JP2001076612A - 電界電子放出装置 - Google Patents

電界電子放出装置

Info

Publication number
JP2001076612A
JP2001076612A JP25031899A JP25031899A JP2001076612A JP 2001076612 A JP2001076612 A JP 2001076612A JP 25031899 A JP25031899 A JP 25031899A JP 25031899 A JP25031899 A JP 25031899A JP 2001076612 A JP2001076612 A JP 2001076612A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon
particles
nanotubes
nanotube
emitter
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP25031899A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaaki Ito
雅章 伊藤
Sumuto Sago
澄人 左合
Michiko Kusunoki
美智子 楠
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Noritake Co Ltd
Japan Fine Ceramics Center
Original Assignee
Noritake Co Ltd
Japan Fine Ceramics Center
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Noritake Co Ltd, Japan Fine Ceramics Center filed Critical Noritake Co Ltd
Priority to JP25031899A priority Critical patent/JP2001076612A/ja
Publication of JP2001076612A publication Critical patent/JP2001076612A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Cold Cathode And The Manufacture (AREA)
  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Electrodes For Cathode-Ray Tubes (AREA)
  • Cathode-Ray Tubes And Fluorescent Screens For Display (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】高密度に配向させられたナノチューブを有し、
電子放出効率の一様性の高いエミッタを備えた電界電子
放出装置を提供する。 【解決手段】エミッタは、炭化珪素粒子が個々の形状を
略保ったまま結合させられた焼結体に真空下で加熱処理
を施すことにより、複数本のナノチューブ42および炭
素部44を含む複数個の炭素粒子38がその炭素部44
相互に接した状態で上面に備えられたブロック36で構
成される。そのため、粒子単位で各々の外周面から珪素
原子が除去されるため、炭素粒子38の各々に備えられ
る複数本のナノチューブ42は粒子内部で一体化し、そ
の下側にそれと連続する炭素部44が形成される。ま
た、ブロック36内の炭素粒子38相互の接触部分では
ナノチューブ42の生成が妨げられ炭素部44が生成さ
れる。この結果、ナノチューブ42を備えた炭素粒子3
8は導電性の高い炭素部44の相互接触に基づいて相互
に導通させられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電界放出型表示装
置(Field Emission Display:FED)、陰極線管(Ca
thode Ray Tube:CRT)、平面型ランプ、電子銃等の
電子線源に用いられる電界電子放出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、電界放出によって電子源(エミ
ッタ)から陽極に向かって真空中に電子を放出させる電
界電子放出装置は、その電子で蛍光体を励起する表示装
置や発光装置、或いは電界顕微鏡の電子銃等に好適に用
いられている。ここで、「電界放出(電界電子放出)」
とは、強電場の作用により、量子力学的なトンネル現象
を利用して電子を固体表面から真空準位へ引き出すこと
である。真空準位と金属または半導体表面とのエネルギ
ー差は仕事関数(work function )φで表されるが、例
えば通常の金属材料では仕事関数φが数(eV)と大きいた
め、室温において金属中の電子が真空中に飛び出すこと
はない。しかしながら、外部から強電場を作用させるこ
とによりポテンシャル障壁を薄くすると、トンネル効果
によって電子が確率論的に真空中に飛び出す。これが電
界放出であり、仕事関数φが小さいほど弱い電場で電子
を放出させることが可能となる。
【0003】上記のような電界電子放出装置において、
エミッタを多数本のカーボン・ナノチューブ(以下、単
にナノチューブという)で構成することが提案されてい
る。例えば、特開平10−149760号公報に記載さ
れた電界放出型冷陰極装置や特開平10−012124
号公報に記載された電子放出素子等がそれである。ナノ
チューブとは、円筒状を成す炭素原子(C) の結合体であ
って、径の異なる複数個のグラファイト・シート(グラ
フェン・シートすなわちグラファイト層)が入れ子にな
り、全体の直径が2 〜50(nm)程度、長さが 1〜100(μm)
程度の寸法を有する微細な構造体をいう。例えば、Heer
et al.^A Carbon Nanotube Field-Emission Electron
Source",SCIENCE VOL.270 17 NOVEMBER 1995の1179頁〜
1180頁、Saito et al.^Conical beams from open nanot
ubes",NATURE VOL389 9 OCTOBER1997の 554頁〜 555
頁、或いは、Gulyaev et al.^Work function estimate
foremitted from nanotube carbon cluster films",J.V
ac.Sci.Technol.B 15(2),Mar/Apr 1997の 422頁〜 424
頁等で報告されているように、ナノチューブの先端から
は効率よく電子放出が起き、或いはエミッション特性に
優れることから、エミッタとして好適に用い得るのであ
る。
【0004】しかも、ナノチューブは周壁が主として炭
素の6員環によって構成されるが、その端部は5員環或
いは7員環が導入されることによって曲率半径10(nm)程
度の小さなドーム状に閉じた形状になっており、また、
炭素原子だけで構成されることから、真空中で耐酸化性
が高く化学的安定性に優れると共に耐イオン衝撃性も高
い特徴を有している。したがって、例えばSpindt et a
l.^Physical properties of thin-film field emission
cathodes with molybdenum cones",J.Appl.Phys.,Vol.
47,No.12,1976の5248頁〜5263頁等に示される従来から
用いられてきた円錐状のモリブデン・コーン等でエミッ
タを構成する場合のような、エミッタ先端の曲率半径を
小さくするために複雑な成膜プロセスを必要とし、或い
は気密空間内の残留ガスによる酸化や損傷延いては経時
変化(劣化)が生じることがない。そのため、簡単な製
造プロセスでエミッタ先端の曲率半径を極めて小さくし
て高い電子放出効率を得ることができると共に、長期間
に亘って劣化が生じ難くノイズや特性のバラツキ、劣化
による放出電流の減少等の問題もない。更に、極めて微
細なナノチューブから成るエミッタは、数密度がせいぜ
い数万(個/cm2)程度以下のモリブデン・コーンで構成
される場合に比較して極めて高い数密度で配設して放出
電流値や効率等を高め得る利点もある。
【0005】ところで、従来、ナノチューブは、前記特
開平10−149760号公報や前記文献等に記載され
るように、不活性ガス雰囲気下で蒸発させたカーボンを
凝縮(再結合)させ、或いは、特開平10−01212
4号公報等に記載されるように、触媒を埋め込んだ細孔
内にCVD法等で成長させること等で得られていた。そ
のため、前者においては、同時に生成されるアモルファ
ス・カーボン、グラファイトやフラーレン等の混合物か
