範囲での電子捕獲
を考えた時には、反対に、無電荷の配位子を用いること
もまた好ましい。ドーパントによる適切な浅い電子トラ
ップを得るためには、電子トラップ内に電子の局在化が
起こらない様、ドーパントに用いる分子内には電荷の分
布が少ない方が良いと思われる。配位子内に中心金属へ
のドナーサイト以外に、ヘテロ原子あるいは置換基によ
る他のドナーサイトがあった場合には配位子内で分極が
起こる可能性が高く、均一に緩い拘束力で電子を捕獲す
るためには適さない可能性も考えられる。また、配位子
の分子サイズが大きくなり、配位子部分の置き換えがハ
ロゲンイオンの位置ばかりではなく、これに隣接する銀
イオンにも及んだ場合にも、ドーパントの配位子は無電
荷の化合物であることがより好ましいと考えられる。現
在のところでは、配位子に負電荷を持った有機化合物を
用いた場合でも、無電荷の有機化合物を用いた場合で
も、共に感度上昇には大きな寄与があり、どちらがより
好ましいかを言うことは出来ないが、高感化ドーパント
としては有機化合物、特に、芳香族化合物や複素環化合
物を配位子として有する錯体、中でも配位子場効果を考
えると2座や3座で金属イオンに配位する化合物がより
好ましいと言える。
【0041】本発明において、架橋配位子として具体的
に好ましくは、飽和または不飽和炭化水素を基本骨格と
するものでは、しゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタ
ル酸、アジピン酸、酒石酸、メソ-2,3-ジメチルカプト
コハク酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、オ
キサミド、オキサミン酸、マロンアミド、コハク酸アミ
ド、アジピン酸アミド、ジチオオキサミド、1,1,3,3-プ
ロパンテトラカルボニトリル、テトラシアノエチレン、
ジアミノマレオニトリル、1,2,4,5-ベンゼンテトラミ
ン、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸であり、中でも
特に、しゅう酸、マロン酸、オキサミド、オキサミン酸
等の小さな分子が好ましい。また、アルコールやフェノ
ール中のOH基の H+が脱離し、-O-部位が2つの金属また
は金属イオンを架橋することも好ましい。一方、架橋配
位子として用いる複素環化合物として好ましくは、ピラ
ゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、
オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジ
アゾール、チアトリアゾール、テトラチアフルバレン、
4,4'-ビピリジン、4-ヒドロキシピリジン、イソニコチ
ン酸、4-シアノピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピ
ラジン、2,3-ビス(2-ピリジル)ピラジン、2,5-ビス(2-
ピリジル)ピラジン、トリアジン、2,2'-ビピリミジン、
2,2'-イミダゾール、2,2'-ベンズイミダゾール、およ
び、これらを骨格としたその誘導体であるが、中でも特
に、ピラゾール、4,4'-ビピリジン、ピラジン、2,3-ビ
ス(2-ピリジル)ピラジン、2,5-ビス(2-ピリジル)ピラジ
ン、2,2'-ビピリミジン、2,2'-イミダゾール、2,2'-ベ
ンズイミダゾールが好ましい。その他の配位子として好
ましくは前述の様に配位子場効果の大きさを考えると、
芳香族化合物もしくは複素環化合物である。芳香族化合
物としては隣り合った2つの炭素原子にそれぞれ配位サ
イトとなる置換基を持った化合物が好ましく、これらの
例として、ベラトール、カテコール、(+/-)-ハイドロベ
ンゾイン、1,2-ベンゼンジチオール、2-アミノフェノー
ル、o-アニシジン、1,2-フェニレンジアミン、2-ニトロ
ナフトール、2-ニトロアニリン、1,2-ジニトロベンゼン
が挙げられる。また、隣り合う2つの炭素原子に配位サ
イトとなる置換基が結合した化合物ではないが、配位サ
イトとなる2つの置換基が一つの金属に配位できる距離
にある芳香族化合物も好ましく、ベンジル、1,8-ジニト
ロナフタレン、1,8-ナフタレンジオール等が具体的化合
物として挙げられる。単座で配位する複素環化合物とし
ては、ヘテロ原子として酸素原子、硫黄原子、セレン原
子、テルル原子、窒素原子を配位子中に持っていること
が好ましく、燐原子を持っていることも好ましい。単座
配位子として具体的に好ましくは、フラン、チオフェニ
ン、2H-ピロール、ピラン、ピリジン、及びこれらの誘
導体である。2座または3座で金属または金属イオンに
配位する複素環化合物としては、これらの単座で配位す
る複素環化合物が連結した環集合複素環化合物であるこ
とが好ましく、具体的な化合物としても上記の好ましい
単座配位子が連結した化合物が好ましい。特に、2座配
位子では2,2'-ビチオフェン、2,2'-ビピリジン、及びそ
の誘導体が好ましく、3座配位子としては、2,2':5',2"
-ターチオフェン、2,2':5',2"-ターピリジン、及びそれ
らの誘導体が好ましい。また、これらの2座配位子の骨
格に縮合環を伴った2,2'-ビキノリン、1,10-フェナンス
ロリン、及びそれらの誘導体も好ましい。さらに、架橋
配位子以外の配位子としては3座を超える配位サイトで
金属イオンと結合するものも好ましく、1,4,8,11-テト
ラアザシクロテトラデカンや18-クラウン-6の様なクラ
ウンエーテルも好ましい。これらの誘導体中の置換基と
しては、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基(メ
チル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-
ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エ
チルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、t-オク
チル基、イソデシル基、イソステアリル基、ドデシルオ
キシプロピル基、トリフルオロメチル基、メタンスルホ
ニルアミノメチル基等)、アルケニル基、アルキニル
基、アラルキル基、シクロアルキル基(シクロヘキシル
基、4-t-ブチルシクロヘキシル基等)、置換もしくは非
置換アリール基(フェニル基、p-トリル基、p-アニシル
基、p-クロロフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、2, 4
-ジ-t-アミノフェニル基等)、ハロゲン(フッ素、塩
素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、ニトロ基、メルカプト
基、ヒドキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、ブトキシ
基、メトキシエトキシ基、ドデシルオキシ基、2-エチル
ヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ
基、p-トリルオキシ基、p-クロロフェノキシ基、4-t-ブ
チルフェノキシ基等、アルキルチオ基、アリールチオ
基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、置換もしく
は非置換アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチ
ルアミノ基、アニリノ基、N-メチルアニリノ基等)、ア
ンモニオ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、オ
キシカルボニルアミノ基、オキシスルホニルアミノ基、
置換ウレイド基(3-メチルウレイド基、3-フェニルウレ
イド基、3,3-ジブチルウレイド基等、チオウレイド基、
アシル基(ホルミル基、アセチル基等)、オキシカルボ
