JP2001081506A - 磁性粉製造用先駆物質およびこれから得た強磁性金属粉末 - Google Patents

磁性粉製造用先駆物質およびこれから得た強磁性金属粉末

Info

Publication number
JP2001081506A
JP2001081506A JP25849199A JP25849199A JP2001081506A JP 2001081506 A JP2001081506 A JP 2001081506A JP 25849199 A JP25849199 A JP 25849199A JP 25849199 A JP25849199 A JP 25849199A JP 2001081506 A JP2001081506 A JP 2001081506A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
particles
content
magnetic
powder
precursor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP25849199A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3640577B2 (ja
Inventor
Kazuhisa Saito
和久 斉藤
Koki Kato
弘毅 加藤
Akio Sawabe
明朗 沢辺
Kenichi Inoue
健一 井上
Takayuki Yoshida
貴行 吉田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dowa Holdings Co Ltd
Original Assignee
Dowa Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dowa Mining Co Ltd filed Critical Dowa Mining Co Ltd
Priority to JP25849199A priority Critical patent/JP3640577B2/ja
Publication of JP2001081506A publication Critical patent/JP2001081506A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3640577B2 publication Critical patent/JP3640577B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Magnetic Record Carriers (AREA)
  • Hard Magnetic Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高密度記録に適した塗布型磁気記録媒体用の
強磁性金属粉末とその先駆物質を得る。 【解決手段】 オキシ水酸化鉄または酸化鉄に,Co,
Al,SiおよびR(RはYを含む希土類元素の少なく
とも一種を表す)を含有させた針状粒子からなる磁性粉
製造用先駆物質であって,該針状粒子が,Feに対して
Coを0超え〜50at.%含有し且つFeに対して0.1
〜30at.%のAlを固溶した粒子の表層部に,SiとR
(ただし,粒子中のSi含有量はFeに対して0.1〜
10at.%でR含有量はFeに対して0.1〜15at.%で
ある)を含む層が被着したものである磁性粉製造用先駆
物質。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,強磁性金属粉末を
製造するのに好適な先駆物質に係り,特に,高密度磁気
記録媒体用強磁性金属粉末の製造に適するように変性さ
れたオキシ水酸化鉄系または酸化鉄系の粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気テープや磁気デイスク等の塗布型磁
気記録媒体の分野において,小型化,高容量化および長
時間耐久化等の要望から高記録密度化が進んでいる。高
記録密度化が進むと,磁性粉自体が高Hcおよび高σs
を有していることに加え,テープ特性として保磁力が高
く且つSFDが狭いこと(小さいこと)と角形比(Br
/Bm)が大きいこと等が要求される。
【0003】ここで,SFD値は,周知のように,テー
プのヒステリシスループのHc(保磁力) に対するその微
分半値幅ΔHの比, ΔH/Hc 分布で表されるものであ
り,SFD値が大きいと磁化の立上りが急峻でなくな
り,したがって,記録された信号の磁化反転の遷移領域
の幅が大きくなるので,高密度の記録には適さない。S
FD値の小さいものとしてはバリウムフエライトの磁性
粉を用いたものが知られている。しかし,メタル系磁性
粉を用いたものでは一般にSFD値が高くなり,この値
が0.40以下のものは知られていない。酸化鉄磁性粉
(Coで変性したもの)ではSFD値が0.40に達し
たものも報告されている。
【0004】角形比(Br/Bm)は,テープの飽和磁
束密度Bmに対するテープの残留磁束密度Brの比であ
り,Bmは磁性粉の飽和磁気量σs とテープにしたとき
の磁性粉の充填性で決まる。この角形比(Br/Bm)
が高いと出力が向上する。したがって,高密度記録には
角形比が高ければ高いほどよいが,メタル磁性粉を用い
たテープではこれまでのところ角形比が0.92までに
達したものが報告されている。しかし,角形比が0.9
3以上および又はSFD値が0.25以下を示すような
高密度記録媒体は,メタル磁性粉を用いたテープでは知
られていない。
【0005】現在,高いHcと高いσs を有するメタル
磁性粉として,鉄を主成分とする金属磁性粉末が実用化
され,オーデイオ用,8mmVTR用,データ保存用テ
ープ等の磁気記録媒体の磁性層を構成するのに幅広く利
用されている。このような鉄を主成分とする金属磁性粉
末は,針状の酸化鉄またはオキシ水酸化鉄の粉末を原料
として,これを加熱還元することによって一般に製造さ
れる。この加熱還元時に,針状性が失われたり,粒子間
の焼結が発生したりして品質が劣化するので,これを改
善するための様々な提案がなされている。
【0006】例えば,針状粒子表面にSi,Al,T
i,Ca,Zr,Mn,Zn,Ni,B,Mo,Cd,
Pなどの元素やY,La,Ce,Pr,Nd,Pmをは
じめとする希土類元素などを被着させる提案(特開平1
0−83906号,特開平9−171913号,特開平
9−171914号,特開平8−236327号公報,
特開平8−236326号公報,特開平8−10203
7号公報,特開平7−210856号公報,特開平6−
25702号公報,特開平4−61302号公報,特開