らナノチューブを分離し、或いは生成されたナノチュー
ブの向きや高さ、配設密度を揃えることが困難であっ
た。一方、後者においては、ナノチューブの向きや高さ
は揃うが、細孔密度で決定されるナノチューブの配設密
度延いてはエミッタの数密度が低くなると共に製造工程
が複雑になるという問題があった。因みに、電界電子放
出装置のエミッタは、一定の電圧で一様に電子を発生さ
せるために複数本のナノチューブの先端の向きや高さ或
いは配設密度等を略一様に揃える必要があるため、それ
らがばらつくと微小な電子発生源としては利用し得ても
その効率は低く留められ、更に、広い面積に亘って一様
な輝度が要求されるFED等の表示装置や照明装置等は
構成できない。
【0006】これに対して、例えば特開平10−265
208号公報に記載されているように、炭化珪素(SiC
)焼結体を加熱処理して焼結体中の珪素原子を除去す
るナノチューブの生成方法が提案されている。炭素が比
較的高温まで安定な真空下で炭化珪素焼結体を加熱する
とその表面から珪素(Si)が選択的に除去されるため、
その珪素除去層内に残留する炭素原子によって、その珪
素の移動方向すなわち焼結体の内部から表面に向かう一
方向に沿って配向するナノチューブが元の炭素原子密度
に基づく高い数密度で生成されるのである。そのため、
この技術を適用すれば、高い数密度で一方向に沿って略
配向するナノチューブを有するエミッタを備えた電子線
放出装置が容易に得られる。なお、上記のナノチューブ
生成作用は、炭化珪素焼結体に限られず他の共有結合性
炭化物を熱処理する場合にも同様である。ここで「共有
結合性炭化物」とは、炭素と非金属元素(炭素との間で
イオン性炭化物を作るものよりは陽性が弱く、侵入型炭
化物を作るものよりは原子半径が小さい珪素等の元素)
との化合物であって、共有性炭化物ともいう。
【0007】しかしながら、上記のような熱処理を施し
た共有結合性炭化物でエミッタが構成された電界電子放
出装置では、エミッタの内周部における電子放出効率が
周縁部におけるそれに比較して低いという問題があっ
た。その理由は以下のように推定される。熱処理が施さ
れた炭化物は、表面は珪素が除去されることによって炭
素だけで構成される一方、内部は導電性が極めて低い炭
化物のままである。また、炭化物はナノチューブが生成
し易い特定の結晶面が上面(陽極側の一面)となるよう
に用いられるため、それ以外の結晶面が現れている側面
等にはグラファイト等の他の構造の炭素同素体が生成さ
れるが、これは比較的導電性の高い導体層を構成する。
そのため、炭化物上面の周縁部ではナノチューブに至る
通電経路の大部分がその導体層で構成されることから、
ナノチューブに流れる電流値が十分に大きくなって高い
電子放出効率が得られる。一方、このような導体層が形
成されない炭化物上面では、周縁部から内周部に位置す
るナノチューブに至る通電経路が専らナノチューブ相互
の接触によって形成されるため、通電経路の抵抗率が比
較的高くなる。そのため、内周部に向かうに従ってその
抵抗率の高い通電経路の占める割合が大きくなることか
ら、ナノチューブに流れる電流値が小さくなって電子放
出効率が低くなるものと考えられる。したがって、電子
放出効率の低下はエミッタの面積が大きくなるほど顕著
となり、例えば 3(mm)×5(mm) 程度以上の大きさでは無
視できない程度に拡大する。
【0008】本発明は、以上の事情を背景として為され
たものであって、その目的は、高密度に配向させられた
ナノチューブを有し、電子放出効率の一様性の高いエミ
ッタを備えた電界電子放出装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための第1の手段】斯かる目的を達成
するための第1発明の要旨とするところは、気密空間内
において互いに対向して配置された陰極および陽極間に
電圧を印加することにより、その陰極上に設けられたエ
ミッタから電子を放出させる形式の電界電子放出装置に
おいて、(a) 共有結合性炭化物粒子に真空下で加熱処理
を施すことによりその表面の一部に先端が外側に向かう
ように生成された複数本のナノチューブと、そのナノチ
ューブと導通してその表面の残部に同時に生成された炭
素だけから成る導電性の炭素部とを含む複数個のナノチ
ューブ具備粒子を、前記エミッタとして前記陰極上に設
けたことにある。
【0010】
【第1発明の効果】このようにすれば、ナノチューブ具
備粒子の各々には、複数本のナノチューブおよびそれと
導通する炭素部が表面の一部および残部にそれぞれ備え
られることから、エミッタを構成するために陰極の上に
載せられた個々のナノチューブ具備粒子のナノチューブ
とその陰極との間には、その粒子内の炭素部或いはその
炭素部およびその粒子に接触している他の粒子内の炭素
部によって十分に抵抗率の低い通電経路が形成される。
すなわち、ナノチューブは閉曲面である粒子表面に生成
されることから、粒子内部に向かうに従って相互に接近
し隣接するもの相互に一体化するため、その下側にはそ
れと連続する炭素部が形成される。また、粒子表面のう
ち他の粒子等に接触し或いはナノチューブが生成し難い
結晶面が現れている部分には炭素だけから成る炭素部が
形成されるが、これはナノチューブの下側に形成される
ものに粒子内部で連続する。そのため、粒子表面の一部
に形成されたナノチューブは表面の残部に現れた炭素部
と導通させられるのである。したがって、複数個のナノ
チューブ具備粒子により構成される一つのエミッタ内お
よび陰極上に備えられる複数個のエミッタ相互間で、陰
極からナノチューブに至る通電経路の抵抗率のばらつき
延いては電子放出効率のばらつきが極めて小さくなるこ
とから、電子放出効率の一様性の高い電界電子放出装置
を得ることができる。なお、本願において「炭素だけか
ら成る導電性の炭素部」とは、アモルファス・カーボ
ン、グラファイトやフラーレン等の炭素の各種の同素体
のうちの導電性を有するものをいい、ナノチューブが含
まれていても差し支えない。
【0011】なお、共有結合性炭化物粒子表面のうちナ
ノチューブが生成されるのは、特定の結晶面が現れてい
るその表面の一部であって且つ他の粒子等に接触してい
ない部分に限定されるため、ナノチューブ具備粒子は必
ずしもナノチューブが陽極に向かう向きで陰極上に配置
されない。しかしながら、陰極上の複数個のナノチュー
ブ具備粒子が略一定の確率でナノチューブが陽極に向か
うように配設されると考えれば、一つのエミッタ内にお
いて有効なナノチューブの分布や複数のエミッタの各々
で有効なナノチューブ本数は、確率論的に略一様になり
且つナノチューブの数密度も確率論的に十分に大きくな
る。したがって、ナノチューブ具備粒子の向きを特に揃
えなくとも、十分に高く且つ一様な電子放出効率を得る
ことができる。しかも、ナノチューブの高さのばらつき
はナノチューブ具備粒子の直径や固着厚み等によって決
定されることから、これらを高さばらつきの許容範囲に
応じて適宜設定すれば、実質的に高さばらつきのないエ
ミッタを得ることができる。
【0012】
【第1発明の他の態様】ここで、好適には、前記複数個
のナノチューブ具備粒子は、複数個の前記炭化物粒子を
導体基板上に載せて前記加熱処理を施すことにより前記
複数本のナノチューブおよび前記炭素部が生成されると
同時にその導体基板に固着されたものである。このよう
にすれば、ナノチューブが生成され易い特定の結晶面が
上面(陽極側)に向かうように導体基板上に載せられた
炭化物粒子では、その上面側に生成されたナノチューブ
が有効に機能し得る一方、その特定結晶面が他の粒子や
導体基板に接している粒子では、その表面にナノチュー
ブが生成されず非金属除去層全体が炭素部となる。その
ため、ナノチューブ具備粒子は、それに形成された炭素
部が他の粒子の炭素部や導体基板の表面に接触させられ
た状態でその導体基板上に固着されることから、その炭
素部および導体基板によってナノチューブと陰極との間
に抵抗率の低い通電経路が形成される。したがって、形
成されたナノチューブが有効に機能する可能性が高めら
れるため、独立したナノチューブ具備粒子を陰極上に固
着する場合に比較して電子放出効率が高められる。
【0013】また、上記の態様において、一層好適に
は、前記のナノチューブ具備粒子は、前記の導体基板が
前記の陰極上に導電性接着剤で固着されることにより間
接的にその陰極上に設けられる。このようにすれば、ナ
ノチューブ具備粒子が固着された導体基板をそのまま陰
極上に固定するだけでエミッタを構成できるため、相互
に独立したナノチューブ具備粒子を陰極上に固着する場
合に比較して、ナノチューブ生成後に微細なナノチュー
ブ具備粒子を直接取り扱う必要がないことから、製造工
程が簡単になる。また、導体基板で陰極を兼ねる場合に
比較して、陰極の構成材料を自由に選択できる利点もあ
る。
【0014】また、前記の炭化物粒子を前記の導体基板
