JP2001083647A - ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents

ハロゲン化銀写真感光材料

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JP2001083647A
JP2001083647A JP21562099A JP21562099A JP2001083647A JP 2001083647 A JP2001083647 A JP 2001083647A JP 21562099 A JP21562099 A JP 21562099A JP 21562099 A JP21562099 A JP 21562099A JP 2001083647 A JP2001083647 A JP 2001083647A
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Tadashi Inaba
正 稲葉
Tadanobu Sato
忠伸 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の第一の目的は、シアン化物イオンを用
いずにより感度の高いハロゲン化銀写真感光材料を提供
することを課題とする。第二の目的は、調液時の経時安
定性に優れたドーパントを提供することにある。 【解決手段】支持体上に少なくとも一層のハロゲン化銀
乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、元
素周期律表の第4〜6周期でかつ第3族〜11族の遷移
金属元素あるいは第4〜6周期でかつ第12〜14族の
典型金属元素より選ばれた金属または金属イオンを1個
以上含み、有機化合物のN原子とカルコゲン原子を少な
くとも一つずつ配位元素として有する金属錯体を含有す
ることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属錯体を用いた
ハロゲン化銀写真感光材料に関する。より具体的には、
ドーパント技術を用いた高感度なハロゲン化銀乳剤に関
する。
【0002】
【従来の技術】ハロゲン化銀粒子を改質し、ハロゲン化
銀写真感光材料全体の性能を期待するように改善する技
術の一つとして、銀イオンとハライドイオン以外の物質
(ドーパント)を組み込む技術(ドープ技術)がある。特に
遷移金属イオンのドープ技術については多くの研究がな
されてきた。遷移金属イオンはハロゲン化銀粒子中にド
ーパントして入り込んだ時はその添加量が極めて僅かで
あっても写真性能を効果的に変えることが一般に認めら
れている。
【0003】ハロゲン化銀乳剤の感度を高めるために
は、遷移金属イオンばかりではなく、シアン化物イオン
を配位子とする遷移金属錯体をハロゲン化銀粒子中にド
ープする技術が知られてきた。特にシアン化物イオン6
つを配位子とするVIII族金属錯体をドープすることによ
る高感度化乳剤の開示例が多い。特公昭48−3537
3号公報はシアン化物イオンを含むドーパントとしてヘ
キサシアノ鉄(II)錯体である黄血塩、及び、ヘキサシア
ノ鉄(III)錯体である赤血塩に関して開示している。し
かしながら、この発明では、高感化の効果は配位子の種
類には関係がなく、鉄イオンを含有する場合に限られる
としている。ヘキサシアノ鉄(II)錯体をドープすること
で高感度な乳剤を得た例は他にも数多くあり、例えば、
特開平5−66511号公報、米国特許第5,132,
203号明細書等に開示されている。鉄錯体以外にもシ
アノ錯体をドープすることで得られる高感度な乳剤が知
られており、特開平2−20853号公報にはレニウ
ム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムによる錯体が
沃塩化銀にドープされると高感度であるハロゲン化銀乳
剤が得られることが開示されている。この他の金属イオ
ンによる錯体も多くドーパントに用いられており、ドー
プによりもたらされる効果も高感化ばかりではなく、相
反則不軌の改良や硬調化等、多岐に及んでいる。米国特
許第2,448,060号にはハロゲンイオンを配位子
とした白金またはパラジウムIII価の錯体をドープした
乳剤が増感することが示されている。米国特許第3,7
90,390号には鉄(II)、鉄(III)の各シアノ錯体を
ドープした乳剤の他にもコバルト(III)のシアノ錯体を
ドープした乳剤について記載されており、分光増感色素
を含むハロゲン化銀乳剤を開示している。米国特許4,
847,191号明細書は3、4、5または6個のシア
ン化物イオンを配位子とするロジウム(III)錯体の存在
下で形成したハロゲン化銀粒子を開示している。これら
の特許ではドーパントにより高照度不軌が減少すること
を示している。欧州特許0336425号、同0336
426号各明細書および特開平2−20854号各公報
には、4個以上のシアノ配位子を有するレニウム、ルテ
ニウム、オスミウム、またはイリジウムをドープしたハ
ロゲン化銀乳剤が開示されている。これらでは感度及び
階調の経時安定性の向上、ならびに低照度不軌が改良さ
れることが記載されている。欧州特許0336427号
明細書および特開平2−20852号公報にはニトロシ
ルまたはチオニトロシル配位子を含む六配位のバナジウ
ム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、
レニウムおよびイリジウム錯体を用いたハロゲン化銀乳
剤が記載されており、中照度感度を低下させることのな
い低照度相反則不軌の改良がもたらされる。遷移金属イ
オン以外のドーパントとしては、ビスマス、鉛イオンを
ドープした乳剤が米国特許第3,690,888号に記
されており、周期律表第13族および14族に属する金属イ
オンを含む乳剤が特開平7−128778号公報に記載
されている。
【0004】ドーパントとして用いられる錯体の配位子
としては、シアン化物イオンを用いることが最も多いと
思われるが、ハロゲン化物イオンもまた多く用いられ
る。例えば、Mを任意の金属とし、[MCl6]n-の構造を有
する錯体がドープされる例として、特開昭63−184
740号、特開平1−285941号、同2−2085
2号、同2−20855号各公報等に記載されているヘ
キサクロロルテニウム、ヘキサクロロイリジウム、ヘキ
サクロロロジウム、ヘキサクロロレニウムが挙げられ
る。また、欧州特許0336689号明細書および特開
平2−20855号公報には六配位のレニウム錯体で、
その配位子にハロゲン、ニトロシル、チオニトロシル、
シアン、水、チオシアンが用いられている錯体がドーパ
ントとして開示されており、特開平3−118535号
公報には六配位金属錯体の一つの配位子がカルボニルで
ある遷移金属錯体が、さらに同3−118536号公報
には六配位金属錯体の2つの配位子が酸素である遷移金
属錯体を内部に含有する乳剤が、それぞれ有用な写真性
能を有する乳剤として開示されている。
【0005】近年では有機化合物を配位子とした錯体を
ハロゲン化銀粒子にドープすることで、その乳剤の性質
を変える技術も開示され始めている。米国特許5,36
0,712号、同5,457,021号、同5,46
2,849号各明細書、欧州特許0709724号明細
書、特開平7−72569、同8−179452各公報
には多くの有機化合物を配位子とする錯体が用いられた
例が示されており、特に[(NC)5Fe( μ-4,4'-bipyridin
e)Fe(CN)5]6-をドープした時に高感化の効果が大きいこ
とが記載されている。特開平11−24194号公報で
は[Fe(CO)4(P(Ph) 3)]0、[Fe(CO)3(P(Ph)2)]0をドープす
ることで高感度で総反則不軌が改良された乳剤を得てい
る。また、特開平11−102042号公報では[M(CN)
5L]3-M = Fe2+, Ru2+, Ir3+)、[Fe(CO)4L]0、[M'(CN)
3L]- (M'= Pd2+,Pt2+, [IrCl5L]2-型の錯体において、L
に2-mercaptobenzimidazole、5-methyl-s-triazolo(1.5
-A)pyrimidine-7-ol 、2-mercapto-1,3,4-oxadiazoleを
用いた時に高感度な乳剤が得られている。さらに、特開
平10−293377号公報では[RuCl5L']2-(L' =イミ
ダゾール、ベンズイミダゾール及びその誘導体)をドー
プした乳剤では著しい硬調化が見られ、その時の感度は
従来の減感硬調化ドーパントを用いた乳剤より大幅に高
くなることが示されている。
【0006】6配位八面体構造を持った錯体がドーパン
トとしてハロゲン化銀粒子に組み込まれる際にはJ.Phy
s.: Condens. Matter 9 (1997) 3227-3240 をはじめと
する文献や特許に記載される様に、ハロゲン化銀粒子中
の[AgX6]5-ユニット(X =ハロゲンイオン)と錯体分子が
置き換わり、中心金属がAg+イオンの格子位置を占め、
それぞれの配位子がハロゲン化物イオンの格子位置を占
めるとされている。このため、米国特許5,360,7
12号では、ドーパントとして用いる錯体は中心金属の
配位サイトのうち半分以上がハロゲンもしくは擬ハロゲ
ンイオンでなくてはならず、なおかつ、配位子として用
いることが出来る有機化合物はホストとなる結晶格子中
の空間の大きさに対して適切な分子サイズを持たなくて
はならないと述べられている。
【0007】その一方で米国特許3,672,901号
明細書、特開平2−259749、同4−336537
各公報では、[Fe(ETDA)]2- (EDTA = ethylenediaminete
traacetic acid;エチレンジアミン四酢酸)、[Ir(C2O4)
3]3-の様に金属イオンの配位サイトにハロゲンまたは擬
ハロゲンイオンが結合していない錯体がドーパントとし
て用いられた例が示されている。先に挙げた米国特許
5,360,712号明細書ではこれらのドーパントの
効果は大きくないと記されており、これは、これらの錯
体では有機化合物が全ての配位サイトを占めることによ
りハロゲン化銀粒子に取り込まれるために必要であるハ
ロゲンもしくは擬ハロゲンイオンを持つことが出来ない
ため、ドーパントとしては適当ではないことによるもの
と記載されている。
【0008】以上の様に、有機化合物を配位子とした錯
体をドーパントとして用いる時には、配位子として用い
る有機化合物は中心金属の6つの配位サイトのうち1つ
ないしは2つを占めるのみであり、半分を超える配位サ
イトもしくは全ての配位サイトが有機化合物で占められ
た錯体、中でも特に、配位子が無電荷でありかつ錯体分
子の表面に周囲の金属イオンと相互作用するサイトを持
たないドーパントが用いられ、これにより写真特性を変
化させることが出来た例は知られていない。
【0009】一方、高い感度を持った乳剤を得るために
はドーパント以外にも、化学増感を施すことが必要とな
る。中でも金増感は代表的な化学増感であるが、シアノ
錯体をドープした乳剤では、例えば特開平8−6276
1号公報に記載される様に、錯体から遊離したシアン化
物イオンがハロゲン化銀粒子表面に吸着し、化学増感剤
として添加した金イオンと金シアノ錯体を形成し、金増
感剤による増感核の形成を阻害する。そのためシアノ錯
体をドーパントとした乳剤で金増感するためには、米国
特許5,132,203号や欧州特許0508910号
明細書記載されている様にシアノ錯体を亜表面にドープ
しシアノ基をハロゲン化銀粒子表面から遠ざけねばなら
ない。また、この金増感の阻害を防ぐためには特開平6
−308653号公報に示されている様に亜鉛等のイオ
ンを添加する方法も知られている。この様に現在までの
シアノ錯体に頼ったドーパントによる高感化と、金増感
を両立させるためには更なる他の手段を施さなければな
らない。
【0010】現在のところ、高感度化もたらすドーパン
トのほとんどがシアン化物イオンを配位子とした錯体で
あり、上記の金増感の阻害が克服出来た場合にもシアン
化合物の強い毒性は残り、これらのことからシアン化物
イオンを含まずに高感度化した乳剤を与えるドーパント
が望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の第一
の目的は、シアン化物イオンを用いずにより感度の高い
ハロゲン化銀写真感光材料を提供することを課題とす
る。第二の目的は、調液時の経時安定性に優れたドーパ
ントを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は下記(1)