ニル基、置換もしくは非置換カルバモイル基(エチルカ
ルバモイル基、ジブチルカルバモイル基、ドデシルオキ
シプロピルカルバモイル基、3-(2,4-ジ-t-アミノフェノ
キシ)プロピルカルバモイル基、ピペリジノカルボニル
基、モルホリノカルボニル基等)、チオカルボニル基、
チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、
オキシスルホニル基、スルファモイル基、スルフィノ
基、スルファノ基、カルボン酸またはその塩、スルホン
酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩であることが
好ましい。また、ここで、R2とR3は閉環して飽和炭素
環、芳香族炭素環またはヘテロ芳香環を形成することも
好ましい。
【0042】本発明の中心金属としては特に制限はない
が、J. Phys.: Condens.Matter9(1997) 3227-3240をは
じめとする多くの文献や特許に記載される様に、6配位
八面体錯体がドーパントとしてハロゲン化銀粒子に組み
込まれる時には、ハロゲン化銀粒子中の[AgX6]5-(X- =
ハロゲンイオン) を一つのユニットとして粒子の一部と
ドーパントが置き換わると考えると、金属周りの配位構
造が平面4配位構造をとるもの、または、6配位構造を
とるものが好ましい。より好ましくは、金属または金属
イオンが不対電子を持たないもの、もしくは、金属のd
軌道が配位子場分裂を起こした時に安定化した軌道に全
て電子が満たされているいるものが好ましい。具体的に
好ましくは、アルカリ土類金属、鉄、ルテニウム、マン
ガン、コバルト、ロジウム、イリジウム、銅、ニッケ
ル、パラジウム、白金、金、亜鉛、チタン、クロム、オ
スミウム、カドミウム、水銀の各金属イオンであり、中
でも特に好ましくは、鉄、ルテニウム、マンガン、コバ
ルト、ロジウム、イリジウム、チタン、クロム、オスミ
ウムであり、最も好ましくは鉄、ルテニウム、コバルト
の各イオンである。
【0043】以下に本発明の錯体の具体例を示すが、発
明の化合物はこれらに限定されるものではない。
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
【化15】
【0047】
【化16】
【0048】
【化17】
【0049】
【化18】
【0050】本発明において、ドープする錯体分子が陽
イオンとなる場合、陰イオンと塩を成した時のその対陰
イオンとしては水に溶解しやすくハロゲン化銀乳剤の沈
澱操作に適合しているものが好ましい。具体的にはハロ
ゲンイオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフル
オロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テト
ラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオ
ン、トリフルオロメタンスルホン酸を用いることが好ま
しい。なお、対陰イオンとして、シアノイオン、チオシ
アノイオン、亜硝酸イオン、しゅう酸イオン等の配位性
の強い陰イオンいると、錯体の配位子と配位子交換反応
を起こし本発明の錯体の組成及び構造を保持出来ない可
能性があるため、これらの陰イオンを用いることは好ま
しくない。反対に錯体分子が陰イオンとなり陽イオンと
塩を成した時には、その対陽イオンとしては、ナトリウ
ムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウ
ムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン
などが好ましく、4級アルキルアンモニウムイオンを用
いることも好ましい。4級アルキルアンモニウムイオン
を用いる場合にはアルキル基としてメチル基、エチル
基、プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基から任意
に選んだ置換基を用いることが出来る。
【0051】本発明の錯体はいくつかの方法によって合
成することが出来る。例えば、ルテニウム錯体に関して
はCoord.Chem.Rev. 84(1988) 85-277 が良くまとまった
総説であり、これに挙げられている参考文献をもとに多
くの錯体が合成できる。その他の錯体に関してはCoord.
Chem.Rev. に数年に一度特集されている各金属毎の総説
に挙げられている合成方法を元に合成することが出来
る。
【0052】本発明の錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時
に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形
成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外
の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することに
より、ハロゲン化銀粒子内に含有させるのが好ましい。
さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内
へのドープを行ってもよい。
【0053】本発明の錯体をハロゲン化銀粒子にドープ
する場合、粒子内部に均一に存在させてもよいし、特開
平4−208936号、特開平2−125245号、特
開平3−188437号各公報に開示されている様に、
粒子表面層にドープしてもよく、粒子内部のみに錯体を
ドープし粒子表面にはドープなしの層を付加してもよ
い。本発明では粒子表面層にドープすることが好まし
い。また、米国特許第5,252,451号および5,
256,530号明細書に開示されているように、ドー
プさせた微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質しても
よい。また、錯体をドープした微粒子を調製し、その微
粒子を添加し物理熟成することにより、ハロゲン化銀粒
子に錯体をドープさせる方法も好ましい。さらに、上記
ドープ方法を組み合わせて用いてもよい。
【0054】錯体のドープ量は、ハロゲン化銀1モル当
たり1×10-9モル以上1×10-2モル以下が適当であり、
好ましくは1×10-7以上1×10-3モル以下である。
【0055】本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用い
るハロゲン化銀乳剤はハロゲン化銀として特に制限はな
く、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、沃塩化銀、沃臭化銀を
用いることができるが、純塩化銀乳剤を用いるよりも臭
化物イオンまたは沃化物イオンを含む乳剤であることが
より好ましい。ハロゲン化銀粒子のサイズに制限はない
が、球相当径で0.01〜3 μm の粒子であれば好ましい。
ハロゲン化銀粒子の形状は、規則的な結晶系(正常晶粒
子)でも、不規則な結晶系でもよいが、正常晶粒子であ
ることがより好ましい。正常晶粒子には立方体、八面
体、十二面体、十四面体、二十面体及び四十八面体が含
まれる。不規則な結晶形には、球状およびじゃがいも状
が含まれる。また、本発明の錯体をドープするには双晶
面を一枚以上有する形状の粒子を用いてもよく、平行な
双晶面を二枚あるいは三枚有する角形平板粒子及び三角
形平板状粒子が好ましく用いられる。さらに平板状粒子
においては、その粒子サイズ分布が単分散であればより
好ましい。単分散平板状粒子の調製については特開昭6
3−11928号公報に記載がある。単分散六角形平板
状粒子については、特開昭63−151618号公報に
記載がある。円形単分散平板状粒子乳剤については、特
開平1−131541号公報に記載がある。また、特開
平2−838号公報には、全投影面積の95%以上が主平
面に平行な二枚の双晶面を持つ平板粒子で占められてお
