JPH05284896A - パン用冷蔵生地及びパン類の製造法 - Google Patents

パン用冷蔵生地及びパン類の製造法

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JPH05284896A
JPH05284896A JP4090694A JP9069492A JPH05284896A JP H05284896 A JPH05284896 A JP H05284896A JP 4090694 A JP4090694 A JP 4090694A JP 9069492 A JP9069492 A JP 9069492A JP H05284896 A JPH05284896 A JP H05284896A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 サッカロミセス属に属し低温感受性かつパン
生地を冷蔵貯蔵しても発酵力が低下しないパン酵母を用
いて、パン生地を前発酵した後、冷蔵貯蔵せしめること
を特徴とするパン用冷蔵生地とパン類の製造法に関す
る。 【効果】 低温感受性かつパン生地を冷蔵貯蔵しても発
酵力が低下しないパン酵母を用いることにより、従来よ
りも優れた冷蔵パン生地がえられ、品質、風味の良好な
パンを製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パン生地及びパン類の
製造法に関する。さらに詳しくは、本発明は低温感受性
かつパン生地を冷蔵貯蔵しても発酵力が低下しない性質
を有するサッカロミセス属に属するパン酵母を含有する
パン生地とパン類の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】通常のパン製造過程は、生地の混捏、前
発酵、生地分割、成型、焙炉(ほいろ)発酵、及び焼成
の各工程からなり、従来からこの製パン工程において、
パン生地を冷凍保存し、この冷凍貯蔵されたパン生地を
解凍後、焼成することにより短時間で焼き立てパンを供
給する、といった工程の合理化が行われている。そして
前記パン生地冷凍方法においては、生地分割または成型
冷凍が殆どである。焙炉発酵をとった後のパン生地を冷
凍すると、これを解凍してそのまま焼成した場合には、
焼成後のパン製品の表面にしわができたり、ボリューム
の低下、風味、食感の悪化等の問題が発生する。そこで
従来においては、生地を分割した段階、またはこれを成
型した段階等、焙炉をとる前のパン生地を冷凍し、解凍
後十分に焙炉をとることによりパン生地を再び膨張さ
せ、前記如き冷凍障害による焼成後のパン製品における
ボリューム感の低下やシワの発生等の品質の劣化を最小
限度に押さえようとするものであった。
【0003】しかしながら、前記如き焙炉前の冷凍であ
っても、かつ原料配合、製法等を改良しても、大なり小
なりパン生地及びイーストに冷凍障害がおこり、十分に
焙炉をとったとしても焼き上げたパンはこの冷凍障害に
よりなし肌(斑点)や、表面のしわが発生したり、また
は生地内の含有ガス量が減少することによりボリューム
が低下するなどの冷凍障害による品質劣化の問題が残
る。そこでパン生地を冷凍することなく低温冷蔵が可能
であれば上記の如き冷凍障害の問題は全くなくなるので
あるが、従来のパン生地では冷蔵貯蔵はできなかった。
【0004】更に、通常の冷凍方法の場合、冷凍貯蔵さ
れたパン生地は、室温で3〜5時間、または冷蔵庫で一
夜程度の解凍操作が必要である。そこで、パン生地を冷
凍せず、これを冷蔵貯蔵可能あれば上記の如き冷凍障害
の恐れがないばかりか、貯蔵後の解凍操作も不要で製パ
ン工程を省力化、合理化しうるのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来からの
製造工程や配合割合を変更する事なく使用できるパン生
地を冷蔵しても発酵力が低下しないパン酵母を用いたパ
ン用冷蔵生地及びパン類の製造方法を検討し、従来の冷
凍方法の如き冷凍障害の恐れがなく、貯蔵後の解凍操作
を不要として製パン工程の省力化、合理化を達成するこ
とを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、温度の感受
性の違いが冷蔵生地の発酵力と関わりをもつのではない
かと考え、種々検討した結果、低温感受性かつ冷蔵貯蔵
した後においても発酵力が低下しない株を用いることに
より、従来よりも優れた冷蔵パン生地が得られることを
見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、サッカロミセス属に