のハロゲン化銀写真感光材料により達成された。 (1)支持体上に少なくとも一層のハロゲン化銀乳剤層
を有するハロゲン化銀写真感光材料において、元素周期
律表の第4〜6周期でかつ第3族〜11族の遷移金属元
素あるいは第4〜6周期でかつ第12〜14族の典型金
属元素より選ばれた金属または金属イオンを1個以上含
み、有機化合物のN原子とカルコゲン原子を少なくとも
一つずつ配位元素として有する金属錯体を含有すること
を特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。 (2)元素周期律表の第4〜6周期でかつ第3族〜11
族の遷移金属元素あるいは第4〜6周期でかつ第12〜
14族の典型金属元素より選ばれた金属または金属イオ
ンを1個以上含み、同一分子内に有機化合物のN原子と
アルキル置換されたカルコゲン原子を配位元素として有
する配位子が配位した金属錯体を含有することを特徴と
する(1)記載のハロゲン化銀写真感光材料。 (3)元素周期律表の第4〜6周期でかつ第3族〜11
族の遷移金属元素あるいは第4〜6周期でかつ第12〜
14族の典型金属元素より選ばれた金属または金属イオ
ンを1個以上含み、一般式(I)で表される配位子を少な
くとも一つ有する錯体を含有することを特徴とする
(2)記載のハロゲン化銀写真感光材料。 一般式(I) NRR'−L −XR'' (式中、R及びR'は水素原子、または置換基を表す。Lは
置換基を有してもよいアルキレン基を表す。Xはカルコ
ゲン元素を表す。R"は水素原子、アニオンまたは置換基
を表す。) (4)元素周期律表の第4〜6周期でかつ第3族〜11
族の遷移金属元素あるいは第4〜6周期でかつ第12〜
14族の典型金属元素より選ばれた金属または金属イオ
ンを1個以上含み、一般式(I)で表される配位子を少な
くとも一つ有し、有機配位子または元素周期律表の第4
〜6周期でかつ第3族〜11族の遷移金属元素あるいは
第4〜6周期でかつ第12〜14族の典型金属元素によ
る結合によって中心金属の半分を超える配位サイトが占
められる錯体を含有することを特徴とする(3)記載の
ハロゲン化銀写真感光材料。 (5)元素周期律表の第4〜6周期でかつ第3族〜11
族の遷移金属元素あるいは第4〜6周期でかつ第12〜
14族の典型金属元素より選ばれた金属または金属イオ
ンを2個以上含み、一般式(I)で表される配位子を少な
くとも一つ有し、有機化合物によって中心金属の半分を
超える配位サイトが占められる錯体を含有することを特
徴とする(4)記載のハロゲン化銀写真感光材料。 (6)一般式(I)で表される配位子がアミノエタンチオ
レートである(3)記載のハロゲン化銀写真感光材料。 (7)金族錯体を少なくとも一種含有するハロゲン化銀
乳剤層のハロゲン化銀粒子の全投影面積の60%以上を
アスペクト比8以上の平板状ハロゲン化銀粒子が占めら
れることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記
載のハロゲン化銀写真感光材料。 (8)支持体上にそれぞれ少なくとも一層の青感性乳剤
層、緑感性乳剤層、赤感性乳剤層、及び親水性保護コロ
イド層を有することを特徴とする(1)から(7)のい
ずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明における金属錯体は、有機
化合物のN原子とS原子を同時に配位元素として少なくと
も一個以上含む錯体であることに特徴がある。配位元素
とは、配位子に含まれ金属原子に直接配位している元素
のことを指し、配位子はそれらの配位元素を含み配位に
関与している化合物全体を指す。これまでドーパントと
して使用された錯体の配位子は、黄血塩などのようなシ
アン化物イオン(例 特公昭48−35373)や4,
4’−ビピリジン(例 特開平7−72569)などの
ようなヘテロ環類が主であった。S原子を含む配位子と
しては、ヘテロ環メルカプト類、チオフェノール類のほ
かにアルキルメルカプタン類の例もあるが、その場合に
は金属に配位する元素はすべてがS原子であることが多
い(例 米国特許5912112号、米国特許5912
111号)。有機化合物中のN原子とS原子とが同時に配
位している錯体をドーパントとして用いている例を我々
は今のところ調査で見出していない。本発明における錯
体の配位子は、一般にドーパントとして知られている従
来のものと大きく異なり、これらの配位子で写真の高感
化に代表されるような性能アップが実現できたのは意外
であった。請求項1に記載の錯体が有していてもよい遷
移金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、
クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イッ
トリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニ
ウム、ロジウム、パラジウム、銀、ランタノイド(ラン
タン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウ
ム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビ
ウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリ
ウム、イッテルビウム、ルテチウム)、ハフニウム、タ
ンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジ
ウム、白金、金が挙げられる。また、典型金属としては
アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、カドミ
ウム、インジウム、スズ、水銀、タリウム、鉛が挙げら
れる。好ましくは、鉄、ルテニウム、マンガン、コバル
ト、ロジウム、イリジウム、銅、ニッケル、パラジウ
ム、白金、金、亜鉛、チタン、クロム、オスミウム、カ
ドミウム、または、水銀が好ましく、より好ましくは
鉄、ルテニウム、マンガン、コバルト、ロジウム、イリ
ジウム、銅、ニッケル、パラジウム、白金、金、クロ
ム、または、オスミウムから選ばれる金属イオンであ
る。
【0014】錯体は単核でも多核でも構わない。好まし
くは金属または金属イオンを1〜5個含む錯体であり、
好ましくは1〜3個である。より好ましくは1または2
である。多核錯体の場合、錯体中に存在する2個以上の
金属元素は、同じであっても異なっていてもよい。好ま
しくは同じ金属元素が2個以上含まれる多核錯体であ
り、より好ましくはすべて同じ金属元素を有する多核錯
体である。多核錯体の金属イオンは、2〜12配位をと
ることができるが、好ましくは2〜6配位であり、より
好ましくは4または6配位である。2種類以上の金属元
素を含む場合、それらの配位数はそれぞれ異なっていて
もよい。これらの配位数を持つ錯体のうち、好ましく中
心金属の半分を超える配位サイトが有機化合物または素
周期律表の第4〜6周期でかつ第3族〜11族の遷移金
属元素あるいは第4〜6周期でかつ第12〜14族の典
型金属元素による結合で占められた錯体であり、より好
ましくはすべての配位サイトが有機化合物または素周期
律表の第4〜6周期でかつ第3族〜11族の遷移金属元
素あるいは第4〜6周期でかつ第12〜14族の典型金
属元素による結合で占められた錯体である。
【0015】S原子を含む配位子としては、アルキルメ
ルカプタン類(例えばメチルメルカプタン、エチルメル
カプタン、メルカプトプロピオン酸)やアミノアルキル
チオール類(アミノエタンチオール、シスチン、システ
イン、シスタミン)、ヘテロ環チオール、アリールメル
カプタンなどが挙げられる。好ましくは、アルキル置換
されたS原子を有するアルキルメルカプタン類またはア
ミノアルキルチオール類であり、より好ましくはアミノ
アルキルチオール類である。
【0016】また、N原子を有する配位子としては、例
えばアルキルアミン類(例えばエチレンジアミン、エチ
ルアミン)、アミノアルキルチオール類(例えばアミノ
エタンチオール、シスチン、システイン、シスタミン、
ペニシラミン、S-メチルシステアミン)、ヘテロ環類
(例えばビピリジン、ピリジン、ピラジン、テルピリジ
ン、フェナントロリン)が挙げられる。好ましくは、ア
ミノアルキルチオール類、ヘテロ環類であり、より好ま
しくはアミノアルキルチオールである。
【0017】同一分子中にN原子とS原子を含む配位子と
しては、例えばアミノアルキルチオール類(アミノエタ
ンチオール、シスチン、システイン、シスタミン、ペニ
シラミン、S-メチルシステアミン)、含窒素ヘテロ環メ
ルカプト類、アミノ基含有チオフェノール類が挙げられ
る。好ましくはアミノアルキルチオール類であり、その
中で最も好ましくはアミノエタンチオールである。
【0018】一般式(I)で表される化合物について詳細
に説明する。R及びR'で表される置換基としては、例え
ば直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基(好ましくは炭
素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好
ましくは1〜4であり、例えばメチル、エチル、n-プロ
ピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブ
チルが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数
6〜12、より好ましくは炭素数6〜10、特に好まし
くは炭素数6〜8のアリール基であり、例えばフェニ
ル、p-メチルフェニルが挙げられる。)、アシル基(好
ましくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜1
0、特に好ましくは炭素数2〜8のアシル基であり、例
えばアセチルがある。)、アルコキシカルボニル基(好
ましくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜1
0、特に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニ
ル基であり、例えばメトキシカルボニルが挙げられ
る。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素
数7〜20、より好ましくは炭素数7〜15、特に好ま
しくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカ
ルボニルが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましく
は炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜10、特
に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばアセトキシが
挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜
8、より好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素
数1〜4であり、例えばメタンスルフィニルが挙げられ
る。)、ヘテロ環基(例えばイミダゾリル、ピリジル)
が挙げられる。置換基として好ましくは、アルキル基、
アリール基、アシル基、ヘテロ環基であり、より好まし
くはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。特に
好ましくはアルキル基である。これらの置換基は、さら
に置換基を有してもよい。RおよびR'は、好ましくは少
なくとも一方が水素原子であり、より好ましくは共に水
素原子である。
【0019】R''で表される置換基としては、例えば直
鎖状、分岐状又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数
1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好まし
くは1〜4であり、例えばメチル、エチル、n-プロピ
ル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチ
ルが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6
〜12、より好ましくは炭素数6〜10、特に好ましく
は炭素数6〜8のアリール基であり、例えばフェニル、
p-メチルフェニルが挙げられる。)、ヘテロ環基(例え
