JP2001078655A - パンの製法 - Google Patents
パンの製法Info
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Abstract
用いても比容積、外観、内相等の優れたパンを製造する
ことを目的とする。 【構成】 サッカロミセス属に属し、20〜40℃では
正常に発酵し、−2〜15℃では市販の酵母の1/3以
下の発酵能を示す低温感受性酵母を生地に添加する。
Description
として冷凍保存生地(冷凍生地)が広く用いられている
が、凍結、冷凍保存、冷凍輸送、解凍等極めて高いエネ
ルギーコストを要する。これらエネルギーコスト軽減の
ため、冷蔵保存生地が用いられている〔活路開拓調査研
究事業報告書、36〜45(1990) ;B&C,26〜37(1990) ;
新しい製パン基礎知識、 148〜180(昭和63年7月10日 ;
7版発行) 〕が、この冷蔵保存生地は生地中の酵母の保
存安定性に問題があり、長期間の保存により酵母が劣化
する。
ン等の製造工程で生地中にバター、マーガリン等の油脂
を折り込む作業を必要とするものは、生地と油脂の層を
均一にすることが良い製品を作る絶対的条件であり、こ
の条件を達成するため通常この油脂折り込み作業を何回
かに分けて行う(回分作業)。この回分作業の都度、生
地温度、油脂温度が上昇することにより生地および折り
込み油脂の伸展性が変化するので、冷蔵庫内にて冷却を
繰り返す方法がとられる(いわゆるリタード法)。しか
し、従来の酵母では発酵が進み、製品が完成するまでに
酵母の残存活性の低下を生じ、冷蔵保存による酵母の劣
化と相俟って、これらリタード製法によるパン類の製造
においては多くの問題を抱えていた。
態が多い)の場合も、従来の酵母を利用したのでは保存
耐性がないので、生地が劣化してしまう。生地の劣化を
防ぐために、酵母の代わりに化学膨張剤を利用したもの
が多いが、風味、外観等の点において満足すべきパン製
品は得られない。
15℃) に保存した生地を用いても比容積等の優れたパン
を製造することを目的とする。
ス属に属し、発酵能が低温感受性を示す酵母を生地に添
加することを特徴とするパンの製法に関する。本発明で
用いられる酵母は、サッカロミセス属に属し、発酵能が
低温感受性を示す酵母であればいずれも用いられる。
示す」とは「20〜40℃では正常に発酵し、−2〜15℃で
は市販酵母の 1/3 以下の発酵能を示す」ことを意味す
る。本発明で用いられる酵母は例えば次の方法で得るこ
とができる。例えば、市販酵母(例えば、パン酵母、清
酒酵母、ワイン酵母、ビール酵母、味噌・醤油酵母等)
に公知の変異誘導法、例えば紫外線、放射線等を照射さ
せて得た菌株に抗生物質(例えば、アンチマイシン、ナ
イスタチン等)を接触させ、低温(10〜15℃) で培養
し、この低温において増殖不能ないしは増殖の極めて弱
い細胞を選択する(一次選択)。この一次選択で選択さ
れた菌株の中には、発酵能欠如のため、ないしは発酵能
が微弱なために増殖不能、あるいは増殖能の低下した菌
株と、その他の原因で増殖が弱くなった菌株が含まれ
る。そこでその中から低温(2〜7℃)において発酵能
が欠如ないしは極めて微弱となった菌株を選択する(二
次選択)。次に、二次選択で選択された菌株の中から20
℃以上の温度 (20〜40℃) で発酵能の回復する菌株を選
択する (三次選択) 。最後に三次選択で選択された菌株
の中から20℃以上の温度 (20〜40℃) においてパン生地
等の発酵条件での発酵能が普通の酵母なみに優れた菌株
を選択する (四次選択)。
サッカロミセス・セルビジェ( Saccharomyces cerevi
siae ) RZT-3(以下、RZT−3株と称す)があげられ
る。以下にRZT−3株の取得方法を示す。市販パン酵
母ダイヤイーストYST〔協和醗酵工業(株)〕(以
下、YST株と称す)をYPD培地(酵母エキス1%、
ポリペプトン2%、グルコース2%)で30℃で12時間培
養後、遠心分離し、菌体を集める。集めた菌体を0.067M