り、かつ該平板状粒子のサイズ分布が単分散である乳剤
が開示されている。欧州特許514742A号明細書に
は、ポリアルキレンオキサイドブロックポリマーを用い
て調製された粒子サイズの変動係数が10%以下の平板状
粒子乳剤が開示されている。これらの技術を用いること
で本発明で好ましい単分散粒子を調製することが出来
る。
【0056】また、平板状粒子はその主平面が(10
0)と(111)のものが知られており、前者について
は、臭化銀に関して米国特許4,063,951号明細
書および特開平5−281640号公報に記載があり、
塩化銀に関して欧州特許0534395A1号および米
国特許5,264,337号各明細書に記載がある。後
者の平板状粒子は上記の双晶面を一枚以上有する種々の
形状を有する粒子であり、塩化銀に関しては米国特許
4,399,215号、同4,983,508号、同
5,183,732号各明細書、特開平3−13763
2号および同3−116113号各公報に記載がある。
本発明のドーパントは主平面が(100)の平板粒子に
対しても(111)の平板粒子に対しても好ましく適応
することが出来る。
【0057】ハロゲン化銀粒子は、転位線を粒子内に有
してもよい。ハロゲン化銀粒子中に転位をコントロール
して導入する技術に関しては、特開昭63−22023
8号公報に記載がある。この公報によれば、平均粒子径
/粒子厚み比が2以上の平板状ハロゲン化銀粒子内部に
特定の高ヨード相を設け、その外側を該高ヨード相より
もヨード含有率が低い相で覆うことによって転位を導入
することが出来る。この転位の導入により、感度の上
昇、保存性の改善、潜像安定性の向上、圧力カブリの減
少等の効果が得られる。この公報記載の発明によれば、
転位は主に平板粒子のエッジ部分に導入される。また、
中心部に転位が導入された平板粒子については、米国特
許5,238,796号明細書に記載がある。さらに、
特開平4−348337号公報には、内部に転位を有す
る正常晶粒子が開示されている同公報には正常晶粒子に
塩化銀または塩臭化銀のエピタキシーを生成し、そのエ
ピタキシーを物理熟成および/またはハロゲンによるコ
ンバージョンによって転位を導入出来ることが開示され
ている。本発明におけるハロゲン化銀粒子には高ヨード
相を設ける方法でも塩臭化銀エピタキシーを生成する方
法でも転位を導入することが出来、これらの様な転位の
導入によって、感度の上昇および圧力カブリの減少とい
う効果が得られた。ハロゲン化銀粒子中の転位線は、例
えば、J.F.Hamilton, Photo.Sci.Eng. 1967, 11, 57
や、T.Shiozawa, J.Soc.Photo Sci.JAPAN,1972, 35, 21
3によって記載の低温での透過型電子顕微鏡を用いた直
接法により観察することが出来る。すなわち、乳剤から
転位が発生するほどの圧力をかけないように注意して取
り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシ
ュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト)を防ぐ
ように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。
この時、粒子の厚みが厚いほど電子線が透過しにくくな
るので、高圧型(0.25μmの厚さに対し200 kV以上)の
電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができ
る。この様な方法により得られた粒子の写真により、主
平面に対し垂直な面から見た場合の各粒子についての転
位線の位置および数を求めることが出来る。本発明は、
ハロゲン化銀粒子のうち、50%以上の個数の粒子が一粒
子当たり10本以上の転位線を含む場合に効果がある。
【0058】ハロゲン化銀乳剤の調製において、粒子形
成時から塗布時までに添加することの出来る添加剤につ
いて特に制限はない。結晶形成課程で成長を促進するた
めに、また、粒子形成時および/または化学増感時に化
学増感を効果的にならしめるためにハロゲン化銀溶剤を
用いることができる。好ましいハロゲン化銀溶剤として
は、水溶性チオシアン酸塩、アンモニア、チオエーテル
やチオ尿素類が利用可能である。ハロゲン化銀溶剤の例
としては、チオシアン酸塩(米国特許2222264
号、同2448534号、同3320069号各明細書
記載)、アンモニア、チオエーテル化合物(米国特許3
271157号、同3574628号、同370413
0号、同4297439号、同4276347号明細書
記載)、チオン化合物(特開昭53−144319号、
同53−82408号、同55−77737号各公報記
載)、アミン化合物(特開昭54−100717号公報
記載)、チオ尿素誘導体(特開昭55−2982号記
載)、イミダゾール類(特開昭54−100717公報
記載)および置換メルカプトテトラゾール(特開昭57
−202531号公報記載)を挙げることができる。
【0059】ハロゲン化銀乳剤の製造方法については特
に制限はない。一般に、ゼラチン水溶液を有する反応溶
液に、効率のよい撹拌のもとに銀塩水溶液およびハロゲ
ン塩水溶液を添加する。具体的方法としては、P.Glafki
des 著 Chimie et PhysiquePhtographique (Paul Monte
l社刊、1967年)、G.F.Dufin 著 Photographic Emulsion
Chemistry (The Forcal Press刊、1966年)、V.L.Zelik
man et al著 Makingand Coating Photographic Emulsio
n (The Forcal Press 刊、1964年) 等に記載された方法
を用いて調製することが出来る。すなわち酸性法、中性
法、アンモニア法等のいずれでもよく、また、可溶性銀
塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては、片側
混合法、同時混合法、それらの組み合わせ等のいずれを
用いても良い。本発明では同時混合法の一つの形式とし
てハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ
方法、即ち、いわゆるコントロールド・ダブルジェット
法を好ましく用いる。また硝酸銀やハロゲン化アルカリ
水溶液の添加速度を粒子成長速度に応じて変化させる方
法(英国特許1535016号明細書、特公昭48−3
6890号および同52−16364号各公報に記載)
や水溶液濃度を変化させる方法(米国特許424244
5号明細書および特開昭55−158124号に記載)
を用いて臨界過飽和度を超えない範囲において早く成長
させることが好ましい。これらの方法は、再核発生を起
こさず、ハロゲン化銀粒子が均一に成長するため、好ま
しく用いることが出来る。
【0060】反応容器に銀塩溶液とハロゲン溶液を添加
する代わりに、あらかじめ調製された微粒子を反応容器
に添加して、核形成および/または粒子成長を起こさせ
て、ハロゲン化銀粒子を得る方法を使うこともまた好ま
しい。この技術に関しては、特開平1−183644
号、同1−183645号、同2−44335号、同2
−43534号、同2−43535号各公報および米国
特許4879208号明細書に記載されている。この方
法によれば、乳剤粒子結晶内のハロゲンイオンの分布を
完全に均一にすることが出来、好ましい写真特性を得る
ことが出来る。さらに本発明においては、種々の構造を
持った乳剤粒子を用いることができる。粒子内部(コア
部)と外側(シェル部)から成る、いわゆるコア/シェ
ル二重構造粒子、さらに三重構造粒子(特開昭60−2
22844号公報に記載)や、それ以上の多層構造粒子
が用いられる。乳剤粒子の内部に構造を持たせる場合、
上述のような包み込む構造だけでなく、いわゆる接合構
造を有する粒子を作ることも出来る。これらの例は、特
開昭58−108526号、同59−16254号、同