ばイミダゾリル、ピリジル)が挙げられる。置換基とし
て好ましくは、アルキル基、ヘテロ環基であり、より好
ましくはアルキル基である。R''は好ましくは水素原子
またはアニオンであり、より好ましくはアニオンであ
る。
【0020】Lで表されるアルキレン基置換基としては
メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレンが
挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。置換基
としては、例えば直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基
(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1
〜10、特に好ましくは1〜4であり、例えばメチル、
エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブ
チル、tert-ブチルが挙げられる。)、アリール基(好
ましくは炭素数6〜12、より好ましくは炭素数6〜1
0、特に好ましくは炭素数6〜8のアリール基であり、
例えばフェニル、p-メチルフェニルが挙げられる。)、
アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは
炭素数0〜10、特に好ましくは0〜6のアミノ基であ
り、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジ
エチルアミノが挙げられる。)、アルコキシ基(好まし
くは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、特に
好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基であり、例えば
メトキシ、エトキシが挙げられる。)、アリールオキシ
基(好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは炭素数
6〜10、特に好ましくは炭素数6〜8のアリールオキ
シ基であり、例えばフェニルオキシが挙げられる。)、
アシル基(好ましくは炭素数2〜12、より好ましくは
炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜8のアシル
基であり、例えばアセチルがある。)、アルコキシカル
ボニル基(好ましくは炭素数2〜12、より好ましくは
炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜8のアルコ
キシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニルが
挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好まし
くは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜15、
特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニル
オキシカルボニルが挙げられる。)、アシルオキシ基
(好ましくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2
〜10、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばア
セトキシが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましく
は炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6、特に
好ましくは炭素数2〜4であり、例えばアセチルアミノ
が挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ(好ま
しくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜1
0、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばメトキ
シカルボニルアミノが挙げられる。)、アリールオキシ
カルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より
好ましくは炭素数7〜12、特に好ましくは炭素数7〜
10であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノが
挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素
数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6、特に好まし
くは炭素数1〜4であり、例えばメタンスルホニルアミ
ノが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭
素数0〜10、より好ましくは炭素数0〜6、特に好ま
しくは0〜4であり、例えばスルファモイル、メチルス
ルファモイルが挙げられる。)、カルバモイル基(好ま
しくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6、
特に好ましくは炭素数1〜4であり、例えばカルバモイ
ル、メチルカルバモイルが挙げられる。)、アルキルチ
オ基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数
1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4であり、例えばメ
チルチオ、エチルチオ、カルボキシメチルチオが挙げら
れる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜2
0、より好ましくは炭素数6〜10、特に好ましくは炭
素数6〜8であり、例えばフェニルチオが挙げられ
る。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜8、より
好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4
であり、例えばメタンスルフィニルが挙げられる。)、
ウレイド基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは
炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4であり、例
えばウレイド、メチルウレイドが挙げられる。)、ヒド
ロキシ基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボ
キシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、ヘテロ環基
(例えばイミダゾリル、ピリジル)が挙げられる。置換
基として好ましくは、アルキル基、アリール基、アミノ
基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、ヘテ
ロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール
基、ヘテロ環基である。特に好ましくはアルキル基であ
る。これらの置換基は、さらに置換基を有してもよい。
Lで表されるアルキレン基は、好ましくは無置換であ
る。Xで表されるカルコゲン元素は、イオウ、セレン、
テルルが挙げられるが、好ましくはイオウ、セレンであ
り、より好ましくはイオウである。
【0021】一般式(I)で表される化合物のうち、好ま
しくは一般式(II)で表される化合物であり、より好ま
しくは一般式(III)で表される化合物である。最も好ま
しくは、アミノエタンチオレート(NH2CH2CH2S- ) であ
る。 一般式(II) NRR'−L −S- (式中、R,R'およびLは、それぞれ一般式(I)における
それらと同義であり、好ましい範囲も一般式(I)と同様
である。) 一般式(III) NH2−L −S- (式中、Lは一般式(I)におけるそれと同義であり、好
ましい範囲も一般式(I)と同様である。)
【0022】その他の配位子としては、一般に知られて
いるどんな配位子でもよいが、例えばコンプリヘンシブ
コーディナイション ケミストリー 4巻 ミドル
トランジション エレメンツペルガモン出版 1−12
71頁(Comprehensive Coordination Chemistry,Volum
e4,Middle Transition Elements,Pergamon Press,1-127
1)に記載の配位子を用いることができる。好ましくはH2
O、NH3、CO、N2、NO2、NO、CO2、SO2、SO3、N2H4、O2
PH3等の小分子、任意の有機化合物、または任意の陰イ
オン(CN-、Cl-、NO2 - 、SCN - 、OCN - 、SeCN-、TeC
N-、N3 -、C(CN) 3 -、CH-)であり、より好ましくは任意
の有機化合物である。
【0023】有機化合物とは、鎖式または環式の炭化水
素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭
素または水素原子が他の原子または原子団によって置き
換えられた化合物を指す。前述の様に配位子場効果の大
きさを考えると、有機化合物として好ましくは芳香族化
合物もしくは複素環化合物である。芳香族化合物として
は隣り合った2つの炭素原子にそれぞれ配位サイトとな
る置換基を持った化合物が好ましく、これらの例とし
て、ベラトール、カテコール、(+/-)-ハイドロベンゾイ
ン、1,2-ベンゼンジチオール、2-アミノフェノール、o-
アニシジン、1,2-フェニレンジアミン、2-ニトロナフト
ール、2-ニトロアニリン、1,2-ジニトロベンゼンが挙げ
られる。また、隣り合う2つの炭素原子に配位サイトと
なる置換基が結合した化合物ではないが、配位サイトと
なる2つの置換基が一つの金属に配位できる距離にある
芳香族化合物も好ましく、ベンジル、1,8-ジニトロナフ
タレン、1,8-ナフタレンジオール等が具体的化合物とし
て挙げられる。単座で配位する複素環化合物としては、
ヘテロ原子として酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テ
ルル原子、窒素原子を配位子中に持っていることが好ま
しく、燐原子を持っていることも好ましい。2座または
3座で金属または金属イオンに配位する複素環化合物と
しては、これらの単座で配位する複素環化合物が連結し
た環集合複素環化合物であることが好ましい。好ましく
は、フラン、チオフェニン、2H-ピロール、ピラン、ピ
リジン、及びこれらの誘導体である。
【0024】2座配位子として好ましくは2,2'-ビチオ
フェン、2,2'-ビピリジン、及びその誘導体が好まし
い。また、これらの2座配位子の骨格に縮合環を伴った
2,2'-ビキノリン、1,10-フェナントロリン、2,2':5',2"
-ターチオフェン、2,2':5',2"-ターピリジン及びそれら
の誘導体も好ましい。これらの誘導体中の置換基として
は金属イオンと相互作用しないものが好ましいが、金属
に配位できる置換基を持った場合でも、置換基内のドナ
ー原子が中心金属に配位し、配位子全体として2座配位
子もしくは3座配位子となることが出来るものはまた好
ましいと言える。置換基として具体的に好ましくは、水
素原子、置換もしくは非置換アルキル基(メチル基、エ
チル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、
t-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシ
ル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、t-オクチル基、イ
ソデシル基、イソステアリル基、ドデシルオキシプロピ
ル基、トリフルオロメチル基等)、アルケニル基、アル
キニル基、アラルキル基、シクロアルキル基(シクロヘ
キシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基等)、置換もし
くは非置換アリール基(フェニル基、p-トリル基、p-ア
ニシル基、p-クロロフェニル基、4-t-ブチルフェニル
基、2,4-ジ-t-アミノフェニル基等)、ハロゲン(フッ