上に載せて加熱処理を施す場合において、一層好適に
は、その炭化物粒子は陽極と陰極との交点に対応する位
置毎に所定の面積を以て島状に設けられる。このように
すれば、ナノチューブ具備粒子が生成され且つ導体基板
に固着されると同時に実質的にパターニングされるた
め、交点から外れた位置に備えられたエミッタから無用
な電子放出が生じることが抑制される。
【0015】また、好適には、前記複数個のナノチュー
ブ具備粒子は、各々に備えられる前記炭素部が相互に接
触した状態で前記陰極上に設けられたものである。この
ようにすれば、複数個のナノチューブ具備粒子の各々の
炭素部が相互に接することで粒子相互の導通が確保され
ることから、陰極とナノチューブとの間の導電性が一層
高められると共に、ナノチューブの配設密度も高められ
るため、電子放出効率が一層高められる。
【0016】
【課題を解決するための第2の手段】また、前記の目的
を達成するための第2発明の要旨とするところは、気密
空間内において互いに対向して配置されたエミッタおよ
び陽極間に電圧を印加することにより、そのエミッタか
ら電子を放出させる形式の電界電子放出装置において、
(a) 複数個の共有結合性炭化物粒子が個々の形状を略保
ったまま結合させられた炭化物焼結体に真空下で加熱処
理を施すことにより、先端が外側に向かうように表面の
一部に生成された複数本のナノチューブとそのナノチュ
ーブに導通してその表面の残部に同時に生成された炭素
だけから成る導電性の炭素部とを含む複数個のナノチュ
ーブ具備粒子がその炭素部相互に接した状態で前記陽極
側に向かう上面に備えられたナノチューブ具備焼結体
を、前記エミッタとして前記陰極上に設けたことにあ
る。
【0017】
【第2発明の効果】このようにすれば、ナノチューブ具
備焼結体を構成する複数個のナノチューブ具備粒子は、
各々に複数本のナノチューブおよびそれと導通する炭素
部が表面の一部および残部にそれぞれ備えられると共に
導電性の高い炭素部相互に接触させられていることか
ら、その接触に基づいて相互に導通させられるため、ナ
ノチューブ具備焼結体上面の全ての位置のナノチューブ
までの十分に抵抗率の低い通電径路が専らその炭素部で
形成される。すなわち、炭化物焼結体の構成粒子個々の
形状が略保たれていることから、加熱処理を施した際に
は粒子単位で各々の外周面から非金属元素が除去される
ため、ナノチューブ具備焼結体を構成するナノチューブ
具備粒子の各々に生成される複数本のナノチューブは、
相互に独立した炭化物粒子に加熱処理を施す第1発明の
場合と同様に粒子内部で一体化し、その下側にそれと連
続する炭素部が形成される。また、複数個のナノチュー
ブ具備粒子の各々はナノチューブ具備焼結体内で他の粒
子と接触させられているため、それらの接触部分ではナ
ノチューブの生成が妨げられ炭素部が生成される。その
ため、粒子表面に形成されたナノチューブが炭素部と導
通させられると共に他の粒子と炭素部相互に導通させら
れるのである。したがって、ナノチューブ具備焼結体で
構成されるエミッタ内および複数個のエミッタ相互間で
は、ナノチューブに至る通電経路の抵抗率のばらつき延
いては電子放出効率のばらつきが極めて小さくなること
から、電子放出効率の一様性の高い電界電子放出装置を
得ることができる。なお、「個々の形状を略保ったま
ま」とは、共有結合性炭化物粒子の当初の形状が殆ど失
われておらず、粒子相互の境界に焼成前と同程度の空隙
が存在する焼結状態をいう。
【0018】
【第2発明の他の態様】ここで、好適には、前記ナノチ
ューブ具備焼結体は、内部に位置する前記共有結合性炭
化物粒子の各々に至る細孔を有する前記炭化物焼結体に
前記加熱処理を施したものである。このようにすれば、
ナノチューブを生成するために炭化物焼結体を加熱処理
する際には、その内部においても細孔を通って非金属元
素が抜け出るため、その内部に存在する粒子にも上面側
に存在する炭化物粒子と同様に表面から内部に向かって
非金属元素除去層が形成される。このような内部に存在
する炭化物粒子は、表面の殆どが他の炭化物粒子に接触
していることからナノチューブは生成し難いため、表面
に炭素部が現れた粒子となり易い。そのため、ナノチュ
ーブ具備焼結体上面に位置する複数個のナノチューブ具
備粒子の各々に備えられる複数本のナノチューブの各々
に至る通電経路は、ナノチューブ具備焼結体の上面から
下面に向かう厚み方向において複数個の粒子の炭素部相
互の接触によって形成される。したがって、ナノチュー
ブ具備焼結体の表層部に備えられた粒子だけに非金属元
素除去層が形成されてその表層部を通る通電経路が備え
られる場合に比較して、ナノチューブ具備焼結体の上面
周縁部と内周部とのナノチューブに至る通電径路の距離
の差が小さくなるため、ナノチューブに流れる電流量が
一層一様になって、電子放出効率の一様性が一層高めら
れる。
【0019】また、前記第1発明および第2発明におい
て、好適には、前記炭化物粒子は、0.4(μm)以下の平均
粒径を有するものである。このようにすれば、平均粒径
が十分に小さいことから、加熱処理を施した際にその中
心部からも容易に非金属元素が除去され、その略全体が
非金属元素除去層すなわちナノチューブおよび炭素部で
構成される。そのため、生成されたナノチューブに至る
通電径路の抵抗率が一層低くなることから、電子放出効
率が一層高められる。
【0020】また、好適には、前記の炭化物粒子は、炭
化珪素から成るものである。このようにすれば、ナノチ
ューブ具備粒子の各々の表面に一層緻密且つ一様に配向
させられたナノチューブを生成できる。これは、珪素が
炭素原子をグラファイト化するための触媒として特に好
適に作用するためと推定される。なお、炭化珪素は一般
にα型(α-SiC)およびβ型(β-SiC)に分類される
が、何れから成る粒子にもナノチューブが好適に生成さ
れる。上記のα型およびβ型は、多数存在する炭化珪素
の多形を二分類したものであり、立方晶の3Cをβ型と
いい、それ以外の非等軸晶(六方晶の2H、4H、6H
および菱面体の15R等)をα型という。ここで、2H
等はRamsdellの表記法に従ったものである。
【0021】また、好適には、前記炭化物粒子は、その
結晶面に平行な平坦面を備えた単結晶である。このよう
にすれば、ナノチューブは結晶面に垂直な方向に配向す
る傾向があることから、表面に生成されるナノチューブ
相互の独立性が高められて実質的な電子放出位置(エミ
ッション・サイト)が多くなるため、電子放出効率が一
層高められる。一層好適には、上記表面は、炭素だけが
存在する第1の層と非金属元素だけが存在する第2の層
とが交互に積み重ねられる方向における積層面である。
このようにすれば、ナノチューブの配向性延いては独立
性を更に高めることができる。これは、非金属元素が炭
素原子間を通って容易に表面側へ移動していくためと考
えられる。上記の積層面は、例えば、2Hのα-SiC単結
晶等のような六方晶の化合物においては(0001)面
であり、β-SiC単結晶等のような立方晶の化合物におい
ては(111)面である。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図面を
参照して詳細に説明する。
【0023】図1は、本発明の電界電子放出装置の一適
用例であるFED10の構成の要部を模式的に示す断面
図である。図において、FED10は、透光性を有する
略平坦な前面板12と、それに平行に配置された背面板
14とが枠状のスペーサ16を介して接合されることに
より、内部が10-6(Torr)以下、好ましくは10-7(Torr)以
下の真空度の気密容器に構成されている。前面板12お
よび背面板14は、それぞれ1 〜2(mm) 程度の厚さのソ
ーダ・ライム・ガラス製の平板等から成るものである。
但し、背面板14は透光性を要求されないため、セラミ
ックス或いは琺瑯等の電気絶縁性を有する他の材料で構
成してもよい。また、上記のスペーサ16は、例えば前
面板12および背面板14の構成材料と同様な熱膨張係
数を有する材料、例えばそれらと同様なソーダ・ライム
・ガラスや表面に絶縁層を設けた426合金等から成る
ものであって、例えば0.3(mm) 程度の一様な厚さを備え
ている。
【0024】上記の前面板12の内面18には、透明な
ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)等から
成る複数本の陽極(アノード)20が、一方向に沿って
ストライプ状に配列形成されている。この陽極20は、
例えばスパッタや蒸着等の薄膜プロセスによって1(μm)
程度の膜厚に設けられたものであり、シート抵抗値で10
(Ω/□) 程度の高い導電性を有する。これら複数本の
陽極20の各々の下面には、例えば赤、緑、青にそれぞ
れ発光させられる蛍光体層22が、それら3色が繰り返
し並ぶように設けられている。蛍光体層22は、例え