59−133540号、特公昭58−24772号各公
報および欧州特許199290A2号明細書に記載され
ている。接合する結晶は、ホストとなる結晶と異なる組
成をもってホスト結晶のエッジやコーナー部、あるいは
面部に接合して成長させることが出来る。この様な接合
結晶は、ホスト結晶がハロゲン組成に関して均一であっ
ても、あるいはコア−シェル型の構造を有するものであ
っても形成させることができる。接合構造の場合には、
ハロゲン化銀同士の組み合わせは当然可能であるが、ロ
ダン銀、炭酸銀などの岩塩構造でない銀塩化合物をハロ
ゲン化銀と組み合わせて接合粒子をとることが可能あれ
ば用いてもよい。
【0061】これらの構造を有するヨウ臭化銀粒子の場
合、例えばコア−シェル型の粒子において、コア部のヨ
ウ化銀含有量が高く、シェル部のヨウ化銀含有率が低く
ても、また逆にコア部のヨウ化銀含有率が低く、シェル
部のヨウ化銀含有率が高い粒子でもよい。同様に接合構
造を有する粒子についても、ホスト結晶のヨウ化銀含有
率が高く、接合結晶のヨウ化銀含有率が相対的に低い粒
子であっても、その逆の粒子であってもよい。また、こ
れらの構造を有する粒子の、ハロゲン組成の異なる境界
部分は明確な境界であっても、組成差により混晶を形成
して不明確な境界であってもよく、また積極的に連続的
な構造変化を付けたものでもよい。本発明に用いるハロ
ゲン化銀乳剤は、粒子に丸みをもたらす処理(欧州特許
0096727B1号および同0064412B1号各
明細書に記載)、あるいは表面の改質処理(独国特許2
306447C2号明細書および特開昭60−2213
20号公報に記載)を行ってもよい。ハロゲン化銀乳剤
は表面潜像型が好ましい。ただし、特開昭59−133
542号公報に開示されている様に、現像液あるいは現
像の条件を選ぶことにより内部潜像型の乳剤も用いるこ
とが出来る。また、うすいシェルをかぶせる浅内部潜像
型乳剤も目的に応じて用いることが出来る。
【0062】ハロゲン化銀乳剤は、通常分光増感され
る。分光増感色素としては、通常メチン色素を用いるこ
とが好ましい。メチン色素には、シアニン色素、メロシ
アニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色
素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、ス
チリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。
これらの色素類には、塩基性ヘテロ環としてシアニン色
素類に通常利用される環のいずれをも適用できる。塩基
性ヘテロ環の例としては、ピロリン環、オキサゾリン
環、チアゾリン環、ピロール環、オキサゾール環、チア
ゾール環、セレナゾール環、イミダゾール環、テトラゾ
ール環およびピリジン環を挙げることができる。また、
ヘテロ環に環式炭化水素環や芳香族炭化水素環が縮合し
た環も利用出来る。縮合環の例としては、インドレニン
環、ベンズインドレニン環、インドール環、ベンズオキ
サドール環、ナフトオキサゾール環、ベンゾチアゾール
環、ナフトチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ベン
ズイミダゾール環およびキノリン環を挙げることが出来
る。これらの環の炭素原子上に置換基が結合していても
よい。メロシアニン色素または複合メロシアニン色素に
は、ケトメチレン構造を有する5員または6員のヘテロ
環を適用することが出来る。その様なヘテロ環の例とし
てしては、ピラゾリン−5−オン環、チオヒダントイン
環、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン環、チア
ゾリジン−2,4−ジオン環、ローダニン環及びチオバ
ルビツール酸環を挙げることが出来る。
【0063】増感色素の添加量は、ハロゲン化銀1モル
当たり 0.001〜100 ミリモルであることが好ましく、0.
01〜10ミリモルであることがさらに好ましい。増感色素
は好ましくは化学増感中または化学増感前(例えば、粒
子形成時や物理熟成時)に添加される。
【0064】本発明においては、ハロゲン化銀粒子の化
学増感後の固有吸収の波長を持った光での感度(固有感
度)が改良される。すなわち、約450nm より長波の光に
対する分光増感色素がハロゲン化銀粒子表面に吸着する
ことに起因する減感(増感色素による固有減感)を、本
発明の各錯体をドープすることによって減少させること
が出来る。本発明はハロゲン化銀の固有感度が増加する
効果に加えて、増感色素による固有減感をより有効に防
止出来るという効果も有する。
【0065】増感色素と共に、それ自身分光増感作用を
示さない色素、あるいは可視光を実質的に吸収しない物
質であって、強色増感を示す物質をハロゲン化銀乳剤に
添加してもよい。この様な色素または物質の例には、含
窒素複素環基で置換されたアミノスチル化合物(米国特
許第2,933,390号および同3,635,721
号各明細書に記載)、芳香族有機酸ホルムアルデヒド縮
合物(米国特許第3,743,510号明細書に記
載)、カドミウム塩およびアザインデン化合物が含まれ
る。増感色素と上記色素または物質との組み合わせにつ
いては、米国特許第3,615,613号、同3,61
5,641号、同3,617,295号および同3,6
35,721号各明細書に記載がある。
【0066】ハロゲン化銀乳剤は、一般に化学増感を行
って使用する。化学増感としてはカルコゲン増感(硫黄
増感、セレン増感、テルル増感)、貴金属増感(例、金
増感)及び還元増感をそれぞれ単独あるいは組み合わせ
て実施する。本発明では硫黄増感と金硫黄増感を組み合
わせた化学増感を好ましく用いたが、セレン増感、テル
ル増感を用いることも好ましい。硫黄増感においては、
不安定硫黄化合物を増感剤として用いる。不安定硫黄化
合物については、P.Glafkides著、Chimie et Physique
Photographeque (Paul Montel社刊、1987年、第5
版)、Research Disclosure 誌307巻307105
号、T.H.James編集、The Theory of the Photographic
Process(Macmillan社刊、1977年、第4版)、H.Friese
r著、Die Grundlagender Photographischen Prozess mi
t Silver-halogeniden (Akademische Verlags-geselbsh
aft、1968年)に記載がある。硫黄増感剤の例には、チ
オ硫酸塩(例、チオ硫酸ナトリウム、p−トルエンチオ
スルフォネート)、チオ尿素類(例、ジフェニルチオ尿
素、トリエチルチオ尿素、N−エチル−N'−(4−メ
チル−2−チアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルト
リメチルチオ尿素)、チオアミド類(例、チオアセトア
ミド、N−フェニルチオアセトアミド)、ローダニン類
(例、ローダニン、N−エチルローダニン、5−ベンジ
リデンローダニン、5−ベンジリデン−N−エチル−ロ
ーダニン、ジエチルローダニン)、フォスフィンスルフ
ィド類(例、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チ
オヒダントイン類、4−オキソ−オキサゾリジン−2−
チオン類、ジポリスルフィド類(例、ジモルフォリンジ
スルフィド、シスチン、ヘキサチオカン−チオン)、メ
ルカプト化合物(例、システイン)、ポリチオン酸塩お
よび元素状硫黄が含まれる。活性ゼラチンも硫黄増感剤
として利用出来る。
【0067】セレン増感においては、不安定セレン化合
物を増感剤として用いる。不安定セレン化合物について
は、特公昭43−13489号、同44−15748
号、特開平4−25832号、同4−109240号、
同4−271341号および同5−40324号各公報
に記載がある。セレン増感剤の例には、コロイド状金属