素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、メルカプト基、
ヒドキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、ブトキシ基、
メトキシエトキシ基、ドデシルオキシ基、2-エチルヘキ
シルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、p-
トリルオキシ基、4-t-ブチルフェノキシ基等、アルキル
チオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、スルホニル
オキシ基、置換もしくは非置換アミノ基(アミノ基、メ
チルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチ
ルアニリノ基等)、アシル基(ホルミル基、アセチル基
等)である。また、ここで、これらの分子中で隣接する
置換基は、閉環して飽和炭素環、芳香族炭素環またはヘ
テロ芳香環を形成してもよい。
【0025】以下に本発明の具体例を示すが、これらに
限定されるものではない。 1.[Ru(H2O)(S2C2(Ph)2)(terpy)](CF2SO3)2 (terpy=terpyridine) 2.[Ru(H2O)(S2C7H6)(terpy)](CF2SO3)2 3.K3[Co(L-cys-N,S)3] (L-cysH2=L-cysteine 但し、L-cysは、L-cysteine中の H+ が2個解離してい ることを示す。またN,SはL-cys中のN原子とS原子が金属イオンに配位しているこ とを示す。以下の化合物についても同様である。) 4.[Co(L-cys-N,S)3Co(dien)] (dien=diethylenetriamine) 5.[Co(O,S-acen)(L-phe)] (L-pheH=L-phenylalanine、acenH2=N, N'-etylene-(acetylacetone-monothioacetylacetondiimine)) 6.Na[Co(mpa)(trien)] (mpaH= mercaptpropionic acid, trien =triethylenetetramine ) 7.[[Pt(terpy)SCH2]2C6H4]Cl2 8.[Cr(aet)3] (Haet = HSCH2CH2NH2) 9.K[Mn(aet)3] 10.Na[Fe(aet)3] 11.NH4[Co(aet)3] 12.[Rh(aet)3] 13.[Ir(aet)3] 14.Na[Ru(aet)3] 15.[Os(aet)3]
【0026】 16.[Co(Haet)3]Cl2 17.[Cu(aet)2] 18.[Zn(aet)2] 19.[Co(aet)(en)2]Cl 20.[Pt(terpy)(bat)]Cl4 (Hbat = HS(CH2)2N(CH2CH2NH2)2) 21.[Pt(terpy)(aet)]Cl 22.[Pd2[Pd(aet)2]4]Cl4 23.[Pt2(μ-L-accys-S)2(bpy)2] (L-accys = N-acetyl-L-cysteine) 24.[Pt2(μ-mpa-S)2(bpy)2] 25.[Pt2(μ-aet-S)2(bpy)2] 26.[Pt2(μ-cys-S)2(bpy)2] (cys=cysteine) 27.[MoO(catechol)(aet)2] (H2catechol=catechol) 28.[MoO(4-methylcatechol)(aet)2] (H24-methylcatechol=4-methylcate chol) 29.[[Rh(aese)3]4Zn4O](NO3)6 (Haese = 2-aminoethaneselenol) 30.[[Co(aese)3]4Zn4O](ClO4)6
【0027】 31.[Mo(NNC6H4Me-p)2(aet)2] 32.Hg3Cl4(H2O)4[Ni(aet)3]2 33.[Ni(aet)2] 34.[[(terpy)Pt(aet)]2Pt](BF4)4 35.[Co(HSCH2CH2NHC(:NH)NH2.HBr)3]Br3 36.[Cu(2-mercaptoethylguanidine)2]Cl2 37.[Co2(aet)2(dien)2]Cl4 38.[Co(en)2(Meaet)]Cl3 (Meaet=MeSCH2CH2NH2) 39.[Ir2(aet)4(cysta)]Cl2 (cysta= NH2CH2CH2SSCH2CH2NH2) 40.[Rh2(aet)4(cysta)]Cl2 41.K3[Ag3[Co(L-cys-N,S)3]2] 42.[Ir2(aet)4(cysta)](NO3)2 43.K4[Ni[Rh-(L-cys-N,S)3]2] 44.[Co(H3tg-O,S)(en)2]NO3 (H5tg = 1-thio-b-D-glucose) 45.[Co(H3tg-O,S)(tren)]NO3
【0028】 46.[Co(MeS)2(en)2](NO3) 47.[[Co(aese)3]4Zn3Cl]Cl5 48.[Co(pymt)3] (pymt=pyrimidine-2-tiol) 49.K2[Co(L-cys)3Co(D-pen)](D-H2pen =D-penicillamine) 50.[Co(di-Hatuc)(en)2]Cl (H2atuc=6-amino-2-thiouracil)
【0029】本発明ではドープする錯体分子は陽イオン
が主であり、陰イオンと塩を成した時にはその対陰イオ
ンとしては、水に溶解しやすくハロゲン化銀乳剤の沈澱
操作に適合しているものが好ましい。具体的にはハロゲ
ンイオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオ
ロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラ
フェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオン、
トリフルオロメタンスルホン酸を用いることが好まし
い。なお、対陰イオンとして、シアノイオン、チオシア
ノイオン、亜硝酸イオン、しゅう酸イオン等の配位性の
強い陰イオンいると、錯体の配位子と配位子交換反応を
起こし本発明の錯体の組成及び構造を保持出来ない可能
性があるため、これらの陰イオンを用いることは好まし
くない。
【0030】本発明の錯体はいくつかの方法によって合
成することが出来る。ルテニウム錯体に関してはCoord.
Chem. Rev. 84 (1988) 85-277が良くまとまった総説で
あり、これに挙げられている参考文献をもとに多くの錯
体が合成できる。他には第四版 実験化学講座(丸善株
式会社)17巻1−521頁、以下Coord. Chem. Rev.
と略す。)、インオーガニカ ケミカ アクタ1996
年243巻1−2号9−13頁(Inorganica Chimica A
cta, (1996), 243(1-2), 9-13.以下 Inorg. Chim. Acta
と略す。)、Inorg. Chim. Acta (1989), 162(2), 271-
5.、インオーガニック ケミストリー1995年34巻
17号4441−6頁(Inorganic Chemistry,(1995),
34(17), 4441-6. 。以下Inorg. Chem.と略す。)、Inor
g. Chem.(1985), 24(26), 4600-5. 、ジャーナル オブ
ジィ アメリカン ケミカルソサイエティー1980
年102巻2号858−60頁(Journal of the ameri
can chemical society, (1980), 102(2), 858-60.
。)、ケミカル コミュニケーションズ1998年2
号253−254頁(Chemical Communications (199
8), (2), 253-254.)、ポリヘドロン1992年11巻18
号2321−6頁(Polyhedron (1992), 11(18), 2321-
6.)、ジャーナル オブ ザ ケミカル ソサイエティ
ー、ダルトン トランスアクション1992年9号14
65−8頁(Journalof the Chemical Society, Dalton
Transaction (1992), (9), 1465-8. )、Bull. Korean
Chem. Soc. (1993), 14(4), 520-2. 、Cienc. Ind. Far
m. (1978),10(6), 171-4. 、Ars Pharm. (1977), 18
(3), 373-7.、日本化学雑誌1969年90巻6号56
1−4頁(Nippon Kagaku Zasshi (1969), 90(6), 561-
4.)、ブレタン オブ ザ ケミカル ソサイエティー
オブ ジャパン1998年71巻2153−2160
頁(Bulletin of the Chemical Society of Japan, (19
98), 71(9), 2153-2160 )、ケミストリー レターズ1
997年575−576頁(Chemistry Letters, (199
7), (6), 575-576 )、アクタ クリスタログラフィカ
C クリスタル ストラクチャー コミュニケーション
ズ1993年 C49巻222−224頁(Acta Crystal
lographica, C: Crystal Structure Communications,(1
993), C49(2), 222-4)、化学1993年48巻211頁
(Kagaku (Kyoto) (1993), 48(3), 211)、化学と工業1
992年45巻239−243頁(Kagaku to Kogyo (T
okyo) (1992), 45(2), 239-43)を参考にして合成するこ
とができる。
【0031】本発明の錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時
に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形
成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外
の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することに
より、ハロゲン化銀粒子内に含有させるのが好ましい。
さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内
へのドープを行ってもよい。
【0032】本発明の錯体をハロゲン化銀粒子にドープ
する場合、粒子内部に均一に存在させてもよいし、特開
平4−208936号、特開平2−125245号、特
開平3−188437号各公報に開示されている様に、
粒子表面層にドープしてもよく、粒子内部のみに錯体を
ドープし粒子表面にはドープなしの層を付加してもよ
い。本発明では粒子表面層にドープすることが好まし
い。また、米国特許第5,252,451号および5,
256,530号明細書に開示されているように、ドー
プさせた微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質しても
よい。また、錯体をドープした微粒子を調製し、その微
粒子を添加し物理熟成することにより、ハロゲン化銀粒
子に錯体をドープさせる方法も好ましい。さらに、上記
ドープ方法を組み合わせて用いてもよい。
【0033】錯体のドープ量は、ハロゲン化銀1モル当
たり1×10-9モル以上1×10-2モル以下が適当であり、
好ましくは1×10-7以上1×10-3モル以下である。
【0034】本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用い
るハロゲン化銀乳剤はハロゲン化銀として特に制限はな
く、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、沃塩化銀、沃臭化銀を
用いることができるが、純塩化銀乳剤を用いるよりも臭
化物イオンまたは沃化物イオンを含む乳剤であることが
より好ましい。ハロゲン化銀粒子のサイズに制限はない
が、球相当径で0.01〜3μm の粒子であれば好ましい。
ハロゲン化銀粒子の形状は、規則的な結晶系(正常晶粒
子)でも、不規則な結晶系でもよいが、正常晶粒子であ
ることがより好ましい。正常晶粒子には立方体、八面
体、十二面体、十四面体、二十面体及び四十八面体が含
まれる。不規則な結晶形には、球状およびじゃがいも状
が含まれる。また、本発明の錯体をドープするには双晶