ば、低速電子線で励起されることにより可視光を発生さ
せる(Zn,Cd)S:Ag,Cl(赤)、ZnGa2O4:Mn(緑)やZnS:Cl
(青)等の蛍光体材料から構成されるものであり、例え
ば10〜 20(μm)程度の色毎に定められた厚さを以て厚膜
スクリーン印刷法等で形成されている。
【0025】一方、背面板14の内面24には、例えば
ストライプ状の複数本の陰極26が上記の陽極20と直
交する他方向に沿って配列形成されている。陰極26
は、例えば、Ni、Cr、Au、Ag、Mo、W 、Pt、Ti、Al、C
u、Pd等の金属、合金、或いは金属酸化物とガラスとか
ら構成される厚膜印刷導体である。これら複数本の陰極
26の各々の上には、後述するように電子の発生源とな
るエミッタ28が、例えば導電性接着剤等によって陰極
26と導通させられた状態で固着されている。エミッタ
28と陽極20との距離は、例えば数十 (μm)から数十
(mm)程度である。そして、エミッタ28の上方には、陰
極26と直交する方向、すなわち陽極20と同様な一方
向に沿って配列されたストライプ状の複数本のゲート電
極30が、絶縁膜32によってエミッタ28と電気的に
絶縁させられた状態で備えられている。ゲート電極30
は、例えばクロム(Cr)等から構成されて、陰極26との
交点の各々に直径1 〜2(μm)程度の複数個の電子通過孔
34を備えたものである。また、絶縁膜32は、二酸化
珪素(SiO2)等の絶縁材料で構成される。これらゲート電
極30および絶縁膜32は、何れも真空蒸着法、印刷
法、或いはスパッタ法等によって形成されている。
【0026】そのため、陰極26およびゲート電極30
にそれぞれ信号電圧および走査電圧が印加されると、そ
れらの間の大きな電圧勾配に基づいて生じる電界放出
(Field Emission)によってその陰極26上に固着され
ているエミッタ28から電子が放出される。この電子
は、前面板12上に設けられている陽極20に所定の正
電圧が印加されることにより、ゲート電極30に設けら
れている電子通過孔34を通ってその陽極20に向かっ
て飛ぶ。これにより、その陽極20上に設けられている
蛍光体層22に電子が衝突させられ、蛍光体層22が電
子線励起により発光させられる。したがって、ゲート電
極30の走査のタイミングに同期して所望の陽極20に
正電圧を印加することにより、所望の位置にある蛍光体
層22が発光させられるため、その光が前面板12を通
して外部に射出されることにより、所望の画像が表示さ
れる。なお、駆動方法の詳細については、本発明の理解
に必要ではないので説明を省略する。
【0027】上記のエミッタ28は、例えば、図2に側
面を模式的に示した複数個のブロック36から成るもの
である。陰極26上には、その略全長に亘って複数個の
ブロック36が相互に略接する程度の微小間隔を以てそ
の長手方向に沿って縦列配置されており、ブロック36
の各々はその陰極26上のゲート電極30との複数の交
点すなわち複数画素に対応する範囲に設けられている。
ブロック36は、例えば粒径が0.4(μm)程度の多数個の
炭素粒子38が 3× 3× 0.2(mm)程度の大きさに結合さ
れたものである。炭素粒子38相互は、個々の形状を略
保ったまま弱く結合させられており、ブロック36は、
粒子38相互間に多数の空隙を有する多孔質体になって
いる。また、炭素粒子38は炭素原子だけから成るもの
であるため、ブロック36は実質的に炭素原子が結合さ
れて構成される。そのため、例えば表面抵抗が数 (Ω/
□) 程度と小さいことから、陰極26との間の導通はそ
の上に単に載せるだけで確保できている。なお、図にお
いては何れの炭素粒子38とも接していないように描か
れた粒子38もあるが、実際には殆どの粒子38が周囲
の粒子38と相互に接触した状態にある。
【0028】図3は、上記のブロック36の一部を構成
する数個の炭素粒子38を拡大して更に詳しく説明する
図である。各々の炭素粒子38は、その表面40が略平
坦な複数の面40a、40bで構成されたものであっ
て、それらのうち面40aには、例えば 1011(本/cm2)
程度以上[例えば、10000 〜40000(本/μm2) 程度]の
数密度で緻密に立設されて相互に接触させられた多数本
のナノチューブ42が備えられている。すなわち、本実
施例においては炭素粒子38がナノチューブ具備粒子
に、ブロック36がナノチューブ具備焼結体にそれぞれ
相当する。これら多数本のナノチューブ42は、各々が
例えば直径5 〜10(nm)程度、長さ100(nm) 程度の寸法を
備えたものであって、面40aに対して略垂直を成す方
向に配向しており、その面40aからの先端高さ位置は
略一様である。ナノチューブ42は、その先端が陽極2
0に略向かうように立設されているが、面40aは必ず
しも陽極20の表面と平行になっていないため、ブロッ
ク36上に備えられたナノチューブ42の先端位置は一
様な高さに位置していない。しかしながら、ナノチュー
ブ42は直径0.4(μm)程度の炭素粒子38上に立設され
ていることから、その先端位置の高さのばらつき範囲は
せいぜいその粒径程度、すなわち0.4(μm)程度に過ぎな
い。これは陽極20−エミッタ28間隔の1/100 程度以
下の値であって電気特性上は無視できる程度の大きさで
ある。
【0029】また、上記のナノチューブ42は、後述す
る製造方法等から明らかなように炭素粒子38の面40
aから分子レベルで連続しており、何ら接合処理等を施
すことなく、その炭素粒子38上に一体的に設けられて
いる。前述した駆動過程におけるエミッタ28からの電
子の放出は、これらのナノチューブ42の先端から為さ
れるものであり、したがって、本実施例においては、ブ
ロック36を構成する個々の炭素粒子38の表面40に
備えられた多数本のナノチューブ42の各々が実質的に
エミッタとして機能する。また、各々の炭素粒子38の
ナノチューブ42で構成される部分以外の残部44は、
全てアモルファス・カーボン、グラファイトやフラーレ
ン等の、ナノチューブ42とは炭素原子の結合構造が異
なる同素体で構成された炭素部である。すなわち、炭素
粒子38の内部から面40bに至る範囲は、全て炭素部
44で構成されており、その面40bには、グラファイ
ト等の導電性の高い結合構造を有した同素体が現れてい
る。ブロック36を構成する複数個の炭素粒子38は、
専らその導電性の高い面40b相互に接した状態にあ
る。
【0030】なお、図3ではブロック36の上面46
(図2に一点鎖線でブロック36の輪郭を表す平坦面と
して示す)において、上側に向かってナノチューブ42
が立設されている炭素粒子38を示したが、上面46に
はこのようなナノチューブ42が立設されていない炭素
粒子38も存在する。すなわち、上述したナノチューブ
42以外の炭素同素体で全体が構成された炭素粒子38
や、下方或いは側方に向かうナノチューブ42だけを備
えた炭素粒子38も存在する。また、ナノチューブ42
を備えた炭素粒子38の下側に一点鎖線で示すようなブ
ロック36の内部においては、殆どの炭素粒子38には
ナノチューブ42が備えられていない。ブロック36
は、このような複数種類の炭素粒子38の結合体として
構成されており、少なくとも上面46においては略上方
に向かうナノチューブ42が略一様な分布を以て備えら
れている。
【0031】上記のようにブロック36が構成されてい
ることから、その上面46に備えられたナノチューブ4
2と背面板14上の陰極26とは、そのナノチューブ4
2が備えられている炭素粒子38の炭素部44、それに
直接或いは間接的に接する他の炭素粒子38の炭素部4
4、およびブロック36を陰極26上に固着するための
導電性接着剤を介して導通させられる。そのため、前述
したように陰極26およびゲート電極30間に電圧を印
加すると、ナノチューブ42に通電されてその先端から
電子が放出されるのである。このとき、エミッタ28を
構成する複数のブロック36の各々に備えられる複数本
のナノチューブ42は、何れも炭素粒子38に備えられ
る高導電率の炭素部44を介して陰極26と導通させら
れているため、何れのナノチューブ42にも陰極26か
らの通電径路の抵抗値が低くなって十分な電流が供給さ
れる。したがって、エミッタ28の略全面から略一様に
電子が放出され、略一様な電界が形成されることとな
る。
【0032】なお、エミッタ28を構成するブロック3
6の電気的性能、例えば電子放出能力は、以下のように
して評価できる。すなわち、ブロック36に例えば0.35
(mm)程度の間隔を以て対向するように電極(陽極)を配
置してこれらの間に電圧を印加し、ブロック36−対向
電極間の電圧すなわち対向電極の電位を0 〜3(V)の範囲
で変化させて放出される電流量を電流計で測定する。こ
れらブロック36および対向電極は、FED10の陽極
20およびエミッタ28に対応するものである。このよ