平2−107701号公報,特開昭63−13121号
公報など)や,Alを固溶したオキシ水酸化鉄または酸
化鉄を還元する方法(特公昭59−17161号公報)
が知られている。このような提案について一般的に言え
ることは,AlまたはSiを含有したオキシ水酸化鉄や
酸化鉄を原料として加熱還元すると,針状性の保持や焼
結防止に有益に作用するということである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前記のような様々な提
案がなされているにも拘わらず,これまでの鉄を主成分
として金属磁性粉末の分野では,高記録密度化のための
さらなる要求には対応できなかったというのが実状であ
る。例えば,テープ特性として(保磁力が2400(O
e )以上,角形比(Br/Bm)が0.93以上,およ
び又はSFD値が0.25以下を達成できるような高密
度磁気記録に適する塗布型磁気記録媒体用の磁性粉は,
針状のオキシ水酸化鉄や酸化鉄を原料として製造する鉄
を主体とする金属磁性粉末の分野では,実現できていな
かった。本発明の課題はこれを実現することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
めの手段として,本発明によれば,オキシ水酸化鉄また
は酸化鉄に,Co,Al,SiおよびR(RはYを含む
希土類元素の少なくとも一種を表す)を含有させた針状
粒子からなる磁性粉製造用先駆物質であって,該針状粒
子が,Feに対してCoを0超え〜50at.%含有し且つ
Feに対して0.1〜30at.%のAlを固溶した粒子の
表層部に,SiとR(ただし,粒子中のSi含有量はF
eに対して0.1〜10at.%でR含有量はFeに対して
0.1〜15at.%である)を含む層が被着したものであ
る磁性粉製造用先駆物質を提供する。
【0009】また本発明によれば,オキシ水酸化鉄また
は酸化鉄に,Co,Al,SiおよびR(RはYを含む
希土類元素の少なくとも一種を表す)を含有させた針状
粒子からなる粉末をガス還元してなる強磁性金属粉末で
あって,還元前の前記の針状粒子が,Feに対してCo
を0超え〜50at.%含有し且つFeに対して0.1〜3
0at.%のAlを固溶した粒子の表層部に,SiとR(た
だし,粒子中のSi含有量はFeに対して0.1〜10a
t.%でR含有量はFeに対して0.1〜15at.%である)
を含む層が被着したものである,強磁性金属粉末を提供
する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明者らは前記の課題を解決す
べく,針状のオキシ水酸化鉄または酸化鉄を原料とし
て,これに各種の元素をその種類や含有形態を変えなが
ら加える試験を数多く実施し,どのようにしたら,高密
度磁気記録媒体に適する強磁性金属粉末が得られるかを
知るべく研究を重ねた。その結果,数ある元素のなか
で,Co,Al,SiおよびR(RはYを含む希土類元
素の少なくとも一種を表す)の4種の元素を組み合わ
せ,これらの含有形態をそれぞれ特定の形態にしてオキ
シ水酸化鉄または酸化鉄に含有させると,これを還元し
た粉末は優れた特性をもつ金属磁性粉末となることがわ
かった。そして,この金属磁性粉末を用いると,後記の
実施に示すように,保磁力(Hc)が2400(Oe )
以上,角形比(Br/Bm)が0.93以上,SFD値
が0.25以下を同時に満足する塗布型磁気記録媒体が
得られることがわかった。
【0011】以下に本発明の内容を具体的に説明する。
【0012】本願と同一出願人に係る特公昭59−17
161号公報には,Alを固溶したα−FeOOH又は
Fe23を還元することにより保磁力が1100(Oe
)レベル,飽和磁束密度が140emu/g レベルの磁性
粉が得られることが記載されているが,これだけでは,
前記のような最近の高密度記録化への要求を満足するこ
とは困難である。
【0013】そこで,このようなAlを固溶するオキシ
水酸化鉄または酸化鉄をベースとして,これをさらに改
善すべく種々の試験を行ったところ,Coを含有し,A
lをを固溶した粒子の表層部にRとSiを被着させるこ
とが非常に有効であることを知った。
【0014】まずCoについては,Feに対してCoを
0超え〜50at.%含有させると(ここで「Feに対する
Coのat.%」とは,Fe原子の数に対するCo原子の数
の百分比すなわちCo/Feの原子比×100を表すも
のとし,他の元素についても同様とする),すなわちC
o/Feの原子比(%)が0超え〜50at.%となるよう
な量でCoを含有させると,含有させない場合に比べ
て, 得られる磁性粉のとくに飽和磁束密度(σs)を改善
することができる。また,Coの含有により磁性粉の結
晶粒径(X線粒径Dx)を小さくする効果や耐候性改善
効果が奏される。Coの好ましい含有量は,Co/Fe
の原子比(%)で0超え〜50at.%,さらに好ましくは
1〜40at.%,最も好ましくは3〜35at.%である。C
oの含有形態については,AlやRの場合とは異なり,
粒子中に含有されていても粒子の表層部に存在していて
もよい。
【0015】Rについては,Feに対して0.1〜15a
t.%,すなわちR/Feの原子比(%)が0.1〜15a
t.%,好ましくは1〜13at.%となるような量で含有さ
せ且つその含有形態が針状粒子の表層部にRが被着した
状態とすることにより,後述の実施例に示すように様々
な有利な改善効果が得られることがわかった。とくに,
RをFeに対して2at.%以上,さらに好ましくは5at.%
以上の量で被着させると,磁気記録媒体のHc,Br/
BmおよびSFD値が顕著に改善されることがわかっ
た。針状粒子表面にRが“被着”した状態とは,実際に
は該粒子表面にRもしくはR化合物の濃縮層が形成され
ていることを意味しており,この濃縮層内に添加したR
の実質上全てが存在するような被着状態が理想的であ
る。このR濃縮層はアモルフアス,結晶,化合物層(酸
化物や塩化物等)であることができる。また,針状粒子
表面にRが被着した状態はESCA等の表面分析機器で
解析すれば明瞭に判別できる。
【0016】R元素はYおよびランタノイド元素やアク
チノイド元素を言うが,とくにYまたはランタノイド元
素であるのが好ましく,ランタノイド元素のうちでもL
a,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,G
d,Ho等が使用に便である。これらの元素を複合して
含有する場合には,その含有量については,その総量を
0.1〜15at.%とする。好ましい含有量は2〜10at.
%である。なお,この含有量はこれらの元素が化合物と
して含有されている場合,化合物の量ではなく化合物中
の当該元素の含有量を言う。このR元素の被着含有によ