属し、低温感受性かつパン生地を冷蔵貯蔵した後におい
ても発酵力が低下しない性質を有するパン酵母を用い
て、パン生地を前発酵した後、冷蔵貯蔵せしめることを
特徴とするパン用冷蔵生地及び該冷蔵生地を用いたパン
類の製造法に関する。
【0008】本発明で使用するパン酵母は、サッカロミ
セス属に属する酵母である。代表的な例としては、サッ
カロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・ウバルム、
サッカロミセス・シェバリエリ等があげられる。なお、
サッカロミセス属以外のパン酵母であるトルラスポラ属
(例えばトルラスポラ・デルブルツキ(旧名サッカロミ
セス・ロゼイ))や、クルベロマイセス・サーモトレラ
ンス等についても、本発明への適用が可能である。
【0009】更に、本発明で用いるパン酵母は、サッカ
ロミセス属に属するもののうち、低温感受性かつパン生
地を冷蔵貯蔵しても発酵力が低下しない性質を有するも
のでなければならない。ここでいう低温感受性とは、通
常の培地において15℃以下では生育しないかまたは著
しく生育が抑制される性質をさす。また、本発明でいう
冷蔵貯蔵とは、−5℃〜15℃の低温域で貯蔵すること
をさす。本発明で用いられる具体的なパン酵母として、
例えば、サッカロミセス・セレビシエ FERM P−
12916があげられる。本株は、市販パン酵母(オリ
エンタル酵母(株)製FD株)から分離し、YEAST
S : Characteristics and identification (J.A.BAR
NETT,R.W.PAYNE & D.YARROW /Cambridge University P
ress 1983)に基づいて同定した結果、サッカロミセス
・セレビシエと同定したものを親株として変異処理によ
って得たものである。変異処理の親株としては、通常パ
ン生地用、高糖生地用、冷凍生地用、無糖生地用などの
市販パン酵母や、自然界から分離した酵母のいずれでも
よい。変異処理法としては、通常のエチルメタンスルホ
ネート(EMS)処理法の他、UV処理法、ニトロソグ
アニジン(NTG)処理法等も用いることができる。ま
た自然変異によっても安定な本発明の変異株を取得する
ことが可能である。本発明の変異株の取得方法の一実験
例を以下に記述する。
【0010】
【実験例】低温感受性変異株の取得は、市販パン酵母
(オリエンタル酵母(株)製FD株)を親株として、E
MSを用いた変異処理を施すことにより達成された。こ
れには、まず親株をFowellの胞子形成培地(酢酸ナトリ
ウム0.4%、寒天2%、pH6.7)で28℃、2日間
培養し、子のう胞子を形成させた。これを、57℃、1
0分の熱処理により栄養細胞を死滅させて、単相株のみ
を得た。この単相株をYM寒天培地(グルコース1%、
酵母エキス0.3%、麦芽エキス0.3%、ポリペプトン
0.5%、寒天2%、pH5.0)上で28℃、2日間培
養した後、EMS処理(3%EMS、90分、28℃)
を行った。次いで、最終濃度が5%となるように次亜硫
酸ナトリウムを加えEMSを中和し、菌体を洗浄後、適
宜希釈してYM寒天培地(マスタープレート)にまい
た。28℃、2日間培養して生育してきたコロニーをレ
プリカ法にて別のYM寒天培地(レプリカプレート)に
移し、10℃で2週間培養した。この10℃のレプリカ
プレート上で生育できないコロニーをマスタープレート
よりひろいあげることにより、低温感受性単相株を取得
した。この低温感受性単相株を低温感受性でない他の単
相株と接合させて2倍体の株を得、更に上記の変異処理
をこの2倍体株について繰り返すことにより2倍体の低
温感受性変異株サッカロミセス・セレビシエFERM
P−12916を取得した。
【0011】さて、次に、パン酵母発酵用培地として
は、パン酵母が通常利用し得る炭素源、窒素源、無機塩
類、その他酵母の生育に必要な成分を適宜配合した合成
培地、天然培地が用いられる。培養方法としては、通常
のパン酵母で行われている糖密使用による糖流加培養法
によって、大量に製造できる。酵母は、凍結乾燥により
得られた乾燥酵母、圧搾して得られた圧搾酵母のいずれ
でもよい。
【0012】本発明のパン類は、食パン、菓子パン、デ
ニッシュペストリ−のほか、中華まんじゅう、イースト
ドーナツ等膨張剤としてパン酵母を使用するものをすべ
て含有するものである。小麦粉に対するパン酵母の使用
量は通常1〜5%であり、パン酵母以外の成分は通常の
パン生地の場合と同様にパン酵母本来の活性を損なわな