うな測定により、陽極電位1.1(kV) 程度で100(μA)以上
の放出電流が得られた。この評価結果は3(V/μm)程度の
電圧勾配で発光に十分な放出電流が得られることを意味
し、ブロック36はFED10のエミッタ28を好適に
構成し得ることが確かめられた。
【0033】図4は、ナノチューブ42の先端部を拡大
した分子構造モデルである。上記のナノチューブ42
は、その周壁が炭素原子48の6員環が網状に連結され
て成る複数本(例えば2 〜10本程度)の順次径の異なる
円筒状グラファイト層50a、50b、〜50k(以
下、特に区別しないときは単にグラファイト層50とい
う)が入れ子になって、2 〜10層程度の多層構造から成
る円筒状のグラファイト層50で構成されたものであ
る。個々のナノチューブ42の先端には多重構造を成す
グラファイト層50の端面が露出している。すなわち、
ナノチューブ42は陽極20に略向かう先端が開放した
形状を備えており、そのグラファイト層50の端面を構
成する複数の炭素原子48の各々から電子が放出される
こととなる。したがって、ナノチューブ42の曲率半径
は、実質的に炭素原子48の半径に一致する。最外周に
位置するグラファイト層50aの直径すなわちナノチュ
ーブ42の直径odは例えば5 〜10(nm)程度であり、最
内周に位置するグラファイト層50kの直径idは例え
ば3(nm) 程度である。このため、本実施例においては、
実質的に、直径od=10(nm)程度以下の極めて微細な領
域内に極めて多数のエミッション・サイト(電子の放出
位置)が存在する。このようにエミッション・サイトが
極めて多いことも、エミッタ28の電子放出能力に大き
く寄与していると考えられる。また、各グラファイト層
50の相互間隔gは、平坦なグラファイトの層間隔に略
等しい3.4(Å) 程度であり、少なくとも先端部近傍にお
いてはグラファイト層50が相互に独立している。
【0034】ところで、上記のブロック36は、例え
ば、{111}面で覆われた直径0.4(μm)程度のβ型の
炭化珪素単結晶微粉末を用いて以下のようにして製造さ
れる。なお、{111}面とは、(111)面と対称性
の立場から同等(等価)である表1に示す面の集まりを
いう。この炭化珪素微粉末は、例えば炭化珪素の塊を粉
砕することにより製造されたものであり、八面体の各面
に平行な破砕面を備えた結晶である。先ず、成形工程に
おいて、この微粉末原料を金型を用いて例えば10(MPa)
程度の圧力で 3× 3× 0.2(mm)程度の寸法の薄板状に成
形する。次いで、焼成工程において、成形した薄板を例
えば窒素ガス雰囲気中常圧で 1500(℃) 程度の温度で1
(時間) 程度加熱する。これにより、図5に示すように
薄板状を成した多孔質の炭化珪素焼結体52が得られ
る。なお、上記焼成温度は、粒子表面が安定相(α相)
となって珪素が除去され難くなることを避けるため、 1
600(℃)以下とすることが望ましい。この焼結体52
は、炭化珪素粒子54が相互に結合させられているが、
当初の個々の形状が殆ど失われておらず、緻密化は殆ど
進んでいない。すなわち、炭化珪素粒子54が個々の形
状を保ったまま結合させられており、焼結体52内に
は、粒子54相互間の空隙によって形成された個々の炭
化珪素粒子54に至る細孔56が備えられている。本実
施例においては、この焼結体52が共有結合性炭化物焼
結体に相当する。
【0035】
【表1】
【0036】続く珪素除去工程においては、真空炉内に
おいて焼結体52を 1700(℃) 程度の温度で0.5 時間程
度加熱する。この加熱処理中においては、真空炉内が例
えば10-7〜10-4(Torr)程度の真空度に保たれる。これに
より、焼結体52を構成する炭化珪素粒子54中の珪素
がガス化してその表面から次第に除去され、個々の粒子
54が炭素だけで構成された炭素粒子38と化す。すな
わち、本実施例においては、ブロック36を構成する粒
子38は、各々の全体が珪素除去層(非金属元素除去
層)だけで構成されている。
【0037】このとき、珪素除去層には、前記の図3に
示すように<111>方向に高配向したナノチューブ4
2が密に形成される。なお、<111>方向とは、[1
11]方向と対称性の立場から同等(等価)である表2
に示す方向の集まりをいう。したがって、炭化珪素粒子
54は前述したように{111}面で覆われているた
め、ナノチューブ42は生成される各面40aに垂直と
なるのである。しかしながら、ナノチューブ42が生成
し易い{111}面であっても、他の炭化珪素粒子54
に接触しているとそこにはナノチューブ42が生成され
ない。そのため、図3に示すように、炭素粒子38の一
部の面40aだけにナノチューブ42が立設されること
となる。また、ナノチューブ42の下方すなわち炭素粒
子38の内周側においては、ナノチューブ42が内周側
に向かうに従って相互に接近して隣接するもの相互に一
体化させられるため、ナノチューブ構造を維持できず炭
素部44となる。ブロック36は、このようにして上面
46にナノチューブ42および炭素部44を備えた炭素
粒子38が生成されることから、粒子表面40が開放さ
れたその上面46にはナノチューブ42が備えられると
共に、粒子表面40のうち他の粒子が接触させられた部
分に生成された炭素部44で炭素粒子38相互が導通さ
せられ、更に、炭素部44の連なりから成るナノチュー
ブ42に至る通電径路がその内部に形成されるのであ
る。
【0038】
【表2】
【0039】なお、前記のような熱処理条件では、珪素
除去層は炭化珪素粒子54の表面から0.2(μm)程度の深
さに形成される。そのため、前述したように炭化珪素粒
子54の直径が0.4(μm)程度であることから、その全周
囲から内側に向かって珪素除去層が生成されて行くこと
により、焼結体52を構成する粒子54内の全ての珪素
が除去される。したがって、炭素粒子38だけで構成さ
れたブロック36が得られるのである。
【0040】そして、珪素除去工程に続く熱処理工程に
おいては、上記のように作製された炭素粒子38だけか
ら成るブロック36を加熱炉で熱処理する。熱処理条件
は、例えば、大気雰囲気(酸化雰囲気)中で、温度500
(℃) 、処理時間1(分) 程度である。これにより、ナノ
チューブ42の先端部のうち、6員環に比較して結合力
が小さい5員環や7員環等で構成される部分が破壊さ
れ、その部分から先が分離されることによりナノチュー
ブ42の先端が開放される。前記図2に示すブロック3
6は、厳密に言えばこのような熱処理工程を経たもので
ある。
【0041】以上説明したように、本実施例によれば、
FED10のエミッタ28は、炭化珪素粒子54が個々
の形状を略保ったまま結合させられた焼結体52に真空
下で加熱処理を施すことにより、複数本のナノチューブ
42および導電性の炭素部44を含む複数個の炭素粒子
38がその炭素部44相互に接した状態で陽極20側に
向かう上面46に備えられたブロック36で構成され
る。そのため、構成粒子54個々の形状が略保たれた焼
結体52は、粒子単位で各々の外周面から珪素原子が除
去されるため、ブロック36中に生成される炭素粒子3
8の各々に備えられる複数本のナノチューブ42は粒子
内部で一体化し、その下側にそれと連続する炭素部44
が形成される。また、複数個の炭素粒子38の各々はブ
ロック36内で他の粒子38と接触させられているた
め、それらの接触部分ではナノチューブ42の生成が妨
げられ炭素部44が生成される。この結果、ナノチュー
ブ42を備えた炭素粒子38は各々に形成された導電性
の高い炭素部44の相互接触に基づいて相互に導通させ
られるため、ブロック上面46の全ての位置のナノチュ
ーブ42までの通電経路が専らその炭素部44で構成さ
れる。したがって、このようなブロック36で構成され
るエミッタ28内および複数個のエミッタ28相互間で
は、ナノチューブ42に至る通電経路の抵抗率のばらつ
き延いては電子放出効率のばらつきが極めて小さくなる
ことから、電子放出効率の一様性が高められる。
【0042】また、本実施例によれば、ブロック36
は、内部に位置する炭化珪素粒子54の各々に至る細孔
56を有する炭化珪素焼結体52に加熱処理を施したも
のであることから、ナノチューブ42を生成するために
焼結体52を加熱処理する際には、焼結体52内部にお
いても細孔56を通って珪素原子が抜け出るため、その
内部に存在する粒子54も上面46側に存在する炭素粒
子38と同様にその全体が珪素除去層で構成される。こ
のような内部に存在する炭素粒子38は、表面40の殆
どが他の粒子38に接触していることからナノチューブ
42は生成し難いため、表面40に炭素部44が現れた
粒子となり易い。そのため、ブロック上面46に位置す
る複数個の炭素粒子38の各々に備えられる複数本のナ
ノチューブ42の各々に至る通電経路は、上面46から