り磁性粉のX線粒径が小さくなることもわかった。X線
粒径(Dx)とはX線を用いて針状粒子の結晶子の大き
さ(微粒子では短軸長に相当する)を測定した値であ
り,この値が小さいほど磁気変換特性のノイズが小さく
なると言われている。また,このR元素の被着含有によ
り磁性粉の針状性が良好となり保磁力も向上する。
【0017】Siについては,その含有量はSi/Fe
の原子比が0.1〜10at.%であればよく,好ましくは
1〜9at.%,特に3〜8at.%の範囲において磁気テープ
のSFDとBr/Bsが共に著しく改善される。そし
て,このようにSiを被着せさせると,強磁性粉末の
「活性」が抑えられ,分散性や耐久性を改善できること
がわかった。ここでいう活性とは,テープ化するさいに
強磁性粉末を溶剤に混合する時の反応性をいう。強磁性
粉末の活性が高いと混合時に溶剤が他の物質に反応(変
性)する割合が高くなる。溶剤が他の物質に変化すると
強磁性粉末の分散性やテープの耐久性,更には電磁変換
特性へ悪影響を与えることになる。この反応性の評価
は,混合時の上昇温度を測定することでその指標とする
ことができる。すなわち,混合時の上昇温度が高いと反
応熱が多く発生したため,反応が活発に進んだと考え
る。今回,理由は不明だが,Siを被着したものは,し
ないものと比較して,混合時の温度上昇を抑えられるこ
とがわかった。
【0018】針状粒子表面にSiが“被着”した状態と
は,実際には該粒子表面にSiもしくはSi化合物の濃
縮層が形成されていることを意味しており,この濃縮層
内に添加したSiの実質上全てが存在するような被着状
態が理想的である。このSi濃縮層はアモルフアス,結
晶,化合物層(酸化物や塩化物等)であることができ
る。また,針状粒子表面にSiが被着した状態はESC
A等の表面分析機器で解析すれば明瞭に判別できる。
【0019】このように,針状粒子表面にRとSiを被
着させるのであるが,この場合,R層の上にSi層を被
着させる態様と,Si層にR層を被着させる態様と,R
とSiを一体的に被着させる態様がある。本発明では,
そのいずれでもよいが,効果の大きいのは,R層の上に
Si層を被着させる態様であり,これによると,前記の
「強磁性粉末の活性」を抑制できる効果が顕著になる。
【0020】Alについては,前記のようにオキシ水酸
化鉄または酸化鉄に“固溶”した状態で含有されている
ことが肝要であり,その含有量はAl/Feの原子比
(%)で0.1〜30at.%であればよく,好ましくは1
〜20at.%,さらに好ましくは2〜15at.%である。A
l含有量は,Al元素が化合物として含有されている場
合,化合物の量ではなく化合物中のAl元素の含有量を
言い,このため,Feに対するAlの原子比(%)でA
l含有量を表す。
【0021】ここで,オキシ水酸化鉄または酸化鉄にA
lを“固溶”するとは,オキシ水酸化鉄または酸化鉄の
結晶を構成しているFeの一部がAlで置換されている
ような状態を言う。先の特公昭59−17161号公報
には,オキシ水酸化鉄にAlを固溶した場合とAlを被
着した場合のX線回折による格子定数の変化の様子が記
載されており,Al固溶α−FeOOHの格子定数はα
−FeOOHの格子定数とAlOOHの格子定数の中間
の値となり,その値はAl/Feの原子比に比例したも
のとなると記載されている。すなわち,AlはFeより
もイオン半径が小さいので,α−FeOOHの結晶中の
Feの一部がAlで置換されると,その置換量に応じ
て,その格子定数はα−FeOOHよりも小さくなると
言える。他方,α−FeOOHの結晶の表面にAl(A
lOOH)が被着した状態では,α−FeOOHの格子
定数に近くなる。したがって,オキシ水酸化鉄または酸
化鉄にAlが固溶しているか否かは,X線回折による格
子定数の測定から明瞭に判別できる。
【0022】図1,図2および図3は,後記の実施例1
の条件で磁気テープを作成し,そのさい,Yの被着量と
Siの被着量を種々変化させて得られた各磁気テープに
ついて測定されたSFDの等高線図(図1),Br/B
m(磁性粉のSQと区別するためにSQxと表示)の等
高線図(図2)および保磁力(磁性粉のHcと区別する
ためにHcxと表示)の等高線図(図3)である。
【0023】これらの図に見られるように,YとSiの
被着量をそれぞれ単独に増加させてもSFD値・SQx
値およびHcxは向上してゆくが,YとSiを複合被着
させた場合には,YおよびSiの被着量が適正である
と,それらの単独被着の場合に現れる以上の効果が発現
し,或る領域でピークを有することがわかる。とくにY
の被着量がFeに対して4〜9at.%で且つSiの被着量
がFeに対して3〜10at.%の場合に,SFD値が0.
25以下,SQx値が0.93以上,Hcxが2500
(Oe )以上となることがわかる。
【0024】このようにAl,Co,RおよびSiを適
切な量で且つその含有形態を適切にしてオキシ水酸化鉄
または酸化鉄に含有させてなる本発明に従う先駆物質を
還元処理すると,従来のものにはない保磁力,Br/B
mおよびSFD値をもつ磁気テープの製作を可能とする
金属磁性粉末が得られるが,この針状粒子からなる先駆
物質の粒径や軸比は,先駆物質がオキシ水酸化鉄系であ
る場合には,長軸長が0.01〜0.60μm,短軸長が
0.001〜0.060μm,軸比が1〜30であるのが
よく,このオキシ水酸化鉄系のものから脱水して酸化物
系とした先駆物質の場合には,長軸長が0.01〜0.5
0μm,短軸長が0.001〜0.050μm,軸比が1
〜30であるのがよい。
【0025】本発明に従う先駆物質を製造するには,A
l固溶のオキシ水酸化鉄を製造し,これにRとSiの被
着処理を行うことを原則とし,Coについてはオキシ水
酸化鉄の生成過程の途中またはその前後に含有させれば
よい。以下にその代表的な方法を説明する。
【0026】まずAl固溶のオキシ水酸化鉄を製造する
には,通常のオキシ水酸化鉄の生成反応である第一鉄塩
水溶液(FeSO4やFeCl2の水溶液)を水酸化アル
カリ(NaOHやKOH水溶液)で中和したあと空気等
で酸化してα−FeOOHを生成させる方法において,
このα−FeOOHの生成反応を水溶性Al塩やアルミ
ン酸塩の存在下で行えばよい。別法として,前記のよう
な第一鉄塩溶液を炭酸アルカリで中和したあと空気等で
酸化してα−FeOOHを生成させる方法において(こ
の方法では紡錘状の水酸化鉄が得られやすい),このα
−FeOOHの生成反応を水溶性Al塩やアルミン酸塩
の存在下で行えばよい。さらに別法として,第二鉄塩水
溶液(FeCl3水溶液等)をNaOH等で中和する反
応を水溶性Al塩やアルミン酸塩の存在下で行う方法で
もよい。最後の方法では平針状の水酸化鉄が得られやす
い。
【0027】このAl固溶オキシ水酸化鉄の製造におい