いような成分であればなんでも適量加えることができ
る。具体的には、該成分として砂糖や油脂等がある。こ
れらは、パン酵母に対し保護効果があるので、従来の冷
凍耐性株には該成分リッチな冷凍生地での利用に限られ
ていた。しかしながら、本発明の冷蔵生地では、該成分
リーンな生地でも冷蔵貯蔵後の発酵力が低下しない。冷
蔵パン生地は、パン生地を混合し、前発酵を行ったの
ち、必要に応じて分割、成形してから急冷し−5℃〜1
0℃に冷蔵貯蔵される。製パンに関しては冷蔵パン生地
を焙炉(ほいろ)発酵を行って焼き上げられる。
【0013】本発明の冷蔵パン生地を常法の手段により
製造したパンは、通常のパン酵母含有の冷蔵パン生地を
使用して製造したパンに比べ、外観、品質、風味ともに
優れている。
【0014】次に、実施例により本発明を具体的に説明
する。
【実施例1】パン酵母としてサッカロミセス・セレビシ
エの低温感受性変異株FERM P−12916を使用
しパン生地を調製した。パン生地組成、生地調製条件は
下記に示す通りである。なお、対照として市販の冷凍耐
性酵母(オリエンタル酵母(株)製FD株)を用いて同
様の調製をした。
【0015】 配合:強力粉 200g 100% 砂糖 10g 5% 食塩 4g 2% パン酵母(水分65〜67%) 4g 2% 水 120g 62%
【0016】生地調製条件 混捏時間:15〜18分(中速) 捏ね上げ温度:28〜30℃
【0017】上述の如く調製したパン生地について、下
記に示すような方法で冷蔵生地の発酵力を調べた。
【0018】(冷蔵区)50gの生地玉2個を30℃で
2時間発酵(前発酵)した後ガス抜きし、厚さ1cm、
直径6〜7cm程度に麺棒で延ばし、アルミホイルに包
んでー20℃に15分保存して急冷しその後5℃にて冷
蔵保存した。30℃に30分間置いた後、丸めファーモ
グラフで30℃・3時間の炭酸ガス発生量を測定した。
【0019】(非冷蔵区)50gの生地玉2個を直ちに
ファーモグラフで30℃・3時間の炭酸ガス発生量を測
定した。
【0020】表1に低温感受性株FERM P−129
16と対照株(オリエンタル酵母(株)製FD株)の炭
酸ガス発生量を示した。冷蔵生地の発酵保持率は非冷蔵
区の3時間発酵で生成した炭酸ガス量(A)に対する冷
蔵区の3時間発酵で生成した炭酸ガス量(B)の百分
率、すなわちB/A*100で表わした。
【0021】
【表1】
【0022】表1からあきらかなように、低温感受性株
を用いて調製したパン生地は、市販の冷凍耐性パン酵母
(対照株)を用いて調製したパン生地よりも冷蔵生地に
おける発酵力が優れていた。
【0023】
【実施例2】実施例1で使用した低温感受性株及び市販
の冷凍耐性酵母を用いて冷蔵パン生地を調製した。配
合、工程を下記に示した。
【0024】 配合: 中種 本捏 小麦粉(強力粉) 700g 300g 砂 糖 − 50g 食 塩 − 20g ショートニング − 50g イーストフード 1g − 酵 母 20g − 水 400g 250g
【0025】工程: 中種混捏 L:3分 M:3分 混捏温度 28℃ 前発酵時間 4時間 本捏・混捏 L:4分 M:9分 捏上温度 28℃ フロアータイム 20分 ベンチタイム 15分
【0026】調製したパン生地を成形した後,−20℃
で15分急冷した後5℃で貯蔵した。5日間の貯蔵後、
焙炉(ほいろ)発酵(40℃、RH85%、70分)、
焼成(210℃、23分)を行ない、パンを製造した。
【0027】官能テストによると、低温感受性株による
冷蔵パン生地を使用して製造したパンは、市販の冷凍耐
性酵母を使用して製造したパンよりも、パンの品質、風
味ともに優れているものであった。
【0028】
【発明の効果】本発明の方法によれば、冷蔵貯蔵後での
発酵力が優れ、品質・風味の良好なパンを製造できるこ
とから、産業上の利用価値が高いものである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 サッカロミセス属に属し、低温感受性か
    つパン生地を冷蔵貯蔵しても発酵力が低下しない性質を
    有するパン酵母を用いてパン生地を前発酵した後、冷蔵
    貯蔵せしめることを特徴とするパン用冷蔵生地の製造
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1の製造法で得られるパン用冷蔵
    生地を焙炉(ほいろ)発酵した後、焼成せしめるパン類
    の製造法。
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