面を一枚以上有する形状の粒子を用いてもよく、平行な
双晶面を二枚あるいは三枚有する角形平板粒子及び三角
形平板状粒子が好ましく用いられる。さらに平板状粒子
においては、その粒子サイズ分布が単分散であればより
好ましい。単分散平板状粒子の調製については特開昭6
3−11928号公報に記載がある。単分散六角形平板
状粒子については、特開昭63−151618号公報に
記載がある。円形単分散平板状粒子乳剤については、特
開平1−131541号公報に記載がある。また、特開
平2−838号公報には、全投影面積の95%以上が主平
面に平行な二枚の双晶面を持つ平板粒子で占められてお
り、かつ該平板状粒子のサイズ分布が単分散である乳剤
が開示されている。欧州特許514742A号明細書に
は、ポリアルキレンオキサイドブロックポリマーを用い
て調製された粒子サイズの変動係数が10%以下の平板状
粒子乳剤が開示されている。これらの技術を用いること
で本発明で好ましい単分散粒子を調製することが出来
る。
【0035】また、平板状粒子はその主平面が(10
0)と(111)のものが知られており、前者について
は、臭化銀に関して米国特許4,063,951号明細
書および特開平5−281640号公報に記載があり、
塩化銀に関して欧州特許0534395A1号および米
国特許5,264,337号各明細書に記載がある。後
者の平板状粒子は上記の双晶面を一枚以上有する種々の
形状を有する粒子であり、塩化銀に関しては米国特許
4,399,215号、同4,983,508号、同
5,183,732号各明細書、特開平3−13763
2号および同3−116113号各公報に記載がある。
本発明のドーパントは主平面が(100)の平板粒子に
対しても(111)の平板粒子に対しても好ましく適応
することが出来る。
【0036】ハロゲン化銀粒子は、転位線を粒子内に有
してもよい。ハロゲン化銀粒子中に転位をコントロール
して導入する技術に関しては、特開昭63−22023
8号公報に記載がある。この公報によれば、平均粒子径
/粒子厚み比が2以上の平板状ハロゲン化銀粒子内部に
特定の高ヨード相を設け、その外側を該高ヨード相より
もヨード含有率が低い相で覆うことによって転位を導入
することが出来る。この転位の導入により、感度の上
昇、保存性の改善、潜像安定性の向上、圧力カブリの減
少等の効果が得られる。この公報記載の発明によれば、
転位は主に平板粒子のエッジ部分に導入される。また、
中心部に転位が導入された平板粒子については、米国特
許5,238,796号明細書に記載がある。さらに、
特開平4−348337号公報には、内部に転位を有す
る正常晶粒子が開示されている同公報には正常晶粒子に
塩化銀または塩臭化銀のエピタキシーを生成し、そのエ
ピタキシーを物理熟成および/またはハロゲンによるコ
ンバージョンによって転位を導入出来ることが開示され
ている。本発明におけるハロゲン化銀粒子には高ヨード
相を設ける方法でも塩臭化銀エピタキシーを生成する方
法でも転位を導入することが出来、これらの様な転位の
導入によって、感度の上昇および圧力カブリの減少とい
う効果が得られた。ハロゲン化銀粒子中の転位線は、例
えば、J. F. Hamilton, Photo. Sci. Eng. 1967, 11,57
や、T. Shiozawa, J. Soc. Photo Sci.JAPAN, 1972, 3
5, 213によって記載の低温での透過型電子顕微鏡を用い
た直接法により観察することが出来る。すなわち、乳剤
から転位が発生するほどの圧力をかけないように注意し
て取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメ
ッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト)を
防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行
う。この時、粒子の厚みが厚いほど電子線が透過しにく
くなるので、高圧型(0.25μmの厚さに対し200 kV以
上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察すること
ができる。この様な方法により得られた粒子の写真によ
り、主平面に対し垂直な面から見た場合の各粒子につい
ての転位線の位置および数を求めることが出来る。本発
明は、ハロゲン化銀粒子のうち、50%以上の個数の粒子
が一粒子当たり10本以上の転位線を含む場合に効果があ
る。
【0037】ハロゲン化銀乳剤の調製において、粒子形
成時から塗布時までに添加することの出来る添加剤につ
いて特に制限はない。結晶形成課程で成長を促進するた
めに、また、粒子形成時および/または化学増感時に化
学増感を効果的にならしめるためにハロゲン化銀溶剤を
用いることができる。好ましいハロゲン化銀溶剤として
は、水溶性チオシアン酸塩、アンモニア、チオエーテル
やチオ尿素類が利用可能である。ハロゲン化銀溶剤の例
としては、チオシアン酸塩(米国特許2222264
号、同2448534号、同3320069号各明細書
記載)、アンモニア、チオエーテル化合物(米国特許3
271157号、同3574628号、同370413
0号、同4297439号、同4276347号明細書
記載)、チオン化合物(特開昭53−144319号、
同53−82408号、同55−77737号各公報記
載)、アミン化合物(特開昭54−100717号公報
記載)、チオ尿素誘導体(特開昭55−2982号記
載)、イミダゾール類(特開昭54−100717公報
記載)および置換メルカプトテトラゾール(特開昭57
−202531号公報記載)を挙げることができる。
【0038】ハロゲン化銀乳剤の製造方法については特
に制限はない。一般に、ゼラチン水溶液を有する反応溶
液に、効率のよい撹拌のもとに銀塩水溶液およびハロゲ
ン塩水溶液を添加する。具体的方法としては、P. Glafk
ides著 Chimie et PhysiquePhtographique (Paul Mont
el 社刊、1967年)、G.F. Dufin著 Photographic Emulsi
on Chemistry (The Forcal Press刊、1966年)、V. L. Z
elikman et al著 Making and Coating Photographic Em
ulsion (The Forcal Press 刊、1964年) 等に記載され
た方法を用いて調製することが出来る。すなわち酸性
法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また、
可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式として
は、片側混合法、同時混合法、それらの組み合わせ等の
いずれを用いても良い。本発明では同時混合法の一つの
形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一
定に保つ方法、即ち、いわゆるコントロールド・ダブル
ジェット法を好ましく用いる。また硝酸銀やハロゲン化
アルカリ水溶液の添加速度を粒子成長速度に応じて変化
させる方法(英国特許1535016号明細書、特公昭
48−36890号および同52−16364号各公報
に記載)や水溶液濃度を変化させる方法(米国特許42
42445号明細書および特開昭55−158124号
に記載)を用いて臨界過飽和度を超えない範囲において
早く成長させることが好ましい。これらの方法は、再核
発生を起こさず、ハロゲン化銀粒子が均一に成長するた
め、好ましく用いることが出来る。
【0039】反応容器に銀塩溶液とハロゲン溶液を添加
する代わりに、あらかじめ調製された微粒子を反応容器
に添加して、核形成および/または粒子成長を起こさせ
て、ハロゲン化銀粒子を得る方法を使うこともまた好ま
しい。この技術に関しては、特開平1−183644
号、同1−183645号、同2−44335号、同2
−43534号、同2−43535号各公報および米国
特許4879208号明細書に記載されている。この方
法によれば、乳剤粒子結晶内のハロゲンイオンの分布を
完全に均一にすることが出来、好ましい写真特性を得る
ことが出来る。さらに本発明においては、種々の構造を
持った乳剤粒子を用いることができる。粒子内部(コア
部)と外側(シェル部)から成る、いわゆるコア/シェ
ル二重構造粒子、さらに三重構造粒子(特開昭60−2
22844号公報に記載)や、それ以上の多層構造粒子
が用いられる。乳剤粒子の内部に構造を持たせる場合、
上述のような包み込む構造だけでなく、いわゆる接合構
造を有する粒子を作ることも出来る。これらの例は、特
開昭58−108526号、同59−16254号、同
59−133540号、特公昭58−24772号各公
報および欧州特許199290A2号明細書に記載され
ている。接合する結晶は、ホストとなる結晶と異なる組
成をもってホスト結晶のエッジやコーナー部、あるいは
面部に接合して成長させることが出来る。この様な接合
結晶は、ホスト結晶がハロゲン組成に関して均一であっ
ても、あるいはコア−シェル型の構造を有するものであ
っても形成させることができる。接合構造の場合には、
ハロゲン化銀同士の組み合わせは当然可能であるが、ロ
ダン銀、炭酸銀などの岩塩構造でない銀塩化合物をハロ
ゲン化銀と組み合わせて接合粒子をとることが可能あれ
ば用いてもよい。
【0040】これらの構造を有するヨウ臭化銀粒子の場
合、例えばコア−シェル型の粒子において、コア部のヨ
ウ化銀含有量が高く、シェル部のヨウ化銀含有率が低く
ても、また逆にコア部のヨウ化銀含有率が低く、シェル
部のヨウ化銀含有率が高い粒子でもよい。同様に接合構
造を有する粒子についても、ホスト結晶のヨウ化銀含有
率が高く、接合結晶のヨウ化銀含有率が相対的に低い粒
子であっても、その逆の粒子であってもよい。また、こ
れらの構造を有する粒子の、ハロゲン組成の異なる境界
部分は明確な境界であっても、組成差により混晶を形成
して不明確な境界であってもよく、また積極的に連続的
な構造変化を付けたものでもよい。本発明に用いるハロ
ゲン化銀乳剤は、粒子に丸みをもたらす処理(欧州特許
0096727B1号および同0064412B1号各
明細書に記載)、あるいは表面の改質処理(独国特許2
306447C2号明細書および特開昭60−2213
20号公報に記載)を行ってもよい。ハロゲン化銀乳剤
は表面潜像型が好ましい。ただし、特開昭59−133
542号公報に開示されている様に、現像液あるいは現
像の条件を選ぶことにより内部潜像型の乳剤も用いるこ
とが出来る。また、うすいシェルをかぶせる浅内部潜像
型乳剤も目的に応じて用いることが出来る。
【0041】ハロゲン化銀乳剤は、通常分光増感され
る。分光増感色素としては、通常メチン色素を用いるこ
とが好ましい。メチン色素には、シアニン色素、メロシ
アニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色
素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、ス
チリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。
これらの色素類には、塩基性ヘテロ環としてシアニン色
素類に通常利用される環のいずれをも適用できる。塩基
性ヘテロ環の例としては、ピロリン環、オキサゾリン
環、チアゾリン環、ピロール環、オキサゾール環、チア
ゾール環、セレナゾール環、イミダゾール環、テトラゾ
ール環およびピリジン環を挙げることができる。また、
ヘテロ環に環式炭化水素環や芳香族炭化水素環が縮合し
た環も利用出来る。縮合環の例としては、インドレニン
環、ベンズインドレニン環、インドール環、ベンズオキ
サドール環、ナフトオキサゾール環、ベンゾチアゾール
環、ナフトチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ベン
ズイミダゾール環およびキノリン環を挙げることが出来
る。これらの環の炭素原子上に置換基が結合していても
よい。メロシアニン色素または複合メロシアニン色素に
は、ケトメチレン構造を有する5員または6員のヘテロ
環を適用することが出来る。その様なヘテロ環の例とし
てしては、ピラゾリン−5−オン環、チオヒダントイン
環、2−チオオキサゾリジン−2、4−ジオン環、チア
ゾリジン−2、4−ジオン環、ローダニン環及びチオバ
ルビツール酸環を挙げることが出来る。
【0042】増感色素の添加量は、ハロゲン化銀1モル
当たり 0.001〜100 ミリモルであることが好ましく、0.