て,Coを含有させるには,前記のオキシ水酸化鉄生成
前の鉄塩水溶液,或いはオキシ水酸化鉄生成途中の液に
水溶性Co塩(例えばCoCl2)を添加しておけばよ
い。また,得られたAl固溶オキシ水酸化鉄を水中に分
散させたあと,これに前記のCo塩を添加してアルカリ
で中和する方法や,該分散液から水を蒸発させる方法な
どによっても,Al固溶オキシ水酸化鉄にCoを含有さ
せることができる。
【0028】このようにして得られたCo含有Al固溶
オキシ水酸化鉄粒子にRを被着するには,水溶性R塩
(例えばRの硝酸塩等)の水溶液にこの粒子を分散さ
せ,この分散液から水分を蒸発させる方法や,この分散
液にアルカリを添加して中和する方法により,該粒子の
表面にRを被着させることができる。
【0029】また,前記のCo含有Al固溶オキシ水酸
化鉄粒子を脱水処理してCo含有Al固溶酸化鉄(Co
含有Al固溶のFe23粒子)としたうえで,この酸化
鉄系粒子に前記のようなR被着処理を行ってもよい。具
体的には,前記のようにして得たCo含有Al固溶オキ
シ水酸化鉄粒子を200〜600℃で空気中で加熱処理
してCo含有Al固溶酸化鉄粒子とし,この酸化鉄系粒
子を水溶性R塩(例えばRの硝酸塩等)の水溶液に分散
させ,NaOH等のアルカリを添加して中和することに
よって,該粒子表面にRを被着させ,ろ過,水洗後,空
気中で適当な温度例えば200℃で焼成するのがよい。
この方法においてCo含有Al固溶オキシ水酸化鉄を加
熱処理して脱水してもAlは該粒子中に固溶した状態に
維持される。また,これをRを被着させたあと200℃
程度の温度で空気中加熱処理してもRの被着状態はその
まま維持される。この方法に代えて,CoAl固溶酸化
鉄粒子を水溶性R塩(例えばRの硝酸塩等)の水溶液中
に分散させ,この分散液から水分を蒸発させる方法で
も,同様にCo含有Al固溶酸化鉄にRを被着させるこ
とができる。このようにRを被着処理したあと,150
〜250℃の比較的低温で焼成処理すると,Rを該粒子
表面に固定することができる。
【0030】粒子表面にSiを被着するには、,水溶性
Si塩(例えばケイ酸ナトリウム)の水溶液に当該粒子
を分散させ,この分散液から水分を蒸発させる方法や,
この分散液に酸を添加して中和する方法により,該粒子
表面にSiを被着させることができる。このSiの被着
は,Coを含有したAl固溶オキシ水酸化鉄に被着して
も良く,またCo含有Al固溶オキシ水酸化鉄を脱水処
理して,Al固溶酸化鉄としたうえで,この酸化鉄に被
着しても良い。いずれの場合でも,RとSiの被着の順
序は,先にRを被着してからSiを被着しても,またS
iを先に被着した後にRを被着しても良い。さらに,R
を被着したCo含有Al固溶オキシ水酸化鉄を脱水処理
して酸化鉄にしてSiを被着したり,Siを被着したC
o含有Al固溶オキシ水酸化鉄を脱水処理して酸化鉄に
してRを被着しても良い。
【0031】RとSiを一体的に被着させるには,Rの
水溶性塩とSiの水溶性塩を同時に使用すればよいが,
Rの水溶性塩とSiの水溶性塩の混合水溶液を予め調整
すると,Rの水溶性塩は酸性でSiの水溶性塩はアルカ
リなので混合時に沈澱物が生じる。このため,粒子表面
にRとSiを一体的に被着させるには両液を粒子が存在
する状態で混合する必要がある。
【0032】なお,Coの含有処理については,前記の
オキシ水酸化鉄の状態で含有させる場合のほか,Al固
溶酸化鉄系粒子の状態から含有させもよい。例えば,A
l固溶オキシ水酸化鉄系粒子を得たあと,これを空気中
で加熱してAl固溶酸化鉄系粒子とし,この酸化鉄系粒
子を水中に分散させたあと,これに前記のCo塩を添加
してアルカリで中和する方法や,該分散液から水を蒸発
させる方法などによって,Co含有Al固溶酸化鉄系粒
子を得ることができ,このようにして得られたCo含有
Al固溶酸化鉄系粒子に対して,前記と同様のR被着処
理およびSi被着処理を行うことによっても,前記と同
様の本発明に従う先駆物質を得ることができる。
【0033】このようにして得られた本発明に従う先駆
物質は,これを還元処理するとAl,Co,RおよびS
iを含有した金属磁性粉末となる。本発明に従う先駆物
質がオキシ水酸化鉄系粒子の場合には,還元処理に先立
って,空気中で200〜600℃の温度に加熱する脱水
処理を行ない,これによって酸化鉄系粒子としてから,
金属磁性粉末にまで還元するのがよい。もっともこの脱
水処理のための加熱処理と,これに引続く還元処理は,
同一反応容器で雰囲気ガスを切換えることによって,連
続した操作で実施することもできる。
【0034】還元処理は,水素ガス等の還元性雰囲気中
で300〜700℃の温度で加熱還元すればよい。その
最適温度は先駆物質中のAl量,Co量,R量およびS
i量によってそれぞれ異なるが300〜700℃の範囲
内で選定される。還元処理後は調湿処理(水蒸気を含む
雰囲気での処理)することにより,適量の水分を保有し
た耐酸化性を有する金属磁性粉末が得られる。
【0035】金属磁性粉末が保有する水分は100℃で
検出(放出)される量が2.0重量%以下,好ましくは
1.5重量%以下であること,また300℃で検出(放
出)される量が4.0重量%,好ましくは3.0重量%以
下であるのが良い。該粉末が保有する水分量により,磁
性層にするための塗料の粘度が変化し,バイダー吸着量
も変化するが,100℃で検出される水分量が2.0重
量%を超えると,または300℃で検出される水分量が
4.0重量%を超えると塗布のさいに分散不十分とな
る。
【0036】そのほか,周期律表第1a族元素例えばL
i,Na,K等や周期律表第2a族元素例えばMg,C
a,Sr,Ba等が前記の金属磁性粉末粒子の表面に付
着していると,樹脂系バインダーに分散させる場合に分
散性を悪くし,また,媒体製品の保存安定性や耐候性を
劣化させる。また,第1a族元素が先駆物質中に存在す
ると還元工程で焼結を促進する作用もあることがわかっ
た。したがって,これらの元素類は還元工程前に出来る
だけ排除しておくのがよい。すなわち本発明に従う先駆
物質は,これを還元した後の周期律表第1a族元素の含
有量が0.05重量%以下(これら元素が複数含有する
場合にもその総量が0.05重量%以下),また同じく
還元した後の周期律表第2a族元素の含有量が0.1重
量%以下(これら元素が複数含有する場合にもその総量
が0.1重量%以下)となるものであるのが好ましい。
これらの元素は本発明の先駆物質を製造するさいの原料
や中和工程等で混入しやすいが,混入した場合にはその
除去処理を十分に行うのが望ましい。
【0037】また,本発明の先駆物質を還元して得た強
磁性金属粉末は平均長軸長が0.01〜0.40μmであ
るのが好ましい。平均長軸長が0.01μm未満では超