下面に向かう厚み方向において複数個の粒子38の炭素
部44相互の接触によって形成される。したがって、ブ
ロック36の表層部だけに炭素粒子38が備えられてそ
の表層部を通る通電経路だけが形成される場合に比較し
て、ブロック上面46の周縁部と内周部とのナノチュー
ブ42に至る通電径路の距離の差が小さくなるため、ナ
ノチューブ42に流れる電流量が一層一様になって、電
子放出効率の一様性が一層高められる。
【0043】また、本実施例においては、炭化珪素焼結
体52は平均粒径が0.4(μm)程度の炭化珪素粒子54か
ら成るものであるため、平均粒径が十分に小さいことか
ら、加熱処理を施した際にその中心部からも容易に珪素
原子が除去され、各々の粒子38の略全体が珪素除去層
すなわちナノチューブ42および炭素部44で構成され
る。そのため、生成されたナノチューブ42に至る通電
径路の抵抗率が一層低くなることから、電子放出効率が
一層高められる。
【0044】また、本実施例においては、ブロック36
を作製するための焼結体52は炭化珪素粒子54から成
ることから、珪素が炭素原子をグラファイト化するため
の触媒として特に好適に作用するため、炭素粒子38の
各々の表面40に一層緻密且つ一様に配向させられたナ
ノチューブ42を生成できる。
【0045】また、本実施例においては、ブロック36
を作製するために用いられた炭化珪素粒子54が、{1
11}面に平行な平坦面で覆われた単結晶であることか
ら、結晶面に垂直な方向に配向する傾向があるナノチュ
ーブ42の性質に基づき、表面40に生成されるナノチ
ューブ42相互の独立性が高められて実質的な電子放出
位置が多くなるため、電子放出効率が一層高められる。
【0046】次に、本発明の他の実施例を説明する。な
お、以下の実施例において前述の実施例と共通する部分
は同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】図5は、前記のブロック36に代えて陰極
26上に配設されることによってエミッタ28を構成す
るエミッタ構成部材58を示す図である。エミッタ構成
部材58は、例えば炭素から成る薄板基板60と、その
上面62に固着された炭素粒子38とから構成される。
炭素粒子38は、基板60の上面62に相互に重なり合
うこと無く或いは2乃至3個程度が積み重なり且つ密接
して固着されているが、図においては便宜上重ならない
状態で疎らに描いている。
【0048】図6は、上記のエミッタ構成部材58の要
部を拡大して、炭素粒子38、基板60、および陰極2
6の相互関係を説明する模式図である。炭素粒子38
は、前記のブロック36を構成する炭素粒子38と同様
に構成されたものであり、その表面40の一部(面40
a)には、複数本のナノチューブ42が備えられてい
る。但し、基板60および他の粒子38と接した部分に
はナノチューブ42は生成されておらず、グラファイト
等から成る炭素部44が形成されている。本実施例にお
いては、炭素粒子38が上面62に固着された状態で基
板60が陰極26に導電性接着剤等で固着されることに
より、炭素粒子38の各々に備えられているナノチュー
ブ42と陰極26との間の通電径路が、炭素部44、基
板60、および導電性接着剤によって形成されている。
【0049】そのため、本実施例においても、陰極26
から炭素粒子38の各々に備えられているナノチューブ
42に至る通電径路が何れのナノチューブ42において
も低抵抗であるため、基板60の周縁部と内周部、すな
わちエミッタ28の周縁部と内周部との間で電子放出効
率が一様となっている。なお、図においてはナノチュー
ブ42が略上方に向かうように形成された炭素粒子38
が基板60上に並んでいるように描いているが、個々の
炭素粒子38は必ずしも上方に向かうナノチューブ42
を備えていない。但し、エミッタ構成部材58全体とし
ては、上方に向かって備えられて有効に機能するナノチ
ューブ42が略一様に分布している。
【0050】上記のようなエミッタ構成部材58は、例
えば、前述したブロック36の製造に用いた炭化珪素粒
子54(β炭化珪素微粉末)を用いて以下のようにして
製造される。先ず、分散液作製工程において、炭化珪素
粒子54をアセトン等の有機溶剤中に分散して分散液を
作製する。次いで、フィルム作製工程において、この分
散液をピペット等を用いて基板60上に滴下し、室温に
放置して或いは乾燥機に入れて乾燥させる作業を数回繰
り返し、基板上面62に炭化珪素粒子54のフィルム
(層或いは膜)を形成する。なお、このとき、フィルム
の厚みは炭化珪素粒子54が2〜3層程度の層状を成す
ように、1(μm)程度に設定される。続く珪素除去工程に
おいては、前述したブロック36の場合と同様な条件で
熱処理を施す。これにより、炭化珪素粒子54の各々か
ら珪素が除去され、炭素原子だけで構成された炭素粒子
38から成る膜が基板60上に生成される。このとき、
ブロック36を構成する炭素粒子38と同様にして、基
板60上の炭素粒子38にナノチューブ42が生成され
ると共に、粒子表面40のうち他の粒子38および基板
60との接触部には炭素部44が生成される。なお、上
記の珪素除去過程において、炭素粒子38は基板60に
固着される。この固着原理は明らかではないが、指で軽
く触れた程度では全く脱落せず、FED10の製造過程
や使用中における耐衝撃性には何ら問題がない。このよ
うにしてナノチューブ42を生成した後、ブロック36
の場合と同様に酸化雰囲気下での熱処理を施してナノチ
ューブ42の先端閉塞部(キャップ)を除去することに
より、前記のエミッタ構成部材58が得られる。
【0051】上記のようなエミッタ構成部材58につい
ても、陽極20に相当する電極と対向配置して電気的特
性を評価したところ、電極間隔が0.55(mm)程度であれ
ば、陽極電位1.7(kV) 程度で100(μA)程度以上の十分な
放出電流が得られることが確かめられた。この評価結果
は、3(V/μm)の電圧勾配で発光に十分な放出電流が得ら
れることを意味する。すなわち、このような構成として
も、エミッタ28として好適な能力を有している。
【0052】要するに、本実施例においても、基板60
上にフィルム形成した炭化珪素粒子54を熱処理するこ
とによって、粒子単位で珪素が除去されてナノチューブ
42および炭素部44を個々に備えた炭素粒子38が基
板60上に固着されて得られることから、エミッタ構成
部材58のナノチューブ42は、炭素粒子38内の炭素
部44および基板60を介して陰極26に導通させら
れ、一様な電子放出効率が得られるのである。
【0053】また、本実施例においては、炭化珪素粒子
54が基板60上に載せられた状態で珪素除去処理を施
されることにより、ナノチューブ42が生成されると同
時に炭素粒子38がそのまま基板60に固着されること
から、略上方に向かうように生成されたナノチューブ4
2が有効に機能する可能性が高められる利点がある。
【0054】また、本実施例においては、炭化珪素粒子
54が相互に接触した状態で珪素除去所理を施された結
果、炭素粒子42が各々に形成された炭素部44相互に
接触した状態で基板60上に固着されている。そのた
め、炭素粒子38に形成されたナノチューブ42は、そ
の炭素粒子38の炭素部44を介して基板60に導通さ
せられるだけでなく、隣接する炭素粒子38の炭素部4
4をも介して基板60に導通させられることから、陰極
26とナノチューブ42との間の導電性が一層高められ
る。
【0055】以上、本発明の一実施例を図面を参照して
詳細に説明したが、本発明は、更に別の態様でも実施で
きる。
【0056】例えば、実施例においては、本発明がFE
D10に適用された場合について説明したが、本発明
は、エミッション・サイトの密度および均一性を高める
ことが望まれるものであれば、平面型ランプ、陰極線管
や電子銃等の種々の電界電子放出装置に同様に適用し得
る。
【0057】また、実施例においては、炭化珪素粒子5
4(β型炭化珪素微粉末)を真空中で熱処理してナノチ
ューブ42および炭素部44を備えた炭素粒子38を生
成することにより、ナノチューブ42が高い配向性を以
て緻密に配設されたエミッタ28を製造する場合につい
て説明したが、炭素粒子38を得るための出発材料とし
ては、真空中の加熱によって非金属元素が除去される共
有結合性炭化物粒子であれば、α型炭化珪素粒子でもよ
く、或いは、炭化ホウ素粒子等の他の材料から成る粒子
であってもよい。なお、α型炭化珪素が用いられる場合
には、ナノチューブ42が[0001]方向に配向する
傾向があるため、{0001}面が表面40に現れた粒
子を用いることが好ましい。
【0058】また、実施例においては、炭化珪素粒子5
4を成形および焼成して焼結体52を作製し、或いは基
板60上に炭化珪素粒子54から成る膜を形成した後、
熱処理を施すことにより、炭素粒子38から成るブロッ