セレン、セレノ尿素類(例、N,N−ジメチルセレノ尿
素、トリフルオロメチルカルボニル−トリメチルセレノ
尿素、アセチル−トリメチルセレノ尿素)、セレノアミ
ド類(例、セレノアセトアミド、N,N−ジエチルフェ
ニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例、ト
リフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェ
ニル−トリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフ
ォスフェート類(例、トリ−p−トリルセレノフォスフ
ェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セ
レノケトン類(例、セレノベンゾフェノン)イソセレノ
シアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類
およびジアシルセレニド類が含まれる。なお、亜セレン
酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類やセレニ
ド類のような比較的安定なセレン化合物(特公昭46−
4553号および同52−34492号各公報記載)
も、セレン増感剤として利用出来る。
【0068】テルル増感剤においては、不安定テルル化
合物を増感剤として用いる。不安定テルル化合物につい
てはカナダ国特許第800,958号、英国特許第1,
295,462号、同1,396,696号号各明細
書、特開平4−204640号、同4−271341
号、同4−333043号および同5−303157号
各公報に記載がある。テルル増感の例には、テルロ尿素
類(例、テトラメチルテルロ尿素、N,N’−ジメチル
エチレンテルロ尿素、N,N’−ジフェニルエチレンテ
ルロ尿素)、フォスフィンテルリド類(例、ブチル−ジ
イソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォス
フィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、
エトキシ−ジフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシ
ル(ジ)テルリド類(例、ビス(ジフェニルカルバモイ
ル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカル
バモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチ
ルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニ
ル)テルリド)、イソテルロシアナート類(例、アリル
イソテルロシアナート)、テルロケトン類(例、テルロ
アセトン、テルロアセトフェノン)、テルロアミド類
(例、テルロアセトアミド、N,N−ジメチルテルロベ
ンズアミド)、テルロヒドラジド類(例、N,N',N'
−トリメチルテルロベンズヒドラジド)、テルロエステ
ル類(例、t−ブチル−t−ヘキシルテルロエステ
ル)、コロイド状テルル、(ジ)テルリド類及びその他
のテルル化合物(例、ポタシウムテルリド、テルロペン
タチオネートナトリウム塩)が含まれる。
【0069】貴金属増感においては、金、白金、パラジ
ウム、イリジウム等の貴金属の塩を増感剤として用い
る。貴金属塩については、P.Grafkides著、Chimie et P
hysique Photographique (Paul Montel社刊、1987年、
第5版)、Research Disclosure誌 307巻307105
号に記載がある。金増感が特に好ましい。金増感の例に
は、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオ
ーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドが含まれ
る。また、米国特許第2,642,361号、同5,0
49,484号、同5,049,485号各明細書に記
載の金化合物も用いることが出来る。
【0070】還元増感においては、還元性化合物を増感
剤として用いる。還元性化合物については、P.Grafkide
s著、Chimie et Physique Photographique (Paul Monte
l社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure 誌 30
7巻307105号に記載がある。還元増感剤の例に
は、アミノイミノメタンスルフィン酸(二酸化チオ尿
素)、ボラン化合物(例、ジメチルアミンボラン)、ヒ
ドラジン化合物(例、ヒドラジン、p−トリルヒドラジ
ン)、ポリアミン化合物(例、ジエチレントリアミン、
トリエチレンテトラミン)、塩化第1スズ、シラン化合
物、レダクトン類(例、アスコルビン酸)、亜硫酸塩、
アルデヒド化合物および水素が含まれる。また、高pHや
銀イオン過剰(いわゆる銀熟成)の雰囲気によって、還
元増感を実施することも出来る。
【0071】化学増感は二種以上を組み合わせて実施し
てもよい。組合せとしては、カルコゲン増感と金増感の
組合せが特に好ましい。また、還元増感はハロゲン化銀
粒子の形成時に施すのが好ましい。増感剤の使用量は、
一般に使用するハロゲン化銀粒子の種類と化学増感の条
件により決定する。カルコゲン増感剤の使用量は、一般
にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モルであり、10
-7〜5×10-3モルであることが好ましい。貴金属増感剤
の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-2モル
であることが好ましい。化学増感の条件に特に制限はな
い。pAgとしては6〜11であり、好ましくは7〜10であ
る。pHは4〜10であることが好ましい。温度は40〜95℃
であることが好ましく、45〜85℃であることがさらに好
ましい。
【0072】ハロゲン化銀乳剤は、感光材料の製造工
程、保存中あるいは写真処理中のカブリを防止し、ある
いは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含
有させることが好ましい。この様な化合物の例には、ア
ゾール類(例、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロインダゾ
ール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ベン
ズイミダゾール類(特にニトロ−またはハロゲン置換
体))、ヘテロ環メルカプト化合物類イミダゾール類
(例、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチア
ゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプ
トチアジアゾール類、メルカプトテトラゾール類、(特
に、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール)、メ
ルカプトピリミジン類)、カルボキシル基やスルホン基
などの水溶性基を有する上記のヘテロ環メルカプト化合
物類、チオケト化合物(例、オキサゾリンチオン)、ア
ザインデン類(例、テトラアザインデン類(特に、4−
ヒドロキシ置換(1, 3, 3a, 7)テトラアザインデン
類))、ベンゼンチオスルホン酸類及びベンゼンスルフ
ィン酸が含まれる。一般にこれらの化合物は、カブリ防
止剤または安定剤として知られている。
【0073】カブリ防止剤または安定剤の添加時期は、
通常、化学増感を施した後に行われる、しかし、化学増
感の途中または化学増感の開始以前の時期の中から選ぶ
ことも出来る。すなわち、ハロゲン化銀乳剤粒子形成過