常磁性となり,また0.40μmを超えると粒子が多磁
区となりやすく,このため,いずれもテープとしたとき
の電磁変換特性が低下する。強磁性金属粉末の結晶子
(X線結晶粒径Dx)は50〜250オングストローム
であるのがよく,50オングストローム未満では超常磁
性となり,250オングストロームを超えるとノイズが
増大してテープの電磁変換特性が低下する。
【0038】さらに,該強磁性金属粉末の真密度は5.
3g/cm3以上であるのがよい。比表面積はBET法
で30〜70m2/g であるのがよく,30m2/g 未満
ではテープ化するときの樹脂との相溶性が悪くなって電
磁変換特性を低下させ,70m 2/g を超えるとテープ
化時に分散不良を起こしてやはり電磁変換特性を低下さ
せやすくなる。
【0039】このような強磁性金属粉末で塗布型磁気記
録媒体の磁性層を形成する場合,磁性層の形態として
は,支持フイルム上に磁性層の単層を塗布するもののほ
か,支持フイルムと磁性層の間に非磁性粉末を用いた非
磁性塗布層(下層)を形成することによって,より薄く
て平滑な磁性層(上層)を形成するいわゆる多層構造の
塗布型磁気記録媒体のいずれに対しても適用できる。ま
た,後者の下層と上層とからなる多層構造の場合には,
下層を形成するための非磁性粉末として,本発明に従う
先駆物質をそのまま適用することができる。
【0040】
【実施例】〔実施例1〕0.2モル/L(Lはリット
ル)のFeSO4水溶液10Lに,10モル/LのNa2
CO3水溶液1Lと,Al/Feの原子比(%)=13a
t.%となる量のアルミン酸ナトリウムを加えて53℃で
空気を6時間吹込んだ。この酸化処理のあと,Co/F
eの原子比(%)=30at.%となる量のCoCl2を加
え,30時間熟成した。この沈澱物を濾過,水洗,乾燥
した。得られた粉体は,α−FeOOHに,Feに対し
Coを29at.%含み且つFeに対しAlを12.7at.%
固溶した,長軸長さ0.14μm,短軸長さ0.024μ
m,軸比6の針状粒子からなるものであった。
【0041】ついで,前記のオキシ水酸化鉄系粉体を空
気中で450℃で焼成して,酸化鉄系粉体とし,この酸
化鉄系粉体を水中に分散させた。この分散液にY/Fe
の原子比(%)=6.5at.%となる量の硝酸イットリウ
ムを加え,NaOHを添加して53℃で中和し, 該粒子
表面にイットリウムを被着させた。その後,液から濾別
し,水洗後, 空気中で200℃で焼成した。このように
して得られたYを粒子表面に被着したCo含有Al固溶
酸化鉄を水中に分散させ,その分散液に,Si/Feの
原子比(%)=6.5at.%となる量のケイ酸ナトリウム
を加え60分間攪拌後このスラリーを乾燥機に入れ10
oCで水分を蒸発させてSiを被着させた。得られた
粉体は,Feに対しCoを29at.%含み且つFeに対し
Alを12.7at.%固溶し,そしてFeに対しYを6.2
at.%被着し,Feに対してSiを5.5at.%被着した長
軸長さ0.12μm,短軸長さ0.022μm,軸比5.
6の針状粒子からなるものであった。
【0042】こうして得られたAl固溶Co含有Y・S
i被着の酸化鉄系粒子からなる粉末10gを回転炉に装
填しH2気流を導入して450℃で10時間加熱還元し
た。還元終了後,N2ガスを導入して室温まで冷却し
た。ついで,1%のO2を含むN 2ガスを導入して5時間
処理した。得られた金属磁性粉末は長軸長さ=0.10
μm,X線結晶粒径Dx=165オングストローム,比
表面積(BET)=61m 2/g であり,その磁気特性
は保磁力(Hc)=2470(Oe),飽和磁化率(σs)
=141emu/g, σr/σs =0.523(σrは残留磁
束密度emu/g ),Δσs=10%であった。Δσsは6
0℃・相対湿度90%RHの雰囲気下で1週間放置後の
飽和磁化率σsの低下率であり,この値が小さいほど耐
酸化性に優れていることを示す。この強磁性金属粉末粒
子が含有するCo量,Al量,Y量およびSi量はそれ
ぞれFeに対し29at.%,12.7at.%,6.2at.%およ
び5.5at.%であった。これらの強磁性金属粉末の諸特
性値を表1に示した。
【0043】なお,前記粒子の長軸長さ,短軸長さおよ
び軸比については,174000倍の電子顕微鏡写真か
ら測定した100個の粒子の平均値で示した。結晶粒径
(Dx)は,X線回折装置を用いて得られたプロフイル
から(110)面に相当するピークの半価幅を求め,こ
れをシェラーの式に代入して算出した。また,表1のΔ
Tは,強磁性金属粉末とテープ溶剤との反応性の指標で
あり,この値は,強磁性金属粒子を容器に20g取り,
溶剤として使用されるシクロヘキサンを30g添加し,
添加直後の上昇温度を測定したものである。本例の強磁
性金属粉末のΔTは8℃であった。
【0044】得られた強磁性金属粉末を磁気テープ作製
試験に供した。試験は,強磁性金属粉末100重量部に
対し以下の材料を下記組成となるような割合で配合して
遠心ボールミルで1時間分散させて磁性塗料を作製し,
この磁性塗料をポリエチレンテレフタレートからなるベ
ースフイルム上にアプリケーターを用いて目標厚みが3
μmとなるように塗布することにより,磁気テープを作
製した。
【0045】〔塗料の組成〕 金属磁性粉末 100重量部 ポリウレタン樹脂 30重量部 メチルエチルケトン190重量部 シクロヘキサノン 80重量部 トルエン 110重量部 ステアリン酸 1重量部 アセチルアセトン 1重量部 アルミナ 3重量部 カーボンブラック 2重量部
【0046】得られた磁気テープの磁気特性を測定した
ところ,保磁力Hc=2630(Oe ),残留磁束密度
Br=4287(ガウス),飽和磁束密度Bm=456
1(ガウス),角形比Br/Bm=0.94であり,磁
気テープのヒステリシスループから算出したSFD値は
0.22を示し,Hi8デッキを用いて測定した電磁変
換特性の出力とC/N比はそれぞれ1.13dB,1.4
3dBであった。これらの磁気テープ特性を表2に示し
た。
【0047】〔実施例2〕硝酸イットリウムの添加量を
Y/Feの原子比(%)=5.3at.%相当量となるよう
に,そしてケイ酸ナトリウムの添加量をSi/Feの原
子比(%)=5.9at.%相当量となるように変更した以
外は,実施例1に従った。得られた強磁性金属粉末およ
び磁気テープの各特性を表1および表2に併記した。
【0048】〔比較例1〕硝酸イットリウムの添加量を
Y/Feの原子比(%)=12.5at.%相当量となるよ
うに変更し,ケイ酸ナトリウムは添加しなかった以外
は,実施例1に従った。得られた強磁性金属粉および磁
気テープの各特性を表1および表2に併記した。
【0049】〔比較例2〕ケイ酸ナトリウムの添加量を
Si/Feの原子比(%)=13.0at.%相当量となる
ように変更し,硝酸イットリウムは添加しなかった以外