ク36或いは炭素粒子38が基板60に固着されたエミ
ッタ構成部材58を作製していたが、炭化珪素粒子54
の各々の外周面から粒子単位で珪素を除去することによ
り生成されたナノチューブ42および炭素部44を備え
た炭素粒子38を用いるのであれば、その利用形態は上
記のものに限定されない。例えば、炭化珪素粒子54が
個々に独立した状態でこれに熱処理を施して得た炭素粒
子36を、陰極26上に導電性接着剤等を用いて直接固
着してエミッタ28を構成してもよい。実施例のように
陰極26が厚膜導体ペーストから生成される場合には、
その焼成前にその上に炭素粒子36を載せて陰極26と
接着剤とを兼ねることもできる。
【0059】また、実施例においては、粒径0.4(μm)程
度の微細な炭化珪素粒子54を用いて 1700(℃) で0.5
(時間) 程度の時間だけ熱処理(珪素除去)することに
より、個々の粒子54から完全に珪素を除去し、炭素原
子だけから成る炭素粒子38を形成していたが、炭素粒
子38は、必ずしもその全体が炭素だけから成るもので
なくともよい。すなわち、珪素除去層は個々の粒子38
の外周側から内部に向かって生成されるため、少なくと
も個々の粒子38の外周部は炭素だけから成るナノチュ
ーブ42および炭素部44で構成される。そのため、全
体が炭素原子だけで構成されていなくとも、粒子38相
互が炭素部44で接触することにより相互の導通は確保
できることから、ナノチューブ42に十分に電流を供給
することができる。したがって、粒子38の内部に炭化
珪素のままの部分が存在しても、形成された炭素部44
による導電率が十分に高ければ、エミッタ28の全面で
一様な電子放出効率を得ることができる。換言すれば、
炭化珪素粒子54の珪素の除去の程度、すなわち珪素除
去層の深さは、必要な導電性が得られる程度であればよ
く、必要な深さが得られる範囲で炭化珪素粒子54の粒
径や熱処理温度、時間を適宜設定することができる。
【0060】また、実施例においては、炭化珪素粒子5
4からナノチューブ42を備えた炭素粒子38を生成す
るための加熱処理が10-7〜10-4(Torr)程度の真空度の下
で行われていたが、処理時の真空度はナノチューブ42
の外径、結晶性、或いは生成速度により、10-10 〜10-1
(Torr)程度の範囲で適宜設定される。なお、10-1(Torr)
よりも真空度が低いと粒子54表面から酸化が進行して
ナノチューブの結晶性が損なわれる傾向にある。一方10
-10(Torr) よりも真空度が高いとナノチューブの生成速
度が極めて遅くなる。
【0061】また、実施例においては、炭化珪素粒子5
4をアセトン中に分散させた分散液を用いて基板52上
に炭化珪素粒子54の膜を形成したが、このような膜の
形成方法は炭化珪素粒子54の所望の分散状態が得られ
る範囲で適宜変更される。例えば、炭化珪素粒子54を
適当なビヒクル中に混合してスクリーン印刷法等で膜形
成することもできる。
【0062】また、実施例においては、 1700(℃) 程度
の温度でナノチューブ42を生成するための加熱処理を
施していたが、この加熱処理温度は、1200〜 2000(℃)
程度の範囲で適宜設定される。なお、 1200(℃) 未満で
は炭化珪素粒子54から珪素が除去され難いためナノチ
ューブ42が形成され難い。一方、 2000(℃) を越える
と形成されたナノチューブ42が更に結合して大きく成
長する現象が生じると共にナノチューブ42が昇華し始
めるため、ナノチューブ42の直径を制御することが困
難になる。
【0063】また、実施例においては、ナノチューブ4
2を形成した後に更に酸素の存在下で熱処理を施すこと
によりその先端を開放させていたが、先端の開放処理は
必ずしも行われなくともよい。但し、前述のように先端
を開放させることによってエミッタ28の実質的な曲率
半径が飛躍的に小さくなると共に、エミッション・サイ
トも飛躍的に増大して、エミッタ28の効率が一層高め
られるため、先端を開放する方が望ましい。なお、熱処
理条件は、実施例に示したものに限られず、温度は450
〜750(℃) 程度の範囲で適宜設定され、処理時間も例え
ば 10(秒) 乃至3(分) 程度の範囲で処理温度に応じて適
宜変更される。また、ナノチューブ42の先端の開放
は、その先端側からプラズマ・エッチングすることによ
っても行うことができる。このようにすれば、先端の開
放処理時に酸素によってナノチューブ42が劣化し、或
いは酸素の吸着によってエミッション特性が低下させら
れることが好適に抑制される。なお、エッチングに利用
するガスは、水素、アルゴン、ヘリウム、窒素、或いは
それらの混合ガスが好適に用いられる。
【0064】また、実施例においては、ナノチューブ4
2が直径5 〜10(nm)程度、長さ100(nm) 程度の大きさに
形成されていたが、その寸法は、電界電子放出装置の用
途に応じて、加熱処理(珪素除去)時の真空度や温度を
変化させることにより適宜変更される。
【0065】また、実施例においては、ブロック36や
基板54を陰極26に導電性接着剤で固着していたが、
陰極26が前述のような厚膜印刷導体で構成される場合
には、その焼結過程で同時にこれらを固着することもで
きる。
【0066】また、実施例においては、炭化珪素粒子5
4を10(MPa) 程度の圧力で加圧成形し、常圧、窒素ガス
雰囲気下 1500(℃) 程度の温度で焼成処理することによ
って焼結体52を作製していたが、焼結体52の製造条
件は、得ようとするブロック36の構造に応じて適宜変
更される。例えば、後の珪素除去工程で内部の炭化珪素
粒子54からも十分に珪素を除去することを望む場合に
は、十分な珪素原子通路を構成する細孔56を備えた多
孔質体となるように、成形圧力を 1〜30(MPa)程度、焼
成温度を1300〜 1600(℃) 程度の十分に低い範囲に設定
することが望ましい。なお、焼成雰囲気は窒素ガスに代
えてアルゴンガスとしてもよい。また、ブロック36の
表層部だけに炭素粒子38が形成されていれば十分な場
合には、焼結体52に細孔56が備えられていなくとも
差し支えないため、成形および焼成条件を比較的自由に
設定することができる。
【0067】また、実施例においては、炭素粒子38の
表面40には全く珪素が残存していなかったが、炭素粒
子38の表面には導通の妨げとならない範囲で炭化珪素
組成の部分が残留していても差し支えない。
【0068】また、実施例においては、ブロック36や
エミッタ構成部材58とは別に陰極26が備えられてい
たが、これらで陰極を兼ねることも可能である。
【0069】その他、一々例示はしないが、本発明は、
その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るもので
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のFEDの構成を説明する断
面図である。
【図2】図1のFEDに備えられるエミッタの構成する
ブロックの構造を模式的に示す図である。
【図3】図2のブロックを構成する炭素粒子を詳細に説
明する図である。
【図4】図3の炭素粒子の表面に備えられたナノチュー
ブの構造を分子レベルで説明する図である。
【図5】図2のブロックに生成される焼結体の構成を説
明する図である。
【図6】図2のブロックに代えて用いられるエミッタ構
成部材の構成を説明する図である。
【図7】図6のエミッタ構成部材中の炭素粒子を詳細に
説明する図である。
【符号の説明】
10:FED(電界電子放出装置) 20:陽極 26:陰極 28:エミッタ 36:ブロック(ナノチューブ具備焼結体) 38:炭素粒子(ナノチューブ具備粒子) 42:ナノチューブ 44:炭素部
フロントページの続き (72)発明者 左合 澄人 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 楠 美智子 愛知県名古屋市熱田区六野二丁目4番1号 財団法人ファインセラミックスセンター 内 Fターム(参考) 4G046 CA00 CB02 CC02 5C031 DD09 DD17 5C036 EE01 EE02 EE03 EF01 EF06 EF09 EG12 EH08 EH11

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気密空間内において互いに対向して配置
    された陰極および陽極間に電圧を印加することにより、
    その陰極上に設けられたエミッタから電子を放出させる
    形式の電界電子放出装置において、 共有結合性炭化物粒子に真空下で加熱処理を施すことに
    よりその表面の一部に先端が外側に向かうように生成さ
    れた複数本のカーボン・ナノチューブと、そのカーボン
    ・ナノチューブと導通してその表面の残部に同時に生成
    された炭素だけから成る導電性の炭素部とを含む複数個