リン酸一カリウム溶液中に吸光度1.0 、すなわち、1ml
当りの細胞数が1×107 個になるように懸濁する。この
細胞懸濁液に対して生存率1〜30%になるように紫外線
を照射した後、一次選択に回す。
細胞懸濁液20μl を1mlのYPD培地に植菌し、30℃で
12時間培養する。培養終了後、遠心分離によって菌体を
集める。集めた菌体を無窒素源最小培地〔Yeast nitrog
en base w/o amino acid andammonium sulfate (デイ
フコ社) 0.17%、グルコース 1%〕1mlで30℃で12時間
培養する。培養終了後、再び遠心分離し、菌体を集め
る。集めた菌体をアンチマイシンを1×10-6M 添加され
たYPD培地0.9 mlに懸濁し、10℃で36時間培養する。
/ml添加し、10℃で2時間培養する。この培養液を遠心
分離し、菌体を集める。集めた菌体をYPD平板培地
(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコース2%、寒天
2%)に塗布し、30℃で48時間培養しコロニーを生育させ
る。生育したコロニーを下記の如く選択してRZT−3
株を得た。RZT−3はブタペスト条約に基づいて平成
4年5月26日付で工業技術院微生物工業技術研究所に国
際寄託されFERM BP-3871の寄託番号が付与されている。
されたコロニーをYPG平板培地(酵母エキス1%、ポ
リペプトン2%、グリセロール3%、寒天2%)上に移
し、30℃で24時間培養し、コロニーを生育させる。その
上から色素寒天培地( 酵母エキス0.5 %、ペプトン1
%、シュークロース10%、ブロムクレゾールバーブル0.
02%、寒天1%) を重層した後、5℃で6〜12時間培養
する。この間にコロニー周辺の色調を観察すれば、5℃
における発酵能の強い株は色調が紫から黄色に変化する
が、発酵能欠如、ないし微弱な菌株では、色調の変化が
ないか、極わずかなことから識別できる。
て選択されたコロニーをYPG平板培地上に移し、30℃
で24時間培養しコロニーを生育させる。その上に色素寒
天培地を重層した後、30℃で2時間培養し、十分な発酵
能を持つ菌株(コロニー周辺の色調が紫から黄色に変化
した菌株)を選択する。四次選択は次の様に行う。三次
選択で選択された菌株について、下記の生地組成および
工程によりパン生地を調製し、-2〜40℃までの範囲で炭
酸ガスの発生量を測定し、発酵能の目安とする。
ン生地 35.44gを100ml三角フラスコに詰めて、発生す
る炭酸ガスを飽和食塩水中のシリンダーに置換する方法
で測定した。20〜40℃までの測定は、ファーモグラフ
〔アトー(株)〕を用いて行った。その結果を第1表に
示す。
よび0℃では実質的に発酵していないが、2.5 ℃以上で
はだんだん発酵量が増加している。一方、RZT−3株
は−2〜5℃では実質的に発酵しておらず、15℃におい
ても発酵量はYST株の約1/3 であり、20℃以上でY
ST株とほぼ同程度である。本発明で酵母を添加する生
地としては小麦粉、食塩に水を加えこねたものであれば
いずれも用いられ、具体的には小麦粉、食塩、油脂の原
料に必要に応じて砂糖、ショートニング、バター、脱脂
粉乳、イーストフード、卵等の副原料を加え、これに水
を加えこねたものがあげられる。
を含有する通常の培地中、好気的条件下、温度27〜32℃
に調節しつつ培養し、菌体を回収、洗浄を行うことによ
りパン製造に適した酵母菌体を得ることができる。
ークロース、澱粉加水分解物、糖蜜等が使用できるが、
特に廃糖蜜が好適に用いられる。窒素源としては、アン
モニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸ア
ンモニウム、酢酸アンモニウム、尿素、酵母エキス、コ
ーン・スチープ・リカー等が用いられる。
酸カリウム等が、アミノ酸としてはグルタミン酸等が、
ビタミンとしては、パントテンサン、チアミン等が用い
られる。培養は、流加培養が適当である。製パン法 用いるパン生地は小麦粉に食塩、油脂、水および前記で
得られた酵母、さらに必要に応じて砂糖、ショートニン
グ、バター、脱脂粉乳、イーストフード、卵等を加える
ことにより得られる。代表的な食パン、菓子パン等の製
パン法には直捏法と中種法があり、前者は、全原料を最
初から混ぜる方法であり、後者は、まず小麦粉の一部に
酵母と水を加えて中種をつくり、発酵後に残りの原料を
合わせる方法である。
後、25〜30℃で発酵し、分割、ベンチを行い、成型、型
詰めする。ホイロ(35〜42℃) を経た後、焼成 (200 〜
240 ℃) する。一方、中種法は、全使用小麦粉の約7
割、酵母、イースト・フード等に水を加え混捏し、25〜
35℃で3〜5時間発酵させた後、残りの原料(小麦粉、
水、食塩、ショートニング等)を追加し、混捏(本
捏)、分割、ベンチを行い、成型、型詰めする。ホイロ
(35〜42℃) を経た後、焼成(200〜240 ℃) する。
製造する場合は、例えば次の様に行う。小麦粉、食塩、
前記で得られた酵母、砂糖、ショートニング、卵、脱脂
粉乳の原料に水を加え、混捏し、生地とする。ついで、
バター、マーガリン等の油脂を生地に包み、圧延、折り
たたみを繰り返すことにより、生地と油脂の多層を作
る。この生地調製の際に、油脂を折り込む作業をロール
インというが、捏上生地温度を15℃位に低くして捏上
げ、目的とする層数まで冷却することなく行ってしまう
方法と、折り込み作業中に生地温度、油脂温度が上昇
し、生地の伸展性と油脂の伸展性度合に変化を生じるた
め、層の均一性が損なわれ易いので、作業途中で生地の
物性賦活を行う目的で、冷蔵庫又は冷凍庫にて何回か冷
却を取って行う、いわゆるリタード製法の2つの方法が
ある。
めする。ホイロ(30〜39℃) を経た後、焼成(190〜210
℃) する。
株1白金耳植菌し、30℃で24時間培養した。培養後、そ
の培養液全量を 270mlの糖蜜培地(糖蜜3%、尿素 0.1
93%、りん酸二水素カリウム 0.046%、消泡剤2滴) の
入った2リットルのバッフル付三角フラスコに移植し、
30℃で24時間振盪培養した。培養終了後、遠心分離によ
り集菌し、2回脱イオン水で洗浄後、素焼製吸収板の上
で水分を除去し、菌体を取得した。
にして菌体を得た。この得られた酵母菌体が製パン用に
用いられた。製パン 下記生地組成および工程により食パンを得た。 生地組成: (重量部) 強力粉 100 砂 糖 5 食 塩 2 ショートニング 5 イーストフード {パンダイヤ C-500 〔協和醗酵工業(株)〕} 0.1 酵母菌体 (RZT-3 株またはYST 株) 2 水 66 工程: ミキシング〔低速(100rpmm :以下省略) 3分 中速(190rpmm :以下省略) 6分 高速(290rpmm :以下省略) 5分 捏上温度(28℃) 分 割 ( 450g) 貯 蔵 (5℃、7日間) ベンチ (室温、15分) 成 型 (モルダー) ホイロ (40℃、90%RH、75分) 焼 成 (220 ℃、25分) 冷蔵前および冷蔵(5℃で7日間貯蔵)後の発酵能の測
定は生地30gを用いファーモグラフにより測定し、30℃
で2時間の総炭酸ガスの発生量 (ml) を示した。冷蔵耐
性能は下記の式で算出した。
食パンの比容積はなたね置換法により求めた。また、外
観および内相を観察した。その結果を第3表に示す。
性能を算出し、外観および内相を観察した。その結果を
第4および5表に示す。
ッシュペストリーを得た。 (重量部) 生地組成: 強力粉 70 薄力粉 30 砂 糖 10 食 塩 1.2 ショートニング 6 全 卵 10 イーストフード(パンダイヤ C-500) 0.1 酵母菌体(RZT-3 株またはYST 株) 6 水 50 折込み用バター 50 工程: ミキシング (低速3分、中速8分、高速1分) 捏上温度 (22℃) 分 割 (1,000 g×2) リタード (-20 ℃、30分) ロールイン〔3つ折 2回(折込み用バター:小麦粉に対して50%)〕 リタード (5℃、60分) 圧 延 (3つ折 1回 4mmに圧延) 分割・成型 〔50g ロール 状(ファーモグラフ 用 30g) 〕 貯 蔵 (5℃、1、4および7日間) ↓ ホ イ ロ (35℃、75%RH 、70分) 焼 成 (200 ℃、12分) 生地を分割、成型後、保存することなく直ちに焼成する
か、5℃の冷蔵庫で1、4および7日間貯蔵後、焼成し
た。
積を測定し、冷蔵耐性能を算出し、外観および内相を観
察した。その結果を第6および7表に示す。
中速5分、高速30秒)した。捏上温度は26℃であった。
(室温、15分) をとり、成型した。 成型後、密閉容器に充填(炭酸ガス充填)し、直ちに
冷蔵庫(5℃)に、1〜5週間保存した。 保存終了後、ホイロ(36℃、30分) をとり、焼成(210
℃、12分) した。 得られたバターロールの比容積を第8表に示す。
た生地を用いても比容積、外観、内相等の優れたパンを
得ることができる。
Claims (9)
- 【請求項1】 サッカロミセス属に属し、20〜40℃
では正常に発酵し、−2〜15℃では市販の酵母の1/
3以下の発酵能を示す低温感受性酵母を生地に添加し、
生地が凍結しない−2〜15℃で冷蔵保存した後、製パ
ンすることを特徴とするパンの製造方法。 - 【請求項2】 冷蔵保存が1日以上行われる請求項1記
載の方法。 - 【請求項3】 請求項1または2のいずれかに記載の方
法により得られるパン。 - 【請求項4】 サッカロミセス属に属し、20〜40℃
では正常に発酵し、−2〜15℃では市販の酵母の1/
3以下の発酵能を示す低温感受性酵母を生地に添加し、
生地が凍結しない−2〜15℃で冷蔵保存されたパン生
地。 - 【請求項5】 一日以上冷蔵された請求項4記載のパン
生地。 - 【請求項6】 請求項4または5のいずれかに記載のパ
ン生地を焼成して得られるパン。 - 【請求項7】 サッカロミセス属に属し、20〜40℃
では正常に発酵し、−2〜15℃では市販の酵母の1/
3以下の発酵能を示す低温感受性酵母。 - 【請求項8】 サッカロミセス属に属し、20〜40℃
では正常に発酵し、−2〜15℃では市販の酵母の1/
3以下の発酵能を示す低温感受性酵母を生地に添加し、
生地が凍結しない−2〜15℃で冷蔵保存することを特
徴とするパン生地の保存方法。 - 【請求項9】 冷蔵保存が1日以上行われる請求項8記
載の保存方法。
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JP2000256610A JP2001078655A (ja) | 2000-08-28 | 2000-08-28 | パンの製法 |
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP15085292A Division JP3170352B2 (ja) | 1992-06-10 | 1992-06-10 | パンの製法 |
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JP2001078655A true JP2001078655A (ja) | 2001-03-27 |
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JP (1) | JP2001078655A (ja) |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPS61195637A (ja) * | 1985-02-27 | 1986-08-29 | 鐘淵化学工業株式会社 | パン類の製造法 |
-
2000
- 2000-08-28 JP JP2000256610A patent/JP2001078655A/ja active Pending
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JPS61195637A (ja) * | 1985-02-27 | 1986-08-29 | 鐘淵化学工業株式会社 | パン類の製造法 |
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