は,実施例1に従った。得られた強磁性金属粉末および
磁気テープの各特性を表1および表2に併記した。
【0050】〔比較例3〕アルミン酸ナトリウムの添加
を,塩化コバルトを添加し熟成した後の時点に変更し,
硝酸イットリウムの添加量をY/Feの原子比(%)=
12.5at.%相当量となるように変更し,ケイ酸ナトリ
ウムは添加しなかった以外は,実施例1に従った。得ら
れた強磁性金属粉および磁気テープの各特性を表1およ
び表2に併記した。
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】表1〜表2に見られるように,実施例1〜
2のものでは,SFD値0.25以下,角形比(SQx
=Br/Bm)0.93以上,保磁力2400(Oe )
以上の高特性の磁気テープが得られるのに対し,比較例
のものではその値が達成できず,電磁変換特性が必ずし
も良好ではない。
【0053】〔実施例n〕硝酸イットリウムの添加量を
Y/Feの原子比(%)で0〜15at.%の範囲で変化さ
せ,また,ケイ酸ナトリウムの添加量をSi/Feの原
子比(%)で0〜11at.%の範囲で変化させた以外は,
実施例1に従った。得られた各磁気テープについて,S
FD,Br/Bm(SQxと表示)および保磁力(Hc
xと表示)を測定し,これらの値を,強磁性粉末中のY
量とSi量を横軸と縦軸として平面図上で等高線で表現
し,これを図1〜図3に示した。
【0054】図1は,各強磁性金属粉末中の各Y量at.%
(Feに対するYの原子百分比)とSi量at.%(Feに
対するSiの原子百分比)がどのように磁気テープのS
FD値に影響するかを等高線で表示したものである。図
1から,SFD値はSi被着量の特定範囲とY被着量の
特定範囲で最も低くなるボトム領域があることがわか
る。本例ではFeに対するSi被着量がほぼ4〜9at.
%,Y被着量がほぼ4〜8at.%の領域ではSFD値は0.
25以下となる。
【0055】図2は,各強磁性金属粉末中の各Y量at.%
(Feに対するYの原子百分比)とSi量at.%(Feに
対するSiの原子百分比)がどのように磁気テープのB
r/Bm(SQx)に影響するかを等高線で表示したも
のである。図2から,SQxはSi被着量の特定範囲と
Y被着量の特定範囲でピークを示す領域があることがわ
かる。本例では,Feに対するSi被着量がほぼ3〜1
1at.%,Y被着量がほぼ4〜9at.%でSQxは0.93
以上となる。
【0056】図3は,各強磁性金属粉末中の各Y量at.%
(Feに対するYの原子百分比)とSi量at.%(Feに
対するSiの原子百分比)がどのように磁気テープの保
磁力(Hcx)に影響するかを等高線で表示したもので
ある。図3から,HcxはSi被着量の特定範囲とY被
着量の特定範囲でピークを示す領域があることがわか
る。高いHcxを得るに望ましいY被着量は2〜13%
でSi被着量は2〜9%である。
【0057】図1〜3の結果から,SFD値0.25以
下,角形比(SQx=Br/Bm)0.93以上,保磁
力2400(Oe )以上さらには2500(Oe )以上
の,従来のものにはない高特性の磁気テープが得られる
ことがわかる。この全要件を満たす場合の,強磁性金属
粉末のY被着量とSi被着量は特定の狭い領域にあり,
Y被着量についてはFeに対して4〜9at.%,Si被着
量についてはFeに対して2〜9at.%である。
【0058】Al固溶オキシ水酸化鉄または酸化鉄の焼
結防止に及ぼすSiとYの効果を比較すると,Siの方
がYよりも焼結防止効果が低いこと,Yはその被着量が
多くなるに従って焼結防止効果は高くなるが,あまり多
すぎると配向特性が低下してくる。すなわち,Si単独
被着では粒子の針状性保持効果を高いものの焼結時に粒
子間を結合させる傾向があり,Y単独被着では,その被
着量が多くなると粒子が凝集しやすくなる(TEM像で
確認)ので,あまり多すぎると凝集による配向特定の低
下が見られるようになる。ところが,SiとYを複合被
着させた場合には,前記の試験に見られるように,或る
狭い被着量領域において,テープ特性の向上が見られ,
Y単独での効果が飽和する付近でSiを共存させると,
今までにないSFD値が得られている。このことは,粒
子間を結合させるSiの作用がYによって抑制され,同
時にYによってSiの形状保持効果が有利に発現できた
のではないかと推察される。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によると,
高密度磁気記録に適した塗布型磁気記録媒体の性能向上
に大きく貢献できる強磁性金属粉末およびその先駆物質
が提供される。とくに,本発明によれば,これまでの水
準を超えた保磁力が2500(Oe )以上,角形比(B
r/Bm)が0.93以上およびSFD値が0.25以下
の磁気テープが製作できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】強磁性金属粉末へのY被着量(Feに対する原
子比%)とSi被着量(Feに対する原子比%)が,そ
の強磁性金属粉末を用いた磁気テープのSFDにどのよ
うに影響するかを等高線で示した関係図である。
【図2】強磁性金属粉末へのY被着量(Feに対する原
子比%)とSi被着量(Feに対する原子比%)が,そ
の強磁性金属粉末を用いた磁気テープのSQx(角形
比)にどのように影響するかを等高線で示した関係図で
ある。
【図3】強磁性金属粉末へのY被着量(Feに対する原
子比%)とSi被着量(Feに対する原子比%)が,そ
の強磁性金属粉末を用いた磁気テープのHcx(保磁
力)にどのように影響するかを等高線で示した関係図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G11B 5/712 G11B 5/712 H01F 1/06 H01F 1/06 K (72)発明者 沢辺 明朗 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内 (72)発明者 井上 健一 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内 (72)発明者 吉田 貴行 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内 Fターム(参考) 4K017 AA04 BA06 BB01 BB06 BB12 CA02 DA03 EH17 FB05 4K018 BA14 BB01 BC22 BD02 5D006 BA01 BA07 BA08 FA09 5E040 AA11 AA19 AB02 AB09 AB10 BC01 BC08 CA06 HB09 NN01 NN02 NN05