    のナノチューブ具備粒子を、前記エミッタとして前記陰
    極上に設けたことを特徴とする電界電子放出装置。
  2. 【請求項2】 前記複数個のナノチューブ具備粒子は、
    複数個の前記共有結合性炭化物粒子を導体基板上に載せ
    て前記加熱処理を施すことにより前記複数本のカーボン
    ・ナノチューブおよび前記炭素部が生成されると同時に
    その導体基板に固着されたものである請求項1の電界電
    子放出装置。
  3. 【請求項3】 前記複数個のナノチューブ具備粒子は、
    前記炭素部が相互に接触した状態で前記陰極上に設けら
    れたものである請求項1または2の電界電子放出装置。
  4. 【請求項4】 気密空間内において互いに対向して配置
    されたエミッタおよび陽極間に電圧を印加することによ
    り、そのエミッタから電子を放出させる形式の電界電子
    放出装置において、 複数個の共有結合性炭化物粒子が個々の形状を略保った
    まま結合させられた炭化物焼結体に真空下で加熱処理を
    施すことにより、先端が外側に向かうように表面の一部
    に生成された複数本のカーボン・ナノチューブとそのカ
    ーボン・ナノチューブに導通してその表面の残部に同時
    に生成された炭素だけから成る導電性の炭素部とを含む
    複数個のナノチューブ具備粒子がその炭素部相互に接し
    た状態で前記陽極側に向かう上面に備えられたナノチュ
    ーブ具備焼結体を、前記エミッタとして前記陰極上に設
    けたことを特徴とする電界電子放出装置。
  5. 【請求項5】 前記ナノチューブ具備焼結体は、内部に
    位置する前記共有結合性炭化物粒子の各々に至る細孔を
    有する前記炭化物焼結体に前記加熱処理を施したもので
    ある請求項4の電界電子放出装置。
  6. 【請求項6】 前記共有結合性炭化物粒子は、0.4(μm)
    以下の平均粒径を有するものである請求項1乃至5の何
    れかの電界電子放出装置。
JP25031899A 1999-09-03 1999-09-03 電界電子放出装置 Pending JP2001076612A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25031899A JP2001076612A (ja) 1999-09-03 1999-09-03 電界電子放出装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25031899A JP2001076612A (ja) 1999-09-03 1999-09-03 電界電子放出装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001076612A true JP2001076612A (ja) 2001-03-23

Family

ID=17206133

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP25031899A Pending JP2001076612A (ja) 1999-09-03 1999-09-03 電界電子放出装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001076612A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004311407A (ja) * 2003-04-08 2004-11-04 Samsung Sdi Co Ltd 電子放出用複合粒子及びその製造方法,電子放出源及びその製造方法,電子放出エミッタ形成用組成物,及び電界放出表示素子
JP2005209551A (ja) * 2004-01-23 2005-08-04 Hitachi Chem Co Ltd 電界電子放出素子、画像表示装置、電子線照射デバイス、電界放出トランジスタ及び電界電子放出素子用炭素材料
JP2007186368A (ja) * 2006-01-12 2007-07-26 Dialight Japan Co Ltd 炭素構造体、電界放射チップおよび電界放射チップの製造方法ならびにこの製造方法の実施に用いる治具

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004311407A (ja) * 2003-04-08 2004-11-04 Samsung Sdi Co Ltd 電子放出用複合粒子及びその製造方法,電子放出源及びその製造方法,電子放出エミッタ形成用組成物,及び電界放出表示素子
JP4656557B2 (ja) * 2003-04-08 2011-03-23 三星エスディアイ株式会社 電子放出用複合粒子及びその製造方法,電子放出源及びその製造方法,電子放出エミッタ形成用組成物,及び電界放出表示素子
US8057596B2 (en) 2003-04-08 2011-11-15 Samsung Sdi Co., Ltd. Carbon-based composite particle for electron emission device, and method for preparing
JP2005209551A (ja) * 2004-01-23 2005-08-04 Hitachi Chem Co Ltd 電界電子放出素子、画像表示装置、電子線照射デバイス、電界放出トランジスタ及び電界電子放出素子用炭素材料
JP4496787B2 (ja) * 2004-01-23 2010-07-07 日立化成工業株式会社 電界電子放出素子、画像表示装置、電子線照射デバイス、及び電界放出トランジスタ
JP2007186368A (ja) * 2006-01-12 2007-07-26 Dialight Japan Co Ltd 炭素構造体、電界放射チップおよび電界放射チップの製造方法ならびにこの製造方法の実施に用いる治具

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3639808B2 (ja) 電子放出素子及び電子源及び画像形成装置及び電子放出素子の製造方法
JP3610325B2 (ja) 電子放出素子、電子源及び画像形成装置の製造方法
KR100431211B1 (ko) 전자방출소자, 전자방출장치, 화상표시장치, 및 발광장치
US7276842B2 (en) Electron-emitting device, electron source and image-forming apparatus, and method for manufacturing electron emitting device
US7811625B2 (en) Method for manufacturing electron-emitting device
JP3710436B2 (ja) 電子放出素子、電子源及び画像表示装置の製造方法
KR20010011136A (ko) 나노구조를 에미터로 사용한 삼극형 전계 방출 에미터의 구조및 그 제조방법
JP2001525590A (ja) 電界電子放出材料および装置
EP1487004B1 (en) Electron emission device, electron source, and image display having dipole layer
JP2000100317A (ja) 電界電子放出装置
JP4357066B2 (ja) 電界電子放出装置およびその製造方法
JP3581296B2 (ja) 冷陰極及びその製造方法
JP2001076612A (ja) 電界電子放出装置
JP2004241161A (ja) 電子放出源およびその製造方法並びに表示装置
JP4759103B2 (ja) 電界電子放出装置の製造方法
US20050225228A1 (en) Field electron emission materials and devices
JP3558948B2 (ja) 電子源アレイ及びその製造方法
JP2003077388A (ja) 電子放出素子の製造方法及び画像形成装置
JP2005048305A (ja) カーボンファイバーの製造方法、及びこれを用いた電子放出素子、電子源、画像表示装置の製造方法
KR100372168B1 (ko) 삼극형 탄소나노튜브의 전계 방출 표시소자의 제조방법
JP3568859B2 (ja) 冷陰極及びその冷陰極の製造方法
JP2003297229A (ja) 電界電子放出装置の製造方法
JP2003051243A (ja) 電子放出素子,電子源及び画像形成装置
JP3880595B2 (ja) 電子放出素子の製造方法、画像表示装置の製造方法
JP2003234060A (ja) 電界電子放出源及びその製造方法