程において、銀塩溶液の添加中でも、添加後から化学増
感開始までの間でも、化学増感の途中(化学増感時間
中、好ましくは開始から50%までの時間内により好まし
くは20%までの時間以内)でもよい。
【0074】ハロゲン化銀写真材料の層構成について特
に制限はない。但し、カラー写真材料の場合は、青色、
緑色および赤色光を別々に記録するために多層構造を有
する。各ハロゲン化銀乳剤層は高感度層と低感度層に二
層からなっていてもよい。実用的な層構成の例を下記
(1)〜(6)に挙げる。
【0075】 (1)BH/BL/GH/GL/RH/RL/S (2)BH/BM/BL/GH/GM/GL/RH/R
M/RL/S (3)BH/BL/GH/RH/GL/RL/S (4)BH/GH/RH/BL/GL/RL/S (5)BH/BL/CL/GH/GL/RH/RL/S (6)BH/BL/GH/GL/CL/RH/RL/S
【0076】Bは青色感性層、Gは緑色感性層、Rは赤
色感性層、Hは最高感度層、Mは中間感度層、Lは低感
度層、Sは支持体、そしてCLは重層効果付与層であ
る。保護層、フィルター層、中間層、ハレーション防止
層や下引層のような非感光性層は省略してある。同一感
色性の高感度層と低感度層を逆転して配置してもよい。
(3)については、米国特許4,184,876号明細
書に記載がある。(4)については、Research Disclos
ure 誌 225巻22534号、特開昭59−177551
号および同59−177552号各公報に記載がある。
また、(5)と(6)については、特開昭61−345
41号公報に記載がある。好ましい層構成は(1)、
(2)および(4)である。本発明のハロゲン化銀写真
材料は、カラー写真材料以外にも、X線感光材料、黒白
撮影感光材料、製版用感光材料や印画紙にも同様に適用
することが出来る。
【0077】ハロゲン化銀乳剤の種々の添加剤(例、バ
インダー、化学増感剤、分光増感剤、安定剤、ゼラチ
ン、硬化剤、界面活性剤、帯電防止剤、ポリマーラテッ
クス、マット剤、カラーカプラー、紫外線吸収剤、退色
防止剤、染料)、写真材料の支持体および写真材料の処
理方法(例、塗布方法、露光方法、現像処理方法)につ
いては、Research Disclosure 誌 176巻17643号
(RD-17643)、同 187巻18716号(RD-18716)、同
225巻22534号(RD-22534)の記載を参考にするこ
とが出来る。これらのResearch Disclosure 誌に記載を
以下の一覧表に示す。
【0078】 ────────────────────────────────── 添加剤種類 RD-17643 RD-18716 RD-22534 ────────────────────────────────── 1 化学増感剤 23頁 648頁右欄 24頁 2 感度上昇剤 同上 3 分光増感剤、 23〜24頁 648頁右欄 24〜28頁 強色増感剤 〜649頁右欄 4 増 白 剤 24頁 5 被り防止剤、 24〜25頁 649頁右欄 24頁、31頁 安定化剤 6 光吸収剤、 25〜26頁 649頁右欄 フィルター染料、 〜650頁左欄 紫外線吸収剤 7 ステイン防止剤 25頁右欄 650頁左欄〜右欄 8 色素画像安定剤 25頁 32頁 9 硬 膜 剤 26頁 651頁左欄 32頁 10 バインダー 26頁 同上 28頁 11 可塑剤、潤滑剤 27頁 650頁右欄 12 塗布助剤、 26〜27頁 同上 表面活性剤 13 スタチック防止剤 27頁 同上 14 カラーカプラー 25頁 649頁 31頁 ──────────────────────────────────
【0079】ゼラチン硬化剤としては、例えば、活性ハ
ロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−
1,3,5−トリアジンおよびそのナトリウム塩など)
および活性ビニル化合物(1,3−ビスビニルスルホニ
ル−2−プロパノール、1,2−ビス(ビニルスルホニ
ルアセトアミド)エタンあるいはビニルスルホニル基を
鎖に有するビニル系ポリマーなど)は、ゼラチンなど親
水性コロイドを早く硬化させ安定な写真特性を与えるの
で好ましい。N−カルバモイルピリジニウム塩類((1
−モルホリノカルボニル−3−ピリジニオ)マタンスル
ホナートなど)やハロアミジニウム塩類(1−(1−ク
ロロ−1−ピリジノメチレン)ピロリジニウム2−ナフ
タレンスルホナートなど)も硬化速度が早く好ましく用
いることが出来る。
【0080】カラー写真材料は、Research Disclosure
誌 176巻17643号、同 187巻18716号、に記載
された通常の方法によって現像処理することが出来る。
カラー写真感光材料は、現像、漂白定着もしくは定着処
理の後に通常、水洗処理または安定剤処理を施す。水洗
工程は二槽以上の槽を向流水洗にし、節水するのが一般
的である。安定化処理としては水洗工程のかわりに特開
昭57−8543号公報記載の様な多段向流安定化処理
が代表例として挙げられる。
【0081】
【実施例】以下に、本発明を具体例により詳細に説明す
るが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0082】実施例1 「乳剤1-1;臭化銀八面体乳剤の試料の調製(1)」870 ml
の水に36 gの脱イオンゼラチンと0.25 gの臭化カリウム
を加えて溶解した。75℃に保ったこのゼラチン水溶液中
に撹拌しながら0.088 M硝酸銀水溶液(溶液1)36mlと
0.088 M臭化カリウム水溶液(溶液2)36mlを10分間ダ
ブルジェット法で定量添加し、続いて溶液1と溶液2の
各々176 mlを7分間でダブルジェット法で添加した。そ
の後、0.82 M硝酸銀水溶液(溶液3)898 mlを始め0.53
ml/minの流速から流量を加速して90分間添加を行い、同
時に0.90M臭化カリウム水溶液(溶液4)をpBrを2.93に
保つようにコントロールしながら添加した。続いて90ml
の溶液3を5分間でさらに定量添加し、同時に溶液4と
同じ濃度の臭化カリウム水溶液(溶液5)をpBrを2.93に
保つようにコントロールしながら添加した。溶液添加終
了5分後、35℃まで降温し、通常の沈降法により可溶性
塩類を除去した後、再び40℃に昇温し、50 gゼラチンを
追添して溶解し、さらに臭化カリウム、2−フェノキシ
エタノールを添加、pHは 6.5に調整した。得られた粒子
は辺長0.5 μm の単分散臭化銀八面体であった。
【0083】「乳剤1-2〜1-4 :[Ru(NH3)5(4,4'-bpy)]
2+をドープした臭化銀八面体乳剤」(比較例) 乳剤1-1の調製方法において、溶液5に[Ru(NH3)5(4,4'-
bpy)]2+ (4,4'-bpy =4,4'-bipyridine)を、この部分に
添加される銀1モルに対してそれぞれ1×10-6、1×1
0-5、1×10-4モルの割合で添加することによって、乳剤
1-2〜1-4を得た。(この部分に添加される銀量は全銀量
に対して10%に相当するので、これらのドーパントは粒
子体積で90%〜100%の部分(粒子表面から10%までの表面
層)に添加されたことになる)
【0084】「乳剤1-5〜1-6:本発明の[(H3N)5Ru(4,4'
-bpy)Ru(NH3)5]4+をドープした臭化銀八面体乳剤」(本
発明) 乳剤1-1の調製方法において、溶液5に本発明の[(H3N)5
Ru(4,4'-bpy)Ru(NH3)5]4+をこの部分に添加される銀1
モルに対して1×10-6または1×10-5モルの割合で添加す
ることによって乳剤1-5〜1-6を得た。
【0085】上記の臭化銀乳剤1-1〜1-6に銀1モルあた
り8.0×10-6モルのチオ硫酸ナトリウムと9.6×10-6モル
の塩化金酸及び3.4×10-4モルのチオシアン酸カリウム
を添加し60℃で最適に化学増感した。これら乳剤1-1〜1
-6には、それぞれゼラチン、ドデシルベンゼンスルホン
酸ナトリウムを加えて、下塗層を有するトリアセチルセ
ルロースフィルム支持体上に、ゼラチン、ポリメチルメ
タクリレート粒子、2,4-ジクロロ-6-ヒドロキシ-s-トリ
アジンナトリウム塩を含む保護層と共に押し出し法によ
りそれぞれ銀量2g/m2で塗布し、塗布試料1-1a〜1-6aを
得た。また、化学増感した乳剤1-1〜1-6にそれぞれ下記
の増感色素を4.9×10-4モル/モルAg加えて分光増感
を施し、塗布試料1-1a〜1-6aと同様に塗布することで塗
布試料1-1b〜1-6bを得た。
【0086】
【化19】
【0087】これら試料に、センシトメトリー用露光
(1秒、10-3秒)を光学楔を介して与えたあと、下記処
方で得た現像液1で、20℃10分間現像したあと常法によ
り停止、定着、水洗、乾燥し、光学濃度を測定した。カ
ブリは、試料の最小光学濃度で求め、感度は、カブリ+
0.1の光学濃度を得るのに必要な露光量の逆数で表し、
それぞれドープなし試料での値を100とする相対値とし
て表した。表1には塗布試料1-1a〜1-6aの各試料に臭化
銀の固有吸収波長で露光した時の相対感度、及び、塗布
試料1-1b〜1-6bの各試料に分光増感色素が吸収を持つ波
長で露光した時の相対感度をそれぞれ示した。
【0088】現像液1 メトール 2.5g L−アスコルビン酸 10.0g ナボックス 35.0g KBr 1.0g 水を加えて1リットルとし、pHを9.6に合わせる。
【0089】
【表1】
【0090】表1には本発明の複核錯体[(H3N)5Ru(4,4'
-bpy)Ru(NH3)5]4+をドープした乳剤の写真感度を示し、
同じユニットを持つ単核錯体[Ru(NH3)5(4,4'-bpy)]2+
ドープした乳剤と比較した。単核錯体[Ru(NH3)5(4,4'-b
py)]2+をドープした乳剤の写真感度は、ドープなしの乳
剤と比較して、分光増感色素の添加がない試料において
はやや減感する程度であるが、色素添加試料になるとは
っきりと減感した。これに対して複核錯体[(H3N)5Ru(4,
4'-bpy)Ru(NH3)5]4+をドープした乳剤では露光照度によ
らずドープなしの乳剤より写真感度の増加が見られた。
この結果より感度増加の効果を得るためには単核錯体で
はなく複核錯体であることが必要であると言える。
【0091】実施例2 「乳剤2-1;臭化銀八面体乳剤の試料の調製(2)」実施例
1の乳剤1-1と同じ方法で臭化銀八面体乳剤を調製し、
乳剤2-1とした。
【0092】「乳剤2-2、2-3:[Fe(CN)6]4-、[(NC)5Fe
(μ-4,4-bpy)Fe(CN)5]6-をドープした臭化銀八面体乳
剤」(比較例) 実施例1の乳剤1-1の調製方法において、溶液5に[Fe(C
N)6]4-または[(NC)5Fe(μ-4,4-bpy)Fe(CN)5]6-(4,4'-b
py= 4,4'-bipyridine) をこの部分に添加される銀1モ
ルに対してそれぞれ1×10-4モル、1×10-5モルの割合で
添加することによって乳剤2-2および乳剤2-3を得た。な
お、これらの乳剤には2−フェノキシエタノールを添加
した後、さらに硝酸亜鉛も加えた。
【0093】「乳剤2-4:本発明の[(bpy)2Ru(pz)2Fe(bp
y)2]2+をドープした臭化銀八面体乳剤」(本発明) 実施例1の乳剤1-1の調製方法において、溶液5に本発
明の[(bpy)2Ru(pz)2Fe(bpy)2]2+(bpy= 2,2'-bipyridine
、pz= pyrazole) をこの部分に添加される銀1モルに
対して1×10-6モル、または1×10-5モルの割合で添加す
ることによって乳剤2-4Aおよび2-4Bをそれぞれ得た。
【0094】「乳剤2-5 :本発明の[(bpy)2Ru(2,5-dpp
z)Fe(bpy)2]4+をドープした臭化銀八面体乳剤」(本発
明) 実施例1の乳剤1-1の調製方法において、溶液5に本発
明の[(bpy)2Ru(2,5-dppz)Fe(bpy)2]4+ (2,5-dppz= 2,5-
bispyridylpyrazine) をこの部分に添加される銀1モル
に対して1×10-5モルまたは5×10-5モルの割合で添加す
ることによって乳剤2-5Aおよび2-5Bをそれぞれ得た。
【0095】「乳剤2-6:本発明の[(bpy)2Ru(2,5-dppz)
Ru(bpy)2]4+をドープした臭化銀八面体乳剤」(本発
明) 実施例1の乳剤1-1の調製方法において、溶液5に本発
明の[(bpy)2Ru(2,5-dppz)Ru(bpy)2]4+をこの部分に添加
される銀1モルに対して1×10-6モルの割合で添加する
ことによって乳剤2-6を得た。
【0096】「乳剤2-7:本発明の[(cyc)Ru(2,5-dppz)R
u(cyc)]4+をドープした臭化銀八面体乳剤」(本発明) 実施例1の乳剤1-1の調製方法において、溶液5に本発
明の[(cyc)Ru(2,5-dppz)Ru(cyc)]4+ (cyc= 1,4,8,11-te
traazacyclotetradecane) をこの部分に添加される銀1
モルに対して5×10-6モルの割合で添加することによっ
て乳剤2-7を得た。
【0097】上記の臭化銀乳剤2-1〜2-7 (2-4Aおよび2-
5Aを含む)を実施例1と同じ方法で最適に化学増感した
後、実施例1と同じ方法で支持体上に塗布することによ
り、塗布試料2-1a〜2-7aを得た。また乳剤2-1〜2-7(2-4
Bおよび2-5Bを含む)には、上記と同様に最適に化学増感
を施した後、実施例1の増感色素を4.9×10-4モル/
モルAg加えて分光増感を施し、塗布試料2-1a〜2-7aと同
じ方法で塗布し、塗布試料2-1b〜2-7bを得た。
【0098】これら各試料に、センシトメトリー用露光
(1秒、10-3秒)を光学楔を介して与えたあと、実施例
1に示した現像液1で、20℃10分間現像したあと常法に
より停止、定着、水洗、乾燥し、光学濃度を測定した。
カブリは、試料の最小光学濃度で求め、感度は、カブリ
+0.1の光学濃度を得るのに必要な露光量の逆数で表
し、それぞれドープなし試料での値を100とする相対値
として表した。表2には塗布試料2-1a〜2-7a(分光増感
色素ブランク試料)の各試料にハロゲン化銀の固有吸収
が見られる波長で露光した時の相対感度、及び、塗布試
料2-1b〜2-7b(分光増感色素を添加した試料)に分光増
感色素が吸収を持つ波長で露光した時の相対感度をそれ
ぞれ示した。
【0099】
【表2】
【0100】ここでは各複核錯体の感度を既存の高感化
ドーパントである黄血塩の感度と比較した。各複核錯体
に関してはいずれの場合もドープなしの乳剤より高感化
したが、分光増感色素の添加がない場合より、色素の添
加が成された乳剤の方が感度上昇の幅は大きかった。こ
れはこれらの錯体が固有減感を減少させる能力に優れて
いるためと考えられる。色素添加の有無や露光条件など
を考え合わせると、表に挙げた各錯体のうちでは[(cyc)
Ru(2,5-dppz)Ru(cyc)]4+が最も優れた高感化ドーパント
であると言える。また、[(bpy)2Ru(pz)Fe(bpy)2]2+は色
素添加試料で[(cyc)Ru(2,5-dppz)Ru(cyc)]4+に近い高感
化効果が見られた。これらの複核錯体をドープしたいず
れの乳剤においても特に1秒露光で高感度化の効果が大
きかった。一方、これらのドープ乳剤を黄血塩や米国特
許5,360,712号に記載されている[(NC)5Fe(μ
-4,4'-bpy)Fe(CN)5]6-ドープ乳剤と比較すると、色素の
添加がない場合には[(cyc)Ru(2,5-dppz)Ru(cyc)]4+をド
ープした乳剤は黄血塩ドープ乳剤とほぼ同等の感度を示
し、色素が添加された試料においては何れのドープ乳剤
に関しても黄血塩や[(NC)5Fe(μ-4,4'-bpy)Fe(CN)5]6-
と同等あるいはそれ以上の高感度化が見られた。
【0101】実施例3 「乳剤3;本発明の[(cyc)Ru(2,5-dppz)Ru(cyc)]4+をド
ープした臭化銀八面体乳剤」実施例2で得られた乳剤2-
6を最適に化学増感し、分光増感を施した後、特開平9
−146237号の実施例2の試料201の感材の第3層
の乳剤として使用し、同特開平の実施例と同じ処理をし
て良好な結果が得られた。
【0102】実施例4 「乳剤4;本発明の[(cyc)Ru(2,5-dppz)Ru(cyc)]4+をド
ープした臭化銀八面体乳剤」実施例2で得られた乳剤2-
6を最適に化学増感し、分光増感を施した後、特開平1
0−20462号の実施例1の試料110の感材の第3層
の乳剤として使用し、同特開平の実施例と同じ処理をし
て良好な結果が得られた。
【0103】
【発明の効果】本発明の多核錯体をハロゲン化銀粒子に
ドープすると、実施例に示した様に、ドープなしの乳剤
あるいはヘキサシアノ錯体等の既存のドーパントをドー
プした乳剤よりも、高感度で固有減感の小さいハロゲン
化銀感光材料を得ることができる。
フロントページの続き (72)発明者 松野 孝洋 神奈川県南足柄市中沼210番地 富士写真 フイルム株式会社内 Fターム(参考) 2H023 BA01 BA02

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持体上に少なくとも一層のハロゲン化
    銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、
    有機化合物を架橋配位子とする下記一般式Iで表される
    多核錯体を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真
    感光材料。 一般式I 【化1】 式中、Mは任意の金属または金属イオンを表す。Mは全て
    同一の金属種であっても異なる金属種であっても良い。
    Lは架橋配位子であり、2つ以上の金属または金属イオ
    ンを架橋することが出来る有機化合物を表す。L'はH
    2O、NH3、CO、N2、NO2、CO2、SO2、SO3、N2H4、O2もし
    くはPH3である無電荷の小分子、任意の有機化合物、ま
    たは任意の無機陰イオンを表し、これらは全て同一の化
    学種であっても異なる化学種であっても良い。但し、L'
    のうちの幾つかが任意の無機陰イオンである時には、無
    機陰イオンは1つの金属の配位部位のうち半分未満の配
    位部位を占める。nは1から5までの整数、mは0から5
    までの整数、jは1から4までの整数、kは1以上の整
    数、lは錯体全体の電荷を表す。
  2. 【請求項2】 乳剤中に含まれるハロゲン化銀粒子が、
    一般式Iで表される多核錯体を含有することを特徴とす
    る請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
  3. 【請求項3】 一般式I中のL'が複素環化合物、H2O、N
    H3、またはPH3である多核錯体を含有することを特徴と
    する請求項2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
  4. 【請求項4】 一般式Iにおいて、架橋配位子Lがシア
    ノ基を含む飽和もしくは不飽和炭化水素、複素環化合
    物、または下記一般式IIまたはIII で表される化合物で
    ある多核錯体を含有することを特徴とする請求項3に記
    載のハロゲン化銀写真感光材料。 一般式II 【化2】 式中のXは酸素原子、硫黄原子、水酸基、カルボキシル
    基、シアノ基、アミノ基、またはニトロ基を示し、式中
    の各結合はオクテット則を乱さない範囲で一重結合また
    は二重結合をとることができ、配位できる2つの置換基
    が結合するそれぞれの炭素と炭素の間の結合はベンゼン
    環に置き換えることもできる。 一般式III 【化3】 式中Yは酸素原子、または硫黄原子であり、Rは任意のア
    ルキル基もしくは芳香族誘導体を表す。
  5. 【請求項5】 一般式I中のLが2つまたは3つの金属
    または金属イオンを橋架けする有機化合物であり、jお
    よびkが1または2である多核錯体(複核または三核錯
    体)を含有することを特徴とする請求項4に記載のハロ
    ゲン化銀写真感光材料。
  6. 【請求項6】 一般式I中のL'が含窒素複素環化合物、
    含酸素複素環化合物、含硫黄複素環化合物、及びNH3
    ら選ばれる化合物である複核または三核錯体を含有する
    ことを特徴とする請求項5に記載のハロゲン化銀写真感
    光材料。
  7. 【請求項7】 一般式I中のMがマグネシウム、カルシ
    ウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、ルテニウム、マ
    ンガン、コバルト、ロジウム、イリジウム、銅、ニッケ
    ル、パラジウム、白金、金、亜鉛、チタン、クロム、オ
    スミウム、カドミウム、または、水銀である複核錯体ま
    たは三核錯体を含有することを特徴とする請求項6に記
    載のハロゲン化銀写真感光材料。
  8. 【請求項8】 一般式I中のMが鉄、ルテニウム、マン
    ガン、コバルト、ロジウム、イリジウム、銅、ニッケ
    ル、パラジウム、白金、金、クロム、または、オスミウ
    ムから選ばれる金属イオンによる複核錯体または三核錯
    体を含有することを特徴とする請求項6に記載のハロゲ
    ン化銀写真感光材料。
  9. 【請求項9】 一般式I中のL'が2,2'−ビピリジン、1,
    10−フェナンスロリン、1,4,8,11−テトラアザシクロテ
    トラデカンおよびそれらの誘導体である複核錯体または
    三核錯体を含有することを特徴とする請求項8に記載の
    ハロゲン化銀写真感光材料。
  10. 【請求項10】 下記一般式IV、V、またはVIで表され
    る複核錯体または三核錯体を含有することを特徴とする
    請求項8に記載のハロゲン化銀写真感光材料。 一般式IV 【化4】 式中、Mは鉄、ルテニウム、またはコバルトであり、2
    つのMは同一の金属イオンであっても異なっていてもよ
    い。Lは架橋配位子であり、ジシアノ化合物、シアノピ
    リジン、ピラジン、または4,4'−ビピリジンを表す。n
    は4、5または6を表す。 一般式V 【化5】 一般式VI 【化6】 一般式V及びVIにおいて、Mは鉄、ルテニウム、コバル
    ト、マンガン、ロジウム、またはイリジウムを表す。2
    つのMは同一の金属イオンであっても異なっていてもよ
    い。Lは架橋配位子を表し、ピラジン、4,4'−ビピリジ
    ン、2,2'−ビピリミジン、2,2'−ビイミダゾール、2,2'
    −ビベンズイミダゾール、2,5−ビス(2−ピリジル)ピラ
    ジンまたは2分子のピラゾールを表す。bpyは2,2'−ビピ
    リジンを指し、cycは1,4,8,11−テトラアザシクロテト
    ラデカンを指す。XはCl-、H2O、CH3OH、C2H5OH、または
    CH3CNを表し、mはLが金属イオンに単座で配位している
    時には1であり、Lが2座で配位した時には0である。l
    は4、5または6を表す。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011528024A (ja) * 2008-07-16 2011-11-10 ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) 多核錯体を含む発光材料
US9127208B2 (en) 2006-04-03 2015-09-08 Pharmatherm Chemicals, Inc. Thermal extraction method and product

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