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オキシ水酸化鉄または酸化鉄に,Co,
    Al,SiおよびR(RはYを含む希土類元素の少なく
    とも一種を表す)を含有させた針状粒子からなる磁性粉
    製造用先駆物質であって,該針状粒子が,Feに対して
    Coを0超え〜50at.%含有し且つFeに対して0.1
    〜30at.%のAlを固溶した粒子の表層部に,SiとR
    (ただし,粒子中のSi含有量はFeに対して0.1〜
    10at.%でR含有量はFeに対して0.1〜15at.%で
    ある)を含む層が被着したものである磁性粉製造用先駆
    物質。
  2. 【請求項2】 粒子中のR含有量はFeに対して1〜1
    3at.%,Si含有量はFeに対して1〜10at.%である
    請求項1に記載の磁性粉製造用先駆物質。
  3. 【請求項3】 Al固溶Co含有のオキシ水酸化鉄また
    は酸化鉄の粒子表面に先ずR層が被着し,その表層にS
    i層が被着している請求項1または2に記載の磁性粉製
    造用先駆物質。
  4. 【請求項4】 オキシ水酸化鉄または酸化鉄に,Co,
    Al,SiおよびR(RはYを含む希土類元素の少なく
    とも一種を表す)を含有させた針状粒子からなる粉末を
    ガス還元してなる強磁性金属粉末であって,還元前の前
    記の針状粒子が,Feに対してCoを0超え〜50at.%
    含有し且つFeに対して0.1〜30at.%のAlを固溶
    した粒子の表層部に,SiとR(ただし,粒子中のSi
    含有量はFeに対して0.1〜10at.%でR含有量はF
    eに対して0.1〜15at.%である)を含む層が被着し
    たものである,強磁性金属粉末。
  5. 【請求項5】 R含有量がFeに対して1〜13at.%,
    Si含有量がFeに対して1〜10at.%である請求項4
    に記載の強磁性金属粉末。
  6. 【請求項6】 R含有量がFeに対して4〜9at.%,S
    i含有量がFeに対して2〜9at.%である請求項4に記
    載の強磁性金属粉末。
JP25849199A 1999-09-13 1999-09-13 磁性粉製造用先駆物質およびこれから得た強磁性金属粉末 Expired - Fee Related JP3640577B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25849199A JP3640577B2 (ja) 1999-09-13 1999-09-13 磁性粉製造用先駆物質およびこれから得た強磁性金属粉末