01〜10ミリモルであることがさらに好ましい。増感色素
は好ましくは化学増感中または化学増感前(例えば、粒
子形成時や物理熟成時)に添加される。
【0043】本発明においては、ハロゲン化銀粒子の化
学増感後の固有吸収の波長を持った光での感度(固有感
度)が改良される。すなわち、約 450nmより長波の光に
対する分光増感色素がハロゲン化銀粒子表面に吸着する
ことに起因する減感(増感色素による固有減感)を、本
発明の各錯体をドープすることによって減少させること
が出来る。本発明はハロゲン化銀の固有感度が増加する
効果に加えて、増感色素による固有減感をより有効に防
止出来るという効果も有する。
【0044】増感色素と共に、それ自身分光増感作用を
示さない色素、あるいは可視光を実質的に吸収しない物
質であって、強色増感を示す物質をハロゲン化銀乳剤に
添加してもよい。この様な色素または物質の例には、含
窒素複素環基で置換されたアミノスチル化合物(米国特
許第2,933,390号および同3,635,721
号各明細書に記載)、芳香族有機酸ホルムアルデヒド縮
合物(米国特許第3,743,510号明細書に記
載)、カドミウム塩およびアザインデン化合物が含まれ
る。増感色素と上記色素または物質との組み合わせにつ
いては、米国特許第3,615,613号、同3,61
5,641号、同3,617,295号および同3,6
35,721号各明細書に記載がある。
【0045】ハロゲン化銀乳剤は、一般に化学増感を行
って使用する。化学増感としてはカルコゲン増感(硫黄
増感、セレン増感、テルル増感)、貴金属増感(例、金
増感)及び還元増感をそれぞれ単独あるいは組み合わせ
て実施する。本発明では硫黄増感と金硫黄増感を組み合
わせた化学増感を好ましく用いたが、セレン増感、テル
ル増感を用いることも好ましい。硫黄増感においては、
不安定硫黄化合物を増感剤として用いる。不安定硫黄化
合物については、P.Glafkides著、Chimie et Physique
Photographeque(Paul Montel社刊、1987年、第5
版)、Research Disclosure 誌307巻307105
号、T.H.James編集、The Theory of the Photographic
Process(Macmillan社刊、1977年、第4版)、H.Friese
r著、Die Grundlagender Photographischen Prozess mi
t Silver-halogeniden(Akademische Verlags- geselbs
haft、1968年)に記載がある。硫黄増感剤の例には、チ
オ硫酸塩(例、チオ硫酸ナトリウム、p−トルエンチオ
スルフォネート)、チオ尿素類(例、ジフェニルチオ尿
素、トリエチルチオ尿素、N−エチル−N'−(4−メ
チル−2−チアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルト
リメチルチオ尿素)、チオアミド類(例、チオアセトア
ミド、N−フェニルチオアセトアミド)、ローダニン類
(例、ローダニン、N−エチルローダニン、5−ベンジ
リデンローダニン、5−ベンジリデン−N−エチル−ロ
ーダニン、ジエチルローダニン)、フォスフィンスルフ
ィド類(例、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チ
オヒダントイン類、4−オキソ−オキサゾリジン−2−
チオン類、ジポリスルフィド類(例、ジモルフォリンジ
スルフィド、シスチン、ヘキサチオカン−チオン)、メ
ルカプト化合物(例、システイン)、ポリチオン酸塩お
よび元素状硫黄が含まれる。活性ゼラチンも硫黄増感剤
として利用出来る。
【0046】セレン増感においては、不安定セレン化合
物を増感剤として用いる。不安定セレン化合物について
は、特公昭43−13489号、同44−15748
号、特開平4−25832号、同4−109240号、
同4−271341号および同5−40324号各公報
に記載がある。セレン増感剤の例には、コロイド状金属
セレン、セレノ尿素類(例、N,N−ジメチルセレノ尿
素、トリフルオロメチルカルボニル−トリメチルセレノ
尿素、アセチル−トリメチルセレノ尿素)、セレノアミ
ド類(例、セレノアセトアミド、N,N−ジエチルフェ
ニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例、ト
リフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェ
ニル−トリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフ
ォスフェート類(例、トリ−p−トリルセレノフォスフ
ェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セ
レノケトン類(例、セレノベンゾフェノン)イソセレノ
シアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類
およびジアシルセレニド類が含まれる。なお、亜セレン
酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類やセレニ
ド類のような比較的安定なセレン化合物(特公昭46−
4553号および同52−34492号各公報記載)
も、セレン増感剤として利用出来る。
【0047】テルル増感剤においては、不安定テルル化
合物を増感剤として用いる。不安定テルル化合物につい
てはカナダ国特許第800,958号、英国特許第1,
295,462号、同1,396,696号号各明細
書、特開平4−204640号、同4−271341
号、同4−333043号および同5−303157号
各公報に記載がある。テルル増感の例には、テルロ尿素
類(例、テトラメチルテルロ尿素、N,N’−ジメチル
エチレンテルロ尿素、N,N’−ジフェニルエチレンテ
ルロ尿素)、フォスフィンテルリド類(例、ブチル−ジ
イソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォス
フィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、
エトキシ−ジフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシ
ル(ジ)テルリド類(例、ビス(ジフェニルカルバモイ
ル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカル
バモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチ
ルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニ
ル)テルリド)、イソテルロシアナート類(例、アリル
イソテルロシアナート)、テルロケトン類(例、テルロ
アセトン、テルロアセトフェノン)、テルロアミド類
(例、テルロアセトアミド、N,N−ジメチルテルロベ
ンズアミド)、テルロヒドラジド類(例、N,N',N'
−トリメチルテルロベンズヒドラジド)、テルロエステ
ル類(例、t−ブチル−t−ヘキシルテルロエステ
ル)、コロイド状テルル、(ジ)テルリド類及びその他
のテルル化合物(例、ポタシウムテルリド、テルロペン
タチオネートナトリウム塩)が含まれる。
【0048】貴金属増感においては、金、白金、パラジ
ウム、イリジウム等の貴金属の塩を増感剤として用い
る。貴金属塩については、P.Grafkides著、Chimie et P
hysique Photographique(Paul Montel社刊、1987年、第
5版)、Research Disclosure誌 307巻307105号
に記載がある。金増感が特に好ましい。金増感の例に
は、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオ
ーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドが含まれ
る。また、米国特許第2,642,361号、同5,0
49,484号、同5,049,485号各明細書に記
載の金化合物も用いることが出来る。
【0049】還元増感においては、還元性化合物を増感
剤として用いる。還元性化合物については、P.Grafkide
s著、Chimie et Physique Photographique(Paul Montel
社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure 誌 307
巻307105号に記載がある。還元増感剤の例には、
アミノイミノメタンスルフィン酸(二酸化チオ尿素)、
ボラン化合物(例、ジメチルアミンボラン)、ヒドラジ
ン化合物(例、ヒドラジン、p−トリルヒドラジン)、
ポリアミン化合物(例、ジエチレントリアミン、トリエ
チレンテトラミン)、塩化第1スズ、シラン化合物、レ
ダクトン類(例、アスコルビン酸)、亜硫酸塩、アルデ
ヒド化合物および水素が含まれる。また、高pHや銀イオ
ン過剰(いわゆる銀熟成)の雰囲気によって、還元増感
を実施することも出来る。
【0050】化学増感は二種以上を組み合わせて実施し
てもよい。組合せとしては、カルコゲン増感と金増感の
組合せが特に好ましい。また、還元増感はハロゲン化銀
粒子の形成時に施すのが好ましい。増感剤の使用量は、
一般に使用するハロゲン化銀粒子の種類と化学増感の条
件により決定する。カルコゲン増感剤の使用量は、一般
にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モルであり、10
-7〜5×10-3モルであることが好ましい。貴金属増感剤
の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-2モル
であることが好ましい。化学増感の条件に特に制限はな
い。pAgとしては6〜11であり、好ましくは7〜10であ
る。pHは4〜10であることが好ましい。温度は40〜95℃
であることが好ましく、45〜85℃であることがさらに好
ましい。
【0051】ハロゲン化銀乳剤は、感光材料の製造工
程、保存中あるいは写真処理中のカブリを防止し、ある
いは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含
有させることが好ましい。この様な化合物の例には、ア
ゾール類(例、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロインダゾ
ール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ベン
ズイミダゾール類(特にニトロ−またはハロゲン置換
体))、ヘテロ環メルカプト化合物類イミダゾール類
(例、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチア
ゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプ
トチアジアゾール類、メルカプトテトラゾール類、(特
に、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール)、メ
ルカプトピリミジン類)、カルボキシル基やスルホン基
などの水溶性基を有する上記のヘテロ環メルカプト化合
物類、チオケト化合物(例、オキサゾリンチオン)、ア
ザインデン類(例、テトラアザインデン類(特に、4−
ヒドロキシ置換(1, 3, 3a, 7)テトラアザインデン
類))、ベンゼンチオスルホン酸類及びベンゼンスルフ
ィン酸が含まれる。一般にこれらの化合物は、カブリ防
止剤または安定剤として知られている。
【0052】カブリ防止剤または安定剤の添加時期は、
通常、化学増感を施した後に行われる、しかし、化学増
感の途中または化学増感の開始以前の時期の中から選ぶ
ことも出来る。すなわち、ハロゲン化銀乳剤粒子形成過
程において、銀塩溶液の添加中でも、添加後から化学増
感開始までの間でも、化学増感の途中(化学増感時間
中、好ましくは開始から50%までの時間内により好まし
くは20%までの時間以内)でもよい。
【0053】ハロゲン化銀写真材料の層構成について特
に制限はない。但し、カラー写真材料の場合は、青色、
緑色および赤色光を別々に記録するために多層構造を有
する。各ハロゲン化銀乳剤層は高感度層と低感度層に二
層からなっていてもよい。実用的な層構成の例を下記
(1)〜(6)に挙げる。
【0054】 (1)BH/BL/GH/GL/RH/RL/S (2)BH/BM/BL/GH/GM/GL/RH/R
M/RL/S (3)BH/BL/GH/RH/GL/RL/S (4)BH/GH/RH/BL/GL/RL/S (5)BH/BL/CL/GH/GL/RH/RL/S (6)BH/BL/GH/GL/CL/RH/RL/S
【0055】Bは青色感性層、Gは緑色感性層、Rは赤
色感性層、Hは最高感度層、Mは中間感度層、Lは低感
度層、Sは支持体、そしてCLは重層効果付与層であ
る。保護層、フィルター層、中間層、ハレーション防止
層や下引層のような非感光性層は省略してある。同一感
色性の高感度層と低感度層を逆転して配置してもよい。
(3)については、米国特許4,184,876号明細
書に記載がある。(4)については、Research Disclos
ure 誌 225巻22534号、特開昭59−177551
号および同59−177552号各公報に記載がある。
また、(5)と(6)については、特開昭61−345
41号公報に記載がある。好ましい層構成は(1)、
(2)および(4)である。本発明のハロゲン化銀写真
材料は、カラー写真材料以外にも、X線感光材料、黒白
撮影感光材料、製版用感光材料や印画紙にも同様に適用
することが出来る。
【0056】ハロゲン化銀乳剤の種々の添加剤(例、バ
インダー、化学増感剤、分光増感剤、安定剤、ゼラチ
ン、硬化剤、界面活性剤、帯電防止剤、ポリマーラテッ
クス、マット剤、カラーカプラー、紫外線吸収剤、退色
防止剤、染料)、写真材料の支持体および写真材料の処
理方法(例、塗布方法、露光方法、現像処理方法)につ
いては、Research Disclosure 誌 176巻17643号
(RD-17643)、同 187巻18716号(RD-18716)、同
225巻22534号(RD-22534)の記載を参考にするこ
とが出来る。これらのResearch Disclosure 誌に記載を
以下の一覧表に示す。
【0057】 ────────────────────────────── 添加剤種類 RD-17643 RD-18716 RD-22534 ────────────────────────────── 1 化学増感剤 23頁 648頁右欄 24頁 2 感度上昇剤 同上 3 分光増感剤、 23〜24頁 648 頁右欄 24〜28頁 強色増感剤 〜649頁右欄 4 増 白 剤 24頁 5 被り防止剤、 24〜25頁 649頁右欄 24頁、31頁 安定化剤 6 光吸収剤、 25〜26頁 649頁右欄 フィルター染料 〜650頁左欄 紫外線吸収剤 7 ステイン防止剤 25頁右欄 650頁左欄〜右欄 8 色素画像安定剤 25頁 32頁 9 硬 膜 剤 26頁 651頁左欄 32頁 10 バインダー 26頁 同上 28頁 11 可塑剤、潤滑剤 27頁 650頁右欄 12 塗布助剤、 26〜27頁 同上 表面活性剤 13 スタチック防止剤 27頁 同上 14 カラーカプラー 25頁 649頁 31頁 ──────────────────────────────
【0058】ゼラチン硬化剤としては、例えば、活性ハ
ロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−
1,3,5−トリアジンおよびそのナトリウム塩など)
および活性ビニル化合物(1,3−ビスビニルスルホニ
ル−2−プロパノール、1,2−ビス(ビニルスルホニ
ルアセトアミド)エタンあるいはビニルスルホニル基を
鎖に有するビニル系ポリマーなど)は、ゼラチンなど親
水性コロイドを早く硬化させ安定な写真特性を与えるの
で好ましい。N−カルバモイルピリジニウム塩類((1
−モルホリノカルボニル−3−ピリジニオ)マタンスル
ホナートなど)やハロアミジニウム塩類(1−(1−ク
ロロ−1−ピリジノメチレン)ピロリジニウム2−ナフ
タレンスルホナートなど)も硬化速度が早く好ましく用
いることが出来る。
【0059】カラー写真材料は、Research Disclosure
誌 176巻17643号、同 187巻18716号、に記載
された通常の方法によって現像処理することが出来る。
カラー写真感光材料は、現像、漂白定着もしくは定着処
理の後に通常、水洗処理または安定剤処理を施す。水洗
工程は二槽以上の槽を向流水洗にし、節水するのが一般
的である。安定化処理としては水洗工程のかわりに特開
昭57−8543号公報記載の様な多段向流安定化処理
が代表例として挙げられる。
【0060】
【実施例】以下に、本発明を具体例により詳細に説明す
るが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】実施例1 「乳剤1-1;臭化銀八面体乳剤の試料の調製(1)」870 ml
の水に36 gの脱イオンゼラチンと0.25 gの臭化カリウム
を加えて溶解した。75℃に保ったこのゼラチン水溶液中
に撹拌しながら0.088 M硝酸銀水溶液(溶液1)36mlと
0.088 M臭化カリウム水溶液(溶液2)36mlを10分間ダ
ブルジェット法で定量添加し、続いて溶液1と溶液2の
各々176 mlを7分間でダブルジェット法で添加した。そ
の後、0.82 M硝酸銀水溶液(溶液3)898 mlを始め0.53
ml/minの流速から流量を加速して90分間添加を行い、同
時に0.90M臭化カリウム水溶液(溶液4)をpBrを2.93に
保つようにコントロールしながら添加した。続いて90ml
の溶液3を5分間でさらに定量添加し、同時に溶液4と
同じ濃度の臭化カリウム水溶液(溶液5)をpBrを2.93に
保つようにコントロールしながら添加した。溶液添加終
了5分後、35℃まで降温し、通常の沈降法により可溶性
塩類を除去した後、再び40℃に昇温し、50 gゼラチンを
追添して溶解し、さらに臭化カリウム、2―フェノキシ
エタノールを添加、pHは 6.5に調整した。得られた粒子
は辺長0.5 μm の単分散臭化銀八面体であった。
【0062】「乳剤1-2〜1-6:[Fe(CN)6]4-、[RuCl4(bp
y)]-、[Ru(CN)5(MTP)]3-、[Ru(CN)5(SHBzIm)]3-、[Ru(t
hia)6]2+をドープした臭化銀八面体乳剤」(比較例)
乳剤1-1の調製方法において、溶液5に[Fe(CN)6]4-、[R
uCl4(bpy)]- (bpy = 2,2'-bipyridine)、[Ru(CN)5(MT
P)]3- (MTP = 5-methyl-s-triazolo(1.5-A)-pyrimidin-
7-ol)、[Ru(CN)5(SHBzIm)]3-(SHBzIm = 2-mercaptobenz
imidazole)、または[Ru(thia)6]2+(thia = thiazole)を
この部分に添加される銀1モルに対して1×10-5モルの
割合で添加することによって乳剤1-2〜1-6をそれぞれ得
た。(この部分に添加される銀量は全銀量に対して10%
に相当するので、これらのドーパントは粒子体積で90%
〜100%の部分(粒子表面から10%までの表面層)に添加さ
れたことになる)
【0063】「乳剤1-7〜1-18:本発明の各錯体をドー
プした臭化銀八面体乳剤」(本発明) 乳剤1-1の調製方法において、溶液5に本発明化合物
1、3、4、6、10、14、19、37、38、4
8、49、50をこの部分に添加される銀1モルに対し
て1×10-5モルの割合で添加することによって乳剤1-7〜
1-18を得た。
【0064】上記の臭化銀乳剤1-1〜1-18に銀1モルあ
たり8.0×10-6モルのチオ硫酸ナトリウムと9.6×10-6
ルの塩化金酸及び3.4×10-4モルのチオシアン酸カリウ
ムを添加し60℃で最適に化学増感した。これら化学増感
した乳剤1-1〜1-18に下記の増感色素を4.9×10-4モル
/モルAg加えて分光増感を施し、それぞれゼラチン、ド
デシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを加えて、下塗層
を有するトリアセチルセルロースフィルム支持体上に、
ゼラチン、ポリメチルメタクリレート粒子、2,4-ジクロ
ロ-6-ヒドロキシ-s-トリアジンナトリウム塩を含む保
護層と共に押し出し法によりそれぞれ銀量2g/m2で塗布
し、塗布試料1-1〜1-18をそれぞれ得た。
【0065】
【化1】
【0066】これら試料に、センシトメトリー用露光
(1秒、10-3秒)を光学楔を介して与えたあと、下記処
方で得た現像液1で、20℃10分間現像したあと常法によ
り停止、定着、水洗、乾燥し、光学濃度を測定した。カ
ブリは、試料の最小光学濃度で求め、感度は、カブリ+
0.1の光学濃度を得るのに必要な露光量の逆数で表し、
それぞれドープなし試料での値を100とする相対値とし
て表した。表1には塗布試料1-1〜1-18の各試料に分光
増感色素が吸収を持つ波長で露光した時の相対感度をそ
れぞれ示した。
【0067】現像液1 メトール 2.7g L−アスコルビン酸 11.0g ナボックス 36.0g KBr 1.1g 水を加えて1リットルとし、pHを9.6に合わせる。
【0068】
【表1】
【0069】表1には本発明の各錯体をハロゲン化銀粒
子の体積で90〜100%にあたる層(表面層)にドープした
乳剤の写真感度を示した。本発明のドーパントを用いた
乳剤はいずれの場合もドープなしの乳剤より高感化し、
全ての配位子が無電荷の錯体でより大きな高感化がもた
らされることがわかった。特に、本発明化合物4、37
をドープした乳剤で高感度化の効果が大きかった。表1
の様に[RuCl4(bpy)]-をドープした乳剤では明らかな減
感こそ見られなかったが、高感化に対してはほとんど効
果を示さなかった。[Ru(CN)5(MTP)]3-、及び、[Ru(CN)5
(SHBzIm)]3-は、特開平11−102042号公報に有
効な高感化ドーパントであることが記載されているが、
本発明におけるほとんどのドープ乳剤でこれら2つのシ
アノ錯体をドープしたそれぞれの乳剤の感度を大きく上
回り、本発明においては高感度化の効果の小さい部類の
48、あるいは50をドープした乳剤であっても、1秒
露光の時には[Ru(CN)5(MTP)]3-、[Ru(CN)5(SHBzIm)]3-
をドープした乳剤の感度を上回ることがわかった。
【0070】実施例2 「乳剤2-1;臭化銀八面体乳剤の試料の調製(2)」実施例
1の乳剤1-1と同じ方法で臭化銀八面体乳剤を調製し、
乳剤2-1とした。
【0071】「乳剤2-2:[Fe(CN)6]4-をドープした臭化
銀八面体乳剤」(比較例) 実施例1の乳剤1-1の調製方法において、溶液5に[Fe(C
N)6]4-をこの部分に添加される銀1モルに対して1×10
-4モル、または5×10-4モルの割合で添加することによ
って、乳剤2-2Aまたは2-2Bをそれぞれ得た。
【0072】「乳剤2-3:本発明化合物37を粒子表面
層にドープした臭化銀八面体乳剤」(本発明) 実施例1の乳剤1-1の調製方法において、溶液5に本発
明化合物37をこの部分に添加される銀1モルに対して
2.5×10-4モル、または4×10-4モルの割合で添加するこ
とによって、乳剤2-3Aおよび2-3Bをそれぞれ得た。
【0073】「乳剤2-4:本発明化合物37を粒子内に
均一ドープした臭化銀八面体乳剤」(本発明) 実施例1の乳剤1-1の調製方法において、溶液4および
溶液5に本発明化合物37をこの部分に添加される銀1
モルに対して5×10-4モルまたは2.5×10-4モルの割合で
添加することによって、乳剤2-4Aおよび2-4Bをそれぞれ
得た。
【0074】「乳剤2-5:本発明の本発明化合物37を
粒子内部にドープした臭化銀八面体乳剤」(本発明) 実施例1の乳剤1-1の調製方法において、溶液4に本発
明化合物37をこの部分に添加される銀1モルに対して
5×10-4モルまたは1×10-4モルの割合で添加することに
よって、乳剤2-5Aおよび2-5Bをそれぞれ得た。
【0075】上記の臭化銀乳剤2-1および2-2A〜2-5Aを
実施例1と同じ方法で最適に化学増感した後、実施例1
と同じ方法で支持体上に塗布することにより、塗布試料
2-1a〜2-5aを得た。乳剤2-1および2-2B〜2-5Bには、上
記と同様に最適に化学増感した後、実施例1の増感色素
を4.9×10-4モル/モルAg加えて分光増感を施し、塗布
試料2-1a〜2-5aと同じ方法で塗布し、塗布試料2-1b〜2-
5bを得た。
【0076】これら各試料に、センシトメトリー用露光
(1秒、10-3秒)を光学楔を介して与えたあと、実施例
1に示した現像液1で、20℃10分間現像したあと常法に
より停止、定着、水洗、乾燥し、光学濃度を測定した。
カブリは、試料の最小光学濃度で求め、感度は、カブリ
+0.1の光学濃度を得るのに必要な露光量の逆数で表
し、それぞれドープなし試料での値を100とする相対値
として表した。表2には塗布試料2-1a〜2-5a(分光増感
色素ブランク試料)の各試料にハロゲン化銀の固有吸収
が見られる波長で露光した時の相対感度、及び、塗布試
料2-1b〜2-5b(分光増感色素を添加した試料)に分光増
感色素が吸収を持つ波長で露光した時の相対感度をそれ
ぞれ示した。
【0077】
【表2】
【0078】ここでは実施例1において最も高い感度が
得られたドーパントである本発明化合物37に関して、
ドーパントの添加位置および添加量について検討した。
表2では、比較例として挙げた[Fe(CN)6]4-も含めて、
各ドーパントの添加量を1×10 -6 mol/molAgから5×10-4
mol/molAgまで変化させ、各ドープ位置における最高感
度が得られた添加量での相対感度を示してある(ドーパ
ント添加量は乳剤調製時に添加した全銀量に対する銀1
モル当たりの錯体添加量を記載した)。増感色素の添加
がない場合には本発明化合物37を粒子内部のみにドー
プした乳剤で最も高い感度が得られ、[Fe(CN)6]4-をド
ープした乳剤の感度を上回った。この効果は10-3秒露光
の時により大きかった。一方、増感色素が添加された乳
剤においては(増感色素の吸収波長で露光した時)各ド
ープ乳剤とも著しい高感度化が見られた。特に粒子内に
均一にドープした乳剤と粒子内部のみにドープした乳剤
で著しい高感度化が見られ、中でも、粒子内部のみにド
ープした時には特に著しい効果が見られた。この乳剤で
は1秒露光、10-3秒露光、いずれの場合にも[Fe(CN) 6]4-
をドープした高感度化乳剤の最高感度を大幅に上回っ
た。
【0079】実施例3 K4[Fe(CN)6]及び本発明化合物37をそれぞれ溶存酸素
を除去していない純水を用いて1.0mM水溶液を調液し
た。6時間後、12時間後、24時間後の分光吸収スペク
トルを測定し、化合物の残存量を算出した。開始時を1
00%としたときの経時での残存量を以下に示した。 本発明化合物の方が、調液後の経時安定性において優位
であることがわかった。
【0080】実施例4 「乳剤3;本発明化合物37を粒子内に均一ドープした
臭化銀八面体乳剤」実施例2で得られた乳剤2-4Aを最適
に化学増感し、分光増感を施した後、特開平9−146
237号の実施例2の試料201の感材の第3層の乳剤と
して使用し、同特開平の実施例と同じ処理をして良好な
結果が得られた。
【0081】実施例5 特開平1−158426号の実施例および特開平3−2
37450号に記載を参考にして作られたハロゲン化銀
平板粒子(全投影面積の60%以上がアスペクト比8の
平板粒子)を用いて、本発明化合物を本件実施例2と同
様に表面、および均一、内部にドープしたところ良好な
結果が得られた。かくして得られた乳剤を実施例4と同
様にしして特開平9―146237号の実施例2の試料
201の第3層に用いて該実施例と同様に処理して良好
な結果を得た。
【0082】
【発明の効果】本発明の錯体をハロゲン化銀粒子にドー
プすると、実施例に示したようにドープなしの乳剤ある
いはヘキサシアノ錯体等の既存のドーパントをドープし
た乳剤よりも、大幅に高感度で固有減感の小さいハロゲ
ン化銀感光材料を得ることができる。また、本発明化合
物は調液後の経時安定性が高いので、製造適性に優れて
いる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持体上に少なくとも一層のハロゲン化
    銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、
    元素周期律表の第4〜6周期でかつ第3族〜11族の遷
    移金属元素あるいは第4〜6周期でかつ第12〜14族
    の典型金属元素より選ばれた金属または金属イオンを1
    個以上含み、有機化合物のN原子とカルコゲン原子を少
    なくとも一つずつ配位元素として有する金属錯体を含有
    することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
  2. 【請求項2】 元素周期律表の第4〜6周期でかつ第3
    族〜11族の遷移金属元素あるいは第4〜6周期でかつ
    第12〜14族の典型金属元素より選ばれた金属または
    金属イオンを1個以上含み、同一分子内に有機化合物の
    N原子とアルキル置換されたカルコゲン原子を配位元素
    として有する配位子が配位した金属錯体を含有すること
    を特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀写真感光材
    料。
  3. 【請求項3】 元素周期律表の第4〜6周期でかつ第3
    族〜11族の遷移金属元素あるいは第4〜6周期でかつ
    第12〜14族の典型金属元素より選ばれた金属または
    金属イオンを1個以上含み、一般式(I)で表される配位
    子を少なくとも一つ有する錯体を含有することを特徴と
    する請求項2記載のハロゲン化銀写真感光材料。 一般式(I) NRR'− L−XR'' (式中、R及びR'は水素原子、または置換基を表す。Lは
    置換基を有してもよいアルキレン基を表す。Xはカルコ
    ゲン元素を表す。R"は水素原子、アニオンまたは置換基
    を表す。)
  4. 【請求項4】 元素周期律表の第4〜6周期でかつ第3
    族〜11族の遷移金属元素あるいは第4〜6周期でかつ
    第12〜14族の典型金属元素より選ばれた金属または
    金属イオンを1個以上含み、一般式(I)で表される配位
    子を少なくとも一つ有し、有機配位子または元素周期律
    表の第4〜6周期でかつ第3族〜11族の遷移金属元素
    あるいは第4〜6周期でかつ第12〜14族の典型金属
    元素による結合によって中心金属の半分を超える配位サ
    イトが占められる錯体を含有することを特徴とする請求
    項3記載のハロゲン化銀写真感光材料。
  5. 【請求項5】 元素周期律表の第4〜6周期でかつ第3
    族〜11族の遷移金属元素あるいは第4〜6周期でかつ
    第12〜14族の典型金属元素より選ばれた金属または
    金属イオンを2個以上含み、一般式(I)で表される配位
    子を少なくとも一つ有し、有機化合物によって中心金属
    の半分を超える配位サイトが占められる錯体を含有する
    ことを特徴とする請求項4記載のハロゲン化銀写真感光
    材料。
  6. 【請求項6】 一般式(I)で表される配位子がアミノエ
    タンチオレートである請求項3に記載のハロゲン化銀写
    真感光材料。
  7. 【請求項7】 金属錯体を少なくとも一種含有するハロ
    ゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀粒子の全投影面積の60
    %以上をアスペクト比8以上の平板状ハロゲン化銀粒子
    が占められることを特徴とする請求項1から7のいずれ
    かに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
  8. 【請求項8】 支持体上にそれぞれ少なくとも一層の青
    感性乳剤層、緑感性乳剤層、赤感性乳剤層、及び親水性
    保護コロイド層を有することを特徴とする請求項1から
    7のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012532928A (ja) * 2009-07-13 2012-12-20 アイビー ファーム エルエルシー 低分子量薬理学的活性モジュレータ

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