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25849199A JP3640577B2 (ja) 1999-09-13 1999-09-13 磁性粉製造用先駆物質およびこれから得た強磁性金属粉末

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001081506A true JP2001081506A (ja) 2001-03-27
JP3640577B2 JP3640577B2 (ja) 2005-04-20

Family

ID=17320957

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP25849199A Expired - Fee Related JP3640577B2 (ja) 1999-09-13 1999-09-13 磁性粉製造用先駆物質およびこれから得た強磁性金属粉末

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3640577B2 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6852404B2 (en) 2002-03-29 2005-02-08 Tdk Corporation Magnetic recording medium
US7074281B2 (en) 2002-03-07 2006-07-11 Dowa Mining Co., Ltd. Magnetic powder for magnetic recording
JP2006190842A (ja) * 2005-01-06 2006-07-20 Dowa Mining Co Ltd 金属磁性粉末及びこれを用いた磁気記録媒体
US7238439B2 (en) 2003-02-19 2007-07-03 Hitachi Maxell, Ltd. Magnetic recording medium containing particles with a core containing a Fe16N2 phase
US7267896B2 (en) 2002-03-18 2007-09-11 Hitachi Maxell, Ltd. Magnetic tape and magnetic tape cartridge
US7510790B2 (en) 2002-09-20 2009-03-31 Hitachi Maxell, Ltd. Magnetic powder, method for producing the same and magnetic recording medium comprising the same
CN103722168A (zh) * 2013-12-12 2014-04-16 内蒙古河西航天科技发展有限公司 一种安全环保型铝粉及制备方法

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7074281B2 (en) 2002-03-07 2006-07-11 Dowa Mining Co., Ltd. Magnetic powder for magnetic recording
US7267896B2 (en) 2002-03-18 2007-09-11 Hitachi Maxell, Ltd. Magnetic tape and magnetic tape cartridge
US7291409B2 (en) 2002-03-18 2007-11-06 Hitachi Maxell, Ltd. Magnetic recording medium using magnetic powder having a core portion and an outer layer portion including a rare earth element and magnetic recording cassette
US7445858B2 (en) 2002-03-18 2008-11-04 Hitachi Maxell, Ltd. Magnetic recording medium using magnetic powder having a core portion and an outer layer portion including a rare earth element and magnetic recording cassette
US6852404B2 (en) 2002-03-29 2005-02-08 Tdk Corporation Magnetic recording medium
US7510790B2 (en) 2002-09-20 2009-03-31 Hitachi Maxell, Ltd. Magnetic powder, method for producing the same and magnetic recording medium comprising the same
US7238439B2 (en) 2003-02-19 2007-07-03 Hitachi Maxell, Ltd. Magnetic recording medium containing particles with a core containing a Fe16N2 phase
US7700204B2 (en) 2003-02-19 2010-04-20 Hitachi Maxell, Ltd. Magnetic recording medium containing particles with a core containing a FE16N2 phase
JP2006190842A (ja) * 2005-01-06 2006-07-20 Dowa Mining Co Ltd 金属磁性粉末及びこれを用いた磁気記録媒体
CN103722168A (zh) * 2013-12-12 2014-04-16 内蒙古河西航天科技发展有限公司 一种安全环保型铝粉及制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3640577B2 (ja) 2005-04-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5645652A (en) Spindle-shaped magnetic iron-based alloy particles containing cobalt and iron as the main ingredients and process for producing the same
JP3640577B2 (ja) 磁性粉製造用先駆物質およびこれから得た強磁性金属粉末
JP4143713B2 (ja) 磁気記録用の磁性粉
JPH11251122A (ja) 磁性粉製造用先駆物質およびこれから得た強磁性金属粉末
JP2004035939A (ja) 磁気記録用紡錘状合金磁性粒子粉末及びその製造法
JPH059922B2 (ja)
JP3427871B2 (ja) コバルト被着型針状磁性酸化鉄粒子粉末
JP2003247002A (ja) 鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末及びその製造法並びに磁気記録媒体
KR20030014085A (ko) 철을 주성분으로 함유하는 방추형 자성 금속입자 및 그의제조방법
JPH10245233A (ja) 紡錘状ヘマタイト粒子粉末及びその製造法並びに該ヘマタイト粒子粉末を出発原料として得られる鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末及びその製造法
JP2000302445A (ja) 紡錘状ゲータイト粒子粉末、紡錘状ヘマタイト粒子粉末、及び鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末、並びにそれらの製造法
JP3337046B2 (ja) コバルトと鉄とを主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末及びその製造法
JP4182310B2 (ja) 磁気記録用Fe及びCoを主成分とする紡錘状合金磁性粒子粉末の製造法
US5989516A (en) Spindle-shaped geothite particles
JP2001355001A (ja) 紡錘状ゲータイト粒子粉末、紡錘状ヘマタイト粒子粉末及び鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末、並びにそれらの製造法
JP2756467B2 (ja) 短波長磁気記録媒体用金属磁性粉およびこれを用いた磁気記録媒体
JP2933397B2 (ja) 磁気記録用強磁性酸化鉄粉末の製造方法
JPH0647681B2 (ja) 紡錘形状を呈した鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末及びその製造法
JP2007194666A (ja) 強磁性金属粉末製造用の先駆物質
JP3303896B2 (ja) 紡錘状を呈した鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末及びその製造法
JP2805162B2 (ja) 磁気記録用金属磁性粉末の製造方法
JP2002115002A (ja) 鉄を主成分とする紡錘状金属磁性粒子粉末及びその製造法
JP3049704B2 (ja) 針状コバルト被着型マグネタイト粒子粉末
JP2897794B2 (ja) コバルト被着型磁性酸化鉄粒子粉末の製造法
JP2965606B2 (ja) 金属磁性粉末の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040622

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040727

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040927

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050118

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050118

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080128

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080128

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090128

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090128

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100128

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110128

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110128

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120128

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees